特許第6017419号(P6017419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017419
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】水素処理触媒およびそれらの製造
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/34 20060101AFI20161020BHJP
   B01J 31/36 20060101ALI20161020BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20161020BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20161020BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20161020BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B01J31/34 M
   B01J31/36 M
   B01J31/22 M
   B01J37/08
   B01J37/20
   C10G45/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2013-513297(P2013-513297)
(86)(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-528490(P2013-528490A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】US2011038730
(87)【国際公開番号】WO2011153218
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】61/350,234
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・エル・ソールド
(72)【発明者】
【氏名】サバト・ミセオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・イー・ボームガートナー
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン・ジー・ニスター
(72)【発明者】
【氏名】パラサナ・エス・ベンカタラマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・イー・クリーワー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・チメンティ
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル・グスマン
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】ドロン・レビン
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−511326(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/126278(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00〜38/74
C10G 45/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その場形成された不飽和炭素原子を含有する水素処理触媒前駆体組成物の製造方法であって、
(a)元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属を含む触媒前駆体組成物を、少なくとも1つの第1級又は第2級アミン基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第1有機化合物もしくは少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第2有機化合物で処理して、有機的に処理された前駆体触媒組成物を形成する工程;及び
(b)前記有機的に処理された前駆体触媒組成物を、前記第1もしくは第2有機化合物が反応して前記第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加のその場形成された不飽和炭素原子を形成するのに十分であるが、前記第1もしくは第2有機化合物の50重量%超が揮発するほどには長くない時間、195℃〜250℃の温度で加熱し、
それによってその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
第6族からの前記少なくとも1種の金属が、Mo、W、またはそれらの組み合わせであり、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属が、Co、Ni、またはそれらの組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒前駆体組成物が、元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属をさらに含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記第1有機化合物が、10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含む、および/または前記第2有機化合物が、カルボン酸基を1つのみ含み、および10〜30個の炭素原子を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
その場形成された不飽和炭素原子を含有する前記触媒前駆体組成物が、第1有機化合物もしくは第2有機化合物から形成される反応生成物、第6族からの前記少なくとも1種の金属の酸化物形態、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属の酸化物形態、および任意選択的に20重量%以下のバインダーから本質的になるバルク金属水素処理触媒前駆体組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に請求項1〜5のいずれかに記載の方法に従って製造されたその場形成された不飽和炭素原子を含有する前記触媒前駆体組成物を硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法。
【請求項7】
下記、すなわち、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも29%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率を示す、
前記触媒前駆体組成物が、前記第1もしくは第2有機化合物中に存在する不飽和炭素原子の総含有率と比べて、少なくとも17%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率の増加を示す、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも0.9の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、および
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも15以下の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、
の1つ以上が満たされる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法に従って製造された前記触媒前駆体組成物を、硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法であって、下記、すなわち、
前記硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の平均数が1.5〜3.5であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の前記平均数が第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった同一の硫化された水素処理触媒組成物よりも少ない、少なくとも0.8の積重ね層であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも少なくとも57%大きい水素化脱窒素RMAを示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも少なくとも30%大きい水素化脱窒素RMAを示す;および
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す、
の1つ以上が満たされる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、水素処理触媒およびそれらの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境規制により留出物燃料中の硫黄および窒素レベルを下げることが義務づけられると同時に、製油所は、これらのヘテロ原子をより大量に含む原油を処理することを強いられている。さらに、残留S含有分子および/またはN含有分子は、水素化分解装置においてなどの、水素処理プロセスの下流で使用される触媒上の金属または酸性部位を汚染し得る。それ故、既存の水素処理装置の圧力能力が限られている場合に特に、より効率的な脱硫および/または脱窒を行うであろう触媒を見いだすことが必要とされている。
【0003】
水素処理触媒は通常、アルミナなどの、耐熱性担体上に促進剤としての1種以上の第8〜10族金属とともに硫化第6族金属を含む。バルク非担持触媒もまた公知である。水素化脱窒素だけでなく、水素化脱硫に特に好適である水素処理触媒は一般に、コバルト、ニッケル、鉄、またはそれらの組み合わせなどの金属で促進されるモリブデンもしくはタングステン硫化物を含む。これらの硫化触媒は一般に、層状またはプレートレット・モルフォロジを有する。
【0004】
水素処理触媒のナノ構造モルフォロジを修正する能力は、それらの活性および選択性を制御するための可能な方法を提供するように思われる。したがって水素処理触媒研究における重要な要点の一つは、ナノ構造を修正するための重要な合成ツールが硫化物構造中への炭素の組み込みを含むという認識であるように思われる。たとえば、特許文献1は、炭素含有触媒前駆体の使用が有機基なしの硫化物前駆体から調製された触媒よりも活性な触媒を与えることを教示している。酸化物触媒前駆体の調製における有機含浸助剤の使用もまた、これまで研究されてきた(非特許文献1、および特許文献2)。
【0005】
特許文献3において、骨格が少なくとも10個の炭素原子を含有する状態での(酸化物相の結晶格子内に配置された)界面活性剤アミンを含有するバルク二金属Ni(またはCo)/Mo(またはW)相を硫化すると、炭素を含まないバルク酸化物を硫化することによって得られるものと比べて減少した数の積重ねを有するMoS(またはWS)の積重ね層を含む触媒を与えることが実証された。同様な結果は、特許文献4においてバルク三元Ni−Mo−W触媒について報告された。より低い数の積重ねは、それらがMo/W硫化物のより小さい結晶の存在を暗示し、より小さい結晶が順繰りに触媒作用のために利用可能なより大きい表面積をもたらすので重要である。
【0006】
特許文献5は、触媒組成物の調製方法であって、(a)無機触媒担体に、(i)CoおよびNiから選択される第VIII族金属の塩、(ii)MoおよびWから選択される第VI族金属の塩、ならびに(iii)アミノアルコールおよびアミノ酸から選択される有効量の有機試剤を含有する水溶液を含浸させる工程と;(b)含浸触媒担体を乾燥させて実質的にすべての水を除去し、それによって担体触媒前駆体上に金属−有機成分をもたらす工程と;(c)実質的に乾燥した触媒前駆体を、有機試剤の少なくとも30%、しかしすべてではない量、を酸化し、炭素を含有する部分酸化触媒前駆体を生成するための条件下で酸素含有雰囲気の存在下に焼成する工程と;(d)部分酸化触媒前駆体を、硫化剤の存在下に硫化して硫化触媒組成物を製造する工程とを含む方法を開示している。ここでも硫化物触媒組成物は、有機化合物が前駆体中に存在せずに製造された同等の組成物よりも低い数の積重ねを有することが分かる。
【0007】
他の関連する可能性のある公報としては、特許文献6および特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10、ならびに特許文献11、特許文献12、特許文献13、および特許文献14を挙げることができるが、それらに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,528,089号明細書
【特許文献2】米国特許第3,975,302号明細書
【特許文献3】米国特許第7,591,942号明細書
【特許文献4】米国特許第7,544,632号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0072765号明細書
【特許文献6】米国特許第6,989,348号明細書
【特許文献7】米国特許第6,280,610号明細書
【特許文献8】欧州特許第0601722号明細書
【特許文献9】欧州特許第1041133号明細書
【特許文献10】欧州特許第0181035号明細書
【特許文献11】国際公開第96/41848号パンフレット
【特許文献12】国際公開第95/31280号パンフレット
【特許文献13】国際公開第00/41810号パンフレット
【特許文献14】国際公開第00/41811号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kotter,M.;Riekeft,L.;Weyland,F.;Studies in Surface Science and Catalysis(1983),16(Prep.Catal.3),521−30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
積重ねの数の減少は触媒表面積を増加させるのに重要であり得るが、それが促進剤原子(たとえば、Co、Ni)が硫化物積重ね上に適切に配置されることを必ずしも保証しないので、それは、それ自体、触媒活性を最大にするのに十分ではない。本発明によれば、硫化されたときに、硫化生成物の積重ねの数を減らすのみならず、促進剤金属の効率をも高め、それによって向上した水素処理活性の触媒をもたらす新規バルク混合金属酸化物触媒前駆体組成物が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
製油所は、環境規制が製品中の硫黄および窒素レベルを下げることを義務づけられていると同時に、これらのヘテロ原子をより大量に含む原油を処理することを強いられているので、既存装置がそれらの圧力能力に制限がある場合、および/またはより無反応性の原料がコストの視点から望ましい場合に特に、より効率的な脱硫および脱窒を行うことができる触媒を合成する必要がある。残留硫黄含有分子および/または窒素含有分子は、(水素化分解装置におけるなどの)水素化処理プロセスの下流で使用される触媒上の金属または酸部位を汚染し得るので、(たとえば、FCCおよび/または水素化分解装置への)水素処理原料の前処理の改善は、どういうふうに酸および/または金属触媒が動作するかに大きな影響を及ぼし得る。アルミナ担持NiまたはNi/Co促進硫化モリブデンは、中間圧力および比較的高い圧力での水素化脱窒素(HDN)または水素化脱硫(HDS)のために使用される従来からの触媒であり、アルミナ担持Co促進硫化モリブデンは、比較的低い圧力でのHDSのための従来からの触媒である。
【0012】
改善されたモデル化努力は、これらの金属硫化物触媒の複雑な構造敏感性をより良く理解するために世界中で行われているところである。合成的視点から、金属硫化物モルフォロジを体系的に制御する方法を突き止めることは、大きな科学的課題および決定的に重要な技術的課題のままである。第6族(たとえば、Moおよび/またはW)硫化物の層状構造については、これは、横寸法、結晶子中の積重ねの数、および第6族硫化物積重ね上の促進剤原子の適切な配置の制御などの考慮事項を含むことができる。
【0013】
積重ねのより少ない数が、それ自体、より小さい硫化物結晶子を一般に示すことを指摘することは重要であるが、それは、促進剤原子(CoまたはNi)が適切に配置されていることを保証しない。第6族/第8〜10族(たとえば、NiMo、NiMoW、および/またはNiW)酸化物前駆体への様々な無機成分の置換は、生じるバルク硫化物触媒のナノ構造を有意に変えなかったことが以前に観察されている。バルクNiMoW触媒は水素処理反応を比較的高い圧力でうまく行うが、改善された触媒を開発する機会は依然として存在する。
【0014】
本発明による前駆体の調製において有機化合物を組み込むことの一利点は、有機化合物が酸化物−有機化合物ハイブリッドを形成する酸化物相の構造(結晶質であろうと非晶質であろうと)中へ組み込まれているときよりも前駆体の密度が実質的に高い傾向があることであり得る。理論に制約されることなく、酸化物−有機化合物ハイブリッド相が形成されるとき、有機化合物は、ハイブリッド相の格子中で「スペース」を取り得るし、ある場合には、混合金属酸化物と比べて密度を大幅に低下させるおよび/または相中に存在する無機成分の相対量をさらに制限する。本明細書に記載される調製のほとんどにおいて、有機成分は、酸化物相の空の孔隙であったところに配置されており、酸化物相の高密度を実質的に損ねず、および/または酸化物相の表面(−OH)基に配位していると考えられる。それにもかかわらず、有機化合物の存在は、積重ねの数の減少で見られる前駆体から生成する硫化物の結晶子サイズに著しく影響を及ぼすことができる。再び理論に制約されることなく、本発明の方法の追加または代わりの利点は、第8〜10族からの促進剤金属(たとえば、Ni)がホスト第6族硫化物相に関して非常にうまく位置しているように思われることであり得る。
【0015】
したがって、本発明の一態様は、元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに(i)少なくとも1つのアミン基および少なくとも10個の炭素を含有する第1有機化合物もしくは(ii)少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素を含有する第2有機化合物から形成されるが、(i)および(ii)の両方からは形成されない反応生成物を含む触媒前駆体組成物であって、反応生成物が、(i)第1有機化合物もしくは(ii)第2有機化合物と比べて、追加の不飽和炭素原子を含有し、触媒前駆体組成物の金属が結晶格子に配列され、そして反応生成物が結晶格子内に配置されていない組成物に関する。この触媒前駆体組成物は、バルク金属触媒前駆体組成物または担持金属触媒前駆体組成物であることができる。それがバルク混合金属触媒前駆体組成物であるとき、反応生成物は、組成物(具体的にはアミン含有化合物またはカルボン酸含有化合物であるが)を、第1もしくは第2有機化合物が反応して第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加のその場不飽和炭素原子を形成するのに十分であるが、第1もしくは第2有機化合物の50重量%超が揮発するほどには長くない時間、約195℃〜約250℃の温度に加熱し、それによってその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を形成することによって得ることができる。したがって、バルク混合金属水素処理触媒組成物は、このバルク混合金属触媒前駆体組成物から、それを十分な硫化条件下に硫化することによって製造することができ、その硫化は、その場アミドの存在下で開始されなければならない(すなわち、アミドは、硫化工程の開始まで、実質的に存在しなければならず、または有意に分解されてはならない)。
【0016】
本発明の別の態様は、その場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物の製造方法であって、(a)元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属を含む触媒前駆体組成物を、少なくとも1つのアミン基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第1有機化合物もしくは少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第2有機化合物で処理して、有機的に処理された前駆体触媒組成物を形成する工程と;(b)前記有機的に処理された前駆体触媒組成物を、第1もしくは第2有機化合物が反応して第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加のその場不飽和炭素原子を形成するのに十分であるが、第1もしくは第2有機化合物の50重量%超が揮発するほどには長くない時間、約195℃〜約250℃の温度で加熱し、それによってその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を形成する工程とを含む方法に関する。この方法は、バルク金属触媒前駆体組成物または担持金属触媒前駆体組成物を製造するために用いることができる。バルク混合金属触媒前駆体組成物を製造するために用いられるとき、その場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物は、一実施形態においては、反応生成物、第6族からの少なくとも1つの金属の酸化物形態、第8〜10族からの少なくとも1種の金属の酸化物形態、および任意選択的に約20重量%以下のバインダーから本質的になる。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、上記の前述の方法のいずれかに従って製造されるその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を硫化する工程または上記の触媒前駆体組成物のいずれかを、硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な硫化条件下に硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法に関する。
【0018】
上記の組成物および/または方法のいずれかの実施形態においては、第6族からの少なくとも1種の金属は、Moおよび/またはWであることができ、第8〜10族からの少なくとも1種の金属は、Coおよび/またはNiであることができる。上記の組成物および/または方法のいずれかの別の実施形態においては、触媒前駆体組成物は、元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属、たとえばVおよび/またはNbをさらに含むことができる。
