【文献】
Jaunin, R.,Synthesis of some p,p'-polymethylenedibenzoic acids,Helvetica Chimica Acta,1957年,40,p2245-2248
【文献】
Well-Defined Alternating Copolymers of Oligo(phenylenevinylene)s and Flexible Chains,Zhu, Xinju et al,Macromolecules,2012年,45(12),p5051-5057
【文献】
Condensation of Glutaryl Chloride, Pimelys Chloride, Suberyl Chloride, Azeloyl Chloride and Sebasoyl Chloride with Aromatic Hydrocarbons,Journal of The Indian Chemical Society,1971年,p1001-1010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の高分子化合物は、下記一般式(1)で表される構造単位
と下記一般式(2)で表される構造単位を含有してなる。
【0019】
[式中、Ar
1およびAr
2はアリーレン基を表し、Yは直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表す。]
【0021】
[式中、Ar
3は3価の芳香族基を表し、Xは2価の電子吸引基を表し、R
1は有機基を表す。]
また所望により、さらに下記一般式(3)で表される構造単位を有していてもよい。
【0023】
[式中、Ar
4からAr
7は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、X'は2価の電子吸引基を表し、Y'は2価の電子供与基を表し、mは0または正の整数を表し、nは0または1を表す。]
一般式(1)において、Ar
1およびAr
2はアリーレン基を表し、好ましくはフェニレン基を表す。Ar
1およびAr
2の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、3−メチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン基、3,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、3,6−ジメチル−1,4−フェニレン基、6−メチル−1,3−フェニレン基、5−メチル−1,2−フェニレン基、2−エチル−1,4−フェニレン基、3−エチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジエチル−1,4−フェニレン基、2,6−ジエチル−1,4−フェニレン基、3,5−ジエチル−1,4−フェニレン基、3,6−ジエチル−1,4−フェニレン基、6−エチル−1,3−フェニレン基、5−エチル−1,2−フェニレン基、2−メトキシ−1,4−フェニレン基、3−メトキシ−1,4−フェニレン基、6−メトキシ−1,3−フェニレン基、5−メトキシ−1,2−フェニレン基、6−フェニル−1,3−フェニレン基、5−フェニル−1,3−フェニレン基等の置換基を有していてもよいフェニレン基が挙げられる。中でも、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0024】
一般式(1)において、Yは直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、より好ましくは炭素原子数4〜10の直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、特に好ましくは炭素原子数8〜10の直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表す。Yの具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,11−ウンデシレン基、1,12−ドデシレン基、1,13−トリデシレン基、1,14−テトラデシレン基、1,15−ペンタデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基、1,17−ヘプタデシレン基、1,18−オクタデシレン基、1,19−ノナデシレン基、1,20−エイコシレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,4−ジメチレンシクロヘキサン基が挙げられる。
【0025】
一般式(1)としての好ましい構造単位は、Ar
1およびAr
2が1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基であり、Yが直鎖アルキレン基であり、より好ましい構造単位は、Ar
1およびAr
2が1,4−フェニレン基であり、Yが炭素原子数4〜10の直鎖アルキレン基である。
【0026】
一般式(2)において、Ar
3は3価の芳香族基を表し、好ましくは1,2,4−ベンゼントリイル基、1,2,5−ベンゼントリイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基または1,2,3−ベンゼントリイル基を表し、より好ましくは1,2,4−ベンゼントリイル基、1,2,5−ベンゼントリイル基または1,3,5−ベンゼントリイル基を表し、特に好ましくは1,2,4−ベンゼントリイル基を表す。
【0027】
一般式(2)において、Xは2価の電子吸引基を表し、その具体例としては、−CO−、−COO−、−CONH−、−(CF
2)p−(pは1〜10の整数)、−C(CF
3)
2−、−SO−、−SO
2−が挙げられる。
【0028】
一般式(2)において、R
1は有機基を表し、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、より好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基を表し、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基を表す。R
1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等のアルキル基;フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、3−n−プロピルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、3−n−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−iso−ブチルフェニル基、3−iso−ブチルフェニル基、4−iso−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、2−フェノキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、3,5−ジフェノキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基等のアリール基;フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0029】
