(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基礎部材又は前記吊荷に取り付けられて前記吊荷の基準方向の方位を測定する方位センサと、この方位センサからの信号に基づいて、前記吊荷の基準方向の方位を表示する表示装置と、を更に含んで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊荷の姿勢制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における吊荷の姿勢制御装置の吊荷への設置を示す。
図2は、吊荷の姿勢制御装置の概略構成を示す。
図3は、吊荷の姿勢制御装置の縦断面を示す。
尚、以下の説明では、上方から見た平面視で、反時計回りの方向に対応する符号をプラス(+)とし、時計回りの方向に対応する符号をマイナス(−)とする。
【0012】
図1に示すように、クレーン等のワイヤーロープ(線状部材)1は、その下端に設けられたフック2及び玉掛け用ワイヤーロープ(線状部材)3を介して、直方体状の吊荷4を吊下支持している。尚、吊荷4の形状は直方体状に限らない。
吊荷4は水平方向に延在しており、その長手方向を、本実施形態では吊荷の基準方向S(以下、単に「基準方向S」と称する)としている。
【0013】
吊荷4の上面の中央部には、吊荷の姿勢制御装置10(以下、単に「姿勢制御装置10」と称する)が着脱可能に取り付けられている。
姿勢制御装置10は吊荷4の回転(特に、ヨーイング)を制御するものである。ここで、吊荷4の回転の中心軸上に、後述する軸13(
図2、
図3参照)が位置するように、姿勢制御装置10を吊荷4の上面に取り付けることが好ましい。
【0014】
図2及び
図3に示すように、姿勢制御装置10は、直方体状のケース11と、円形ラック12と、軸13と、フライホイール14と、2つの電動機15と、2つのピニオンギヤ16と、制御ユニット17と、電源18と、方位センサ19とを備える。尚、ケース11は直方体状に限らない。
ケース11は、円形ラック12と、軸13と、フライホイール14と、2つの電動機15と、2つのピニオンギヤ16と、制御ユニット17と、電源18と、方位センサ19とを収容する。ケース11の底面を構成する基礎部材11aは板状であり、この基礎部材11aが、吊荷4の上面の中央部に着脱可能に取り付けられている。
【0015】
基礎部材11aには軸13が立設されている。軸13は円柱状であり、鉛直な線に沿って延びている。軸13の下端は、基礎部材11aの上面に固定されている。
円形ラック12は、鉛直方向に厚みを有する円環状である。円形ラック12は、その中心と軸13の中心とが一致するように、基礎部材11aの上面にブラケット12aを介して取り付けられている。円形ラック12の外側の円周面には、図示しない歯部が形成されている。この歯部には、ピニオンギヤ16の歯部が噛み合っている。
【0016】
円形ラック12の上方には、フライホイール14が位置している。フライホイール14は、鉛直方向に厚みを有する円板状である。フライホイール14は、その中心と軸13の中心とが一致するように、図示しないベアリング等を介して、軸13に回転自在に取り付けられている。従って、フライホイール14は、軸13によって支持され、また、軸13を回転中心として(すなわち、鉛直な線を軸中心として)基礎部材11aに対して回転自在である。また、フライホイール14は基礎部材11a上に設けられている。
フライホイール14の上面の外周縁部には、フライホイール14の回転駆動源である2つの電動機15が設置されている。2つの電動機15は、各々がフライホイール14の同一直径上に配置されて、フライホイール14の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0017】
電動機15は、出力軸15aを備えるロータ(図示せず)とステータ(図示せず)とを含んで構成される。電動機15の出力軸15aは、正逆双方向に回転可能である。尚、フライホイール14の外周縁部には,各電動機15の出力軸15aを挿入するために、各出力軸15aに対応するように、貫通孔14aが予め形成されている。電動機15の出力軸15aは、鉛直な線に沿って、電動機15のロータから、フライホイール14の貫通孔14aを通って、フライホイール14の下方に向かって延びている。