【0019】
上記の組成物および/または方法のいずれかの実施形態においては、第1有機化合物は、10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含むことができるおよび/または第2有機化合物は、カルボン酸基を1つのみ含むことができ、10〜30個の炭素原子を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】比較例1に従って製造された、合成されままの乾燥六方晶系NiWO触媒前駆体のX線回折パターンを示す。
図2】実施例1に従って製造された、合成されままの乾燥NiWO(1,2−ジアミノシクロヘキサン)触媒前駆体のX線回折パターンを示す。
図3】実施例2に従って製造された、合成されままの乾燥NiWO(エチレンジアミン)触媒前駆体のX線回折パターンを示す。
図4】比較例1のNiWO触媒前駆体、実施例2のNiWO(エチレンジアミン)触媒前駆体、ならびに実施例3のNiWO/(en)およびNiWO/(en)/クエン酸0.33触媒前駆体のX線回折パターンを示す。
図5】比較例1の硫化NiWO触媒、ならびに約320℃での先行N処理ありおよびなしの、実施例3の硫化NiWO/(en)、硫化NiWO/(en)/クエン酸0.33、および硫化NiWO/クエン酸0.33触媒のX線回折パターンを示す。
図6】実施例3の硫化NiWO/(en)/クエン酸0.33触媒および実施例4の硫化NiWO/クエン酸0.33/(en)触媒および硫化NiWO/クエン酸0.33プラス(en)触媒のX線回折パターンを示す。
図7】実施例5のアミンおよび有機酸含浸NiWO前駆体から調製された硫化触媒のX線回折パターンを示す。
図8】実施例6に従って製造されたNiW0.975Nb0.025触媒前駆体および比較例1に従って製造されたNiWO触媒前駆体のX線回折パターンを比較する。
図9】実施例7に従って製造されたCoW0.50.5触媒前駆体および比較例1に従って製造されたNiWO触媒前駆体のX線回折パターンを比較する。
図10】基準触媒の活性と比べて、ある種の実施例5触媒についての時間オンストリーム(又はストリーム上の時間)に対する相対水素化脱窒素活性のグラフを示す。
図11】HS/H中での硫化後の触媒Aおよび触媒C〜FのX線回折スペクトルを示す。
図12】触媒EおよびFと同様に処理された触媒前駆体についてのアミド形成ならびに空気および窒素中の分解を示す。
図13】様々なコバルト含有触媒前駆体酸化物についてのX線回折スペクトルを示す。
図14】有機処理ありおよびなしの、NiW含有触媒前駆体酸化物およびNiMoW含有触媒前駆体酸化物についてのX線回折スペクトルを示す。
図15】様々な温度でおよび様々な条件下に2つの有機化合物を使用する処理を受けたバルク触媒についての13C NMRスペクトルを示す。
図16】様々な温度でおよび様々な条件下に2つの有機化合物を使用する処理を受けたバルク触媒を特徴付ける赤外データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載される本発明の一態様は、元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに(i)少なくとも1つのアミン基を含有する第1有機化合物、もしくは(ii)前記第1有機化合物とは別の、少なくとも1つのカルボン酸基を含有する第2有機化合物から形成されるが、(i)および(ii)の両方からは形成されない反応生成物を含む触媒前駆体組成物に関する。この反応生成物が、たとえば、高温などの条件での少なくとも部分的な分解/脱水素からの、第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加の不飽和を含有するとき、あらゆる中間組成物または最終組成物中の追加の不飽和の存在は、当該技術分野において周知の方法によって、たとえば、FTIRおよび/または核磁気共鳴(13C NMR)技法によって測定することができる。この触媒前駆体組成物は、バルク金属触媒前駆体組成物または不均一(担持)金属触媒前駆体組成物であることができる。
【0022】
さらに広い意味では、本発明のこの態様は、元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに(i)少なくとも1つの第1官能基を含有する第1有機化合物もしくは(ii)前記第1有機化合物とは別の、少なくとも1つの第2官能基を含有する第2有機化合物から形成されるが、(i)および(ii)の両方からは形成されない少なくとも部分的な分解から形成された分解/脱水素反応生成物を含む触媒前駆体組成物に関する。この分解/脱水素反応性生物により追加の不飽和が反応性生物の中にその場で生じる。
【0023】
本明細書で用いるところでは、用語「バルク」は、混合金属酸化物触媒組成物を説明するときには、触媒組成物がキャリアもしくは担体物質を必要としないという点において自立していることを示す。バルク触媒がそれらの組成物中にある少量(たとえば、触媒組成物の総重量を基準として、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、または実質的になしのキャリアもしくは担体)のキャリアもしくは担体を有してもよいことはよく理解されており;たとえば、バルク水素処理触媒は、たとえば、触媒の物理的特性および/または熱特性を向上させるために、少量のバインダーを含有してもよい。対照的に、不均一または担持触媒系は、1つ以上の触媒活性物質が、多くの場合に含浸またはコーティング技法を用いて、沈着させられているキャリアもしくは担体を典型的には含む。それにもかかわらず、キャリアもしくは担体なしの(または少量のキャリアもしくは担体ありの)不均一触媒系は、バルク触媒と一般に言われ、共沈澱技法によって頻繁に形成される。
【0024】
触媒前駆体がバルク混合金属触媒前駆体組成物であるとき、反応生成物は、この組成物(具体的には第1もしくは第2有機化合物、またはアミン含有化合物もしくはカルボン酸含有化合物であるが)を、第1もしくは第2有機化合物が、脱水素、および/または少なくとも部分的な分解してその場で反応性生物の中で追加の不飽和が形成するのに十分な時間、約195℃〜約250℃の温度に加熱することによって得ることができる。したがって、バルク混合金属水素処理触媒組成物は、このバルク混合金属触媒前駆体組成物から、それを十分な硫化条件下に硫化することによって製造することができ、その硫化は、(第1もしくは第2有機化合物の典型的には非官能化有機部分の、たとえば、有機化合物の脂肪族部分の、少なくとも部分的な分解から、たとえば、酸素の存在下での酸化的脱水素によって、および/または妥当な濃度の酸素の不在下での非酸化的脱水素によって、および/または有機化合物の不飽和部分を拡大する不飽和の共役化/芳香族化によって生じる)その場追加不飽和反応生成物の存在下に開始されねばならない。
【0025】
本発明の様々な態様において有用な触媒前駆体組成物および水素処理触媒組成物は、元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属および元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに任意選択的に元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属を有利には含むことができる(またはそれらから本質的になる金属成分を有することができる)。一般に、これらの金属は、単一金属酸化物の形態を典型的にはとることができるが、たとえば、水酸化物、オキシ水酸化物、オキシ炭酸塩、炭酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩など、またはそれらの幾つかの組み合わせなどの、様々な他の酸化物形態で存在してもよい、それらの実質的に完全酸化形態で存在する。好ましい一実施形態においては、第6族金属は、Moおよび/またはWであることができ、第8〜10族金属は、Coおよび/またはNiであることができる。一般に、第6族金属と第8〜10族の金属との原子比は、約2:1〜約1:3、たとえば約5:4〜約1:2、約5:4〜約2:3、約5:4〜約3:4、約10:9〜約1:2、約10:9〜約2:3、約10:9〜約3:4、約20:19〜約2:3、または約20:19〜約3:4であることができる。組成物が第5族からの少なくとも1種の金属をさらに含むとき、その少なくとも1種の金属は、Vおよび/またはNbであることができる。存在するとき、第5族金属の量は、第6族金属と第5族金属との原子比が約99:1〜約1:1、たとえば約99:1〜約5:1、約99:1〜約10:1、または約99:1〜約20:1となり得るようなものであることができる。さらにまたはあるいは、第5族金属が存在するとき、第5族金属プラス第(6)族金属の合計と第8〜10族の金属との原子比は、約2:1〜約1:3、たとえば約5:4〜約1:2、約5:4〜約2:3、約5:4〜約3:4、約10:9〜約1:2、約10:9〜約2:3、約10:9〜約3:4、約20:19〜約2:3、または約20:19〜約3:4であることができる。
【0026】
本明細書で用いるところでは、周期表族についての番号付け体系は、Chemical and Engineering News,63(5),27(1985)に開示されている通りである。
【0027】
本発明による触媒前駆体組成物中のおよび水素処理触媒組成物中の金属は、硫化前にあらゆる好適な形態で存在することができるが、多くの場合金属酸化物として提供することができる。バルク混合金属酸化物として提供されるとき、本発明による触媒前駆体組成物のおよび水素処理触媒組成物のそのようなバルク酸化物成分は、当該技術分野において公知のあらゆる好適な方法によって調製することができるが、一般には、(1)(a)タングステン酸塩および/またはモリブデン酸塩などの、第6族金属のオキシアニオン、または(b)タングステン酸および/または三酸化モリブデンなどの、第6族金属の不溶性(酸化物、酸)形態、(2)炭酸ニッケルなどの、第8〜10族金属の塩、および任意選択的に、存在するとき、(3)(a)バナジウム酸塩および/またはニオブ酸塩などの、第5族金属の塩またはオキシアニオン、または(b)ニオブ酸および/または五酸化二ニオブなどの、第5族金属の不溶性(酸化物、酸)形態を含む、スラリー、典型的には水性スラリーを形成することによって製造することができる。このスラリーは、好適な圧力で、たとえば、大気圧または自生圧力で、適切な時間、たとえば、約4時間〜約24時間、約60℃〜約150℃などの、好適な温度に加熱することができる。
【0028】
好適な混合金属酸化物組成物の非限定的な例としては、ニッケル−タングステン酸化物、コバルト−タングステン酸化物、ニッケル−モリブデン酸化物、コバルト−モリブデン酸化物、ニッケル−モリブデン−タングステン酸化物、コバルト−モリブデン−タングステン酸化物、コバルト−ニッケル−タングステン酸化物、コバルト−ニッケル−モリブデン酸化物、コバルト−ニッケル−タングステン−モリブデン酸化物、ニッケル−タングステン−ニオブ酸化物、ニッケル−タングステン−バナジウム酸化物、コバルト−タングステン−バナジウム酸化物、コバルト−タングステン−ニオブ酸化物、ニッケル−モリブデン−ニオブ酸化物、ニッケル−モリブデン−バナジウム酸化物、ニッケル−モリブデン−タングステン−ニオブ酸化物、ニッケル−モリブデン−タングステン−バナジウム酸化物など、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0029】
好適な混合金属酸化物組成物は、少なくとも約20m/g、たとえば少なくとも約30m/g、少なくとも約40m/g、少なくとも約50m/g、少なくとも約60m/g、少なくとも約70m/g、または少なくとも約80m/gの(Quantachrome Autosorb(商標)装置を使用する窒素BET法によって測定される)比表面積を有利には示すことができる。さらにまたはあるいは、混合金属酸化物組成物は、約500m/g以下、たとえば約400m/g以下、約300m/g以下、約250m/g以下、約200m/g以下、約175m/g以下、約150m/g以下、約125m/g以下、または約100m/g以下の比表面積を示すことができる。
【0030】
混合金属酸化物(スラリー)組成物を分離し、乾燥させた後、(i)少なくとも1つのアミン基を含有する有効量の第1有機化合物、または(ii)第1有機化合物とは別の、少なくとも1つのカルボン酸基を含有する有効量の第2有機化合物で、一般に含浸によって、処理することができるが、(i)と(ii)の両方では処理できない。
【0031】
本明細書に記載される組成物および/または方法のいずれかの実施形態においては、第1有機化合物は、少なくとも10個の炭素原子を含むことができ、たとえば10〜20個の炭素原子を含むことができる、または10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含むことができる。さらにまたはあるいは、第2有機化合物は、少なくとも10個の炭素原子を含むことができ、たとえば10〜20個の炭素原子を含むことができる、またはカルボン酸基を1つのみ含むことができ、10〜30個の炭素原子を有することができる。
【0032】
アミン基を含有する有機化合物の代表例としては、トリアコンタニルアミン、オクタコサニルアミン、ヘキサコサニルアミン、テトラコサニルアミン、ドコサニルアミン、エルシルアミン、エイコサニルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、リノレイルアミン、ヘキサデシルアミン、サピエニルアミン、パルミトレイルアミン、テトラデシルアミン、ミリストレイルアミン、ドデシルアミン、デシルアミン、ノニルアミン、シクロオクチルアミン、オクチルアミン、シクロヘプチルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘキシルアミン、イソペンチルアミン、n−ペンチルアミン、t−ブチルアミン、n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン、アダマンタンアミン、アダマンタンメチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、ピラゾール、ピロール、ピロリジン、ピロリン、インダゾール、インドール、カルバゾール、ノルボルニルアミン、アニリン、ピリジルアミン、ベンジルアミン、アミノトルエン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、バリン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジアミノエイコサン、ジアミノオクタデカン、ジアミノヘキサデカン、ジアミノテトラデカン、ジアミノドデカン、ジアミノデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、エチレンジアミン、エタノールアミン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,3 ジアミノ−2−プロパノールなど、およびそれらの組み合わせなどの、第一級および/または第二級、線状、分岐、および/または環状アミンを挙げることができるが、それらに限定されない。ある実施形態においては、処理中の組成物中の第6族金属と第1有機化合物とのモル比は、約1:1〜約20:1であることができる。
【0033】
第1有機化合物からのアミン官能基は、上述の通り、第一級または第二級アミンを含むことができるが、第四級アミンを一般には含まず、ある場合には第三級も含まない。さらに、第1有機化合物は、アミンに加えて、他の官能基を任意選択的に含有することができる。たとえば、第1有機化合物は、同時にアミン官能基およびカルボン酸官能基を有する、アミノ酸を含むことができる。カルボン酸に加えて、アミン含有有機化合物中のそのような第2の官能基の他の例としては一般に、ヒドロキシル、アルデヒド、酸無水物、エーテル、エステル、イミン、イミド、ケトン、チオール(メルカプタン)、チオエステルなど、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0034】
さらにまたはあるいは、第1有機化合物のアミン部分は、そのアミン部分(とりわけアミン窒素およびそれに結合した構成要素)がルイス塩基としてのそのオペラビリティ(又は作用性:operability)を保持する限り、その化合物中のより大きい官能基の一部であることができる。たとえば、第1有機化合物は、その官能基がアミド基のカルボニル部分に結合したアミン部分を含む、ウレアを含むことができる。そのような場合には、このウレアは、そのような包含が特に否定される状況を除いて、本明細書における本発明の目的のためには「アミン含有」官能基と機能上見なすことができる。ウレアに加えて、第1有機化合物中の少なくとも1つのアミン基を満たすために好適である可能性があるようなアミン含有官能基の他の例としては一般に、ヒドラジド、スルホンアミドなど、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0035】
カルボン酸を含有する有機化合物の代表例としては、トリアコンタン酸、オクタコサン酸、ヘキサコサン酸、テトラコサン酸、ドコサン酸、エルカ酸、ドコサヘキサン酸、エイコサン酸、エイコサペンタン酸、アラキドン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、エライジン酸、ステアリドン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、ヘキサデカン酸、サピエン酸、パルミトレイン酸、テトラデカン酸、ミリストレイン酸、ドデカン酸、デカン酸、ノナン酸、シクロオクタン酸、オクタン酸、シクロヘプタン酸、ヘプタン酸、シクロヘキサン酸、ヘキサン酸、アダマンタンカルボン酸、ノルボルナン酢酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、桂皮酸、バニリン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTAなどの)、フマル酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、バリン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらの組み合わせなどの、第一級および/または第二級、線状、分岐、および/または環状アミンを挙げることができるが、それらに限定されない。ある実施形態においては、処理中の組成物中の第6族金属と第2有機化合物とのモル比は、約3:1〜約20:1であることができる。
【0036】
第2有機化合物は、カルボン酸に加えて、他の官能基を任意選択的に含有することができる。たとえば、第2有機化合物は、同時にカルボン酸官能基およびアミン官能基を有するアミノ酸を含むことができる。アミンに加えて、カルボン酸含有有機化合物中のそのような第2の官能基の他の例としては一般に、ヒドロキシル、アルデヒド、酸無水物、エーテル、エステル、イミン、イミド、ケトン、チオール(メルカプタン)、チオエステルなど、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。ある実施形態においては、第2有機化合物は、カルボン酸官能基に加えて追加のアミンまたはアルコール官能基をまったく含有しないことができる。
【0037】
さらにまたはあるいは、第2有機化合物の反応性部分は、その化合物中のより大きい官能基の一部であることができるおよび/またはこの反応性部分および/または誘導体がルイス酸としてのそのオペラビリティを保持するように、カルボン酸と十分同様に挙動するカルボン酸の誘導体であることができる。カルボン酸誘導体の一例としては、アルキル基が官能基のカルボキシレート部分のルイス酸官能性を(妥当な時間スケールにわたって)実質的に妨害しない、アルキルカルボキシレートエステルを挙げることができる。
【0038】
ある種の実施形態においては、有機化合物/添加剤および/または反応生成物は、混合金属酸化物前駆体組成物の結晶格子内に配置されず/組み込まれず、たとえば、その代わりに前駆体組成物の表面上におよび/または細孔容積内に配置されるおよび/またはXRDおよび/または他の結晶学的スペクトルによって観察されるように、混合金属酸化物前駆体組成物の結晶格子に有意に影響を及ぼさないやり方で1つ以上の金属もしくは金属の酸化物と会合している(に結合している)。これらのある種の実施形態においては、混合金属酸化物前駆体組成物の硫化バーションは、酸化物格子が有意に影響を受けないけれども、その硫化形態が有機化合物/添加剤および/または反応生成物によって影響を依然として受け得ることが指摘される。
【0039】
追加の不飽和を含有するものなどの、分解/脱水素反応生成物を含有する触媒前駆体組成物を達成するための一方法は、(a)元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属および元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属を含む、触媒前駆体組成物を、少なくとも1つのアミン基を含有する第1有機化合物もしくは前記第1有機化合物とは別の、少なくとも1つのカルボン酸基を含有する第2有機化合物で処理されるが、両方では処理されない有機的に処理された前駆体触媒組成物を形成する工程;及び(b)有機的に処理された前駆体触媒組成物を、第1もしくは第2有機化合物が反応して追加の不飽和を含有するその場生成物を形成するのに十分な温度で、十分な時間加熱し(たとえば、第1もしくは第2有機化合物の性質に依存して、温度は、約200℃〜約230℃などの、約195℃〜約250℃であることができる)、それによってさらに不飽和の触媒前駆体組成物を形成する工程を含む。
【0040】
ある種の有利な実施形態においては、上記の加熱工程(b)は、第1もしくは第2有機化合物のある(典型的には非官能化有機)部分の少なくとも部分的な分解(たとえば、酸化的および/または非酸化的脱水素および/または芳香族化)から生じる可能性がある、追加の不飽和を形成するように十分に長い時間、しかし一般には少なくとも部分的な分解が第1もしくは第2有機化合物の50重量%超を揮発させるほどには長くない時間行うことができる。理論に制約されることなく、触媒前駆体組成物を硫化して硫化された(水素処理)触媒組成物を形成した時点でその場形成された、そして存在する追加の不飽和は、何らかの形で下記の1つ以上を制御するのに役立つことができると考えられる、すなわち、硫化結晶子のサイズ;追加の不飽和を有するその場形成された反応生成物の不在下に製造された硫化触媒についてよりも高い割合の1種以上のタイプの金属が、(水素化処理、水素化脱窒素、水素化脱硫、水素化脱酸素、水素化脱金属、選択的水素化分解などの水素化分解、水素異性化、水素化脱ロウなど、およびそれらの組み合わせなどの、および/または芳香族飽和、二重結合の水素化など、およびそれらの組み合わせなどの、望ましくない水素処理反応を低減する/最小限にするための)所望の水素処理反応を促進するための適切な部位にあるように、硫化中の金属の1種以上の配位;ならびに(たとえば、金属部位のより高い割合が、所与の時間スケールで同じタイプのより多くの水素化脱硫反応を触媒することができるのでおよび/または金属部位のより高い割合が、同様な時間スケールでより困難な水素化脱硫反応を触媒することができるので)1種以上のタイプの金属のより高い割合(またはそれぞれ)が、追加の不飽和を有するその場形成された反応生成物の不在下に製造された硫化触媒についてよりも所望の水素処理反応を促進するのに効率的であるように、硫化後の金属の1種以上を含む配位/触媒作用。
