(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電磁気波を放出する素子に使用され、広帯域の電磁気波を吸収することができる広帯域電磁気波吸収体を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、電磁気波を放出する素子に使用され、広帯域の電磁気波を吸収することができる広帯域電磁気波吸収体を容易に製造することができる広帯域電磁気波吸収体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、磁性粒子がポリマー樹脂に分散した構造を有する磁性複合体と、前記磁性複合体内に配列された複数の伝導性ラインとを含む広帯域電磁気波吸収体を提供する。
【0009】
前記伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列された伝導性ラインを含むことができる。前記伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインを含むことができる。前記信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有することができる。
【0010】
また、前記伝導性ラインは、第1方向に配列された複数の伝導性ラインと、第2方向に配列された複数の伝導性ラインとを含み、前記第1方向に配列された伝導性ラインと前記第2方向に配列された伝導性ラインは、格子型のグリッドを形成することができる。前記第1方向に配列された伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列された複数の伝導性ラインを含み、前記第2方向に配列された伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列された複数の伝導性ラインを含むことができる。前記第1方向に配列された伝導性ライン間の間隔と前記第2方向に配列された伝導性ライン間の間隔は、同一であることができる。前記第1方向に配列された伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列され、前記第2方向に配列された伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して垂直に配列されたものであることができる。前記信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有するものであることができる。
【0011】
前記伝導性ラインは、前記磁性複合体の上部と下部との間の中心部に位置するように配列されたものであることができる。
【0012】
前記伝導性ラインは、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金である磁性伝導体よりなるものであることができる。
【0013】
また、前記伝導性ラインは、金(Au)系、銀(Ag)系、銅(Cu)系、アルミニウム(Al)系、白金(Pt)系またはパラジウム(Pd)系金属または金属合金である非磁性伝導体よりなるものであることができる。
【0014】
また、前記伝導性ラインは、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体よりなるものであることができる。
【0015】
また、前記伝導性ラインは、酸化物系伝導体または伝導性ポリマーよりなるものであることができる。
【0016】
前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒であって、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金粒子であることができる。
【0017】
また、前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒子にチタニウム酸化物(Titanium oxide)、バリウム−チタニウム酸化物(Barium−Titanium oxide)及びストロンチウム−チタニウム酸化物(Strontium−Titanium oxide)の中から選択された1種以上の誘電体がコーティングされた粒子であることができる。
【0018】
また、前記磁性粒子は、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体に磁性体がコーティングされた粒子であることができる。
【0019】
前記磁性粒子は、角形比が1〜1000範囲の球(sphere)形状、板(plate) 形状、フレーク(flake)形状、棒(rod)形状またはワイヤ(wire)形状粒子を含むことができる。
【0020】
また、前記磁性粒子は、ホロウ(hollow)構造の球(sphere)形状、チューブ(tube)形状、ワイヤ(wire)形状またはフレーク(flake)形状粒子を含むことができる。
【0021】
また、前記磁性粒子は、球形状粒子、板(plate)形状粒子、フレーク(flake)形状粒子、棒(rod)形状粒子、ワイヤ(wire)形状粒子、ホロウ(hollow)構造の球形状(sphere)粒子、ホロウ(hollow)構造のチューブ(tube)形状粒子、ホロウ(hollow)構造のワイヤ(wire)形状粒子及びホロウ(hollow)構造のフレーク(flake)形状粒子の中から選択された2種以上の粒子を含むことができる。
【0022】
前記磁性粒子は、異なる共鳴周波数を有する複数の磁性粒子よりなるものであることができる。
【0023】
炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体が前記ポリマー樹脂に分散していてもよく、前記炭素系伝導体は、前記磁性複合体に対して0.01〜70重量%含有されることが好ましい。
【0024】
前記ポリマー樹脂は、熱可塑性または熱硬化性樹脂を含むことができる。
【0025】
広帯域電磁気波吸収体は、前記磁性粒子のサイズと形状が調節され、磁性複合体の共鳴周波数が定められ、前記共鳴周波数と同一であるか、または高い周波数帯域で電磁気波の吸収が起きる。
【0026】
前記磁性粒子は、フェライト系酸化物を含むことができる。
【0027】
前記フェライト系酸化物は、スピネルフェライト(spinnel ferrite)または、六方晶フェライト(hexagonal ferrite)よりなることができる。
【0028】
前記スピネルフェライトは、Ni−Znフェライト、Mn−ZnフェライトまたはCu−Znフェライトよりなるスピネル構造のフェライトよりなり、前記六方晶フェライトは、バリウム(Ba)フェライトまたはストロンチウム(Sr)フェライトよりなる六方晶構造のフェライトよりなることができる。
【0029】
また、本発明は、磁性粒子をポリマー樹脂に分散させた磁性複合体を形成する段階と、前記磁性複合体内に複数の伝導性ラインを配置する段階とを含む広帯域電磁気波吸収体の製造方法を提供する。
【0030】
前記広帯域電磁気波吸収体の製造方法は、前記伝導性ラインの上部に磁性粒子がポリマー樹脂に分散した磁性複合体を覆って圧着する段階をさらに含むことができる。
【0031】
前記伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列することが好ましい。前記伝導性ラインは電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列することが好ましい。前記伝導性ラインの線幅が前記信号線の線幅と同一の線幅を有するように調節することが好ましい。
【0032】
前記伝導性ラインを配置する段階は、第1方向に複数の伝導性ラインを配列し、第2方向に複数の伝導性ラインを配列する段階を含むことができ、前記第1方向に配列された伝導性ラインと前記第2方向に配列された伝導性ラインは、格子型のグリッドを形成することができる。前記第1方向に配列される伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列し、前記第2方向に配列される伝導性ラインも、一定の間隔で周期的に配列することが好ましい。前記第1方向に配列される伝導性ライン間の間隔と前記第2方向に配列される伝導性ライン間の間隔を同一に調節することが好ましい。前記第1方向に配列される伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列し、前記第2方向に配列される伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して垂直に配列することが好ましい。前記信号線に対して平行に配列される複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有するように調節することが好ましい。
【0033】
前記伝導性ラインは、前記磁性複合体の上部と下部との間の中心部に位置するように配列することが好ましい。
【0034】
磁性粒子をポリマー樹脂に分散させた磁性複合体を形成する段階は、ポリマー樹脂を溶媒に分散させる段階と、前記ポリマー樹脂が分散した溶媒に磁性粒子を分散させてスラリーを形成する段階と、前記スラリーをキュア(curing)し、磁性複合体を形成する段階とを含むことができる。
【0035】
前記広帯域電磁気波吸収体の製造方法は、前記スラリーをキュアする前に、前記スラリーを真空容器に収納し、真空を加えて脱泡する段階をさらに含むことができる。
【0036】
前記磁性粒子は、フェライト系酸化物を含むことができる。
前記フェライト系酸化物は、スピネルフェライト(spinnel ferrite)または六方晶フェライト(hexagonal ferrite)よりなることができる。
【0037】
前記スピネルフェライトは、Ni−Znフェライト、Mn−ZnフェライトまたはCu−Znフェライトよりなるスピネル構造のフェライトよりなり、前記六方晶フェライトは、バリウム(Ba)フェライトまたはストロンチウム(Sr)フェライトよりなる六方晶構造のフェライトよりなることができる。
【0038】
前記伝導性ラインは、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金である磁性伝導体よりなることができる。
【0039】
前記伝導性ラインは、金(Au)系、銀(Ag)系、銅(Cu)系、アルミニウム(Al)系、白金(Pt)系またはパラジウム(Pd)系金属または金属合金である非磁性伝導体よりなることができる。
【0040】
前記伝導性ラインは、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体よりなることができる。
【0041】
前記伝導性ラインは、酸化物系伝導体または伝導性ポリマーよりなることができる。
【0042】
前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒子であって、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金粒子であることができる。