各電動機15の出力軸15aの下端には、それぞれ、ピニオンギヤ16が取り付けられている。ピニオンギヤ16の外周面には歯部(図示せず)が形成されており、この歯部が、円形ラック12の歯部に噛み合っている。
【0018】
フライホイール14の上面の外周縁部には、制御ユニット17と電源18とが設置されている。ここで、制御ユニット17及び電源18のフライホイール14への設置に際しては、2つの電動機15、制御ユニット17、及び電源18がフライホイール14に搭載された状態での重量バランスが考慮され得る。
電源18は、図示しない電力線を介して、2つの電動機15及び制御ユニット17に電力を供給する。電源18としては、例えば、固形タイプのバッテリが用いられ得る。
制御ユニット17は、無線通信用の受信部(図示せず)と、2つの電動機15の運転を制御する運転制御部(図示せず)と、を含んで構成される。
【0019】
方位センサ19は、基礎部材11aの上面に設置されて、基準方向Sが指す方位(基準方向Sの方位)を測定する。尚、方位センサ19を基礎部材11aに取り付ける代わりに、吊荷4に直接取り付けてもよい。また、方位センサ19をケース11の任意の箇所に取り付けることで、方位センサ19を実質的に基礎部材11aに取り付けてもよい。
方位センサ19によって測定された方位(すなわち、基準方向Sの方位)に対応する信号は、図示しない送信部から、無線通信により、制御ユニット17の受信部と、操縦装置20(
図1参照)の受信部(図示せず)とに伝達される。尚、方位センサ19として、例えば、ジャイロコンパスが用いられる。
【0020】
図1に示すように、姿勢制御装置10の外部に位置する操縦装置20は、送信部(図示せず)と、受信部(図示せず)と、入力部21と、表示部22と、を備える。
操縦装置20の入力部21で入力された命令に基づいて生成される命令信号は、操縦装置20の送信部から、無線通信により、制御ユニット17の受信部に伝達される。
操縦装置20の表示部22は、本発明の「表示装置」として機能するものであり、方位センサ19で測定された基準方向Sの方位に対応する信号に基づいて、基準方向Sの方位を表示する。
制御ユニット17の運転制御部と2つの電動機15とは、図示しない信号線により接続されている。制御ユニット17の運転制御部は、操縦装置20からの命令信号に基づいて、又は、この命令信号に加えて、方位センサ19にて測定された基準方向Sの方位に対応する信号に基づいて、2つの電動機15の運転の制御を行う。
【0021】
電動機15の運転時には、ピニオンギヤ16の歯部と円形ラック12の歯部とが噛み合った状態で、出力軸15aの回転により、ピニオンギヤ16が、円形ラック12の周りを回転する。このピニオンギヤ16の円形ラック12に対する回転により、フライホイール14、及び、それに搭載された電動機15、制御ユニット17及び電源18が、円形ラック12に対して回転する。尚、電動機15の運転時には、電動機15の出力軸15aの回転方向が、フライホイール14の回転方向に一致している。すなわち、電動機15の出力軸15aの回転方向が平面視で時計回りの方向であれば、フライホイール14の回転方向も平面視で時計回りの方向となる。ここで、円形ラック12及びピニオンギヤ16が、本発明の「回転機構」として機能して、電動機15の出力軸15aの回転力により、フライホイール14を、基礎部材11aに対して回転させる。
【0022】
次に、姿勢制御装置10により実現される、吊荷4の姿勢制御方法の第1例について、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、吊荷4の角速度ω
4と、フライホイール14の角速度ω
14と、時間tとの関係を示す。
図5は、操作側の回転方向と、被制御側の回転方向とを示す。ここで、操作側には、フライホイール14、電動機15、ピニオンギヤ16、制御ユニット17、電源18が含まれる。一方、被制御側には、吊荷4、ケース11、円形ラック12、軸13、方位センサ19が含まれる。吊荷4の角速度ω
4は、地面に対する吊荷4の角速度(対地角速度)である。フライホイール14の角速度ω
14は、地面に対するフライホイール14の角速度(対地角速度)である。尚、
図5では、ケース11、円形ラック12、軸13、ピニオンギヤ16、方位センサ19の図示を省略している。