【0041】
バルク混合金属触媒前駆体組成物を製造するために使用されるとき、その場反応した触媒前駆体組成物は、一実施形態においては、反応生成物、第6族からの少なくとも1種の金属の酸化物形態、第8〜10族からの少なくとも1種の金属の酸化物形態、および任意選択的に約20重量%以下(たとえば、約10重量%以下)のバインダーから本質的になることができる。
【0042】
少なくとも1種の第6族金属および少なくとも1種の第8〜10族金属を含有する触媒前駆体の第1もしくは第2有機化合物での処理後に、有機的に処理された触媒前駆体組成物は、反応生成物を形成するのに十分に高い、任意選択的にしかし好ましくは(たとえば、反応平衡を少なくとも部分的に脱水素した/分解した生成物側に推し進めるために)あらゆる脱水素/分解副生物が容易に除去されることを可能にするのに十分に高い温度に加熱することができる。さらにまたはあるいは、有機的に処理された触媒前駆体組成物は、(追加の不飽和を含有する)反応生成物を実質的に保持するように、反応生成物を有意に分解させないように、および/または(反応してもしなくても)第1もしくは第2有機化合物を著しく(有機化合物の50重量%超を)揮発させないように十分に低い温度に加熱することができる。
【0043】
上記考察に基づく具体的な温度下限および上限は、加熱が行われる雰囲気、第1有機化合物、第2有機化合物、反応生成物、および/またはあらゆる反応副生物の化学的および/または物理的特性、またはそれらの組み合わせを含み得るが、それらに限定されない様々な要因に大いに依存し得ると考えられる。一実施形態においては、加熱温度は、少なくとも約120℃、たとえば少なくとも約150℃、少なくとも約165℃、少なくとも約175℃、少なくとも約185℃、少なくとも約195℃、少なくとも約200℃、少なくとも約210℃、少なくとも約220℃、少なくとも約230℃、少なくとも約240℃、または少なくとも約250℃であることができる。さらにまたはあるいは、加熱温度は、約400℃以下、たとえば約375℃以下、約350℃以下、約325℃以下、約300℃以下、約275℃、約250℃以下、約240℃以下、約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または約200℃以下であることができる。
【0044】
一実施形態においては、加熱は、低酸化性雰囲気中または非酸化性雰囲気中で(便利には窒素などの、不活性雰囲気中で)行うことができる。代わりの実施形態においては、加熱は、中程度酸化性環境中または高度酸化性環境中で行うことができる。別の代わりの実施形態においては、加熱は、1つ以上の加熱工程を低酸化性雰囲気中または非酸化性雰囲気中で行うことができ、1つ以上の加熱工程を中程度酸化性環境中または高度酸化性環境中で行うことができる、または両方である多段階プロセスを含むことができる。もちろん、環境中の加熱のための時間の期間は、第1もしくは第2有機化合物に合わせることができるが、典型的には約5分〜約168時間、たとえば約10分〜約96時間、約10分〜約48時間、約10分〜約24時間、約10分〜約18時間、約10分〜約12時間、約10分〜約8時間、約10分〜約6時間、約10分〜約4時間、約20分〜約96時間、約20分〜約48時間、約20分〜約24時間、約20分〜約18時間、約20分〜約12時間、約20分〜約8時間、約20分〜約6時間、約20分〜約4時間、約30分〜約96時間、約30分〜約48時間、約30分〜約24時間、約30分〜約18時間、約30分〜約12時間、約30分〜約8時間、約30分〜約6時間、約30分〜約4時間、約45分〜約96時間、約45分〜約48時間、約45分〜約24時間、約45分〜約18時間、約45分〜約12時間、約45分〜約8時間、約45分〜約6時間、約45分〜約4時間、約1時間〜約96時間、約1時間〜約48時間、約1時間〜約24時間、約1時間〜約18時間、約1時間〜約12時間、約1時間〜約8時間、1時間分〜約6時間、または約1時間〜約4時間の間にあることができる。
【0045】
ある実施形態においては、有機的に処理された触媒前駆体組成物および/または反応生成物を含有する触媒前駆体組成物は、適用可能であれば、関連組成物の総重量を基準として、約4重量%〜約20重量%、たとえば約5重量%〜約15重量%の、第1および第2有機化合物に由来するおよび/または縮合生成物に由来する炭素を含有することができる。
【0046】
さらにまたはあるいは、加熱工程の結果として、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、少なくとも29%、たとえば少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、または少なくとも約33%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、(芳香族炭素原子を含む)不飽和炭素原子の含有率を示すことができる。なおいっそうさらにまたはあるいは、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、約70%以下、たとえば約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、または約35%以下の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、(芳香族炭素原子を含む)不飽和炭素原子の含有率を任意選択的に示すことができる。さらになおいっそうさらにまたはあるいは、加熱工程の結果として、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、少なくとも約17%、たとえば少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、または少なくとも約21%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、(芳香族炭素原子を含む)不飽和炭素原子の含有率の増加を示すことができる(たとえば、未反応化合物の合わせた不飽和レベルが炭素原子の約11.1%であるような、第1有機化合物がオレイルアミンであり、そして第2有機化合物がオレイン酸である実施形態においては、加熱すると不飽和炭素の約17%増加は、反応生成物中の不飽和炭素原子の約28.1%含有率に相当する)。その上なおいっそうさらにまたはあるいは、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、約60%以下、たとえば約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、または約25%以下の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、(芳香族炭素原子を含む)不飽和炭素原子の含有率の増加を任意選択的に示すことができる。
【0047】
再びなおいっそうさらにまたはあるいは、加熱工程の結果として、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、少なくとも0.9、たとえば少なくとも1.0、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも2.0、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.7、または少なくとも3.0の、約1380cm−1〜約1450cm−1(たとえば、約1395cm−1〜約1415cm−1)に中心のあるデコンボリューションされたピーク(deconvoluted peak)と比べて、約1700cm−1〜約1730cm−1に(たとえば、約1715cm−1に)中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子と芳香族炭素原子の比を示すことができる。再びさらになおいっそうさらにまたはあるいは、有機的に処理された触媒前駆体からの反応生成物は、15以下、たとえば10以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、または3.0以下の、約1380cm−1〜約1450cm−1(たとえば、約1395cm−1〜約1415cm−1)に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、約1700cm−1〜約1730cm−1に(たとえば、約1715cm−1に)中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子と芳香族炭素原子との比を示すことができる。
【0048】
(硫化された)水素処理触媒組成物は次に、この反応生成物を含有する触媒前駆体組成物を硫化することによって製造することができる。硫化は、反応生成物を含有する触媒前駆体組成物を、この組成物を実質的に硫化するのに十分なおよび/または硫化組成物を水素処理触媒として活性にするのに十分な温度でおよび時間、硫黄含有化合物(たとえば、化石油/鉱油ストリームに、バイオ成分ベースの油ストリームに、それらの組み合わせに、または前述の油ストリームとは別の硫黄含有ストリームに由来してもよい、元素状硫黄、硫化水素、ポリスルフィドなど、またはそれらの組み合わせ)と接触させることによって一般に実施される。たとえば、硫化は、約30分〜約96時間、たとえば、約1時間〜約48時間または約4時間〜約24時間の期間、約300℃〜約400℃、たとえば、約310℃〜約350℃の温度で実施することができる。硫化は、金属(酸化物)含有組成物を、必要ならば、バインダーと組み合わせる前にまたは組み合わせた後に、そして組成物を造形(又は成型)触媒へ成形する前にまたは成形した後に一般に実施することができる。硫化は、さらにまたはあるいは水素処理反応器中でその場で行うことができる。明らかに、第1もしくは第2有機化合物の反応生成物がその場形成された追加の不飽和を含有する程度に、前記反応生成物のその場形成した追加の不飽和を有意に維持することが、硫化(および/または有機処理後のあらゆる触媒処理)にとって一般に望ましいであろう。
【0049】
硫化触媒組成物は、(典型的には有機的に処理されたバルク触媒についての)積重ねの平均数が約1.5〜約3.5、たとえば約1.5〜約3.0、約2.0〜約3.3、約2.0〜約3.0、または約2.1〜約2.8であることができるように、複数の積重ねYS層(ここで、Yは第6族金属である)を含む層状構造を示すことができる。たとえば、本発明による金属(酸化物)含有前駆体組成物の処理は、未処理金属(酸化物)含有前駆体組成物と比べて、少なくとも約0.8、たとえば少なくとも約1.0、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、または少なくとも約1.5の、処理前駆体の積重ねの平均数の減少を提供することができる。したがって、積重ねの数は、第1もしくは第2有機化合物処理なしで製造された同等の硫化混合金属(酸化物)含有前駆体組成物で得られるものよりもかなり少ないものであることができる。積重ねの平均数の減少は、たとえば、関連硫化組成物のX線回折スペクトルによって証明することができ、そのスペクトルでは(002)ピークは本発明による有機処理なしで(および/または、ある種の場合には、10個未満の炭素原子を有する有機化合物を使用する単一の有機化合物処理のみで)製造された硫化混合金属(酸化物)含有前駆体組成物のスペクトルにおける相当するピークよりも(ピークの半分高さで同じ幅で測定される)著しく幅広く見える。X線回折に加えてまたはその代わりに、透過電子顕微鏡法(TEM)を用いて、多数の微細結晶を含む、関連硫化組成物の顕微鏡写真を得ることができ、その顕微鏡写真画像内で多数の微細結晶は、それぞれ中の積重ねの数について視覚的に分析することができ、その数を次に顕微鏡写真視覚領域にわたって平均して、本発明による有機処理なしで(および/または、ある種の場合には、単一の有機化合物処理のみで)製造された硫化混合金属(酸化物)含有前駆体組成物と比べて積重ねの平均数の減少を証明することができる積重ねの平均数を得ることができる。
【0050】
上記の硫化触媒組成物は、単独でかバインダーと組み合わせてかのどちらかで、水素処理触媒として使用することができる。硫化触媒組成物がバルク触媒である場合には、ほんの比較的少量のバインダーが添加されてもよい。しかし、硫化触媒組成物が不均一/担持触媒である場合には、通常バインダーは、触媒組成物のかなりの部分、たとえば、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%であり;さらにまたはあるいは不均一/担持触媒については、バインダーは、触媒組成物の約95重量%以下、たとえば、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、または約70重量%以下を占めることができる。好適なバインダー材料の非限定的な例としては、シリカ、シリカ−アルミナ(たとえば、従来のシリカ−アルミナ、シリカ被覆アルミナ、アルミナ被覆シリカなど、またはそれらの組み合わせ)、アルミナ(たとえば、ベーマイト、擬ベーマイト、ギブサイトなど、またはそれらの組み合わせ)、チタニア、ジルコニア、カチオン性粘土もしくはアニオン性粘土(たとえば、サポナイト、ベントナイト、カオリン、サピオライト、ハイドロタルサイトなど、またはそれらの組み合わせ)、およびそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。幾つかの好ましい実施形態においては、バインダーとしては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびそれらの混合物を挙げることができる。これらのバインダーは、そのようなものとしてまたは解膠後に適用されてもよい。前駆体合成中に、上記のバインダーのいずれかへ変換することができるこれらのバインダーの前駆体を適用することもまた可能であることもある。好適な前駆体としては、たとえば、アルカリ金属アルミネート(アルミナバインダー)、水ガラス(シリカバインダー)、アルカリ金属アルミネートと水ガラスとの混合物(シリカ−アルミナバインダー)、マグネシウム、アルミニウム、および/またはケイ素の水溶性塩の混合物(カチオン性粘土および/またはアニオン性粘土)などの、二価、三価、および/または四価金属源の混合物、クロロヒドロール、硫酸アルミニウム、またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0051】
一般に、使用されるバインダー材料は、触媒組成物の残りのものよりも低い触媒活性を有することができるか、または実質的に触媒活性をまったく持たないものであることができる(約100%であるバルク触媒組成物の触媒活性を基準として、約5%未満)。その結果、バインダー材料を使用することによって、触媒組成物の活性は低下させられる可能性がある。それ故、少なくともバルク触媒において、使用されるバインダー材料の量は一般に、最終触媒組成物の所望の活性に依存し得る。総組成物の約25重量%以下(存在する場合、0重量%超〜約25重量%)のバインダー量が、想定される触媒用途に依存して、好適であり得る。しかし、本発明による、生じる並外れた高活性のバルク触媒組成物をうまく利用するために、バインダー量は一般に、添加されるとき、総触媒組成物の約0.5重量%〜約20重量%であることができる。
【0052】
バルク触媒ケースで必要ならば、バインダー材料は、バルク触媒組成物と複合化される前におよび/またはそれの調製中に添加される前に、第6族金属源および/または第8〜10族非貴金属源と複合化することができる。バインダー材料とこれらの金属のいずれかとの複合化は、あらゆる公知の手段、たとえば、これらの金属源での(固体)バインダー材料の含浸によって実施されてもよい。
【0053】
クラッキング成分もまた触媒調製中に添加されてもよい。使用されるとき、クラッキング成分は、触媒組成物の総重量を基準として、約0.5重量%〜約30重量%を表すことができる。クラッキング成分は、たとえば、異性化エンハンサー(enhancer)としての機能を果たす可能性がある。従来のクラッキング成分、たとえば、カチオン性粘土、アニオン性粘土、(ZSM−5、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ゼオライトX、AlPO、SAPOなど、またはそれらの組み合わせなどの)ゼオライト、(シリカ−アルミナなどの)非晶質クラッキング成分、またはそれらの組み合わせを使用することができる。幾つかの材料はバインダーおよび同時にクラッキング成分として働く可能性があることが理解されなければならない。たとえば、シリカ−アルミナは、クラッキング機能およびバインディング機能の両方を同時に有する可能性がある。
【0054】
必要ならば、クラッキング成分は、触媒組成物と複合化される前におよび/またはそれの調製中に添加される前に、第6族金属および/または第8〜10族非貴金属と複合化されてもよい。クラッキング成分とこれらの金属のいずれかとの複合化は、あらゆる公知の手段、たとえば、これらの金属源でのクラッキング成分の含浸によって実施されてもよい。クラッキング成分およびバインダー材料の両方が使用されるとき、および追加の金属成分の複合化が両方の上で望まれるとき、複合化は、別々に各成分上で行われてもよいか、または成分を組み合わせ、そして単一の複合化工程を行うことによって成し遂げられてもよい。
【0055】
特定のクラッキング成分の選択は、もしあれば、最終触媒組成物の意図される触媒用途に依存し得る。たとえば、ゼオライトは、生じる組成物が水素化分解または流動式接触分解に適用されることになる場合に添加することができる。シリカ−アルミナまたはカチオン性粘土などの、他のクラッキング成分は、最終触媒組成物が水素化処理用途に使用されることになる場合に添加することができる。添加されるクラッキング材料の量は、最終組成物の所望の活性および意図される用途に依存し得るし、こうして、存在するとき、触媒組成物の総重量を基準として、0重量%よりも上から約80重量%まで変わってもよい。好ましい実施形態においては、クラッキング成分とバインダー材料との組み合わせは、触媒組成物の50重量%未満、たとえば、約40重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、または約10重量%未満を占めることができる。
【0056】
必要ならば、既に添加された金属成分に加えて、従来の水素処理触媒調製中に添加されるであろうあらゆる材料などの、さらなる材料を添加することができる。そのようなさらなる材料の好適な例としては、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素含有化合物、追加の遷移金属源、希土類金属源、充填剤、またはそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0057】
本明細書に記載される混合金属酸化物触媒組成物は、約200℃〜約450℃の温度、約5barg〜約300barg(約0.5MPag〜約30MPag)の水素圧、約0.05時間−1〜約10時間−1のLHSVおよび約200scf/bbl〜約10,000scf/bbl(約34Nm/m〜約1700Nm/m)の水素処理ガス比率などの、広範囲の反応条件下に複数の原料のいずれかを処理するための多くの水素処理プロセスにおいて普遍的に使用することができる。用語「水素処理」は、本明細書で用いるところでは、炭化水素原料が(たとえば、上述の温度および圧力で)水素と反応するすべてのプロセスを包含すると理解されなくてはならず、具体的には水素化脱金属、水素化脱ロウ、水素化処理、水素化、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱芳香族化、水素異性化、および水素化分解(選択的水素化分解を含む)、ならびにそれらの組み合わせを含む。水素処理のタイプおよび反応条件に依存して、水素処理の生成物は、改善された粘度、粘度指数、飽和物含有率、低温特性、揮発度、脱分極など、またはそれらの組み合わせを示す可能性がある。水素処理は、1つ以上の反応域で、向流モードか並流モードかのいずれかで実施できることが理解されなければならない。向流モードとは、原料油流れが水素含有処理ガスの流れと反対方向に流れるプロセスモードを意味する。水素処理反応器はまた、あらゆる好適な触媒床配置モード(たとえば、固定床、懸濁床、沸騰床など)で運転することができる。
【0058】
広範囲の炭化水素原料は、本発明に従って水素処理することができる。好適な原料としては、全原油および減圧原油、常圧および減圧残油、プロパン脱アスファルト残油(たとえば、ブライトストック)、循環油、FCC塔底、ガスオイル(又は軽油)(常圧および減圧ガスオイル、ならびにコーカーガスオイルなど)、軽質〜重質留出物(生ヴァージン留出物など)、水素化分解物、水素化処理油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、ラフィネート、ナフサなど、およびそれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。特に、本発明に従って製造された触媒の増大した活性のために、特に大きい利点は、たとえば、増加した硫黄および/または窒素含有率のためにおよび/または特に困難な硫黄および/または窒素含有率の増加した含有率のために、処理するのがより困難である炭化水素原料について見ることができ、それらの炭化水素原料としては典型的には、ガスオイル、重質留出物(ディーゼルなど)、循環油、FCC塔底物、ワックス、残留物、ある種の全原油またはより重質減圧原油など、およびそれらの組み合わせなどの、より重質のおよびより不利な境遇にある原料を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0059】
