特許第6017410号(P6017410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017410
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】高精度恒温システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20161020BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20161020BHJP
   F24F 11/053 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F24F5/00 Z
   F24F11/02 103B
   F24F11/053 F
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-270595(P2013-270595)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124953(P2015-124953A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399005482
【氏名又は名称】水野 善郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180208
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 洋
(72)【発明者】
【氏名】水野 善郎
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−158239(JP,A)
【文献】 特開2009−156525(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138761(WO,A1)
【文献】 特開2001−099813(JP,A)
【文献】 特開平07−120044(JP,A)
【文献】 特開2006−275713(JP,A)
【文献】 米国特許第05216224(US,A)
【文献】 米国特許第05542262(US,A)
【文献】 特開平08−219630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 11/02
F24F 11/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)空調がされた1次空間を有する1次恒温槽と、
(b)前記1次空間の内部に配置され、前記1次空間との間に断熱層を設けられ2次空間を有する2次恒温槽と、
(c)前記2次空間に配置された、互いに送風出力と送風方向が異なる複数のファンと、
(d)前記2次恒温槽に設けられた、前記1次空間と前記2次空間の間の空気循環を起こさせる循環手段と、
を含み、前記2次空間内の温度分布を均一化するように温度制御することを特徴とする恒温システム。
【請求項2】
前記ファンの少なくとも1つは、時系列で、ランダムに、送風出力と送風方向から選ばれる少なくとも1つを変化させる送風制御手段を備え、カオス的な乱流が生じるように制御することを特徴とする請求項1に記載の恒温システム。
【請求項3】
前記循環手段は、前記1次空間と2次空間の間に設けられた開口部又は循環用ファンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の恒温システム。
【請求項4】
前記ファンの少なくとも1つは、時系列で、ランダムに、送風出力と送風方向から選ばれる少なくとも1つを変化させる送風制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の恒温システム。
【請求項5】
前記開口部は、時系列で、ランダムに開口面積を変化させる開口制御手段を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の恒温システム。
【請求項6】
前記循環手段は、時系列で、ランダムに、前記1次空間と前記2次空間との間の空気循環量を変化させる循環量制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の恒温システム。
【請求項7】
前記2次空間の中に3次空間を有する3次恒温槽というように、低位次数の空間の中に高位次数の空間を有する高次数恒温槽を設け、1次空間を有する1次恒温槽からN次空間を有するN次恒温槽まで備え、低次数恒温槽と一次数高い恒温槽との関係を前記1次恒温槽と前記2次恒温槽との関係と同様にすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の恒温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温システムに関し、特に恒温槽内の空間の温度を、高い精度で均一に保つ高精度恒温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
恒温槽内の空間の温度を均一にする技術としては、恒温槽内にファンを導入し、恒温槽内の空間の空気を撹拌する技術が知られている。しかしながら、外気や恒温槽の壁面など様々なルートで熱伝達が発生していることにより、恒温槽内の温度の均一は十分なものではなかった。
そのため、恒温槽を扱う技術者は、恒温槽内の位置によって、温度的特性が違いがあることを理解した上で、その恒温槽を利用する必要があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1には、恒温槽内の空間にカオス的混合を生成させることにより温度が均一化することに注目して、電磁撹拌を使用する方法及び装置が記載されている。特許文献1に係る技術は、ランダム及び不規則バターンで撹拌バーを動かすことにより乱流およびカオス的混合力学を発生するように制御する、というものである。