【0023】
ここで、操作側における軸13周りの慣性モーメントI
dについては、以下の式(1)が成り立つ。
【0024】
I
d=I
14+I
15+I
16+I
17+I
18 ・・・(1)
I
14:軸13周りのフライホイール14の慣性モーメント
I
15:軸13周りの電動機15の慣性モーメント
I
16:軸13周りのピニオンギヤ16の慣性モーメント
I
17:軸13周りの制御ユニット17の慣性モーメント
I
18:軸13周りの電源18の慣性モーメント
【0025】
また、操作側における電動機15の出力軸15a周りの慣性モーメントi
mについては、以下の式(2)が成り立つ。
【0026】
i
m=i
r+i
16 ・・・(2)
i
r:出力軸15a周りの電動機15のロータの慣性モーメント
i
16:出力軸15a周りのピニオンギヤ16の慣性モーメント
【0027】
また、被制御側の慣性モーメントI
wについては、以下の式(3)が成り立つ。
【0028】
I
w=I
4+I
11+I
12+I
13+I
19 ・・・(3)
I
4:吊荷4の慣性モーメント
I
11:ケース11の慣性モーメント
I
12:円形ラック12の慣性モーメント
I
13:軸13の慣性モーメント
I
19:方位センサ19の慣性モーメント
【0029】
吊荷4の姿勢制御方法の第1例では、吊荷4が地面に対して静止している状態(
図5(a)参照)から、吊荷4を、その上方から見た平面視で時計回りにθr[rad]回転させて静止させる(
図5(b)、(c)参照)。この吊荷4の姿勢制御時には、作業者が基準方向Sの方位を確認しつつ、操縦装置20の入力部21に命令を入力する。この命令は、例えば、電動機15の出力軸15aの回転方向及び回転数(角速度)に関する命令であり得る。ここで、作業者は、基準方向Sの方位の確認を、操縦装置20の表示部22を見ることによって、及び/又は、吊荷4を目視することによって行う。また、制御ユニット17の運転制御部は、操縦装置20からの命令信号に基づいて、電動機15の運転の制御を行う。
【0030】
まず、
図5(a)に示すように、吊荷4が地面に対して静止している状態では、操作側の回転が停止している。
この後、
図4に示す時刻t
1にて、電動機15の運転を開始して、電動機15の出力軸15aの回転を反時計回りに加速させる(
図5(b)の回転方向R1参照)。この出力軸15aの回転に伴って、ピニオンギヤ16も反時計回りに回転する。また、ピニオンギヤ16の歯部が円形ラック18の歯部に噛み合っているので、フライホイール14自体も軸13を回転中心として反時計回りに回転する(
図5(b)の回転方向R2参照)。
【0031】
このときに、電動機15の出力軸15aを回転中心として、電動機15のロータ及びピニオンギヤ16を反時計回りに回転させるトルクT
mと、軸13を回転中心として、フライホイール14、電動機15、ピニオンギヤ16、制御ユニット17、電源18を反時計回りに回転させるトルクT
dとは、その反作用として、被制御側を時計回りに回転させるトルクT
uを与えることとなる(
図5(b)の回転方向R3参照)。
【0032】
また、トルクT
m、T
dにより反時計回りの方向に加速された操作側と、その反作用としてトルクT
uにより時計回りの方向に加速された被制御側と、については、角運動量保存則により、概ね、以下の式(4)が成り立つ。
【0033】
ω
4・I
w=−(ω
14・I
d+ω
15a・i
m) ・・・(4)
ω
4:吊荷4の角速度
ω
14:フライホイール14の角速度
ω
15a:電動機15の出力軸15aの角速度
ここで、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aは、電動機15のステータに対する出力軸15aの角速度である。
【0034】
従って、式(4)により、吊荷4の角速度ω
4は、概ね、以下の式(5)により求められる。
【0035】
ω
4=−(ω
14・I
d+ω
15a・i
m)/I
w ・・・(5)
【0036】
図4に示すように、時刻t
1から時刻t
2までの間では、操作側がトルクT
m、T
dにより反時計回りの方向に加速されて、この結果、フライホイール14の角速度ω
14が角速度ω
14cに達する。また、その反作用として、被制御側がトルクT