さらにまたはあるいは、炭化水素原料は、本明細書に記載されるものなどの水素処理触媒の使用を暗示するのに十分な硫黄含有率が原料中に存在する限り、脂質材料の形態での再生可能物またはバイオ原料を含むことができる。用語「脂質材料」は、本明細書で用いるところでは、生物材料からなる組成物である。一般に、これらの生物材料としては、植物脂肪/油、動物脂肪/油、魚油、熱分解油、および藻類脂質/油、ならびにそのような材料の成分が挙げられる。より具体的には、脂質材料としては、1つ以上のタイプの脂質化合物が挙げられる。脂質化合物は典型的には、水に不溶性であるが、非極性(または脂肪)溶剤に可溶性である生体化合物である。そのような溶剤の非限定的な例としては、アルコール、エーテル、クロロホルム、アルキルアセテート、ベンゼン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
主要クラスの脂質としては、脂肪酸、グリセロール由来脂質(脂肪、油およびリン脂質など)、スフィンゴシン由来脂質(セラミド、セレブロシド、ガングリオシド、およびスフィンゴミエリンなど)、ステロイドおよびそれらの誘導体、テルペンおよびそれらの誘導体、脂溶性ビタミン、ある種の芳香族化合物、ならびに長鎖アルコールおよびロウが挙げられるが、それらに必ずしも限定されない。
【0061】
生体において、脂質は一般に、細胞膜の基盤としておよび燃料貯蔵の形態として役立つ。脂質はまた、リポタンパクおよびリポ多糖類の形態でなど、タンパク質または炭水化物に抱合されて見いだすことができる。
【0062】
使用することができる植物油の例としては、菜種(キャノーラ)油、大豆油、ココナツオイル、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ピーナツ油、アマニ油、トールオイル、コーンオイル、ヒマシ油、ジャトロファオイル、ホホバオイル、オリーブ油、フラクシードオイル、カメリナオイル、サフラワー油、ババス油、牛脂油および米糠油を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0063】
本明細書において言及されるような植物油としてはまた、加工植物油材料を挙げることができる。加工植物油材料の非限定的な例としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルとしては、典型的にはC〜Cアルキルエステルが挙げられる。メチル、エチル、およびプロピルエステルの1つ以上が好ましい。
【0064】
使用することができる動物脂肪の例としては、牛脂(タロー)、豚脂(ラード)、七面鳥脂肪、魚脂/油、および鶏脂を挙げることができるが、それらに限定されない。動物脂肪は、レストランおよび食肉生産設備などのあらゆる好適な源から入手することができる。
【0065】
本明細書において言及されるような動物脂肪としてはまた、加工動物脂肪材料が挙げられる。加工動物脂肪材料の非限定的な例としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルとしては、典型的にはC〜Cアルキルエステルが挙げられる。メチル、エチルおよびプロピルエステルの1つ以上が好ましい。
【0066】
藻類油または藻類脂質は典型的には、膜成分、貯蔵産物、および代謝産物の形態で藻類中に含有される。ある種の藻類株、特に珪藻およびシアノバクテリアなどの微細藻類が比例的に高レベルの脂質を含有する。藻類油のための藻類源は、様々な量、たとえば、バイオマスそれ自体の総重量を基準として、約2重量%〜約40重量%の脂質を含有することができる。
【0067】
藻類油のための藻類源としては、単細胞および多細胞藻類が挙げられるが、それらに限定されない。そのような藻類の例としては、紅藻類(rhodophyte)、緑藻類(chlorophyte)、ヘテロコント藻類(heterokontophyte)、トリボ藻類(tribophyte)、灰色藻(glaucophyte)、クロララクニオ藻(chlorarachniophyte)、ユーグレナ藻(euglenoid)、ハプト藻(haptophyte)、クリプトモナド(cryptomonad)、ジノフラゲラム(dinoflagellum)、植物プランクトン(phytoplankton)など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態においては、藻類は、クラス緑藻綱(Chlorophyceae)および/またはハプトフィタ(Haptophyta)のものであることができる。具体的な種としては、ネオクロリス・オレオアバンダンス(Neochloris oleoabundans)、スセネデスムス・ジモルファス(Scenedesmus dimorphus)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、海洋性珪藻(Phaeodactylum tricornutum)、プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae)、プリムネシウム・パルバム(Prymnesium parvum)、テトラセルミス・チュイ(Tetraselmis chui)、およびクラミドモナス・レインハルトチイ(Chlamydomonas reinhardtii)を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0068】
さらにまたはあるいは、微細藻類の非限定的な例としては、たとえば、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ボエケロビア(Boekelovia)、ボロディネラ(Borodinella)、ボツリオコックス(Botryococcus)、ブラクテオコックス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(Chlorella)、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)、クリプトモナス(Cryptomonas)、キクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウム(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、フランケイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ヒメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポキンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビクラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、オエドゴニウム(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パブロバ(Pavlova)、パラクロレラ(Parachlorella)、パッシェリア(Pascheria)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファガス(Phagus)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボトリス(Pyrobotrys)、イカダモ(Scenedesmus)、スケレトネマ(Skeletonema)、スパイロジャイラ(Spyrogyra)、スチチョコッカス(Stichococcus)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシラ(Thalassiosira)、ビリジエラ(Viridiella)、およびボルボックス(Volvox)種、これらのまたは他の属の淡水および海生微細藻類種などを挙げることができる。
【0069】
なおいっそうさらにまたはあるいは、本発明により使用される藻類は、シアノバクテリアとして特徴付けることができる。シアノバクテリアの非限定的な例としては、たとえば、アグメネルム(Agmenellum)、アナベナ(Anabaena)、アナベノプシス(Anabaenopsis)、アナシスティス(Anacystis)、アファニゾメノン(Aphanizomenon)、アルトロスピラ(Arthrospira)、アステロカプサ(Asterocapsa)、ボルジア(Borzia)、カロトリックス(Calothrix)、カマエシフォン(Chamaesiphon)、クロログロエオプシス(Chlorogloeopsis)、クロオコシジオプシス(Chroococcidiopsis)、クロオコックス(Chroococcus)、クリナリウム(Crinalium)、シアノバクテリウム(Cyanobacterium)、シアノビウム(Cyanobium)、シアノシスティス(Cyanocystis)、シアノスピラ(Cyanospira)、シアノセイス(Cyanothece)、シリンドロスペルモプシス(Cylindrospermopsis)、シリンドロスペルマム(Cylindrospermum)、ダクチロコッコプシス(Dactylococcopsis)、デルモカルペラ(Dermocarpella)、フィッシェレラ(Fischerella)、フレミエラ(Fremyella)、ゲイトレリア(Geitleria)、ゲイトレリネマ(Geitlerinema)、グロエオバクター(Gloeobacter)、グロエオカプサ(Gloeocapsa)、グロエオテーセ(Gloeothece)、ハロスピルリナ(Halospirulina)、イエンガリエラ(Iyengariella)、レプトリングビア(Leptolyngbya)、リムノトリクス(Limnothrix)、リングビア(Lyngbya)、ミクロコレウス(Microcoleus)、ミクロシスティス(Microcystis)、ミクソサルキナ(Myxosarcina)、ノデュラリア(Nodularia)、ノストック(Nostoc)、ノストチョップシス(Nostochopsis、オシラトリア(Oscillatoria)、フォルミディウム(Phormidium)、プランクトスリックス(Planktothrix)、プレウロカプサ(Pleurocapsa)、プロクロロコッカス(Prochlorococcus)、プロクロロン(Prochloron)、プロクロロトリックス(Prochlorothrix)、プセウドアナベナ(Pseudanabaena)、リブラリア(Rivularia)、シゾトリックス(Schizothrix)、サイトネマ(Scytonema)、スピルリナ(Spirulina)、スタニエリア(Stanieria)、スタリア(Starria)、スチゴネマ(Stigonema)、シムプロカ(Symploca)、シネココッカス(Synechococcus)、シネコシスティス(Synechocystis)、トリポスリックス(Tolypothrix)、トリコデスミウム(Trichodesmium)、チコネマ(Tychonema)、およびキセノコッカス(Xenococcus)種、これらのまたは他の属の淡水および海生シアノバクテリア種などを挙げることができる。
【0070】
本発明による触媒前駆体組成物への第1または第2有機化合物での処理の有効性を判断する一方法は、所与の反応プロセス(たとえば、水素化脱窒素、水素化脱硫、水素化脱酸素など)についての相対触媒活性に基づくことができる。そのような相対触媒活性は、重量、体積、ある種の(活性金属)成分のモルなどの、標準触媒特性を比較してそれらの結果をその所与の反応プロセスにおいて有用な触媒間の普遍的比較のために標準化することによってさらに表すことができる。たとえそうであっても、そのような標準特性は、−たとえば、担持触媒が、それらの触媒活性部位のほとんどが担体表面一面に広がっている(したがって触媒作用のために利用可能である)傾向があるため、普遍的に比較できない可能性があり、担持触媒とバルク触媒との間の相対活性の比較は、バルク触媒における触媒活性金属部位の比例してより少ないものが表面上に配置されている(したがって触媒作用のために利用可能である)ので不適切であるかまたは役に立たない可能性がある。それにもかかわらず、同様なタイプの触媒(たとえば、第6族/第8〜10族バルク触媒)間で、相対触媒活性は、特に有用な比較であることができる。即座のケースで、特に明記されない限り、本明細書において活性を触媒使用量および触媒密度を基準とする単位容積に標準化する、相対容積活性(RVA:Relative volumetric activity)、および本明細書において活性を非第8〜10族の触媒活性金属のモルの総数に標準化する、相対モル活性(RMA:Relative molar activity)は、水素化脱窒素(HDN:Hydrodenitrogenation)反応をベースとしており、約1.0次速度則を仮定している。RMA値について、非第8〜10族触媒活性金属としては、任意のおよびすべての第6族触媒活性金属(たとえば、Moおよび/またはW)、ならびに第5族(たとえば、Nbおよび/またはV)などの他の触媒活性金属が挙げられる。本明細書におけるRMA値はすべて、触媒が約10日〜約30日間「オンストリーム(又はストリーム上)」である(すなわち、水素処理反応条件などの反応条件で原料と接触している)実験から取られ、RMA値は、それらが安定化していると思われるときのみ報告された。
【0071】
結果として、本発明による組成物、そのような組成物の製造方法、および使用方法の一特徴づけとしては、本明細書に記載される1つ以上の他のものに加えてまたはその代わりに、第1もしくは第2有機化合物を使用する有機処理なしの、もしくは有機処理前の触媒組成物および/または有機処理をまったく含有しない、もしくはあらゆる有機処理前の方法と比べて、少なくとも25%の、第1もしくは第2有機化合物(しかし両方ではない)の反応生成物を含有する触媒組成物についてのおよび/または本発明による第1もしくは第2有機化合物(しかし両方ではない)を使用する有機処理を含有する方法におけるRMAの増加を挙げることができ;たとえば、このRMA増加は、少なくとも30%、少なくとも32%、少なくとも34%、少なくとも36%、少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも44%、少なくとも46%、少なくとも48%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、または少なくとも55%であることができる。さらにまたはあるいは、RMA増加は、第1もしくは第2有機化合物(しかし両方ではない)を使用する有機処理なしの、または有機処理前の触媒組成物および/または有機処理をまったく含有しない、またはあらゆる有機処理前の方法と比べて、200%以下、たとえば150%以下、125%以下、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、65%以下、60%以下、57%以下、56%以下、55%以下、54%以下、53%以下、52%以下、51%以下、または50%以下であることができる。なおいっそうさらにまたはあるいは、本発明による組成物、そのような組成物の製造方法、および使用方法は、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみを使用する有機処理ありの触媒組成物とおよび/または10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみを使用する有機処理を含有する方法と比べて、少なくとも20%の、第1もしくは第2化合物(しかし両方ではない)の反応生成物を含有する触媒組成物についてのおよび/または本発明による第1もしくは第2有機化合物(しかし両方ではない)を使用する有機処理を含有する方法におけるRMAの増加を示すことができ;たとえば、このRMA増加は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%であることができる。さらになおいっそうさらにまたはあるいは、RMA増加は、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみを使用する有機処理ありの触媒組成物とおよび/または10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみを使用する有機処理を含有する方法と比べて、200%以下、たとえば150%以下、125%以下、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、65%以下、60%以下、57%以下、56%以下、55%以下、54%以下、53%以下、52%以下、51%以下、または50%以下であることができる。
【0072】
さらにまたはあるいは、本発明は、以下の実施形態を含むことができる。
【0073】
実施形態1.元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに(i)少なくとも1つのアミン基および少なくとも10個の炭素を含有する第1有機化合物もしくは(ii)少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素を含有する第2有機化合物から形成されるが、(i)および(ii)の両方からは形成されない反応生成物を含む触媒前駆体組成物であって、反応生成物が、(i)第1有機化合物もしくは(ii)第2有機化合物と比べて、追加の不飽和炭素原子を含有し、触媒前駆体組成物の金属が結晶格子に配列され、そして反応生成物が結晶格子内に配置されていない組成物。
【0074】
実施形態2.その場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物の製造方法であって、(a)元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属を含む触媒前駆体組成物を、少なくとも1つのアミン基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第1有機化合物もしくは少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第2有機化合物で処理して有機的に処理された前駆体触媒組成物を形成する工程と;(b)前記有機的に処理された前駆体触媒組成物を、第1もしくは第2有機化合物が反応して第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加のその場不飽和炭素原子を形成するのに十分であるが、第1もしくは第2有機化合物の50重量%超が揮発するほどには長くない時間、約195℃〜約250℃の温度で加熱し、それによってその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を形成する工程とを含む方法。
【0075】
実施形態3.第6族からの前記少なくとも1種の金属が、Mo、W、またはそれらの組み合わせであり、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属が、Co、Ni、またはそれらの組み合わせである、前述の実施形態のいずれかの触媒前駆体組成物または方法。
【0076】
実施形態4.前記触媒前駆体組成物が、元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属、たとえばV、Nb、またはそれらの組み合わせをさらに含む、前述の実施形態のいずれかの触媒前駆体組成物または方法。
【0077】
実施形態5.前記第1有機化合物が、10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含む、および/または前記第2有機化合物が、カルボン酸基を1つのみおよび10〜30個の炭素原子を含む、前述の実施形態のいずれかの触媒前駆体組成物または方法。
【0078】
実施形態6.実施形態1および実施形態3〜5のいずれかの組成物を、第1もしくは第2有機化合物が第1もしくは第2有機化合物中に存在しない不飽和炭素原子を含有する反応生成物をその場形成するのに十分な時間、約195℃〜約250℃の温度に加熱することによって製造されるバルク混合金属触媒前駆体組成物。
【0079】
実施形態7.実施形態6に記載の触媒前駆体組成物を硫化することによって製造されるバルク混合金属水素処理触媒組成物。
【0080】
実施形態8.その場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物が、反応生成物、第6族からの少なくとも1種の金属の酸化物形態、第8〜10族からの少なくとも1種の金属の酸化物形態、および任意選択的に約20重量%以下のバインダーから本質的になるバルク金属水素処理触媒前駆体組成物である、実施形態2〜5のいずれかの方法。
【0081】
実施形態9.硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に実施形態2〜5および実施形態8のいずれかの方法に従って製造されたその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法。
【0082】
実施形態10.実施形態2〜5および実施形態8〜9のいずれかの方法に従って製造されるその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物。
【0083】
実施形態11.実施形態10に記載の方法に従って製造される硫化された水素処理触媒組成物。
【0084】
実施形態12.下記、すなわち、触媒前駆体組成物が、少なくとも29%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率を示す;触媒前駆体組成物が、第1もしくは第2有機化合物中に存在する不飽和炭素原子の総含有率と比べて、少なくとも約17%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率の増加を示す;触媒前駆体組成物が、少なくとも0.9の、約1380cm−1〜約1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、約1700cm−1〜約1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子と芳香族炭素原子との比を示す;および触媒前駆体組成物が、少なくとも15以下の、約1380cm−1〜約1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、約1700cm−1〜約1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子と芳香族炭素原子との比を示す1つ以上が満たされる、前述の実施形態のいずれかの触媒前駆体組成物、水素処理触媒、または方法。
【0085】