【0043】
前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒子にチタニウム酸化物(Titanium oxide)、バリウム−チタニウム酸化物(Barium−Titanium oxide)及びストロンチウム−チタニウム酸化物(Strontium−Titanium oxide)の中から選択された1種以上の誘電体がコーティングされた粒子であることができる。
【0044】
前記磁性粒子は、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体に磁性体がコーティングされた粒子であることができる。
【0045】
前記磁性粒子は、角形比が1〜1000範囲の球(sphere)形状、板(plate)形状、フレーク(flake)形状、棒(rod)形状またはワイヤ(wire)形状粒子を含むことができる。
【0046】
前記磁性粒子は、ホロウ(hollow)構造の球(sphere)形状、ホロウ構造のチューブ(tube)形状、ホロウ構造のワイヤ(wire)形状またはホロウ構造のフレーク(flake)形状粒子を含むことができる。
【0047】
前記磁性粒子は、球形粒子、板(plate)形状粒子、フレーク(flake)形状粒子、棒(rod)形状粒子、ワイヤ(wire)形状粒子、ホロウ(hollow)構造の球(sphere)形状粒子、ホロウ(hollow)構造のチューブ(tube)形状粒子、ホロウ(hollow)構造のワイヤ(wire)形状粒子及びホロウ(hollow)構造のフレーク(flake)形状粒子の中から選択された2種以上の粒子を含むことができる。
【0048】
前記磁性粒子は、異なる共鳴周波数を有する複数の磁性粒子よりなることができる。
磁性粒子をポリマー樹脂に分散させるとき、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体を一緒に添加し、前記ポリマー樹脂に分散させ、前記炭素系伝導体は、前記磁性複合体100重量%に対して0.01〜70重量%含有されるように添加することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の広帯域電磁気波吸収体によれば、電磁気波を放出する素子に使用され、広帯域電磁気波を効果的に吸収することができる。
【0050】
本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出する素子の信号線の上部、下部または上部及び下部に配置され、電磁気波を効率的に吸収することができ、特に磁性複合体の共鳴周波数から数GHz範囲の広帯域電磁気波を遮蔽するのに使用されることができる。
【0051】
また、本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出するチップ(素子)をパッケージング(packaging)するためのパッケージ(package)として使用されることができる。
【0052】
また、本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出する素子である印刷回路基板の上部に配置され、回路線(または信号線)で発生するノイズなどのような電磁気波を遮蔽し、回路線(または信号線)間の干渉を抑制するのに使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の一例として製造した広帯域電磁気波吸収体の断面走査電子顕微鏡(scanning electron microscope)写真である。
【
図2】伝導性ノイズ測定のためのIEC標準62333−2マイクロストリップライン規格を示す図である。
【
図4】特性インピーダンス50Ωのマイクロストリップラインの規格を示す図である。
【
図5】典型的な強磁性体の複素透磁率を示すグラフである。
【
図6】評価に適用された透磁率の実数部を示すグラフである。
【
図7】評価に適用された透磁率の虚数部を示すグラフである。
【
図8】複素透磁率の実数部を変化させた場合、反射係数を示すグラフである。
【
図9】複素透磁率の実数部を変化させた場合、透過係数を示すグラフである。
【
図10】複素透磁率の実数部の変化による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図11】複素透磁率の虚数部の増加による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図12】複素透磁率の実数部と虚数部が同時に増加するとき、吸収能の変化を示すグラフである。
【
図13】複素誘電率実数部の増加による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図14】複素誘電率虚数部の増加による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図15】磁性複合体の幅変化による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図16】磁性複合体の長さ変化による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図17】磁性複合体の厚さ増加による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図18】磁性複合体の磁性粒子含有率による複素透磁率の変化を示すグラフである。
【
図19】磁性複合体の磁性粒子含有率による複素透磁率の変化を示すグラフである。
【
図20】磁性複合体の磁性粒子含有率による複素透磁率の変化を示すグラフである。
【
図21】磁性複合体の磁性粒子含有率による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図22】伝導性グリッドを挿入した グリッド複合体の構造を示す図である。
【
図23】周波数による反射係数の変化を示すグラフである。
【
図24】周波数による透過係数の変化を示すグラフである。
【
図25】周波数による吸収能の変化を示すグラフである。
【
図26】Cu空気グリッド(air−grid)の間隔による反射係数を示すグラフである。
【
図27】Cu空気グリッド(air−grid)の間隔による透過係数を示すグラフである。
【
図28】Cu空気グリッド(air−grid)の間隔による吸収能を示すグラフである。
【
図29】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による反射係数を示すグラフである。
【
図30】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による透過係数を示すグラフである。
【
図31】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による吸収能を示すグラフである。
【
図32】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による反射係数を示すグラフである。
【
図33】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による透過係数を示すグラフである。
【
図34】Cuグリッド複合体のグリッド間隔による吸収能を示すグラフである。
【
図35】マイクロストリップラインの信号線幅が2mmの場合、Cuグリッド複合体のグリッド間隔による反射係数を示すグラフである。
【
図36】マイクロストリップラインの信号線幅が2mmの場合、Cuグリッド複合体のグリッド間隔による透過係数を示すグラフである。
【
図37】マイクロストリップラインの信号線幅が2mmの場合、Cuグリッド複合体のグリッド間隔による吸収能を示すグラフである。
【
図38】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の長さが4mmの場合、幅の変化による反射係数を示すグラフである。
【
図39】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の長さが4mmの場合、幅の変化による透過係数を示すグラフである。
【
図40】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の長さが4mmの場合、幅の変化による吸収能を示すグラフである。
【
図41】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の幅が4mmの場合、長さの変化による反射係数を示すグラフである。
【
図42】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の幅が4mmの場合、長さの変化による透過係数を示すグラフである。
【
図43】Cuグリッド複合体のグリッド間隔の幅が4mmの場合、長さの変化による吸収能を示すグラフである。
【
図44】Cuグリッド複合体のグリッド線の厚さによる反射係数を示すグラフである。
【
図45】Cuグリッド複合体のグリッド線の厚さによる透過係数を示すグラフである。
【
図46】Cuグリッド複合体のグリッド線の厚さによる吸収能を示すグラフである。
【
図47】Cuグリッド複合体のグリッド位置(高さ)による反射係数を示すグラフである。
【
図48】Cuグリッド複合体のグリッド位置(高さ)による透過係数を示すグラフである。
【
図49】Cuグリッド複合体のグリッド位置(高さ)による吸収能を示すグラフである。
【
図50】Cuグリッド複合体のサイズ(幅)による反射係数を示すグラフである。
【
図51】Cuグリッド複合体のサイズ(幅)による透過係数を示すグラフである。
【
図52】Cuグリッド複合体のサイズ(幅)による吸収能を示すグラフである。
【
図53】グリッド複合体のグリッド電気伝導度による反射係数を示すグラフである。
【
図54】グリッド複合体のグリッド電気伝導度による透過係数を示すグラフである。
【
図55】グリッド複合体のグリッド電気伝導度による吸収能を示すグラフである。
【
図56】グリッドの材質(Cu、Ni)による反射係数を示すグラフである。
【
図57】グリッドの材質(Cu、Ni)による透過係数を示すグラフである。
【
図58】グリッドの材質(Cu、Ni)による吸収能を示すグラフである。
【
図59】グリッドの材質(Cu、Ni)と周波数による磁性体薄膜の上部表面で磁場(H−field)強さを示す図である。
【
図60】Cuグリッド複合体の厚さによる反射係数を示すグラフである。
【
図61】Cuグリッド複合体の厚さによる透過係数を示すグラフである。
【
図62】Cuグリッド複合体の厚さによる吸収能を示すグラフである。
【
図63】共鳴周波数が0.5GHzである場合の周波数の変化による透磁率(permeability)の変化を示すグラフである。
【
図64】共鳴周波数が1GHzである場合の周波数の変化による透磁率の変化を示すグラフである。
【
図65】共鳴周波数が2.5GHzである場合の周波数の変化による透磁率の変化を示すグラフである。
【