uにより時計回りの方向に加速されて、この結果、吊荷4の角速度ω
4が角速度ω
4cに達する。
次に、時刻t
2から時刻t
3までの間では、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aを一定にする。これにより、フライホイール14の角速度ω
14が角速度ω
14cで一定になる。また、吊荷4の角速度ω
4が角速度ω
4cで一定になる。
【0037】
次に、時刻t
3から時刻t
4までの間では、時刻t
4にて、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aがゼロになるように、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aを減速させる。尚、時刻t
3から時刻t
4までの間では、当該減速により、操作側のトルクT
m、T
dと被制御側のトルクT
uとが、それぞれ、時刻t
1から時刻t
2までの間における各トルクの方向と逆方向(すなわち回転を妨げる方向)に作用することになる。それゆえ、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aを減速させることで、フライホイール14の角速度ω
14と吊荷4の角速度ω
4とを減速させることができる。この結果、時刻t
4では、フライホイール14の角速度ω
14と吊荷4の角速度ω
4とがそれぞれゼロになる。
時刻t
4以降については、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aをゼロのままとする。これにより、フライホイール14の角速度ω
14がゼロで一定となる(すなわち、地面に対して静止する)。また、吊荷4の角速度ω
4がゼロのままとなる(すなわち、地面に対して静止する)。
【0038】
ここで、
図4に示す時間軸tと、吊荷4の角速度ω
4を示す線とにより囲まれる面積が、上述のθr[rad]に対応する。それゆえ、時刻t
1、t
2、t
3、t
4については、
図4に示す時間軸tと、吊荷4の角速度ω
4を示す線とにより囲まれる面積が上述のθr[rad]となるように予め設定され得る。
このようにして、吊荷4が地面に対して静止している状態(
図5(a)参照)から、吊荷4を、その上方から見た平面視で時計回りにθr[rad]回転させて静止させる(
図5(b)、(c)参照)ことができる。
【0039】
次に、姿勢制御装置10により実現される、吊荷4の姿勢制御方法の第2例について、
図6を用いて説明する。
図6は、吊荷4の角速度ω
4と、フライホイール14の角速度ω
14と、時間tとの関係を示す。
上述の吊荷4の姿勢制御方法の第1例と異なる点について説明する。
【0040】
吊荷4の姿勢制御方法の第2例では、吊荷4に風が作用し、操作側と被制御側との双方が(すなわち、姿勢制御装置10及び吊荷4の双方が)一体的に角速度ω
0で回転している状態から、吊荷4の回転を停止させる。
図6に示す時刻t
11から時刻t
12までの間では、吊荷4に風が作用し、この結果、フライホイール14の角速度ω
14と吊荷4の角速度ω
4との双方が加速されて、角速度ω
0に達する。
【0041】
時刻t
12から時刻t
13の間では無風状態であり、この結果、フライホイール14の角速度ω
14と吊荷4の角速度ω
4との双方が角速度ω
0で一定となる。
時刻t
13より、吊荷4の角速度ω
4を減速するべく、フライホイール14の角速度ω
14を角速度ω
0から加速させる。ここで、フライホイール14の角速度ω
14を角速度ω
0から加速させることにより、その反作用として、被制御側(吊荷4)の角速度ω
4がトルクT
uにより減速される。このフライホイール14の角速度ω
14の加速は、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aを加速することにより実現される。
【0042】
尚、吊荷4の姿勢制御方法の第2例では、角運動量保存則に関して、上述の式(4)の代わりに、以下の式(6)が概ね対応し得る。
【0043】
ω
4・I
w+(ω
14・I
d+ω
15a・i
m)
=ω
0・(I
w+I
d) ・・・(6)
【0044】
時刻t
13より吊荷4の角速度ω
4の減速を開始し、時刻t