実施形態13.実施形態1、実施形態3〜6、実施形態10、および実施形態12のいずれかのまたは実施形態2〜5、実施形態8〜9、および実施形態12のいずれかの方法に従って製造された触媒前駆体組成物を、硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法であって、下記、すなわち、硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の平均数が約1.5〜約3.5であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の平均数が第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった同一の硫化された水素処理触媒組成物よりも少ない、少なくとも約0.8の積重ね層であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧ガスオイル(又は軽油)原料に暴露すると、硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも少なくとも57%大きい水素化脱窒素RMAを示す;硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧ガスオイル原料に暴露すると、硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す;硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧ガスオイル原料に暴露すると、硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも少なくとも30%大きい水素化脱窒素RMAを示す;および硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧ガスオイル原料に暴露すると、硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す、の1つ以上が満たされる方法。
【0086】
本発明は、添付の図面および以下の非限定的な実施例に関してより具体的に以下説明する。
【実施例】
【0087】
実施例において、X線回折スペクトルは、Cu Kα放射線を使ったRigaku Dmax回折計で収集した。熱重量分析、動的熱分析、および質量分析(TG/DTA/MS)データは、二次電子増倍管を備えた、Balzers Thermostar四重極質量分析計と結合した、Mettler TGA 851熱天秤で収集した。約800℃での空気酸化中の減量を、試料中に存在する有機成分の量を推定するために有機的に処理された触媒前駆体の熱処理の前後の両方で監視した。また、硫化相は、酸化して酸化物を形成することができ(減量事象)、こうして硫化物相中の有機成分の保持に起因する追加の減量の推定を可能にする。
【0088】
TEM測定については、硫化組成物の試料を、小片(約100nm未満の厚さ)に破砕し、穴あき炭素被覆格子上へ振りかけ、Philips CM200F機器の明視野画像形成モードで検討した。各硫化組成物の約250〜350の異なる結晶を検討し、積重ねの数をカウントし、平均した。本明細書に報告される積重ねの数は、したがって平均値である。
【0089】
実施例において製造された異なる触媒前駆体の硫化は、乾燥状態か焼成状態かのどちらかの約2〜4グラムの前駆体を石英ボートに入れ、それを順繰りに水平石英管に挿入し、Lindberg炉へ入れることによって行った。依然として室温での間に、約200cm/分の約10%HS/Hの流れを約15分間通し、次に温度を、約10%HS/Hを依然として約200cm/分で流しながら約45分で約400℃に上げた。この流れを約400℃で約2時間続行した。試料を次に、流れる約10%HS/H中でほぼ室温(約20〜25℃)に冷却し、おおよそ同じ流れで約30分間そこに保持した。約30分間の約300cm/分のN流れの後に、He中に約1%Oを含む不動態化ガスをほぼ室温で、約50cm/分で導入し、一晩(約12〜18時間)放置した。試料を次に炉から取り出した。
【0090】
調製実施例
比較例1:NiWOおよびNiMo0.50.5(有機化合物なし)の調製
準安定の六方晶系変形のNiWOは、炭酸ニッケルとタングステン酸との間の固体−スラリー反応によって形成した。約5.93グラムの炭酸ニッケルおよび約12.49グラムのタングステン酸を約150mLの水に加えて懸濁液を形成し、それを約275mLのWeflon(商標)反応容器に加えた。この容器を次に(電子レンジ中で)約150℃に約6時間加熱し、ほぼ室温(約20〜25℃)に冷却し、濾過し、約100℃で乾燥させた。乾燥後に、この材料を、空気中の箱形炉において約300℃の最終温度まで約2℃/分の昇温速度で加熱し、その温度で約4時間保持した(たとえば、焼成するために)。この材料の一部を触媒Aと名付けた。図1は、六方晶系ニッケルタングステート相に結晶化した、この試料のX線回折スペクトルを示す。NiMo0.50.5触媒、触媒Bは、類似の方法で、しかし半分モルのタングステン酸をMoOで置き換えて調製した。
【0091】
実施例1:NiWO(1,2DACH)およびNiWO(1,2DACH)/(クエン酸)の調製
還流冷却器を備えた約1000ccのガラス反応フラスコへ約16.6グラムの炭酸ニッケル(約0.14モルNi)および約35.0グラムのタングステン酸(約0.14モルW)を、その中へ約32.0グラムの1,2−ジアミノシクロヘキサン(1,2DACH;約0.28モル、工業銘柄、Aldrich)を前もって溶解させた、約150mLの水に加えた。撹拌機、温度計、および還流冷却器をこのフラスコに取り付けた。反応混合物を連続して撹拌し、約90℃に加熱し、一晩(約18時間)保持した。そのように得られた固体を濾過し、約100℃で乾燥させた。得られた重量、約39.5gは、約74.9gの計算重量に匹敵する。この乾燥生成物のX線回折スペクトルを図2に示し、触媒1aと名付けた。
【0092】
触媒1a[NiWO(1,2DACH)]の一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英ライン管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。この触媒を触媒1a//Nと名付けた。触媒1aの別の部分にクエン酸を、タングステンとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように(初期湿潤によって)含浸させた。この試料を約100℃で一晩乾燥させ、触媒1bと名付けた。触媒1bの一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英ライン管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。この触媒を触媒1b//Nと名付けた。
【0093】
実施例2:NiWO(エチレンジアミン)の調製
NiWOのトリス−エチレンジアミン錯体を、約275mLのWeflon(商標)反応容器中へ約10mLの水と一緒にすべて入れた、約5.94グラムの炭酸ニッケル、約12.49グラムのタングステン酸、および約9.02グラムのエチレンジアミンの反応によって調製した。この容器を密封し、反応混合物を連続して撹拌し、(電子レンジ中で)約60℃に約10℃/分で加熱し、その温度で約6時間保持した。冷却および濾過後に、約9.4グラムの既知相のトリス−エチレンジアミンニッケルタングステートを同定し、触媒2と名付けた。図3は、この相のX線回折パターンを示す。
【0094】
実施例3:NiWO/(en)/クエン酸0.33/Nの調製
比較例1で製造されたNiWO前駆体にエチレンジアミン(en)を、タングステンとenとのモル比が約1:1であるように含浸させた。この試料の一部を触媒3aと名付けた。触媒3aの別の部分を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英ライン管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。この触媒を触媒3a//Nと名付けた。
【0095】
enを含浸させ、約100℃で乾燥させた触媒3aの一部に次に、水に溶解させたクエン酸を、enとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように、(初期湿潤点まで)さらに含浸させた。この試料を次に約100℃で再び乾燥させ、触媒3bと名付けた。この触媒3b試料の一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英内張管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒3b//Nと名付けた。
【0096】
NiWOの別個の部分にクエン酸のみを、タングステンとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように含浸させた。この部分を次に約100℃で乾燥させ、触媒3cと名付けた。触媒3cの一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英内張管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒3c//Nと名付けた。
【0097】
図4は、触媒3aおよび3bのX線回折スペクトルならびに、比較して、触媒Aおよび2aのX線回折スペクトルを示す。この図は、トリス−エチレンジアミンニッケルタングステート相を形成するためのエチレンジアミンの添加時にNiWO六方晶系ニッケルタングステート酸化物前駆体相の部分変換(触媒Aと比べて触媒3a)、およびクエン酸含浸時(触媒3b)にニッケルタングステート酸化物相(触媒2a)へのこの相のその後の逆戻りを示す。
【0098】
図5は、比較例1の硫化NiWO触媒(Aと示される)のX線回折スペクトルと一緒に、上記の手順に従って、硫化後の触媒3a、3a//N、3b、3b//N、3c、および3c//NのX線回折スペクトルを示す。図5は、ニート酸化物から調製された硫化物、en単独かクエン酸単独かのどちらかを含浸させた酸化物、および不活性高温処理ありの後者2つの(002)ピークがすべてほぼ等しく鋭い(すなわち、それらが、ニート酸化物前駆体(6)と同じ(002)反射についての半分高さでの幅をおおよそ有するように思われる)ことを示す。(002)ピークの鋭さは、硫化タングステンの積重ねの数(したがって結晶子サイズ)の増加と相関すると考えられる。明らかに、enおよびクエン酸の両方を一緒に持った試料は、高温N処理があろうとなかろうと、はるかにより幅広い(002)ピークを示した。
【0099】
実施例4:NiWO/クエン酸0.33/(en)/NおよびNiWO/クエン酸0.33プラス(en)/Nの調製
実施例3におけるものと、同じ六方晶系ニッケルタングステート酸化物前駆体(触媒A)を使用した。NiWOに次に、クエン酸の水溶液を、タングステンとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で乾燥させ、その後エチレンジアミン(en、水に溶解させた)を、enとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように、かつ、タングステンとenとのモル比が約1:1であるように、この試料の一部に(初期湿潤によって)加えた。この試料を次に約100℃で再び乾燥させ、触媒4aと名付けた。触媒4aの一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英内張管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒4a//Nと名付けた。
【0100】
別個の触媒試料を、水性クエン酸溶液をエチレンジアミンと組み合わせることによってそしてこの溶液を、各含浸工程後に約100℃で風乾させる状態で、(2つの初期湿潤工程で)触媒Aの一部上へ含浸させることによって調製した。それを触媒4bと名付けた。この試料の一部を、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英内張管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒4b//Nと名付けた。
【0101】
触媒4a//Nおよび4b//Nの一部を、上記の手順に従って硫化した。触媒4a//Nおよび4b//Nの硫化試料のX線回折スペクトルを、図6において硫化触媒3b//Nのスペクトルと比較した。図6は、ジアミン含浸が有機酸含浸の前、後またはそれと同時に行われるかにかかわらず、(002)ピークの同様な広がりがあるように見えることを示す。
【0102】
実施例5:他の有機促進NiWO前駆体の調製
それぞれが、比較例1のNiWO酸化物上へ含浸させられた、(i)ジアミンまたはアルカノールアミンおよび(ii)有機酸の両方を含有する、様々な他の試料を、実施例3の記載に類似の方法で調製した。各場合に、表1に示されるタングステン/アミンモル比を用いて、アミンを最初に含浸させ、これに、約100℃での乾燥、次に有機酸の第2含浸、約100℃での別の乾燥、次に約320℃での不活性窒素処理が続いた。
【0103】
【表1】
【0104】
それぞれが、比較例1のNiWO酸化物上へ含浸させられた、(i)モノアミンまたはジアミンおよび(ii)有機酸の両方を含有する、幾つかの他の試料を、実施例3の記載に類似の方法で調製した。各場合に、表2に示されるタングステン/アミンモル比を用いて、アミンを最初に含浸させ、これに、約100℃での乾燥、次に有機酸の第2含浸、約100℃での別の乾燥、次に約320℃での不活性窒素処理が続いた。
【0105】
【表2】
【0106】
表1および2に示されるある種の前駆体を上記の通り硫化し、得られた硫化物のX線回折スペクトルを図7に示す。モノアミン前駆体(プロピルアミンおよびシクロヘキシルアミン;それぞれ5fおよび5g)から調製された硫化物がより鋭い(002)ピーク(12〜14度2Θで)を示したことを理解することができる。これは、ジアミンが二座配位を形成することができる(たとえば、1,2−プロピレンジアミンおよび1,2−ジアミノシクロヘキサン)かできないか(たとえば、1,3−プロピレンジアミンおよび1,4−ジアミノシクロヘキサン)にかかわらず、ジアミンを使って調製された硫化物におけるよりも大きい数の積重ねを示唆した。
【0107】
NiWO酸化物上へ含浸させられたアミンおよび有機酸の両方を含有する幾つかのさらなる試料をまた、実施例3の記載に類似の方法で調製した。これらは、調製物における異なる有機酸の挙動を比較するために調製した。これらの場合のそれぞれにおいて、ジアミンを最初に、表3に示されるタングステン/アミンモル比を用いて含浸させ、これに、約100℃での乾燥、次に有機酸の第2含浸、約100℃での別の乾燥、次に約320℃での不活性窒素処理が続いた。これらの前駆体を上記の通り硫化した。
【0108】
【表3】
【0109】
実施例6:有機促進NiW0.975Nb0.025前駆体の調製
異なる酸化物前駆体を使用して二重促進触媒を調製した。おおよその名目組成NiW0.975Nb0.025の試料を、約2.5モル%のタングステン成分(タングステン酸)を適切なモル量のニオブ酸で置換したことを除いては、比較例1に記載されるNiWOの調製と同様の方法で合成した。生じた生成物のX線回折スペクトルは、図8に示されるように、Nbなしの材料にほぼ同一であった。Nbを含有する酸化物触媒前駆体を触媒6aと称した。触媒6aの一部に、モル比が次の通りであるように、エチレンジアミン、次にクエン酸を順次含浸させた、すなわち、約1:1の[W+Nb]/enおよび約1:0.33の[W+Nb]/クエン酸。得られた生成物を次に、実施例3に記載された方法で不活性窒素気流中で処理し、触媒6b//Nと名付けた。
【0110】
実施例7:有機促進CoW0.50.5前駆体の調製
おおよその名目組成Co0.50.5酸化物の試料を、約150℃に約8時間加熱しながら、約150mLの水懸濁液中で約7.93グラムの炭酸コバルト(約0.067モルCo)、約3.03グラムの酸化バナジウム(V;約0.033モルV)、および約8.33グラムのタングステン酸(約0.033モルW)を反応させることによって調製した。触媒7と特定される、生じた相は、図9に示されるX線回折パターンを示し、図9でそれは比較例1のNiWOについてのパターンと比較される(そしてまた図13に示される)。触媒7の一部を、実施例3の記載に類似の方法でのエチレンジアミンおよび次にクエン酸の順次含浸のためのホスト酸化物として使用した。[W+V]とenとのモル比は約1:1であり、[W+V]とクエン酸とのモル比は約1:0.33であった。試料を、2つの含浸工程のそれぞれの後に約100℃で風乾させ、こうして触媒7aを形成した。触媒7a試料の一部を次に、約360℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英内張管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に、ほぼ室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒7a//Nと名付けた。
【0111】
試験実施例
比較例2および実施例8〜14において、触媒活性結果を、回分式高圧反応器装置を用いて得た。回分式反応器に最初に、約65μlの触媒および約1.85mlの硫化原料を装入した。部分水素化処理された留出物原料(約570ppmの硫黄含有率および約350ppmの窒素含有率)を、触媒を硫化するために使用した。触媒硫化は、約30時間約10%HSを含有する水素ガス混合物を使用して約315℃でおよび約400psig(約2.9MPag)で行った。回分式反応器アセンブリを、ガス、液体、および触媒の良好な混合を確実にするために軌道変化で振盪した。硫化後に、使用済み原料を、反応器を脱圧し、反応器アセンブリを周囲条件(おおよそ室温、または約20〜25℃)に冷却することによって除去した。空気暴露を最小限にするために、原料除去および計量分配は、窒素雰囲気下に保たれるグローブボックス内部で行った。触媒性能を次に、新鮮な(1.85ml)負荷の減圧ガスオイル(又は軽油)(VGO)原料を装入することによって評価した。反応器を次に、約100%Hで約650psig(約4.6MPag)に加圧し、約357℃(約675°F)に加熱した。反応を、約24時間の総継続時間進行させ、その後反応器を脱圧し、周囲条件に冷却した。生成物液体をサンプリングし、Antek(商標)分析計を用いて総窒素含有率について分析した。あらゆる所与のランにおいて、原料のみ(触媒なし)を負荷させた約2〜3のブランク反応器をまた試験して実際の触媒活性を計算するためにさらに用いられるベースラインを設定した。固体触媒の低容積を正確に計量分配することが困難であるために、各触媒を分析天秤で秤量し、相対重量活性をこれらの重量を用いて求めた。
【0112】
実施例8〜14の活性測定のために使用されたVGOのおおよその名目組成を、下の表4に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
Antek(商標)分析計を用いるNについての液体生成物分析に基づき、触媒性能を、基準触媒に対する相対重量活性(RWA)の観点から表した。所与の触媒についてのRWAを次に下式、すなわち、
RWA=[ln(Cblank/Cfinal)/(触媒重量)]/[ln(Cblank/Cfinal)/(触媒重量)]Ref
[ここで、Cblankは、活性ランが完了した後のブランク反応器からの生成物液体中の総窒素の濃度(wppm)を表し、ここで、Cfinalは、触媒を含有する反応器からの生成物液体中の総窒素の最終濃度(wppm)を表し、そしてここで、触媒重量は、計量分配された特定容積の触媒の重量を表す]を用いて計算した。報告されるランすべてのために使用された基準触媒は、おおよその化学量論NiMo0.50.5の酸化物(のみ)触媒前駆体(比較例1の触媒Bを参照されたい)から製造された比較的高活性の触媒であった。
【0115】
比較例2:比較例1の触媒の試験
表4のVGO原料についての触媒A(有機化合物がまったく存在しないバルクNiWO)の硫化試料の水素化脱窒素(HDN)活性を、おおよその化学量論NiMo0.50.5の酸化物(のみ)触媒前駆体(触媒B)から製造された硫化基準試料のそれと比較した。触媒Aは、それが触媒Bと同じHDN活性を実際上有することを示す、1.02のRWAを有することが分かった。
【0116】
実施例8:実施例1の触媒の試験
それらのすべてが実施例1に記載された、触媒1a、1a//N、1b、および1b//Nの硫化試料のHDN活性を、触媒Bから製造された硫化基準試料のHDN活性に対して比較した。これらの活性を、基準に対して重量ベースで標準化し、表5に示す。これらの二金属酸化物−アミンハイブリッド相の比較的低い密度のために、相対容積ベースの活性は、基準触媒のそれよりも小さかった。
【0117】
【表5】
【0118】
表5は、二金属酸化物−アミン前駆体の高温不活性処理が、クエン酸が含浸させられていてもいなくても、それらの活性を向上させたことを示す。これらの実施例1前駆体の、低密度、およびその結果より低い容積活性は、それらを実施例2〜7の触媒よりも好ましくないものにする傾向がある。
【0119】
実施例9:実施例3の触媒の試験
それらのすべてが実施例3に記載された触媒3a、3b、および3b//Nの硫化試料のHDN活性を、触媒Bから製造された硫化基準試料のHDN活性に対して比較した。これらの活性を、基準に対して重量ベースで標準化し、表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
表6は、基準触媒のそれよりも高いHDN活性が、とりわけ試料が硫化前に高温で不活性気流中で処理される状態で、ジアミンおよび有機酸を両方とも同時に存在させることによって達成できることを示す。アミン処理およびクエン酸処理の両方ありの触媒は、有機酸−塩がその表面をコートした混合酸化物(NiWO)の結晶構造(図4を参照されたい)を示したので、酸化物相の比較的高い密度は維持され、相対容積活性はまた基準よりも高かった。
【0122】
実施例10:実施例3および4の窒素処理触媒の試験
触媒3b//Nの硫化試料を、同じ触媒の繰り返し試料調製(触媒3b//N繰り返し)と一緒におよび触媒前駆体4a//N(同じ組成を有するが、添加が逆順の、すなわち、クエン酸を最初に、次に引き続きエチレンジアミンを加え、高温窒素処理にかけた)の硫化試料と一緒に選択した。これらの3つの試料を、触媒Bから製造された硫化基準試料と一緒に、表4に記載される減圧ガスオイル(又は減圧軽油)を使用してHDN活性試験で比較した。結果を表7に示す。
【0123】
【表7】
【0124】
表7のデータは、エチレンジアミンおよびクエン酸の添加の順番が決定的に重要であるわけでないことを示す。
【0125】
実施例11:実施例5の窒素処理触媒の試験
異なる有機塩基を使った触媒前駆体の硫化試料を、実施例5の調製物から選択し、触媒Bから製造された硫化基準試料と一緒に、表4の減圧ガスオイルを使用するHDN試験で試験した。結果を表8に示す。
【0126】
【表8】
【0127】
表8のデータは、二重有機化合物を使って観察される促進効果が、他のジアミンでおよびまたアミノアルコールで現れたことを示す。さらに、プロピルアミンを含有する、試料5f//Nは、それが図7において見られるようにジアミンよりも多い数の積重ねを示したが、わずかにより低い活性を有するにすぎず、有機酸での処理およびその後の不活性処理がまたある限り、モノアミンかジアミンかのどちらでも使用できることを示した。
【0128】
実施例12:実施例5のさらなる窒素処理触媒の試験