図66】磁性体薄膜の共鳴周波数の変化による反射係数を示すグラフである。
【
図67】磁性体薄膜の共鳴周波数の変化による透過係数を示すグラフである。
【
図68】磁性体薄膜の共鳴周波数の変化による吸収能を示すグラフである。
【
図69】CuとNiグリッド複合体の共鳴周波数の変化による反射係数を示すグラフである。
【
図70】CuとNiグリッド複合体の共鳴周波数の変化による透過係数を示すグラフである。
【
図71】CuとNiグリッド複合体の共鳴周波数の変化による吸収能を示すグラフである。
【
図72】Cuグリッド複合体の磁性粒子含有率による反射係数を示すグラフである。
【
図73】Cuグリッド複合体の磁性粒子含有率による透過係数を示すグラフである。
【
図74】Cuグリッド複合体の磁性粒子含有率による吸収能を示すグラフである。
【
図75】Niグリッド複合体の磁性粒子含有率による反射係数を示すグラフである。
【
図76】Niグリッド複合体の磁性粒子含有率による透過係数を示すグラフである。
【
図77】Niグリッド複合体の磁性粒子含有率による吸収能を示すグラフである。
【
図78】鉄繊維(Fefiber)にチタニウム酸化物(Titanium oxide)がコーティングされた磁性粒子を示す透過電子顕微鏡写真である。
【
図79】炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)にニッケル(Ni)がコーティングされた磁性粒子を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図80】ホロウ(hollow)構造のNi−Fe繊維(Ni−Fe fiber)と炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)が複合化された複合体を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図81】磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体を示す走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)写真である。
【
図82】磁性粒子として平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体を示す走査電子顕微鏡写真である。
【
図83】磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体の吸収能を示すグラフである。
【
図84】磁性粒子として平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体の吸収能を示すグラフである。
【
図85】磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図86】平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図87】磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能を示すグラフである。
【
図88】平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能を示すグラフである。
【
図89】粒径が200nm以下のニッケル(Ni)−鉄(Fe)ナノ粉末を利用してシリコーンゴム(silicone rubber)に分散させて形成した磁性複合体と銅(Cu)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す写真である。
【
図90】粒径が200nm以下のニッケル(Ni)−鉄(Fe)ナノ粉末を利用してシリコーンゴム(silicone rubber)に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、磁性粒子がポリマー樹脂に分散した構造を有する磁性複合体及び前記磁性複合体内に配列された複数の伝導性ラインを含む広帯域電磁気波吸収体を提示する。
【0055】
また、本発明は、磁性粒子をポリマー樹脂に分散させた磁性複合体を形成する段階と、前記磁性複合体内に複数の伝導性ラインを配置する段階とを含む広帯域電磁気波吸収体の製造方法を提示する。
【0056】
以下、添付の図面を参照して本発明による好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、この技術分野における通常的な知識を有する者に本発明が充分に理解されるように提供されるものであって、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が次に記述される実施例に限定されるものではない。
【0057】
本発明は、磁性粒子がポリマー樹脂に分散した構造を有する磁性複合体及び前記磁性複合体内に配列された複数の伝導性ラインを含む広帯域電磁気波吸収体を提供する。
【0058】
前記伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインを含むことができる。前記信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と異なる線幅を有することもできるが、好ましくは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有することが電磁気波吸収効率の側面において好ましい。
【0059】
前記伝導性ラインは、周期的に配列された伝導性ラインよりなることができ、非周期的に配列された伝導性ラインよりなることもでき、伝導性ラインが周期的に配列されることが電磁気波吸収効率を調節する側面において好ましい。
【0060】
また、前記伝導性ラインは、
図22に示されたように、第1方向に配列された複数の伝導性ラインと、第2方向に配列された複数の伝導性ラインを含み、前記第1方向に配列された伝導性ラインと前記第2方向に配列された伝導性ラインは、格子型のグリッドを形成することができる。前記第1方向に配列された伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列された複数の伝導性ラインを含み、前記第2方向に配列された伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列された複数の伝導性ラインを含むことができる。前記第1方向に配列された伝導性ライン間の間隔と前記第2方向に配列された伝導性ライン間の間隔は異なることができるが、前記第1方向に配列された伝導性ライン間の間隔と前記第2方向に配列された伝導性ライン間の間隔を同一にすることが、電磁気波吸収効率を調節する側面において好ましい。前記第1方向に配列された伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列され、前記第2方向に配列された伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して垂直に配列されたものであることができる。前記信号線に対して平行に配列された複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と異なる線幅を有することもできるが、好ましくは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有することが電磁気波吸収効率側面において好ましい。第1方向に配列された伝導性ラインまたは第2方向に配列された伝導性ラインは、非周期的に配列された伝導性ラインよりなることもできるが、伝導性ラインが周期的に配列されることが電磁気波吸収効率側面において好ましい。
【0061】
前記伝導性ラインは、前記磁性複合体の上部と下部との間に位置し、好ましくは、磁性複合体の上部と下部との間の中心部に位置するように配列されたものであることができる。
【0062】
また、前記伝導性ラインは、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金である磁性伝導体よりなるものであることができる。
【0063】
また、前記伝導性ラインは、金属系伝導体、金属合金系伝導体、炭素系伝導体、酸化物系伝導体、伝導性ポリマーまたはこれらの混合物よりなるものであることができる。前記金属系伝導体は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)のような非磁性金属であることができる。前記金属合金系伝導体は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)のような金属を含む非磁性金属合金であることができる。前記炭素系伝導体は、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)、グラフェン(graphene)またはこれらの混合物などのように炭素(carbon)を含む伝導性物質であることができる。前記酸化物系伝導体は、CrO
2のような伝導性酸化物であることができる。
【0064】
前記磁性粒子は、磁性を有し、1nm〜50μm、好ましくは10nm〜20μmの粒子なら特に制限されない。
【0065】
前記磁性粒子は、フェライト系酸化物を含み、前記フェライト系酸化物は、スピネルフェライト(spinnel ferrite)または六方晶フェライト(hexagonal ferrite)であることができる。前記スピネルフェライトとしては、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Cu−Znフェライトなどのスピネル構造のフェライトを例示することができ、前記六方晶フェライトとしては、バリウム(Ba)フェライト、ストロンチウム(Sr)フェライトなどの六方晶構造のフェライトを例示することができる。
【0066】
また、前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒子であって、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金粒子であることができる。
【0067】
また、前記磁性粒子は、磁性を帯びる粒子にチタニウム酸化物(Titanium oxide)、バリウム−チタニウム酸化物(Barium−Titanium oxide)及びストロンチウム−チタニウム酸化物(Strontium−Titanium oxide)の中から選択された1種以上の誘電体がコーティングされた粒子であることができる。この際、誘電体のコーティング厚さは、磁性を帯びる粒子のサイズによって調節し、好ましくは、磁性を帯びる粒子のサイズなどを考慮して1nm〜1μmの厚さでコーティングする。
【0068】
また、前記磁性粒子は、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体に磁性体がコーティングされた粒子であることができる。前記磁性体は、鉄(Fe)系、コバルト(Co)系、ニッケル(Ni)系、モリブデン(Mo)系、マンガン(Mn)系またはネオジニウム(Nd)系金属または金属合金であることができる。この際、磁性体のコーティング厚さは、炭素系伝導体のサイズによって調節し、好ましくは、炭素系伝導体のサイズなどを考慮して50nm〜5μmの厚さでコーティングする。