14にて、吊荷4の角速度ω
4がゼロになると、電動機15の出力軸15aの角速度ω
15aを一定にする。これにより、フライホイール14の角速度ω
14が角速度ω
14cで一定になる。また、吊荷4の角速度ω
4がゼロのままとなる(すなわち、地面に対して静止する)。
このようにして、吊荷4に風が作用し、操作側と被制御側との双方が一体的に角速度ω
0で回転している状態から、吊荷4の回転を停止させることができる。
【0045】
次に、姿勢制御装置10により実現される、吊荷4の姿勢制御方法の第3例について、
図7を用いて説明する。
図7は、吊荷4の姿勢制御方法の第3例を示すブロック線図である。
上述の吊荷4の姿勢制御方法の第1例と異なる点について説明する。
【0046】
吊荷4の姿勢制御方法の第3例では、まず、作業者が、基準方向Sの目標方位を操縦装置20の入力部21に入力する。操縦装置20は、この入力に対応する命令信号を無線通信を介して制御ユニット17の運転制御部に伝達する。
次に、制御ユニット17の運転制御部では、操縦装置20からの命令信号と、方位センサ19にて測定された基準方向Sの方位に対応する信号と、に基づいて、電動機15の運転の制御を行う。具体的には、制御ユニット17の運転制御部では、操縦装置20からの目標方位と、方位センサ19からの測定方位と、の差分を算出し、この差分が小さくなるように、電動機15の運転を制御する。
【0047】
電動機15の運転制御により、操作側に位置するフライホイール14の回転の制御が行われ、この結果、被制御側に位置する吊荷4の回転の制御が行われることになる。
そして、方位センサ19にて基準方向Sの方位を測定し、この測定方位と、操縦装置20からの目標方位と、の差分を算出し、この差分が小さくなるように、電動機15の運転を制御する。
このようにして、電動機15の運転をフィードバック制御することにより、吊荷4の基準方向Sが任意の方位になるように吊荷4を回転させることができる。また、吊荷4の基準方向Sを任意の方位に向かわせた状態で、吊荷4の回転を抑制して吊荷4の姿勢を保持することができる。
【0048】
本実施形態によれば、姿勢制御装置10は、ワイヤーロープ1等の線状部材により吊下支持される吊荷4の姿勢を制御する。姿勢制御装置10は、吊荷4に取り付けられる基礎部材11aと、鉛直な線を軸中心として基礎部材11aに対して回転自在に基礎部材11aに設けられるフライホイール14と、フライホイール14の回転駆動源である電動機15と、電動機15の運転を制御する制御ユニット17と、電動機15及び制御ユニット17に電力を供給する電源18と、を含んで構成される。電動機15、制御ユニット17、及び電源18は、フライホイール14に搭載される。すなわち、操作側に、電動機15、制御ユニット17、及び電源18が配置される。このように電動機15、制御ユニット17、及び電源18が配置されることにより、特許文献1に記載のような吊荷の姿勢制御装置に比べて、被制御側の慣性モーメントを小さくすることができ、また、操作側の慣性モーメントを大きくすることができるので、被制御側の良好な応答性を得ることができる。
【0049】
また本実施形態によれば、操作側に、電動機15、制御ユニット17、及び電源18が配置されることにより、その分、被制御側の慣性モーメントを小さく抑えることができるので、電動機15の小型化・軽量化を実現することができ、ひいては、姿勢制御装置10の小型化・軽量化を実現することができる。
また本実施形態によれば、姿勢制御装置10の小型化・軽量化を実現することができるので、クレーン等の吊り能力のうち、姿勢制御装置10の自重により損失となる部分を軽減することができ、ひいては、クレーン等の吊り能力を有効に使うことができる。
【0050】
また本実施形態によれば、クレーン等にて長尺物である吊荷4を揚重する際に、従来は作業者がロープで引っ張ることで行っていた吊荷4の回転を、姿勢制御装置10を用いて行うことができるようになるので、作業の安全性を向上させることができる。
また本実施形態によれば、クレーン等により吊荷4をその取付高さまで揚重する間に、姿勢制御装置10を用いて、吊荷4の基準方向Sを任意の方向に向けることができるので、作業効率を向上させることができる。