マレイン酸を含浸させた触媒前駆体の硫化試料を、実施例5の調製物から選択し、触媒Bから製造された硫化基準試料と一緒に、表4の減圧ガスオイルを使用するHDN試験で試験した。結果を表9に示す。
【0129】
【表9】
【0130】
表9のデータは、クエン酸以外の有機酸をまた活性触媒を調製するために使用できることを示す。
【0131】
実施例13:実施例6の窒素処理触媒の試験
ニオブ含有前駆体触媒6b//Nは、表4の減圧ガスオイルを使用するHDN試験で触媒Bから製造された硫化基準試料と比較され、約1.53のRWAを有することが分かった。この結果は、前駆体Ni−W酸化物へのNbの添加が、二重有機促進で調製されたNi−W前駆体に著しい追加の活性を付与できることを示す。
【0132】
実施例14:実施例7の触媒の試験
触媒7(おおよその化学量論Co0.50.5酸化物のみ)および触媒7a//N(エチレンジアミンおよびクエン酸を含浸させられ、窒素中で加熱された、おおよその化学量論Co0.50.5酸化物)の硫化試料を、表4の減圧ガスオイルを使用するHDN試験で触媒Bから製造された硫化基準試料と比較した。結果を表10に示す。
【0133】
【表10】
【0134】
表10は、二重有機促進剤および高温不活性処理ありのコバルト、バナジウム、およびタングステンを含有するこの組成物がホスト酸化物触媒よりも活性であり、基準物質の活性を超えたことを示す。
【0135】
実施例15:実施例5の触媒の流通反応器試験
本実施例においては、触媒活性結果を、3段階流通反応器試験を用いて得た。試験に用いられる3つの反応器のそれぞれは、入口に石英ウール、出口に石英ウールおよびガラスフリットガスケット付きの、約0.28インチ(約0.7cm)内径を有するステンレススチールU字型容器であった。3つの反応器のそれぞれに、試験される異なる触媒前駆体を装填し、共通の砂浴に入れ、上向流モードでランした。試験に用いられた触媒前駆は、(a)試料5b//N(NiWO//o−フェニレンジアミン//クエン酸0.33//約320℃でN処理された)、(b)試料5g//N(NiWO//シクロヘキシルアミン//クエン酸0.33//約320℃でN処理された)、および(c)基準触媒、触媒B(おおよその化学量論NiMo0.50.5)であった。試料のそれぞれを丸薬状にし、破砕し、約35/60メッシュ(約250〜500μm)に篩い分けし、次に、容積の半分が触媒前駆体を含み、半分が石英希釈剤を含む状態で、約6ccの総容積を与えるために、約40〜60メッシュ石英粉末と混合した。
【0136】
装入された反応器を、砂浴の外部で約400psig(約2.9MPag)でのNでおよび砂浴の内部で約1250psig(約8.72MPag)での水素で約4時間圧力試験した後、圧力をほぼ大気圧に下げ、Hを約48sccmで流しながら、温度を約100℃に上げた。約100℃で、圧力を約100psig(約790kPa)に設定し、H流れを停止し、硫化原料(ディーゼル沸点範囲ストリームに溶解させた、約7.5重量%のジメチルジスルフィド)を、約4時間各触媒上に約8ml/時で流した。次に、硫化原料を続行しながら、Hを約48sccmの流量で各反応器に加え、圧力を約650psig(約4.6MPag)に上げ、次に温度を約4時間にわたって約235℃に上げた。このシステムを次に、さらに約12時間約235℃で等温に保った。その等温処理後に、温度を約4.5時間の期間にわたって約345℃に上げ、さらに約16時間等温に保持した。これにより、触媒の硫化が完了した。
【0137】
温度を次に、約8時間の期間にわたって約230℃に冷却し、硫化原料を次に、表11で下に規定される減圧ガスオイル(VGO)で置き換えた。原料容器、ISCOポンプ、溜め、および装置ラインすべてを、VGO原料を流れるように保つために約80〜120℃に加熱した。圧力を約1200psig(約8.4MPag)に上げ、温度を約4時間の期間にわたって約230℃から約365℃に上げた。VGO流れを約3.3ml/時に設定し、H流量を約49.5sccmに設定した。これは、約1時間−1のLHSVおよび約5000scf/bblの水素流れにおよそに等しかった。約18〜24時間後に、第1液体試料を得て、サンプリングをランの残りの間1日に1回続行した。較正ANTEK(商標)9000シリーズ分析計を用いて希釈生成物の硫黄および窒素含有率を測定した。
【0138】
【表11】
【0139】
VGO原料の水素化脱窒素についての触媒の相対容積活性(RVA)に関する結果を、窒素中約1.25次を仮定して、図10に示す。
【0140】
実施例16.NiWO//(オレイルアミン)0.23(空気250℃)/クエン酸0.19(空気230℃)//N320℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.23であるように含浸させた。試料を先ず乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩乾燥させ、次に、約250℃まで約2℃/分の昇温速度でプログラムされた、箱形炉に入れた。試料を、流れない空気中その温度で約4時間保持した。この試料に次に、水性クエン酸溶液を、NiWOとクエン酸とのモル比が約1:0.19であるように含浸させた。この試料を乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩再び乾燥させ、次に、約230℃まで約2℃/分の昇温速度でプログラムされた、空気中の箱形炉に入れた。試料をその温度で約4時間保持し、次に石英ライン管炉に入れ、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で流れる窒素気流(約300cm/分)中で加熱した。試料をその温度で約90分間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Cと名付けた。
【0141】
実施例18.NiWO//アニリン//クエン酸0.33//N320℃の調製
実施例1からのNiWOに、アニリン(ACS試薬、99.5%、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとアニリンとのモル比が約1:1であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンへ入れ、約100℃で一晩維持した。試料に次に、水性クエン酸溶液を、NiWOとクエン酸とのモル比が約1:0.33であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩再び乾燥させ、次に約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英ライン管炉において流れる窒素気流(約300cm/分)中で加熱した。試料をその温度で約90分間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Dと名付けた。
【0142】
実施例19.NiWO//(オレイルアミン)0.13/(クエン酸)0.15//空気230℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.13であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンへ入れ、約100℃で一晩維持した。試料に次に、水性クエン酸溶液を、NiWOとクエン酸とのモル比が約1:0.15であるように含浸させた。この試料を乾燥炉において約100℃で一晩再び乾燥させ、次に空気中の箱形炉に入れ、約230℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約4時間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Eと名付けた。
【0143】
実施例20.NiWO//(オレイルアミン)0.13/(クエン酸)0.15//N320℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.13であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンへ入れ、約100℃で一晩維持した。試料に次に、水性クエン酸溶液を、NiWOとクエン酸とのモル比が約1:0.15であるように含浸させた。この試料を乾燥炉において約100℃で一晩再び乾燥させ、次に箱形炉に入れ、約320℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で石英ライン管炉において流れる窒素気流(約400cm/分)中で加熱した。試料をその温度で約90分間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Fと名付けた。
【0144】
熱重量測定によって得られた、異なる試料の有機含有率を表12で下にリストする。
【0145】
【表12】
【0146】
触媒前駆体組成物を、上記の通り硫化し、それらの硫化XRDスペクトルを図11に示す(触媒Aについてのスペクトルは図1に示し、その合成は本明細書の比較例1に記載された)。第1有機化合物としてアニリンを使用して調製された硫化試料は、プロピルアミンおよびシクロヘキシルアミンを第1有機化合物として使用して得られた試料(それぞれ、試料5fおよび5g)よりもわずかな幅広い(002)ピークを示したにすぎなかった。第1有機化合物としてオレイルアミンを使用して調製された試料(触媒C、E、およびF)は、計れる程度により幅広い(002)ピークを示し、積重ねのとりわけより小さい数、したがってとりわけより小さい結晶子を示唆する。
【0147】
触媒AおよびC〜Fを、VGO原料を使用する2つの異なる3段階流通反応器試験で比較した。試験に使用されるVGOは、本明細書で上の表11に示される特性を有した。
【0148】
粉末化触媒試料のそれぞれを丸薬状にし、破砕し、約35/60メッシュ(約250〜500μm直径)に篩い分けし、次に、容積のおよそ半分が触媒試料を含み、およそ半分が石英希釈剤を含む状態で、約6cmの総容積を与えるために約40〜60メッシュ石英粉末と混合した。各試料を、入口に石英ウール、出口に石英ウールおよびガラスフリットガスケット付きのステンレススチールのU字形反応器(約0.71cm直径)へ装填した。3つの反応器のそれぞれを共通の砂浴に入れ、上向流モードでランした。装入された反応器を、砂浴の外部で約400psig(約2.8MPag)での窒素でおよび砂浴の内部で約1250psig(約8.62MPag)での水素で約4時間圧力試験した後、圧力をほぼ大気圧に下げた。次に、水素を約48Scm/分(sccm)で流しながら、温度を約100℃に上げた。約100℃で、圧力を約100psig(約690kPag)に上げ、水素流れを停止し、約8mL/時の速度で流れる硫化原料(ディーゼル沸点範囲原料に溶解させた、約7.5重量%のジメチルジスルフィド、またはDMDS)を約4時間各試料上に通した。次に、硫化原料を続行しながら、水素を約48sccmの流量で各反応器に加え、その時点で圧力を約650psig(約4.5MPag)に上げ、次に温度を次の約4時間にわたって約235℃に上げた。このシステムを次に、さらに約12時間約235℃でおおよそ等温状態に保持した。その等温処理後に、温度を約4.5時間の期間にわたって約345℃に再び上げ、さらに約16時間おおよそ等温状態に保持し、その時点で触媒硫化は完了したと考えられた。
【0149】
温度を次に、約8時間の期間にわたって約230℃に冷却し、硫化原料を減圧ガスオイル(VGO)で置き換えた。原料容器、ISCOポンプ、溜め、および装置ラインすべてを、VGOの流れを容易にするために(たとえば、VGO原料を液体状態にするために)約80〜120℃に加熱した。圧力を次に約1200psig(約8.3MPag)に上げ、温度を約4時間の期間にわたって約230℃から約365℃に上げた。VGO流れを約3.3mL/時に設定し、水素流量を約49.5sccmに設定し、それは、約1.1時間−1のLHSVおよび約5000scf/bbl(約845Sm/m)の水素流れに等しかった。約18〜24時間後に、第1液体試料を得て、サンプリングをランの残りの間1日に1回続行した。較正ANTEK 9000シリーズ機器を用いて希釈生成物の硫黄および窒素含有率を測定した。触媒A、C、およびDを、約20日オンストリーム後に比較した。窒素および硫黄含有率を表13に示す。
【0150】
【表13】
【0151】
触媒A、E、およびFを、同様な条件下に同様な原料で比較した。約29日オンストリーム後に、生成物中の窒素および硫黄含有率、ならびにHDN活性をベースとするRVAおよびRMAを得て、表14に示す。
【0152】
【表14】
【0153】
赤外スペクトルを、処理温度が空気中では約100℃〜約230℃に、窒素中では約320℃に変えられた(硫化前)、触媒前駆体EおよびF(それぞれ、NiWO//(オレイルアミン)0.13/クエン酸0.15/空気230℃およびNiWO//(オレイルアミン)0.13/クエン酸0.15/N320℃)などの一連の触媒前駆体について得た。結果を図12に示す。
【0154】
実施例21.NiWO//(オレイルアミン)0.1/(オレイン酸)0.06//空気220℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.10であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンへ入れ、約100℃で一晩維持した。試料に次に、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイン酸とのモル比が約1:0.06であるように含浸させた。この試料を乾燥炉において約100℃で一晩再び乾燥させ、次に空気中の箱形炉に入れ、約220℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約4時間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Gと名付けた。触媒G(硫化前)のおおよその有機含有率は約17.4%であることが分かった。
【0155】
別のランを、次の条件で実施例20におけるものと同じように本明細書の表11からの同じVGO原料を使って行った、すなわち、約365℃の温度、約1200psig(約8.3MPag)の全圧、約5000scf/bbl(約845Sm/m)の水素処理ガス比率、および約1.1時間−1の重量空間速度(WHSV)。触媒A、E、およびGのHDNおよびHDS能力を、約23日オンストリーム後に比較した。窒素および硫黄含有率を得て、下の表15に示す。圧力を(約800psig、または約5.5MPagへ)および空間速度を(約0.73時間−1へ)低下させるための条件の変更後、約34日オンストリーム後の硫黄および窒素含有率を得て、下の表16に示す。
【0156】
【表15】
【0157】
【表16】
【0158】
実施例22.NiWO//(オレイルアミン)0.13//空気230℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.13であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料を次に約230℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で空気中加熱した。試料をその温度で約4時間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Hと名付けた。触媒H(硫化前)のおおよその有機含有率は約12.2%であることが分かった。
【0159】
実施例23.NiWO//(オレイン酸)0.13//空気220℃の調製
実施例1からのNiWOに、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイン酸とのモル比が約1:0.13であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、約220℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で空気中加熱した。試料をその温度で約4時間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。それを触媒Jと名付けた。触媒J(硫化前)のおおよその有機含有率は約14.7%であることが分かった。
【0160】
別のランを、次の条件で実施例20におけるものと同じように本明細書の表11からの同じVGO原料を使って行った、すなわち、約365℃の温度、約1200psig(約8.3MPag)の全圧、約5000scf/bbl(約845Sm/m)の水素処理ガス比率、および約1.1時間−1の重量空間速度(WHSV)。触媒A、H、およびJのHDNおよびHDS能力を、約19日オンストリーム後に比較した。窒素および硫黄含有率、ならびに相対容積および相対モルHDN活性を得て、下の表17に示す。
【0161】
【表17】
【0162】
これらの結果は、同様な条件下に処理され、そして炭化水素(これらの場合には、VGO)原料にさらされたときに、第1有機化合物および第2有機化合物の両方、すなわちオレイルアミンとオレイン酸との組み合わせで処理された触媒(たとえば、表15に示されるような、触媒EおよびG)が、第1有機化合物か第2有機化合物かのどちらか、すなわちオレイルアミン単独またはオレイン酸単独で処理された触媒(たとえば、表17に示されるような、触媒HおよびJ)よりも活性であることを示す。
【0163】
実施例24.酸化物前駆体CoWO、CoMoO、Co1.5MoO4.5、およびCo2.5MoO5.5(有機化合物なし)の調製
CoWO前駆体試料は、炭酸コバルトとタングステン酸との間の固体−スラリー反応によって形成した。約23.79グラムの炭酸コバルトおよび約49.97グラムのタングステン酸を約800mLの水に加えて懸濁液(pH約6.4)を形成し、それを、冷却器を備えた約1Lの丸底フラスコへ入れ、それを次に約90℃に約16時間加熱した。周囲温度/室温に冷却した後、固体を濾過し、乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩乾燥させた。図13は、この試料のXRDスペクトルを示す。
【0164】
CoMo前駆体試料は、約23.78グラムの炭酸コバルトを、約800mLの水にスラリー化された約28.8グラムのMoOと反応させることによって調製した。この混合物を、冷却器を備えた約1Lの丸底フラスコへ入れ、それを約90℃に約16時間加熱した。周囲温度/室温に冷却した後、固体を濾過し、乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩乾燥させた。図13は、この試料のXRDスペクトルを示す。
【0165】
Co2.5Mo5.5前駆体試料は、約59.5グラムの炭酸コバルトを、約800mLの水にスラリー化された約28.8グラムのMoOと反応させることによって調製した。この混合物を、冷却器を備えた約1Lの丸底フラスコへ入れ、それを次に約90℃に約16時間加熱した。周囲温度/室温に冷却した後、固体を濾過し、乾燥オーブンにおいて約100℃で一晩乾燥させた。図13は、この試料のXRDスペクトルを示す。
【0166】
(アンモニウムイオンを含有する)Co1.5Mo4.5前駆体試料は、先ず約17.65グラムのヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物(約0.1モルMo)を約800mLの水に溶解させ、これを、冷却器を備えた約1Lの丸底フラスコへ入れることによって調製した。この溶液に、約22.5mLの濃NHOH(NHOH/Coの約3:1モル比)を加え、こうしてpHを約9.4に上げた(溶液A)。この溶液を次に約90℃に温めた。第2溶液を、約43.64グラムの硝酸コバルト六水和物(約0.15モルCo)を約50mLの水に溶解させることによって調製し(溶液B)、この溶液を約90℃の温度に維持した。コバルト溶液(溶液B)を、約7cm/分の速度でモリブデン溶液(溶液A)へ滴加した。沈澱が溶液の約1/4を加えた後に形成し始めた。溶液AおよびBが混ぜ合わせられた後の最終pHは、約6.5であった。この懸濁液/スラリーを、温度を90℃に維持しながらもう30分間撹拌し、その後それを周囲温度/室温に冷却し、濾過し、約120℃で乾燥させた。乾燥後の総重量は約30.2グラムであった。乾燥試料のXRDスペクトルを図13に示す。
【0167】
実施例25.CoV0.50.5/(オレイルアミン)0.67/(オレイン酸)0.094//空気170℃の調製
実施例7からのCoV0.50.5前駆体試料に、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、CoV0.50.5とオレイルアミンとのモル比が約1:0.067であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、CoV0.50.5とオレイン酸とのモル比が約1:0.094であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で一晩乾燥させ、引き続き空気中の箱形炉において約170℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約2時間保持し、次に、炉から取り出す前に周囲温度/室温に冷却した。
【0168】
実施例26.CoWO/(オレイルアミン)0.13/(クエン酸)0.15//空気210℃の調製
実施例24からのCoWO前駆体試料に、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、CoWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.13であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、水性クエン酸溶液を、CoWOとクエン酸とのモル比が約1:0.15であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で一晩乾燥させ、引き続き空気中の箱形炉において約210℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約2時間保持し、次に、炉から取り出す前に周囲温度/室温に冷却した。
【0169】
実施例27.CoMoO/(オレイルアミン)0.059/(オレイン酸)0.075//空気200℃の調製
実施例24からのCoMoOに、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、CoMoOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.059であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、CoWOとオレイン酸とのモル比が約1:0.075であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で一晩乾燥させ、引き続き空気中の箱形炉において約200℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約2時間保持し、次に、炉から取り出す前に周囲温度/室温に冷却した。