一般式(2)としての好ましい構造単位は、Ar
3が1,2,4−ベンゼントリイル基であり、Xが−CO−または−SO
2−であり、R
1がアルキル基またはアリール基であり、より好ましい構造単位は、Ar
3が1,2,4−ベンゼントリイル基であり、Xが−CO−であり、R
1が置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0030】
一般式(3)において、Ar
4からAr
7は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、その具体例としては、一般式(1)のAr
1およびAr
2の具体例として挙げた置換基を有していてもよいフェニレン基が挙げられる。中でも、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0031】
一般式(3)において、X'は2価の電子吸引基を表し、その具体例としては、一般式(2)のXの具体例として挙げた2価の電子吸引基が挙げられる。
【0032】
一般式(3)において、Y'は2価の電子供与基を表し、その具体例としては、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、下記式(4)で表される基が挙げられる。
【0034】
一般式(3)において、mは0または正の整数を表し、好ましくは0〜100であり、より好ましくは0〜80である。また、nは0または1を表し、mおよびnが0の場合は、一般式(3)は−Ar
7−である。
【0035】
一般式(3)としての好ましい構造単位は、mおよびnが0であり、−Ar
7−のみの単環構造、もしくは、mが2以上のポリエーテルスルホン構造あるいはポリエーテルケトン構造を含むオリゴマーである。
【0036】
本発明の高分子化合物中の各構造単位の含有率は特に限定されないが、高分子化合物の全構造単位100モル%を基準としたモル比で表すと、一般式(1)で表される構造単位は好ましくは1〜100モル%、より好ましくは5〜100モル%、特に好ましくは10〜100モル%であり、一般式(2)で表される構造単位は好ましくは0〜99モル%、より好ましくは0〜95モル%、特に好ましくは0〜90モル%である。また、一般式(3)で表される構造単位は好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、特に好ましくは0〜10モル%である。
【0037】
本発明の高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000〜500000、より好ましくは2000〜300000、特に好ましくは5000〜250000である。この重量平均分子量(Mw)はGPCによりポリスチレンを標準サンプルとして測定した値である。その測定条件の詳細は、実施例の欄で説明する。
【0038】
本発明の高分子化合物は、下記一般式(1')で表される高分子化合物用モノマー、ならびに所望により下記一般式(2')で表される高分子化合物用モノマーおよび/または一般式(3)で表される高分子化合物用モノマーから製造できる。
【0040】
[式中、Ar
1およびAr
2はアリーレン基を表し、Yは炭素原子数8以上の直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、X
1およびX
2はハロゲン原子を表す。]
【0042】
[式中、Ar
3は3価の芳香族基を表し、Xは2価の電子吸引基を表し、R
1は有機基を表し、X
1およびX
2はハロゲン原子を表す。]
【0044】
[式中、Ar
4からAr
7は置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、X'は2価の電子吸引基を表し、Y'は2価の電子供与基を表し、mは0または正の整数を表し、nは0または1を表し、X
1およびX
2はハロゲン原子を表す。]
一般式(1')〜(3')のX
1およびX
2はハロゲン原子を表し、その具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子が挙げられる。
【0045】
一般式(1')で表される高分子化合物用モノマーは、例えばハロゲン化ベンゼンと脂肪族ジカルボン酸ジハライドとのフリーデル−クラフツ反応により製造できる。
【0046】
一般式(2')において、例えばAr
3がベンゼントリイル基であり、R
1がフェニル基であり、Xが−CO−である高分子用モノマーは、例えばジハロゲノベンゼンとカルボン酸ハライドとのフリーデル−クラフツ反応、または、ベンゼンとジハロゲノ安息香酸クロライドとのフリーデル−クラフツ反応により製造できる。
【0047】
一般式(3')において、例えばnが1であり、mが2以上である高分子化合物用モノマーは、例えばX
1−Ar
6−X'−Ar
7−X
2で表される化合物とY''−Ar
4−X'−Ar
5−Y''[Y''はヒドロキシ基]で表される化合物とをアルカリ金属等の塩基の存在下に重縮合することで製造できる。
【0048】
上記各モノマーを反応させて本発明の高分子化合物を製造する場合は、通常、触媒の存在下で反応を行う。触媒としては、遷移金属化合物を含む触媒系を使用する。この触媒系は、例えば、[1]遷移金属塩および配位子となる化合物(以下「配位子成分」という)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、ならびに、[2]還元的カップリング剤である金属亜鉛を必須成分として使用する。さらに、重合速度を上げるために塩を添加してもよい。
【0049】
遷移金属塩の具体例としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート等のニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄等の鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト等のコバルト化合物が挙げられる。中でも、塩化ニッケル、臭化ニッケルが好ましい。
【0050】
配位子成分の具体例としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用できる。
【0051】
配位子が配位された遷移金属錯体の具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロライド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジブロマイド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジヨーダイド、(トリフェニルホスフィン)ニッケルジニトロキシド、(2,2'−ビピリジン)ニッケルジクロライド、(2,2'−ビピリジン)ニッケルジブロマイド、(2,2'−ビピリジン)ジヨーダイド、(2,2'−ビピリジン)ニッケルジニトロキシド、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが挙げられ。中でも、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロライド、(2,2'−ビピリジン)ニッケルジクロライドが好ましい。