【0069】
前記磁性粒子は、角形比が1〜1000範囲の球(sphere)形状、板(plate)形状、フレーク(flake)形状、棒(rod)形状またはワイヤ(wire)形状粒子を含むことができる。また、前記磁性粒子は、ホロウ(hollow)構造の球(sphere)形状、ホロウ構造のチューブ(tube)形状、ホロウ構造のワイヤ(wire)形状またはホロウ構造のフレーク(flake)形状(断片形)粒子を含むことができる。前記磁性粒子は、球形粒子、板(plate)形状粒子、フレーク(flake)形状粒子、棒(rod)形状粒子、ワイヤ(wire)形状粒子、ホロウ(hollow)構造の球(sphere)形状粒子、ホロウ(hollow)構造のチューブ(tube)形状粒子、ホロウ(hollow)構造のワイヤ(wire)形状粒子及びホロウ(hollow)構造のフレーク(flake)形状粒子の中から選択された2種以上の粒子を含むことができるが、このように形態が異なる2種以上の粒子を使用する場合、さらに広帯域の電磁気波を吸収することができるという長所がある。このような磁性粒子は、ポリマー樹脂100重量部に対して3〜80重量部の量で含まれることが好ましく、磁性粒子の含量が3重量部未満の場合には、磁性複合体の磁気的特性が低下するおそれがあり、磁性粒子の含量が80重量部を超過すれば、過量の磁性体によって粒子の安定性が低下し、ポリマー樹脂に不均一な分散を引き起こすことができ、磁性複合体の重さが重くなる。
【0070】
前記磁性粒子は、異なる共鳴周波数を有する複数の磁性粒子よりなることができる。例えば、前記磁性粒子として0.5GHzの共鳴周波数を有する磁性粒子と1GHzの共鳴周波数を有する磁性粒子が混合したものを使用することができるが、共鳴周波数が異なる複数の磁性粒子を使用すれば、さらに広い領域の電磁気波を吸収することができる長所がある。
【0071】
また、炭素ナノチューブ(carbon nanotube)、炭素ナノ繊維(carbon nanofiber)、カーボンブラック(carbon black)、カーボン繊維(carbon fiber)及びグラフェン(graphene)の中から選択された1種以上の炭素系伝導体が前記ポリマー樹脂に分散していてもよく、前記炭素系伝導体は、前記磁性複合体に対して0.01〜70重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有されることが好ましい。炭素系伝導体の含量が多すぎれば、電気伝導性が高くなり、電磁気波吸収特性よりは遮蔽特性が強く現われることができるので、前記範囲の含量で含有されることが好ましい。
【0072】
前記ポリマー樹脂は、熱可塑性または熱硬化性樹脂であることができ、特に制限されるものではない。例えば、前記ポリマー樹脂としてエポキシ(epoxy)、シリコーンゴム(silicon rubber)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエステルスルホン(polyestersulfone;PES)、ポリアクリレート(polyarylate;PAR)、ポリイミド(polyimide;PI)、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)のような樹脂を使用することができる。
【0073】
広帯域電磁気波吸収体は、前記磁性粒子のサイズと形状が調節され、磁性複合体の共鳴周波数が定められ、前記共鳴周波数と同一であるか、または高い周波数帯域で電磁気波の吸収が起きる。例えば、磁性複合体の共鳴周波数が1GHzの場合、広帯域電磁気波吸収体は、1〜5GHz範囲の広帯域周波数に対する電磁気波吸収効果に非常に優れていることが後述する実験から分かる。
【0074】
本発明の広帯域電磁気波吸収体は、磁性粒子をポリマー樹脂に分散させた磁性複合体を形成する段階と、前記磁性複合体内に複数の伝導性ラインを配置する段階とを含む。ここで、「配置する段階」は、磁性複合体内に伝導性ラインが配列されるようにする多様な方法をすべて含む概念として使用する。例えば、磁性複合体内に複数の伝導性ラインを配置する段階は、磁性複合体に伝導性ラインを印刷するか、磁性複合体に伝導性ラインを挿入するか、磁性複合体に伝導性ラインを載置し圧着するか、磁性複合体にフォトリソグラフィー工程を利用して伝導性ラインパターンを形成し、メッキ法、蒸着法などのような多様な方法で伝導性ラインを形成する方法などを含む概念として使用する。磁性複合体の上部と下部との間の中心部に伝導性ラインを配列しようとする場合、磁性粒子がポリマー樹脂に分散した磁性複合体を前記伝導性ラインの上部に覆って圧着する段階をさらに含むことができる。
【0075】
本発明の好ましい一実施例による広帯域電磁気波吸収体の製造方法は、ポリマー樹脂を溶媒に分散させる段階と、前記ポリマー樹脂が分散した溶媒にフェライト系酸化物を含む磁性粒子を分散させてスラリーを形成する段階と、前記スラリーをキュア(curing)し、磁性複合体を形成する段階と、前記磁性複合体の上部に複数の伝導性ラインを配置する段階と、前記伝導性ラインが配置された上部に磁性複合体を覆って圧着する段階とを含むことができる。前記広帯域電磁気波吸収体の製造方法は、前記スラリーをキュアする前に、前記スラリーを真空容器に収納し、真空を加えて脱泡する段階をさらに含むことができる。
【0076】
前記伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列することが好ましい。前記伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列することが好ましく、前記伝導性ラインの線幅が前記信号線の線幅と同一の線幅を有するように調節することが好ましい。
【0077】
前記伝導性ラインを配置する段階は、第1方向に複数の伝導性ラインを配列し、第2方向に複数の伝導性ラインを配列する段階を含むことができ、前記第1方向に配列された伝導性ラインと前記第2方向に配列された伝導性ラインは、格子型のグリッドを形成することができる。前記第1方向に配列される伝導性ラインは、一定の間隔で周期的に配列し、前記第2方向に配列される伝導性ラインも、一定の間隔で周期的に配列することが好ましい。前記第1方向に配列される伝導性ライン間の間隔と前記第2方向に配列される伝導性ライン間の間隔を同一に調節することが好ましい。前記第1方向に配列される伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して平行に配列し、前記第2方向に配列される伝導性ラインは、電磁気波を放出する素子の信号線に対して垂直に配列することが好ましい。前記信号線に対して平行に配列される複数の伝導性ラインは、前記信号線の線幅と同一の線幅を有するように調節することが好ましい。
【0078】
磁性粒子がポリマー樹脂に分散した構造を有する前記磁性複合体は、多様な方法で製造することができ、特に制限されるものではない。例えば、ポリマー樹脂に磁性粒子を所望の量だけ添加し、ホモミキサー(Homo Mixer)、超音波分散器(ultrasonic)、3ロールミル(3 roll mill)で均一に分散させた後、フィルムキャスティング(film casting)装備を利用してフィルム化するように製作することができ、また、磁性粒子を高分子を含有する有機溶媒に添加し、エマルジョンを形成し、前記エマルジョンから有機溶媒を除去し、磁性複合体を形成することもできる。
【0079】
前記伝導性ラインは、多様な方法を利用して製作することができ、特に制限されるものではない。例えば、フォトリソグラフィー(photo lithography)またはレーザー加工などを利用してマスクを製作した後、非伝導性樹脂にクロム(Cr)、酸化クロム(Cr)などよりなる伝導性ラインパターンを形成した後、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr)などよりなる伝導性ラインパターンにメッキ法を利用してニッケル(Ni)、銅(Cu)などでメッキし、伝導性ラインを形成することもできる。
【0080】
本発明の広帯域電磁気波吸収体は、磁性複合体に伝導性ラインが配列されるようにする多様な方法を利用して製作することができ、特に制限されるものではない。例えば、伝導性ラインを磁性複合体に挿入して製造することもでき、磁性複合体に伝導性ラインを載置し圧着(またはプレッシング(pressing))して製造することもでき、伝導性ラインを磁性複合体の中心部に位置するように形成しようとする場合には、磁性複合体に伝導性ラインを載置し、さらに磁性複合体を伝導性ラインの上部に載置し、圧着(またはプレッシング(pressing))して製造することもでき、磁性粒子を添加した樹脂混合物を伝導性ラインに載置し、フィルムキャスティングにフィルム化して製作することもできる。
【0081】
また、磁性複合体に伝導性ラインを直接形成する方法で広帯域電磁気波吸収体を製作することができるが、例えば、磁性複合体にインクジェットプリント、シルクスクリーンなどのような方法で伝導性ラインを印刷して製造することもでき、磁性複合体にフォトリソグラフィー(photo lithography)工程と蒸着(deposition)工程などを利用して伝導性ラインを形成することもできる。
【0082】
図1は、本発明の一例として製造した広帯域電磁気波吸収体の断面走査電子顕微鏡(scanning electron microscope;SEM)写真である。
図1で、’Ni mesh’と記載したものは、メッシュ(mesh)形態のニッケル(Ni)金属で製作した伝導性ラインを意味する。
図1に示された広帯域電磁気波吸収体は、離型フィルム(releasing film)上にNi−Fe粒子(NiとFeが重量比で1:1である粒子を使用する)が分散したシリコーンゴム混合物(silicon rubber mixture)を載置し、シリコーンゴム混合物の上部にニッケルメッシュ(Ni mesh)を載置した後、Ni−Fe粒子が分散したシリコーンゴム混合物をニッケルメッシュの上に覆った後、2トン(ton)の圧力で120℃の温度で15分間圧着して形成したものである。
図1を参照すれば、広帯域電磁気波吸収体の中心部にニッケルメッシュが位置することが分かる。
【0083】
図78は、磁性を帯びる鉄繊維(Fe fiber)に誘電体であるチタニウム酸化物(Titanium oxide)(TiO
2)がコーティングされた磁性粒子を示す走査電子顕微鏡写真である。
図78に示したチタニウム酸化物(Titanium oxide)(TiO
2)がコーティングされた磁性粒子は、次のような方法で形成した。鉄酸化物繊維(Fe oxide fiber)にチタニウム(Ti)前駆体であるチタニウムイソプロポキシド(titanium isopropoxide;TTIP)溶液を濃度を調節しながらコーティングし、800℃で1時間か焼(calcination)し、チタニウム酸化物を形成させた後、水素(H