【0170】
実施例28.Co1.5MoO4.5/(オレイルアミン)0.067/(オレイン酸)0.085//空気170℃または200℃の調製
実施例24からのCo1.5MoO4.5前駆体試料に、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、Co1.5MoO4.5とオレイルアミンとのモル比が約1:0.067であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、Co1.5MoO4.5とオレイン酸とのモル比が約1:0.085であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で一晩乾燥させ、引き続き空気中の箱形炉において約170℃か約200℃かのどちらかの最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。どちらの加熱温度についても、試料をその温度で約2時間保持し、次に、炉から取り出す前に周囲温度/室温に冷却した。
【0171】
実施例29.Co2.5MoO5.5/(オレイルアミン)0.074/(オレイン酸)0.095//空気200℃の調製
実施例24からのCo2.5MoO5.5前駆体試料に、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、Co1.5MoO4.5とオレイルアミンとのモル比が約1:0.067であるように含浸させた。試料を乾燥炉へ入れ、約100℃で一晩維持した。この試料に次に、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、Co2.5MoO5.5とオレイン酸とのモル比が約1:0.095であるように含浸させた。この試料を次に約100℃で一晩乾燥させ、引き続き空気中の箱形炉において約200℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。試料をその温度で約2時間保持し、次に、炉から取り出す前に周囲温度/室温に冷却した。
【0172】
実施例30.触媒試料についての水素処理試験比較
実施例25、27、28、および29に従って製造された触媒、ならびに基準触媒(アルミナに担持されたCoMo;Baton Rouge,LAのAlbemarleから商業的に入手可能な)を、以下の手順を用いて硫化した。各触媒試料を反応器容器へ装填した後、約100%純度水素を約1250scf/bbl(約213Nm/m)で流しながら、温度を約107℃まで約14℃/時の速度で上げた。約107℃でおよび約380psig(約2.6MPag)の圧力で、約1.0時間−1のLHSVを達成するのに十分な速度で流れる硫化原料(約2.6%の硫黄含有率を達成するためにディーゼル沸点範囲原料に溶解させた、ジメチルジスルフィド、またはDMDS)を約5時間各試料上に通した。次に、硫化原料および水素原料を流し続けながら、温度を約232℃まで約14℃/時の速度で上げ、約20時間おおよそ等温状態に保持した。その等温処理後に、温度を約321℃まで約14℃/時の速度で再び上げ、約12時間おおよそ等温状態に保持し、これに約14℃/時の速度での約343℃への別の温度上昇が続き、約8時間おおよそ等温状態に保持し、その時点で触媒硫化は完了したと考えられた。
【0173】
さらに、これらの実験において、反応条件は次の通りであった、すなわち、約655°F(約346℃)EITの温度、約575psig(約3.97MPag)の全圧、約0.85時間−1のLHSVおよび約936scf/bbl(約159Nm/m)の水素処理ガス比率。これらの硫化触媒を使用して次の特性を有するディーゼル沸点範囲原料を水素処理した、すなわち、約1.37重量%の硫黄含有率;約134wppmの窒素含有率;約33.1(度)のAPI比重;および約709°F(約376℃)のT95。約20日オンストリーム後の水素処理ディーゼル沸点範囲生成物の硫黄含有率を得て、下の表18に示す。
【0174】
【表18】
【0175】
上の表の生成物硫黄レベルから理解することができるように、実施例28に従って製造された触媒は、(すべての他の反応条件および原料条件が一定であるので)最高の相対水素化脱硫(HDS)活性と相関させることができる、最低の生成物硫黄を示した。
【0176】
実施例31.混合バイオ原料での触媒性能
3つの触媒を、約20重量%大豆油を含有する、主としてVGO原料を使用する3段階流通反応器試験で比較した。触媒Kは、アルミナに担持された商業的に入手可能なNiMo触媒であった。触媒Lは、商業的に入手可能なバルクNiMoW触媒であった。触媒Mは、触媒Eおよび/またはGと同様な組成の、本発明による触媒であった。大豆油は、硫黄、窒素、および金属ヘテロ原子を実質的に含まず、様々なアルキル鎖長の、しかしほとんどC18のトリグリセリドを主として含んだ。本実施例に使用されたVGOベースは、下の表19に詳述される特性を示した。
【0177】
【表19】
【0178】
触媒を、本明細書の実施例20に記載されるものと同様の手順を用いて硫化した。さらに、これらの実験において、反応条件は次の通りであった、すなわち、約680°F(約360℃)EITの温度、約1287psig(約8.87MPag)の全圧、および約5950scf/bbl(約1010Nm/m)の水素処理ガス比率。触媒Kは約0.77時間−1のLHSVでランしたが、触媒LおよびMはそれぞれ、約1.08時間−1のLHSV値でランした。約78日オンストリーム後の窒素および硫黄含有率を得て、下の表20に示す。
【0179】
【表20】
【0180】
得られた液体生成物は、酸素の99%超の除去で、実質的に酸素を含まなかった。酸素は、様々な形態で、たとえば水、CO、および/またはCOとして除去された。表21は、反応器ガス流出ストリーム中のこれらの副生物のHSを含まない濃度を示す。
【0181】
【表21】
【0182】
実施例32.混合バイオ原料に関する触媒性能
触媒K、L、およびMを、約20重量%大豆油を含有する、主としてガスオイル原料を使用して3段階流通反応器試験で比較した。大豆油は、実施例31におけるものと同じものであったが、本実施例に使用されるガスオイルベースは、下の表22に詳述される特性を示した。
【0183】
【表22】
【0184】
触媒を、本明細書の実施例20に記載されるものと同様の手順を用いて硫化した。さらに、これらの実験において、反応条件は次の通りであった、すなわち、約625°F(約329℃)EITの温度、約1000psig(約6.9MPag)の全圧、および約2070scf/bbl(約350Nm/m)の処理ガス比率。触媒Kは、約0.78時間−1のLHSVでランしたが、触媒LおよびMはそれぞれ、約1.11時間−1のLHSV値でランした。約78日オンストリーム後の窒素および硫黄含有率を得て、下の表23に示す。
【0185】
【表23】
【0186】
得られた液体生成物は、酸素の99%超の除去で、実質的に酸素を含まなかった。酸素は、様々な形態で、たとえば水、CO、および/またはCOとして除去された。表24は、反応器ガス流出ストリーム中のこれらの副生物のHSを含まない濃度を示す。
【0187】
【表24】
【0188】
実施例33.水素化分解機能における触媒性能
触媒K、L、およびMを、VGO1およびVGO2と名付けられる、2つの異なるVGO原料を使用して3段階流通反応器試験で比較した。本実施例に使用されるVGOは、下の表25に詳述される特性を示した。
【0189】
【表25】
【0190】
触媒を、本明細書の実施例20に記載されるものと同様の手順を用いて硫化した。さらに、これらの実験において、反応条件は変えられた。約40日オンストリーム後の窒素および硫黄含有率を、次の条件でVGO1原料について得た、すなわち、約710°F(約377℃)EITの温度、約1.4時間−1のLHSV、および約4000scf/bbl(約680Nm/m)の水素処理ガス比率。触媒Kは、約1875psig(約12.9MPag)の全圧でランしたが、触媒LおよびMはそれぞれ、約1275psig(約8.8MPag)の全圧でランした。結果を下の表26に示し、それは、比較的より低い圧力でさえも、本処理触媒組成物の優れた性能を示す。
【0191】
【表26】
【0192】
次に、約69日オンストリーム後の窒素および硫黄含有率を、次の条件でVGO1原料について得た、すなわち、約710°F(約377℃)EITの温度、約1875psig(約12.2MPag)の全圧、および約4000scf/bbl(約680Nm/m)の水素処理ガス比率。触媒LおよびMはそれぞれ、約2.3時間−1のLHSVでランしたが、触媒Kは、約1時間−1のLHSVでランした。結果を下の表27に示し、それは、比較的より高い空間速度でさえも、本処理触媒組成物の優れた性能を示す。
【0193】
【表27】
【0194】
その後、約74日オンストリーム後の窒素および硫黄含有率を、次の条件でVGO2原料について得た、すなわち、約710°F(約377℃)EITの温度、約1875psig(約12.2MPag)の全圧、約2時間−1のLHSV、および約4000scf/bbl(約680Nm/m)の水素処理ガス比率。結果を下の表28に示し、それは、より重質の/より無反応性の原料についてさえも、本処理触媒組成物の優れた性能を示す。
【0195】
【表28】
【0196】
実施例34.NiMo0.50.5//(オレイルアミン)0.10/(オレイン酸)0.06//空気220℃の調製
NiMo0.50.5を比較例1に記載されるように調製した。それを乾燥させ、約300℃で焼成した後、それを(残りが混合金属酸化物である状態で)結合粒子の重量の約7重量%が不活性バインダーであるように、不活性バインダーを使って結合粒子へ複合化した。約6.48gのオレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、約3.08gのオレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。NiMo0.50.5の約50グラムの結合粒子を同様に約100℃に加熱し、次にこの溶液を使用して有機成分を結合粒子中へ/上へ同時に共含浸させた。得られた触媒は、NiMo0.50.5(オレイルアミン)0.10(オレイン酸)0.06のおおよその組成を有した。この含浸試料を乾燥炉において約100℃で一晩乾燥させ、箱形炉に入れ、約220℃まで約0.5℃/分で空気中加熱し、その温度で約4時間保持した。熱処理試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Pと名付けた)。この試料を、約300℃で焼成しそして(残りが混合金属酸化物である状態で)結合粒子の重量の約7重量%が不活性バインダーであるように、不活性バインダーを使って結合粒子へ複合化することによって粒子へ成形したが、その結合粒子を有機含浸にかけなかった、比較例1に記載されるNiMo0.50.5(触媒Nと名付けた)に対して比較した。
【0197】
両触媒試料NおよびPを、本明細書の実施例20に記載されるものと同様の手順を用いて硫化した。硫化すると、触媒試料をそれぞれ、次の条件で実施例20におけるものと同じように本明細書の表11からの同じVGO原料と接触させた、すなわち、約365℃の温度、約1200psig(約8.3MPag)の全圧、約5000scf/bbl(約845Sm/m)の水素処理ガス比率、および約1.1時間−1の重量空間速度(WHSV)。これらの触媒試料のHDNおよびHDS能力を、約13日オンストリーム後に比較した。窒素および硫黄含有率を得て、下の表29に示す。
【0198】
【表29】
【0199】
実施例35.NiWO//(エタノールアミン)/(クエン酸)0.33//空気220℃の調製
NiWOを比較例1に記載されるように調製し、乾燥させ、約300℃で焼成した。約20グラムの焼成NiWO粉末に、初期湿潤技法を用いて約3.98グラムのエタノールアミンを含浸させた。含浸粉末を約100℃で一晩乾燥させ、次に周囲温度/室温に冷却した。その後、約4.18グラムのクエン酸を含有する水溶液(約4mL)を、エタノールアミン含浸粉末中へ/上へ初期湿潤点まで含浸させた。この順次含浸試料を、乾燥炉において約100℃で一晩乾燥させ、箱形炉に入れ、約220℃まで約0.5℃/分で空気中加熱し、その温度で約4時間保持した。熱処理試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Qと名付けた)。この試料を、約300℃で焼成されたが、有機含浸にかけられなかった、比較例1に記載されたNiWOおよびNiMo0.50.5試料(それぞれ、触媒AおよびB)に対して比較した。
【0200】
触媒試料QおよびBを、本明細書の実施例20に記載されるものと同様の手順を用いて硫化した。硫化すると、触媒試料をそれぞれ、次の条件で実施例20におけるものと同じように本明細書の表11からの同じVGO原料と接触させた、すなわち、約365℃の温度、約1200psig(約8.3MPag)の全圧、約5000scf/bbl(約845Sm/m)の水素処理ガス比率、および約1.1時間−1の重量空間速度(WHSV)。これらの触媒試料のHDNおよびHDS能力を、約26日オンストリーム後に比較した。触媒QおよびBについての窒素および硫黄含有率を得て、下の表30に示す。
【0201】
【表30】
【0202】
触媒試料Q、A、B、およびFの未硫化バーション(NiMo0.50.5//(オレイルアミン)0.13/(クエン酸)0.15//空気220℃−実施例21)を、XRD技法を用いて分析した(図14)。約8°〜18°2シータのXRDピークは、これらの試料における硫化第6族金属積重ね高さと相関する、(002)結晶質反射を表すと考えられる。触媒試料AおよびB(有機処理なし)が、少なくとも4の積重ね高さに相当する比較的狭い、強いピークを示す一方で、触媒試料QおよびFが、それぞれ、約2.1および2.2の積重ね高さに相当する、より幅広い、より少ない強度のピークを示すことは注目に値する。
【0203】
実施例36.有機処理温度のNiW触媒への影響
NiWOを比較例1に記載されるように調製した。それを乾燥させ、約300℃で焼成した後、それを(残りが混合金属酸化物である状態で)結合粒子の重量の約7重量%が不活性バインダーであるように、不活性バインダーを使って結合粒子へ複合化した。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。NiWOの結合粒子の3つの試料を同様に約100℃に加熱し、次に、約1:0.10のNiWOとオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.06のNiWOとオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を結合粒子の試料のそれぞれ中へ/上へ同時に共含浸させた。得られた触媒はこうして、NiWO//(オレイルアミン)0.1/(オレイン酸)0.06のおおよその組成を有した。これらの含浸試料をそれぞれ、乾燥炉において約100℃で一晩風乾させた。3つの試料のうちの1つを周囲温度/室温に冷却し、さらなる処理なしに貯蔵した(触媒Rと名付けた)。3つの試料のうちのもう1つを次に箱形炉に入れ、約230℃まで約0.5℃/分で空気中加熱し、その温度で約4時間保持した。高温試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Sと名付けた)。3つの試料のうちの最後のものを次に、約230℃の最終温度まで約2℃/分の加熱速度で、石英ライン管炉において流れる窒素気流(約200cm/分)中で処理し、その温度で約90分間保持した。それを次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Tと名付けた)。
【0204】
触媒R、S、およびTをその後、固体状態13C NMRによって分析した。これらの分析のために、13C MAS NMRスペクトルは、約14kHzで約4nm(o.d.)MAS回転プローブを用いる約100.4MHzの13C Larmor周波数に相当する約9.4T Varian InfinityPlus 400分光計で周囲温度/室温(約20〜25℃)で記録され、データ収集中にHデカップリングありの約4μsec π/2パルス、約60秒のパルス遅延、および約436〜1536過渡信号が集められた。13C NMRスペクトルは、ヘキサメチルベンゼンを第2内部標準として使用し、メチルピークを約17.36ppmにセットして、テトラメチルシラン(δ約0.0ppm)を基準とした。これらの3つの触媒についてのスペクトルを図15に示す(最上部にR、中間にS、底部にT)。すべてのNMRデータは、Varian Inc.のSpinsight(商標)NMRデータ収集ソフトウェアを用いて記録され、すべての処理は、Acorn NMR,IncからのNutsPro(商標)(NMR Utility Transform Software−Professional)ソフトウェア・パッケージを用いて行われた。自由誘導減衰(FID)は、フーリエ変換され、同調させられ、ベースラインを5次多項式に合致させるサブルーチンを用いてベースライン補正された。不飽和炭素の相対量は、不飽和炭素および芳香族炭素に帰属させられるピーク(約160ppm〜約90ppmに広がるδ)の積分面積を、不飽和炭素および芳香族炭素プラス脂肪族/飽和炭素に帰属させられる積分面積の合計(約80ppm〜約10ppmに広がるδでの主脂肪族/飽和ピークプラス約200ppm〜160ppmに広がるδでのおよび約−90ppm〜約−130ppmに広がるδでの相当する脂肪族/飽和サイドバンドの合計)と比較することによって求めた。スピニングサイドバンド強度は、不飽和/芳香族炭素についてまったく検出されなかった(存在する場合、それらは、それぞれ、δ約250ppmおよびδ約−20ppmに現れるであろう)。NMRデータに基づく結果を下の表31に示す。
【0205】
【表31】
【0206】
この定量的なNMRデータに基づき、増加した不飽和レベルは、100℃より上の温度での有機化合物の熱処理から生じ得る。このNMR技法は、孤立または共役炭素−炭素不飽和を芳香族不飽和から区別することができず、パーセント不飽和炭素値は、芳香族不飽和炭素および非芳香族不飽和炭素の両方を表す。理論に制約されることなく、有機化合物の熱処理から生じる追加の不飽和炭素は観察できる触媒HDN活性の増加をもたらすことができると仮定される。
【0207】
有機処理からの追加の不飽和を有する触媒についての触媒HDN活性の増加というアイディアを試験するために、触媒RおよびSを、本明細書の実施例20に記載されるものと同様な手順を用いて硫化した。硫化すると、触媒試料をそれぞれ、実施例35におけるものと同じようにおよび同じ条件下に下の表32にリストされる特性を有するVGO原料と接触させた。
【0208】
【表32】
【0209】
これらの触媒試料のHDNおよびHDS能力を、約21日オンストリーム後に比較した。触媒RおよびSをこれらの条件下に使用して達成される生成物についての窒素含有率を得て、下の表33に示す。これらの結果は、100℃より上で有機的に処理された触媒のはるかに向上したHDN活性を示す。
【0210】
【表33】
【0211】
実施例37.有機処理環境のNiW触媒への影響
この実験のために、NiWO//(オレイルアミン)0.13/(クエン酸)0.15の2つの試料を調製した。NiWOを比較例1に記載されるように調製し、これに、乾燥および約300℃での焼成、次に周囲温度/室温への冷却が続いた。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)をクエン酸の水溶液と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。焼成NiWOの両試料を約100℃に同様に加熱し、次に約1:0.13のNiWOとオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.15のNiWOとクエン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を各試料中へ/上へ同時に共含浸させた。これらの含浸試料をそれぞれ、乾燥炉において約100℃で一晩乾燥させ、次に赤外分析のための準備をした。
【0212】
試料を特徴付ける透過赤外スペクトルは、MCT検出器を備えたThermo Scientific Nicolet 6700 FT−IR分光計を用いて収集し、図16A〜Bに示す。各試料の約0.012〜0.016gを約0.04gのダイヤモンド粉末と混合し、減圧/吸着システムに接続されるIRセル中へ装填される自立ウェハーに圧入し、それは、処理ガスが赤外キャラクタリゼーションの間ずっとウェハーを通っておよびその周りを流れながらスペクトルの記録を可能にした。IRスペクトルを収集し、Thermo Scientific Omnic V7.1ソフトウェアを使って処理し、解析した。各報告されるスペクトルは、約4cm−1のスペクトル解像度で約4000cm−1〜約1000cm−1の範囲にわたって約256スキャンの平均である。報告されるスペクトルはそれぞれ、空のIRセルのバックグランドスペクトルを差し引くことによって標準化された。ピーク・デコンボリューションおよび適合解析は、OriginLabまたはPeakFitなどの、他の市販ソフトウェアを代わりに用いることができるが、Omnic V7.1市販ソフトウェアを使って2000〜1200cm−1領域における対称Gaussian(ガウス)関数を用いて行った。
【0213】
第1試料をIRセルに入れ、約100℃で約90分間ヘリウム中の約20容積%酸素の流れ(酸化性環境)にさらし、その時点で透過IRスペクトルを収集した(図16A−1)。その直後に、その同じ試料を約230℃で約240分間ヘリウム中の約20容積%酸素の流れ(酸化性環境)にさらし、その時点で別のスペクトルを収集した(図16A−2)。第2試料をIRセルに入れ、約100℃で約90分間約100%ヘリウムの流れ(非酸化性環境)にさらし、その時点で透過IRスペクトルを収集した(図16B−3)。その直後に、その同じ試料を約230℃で約240分間約100%ヘリウムの流れ(非酸化性環境)にさらし、その時点で別のスペクトルを収集した(図16B−4)。
【0214】