【0052】
触媒系において使用できる塩の具体例としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム化合物が挙げられる。中でも、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0053】
遷移金属塩または遷移金属錯体の使用割合は、モノマーの総計1モルに対し、通常0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。これが0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、10モルを超えると分子量が低下することがある。
【0054】
触媒系において遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。これが0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがある。一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
【0055】
亜鉛金属の使用割合は、モノマーの総計1モルに対し、通常0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。これが0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがある。一方、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
【0056】
さらに塩を使用する場合、その使用割合は、モノマーの総計1モルに対し、通常0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。これが0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分なことがある。一方、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
【0057】
使用できる重合溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。中でも、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。重合溶媒中におけるモノマーの総計の濃度は、通常1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。
【0058】
重合温度は、通常0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
【0059】
以上説明した触媒系や溶媒を用いて、一般式(1')で表される高分子化合物用モノマー、ならびに所望により一般式(2')で表される高分子化合物用モノマーおよび/または一般式(3)で表される高分子化合物用モノマーを重合させることにより、高分子化合物を含む重合溶液が得られる。次いで貧溶媒を用いることにより、重合溶液から高分子化合物を回収できる。貧溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。貧溶媒は2種以上を混合して用いることもできる。中でも、水、メタノール、アセトンが好ましい。
【0060】
以上のようにして得た本発明の高分子化合物に対して、必要に応じて他の成分を添加又は混合することにより、本発明の高分子組成物が得られる。例えば、本発明の高分子化合物に対して安定剤を添加する場合、その添加量はコスト及び成形体の外観の点から、高分子化合物の総量100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.001〜2.5質量部、特に好ましくは0.001〜1質量部である。
【0061】
安定剤としては、例えば、フェノール系化合物(ヒンダードフェノール系化合物)、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物を使用できる。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3'−メチル−5'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2'−メチレンビス(4−メチル−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N'−ビス−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N'−テトラメチレン−ビス−3−(3'−メチル−5'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N'−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N'−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N'−ビス{2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドが挙げられる。中でも、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドが好ましい。
【0063】
フェノール系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、AO−330、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックス245、259、565、1010、1035、1076、1098、1222、1330、1425、1520、3114、5057、住友化学工業製のスミライザーBHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS、サイアナミド製のサイアノックスCY−1790が挙げられる。
【0064】
チオエーテル系化合物の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)が挙げられる。
【0065】
チオエーテル系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブA0−23、AO−412S、AO−503A、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックスPS802、住友化学製のスミライザーTPL−R、TPM、TPS、TP−D、エーピーアイコーポレーション製のDSTP、DLTP、DLTOIB、DMTP、シプロ化成製のシーノックス412S、サイアミド製のサイアノックス1212が挙げられる。
【0066】