2)ガス雰囲気で500℃で1時間還元処理を通じて鉄酸化物(Fe oxide)だけを選択的に還元させて形成した。このように誘電体を磁性を帯びる粒子にコーティングする場合、磁性粒子の誘電率及び透磁率を制御することができるという長所がある。
【0084】
図79は、炭素系伝導体である炭素ナノ繊維(carbon nanofiber;CNF)に磁性体であるニッケル(Ni)がコーティングされた磁性粒子を示す透過電子顕微鏡写真である。
図79に示した炭素ナノ繊維にニッケル(Ni)がコーティングされた磁性粒子は、次のような方法で形成した。炭素ナノ繊維(CNF)に無電解メッキ法を利用してニッケル(Ni)をコーティングし、アルゴン(Ar)ガス雰囲気で450℃で1時間熱処理工程を通じて非結晶構造の磁性体コーティング層を結晶化し、磁性を向上させた。このように磁性体を炭素系伝導体にコーティングする場合、高角形比の磁性粒子として使用することができるという長所がある。
【0085】
図80は、磁性粒子であるホロウ(hollow)構造のNi−Fe繊維(Ni−Fe fiber)と炭素系伝導体である炭素ナノ繊維(carbon nanofiber;CNF)が複合化された複合体を示す走査電子顕微鏡写真である。
図80に示したNi−Fe繊維と炭素ナノ繊維が複合化された複合体のポリマー樹脂は、エポキシ(epoxy)樹脂を使用した。
【0086】
このように製作された本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出する素子の信号線上部、下部または上部及び下部に配置され、電磁気波を効率的に吸収することができ、特に磁性複合体の共鳴周波数から数GHz範囲の広帯域電磁気波を吸収(遮蔽)するのに使用されることができる。また、本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出するチップ(素子)をパッケージング(packaging)するためのパッケージ(package)として使用されることができる。また、本発明の広帯域電磁気波吸収体は、電磁気波を放出する素子である印刷回路基板の上部に配置され、回路線(または信号線)で発生するノイズなどのような電磁気波を遮蔽し、回路線(または信号線)間の干渉を抑制するのに使用されることができる。
【0087】
以下で、磁性複合体を製造する方法の一例を説明し、これを利用して広帯域電磁気波吸収体を製造する方法をさらに具体的に説明する。
【0088】
熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic PolyUrethane;以下、TPUという)6gをジメチルホルムアミド(Dimethylformamide;以下、DMFという)とアセトン(Acetone)の混合溶液(DMF/アセトンの重量比=7/3)56gに投与した後、磁石撹拌器(magnetic stirrer)を利用して常温で500rpmの撹拌速度で約3時間撹拌し、TPUを完全に溶解させた。
【0089】
前記TPUが溶解された溶液に磁性粒子を投与した後、機械的分散法を利用してスラリー(slurry)を製造した。前記磁性粒子は、平均粒径が200nmのナノサイズのバリウム−フェライト(Ba−ferrite)粉末(バリウムの含量が50重量%である粉末)を使用し、他の例として平均粒径が20μmであるマイクロサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末(バリウムの含量が50重量%である粉末)を使用した。
【0090】
前記機械的分散法は、3−ロールミル(3−roll mill)を利用したカレンダリング(calendering)方法とホモミキサー(homomixer)を利用した方法を使用した。前記カレンダリング方法は、3−ロールミルを使用し、ロール(roll)とロール(roll)との間のギャップ(gap)は、5μmであり、ロールの回転速度(roll speed)は、200rpmであり、25℃の温度で5回繰り返して行われた。前記ホモミキサーを利用した方法は、3000〜5000rpmの撹拌速度(agitation speed)で25℃の温度で10分間行われた。
【0091】
上記のように製造されたスラリーを常温で25〜30分程度脱泡を行った。前記脱泡は、スラリーを真空容器に収納し、10
-2〜10
-1Torr程度の真空を加えることによって行われた。
脱泡が行われたスラリーを、コムマロ−ル(comma roll)を利用してフィルムキャスティング(film casting)を行い、製造されたフィルムを常温で24時間キュア(curing)し、磁性粒子がTPU樹脂に分散した構造を有する磁性複合体を製造した。
【0092】
図81は、磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体を示す走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)写真であり、
図82は、磁性粒子として平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体を示す走査電子顕微鏡写真である。
図81に示された4個の写真は、倍率を異にして撮影したものであり、
図82に示された4個の写真も倍率を異にして撮影したものである。
【0093】
図83は、磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体の吸収能を示すグラフであり、
図84は、磁性粒子として平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体の吸収能を示すグラフである。
【0094】
以下で、上記のように製造された磁性複合体を利用して広帯域電磁気波吸収体を製造する一例を説明する。
【0095】
SUS(Steel Us Stainless)プレート(Plate)上に離型剤であるピールプライ(peel ply)を積層した後、その上に磁性粒子がTPU樹脂に分散した構造を有する磁性複合体を積層した。前記離型剤は、後述する圧着後にSUSプレートと磁性複合体が良好に剥離するようにする役目をするものである。
【0096】
積層された磁性複合体の上にニッケル(Ni)材質よりなる格子型グリッドを積層した後、格子型グリッドの上にさらに前記磁性複合体を積層した。
【0097】
磁性複合体、格子型グリッド及び磁性複合体が順次に積層されたものをホットプレス(Hot Press)を利用して圧着し、広帯域電磁気波吸収体を製作した。前記圧着は、120℃の温度で1トン(ton)の圧力で1時間行われた。
【0098】
図85は、磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、
図86は、平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図85に示された4個の写真は、倍率を異にして撮影したものであり、
図86に示された4個の写真も倍率を異にして撮影したものである。
【0099】
図87は、磁性粒子として平均200nmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能を示すグラフであり、
図88は、平均20μmサイズのバリウムフェライト(Ba−ferrite)粉末を使用してTPU樹脂に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能を示すグラフである。
【0100】
図83と
図87を比較すれば、ナノサイズの磁性複合体と格子型のグリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能が向上したことを確認することができる。また、
図84と
図88を比較すれば、マイクロサイズの磁性複合体と格子型のグリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体の吸収能が向上したことを確認することができる。
【0101】
図89は、粒径が200nm以下のニッケル(Ni)−鉄(Fe)ナノ粉末(NiとFeの重量比が52:48である粉末)を利用してシリコーンゴム(silicone rubber)(粘度が800cpsであり、密度が0.97g/cm
3であるダウコーニング社(Dow Corning)製品)に分散させて形成した磁性複合体と銅(Cu)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す写真であって、磁性複合体を形成するためのキュアは、120℃の温度で20分間行われたものである。
【0102】
図90は、粒径が200nm以下のニッケル(Ni)−鉄(Fe)ナノ粉末(NiとFeの重量比が52:48である粉末)を利用してシリコーンゴム(silicone rubber)(粘度が800cpsであり、密度が0.97g/cm
3であるダウコーニング社(DowCorning)製品)に分散させて形成した磁性複合体とニッケル(Ni)材質の格子型グリッドを利用して製造された広帯域電磁気波吸収体を示す写真であって、磁性複合体を形成するためのキュアは、120℃の温度で20分間行われたものである。
【0103】
以下で、本発明の広帯域電磁気波吸収体が広帯域の電磁気波を吸収(または遮蔽)することができる吸収体として使用されることができることを示す実験例を具体的に提示し、次に提示する実験例によって本発明が限定されるものではない。以下で、「グリッド複合体」というのは、伝導性ラインをグリッド形態で製作した広帯域電磁気波吸収体を意味するものとして使用する。また、「Cuグリッド」というのは、銅(Cu)材質よりなるグリッドを意味するものとして使用し、「Niグリッド」というのは、ニッケル(Ni)材質よりなるグリッドを意味するものとして使用する。以下の実験例では、磁性複合体の磁性粒子において200nmサイズのNi−Fe粒子を使用し、磁性複合体のポリマー樹脂としては、エポキシ(epoxy)、シリコーンゴム(silicon rubber)またはポリウレタン(polyurethane)を使用した。
【0104】
磁性粒子を樹脂中に含有する磁性複合体を使用する電磁波吸収体の開発は、磁性粒子の材料と形状を調節し、透磁率と誘電率特性を調節する一方、複合体内で粒子の含有率と配向を調節し、所望の周波数帯域で高い電磁波吸収能を得る方向に進行されてきた。
【0105】
磁性複合体薄膜にメッシュ形態の伝導性グリッドを挿入し、誘導電流が流れることができる経路を提供する場合、付加的な誘電損失を発生させることができると共に、グリッドに沿って電磁気波を薄膜全体にわたって分散させることができるので、薄膜全体領域で磁気損失をさらに大きく発生させることができる。また、伝導性グリッドは、比較的構造とサイズを自由に変更することができるので、伝導性グリッドが挿入された磁性複合体は、特性を調節することが容易であり、吸収能が高い優れた電磁気波吸収体となることができる。
【0106】
まず、磁性複合体の電磁気波吸収能に影響を及ぼす透磁率、誘電率、サイズなどの要因に対して調べた後、伝導性グリッドを構成する材質、サイズ、位置などの様々な要素による効果を記述する。
【0107】