また本実施形態によれば、風の影響により吊荷4が回転しかねない状況においても、姿勢制御装置10を用いて吊荷4の姿勢を制御することにより、吊荷4に対する風の影響を抑制することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、姿勢制御装置10は、基礎部材11a又は吊荷4に取り付けられて吊荷4の基準方向Sの方位を測定する方位センサ19を更に含んで構成され、制御ユニット17は、方位センサ19からの信号に基づいて、電動機15の運転を制御する。これにより、例えば、操縦装置20からの目標方位と、方位センサ19からの測定方位とを用いて、電動機15の運転をフィードバック制御することができ、ひいては、吊荷4の基準方向Sが任意の方位になるように吊荷4を回転させることができる。また、吊荷4の基準方向Sを任意の方位に向かわせた状態で、吊荷4の回転を抑制して吊荷4の姿勢を保持することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、姿勢制御装置10は、方位センサ19からの信号に基づいて、吊荷4の基準方向Sの方位を表示する表示装置(操縦装置20の表示部22)を更に含んで構成される。これにより、作業者が、吊荷4の基準方向Sの実方位を容易に把握することができる。
【0053】
また本実施形態によれば、電動機15は、その出力軸15aが、鉛直な線に沿って、フライホイール14より延びており、姿勢制御装置10は、電動機15の出力軸15aの回転力により、フライホイール14を基礎部材11aに対して回転させる回転機構(円形ラック12及びピニオンギヤ16)を更に含んで構成され、フライホイール14の回転方向が電動機15の出力軸15aの回転方向に一致する。これにより、操作側における軸13周りの慣性モーメントI
dに加えて、電動機15のロータの慣性モーメントi
rとピニオンギヤ16の慣性モーメントi
16とからなる出力軸15a周りの慣性モーメントi
mも、操作側の慣性モーメントとして利用することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、複数の電動機15が、フライホイール14の周方向に互いに間隔を空けて配置される。これにより、電動機15として小型の電動機を用いることができ、また、フライホイール14についてはバランスの良い回転が得られる。尚、本実施形態では、2つの電動機15がフライホイール14の周方向に互いに間隔を空けて配置される例を説明したが、3つ以上の任意の個数の電動機15がフライホイール14の周方向に互いに間隔を空けて配置されてもよい。
また本実施形態によれば、電動機15は、その出力軸15aが正逆双方向に回転可能である。これにより、操作側を回転させるトルクT
m、T
dの方向として、時計回りの方向と反時計回りの方向との一方を適宜選択することができる。
【0055】
尚、本実施形態では、フライホイール14がベアリング等を介して軸13に回転自在に取り付けられ、かつ、軸13の下端が基礎部材11aの上面に固定される例を用いて説明したが、この他、フライホイール14と軸13とを固定してコマを形成し、軸13の下端をベアリング等を介して基礎部材11aの上面に回転自在に取り付けてもよい。また、これに加えて、軸13の上端をベアリング等を介してケース11の上面に回転自在に取り付けてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、フライホイール14が軸13によって回転自在に支持されているが、フライホイール14を回転自在に支持する形態はこれに限らない。
図8(a)は、姿勢制御装置10の第1変形例を示す。
図8(b)は、姿勢制御装置10の第2変形例を示す。
図3に示す姿勢制御装置10と異なる点について説明する。
【0057】
図8(a)に示す姿勢制御装置10の第1変形例では、軸13の代わりとして、スラスト軸受30が基礎部材11a上に設けられている。スラスト軸受30の上面には、フライホイール14が取り付けられている。従って、スラスト軸受30が、フライホイール14及びそれに搭載される電動機15、制御ユニット17、電源18の重量をスラスト荷重として受け止めつつ、フライホイール14を回転自在に支持する。尚、この変形例では、一方の電動機15が省略されて、他方の電動機15のみがフライホイール14に搭載されて、フライホイール14の回転駆動源として機能している。上記一方の電動機15及びその出力軸15aの代わりとして、ベアリング31及び回転軸32が設けられている。ベアリング31は、上記一方の電動機15の代わりとして、フライホイール14の上面に設置されている。回転軸32は、その上端にてベアリング31により回転自在に支持され、下端にピニオンギヤ16が取り付けられている。