ビタミン系化合物の具体例としては、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコフェトリエノール、d−γ−トコフェトリエノール、d−δ−トコフェトリエノール等の天然品;dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、ニコチン酸dl−α−トコフェロール等の合成品が挙げられる。ビタミン系化合物の市販品の商品名としては、例えば、エイザイ製のトコフェロール、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックスE201が挙げられる。
【0067】
トリアゾール系化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾール、3−(N−サリシロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0068】
多価アミン系化合物の具体例としては、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッド、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッドのアルカリ金属塩(Li,Na,K)塩、N,N'−ジサリチリデン−エチレンジアミン、N,N'−ジサリチリデン−1,2−プロピレンジアミン、N,N”−ジサリチリデン−N'−メチル−ジプロピレントリアミン、3−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0069】
ヒドラジン誘導体系化合物の具体例としては、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N'−サリチロイルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N−ホルミル−N'−サリチロイルヒドラジン、2,2−オキザミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ハイドロオキシフェニル)プロピオネート]、オギザリル−ビス(ベンジリデン)ヒドラジド、ニッケル−ビス(1−フェニル−3−メチル−4−デカノイル−5−ピラゾレート)、2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、5−tert−ブチル−2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、N,N−ジエチル−N',N'−ジフェニルオキサミド、N,N'−ジエチル−N,N'−ジフェニルオキサミド、オキサリックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、チオジプロピオニックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、ビス(サリシロイルヒドラジン)、N−サリシリデン−N'−サリシロイルヒドラゾン、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N'−ビス{2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}オキサミドが挙げられる。
【0070】
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。
【0071】
ホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス[2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,6−ヘキサメチレン−ビス(N−ヒドロキシエチル−N−メチルセミカルバジド)ジホスファイト、テトラキス[2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレンジカルボン酸ジヒドロキシエチルカルボニルヒドラジドジホスファイト、テトラキス[2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドジホスファイト、テトラキス[2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジドジホスァイト、テトラキス[2−tert−ブチル−4−チオ(2'−メチル−4'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−N,N'−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミドジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6―tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。
【0072】
特に、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているホスファイト系化合物が好ましい。その具体例としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)が挙げられる。中でも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0073】
ホスファイト系化合物の市販品の商品名としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブC、PEP−4C、PEP−8、PEP−11C、PEP−24G、PEP−36、HP−10、2112、260、522A、329A、1178、1500、C、135A、3010、TPP、チバスペシャリティケミカル製のイルガフォス168、住友化学製のスミライザーP−16、クラリアント製のサンドスタブPEPQ、GE製のウエストン618、619G、624が挙げられる。
【0074】
ホスフェート系化合物の具体例としては、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルホスフェートが挙げられる。中でも、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートが好ましい。ホスフェート系化合物の市販品の商品名としては、例えば、チバスペシャリティケミカル製のイルガノックスMD1024、イーストマン・コダック製のインヒビターOABH、ADEKA製のアデカスタブCDA−1、CDA−6、AX−71が挙げられる。
【0075】
以上の安定剤のうち、特に、リン系化合物を少なくとも1種含む安定剤が好ましく、ホスフェート系化合物やホスファイト系化合物を含む安定剤がより好ましい。特に好ましいリン系化合物の市販品としては、ADEKA製のアデカスタブAX−71(ジオクタデシルホスフェート)、PEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、PEP−36(サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)が挙げられる。リン系化合物はポリエステルの調製に用いる触媒の失活剤として作用すると考えられ、本発明の組成物の触媒失活剤として有効である。