(1)有限要素法電磁気解釈モデル
近接場電磁気波吸収特性を分析するためにIEC 62333で採択されたマイクロストリップ伝送線(microstrip line:MSL)に対するモデルを設定し、理論的解釈を行った。
図2は、幅4.4mm、長さ50mmである信号線を有するMSL標準規格度であり、信号線上に磁性複合体を位置させ、ベクトルネットワークアナライザー(Vector Network Analyzer)を連結し、s−パラメータ(s−parameter)値を測定し、吸収能を求める。吸収能または電力損失(power loss)は、反射係数S
11と透過係数S
21からP
Loss/P
In=1−|S
11|
2−|S
21|
2で与えられる。
【0108】
有限要素法による電磁気解釈を通じてマイクロストリップ伝送線による電磁気波吸収特性分析を行うためのモデル(FEMシミュレーションモデル)は、
図3の通りである。マイクロストリップライン(
図3でMicrostrip line)上に磁性複合体(
図3でmagnetic film)を位置させて無反射境界条件を有する有限なサイズの空気箱内で解釈を行った。マイクロストリップラインの材質と詳細な規格は、特性インピーダンスが50Ωとなるように設計し、
図4に示された通りである。磁性複合体のサイズは、48mm(w)×48mm(l)×100μm(t)であり、マイクロストリップライン信号線と磁性複合体との間には絶縁のために2μmの空気層を配置した。
図4で、(a)は、誘電率(ε
r)が2.5であり、厚さが1.6mmであるPTFE(polytetrafluoroethylene)基板であり、(b)は、18μm厚さの銅よりなるボトムグラウンド(bottom ground)であり、(c)は、18μm厚さの銅よりなる信号線(signalline)である。
【0109】
(2)磁性複合体(magnetic composite)の電磁気波吸収特性解釈
イ)磁性体複素透磁率及び複素誘電率変化による電磁波吸収能分析
電磁波吸収体の評価において最も重要な特性の1つである複素透磁率(μ
r=μ’−jμ”)は、
図5のように、約1GHzで共鳴吸収特性を有する強磁性物質の複素透磁率特性を基準にして透磁率の実数部と虚数部をそれぞれまたは同時に増加するかまたは減少させて、透磁率の変化が吸収能に及ぶ影響に対する電磁波吸収特性をモデリングした。
図5で、(a)は、実数部(real part)の透磁率(permeability)を示し、(b)は、虚数部の透磁率を示す。
【0110】
吸収能特性評価に使用された透磁率の実数部と虚数部それぞれの透磁率の変化を
図6と
図7に示した。透磁率の実数部は、共鳴が発生する以前の値を明記し、虚数部の値は、共鳴が発生する周波数での最大値を使用した。誘電率の実数部及び虚数部は、周波数の変化と関係なく、一定の値を有すると仮定し、それぞれ一定の値を使用した。近接場電磁波吸収体としての複合体の場合、近接場吸収特性が複合体の誘電率よりは透磁率にさらに大きく支配されるので、吸収体の誘電損失は無視することができると仮定し、複素誘電率は、周波数特性がない定数として実数部1、虚数部0に固定した。
図6で、(a)は、μ’が10である場合であり、(b)は、μ’が4である場合であり、(c)は、μ’が2である場合であり、(d)は、μ’が1である場合である。
図7で、(a)は、μ”が100である場合であり、(b)は、μ”が40である場合であり、(c)は、μ”が20である場合であり、(d)は、μ”が10である場合である。
【0111】
複素透磁率の虚数部を固定し、実数部を変化させた場合、反射係数と透過係数は、
図8及び
図9のように変わる。
図8及び
図9で、(a)は、透磁率(μ’、μ”)が(10、20)である場合であり、(b)は、透磁率(μ’、μ”)が(4、20)である場合であり、(c)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、20)である場合であり、(d)は、透磁率(μ’、μ”)が(1、20)である場合である。透磁率の実数部が増加するにつれて、共鳴周波数領域と共鳴周波数より低い周波数では、反射係数が増加し、共鳴周波数領域で急激に透過係数が増加することを示す。反射係数より透過係数が十倍程度大きい値を示すので、電力損失は、透過係数に支配的に影響を受ける。
【0112】
吸収能は、
図10に示したように、強磁性共鳴周波数より低い領域では、低い挿入損失(insertion loss)を示し、共鳴周波数領域で高い吸収能を示す。電力損失は、周波数に比例するので、高い周波数領域で透磁率が小さくても、低い周波数領域でさらに相対的に高い吸収能を示す。透磁率の実数部が増加するにつれて、吸収能が増加する現象を示している。
図10で、(a)は、透磁率(μ’、μ”)が(10、20)である場合であり、(b)は、透磁率(μ’、μ”)が(4、20)である場合であり、(c)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、20)である場合であり、(d)は、透磁率(μ’、μ”)が(1、20)である場合である。
【0113】
複素透磁率の虚数部の変化による吸収能は、
図11に示したように、実数部の変化による吸収能に比べて相対的に小さい吸収能の変化を示した。
図11で、(a)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、100)である場合であり、(b)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、40)である場合であり、(c)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、20)である場合であり、(d)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、10)である場合である。
図12は、複素透磁率の実数部と虚数部を同時に増加させた場合の吸収能の変化を示したが、実数部の変化が主導的な影響を及ぼすので、
図10の場合と類似の変化を示す。
図12で、(a)は、透磁率(μ’、μ”)が(10、100)である場合であり、(b)は、透磁率(μ’、μ”)が(4、40)である場合であり、(c)は、透磁率(μ’、μ”)が(2、20)である場合であり、(d)は、透磁率(μ’、μ”)が(1、10)である場合である。
【0114】
吸収体の透磁率(μ’、μ”)を(2、20)に固定し、複素誘電率(ε
r=ε’−jε”)が増加するとき、吸収能の変化を
図13及び
図14に示した。
図13で、(a)は、誘電率(ε’、ε”)が(1、0)である場合であり、(b)は、誘電率(ε’、ε”)が(2、0)の場合であり、(c)は、誘電率(ε’、ε”)が(5、0)である場合であり、(d)は、誘電率(ε’、ε”)が(10、0)である場合である。
図14で、(a)は、誘電率(ε’、ε”)が(10、0)である場合であり、(b)は、誘電率(ε’、ε”)が(10、2)である場合であり、(c)は、誘電率(ε’、ε”)が(10、4)である場合であり、(d)は、誘電率(ε’、ε”)が(10、6)である場合である。誘電率の増加によっては吸収能に変化が起きないことが分かる。
【0115】
ロ)磁性複合体のサイズによる吸収能分析
磁性複合体のサイズによる吸収能の変化を比較した。
図15で、磁性複合体の幅による吸収能の変化を比較すれば、一定幅までは吸収能が増加するが、それ以上幅の増加に対しては吸収能の変化を示さなかった。これは、マイクロストリップ信号線で供給される電磁気波が磁性複合体の一定幅以上は伝達されないことを言う。したがって、磁性複合体の透磁率や電気伝導度によって最適の幅が存在することが分かった。
図15で、(a)は、磁性複合体の幅が4.4mmである場合であり、(b)は、磁性複合体の幅が8mmである場合であり、(c)は、磁性複合体の幅が15mmである場合であり、(d)は、磁性複合体の幅が48mmである場合である。
【0116】
図16は、磁性複合体の長さ変化による吸収能の変化を示す。磁性複合体の長さが増加するほど吸収能も比例して増加することが分かる。
図16で、(a)は、磁性複合体の長さが4.4mmである場合であり、(b)は、磁性複合体の長さが8mmである場合であり、(c)は、磁性複合体の長さが15mmである場合であり、(d)は、磁性複合体の長さが48mmである場合である。
【0117】
磁性複合体の厚さ増加による吸収能の変化を
図17に示した。
図17で、(a)は、磁性複合体の厚さが250mmである場合であり、(b)は、磁性複合体の厚さが200mmである場合であり、(c)は、磁性複合体の厚さが150mmである場合であり、(d)は、磁性複合体の厚さが100mmである場合である。磁性複合体の厚さの増加によって吸収能は増加するが、一定厚さ以上では吸収能がこれ以上増加しなかった。
【0118】
ハ)磁性複合体の吸収能分析
磁性粒子を非磁性樹脂に含有させて製造した磁性複合体薄膜の電磁波吸収能を分析した。一般的に強磁性粒子で複合体を形成すれば、透磁率が減少し、透磁率の周波数による共鳴現象が消えて、低い周波数で一定の透磁率を維持しつつ、周波数が増加するにつれて透磁率が減少する。
図18〜
図20に磁性複合体の磁性粒子含有率による複素透磁率の変化を示した。
図18は、磁性粒子の含有率が体積比で20%である場合であり、
図19は、磁性粒子の含有率が体積比で30%である場合であり、
図20は、磁性粒子の含有率が体積比で40%である場合である。使用された磁性体は、球形状または棒形状のナノサイズNiFe系のパーマロイ粒子であって、飽和磁化値が30emu/cm
3から150emu/cm
3範囲に該当し、非磁性樹脂の透磁率は、1として仮定した。
【0119】
与えられた磁性複合体の透磁率を適用して吸収能を分析した結果は、
図21に示された通りである。
図21で、(a)は、磁性粒子の含有率が10体積%である場合であり、(b)は、磁性粒子の含有率が20体積%の場合であり、(c)は、磁性粒子の含有率が30体積%である場合であり、(d)は、磁性粒子の含有率が40体積%である場合である。含有率が増加するにつれて、透磁率が増加するので、吸収能も増加するが、透磁率が共鳴なしに全体周波数領域で小さい値を有するので、10%未満の吸収能を示す。透磁率が高い磁性粒子を多く含有し、良子に整列される場合、改善が可能であるが、複合体で磁性粒子の含有率を高めるのに限界があり、複合体は、低い周波数で透磁率が高いので、周波数に比例する電力損失とは反対の特性を有するようになり、吸収能を向上させることが困難である。
【0120】
(3)伝導性グリッドによる電磁波吸収能向上効果分析
磁性複合体にメッシュ(mesh)形態の伝導性グリッドを挿入すれば、誘電的損失と共に電磁波がグリッドに沿って複合体全体に伝達されるので、複合体全体にわたって磁気的損失が発生し、吸収能を画期的に改善することができる。複合体内の伝導性グリッド挿入による吸収能効果を検証するために、伝導性グリッドの間隔、位置、サイズ、材質などの変数による吸収能の変化に及ぶ影響を分析した。
【0121】