しかしながら、外気や恒温槽の壁面などからの熱伝達による局部的熱伝達を直接防ぐものではないため、このような熱伝達が多いときは、温度の均一化には限界がある。
【特許文献1】特表2005−536330号公報
【0004】
特許文献2において、恒温室を囲う空調室が記載されている。恒温室内においては、側面から速度Vaで恒温空気Aを吹き出し、速度Vbで恒温空気Bを吹き出す吹き出しユニットを備える。VbとVaとの関係は、大きさについてVbがVaより大きく、方向について同一である。
特許文献2の技術では、吹き出しユニットと対面するターゲット空間についてのランダムでカオス的な空気混合は実現されるが、恒温室内の空気混合には、偏りが生じることになる。
【特許文献2】特開特開2007−85607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、外部からの熱伝達による温度の偏りを減少させることと、恒温槽内の空間におけるランダムでカオス的混合を発生させることにより、高いレベルで均一な温度分布を可能とする恒温システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するため、第一の観点によれば、
(a)空調がされた1次空間を有する1次恒温槽と、
(b)前記1次空間の内部に配置され、前記1次空間との間に断熱層を設けられ2次空間を有する2次恒温槽と、
(c)前記2次空間に配置された、互いに送風出力と送風方向が異なる複数のファンと、
(d)前記2次恒温槽に設けられた、前記1次空間と前記2次空間の間の空気循環を起こさせる循環手段と、
を含み、前記2次空間内の温度分布を均一化するように温度制御することを特徴とする恒温システムが提供される。
ここで空調とは、生産、校正、管理、貯蔵といった物品を扱う上での産業目的で、空間の空気の温度や湿度、清浄度、気流などを調整することである。
【0007】
2次空間内に設置する複数ファンの少なくとも1つは、時系列で、ランダムに、送風出力と送風方向から選ばれる少なくとも1つを変化させる送風制御手段を備え、カオティックな乱流が生じるように制御してもよい。
【0008】
循環手段は、1次空間と2次空間の間に設けられた開口部又は循環用ファンであってもよい。
【0009】
2次空間内に設置する複数ファンの少なくとも1つは、時系列で、ランダムに、送風出力と送風方向から選ばれる少なくとも1つを変化させる送風制御手段を備えてもよい。
【0010】
1次空間と2次空間の間に設けられた開口部は、時系列で、ランダムに面積を変化させる開口制御手段を備えてもよい。
【0011】
1次空間と前記2次空間の間の空気循環を起こさせる循環手段は、時系列で、ランダムに、1次空間と2次空間との間の空気循環量を変化させる循環量制御手段を備えてもよい。
【0012】
2次空間の中に3次空間を有する3次恒温槽というように、低位次数の空間の中に高位次数の空間を有する高次数恒温槽を設け、1次空間を有する1次恒温槽からN次空間を有するN次恒温槽まで備える構成としてもよい。
この場合、低次数恒温槽と一次数高い恒温槽との関係を1次恒温槽と2次恒温槽との関係と同様にする。例えば、{m|3以上N以下の自然数}として、(m−1)次空間を有する(m−1)次恒温槽の中に、m次空間を有するm次恒温槽が配置される。そして、それぞれの空間に互いに送風出力と送風方向が異なる複数のファンが配置される。さらに、m次恒温槽には、(m−1)次空間とm次空間との間に空気循環を起こさせる循環手段が設けられる、というような構成にしてもよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1の恒温システムの構成を示すイメージ図である。
図2図2は、2次恒温槽1002の透視図と断面図である。
図3図3は、開口部の変形例を示した図である。
図4図4は、実施例2で採用される2次恒温槽の断面図である。
図5図5は、実施例3の2次恒温槽と3次恒温槽を示した断面図である
図6図6は、(m−1)次恒温槽からN次恒温槽までの入れ子構造を示したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体例につき図面を用いた実施例において説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1の恒温システムの構成を示すイメージ図である。1次空間K1を有する1次恒温槽1001、スリット状の開口部を有する断熱層で覆われた2次恒温槽1002、1次空間を空調する空調機1003、2次恒温槽に設けられた開口部1004という構成である。 ここでは、奥に隠れた一面も含めて、側面の内3面に開口部を設けるものとする。1次空間と2次空間との間の熱伝達の大部分は、開口部1004を通しての両空間内の気体が循環によって行われる。この循環によって、2つの空間の熱分布を均一する効果がある。
【0016】
(2次恒温槽)図2は、2次恒温槽1002の透視図(上)と断面図(下)である。上の透視図において示したを断面Aで切った、矢印Bからの視線で観察した断面を示したものが下の断面図である。断熱層2001が2次空間K2を覆い、天井面に第一ファン2002、一方の側面に第二ファン2003が設けられている。他方の側面のスリット状の開口部は、図1でも示した開口部1004である。奥面に設けられたスリット状の開口部2004は、図1では、隠れていた奥壁面の3つ目の開口部である。
【0017】
断熱層2001により、1次空間と2次空間との間の熱交換は、限定される。この限定により、1次空間に発生した温度の偏りが、直接に2次空間に伝わるのを和らげる熱的ダンピング効果がもたらされる。
【0018】