【0076】
本発明の高分子化合物に対しては、必要に応じて、上述した安定剤以外の成分を本発明の目的を損なわない範囲内で添加又は混合することもできる。その成分としては、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類及びこれらの置換体等)、滑剤、離型剤(モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ポリエチレンワックス等)、染料(ニグロシン等)、顔料(酸化チタン、硫化カドミウム、フタロシアニン等)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩等)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミン及びシアヌール酸又はその塩等)、導電又は着色剤(酸化チタン、カーボンブラック等)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂等)、結晶核剤(タルク等の無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミド及びトリメシン酸トリシクロヘキシルアミド等の有機アミド系化合物、銅フタロシアニン及びピグメントイエロー110等の顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛等)、帯電防止剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を添加すできる。
【0077】
本発明の高分子化合物に対しては、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲内で他の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を配合できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体等)が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。その配合量は本発明の目的を損なわない範囲内であれば良く、特に限定されないが、本発明の高分子化合物100質量部に対して0〜50質量部が好ましい。
【0078】
以上説明した本発明の高分子化合物及び他の成分を含んでなる組成物を成形することにより、本発明の成形体が得られる。その成形方法は特に制限されない。例えば、射出成型、押出成型、インフレーション成型、押出中空成型、発泡成型、カレンダー成型、ブロー成型、バルーン成型、プレス成型、キャスト成型、真空成型および紡糸等の成型加工法を用いることができる。中でも、射出成型、押出成型、プレス成型、キャスト成型および紡糸が好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は以下の通りである。
【0080】
(1)重量平均分子量(Mw):
サンプルを、クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(容積比1:1)に溶解した後、クロロホルムで希釈して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー[Waters社製GPCシステム:検出器=RI、Waters社製2414、カラム=Shodex社製、LF−G、LF−804(カラム温度40℃、流速1ml/min、クロロホルム溶媒)]により、ポリスチレン標準サンプルを基準として重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0081】
(2)熱物性:
熱物性は、示差走査熱量計(島津製作所製DSC:DSC−60)を用いて測定した。具体的には、まず試料5mgをアルミニウム製クリンプセルに入れサンプルを調製した。このサンプルを、予め25℃に設定したDSC測定部に装入し、窒素気流下、10℃/minの昇温速度で280℃まで昇温した。その後、同温度で2分間保持し、10℃/minで0℃まで冷却し、0℃で2分間保持し、再び10℃/minで280℃まで昇温した。2回目の昇温時の結晶融解時のピークトップを融点(Tm)とした。また、2回目の昇温時に観測されたガラス転移点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0082】
<製造例1:高分子化合物用モノマーA−1の製造>
200mlのセパラブルフラスコに、クロロベンゼン45.6g(405mmol)および無水塩化アルミニウム28.3g(212mmol)を装入し、氷水浴にて内温5℃に冷却した。その後、アジピン酸ジクロライド18.3g(100mmol)を30分かけて滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、同温度で40分攪拌し、その後、反応混合物を60℃に加熱して2時間加熱攪拌を行った。反応混合物を室温まで冷却し、氷100g、水160gおよび濃塩酸6mlよりなる混合物に排出し、攪拌して懸濁液を得た。懸濁液をろ過して反応生成物を分離し、この反応生成物をメタノール200mlでスラッジして洗浄し、ろ別した。得られた反応生成物をメチルセロソルブ250gにて再結晶し、高分子化合物用モノマーA−1を無色結晶として24.9g得た。この化合物のHPLC純度は99.2面積%であり、DSCで測定した融点は178.6℃であった。
【0083】
この高分子化合物用モノマーA−1は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数4の直鎖アルキレン基、X
1およびX
2=塩素原子の場合の一般式(1')で表されるモノマーに相当する。なお、この構造は
1H−NMRによって確認した(以下の各製造例も同様)。
1H−NMR(CDCl
3、TMS):δ=1.68(t、4H)、2.96(t、4H)、7.45(d、4H)、7.91(d、4H)。
【0084】
<製造例2:高分子化合物用モノマーA−2の製造>
製造例1において、アジピン酸ジクロライド18.3g(100mmol)の代わりにスベリン酸ジクロライド21.1g(100mmol)を使用し、再結晶に用いるメチルセロソルブの量を92gに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作に従い高分子化合物用モノマーA−2を無色結晶として34.2g得た、この化合物のHPLC純度は99.0面積%であり、DSCで測定した融点は148.8℃であった。
【0085】
この高分子化合物用モノマーA−2は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数6の直鎖アルキレン基、X
1およびX
2=塩素原子の場合の一般式(1')で表されるモノマーに相当する。
【0086】
<製造例3:高分子化合物用モノマーA−3の製造>