図22のように、伝導性グリッドは、銅材質を選択し、そのサイズ(a)は、20μm×20μm×40mmである。銅線は、100μm厚さの複合体の中間に位置し、複合体の下面からグリッドの下面までは40μmである。銅線中心間の距離であるグリッド間隔(grid space)(b)は、4mm×4mm正方形である。
【0122】
上記の基本的な構造を有するグリッド複合体(grid composite)に対する吸収能と、磁性複合体がない空気中のグリッド(air−grid)(以下、「空気グリッド」という)とグリッド無しの磁性複合体の吸収能とを比較し、
図23〜
図25に示した。
図23〜
図25で、(a)は、グリッド複合体である場合であり、(b)は、磁性複合体がない空気中のグリッド(air−grid)である場合であり、(c)は、グリッド無しの磁性複合体である場合であり、(d)は、空気である場合である。グリッド自体の吸収能は、磁性複合体の場合より高いが、10%未満の差異を示し、2.5GHzでピークを示し、5GHz近くでは、最大35%の二重ピークを示す。しかし、グリッドと磁性複合体を結合したグリッド複合体は、強磁性共鳴周波数以後に周波数領域全体にわたって吸収能が大きく向上し、最大80%の吸収能を示す。磁性複合体吸収能を基準レベルにしてグリッド吸収能が加えられた形態の吸収能の変化を示すが、単純な和ではなく、非線形的に増加する。
【0123】
イ)グリッド間隔のサイズによる吸収能の変化
まず、空気グリッド(air−grid)の場合について、グリッド間隔を変化させて吸収能に及ぶ効果を分析した。
図26〜
図28に示されたように、2つの特徴的な周波数2.5GHzと5GHzで共鳴形態の吸収が生じる。
図26〜
図28で、(a)は、グリッド間隔(grid space)が7.5mm×7.5mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔が4mm×4mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔が2mm×2mmである場合であり、(d)は、グリッド間隔が1mm×1mmである場合である。グリッド格子構造で特徴的なサイズは、4mm×4mmである単位格子のサイズと40mm×40mmである格子外郭サイズが存在し、小さい格子サイズは、高い周波数、大きい格子サイズは、低い周波数と関連しているものと判断される。空気グリッド(air−grid)の場合、グリッド間隔が広くなるほど吸収能最大値が低くなる。グリッド間隔が1mmであるとき、5GHzで57%の最大吸収能を示す。
【0124】
グリッドを磁性複合体内に挿入し、グリッドの間隔を変化させて吸収能の変化を分析した。
図29〜
図31は、Cu材質のグリッドを使用したグリッド複合体のグリッド間隔を1mmから4mmまで増加させるとき、反射係数、透過係数及び吸収能の変化を示す。
図29〜
図31で、(a)は、グリッド間隔(grid space)が4mm×4mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔が2mm×2mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔が1mm×1mmである場合であり、(d)は、グリッドがない場合である。グリッドがない磁性体薄膜と比較する場合、伝導性グリッドの電磁波反射効果によって反射係数が数十dB増加することが分かり、吸収係数は、平均的に数dB程度の減少を示す。吸収能は、空気グリッド(air−grid)の場合、1mm間隔で最大値を示したことと異なって、グリッド間隔が4mmであるとき、77%の最大吸収能を示し、全体的に吸収帯域幅が4GHz領域以上の広帯域吸収が現われることを確認した。
【0125】
マイクロストリップ信号線の線幅が4.4mmであり、グリッド間隔が4mmである場合、信号線中心にあるグリッド線から外側に4mm位置にあるグリッド線が最も近接したグリッド線である。電磁気場は、信号線中心から2.2mm位置にある端部から外側に数mm範囲に集中する。4mmグリッドの場合、信号線の端部の外側に1.8mm離れていて、電磁気場が集中する範囲内に位置すると見られる。したがって、伝送線路で供給される電磁気波を効果的に磁性体内に誘導し、吸収がよく生じるようにするものである。グリッド間隔が4mmである場合についてグリッド材質と周波数による磁性体薄膜の上部表面の磁場(H−field)分布を
図59から確認することができる。
【0126】
グリッド間隔を7.5mm、15mm、30mmとすれば、グリッド最外郭のわくを成すグリッドが存在しない。このグリッド間隔に対する吸収能分析の結果は、
図32〜
図34に示した。
図32〜
図34で、(a)は、グリッド間隔(grid space)が30mm×30mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔が15mm×15mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔が7.5mm×7.5mmである場合であり、(d)は、グリッドがない場合である。グリッド間隔が7.5mmであるときは、最大64%まで吸収能を示すが、それ以上と間隔が大きくなれば、信号線に最も近接したグリッド線も、信号線から13mm離れるようになり、吸収能が急激に減少する。
【0127】
表1で、グリッド間隔を調節した時吸収能の最大、最小、平均値を提示した。
【0129】
一方、吸収を起こす周波数帯域は、磁性体だけの場合、0.5GHzと非常に狭いが、グリッドを適用した場合は、帯域が4GHz以上であって、1GHzまで低い挿入損失を示し、その以後の全周波数領域で高い吸収能を示し、優れた電磁気波吸収素材として作動することを示す。
【0130】
マイクロストリップラインの信号線幅を2mmに変更し、グリッド間隔による吸収能の変化を分析した。この際、マイクロストリップラインの50Ωインピーダンス整合のために信号線とグラウンド間の誘電体厚さを1.6mmから0.73mmに変更した。
図35〜
図37にs−パラメータ(s−parameter)と吸収能を示し、表2に最大、最小値を数値で提示した。
図35〜
図37で、(a)は、グリッド間隔(grid space)が1mm×1mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔が2mm×2mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔が4mm×4mmである場合であり、(d)は、グリッド間隔が5mm×5mmである場合である。
【0131】
下記の表2は、マイクロストリップラインの信号線幅が2mmである場合、Cuグリッド複合体のグリッド間隔による吸収能を比較した表である。
【0133】
信号線の幅が2mmなら、信号線の端部は、中心から1mmにあり、端部から外側に最も近接した信号線は、グリッド間隔が2mmであるとき、端部から1mm離れているようになる。このグリッド間隔で最大の吸収能を示し、最大吸収能は94%に到逹する。グリッド間隔が4mmである場合は、80%の最大吸収能を示し、全体的に信号線幅が4mmの場合より高い吸収能を示す。
【0134】
以上、正方形のグリッド格子を構成したが、グリッド間隔の幅または長さのいずれか一方を固定させ、残りの間隔を変化させて、矩形グリッド格子を形成し、吸収能に及ぶ影響を調査した。まず、グリッド間隔の長さは4mmに固定し、幅を1mmから5mmまで変化させて吸収能を分析した結果を
図38〜
図40と表3に示した。
図38〜
図40で、(a)は、グリッド間隔の幅(grid space width)が1mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔の幅が2mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔の幅が4mmである場合であり、(d)は、グリッド間隔の幅が5mmである場合である。
【0135】
下記の表3にCuグリッド複合体のグリッド間隔の長さが4mmである場合、幅の変化による吸収能を比較して示した。
【0137】
グリッド間隔の幅が4mmである場合、77%の最大吸収能を示し、グリッド間隔の長さが同時に変わる正方形格子の場合と同一の結果を得、これは、グリッド間隔の長さ方向が影響を及ぼさないことを意味する。
【0138】
グリッド間隔の幅を4mmに固定し、長さを1mmから5mmまで増加させた結果を
図41〜
図43と表4に示したが、最大吸収能が75%から78%まで変化し、グリッド間隔の長さは吸収能に大きい影響を及ぼさないことをさらに確認することができる。
図41〜
図43で、(a)は、グリッド間隔の長さ(grid space length)が1mmである場合であり、(b)は、グリッド間隔の長さが2mmである場合であり、(c)は、グリッド間隔の長さが4mmである場合であり、(d)は、グリッド間隔の長さが5mmの場合である。
【0139】
下記の表4にCuグリッド複合体のグリッド間隔の幅が4mmである場合、長さの変化による吸収能を比較して示した。
【0141】
以上説明したように、信号線と平行なグリッド線と直交するグリッド線のうち平行なグリッド線が電磁気波を磁性体薄膜内に誘導し、吸収を起こすのにさらに重要な役目をすることが分かり、実際電子回路にノイズ除去用に適用しようとするとき、実際回路の信号線配置に合わせてグリッドを設計し、オーダーメード型グリッド複合体を製作すれば、ノイズ除去効果を極大化することができる。
【0142】
ロ)グリッド線の厚さ(太さ)が吸収能に及ぶ効果
グリッド線の厚さ、すなわち太さを調節し、細いグリッド線と太いグリッド線が吸収能に及ぶ効果を分析した。厚いグリッド線を使用する場合、抵抗が減少し、効果的に誘導電流が形成されるが、伝導性グリッド線を使用するので、高周波の場合、グリッド線の材質によって表面浸透深さ(skin depth)が薄くなり、それ以上の厚さは効果がないものと予想される。Cu材質のグリッド線の厚さが3μmから20μmまで増加するとき、吸収能に及ぶ効果を調査し、
図44〜
図46と表5に提示した。
図44〜
図46で、(a)は、グリッド厚さ(grid thickness)が20μm×20μmである場合であり、(b)は、グリッド厚さが10μm×10μmである場合であり、(c)は、グリッド厚さが5μm×5μmである場合であり、(d)は、グリッド厚さが3μm×3μmである場合である。
【0143】
下記の表5にCuグリッド複合体のグリッド線厚さによる吸収能を比較して示した。
【0145】
グリッド線の厚さが3μmであるとき、最大89%の吸収能を示し、さらに厚くなれば、吸収能が徐々に減少することを示す。2.5GHzより低い周波数では、むしろ3μm厚さであるとき、他の厚いグリッド線を使用した場合より低い吸収能を示し、最適のグリッド厚さが周波数に依存することを確認することができる。
【0146】
ハ)グリッド位置が吸収能に及ぶ効果
マイクロストリップ信号線から伝搬される電磁気波は、信号線から遠くなれば、強さが弱くなるので、吸収体と信号線の距離は、重要な変数になり、同様に、磁性体薄膜内でグリッドがどの位置に存在するかは、吸収能に大きい影響を与えることと予想される。磁性体薄膜の下面からグリッドの下面までの距離をグリッド位置(高さ)として定義し、この高さを0μmから80μmまで増加させて吸収能に及ぶ効果を分析し、結果を