第一ファン2002と第二ファン2003とは、カオス的風を生じさせる効果のため、風量も風方向も異なるように設定されいる。また、ファンの回転アクチュエータにおいて、時系列でランダムにカオス的回転をするように設けられている。これにより、時系列で固定した風量と風方向に設定しただけの複数ファンよりも、ランダムにカオス的な風を発生させる作用が高まる。そして、2次空間内部の空気循環は、時系列でランダムにカオス的なものになり、2次空間の空気を均一に混合する作用がある。これにより、2次空間の熱分布を均一する効果がある。
ここで示したファンの数及びそれぞれのファンの大きさや方向は、本発明の一例に過ぎず、適宜変更可能である。
さらに、いずれか或いは両方のファンに方向を変化させるする方向アクチュエータを設け、時系列でランダムにカオス的方向変更をするように設けられていれば、時系列でランダムにカオス的な風を発生させる作用がさらに高まる。
【0019】
(空調機)
図1の戻って、空調機1003は、ユーザによる温度設定に従って、1次空間K1の空気を加熱もしくは冷却する。温度設定は、特に図示しない空調機の制御部又はリモコンによる操作等による。
【0020】
(開口部の変形例)
1次空間と2次空間との空気循環によって、2つの空間の熱分布を均一するのであるが、この空気循環は、開口面積によって変化させることができる。
図3は、開口部の変形例を示した図であり、開口面積を変化させる機能を備えたものである。上図は、1004の正面図である。下図は上図のCで示した視線で観察した側面図である。
スリット状の開口部1004は、可動式シャッター3001の上下動によって、開口面積が変化する。3002は、シャッターを上下動させるアクチュエータである。
アクチュエータは、時系列でランダムにカオス的な上下動作をするように設けられている。
このような上下動作による開口面積の変化で、1次空間と2次空間との間の空気循環は、時系列でランダムにカオス的なものになり、2つの空間の空気を均一に混合する作用が高まる。そして、2つの空間の温度を均一化させる効果が高まる。
【0021】
ここで示す空調機、ファン、開口部等の動作、機能等は、予め組み込まれたファームウエア等の動作プログラムをコントロール回路等のプロセッサーで実行することにより実現される。なお、上記時系列でランダムにカオス的な動作は、既知の乱数発生器や疑似ランダム関数を利用した回路等を備え、生成されるランダム数を参照することによって実現される。また、これらのプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該プロセッサーによって記録媒体から読み出され、ユーザが操作することによって実行される。
【0022】
以上のようなシステム構成により、2次空間K2内における高いレベルでの均一な温度分布を実現することが可能になる。
【実施例2】
【0023】
実施例2は、実施例1における開口部の代わりに循環用ファンを備えた構成のシステムである。実施例1と同様な部分は極力省略して、異なる部分を中心に説明する。
【0024】
図4は、実施例2で採用される2次恒温槽の断面図である。切断面や視線の設定は、図2の断面Aと矢印Bと同様である。
2次恒温槽4000において、断熱層の一部には、図1図2で示したような開口部1004の代わりに循環用ファン4001が設けられている。
【0025】
1次空間と2次空間との間の熱伝達の大部分は、循環用ファン6001の動作による両空間内の気体の循環によって行われる。循環用ファン6001のアクチュエータは、実施例1と同様に、時系列でランダムにカオス的回転をするように設けられている。
このような回転動作により、1次空間と2次空間との間の空気循環は、時系列でランダムにカオス的なものになり、2つの空間の空気を均一に混合する作用がある。これにより、2つの空間の熱分布を均一する効果がある。
【実施例3】
【0026】
実施例3は、実施例1や実施例2における2次空間の内部に3次恒温槽を設けた構成のシステムである。実施例1や実施例2と同様な部分は極力省略して、異なる部分を中心に説明する。
【0027】
図5は、実施例3の2次恒温槽と3次恒温槽を示した断面図である。切断面や視線の設定は、図2の断面Aと矢印Bに準じて設定したものである。2次恒温槽5001の2次空間K2に3次恒温槽5002が設けてある。
これにより、2次恒温槽の断熱層とさらに内側の3次恒温槽の断熱層により、2次恒温槽の外側の1次空間と3次空間K3との間の熱交換は、より一層限定される。この限定により、1次空間に発生した温度の偏りが、入れ子構造の奥にある3次空間K3に伝わるのを和らげる熱的ダンピング効果がさらに強化される。
【0028】
本発明の入れ子構造は、本実施例の3次恒温槽までのものに限定されるものではない。Nを3以上の自然数として、1次からN次までの恒温槽を有する構成も採用可能である。
図9は、mを3以上N以下の自然数として、
(m−1)次恒温槽、m次恒温槽、(m+1)次恒温槽、・・・N次恒温槽までの入れ子構造を示したイメージ図である。
【0029】
1次空間に発生した温度の偏りが、入れ子構造の奥にあるN次空間に伝わるのを和らげる熱的ダンピング効果がさらに一層強化される。
【0030】
上記のように本発明は、実施例1から3によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものと理解すべきではない。この開示から当業者には、様々な代替実施例が明らかになるであろう。実施例3における3次以上の恒温槽において、実施例1に開示した2次恒温槽の構造と実施例2で開示した2次恒温槽の構造とを組み合わせることなども可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、温度について精密な精度管理が要求される業界は、食品業界、医薬業界、あるいは精密機械業界など広い分野に渡っている。どの業界においても、本発明の高精度恒温システムを適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1001 1次恒温槽
1002 2次恒温槽
1003 空調機
1004 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6