【0058】
図8(b)に示す姿勢制御装置10の第2変形例では、軸13の代わりとして、円形スライダ35が設けられている。円形スライダ35は、レール36と、複数の車輪37と、を含んで構成される。
レール36は平面視で円環状であり、略菱形の断面形状を有する。レール36は、ブラケット38を介して、ケース11の側壁に取り付けられている。
フライホイール14の下面には、複数の車輪37が回転自在に取り付けられている。複数の車輪37は、レール36の内周部(頂部)を鉛直方向で挟みつつレール36上を転動する複数の車輪と、レール36の外周部(頂部)を鉛直方向で挟みつつレール36上を転動する複数の車輪と、からなる。
従って、円形スライダ35が、フライホイール14及びそれに搭載される電動機15、制御ユニット17、電源18の重量を受け止めつつ、フライホイール14を回転自在に支持する。
【0059】
また、本実施形態では、1つの姿勢制御装置10が、吊荷4の上面の中央部に設置されているが、吊荷4に設置される姿勢制御装置10は単数に限らず複数であってもよい。
例えば、被制御側の慣性モーメントI
wが
図1の状態より2倍になった場合には、
図9(a)に示すように、2つの姿勢制御装置10を上下に積み重ねて、吊荷4の上面の中央部に設置してもよい。
また、
図9(b)に示すように、2つの姿勢制御装置10が、吊荷4の上面のうち、吊荷4の長手方向で一側と他側とにそれぞれに設置されてもよい。
また、複数の姿勢制御装置10が、それぞれ、吊荷4上の任意の場所に配置されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、姿勢制御装置10を吊荷4の上面に着脱可能に設置しているが、これに加えて、又は、これに代えて、
図10に示すように、姿勢制御装置10を吊具40に着脱可能に設置してもよい。
図10に示すように、吊具40は、例えば、架台41とワイヤーロープ42とを含んで構成される。
クレーン等のワイヤーロープ1は、フック2及び玉掛け用ワイヤーロープ3を介して、直方体状の架台41を吊下支持している。尚、架台41の形状は直方体状に限らない。
【0061】
架台41は、ワイヤーロープ(線状部材)42を介して、吊荷4を吊下支持している。ここで、平面視で、架台41の長手方向が、吊荷4の基準方向Sに略一致している。
架台41の上面の中央部には、姿勢制御装置10が着脱可能に取り付けられている。
ここで、吊荷4の回転の中心軸上に、フライホイール14の回転中心が位置するように、姿勢制御装置10を架台41の上面に取り付けることが好ましい。
【0062】
図10に示すように、吊荷4が、ワイヤーロープ1等の線状部材によって吊下支持される吊具40により吊下支持され、姿勢制御装置10が、吊荷4に取り付けられる代わりに、吊具40に取り付けられることにより、姿勢制御装置10を吊荷4に直接的に設置することが難しい場合であっても、姿勢制御装置10を用いて、吊具40を介して、吊荷4の姿勢制御を行うことができる。
【0063】
尚、上述の実施形態では、操縦装置20が姿勢制御装置10の外部に位置する例を用いて説明したが、操縦装置20の構成はこれに限らず、操縦装置20は、姿勢制御装置10に一体的に設けられてもよい。この場合には、
図7に示した吊荷4の姿勢制御方法の第3例において、吊荷4の揚重作業に先立って、吊荷4の基準方向Sの現在の方位を目標方位として入力部21に入力することにより、揚重作業中における吊荷4の姿勢を保持することができる。
また、上述の実施形態における姿勢制御装置10では、方位センサ19で基準方向Sの方位を測定する構成としたが、この他、方位センサ19を省略して、作業者が、吊荷4の基準方向Sの方位を目視により確認しつつ、操縦装置20を操作することで、姿勢制御装置10を用いて、吊荷4の姿勢を制御してもよい。
また、上述の実施形態にて示した姿勢制御装置10は、その天地が逆転しても同様の機能を実現し得ることはいうまでもない。