図47〜
図49と表6にそれぞれグラフと数値で示した。
図47〜
図49で、(a)は、グリッドの位置(高さ)が0μmである場合であり、(b)は、グリッドの位置(高さ)が20μmである場合であり、(c)は、グリッドの位置(高さ)が40μmである場合であり、(d)は、グリッドの位置(高さ)が60μmである場合であり、(e)は、グリッドの位置(高さ)が80μmである場合である。
【0147】
下記の表6にCuグリッド複合体のグリッド位置(高さ)による吸収能を比較して示した。
【0149】
グリッドが磁性体薄膜の最も上面に位置するとき、最大の吸収能を示していて、この事実は、信号線との距離が遠くなれば、電磁気波の強さが減少する効果よりグリッドによる反射がさらに大きい影響を与えることを示す。グリッドが磁性体薄膜の底部にあれば、初期に反射が大きく生じ、磁性体内に流入される電磁気波を大きく低減する役目をし、吸収能を低下させると言える。
【0150】
ニ)グリッドサイズが吸収能に及ぶ効果
グリッド単位格子のサイズ、すなわちグリッド間隔ではなく、グリッド全体のサイズは吸収能にどんな影響を及ぼすかを分析した。グリッドサイズで、長さは固定し、幅だけを40mmから16mmまで減少させながら吸収能を分析した結果を
図50〜
図52に示した。
図50〜
図52で、(a)は、グリッドサイズ(幅)が40mm×16mmである場合であり、(b)は、グリッドサイズ(幅)が40mm×24mmである場合であり、(c)は、グリッドサイズ(幅)が40mm×32mmである場合であり、(d)は、グリッドサイズ(幅)が40mm×40mmである場合である。
【0151】
磁性複合体のサイズは、変化せず、グリッド幅を低減する場合、グリッド幅外側の磁性体薄膜には、グリッドによる誘導電流が生成されないので、吸収能が低下し、幅が16mmであるとき、2GHz近くで50%吸収能を示すことが最大である。一方、グリッド外郭のサイズが小さくなれば、さらに高い周波数で共鳴現象を示さなければならないし、32mmの場合、6GHz、24mmと16mmの場合、調査した範囲内でグリッドの2つの特徴的な周波数のうち二番目のピークが現われなかった。以後、さらに高い周波数まで評価が可能となれば、二番目のピークの存在を確認することができると考えられ、現在としては磁性複合体全体をグリッドで満たすことが有利であると考えられる。
【0152】
ホ)グリッド材質が吸収能に及ぶ効果(伝導度、透磁率)
グリッド厚さによる効果分析で言及したように、グリッドの電気伝導度は、誘導電流の形成に直接的な影響を与えるので、吸収能に大きい影響を与える。グリッドの電気伝導度をCuの電気伝導度である6×10
7simens/mから6×10
4simens/mまで減少させ、吸収能に及ぶ効果を分析し、
図53〜
図55と表7にそれぞれグラフと数値で提示した。
図53〜
図55で、(a)は、グリッドの電気伝導度(grid conductivity)が6×10
4simens/mである場合であり、(b)は、グリッドの電気伝導度が6×10
5simens/mの場合であり、(c)は、グリッドの電気伝導度が6×10
6simens/mである場合であり、(d)は、グリッドの電気伝導度が6×10
7simens/mである場合である。
【0153】
下記の表7にCuグリッド複合体のグリッド電気伝導度による吸収能を比較して示した。
【0155】
電気伝導度が小さいほど反射係数が小さくなる一方、透過係数は、6×10
4simens/mである場合を除いて、特に異ならないし、結果的に電気伝導度が小さくなるほど吸収能が大きくなることが分かる。ここでも、グリッド位置に対する分析から明らかなように、グリッドによる反射が重要な効果を及ぼすことが分かる。電気伝導度が小さくなるときに現われる他の現象は、共鳴形態のピークが消え、周波数が増加するにつれて線形に近い形態で透過係数が小さくなり、吸収能が大きくなる。グリッドによる2つの特徴的な共鳴周波数の存在が誘導電流が形成される循環環と関連があることを間接的にさらに確認することができる。考察したところによれば、どんな伝導度を有する物質を使用するかは、複合的な要因が作用することに注意すべきである。
【0156】
グリッドの磁気的性質による効果を分析するために、相対透磁率が600と大きい値を有し、電気伝導度は1.5×10
7simens/mであって、Cu電気伝導度の1/4であるNiをグリッドとして使用して吸収能を分析し、Cuグリッドの場合と比較した。Cuは、相対透磁率が小さい差異であるが、1より小さくて、半磁性を呈する一方、Niは、強磁性を示す。
図56〜
図58にNiグリッドの吸収能をCuグリッドと比較した。
図56〜
図58で、(a)は、磁性複合体とCuグリッドを使用した場合であり、(b)は、磁性複合体とNiグリッドを使用した場合であり、(c)は、磁性複合体がない空気中のCuグリッド(Cu空気グリッド)を使用した場合であり、(d)は、磁性複合体がない空気中のNiグリッド(Ni空気グリッド)を使用した場合である。
【0157】
上記の電気伝導度効果の分析において、Niの電気伝導度1.5×10
7simens/mを考慮すれば、グリッドの2つの特徴的ピークを示さなければならないが、Niグリッドは、透過係数と吸収能が4GHz近くで頂点を成し、周波数によって徐々に変化し、狭いピークは見えない。Niグリッドは、グリッド自体(air−grid)で既に75%の吸収能を示し、磁性複合体内では、磁性体によって10〜20%程度の向上した吸収能を示す。このような事実は、Niの大きい透磁率から起因することを示す。
【0158】
図59に磁性複合体の上端表面で磁場分布をグリッド材質と周波数によって示した。Niグリッドの場合、Cuグリッドと異なって、0.2GHzではグリッド格子に沿って磁場が分布しない。一方、5GHzでは、空気グリッド(air−grid)であるときや磁性体内に挿入されたときは、同一にグリッド格子に沿って磁場が強く分布する。このような事実は、Niグリッドが5GHzで自体的に共鳴現象を示すことを意味する。吸収能結果によれば、4GHzで若干強く磁場が分布することを推論することができる。1.2GHzは、磁性体共鳴周波数の近くなので、NiとCuの両方とも類似な水準の磁場強さを示す。Cuグリッドは、5GHzで空気グリッド(air−grid)状態では磁場が弱く、磁性体内にあるとき、強い磁場を示す。この周波数でCuグリッドによる誘電的効果と磁性体による磁気的効果が最もよく組み合わせられることが分かる。
【0159】
ヘ)グリッド複合体厚さが吸収能に及ぶ効果
磁性複合体にグリッドを含むグリッド複合体の厚さが吸収能に及ぶ効果を分析し、
図60〜
図62と表8に示した。
図60〜
図62で、(a)は、グリッド複合体の厚さが250μmである場合であり、(b)は、グリッド複合体の厚さが200μmである場合であり、(c)は、グリッド複合体の厚さが150μmである場合であり、(d)は、グリッド複合体の厚さが100μmである場合である。
【0160】
下記の表8にCuグリッド複合体の厚さによる吸収能を比較して示した。
【0162】
磁性複合体の場合、共鳴周波数より大きい周波数領域で厚さが増加するにつれて吸収能が増加することを示し、一般的には臨界厚さが存在し、それ以上に厚くなっても、吸収能に及ぶ影響が極めて弱い。グリッド複合体の場合にも、厚さが増加すれば、吸収能が増加するが、150μm程度で既に飽和されることが分かる。これは、グリッドによる効果が支配的なので、磁性体厚さが大きい影響を及ぼさないことが分かる。
【0163】
ト)グリッド挿入型磁性複合体の共鳴周波数及び複合体内の磁性含量が吸収能に及ぶ効果
磁性体共鳴周波数が吸収能に及ぶ影響を分析するために、
図63〜
図65のように、同一の透磁率値を有し、共鳴周波数だけが0.5GHz、1GHz、2.5GHzのように異なる場合に対して吸収能を分析し、結果を
図66〜
図68に示した。
図63は、共鳴周波数が0.5GHzである場合の周波数の変化による透磁率(permeability)の変化を示すグラフであり、
図64は、共鳴周波数が1GHzである場合の周波数の変化による透磁率の変化を示すグラフであり、
図65は、共鳴周波数が2.5GHzである場合の周波数の変化による透磁率の変化を示すグラフである。
図66〜
図68で、(a)は、共鳴周波数が0.5GHzである場合であり、(b)は、共鳴周波数が1GHzである場合であり、(c)は、共鳴周波数が2.5GHzである場合である。
【0164】
共鳴周波数が高ければ、吸収が強く生じる周波数も同一に高くなるが、吸収能が周波数に比例するので、同じ透磁率の値を有しても、高い周波数であるほど大きい吸収能を示す。異なる共鳴振動数を有する磁性体を混合し、広い吸収帯域を有する吸収体を作ることもできる。
【0165】
異なる共鳴周波数を有する磁性複合体にグリッドを適用したとき、吸収能の変化を
図69〜
図71に示した。
図69〜
図71で、(a)は、共鳴周波数が0.5GHzであり、Cu材質のグリッドである場合であり、(b)は、共鳴周波数が1GHzであり、Cu材質のグリッドである場合であり、(c)は、共鳴周波数が2.5GHzであり、Cu材質のグリッドである場合であり、(d)は、共鳴周波数が0.5GHzであり、Ni材質のグリッドである場合であり、(e)は、共鳴周波数が1GHzであり、Ni材質のグリッドである場合であり、(f)は、共鳴周波数が2.5GHzであり、Ni材質のグリッドである場合である。磁性体共鳴周波数より低い周波数では、低い吸収能を示し、共鳴周波数以後にグリッドによって広い周波数範囲にわたって高い吸収能を示すことは、前述した事実と同一である。磁性体共鳴周波数が高ければ、磁性体による吸収能が周波数に比例して大きくなるので、このレベルを基準にしてグリッドによる吸収能上昇効果が現われるので、低い共鳴周波数を有する磁性体にグリッドを適用したときより高い吸収能を示す。
【0166】
前述した磁性粒子複合体にグリッドを適用したとき、吸収能の変化を分析した。粒子形状とサイズが調節可能な粒子で透磁率を調節し、この粒子を樹脂に含有させた磁性複合体は、有力な吸収体材料であり、これにグリッドを適用すれば、良い結果を得ることができるものと期待される。磁性複合体透磁率は、
図18〜
図20と同一に選択し、CuグリッドとNiグリッドを適用したとき、吸収能の変化を
図72〜
図74と
図75〜
図77にそれぞれ示した。
図72〜
図74で、(a)は、磁性粒子の含有率が40体積%である場合であり、(b)は、磁性粒子の含有率が30体積%である場合であり、(c)は、磁性粒子の含有率が20体積%である場合であり、(d)は、磁性粒子の含有率が10体積%である場合である。
図75〜
図77で、(a)は、磁性粒子の含有率が40体積%である場合であり、(b)は、磁性粒子の含有率が30体積%である場合であり、(c)は、磁性粒子の含有率が20体積%である場合であり、(d)は、磁性粒子の含有率が10体積%である場合である。
【0167】
以上、本発明の好ましい実施例により詳細に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当該分野における通常の知識を有する者によって様々な変形が可能である。