製造例1において、アジピン酸ジクロライド18.3g(100mmol)の代わりにアゼライン酸ジクロライド22.5g(100mmol)を使用し、再結晶に用いるメチルセロソルブの量を102gに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作に従い高分子化合物用モノマーA−3を無色結晶として33.5g得た。この化合物のHPLC純度は99.7面積%であり、DSCで測定した融点は111.3℃であった。
【0087】
この高分子化合物用モノマーA−3は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数7の直鎖アルキレン基、X
1およびX
2=塩素原子の場合の一般式(1')で表されるモノマーに相当する。
【0088】
<製造例4:高分子化合物用モノマーA−4の製造>
製造例1において、アジピン酸ジクロライド18.3g(100mmol)の代わりにセバシン酸ジクロライド22.5g(100mmol)を使用し、再結晶に用いるメチルセロソルブの量を122gに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作に従い高分子化合物用モノマーA−4を無色結晶として35.9g得た。この化合物のHPLC純度は99.1面積%であり、DSCで測定した融点は132.5℃であった。
【0089】
この高分子化合物用モノマーA−4は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数8の直鎖アルキレン基、X
1およびX
2=塩素原子の場合の一般式(1')で表されるモノマーに相当する。
【0090】
<製造例5:高分子化合物用モノマーA−5の製造>
製造例1において、アジピン酸ジクロライド18.3g(100mmol)の代わりにドデカン二酸ジクロライド26.7g(100mmol)を使用し、再結晶に用いるメチルセロソルブの量を128gに変更したこと以外は、製造例1と同様の操作に従い高分子化合物用モノマーA−5を無色結晶として36.3g得た。この化合物のHPLC純度は99.7面積%であり、DSCで測定した融点は127.2℃であった。
【0091】
この高分子化合物用モノマーA−5は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数10の直鎖アルキレン基、X
1およびX
2=塩素原子の場合の一般式(1')で表されるモノマーに相当する。
【0092】
<実施例1:高分子化合物1−1の製造>
セプタムキャップを取り付けた100ml丸底フラスコに磁力誘導攪拌方式の攪拌羽を取り付け、窒素置換したグローブボックス中で、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン3.75g(15mmol)、トリフェニルホスフィン2.7g(10mmol)、ヨウ化ナトリウム0.56g、亜鉛粉末4.3gを秤量した。また、別のセプタムキャップ付の30mlフラスコに窒素置換したグローブボックス中で、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル0.53g(0.8mmol)を秤量した。
【0093】
それぞれのフラスコを大気下に出した後、100ml丸底フラスコに脱水したN,N−ジメチルアセトアミド25mlおよび30mlフラスコに脱水したN,N−ジメチルアセトアミド5mlをそれぞれシリンジを用いてセプタムキャップから窒素下で添加した。N,N−ジメチルアセトアミド添加後の100mlの丸底フラスコを超音波で5分間処理した後、70℃に加熱して30分間加熱攪拌した。その後、30mlフラスコ中のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルのN,N−ジメチルアセトアミド溶液をシリンジを用いて100ml丸底フラスコのセプタムキャップから装入した。反応混合物は初期には緑灰色を呈し、発熱しながら増粘していった。加熱攪拌2時間後、反応混合物をメタノール250mlおよび濃塩酸15mlよりなる混合物に排出し、一晩攪拌を行い懸濁液を得た。その後、懸濁液から固形分をろ別し、得られた固形分をクロロホルムに溶解して純水にて洗浄した後、0.2μのPTFEフィルターにより加圧ろ過し、得られた溶液をアセトン200mlに排出して、高分子化合物1−1を得た。
【0094】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−1の重量平均分子量(Mw)は66000であり、DSC測定により、143℃付近にガラス転移に由来すると考えられるブロードなプロファイルの変化が観測された。
【0095】
この高分子化合物1−1はAr
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数4の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(25モル%)、および、Ar
3=フェニレン基、X=−CO−、R
1=フェニル基の場合の一般式(2)で表される構造単位(75モル%)からなる高分子化合物である。なお、モノマーA−1と2,5−ジクロロベンゾフェノンの反応により生成した化合物が上記の通りGPCによって高分子化合物であることが確認されたことからも、この高分子化合物1−1が上記構造からなることを理解できる(以下の各実施例も同様)。
【0096】
<実施例2:高分子化合物1−2の製造>
実施例1において、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)使用する代わりに、製造例2で得た高分子化合物用モノマーA−2を1.82g(5mmol)使用したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−2を得た。
【0097】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−2の重量平均分子量(Mw)は44000であり、DSC測定により、131℃付近にガラス転移に由来すると考えられるブロードなプロファイルの変化が観測された。
【0098】
この高分子化合物1−2は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数6の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(25モル%)、および、Ar
3=フェニレン基、X=−CO−、R
1=フェニル基の場合の一般式(2)で表される構造単位(75モル%)からなる高分子化合物である。
【0099】
<実施例3:高分子化合物1−3の製造>
実施例1において、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)使用する代わりに、製造例3で得た高分子化合物用モノマーA−3を1.90g(5mmol)使用したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−3を得た。
【0100】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−3の重量平均分子量(Mw)は65200であり、DSC測定により、102℃付近にガラス転移に由来すると考えられるブロードなプロファイルの変化が観測された。
【0101】
この高分子化合物1−3は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数7の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(25モル%)、および、Ar
3=フェニレン基、X=−CO−、R
1=フェニル基の場合の一般式(2)で表される構造単位(75モル%)からなる高分子化合物である。
【0102】
<実施例4:高分子化合物1−4の製造>
実施例1において、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)使用する代わりに、製造例4で得た高分子化合物用モノマーA−4を1.96g(5mmol)使用したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−4を得た。
【0103】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−4の重量平均分子量(Mw)は87000であり、DSC測定により、132℃付近に、ガラス転移に由来すると考えられるブロードなプロファイルの変化が観測された。
【0104】
この高分子化合物1−4は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数8の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(25モル%)、および、Ar
3=フェニレン基、X=−CO−、R
1=フェニル基の場合の一般式(2)で表される構造単位(75モル%)からなる高分子化合物である。
【0105】
<実施例5:高分子化合物1−5の製造>
実施例1において、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)使用する代わりに、製造例5で得た高分子化合物用モノマーA−5を1.96g(5mmol)使用したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−5を得た。
【0106】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−5の重量平均分子量(Mw)は94000であり、DSC測定により、127℃付近に、ガラス転移に由来すると考えられるブロードなプロファイルの変化が観測された。
【0107】
この高分子化合物1−5は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数10の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(25モル%)、および、Ar
3=フェニレン基、X=−CO−、R
1=フェニル基の場合の一般式(2)で表される構造単位(75モル%)からなる高分子化合物である。
【0108】
<
参考例1:高分子化合物1−6の製造>
実施例1において、2,5−ジクロロベンゾフェノン3.75g(15mmol)は使用せず、その代わりに製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1の量を6.7g(20mmol)に増やし、反応終了後、メタノール250mlおよび濃塩酸15mlよりなる混合物に排出した固形分をそのまま乾燥したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−6を得た。
【0109】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−6の重量平均分子量(Mw)は12000であり、DSCで測定した融点は222℃であった。
【0110】
この高分子化合物1−6は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数4の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(100モル%)からなる高分子化合物である。
【0111】
<
参考例2:高分子化合物1−7の製造>
実施例1において、2,5−ジクロロベンゾフェノン3.75g(15mmol)は使用せず、また製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)使用する代わりに、製造例5で得た高分子化合物用モノマーA−5を8.3g(20mmol)を使用し、反応終了後、メタノール250mlおよび濃塩酸15mlよりなる混合物に排出した固形分をそのまま乾燥したこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物1−7を得た。
【0112】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物1−6の重量平均分子量(Mw)は14000であり、DSCで測定した融点は179℃であった。
【0113】
この高分子化合物1−7は、Ar
1およびAr
2=フェニレン基、Y=炭素原子数10の直鎖アルキレン基の場合の一般式(1)で表される構造単位(100モル%)からなる高分子化合物である。
【0114】
<比較例1:高分子化合物(ポリフェニレン)の製造>
実施例1において、製造例1で得た高分子化合物用モノマーA−1を1.69g(5mmol)は使用せず、その代わりに2,5−ジクロロベンゾフェノンの量を5.05g(20mmol)に増やしたこと以外は、実施例1と同様の操作に従い高分子化合物(ポリフェニレン)を得た。
【0115】
GPCによる分子量測定の結果この高分子化合物(ポリフェニレン)の重量平均分子量(Mw)は110000であり、DSCで測定したTgは161℃であった。
【0116】
<プレスシートの作製>
実施例1〜5および比較例1で得た高分子化合物をそれぞれTgよりも20℃高い温度で真空プレスし、500μmの厚みの透明なプレスシートを得た。プレスシートの屈折率をプリズムカプラーにて633nmの測定波長で測定した結果、下記の表1の値を得た。なお、実施例5で得た高分子化合物に関しては、屈折率を検出できなかった。
【0117】
【表1】
【0118】
<キャストフィルムの作製>
実施例1〜5および比較例1で得た高分子化合物をそれぞれ0.5g秤量し、3gのN,N−ジメチルホルムアミドに150℃で加熱溶解し、冷却することなく800μmの厚みのスペースを有するアプリケーターでガラス基板にキャストした。その後、100℃のオーブンで20分間乾燥し、ガラス基板からキャストフィルムを引き剥がし、透明なキャストフィルムを得た。
【0119】
<キャストフィルムの延伸>
上記のキャストフィルムのうち、実施例4、実施例5および比較例1のキャストフィルムを10mm×30mmに切り出し、延伸機により下記表2に記載の延伸温度で延伸を試みた。実施例4および5の高分子化合物のキャストフィルムは、2倍延伸が可能であった。一方、比較例1の高分子化合物のキャストフィルムは、延伸開始時にただちに破断してしまった。
【0120】
【表2】