図16Aのスペクトルに関して、約1570〜1620cm−1および約1380〜1450cm−1領域に中心のある2つの幅広いバンドと一緒に、約1773cm−1および約1715cm−1の極大に中心のある赤外バンドがスペクトル(2)が特に興味深い。より高い温度の酸化性環境中で処理された試料(2)の適合解析は、約0.40a.u.の高さ、約63cm−1の半値全幅(FWHM)、および約27.0a.u.の積分面積を持った約1618cm−1〜約1812cm−1に広がり、約1715cm−1に中心のあるピークを特定した。約1773cm−1に中心のある形体(feature)は、約0.16a.u.の高さ、約51cm−1のFWHM、および約8.66a.u.の積分面積を持った約1723cm−1〜約1841cm−1に広がるピークと適合した。より低い波数で特定される最も目立つピークは、約0.12a.u.の高さ、約81cm−1のFWHM、および約9.98a.u.の積分面積を持った約1290cm−1〜約1512cm−1に広がり、約1400cm−1に中心があった。対照的に、より低い温度の酸化性環境中で処理された試料(1)の適合解析は、約0.26a.u.の高さ、約66cm−1のFWHM、および約18.1a.u.の積分面積を持った約1626cm−1〜約1816cm−1に広がり、約1722cm−1に中心のあるピークを特定した。約1395cm−1に中心のある(約1310cm−1〜約1440cm−1に及ぶ)ピークは、約0.30a.u.の高さ、約110cm−1のFWHM、および約34.8a.u.の積分面積を有した。この試料について1773cm−1の周りの領域にピークはまったく特定されなかった。より高い温度の酸化性環境中で処理された試料(2)については、約1400cm−1に中心のあるものと比べて、約1715cm−1に中心のあるピークの高さおよび積分面積の比は、それぞれ、約3.5および約2.7であった。比較して、より低い温度の酸化性環境中で処理された試料(1)については、約1400cm−1に中心のあるものと比べて、約1715cm−1に中心のあるピークの高さおよび積分面積の比は、それぞれ、約0.87および約0.52であった。
【0215】
図16Bのスペクトルに関して、約1570〜1620cm−1および約1380〜1450cm−1領域に中心のある幅広いバンドと一緒に、約1773cm−1および約1698cm−1の極大に中心のある赤外バンドがスペクトル(4)について特に興味がある。より高温の非酸化性環境中で処理された試料(4)の適合解析は、約0.15a.u.の高さ、約39cm−1のFWHM、および約6.17a.u.の積分面積を持った約1653cm−1〜約1765cm−1に広がり、約1706cm−1に中心のあるピークを特定した。約1671cm−1に中心のある形体は、約0.17a.u.の高さ、約64cm−1のFWHM、および約11.6a.u.の積分面積を持った約1582cm−1〜約1761cm−1に広がるピークと適合した。より低い波数で特定される最も目立つピークは、約0.11a.u.の高さ、約29cm−1のFWHM、および約3.31a.u.の積分面積を持った約1416cm−1〜約1495cm−1に広がり、約1455cm−1に中心があった。約1410cm−1に中心のある形体は、約0.10a.u.の高さ、約62cm−1のFWHM、および約6.85a.u.の積分面積を持った約1324cm−1〜約1482cm−1に広がるピークと適合した。対照的に、より低い温度の非酸化性環境中で処理された試料(3)の適合解析は、約0.17a.u.の高さ、約66cm−1のFWHM、および約11.81a.u.の積分面積を持った約1630cm−1〜約1815cm−1に広がり、約1723cm−1に中心のあるピークを特定した。約1415cm−1に中心のある(約1284cm−1〜約1540cm−1に及ぶ)ピークは、約0.14の高さ、約95cm−1のFWHM、および約14.27a.u.の積分面積を有した。そのスペクトルについて約1773cm−1周りの領域にピークはまったく特定されなかった。より高い温度の非酸化性環境中で処理された試料(4)については、約1410cm−1に中心のあるものと比べて、約1715cm−1に中心のあるピークの高さおよび積分面積の比は、それぞれ、約1.4および約0.9であった。比較して、より低い温度の非酸化性環境中で処理された試料(3)については、約1410cm−1に中心のあるものと比べて、約1715cm−1に中心のあるピークの高さおよび積分面積の比は、それぞれ、約1.2および約0.8であった。
【0216】
これらのスペクトルにおけるピークは、それらの波数(cm−1)によって本明細書では特定されているが、それらのピークは、ピークの波数位置と各試料内に存在することが知られているかまたは推定される結合の物理化学的性質とを含む(がそれらに限定されない)様々な要因に基づき、特定の結合励起(伸縮、振動、変角など)と相関させることができる。理論に制約されることなく、本明細書に記載される赤外スペクトルにおいては、約1773cm−1におよび約1715cm−1に中心のあるピークは、それぞれ、アルデヒド型カルボニル結合におけるC=O伸縮および非芳香族不飽和炭化水素結合におけるC=C伸縮に推測的に帰属させられた。約1380〜1450cm−1に中心のある幅広い形体は、芳香環におけるC=C伸縮からの赤外バンドの組み合わせに推測的に帰属させられ、約1570〜1620cm−1に中心のある幅広い形体は、芳香環におけるC=C伸縮と非芳香族不飽和炭化水素におけるC=C伸縮との組み合わせに推測的に帰属させられた。上記の赤外ピークのおおよその強度に基づき、IR分光分析法によって観察される非芳香族不飽和炭化水素の濃度は、より高い温度の非酸化性環境中で処理された試料と比べて、より高い温度の酸化性環境中で処理された試料における芳香族炭化水素の濃度よりも幾分高いように思われる。
【0217】
実施例38.第1および第2有機化合物の当モル量
NiWOの2つの試料を比較例1に記載されるように調製し、これに、乾燥およびそれぞれ約300℃での焼成、次に周囲温度/室温への冷却が続いた。等モルのオレイルアミン−オレイン酸試料については、オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)をオレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と周囲温度/室温で混ぜ合わせて溶液を形成した。周囲温度/室温での焼成NiWOの1つの試料を、約1:0.074のNiWOとオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.094のNiWOとオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量のオレイルアミン−オレイン酸溶液に暴露して有機成分を試料中へ/上へ同時に共含浸させた。等モルのオレイルアミン−クエン酸試料については、周囲温度/室温での焼成NiWOの他の試料に先ずオレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、NiWOとオレイルアミンとのモル比が約1:0.11であるように含浸させた。試料を乾燥オーブンへ入れ、約100℃で一晩維持し、周囲温度/室温に冷却した。乾燥試料に次に、水性クエン酸溶液を、NiWOとクエン酸とモル比が約1:0.15であるように含浸させた。名目モル比はそれらの表面上で等モルであるとは思われないが、ひとたびそれらがそれらのそれぞれの純度(たとえば、70%オレイルアミン、90%オレイン酸など)について調整されると、実際のモル比はおおよそ等モルであることが指摘されなければならない。
【0218】
両試料を次に乾燥炉において約100℃で一晩乾燥させ、その後箱形炉(空気中の)に入れ、約220℃の最終温度まで約0.5℃/分の速度で加熱した。両試料をその温度で約4時間保持し、次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した。等モルのオレイルアミン−オレイン酸試料をOLEEQと名付け、等モルのオレイルアミン−クエン酸試料をCITEQと名付けた。等モルの試料を、いかなる有機化合物でも処理されなかった基準触媒(B)に対して比較した。これらの試料を次に硫化し、実施例36におけるものと同じようにおよび同じ条件下に、上の表32にリストされる特性を有するVGO原料と接触させることによって触媒HDN活性について試験した。相対体積ベースのHDN活性(すなわち、RVA)および相対モルベースの活性(すなわち、RMA)を含む、結果を下の表34に示す。
【0219】
【表34】
【0220】
等モル量の第1および第2有機化合物を含有する試料は、アミン含有有機化合物がカルボン酸含有有機化合物に対してモル過剰で存在する試料ほどに著しい向上ではないが、明らかな向上を示すことが指摘される。
【0221】
実施例39。第8〜10族金属の含有率を低減することの影響
等モル量のニッケルおよびタングステンを含有する第1試料(NiWO)を比較例1に従って調製した。それを乾燥させ、約300℃で焼成した後、(残りが混合金属酸化物である状態で)押出物の重量の約7重量%が不活性バインダーであるように、それを不活性バインダーと複合化し、約1.3mmの平均直径を有する押出物に成形した。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。焼成した等モルのNiWOの第1試料を同様に約100℃に加熱し、次に、約1:0.10のNiWOとオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.06のNiWOとオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を試料中へ/上へ同時に共含浸させた。この含浸試料を乾燥炉において空気中約100℃で一晩乾燥させた。試料を次に箱形炉に入れ、空気中約230℃まで約0.5℃/分で加熱し、その温度で約4時間保持した。この試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒AAと名付けた)。
【0222】
第2試料を比較例1と同様な手順を用いて、しかし原料をたったの約0.75:1のニッケルとタングステンとのモル比を提供するように調整して調製した。それを乾燥させ、約300℃で焼成した後、次に周囲温度/室温に冷却し、XRDスペクトルを取り(示されていない)、それは、焼成されたときに、等モルのニッケル−タングステン酸化物とおよそ同様な特徴を有するように思われた。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。焼成したNi0.75WO3.75の第2試料を同様に約100℃に加熱し、次に、約1:0.10のNi0.75WO3.75とオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.06のNi0.75WO3.75とオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を試料中へ/上へ同時に共含浸させた。この含浸試料を乾燥炉において空気中約100℃で一晩乾燥させた。試料を次に箱形炉に入れ、空気中約220℃まで約0.5℃/分で加熱し、その温度で約4時間保持した。この試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Yと名付けた)。
【0223】
第3試料を比較例1と同様な手順を用いて、しかし原料をたったの約0.5:1のニッケルとタングステンとのモル比を提供するように調整して調製した。それを乾燥させ、約300℃で焼成した後、次に周囲温度/室温に冷却し、XRDスペクトルを取り(示されていない)、それは、より鋭い[002]積重ねピークと典型的な六方晶系ニッケルタングステートによりもヘテロポリ相立体配置に類似したピークの収集とを含む(がそれらに限定されない)、焼成された第1および第2試料とは異なる幾つかの特徴を有するように思われた。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。焼成したNi0.5WO3.5の第2試料を同様に約100℃に加熱し、次に、約1:0.10のNi0.5WO3.5とオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.06のNi0.5WO3.5とオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を試料中へ/上へ同時に共含浸させた。この含浸試料を乾燥炉において空気中約100℃で一晩乾燥させた。試料を次に箱形炉に入れ、空気中約220℃まで約0.5℃/分で加熱し、その温度で約4時間保持した。この試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Zと名付けた)。
【0224】
第4試料を比較例1と同様な手順を用いて、しかし原料を約1.2:1のニッケルとタングステンとのモル比を提供するように調整して調製し、これに、乾燥、約300℃での焼成、次に周囲温度/室温への冷却が続いた。オレイルアミン(70%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)を、オレイン酸(90%工業銘柄、Milwaukee,WIのAldrichから商業的に入手可能な)と混ぜ合わせ、約100℃に加熱して溶液を形成した。焼成したNi1.2WO4.2の第2試料を同様に約100℃に加熱し、次に、約1:0.10のNi1.2WO4.2とオレイルアミンとのモル比を達成するのに、および約1:0.06のNi1.2WO4.2とオレイン酸とのモル比を達成するのに十分である量の溶液を使用して有機成分を試料中へ/上へ同時に共含浸させた。この含浸試料を乾燥炉において空気中約100℃で一晩乾燥させた。試料を次に箱形炉に入れ、空気中約220℃まで約0.5℃/分で加熱し、その温度で約4時間保持した。この試料を次に周囲温度/室温に冷却し、炉から取り出した(触媒Xと名付けた)。
【0225】
これらの試料を、いかなる有機化合物でも処理されなかった基準触媒(B)に対して比較した。すべてのこれらの試料を次に硫化し、実施例36におけるものと同じようにおよび同じ条件下に、上の表32にリストされる特性を有するVGO原料と接触させることによって触媒HDN活性について試験した。相対容積ベースのHDN活性(すなわち、RVA)および相対モルベースのHDN活性(すなわち、RMA)を含む、結果を下の表35に示す。
【0226】
【表35】
【0227】
これらの実験において、0.75Ni:W比触媒のHDN活性は、二重有機処理のために、モルベースで適度の増加を依然として示したが、0.5Ni:W比触媒のHDN活性は、二重有機処理にもかかわらず、モルベースで低下を示したことが指摘される。それにもかかわらず、等モルのNi:W触媒および1より大きいNi:W比を有する触媒は、70%以上の相対モルHDN活性を示した。したがって、0.75以上のNi:W比が望ましいように思われ、ほぼ等モルから等モルより幾分上のNi:W比が、相対モル活性ベースで特に望ましいように思われる。
【0228】
本発明は、特定の実施形態を参照することによって説明され、例示されてきたが、当業者は、本発明が本明細書に必ずしも例示されない変形例に結び付くことを十分に理解するであろう。そのため、したがって、本発明の真の範囲を決定するという目的のためには添付のクレームが専ら言及されなければならない。

本明細書は、下記の態様を含む。
1.
元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属、ならびに(i)少なくとも1つの第1級又は第2級アミン基および少なくとも10個の炭素を含有する第1有機化合物もしくは(ii)少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素を含有する第2有機化合物から形成される反応生成物を含み、反応生成物は(i)および(ii)の両方から形成されない触媒前駆体組成物であって、前記反応生成物が、(i)前記第1有機化合物もしくは(ii)前記第2有機化合物と比べて、追加の不飽和炭素原子を含有し、前記触媒前駆体組成物の金属が結晶格子に配列され、そして前記反応生成物が結晶格子内に配置されていない水素処理触媒前駆体組成物。
2.
その場形成された不飽和炭素原子を含有する水素処理触媒前駆体組成物の製造方法であって、
(a)元素の周期表の第6族からの少なくとも1種の金属、元素の周期表の第8〜10族からの少なくとも1種の金属を含む触媒前駆体組成物を、少なくとも1つの第1級又は第2級アミン基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第1有機化合物もしくは少なくとも1つのカルボン酸基および少なくとも10個の炭素原子を含有する第2有機化合物で処理して、有機的に処理された前駆体触媒組成物を形成する工程;及び
(b)前記有機的に処理された前駆体触媒組成物を、前記第1もしくは第2有機化合物が反応して前記第1もしくは第2有機化合物中に存在しない追加のその場形成された不飽和炭素原子を形成するのに十分であるが、前記第1もしくは第2有機化合物の50重量%超が揮発するほどには長くない時間、195℃〜250℃の温度で加熱し、
それによってその場形成された不飽和炭素原子を含有する触媒前駆体組成物を形成する工程と
を含む方法。
3.
第6族からの前記少なくとも1種の金属が、Mo、W、またはそれらの組み合わせであり、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属が、Co、Ni、またはそれらの組み合わせである、上述の1に記載の水素処理触媒前駆体組成物。
4.
前記触媒前駆体組成物が、元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属をさらに含む、上述の1又は3に記載の水素処理触媒前駆体組成物。
5.
前記第1有機化合物が、10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含む、および/または前記第2有機化合物が、カルボン酸基を1つのみ含み、および10〜30個の炭素原子を有する、上述の1及び3〜4のいずれかに記載の水素処理触媒前駆体組成物。
6.
第6族からの前記少なくとも1種の金属が、Mo、W、またはそれらの組み合わせであり、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属が、Co、Ni、またはそれらの組み合わせである、上述の2に記載の方法。
7.
前記触媒前駆体組成物が、元素の周期表の第5族からの少なくとも1種の金属をさらに含む、上述の2又は6に記載の方法。
8.
前記第1有機化合物が、10〜30個の炭素原子を有する第一級モノアミンを含む、および/または前記第2有機化合物が、カルボン酸基を1つのみ含み、および10〜30個の炭素原子を有する、上述の2及び6〜7のいずれかに記載の方法。
9.
上述の1及び上述の3〜5のいずれかに記載の組成物は、前記第1もしくは第2有機化合物が前記第1もしくは第2有機化合物中に存在しない不飽和炭素原子を含有する反応生成物をその場形成するのに十分な時間、195℃〜250℃の温度に加熱することによって製造されるバルク混合金属水素処理触媒前駆体組成物。
10.
上述の9に記載の前記触媒前駆体組成物を硫化することによって製造されるバルク混合金属水素処理触媒組成物。
11.
その場形成された不飽和炭素原子を含有する前記触媒前駆体組成物が、第1有機化合物もしくは第2有機化合物から形成される反応生成物、第6族からの前記少なくとも1種の金属の酸化物形態、第8〜10族からの前記少なくとも1種の金属の酸化物形態、および任意選択的に20重量%以下のバインダーから本質的になるバルク金属水素処理触媒前駆体組成物である、上述の2及び6〜8のいずれかに記載の方法。
12.
硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に上述の2、6〜8及び11のいずれかに記載の方法に従って製造されたその場形成された不飽和炭素原子を含有する前記触媒前駆体組成物を硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法。
13.
上述の2、6〜8及び11〜12のいずれかに記載の方法に従って製造されるその場形成された不飽和炭素原子を含有する水素処理触媒前駆体組成物。
14.
上述の12に記載の方法に従って製造される硫化された水素処理触媒組成物。
15.
下記、すなわち、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも29%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率を示す、
前記触媒前駆体組成物が、前記第1もしくは第2有機化合物中に存在する不飽和炭素原子の総含有率と比べて、少なくとも17%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率の増加を示す、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも0.9の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、および
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも15以下の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、
の1つ以上が満たされる、上述の1、3〜5、9及び13のいずれかに記載の水素処理触媒前駆体組成物。
16.
下記、すなわち、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも29%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率を示す、
前記触媒前駆体組成物が、前記第1もしくは第2有機化合物中に存在する不飽和炭素原子の総含有率と比べて、少なくとも17%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率の増加を示す、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも0.9の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、および
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも15以下の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、
の1つ以上が満たされる、上述の10又は14に記載の水素処理触媒組成物。
17.
下記、すなわち、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも29%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率を示す、
前記触媒前駆体組成物が、前記第1もしくは第2有機化合物中に存在する不飽和炭素原子の総含有率と比べて、少なくとも17%の、13C NMR技法を用いるピーク面積比較によって測定される、不飽和炭素原子の含有率の増加を示す、
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも0.9の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、および
前記触媒前駆体組成物が、少なくとも15以下の、1380cm−1〜1450cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークと比べて、1700cm−1〜1730cm−1に中心のあるデコンボリューションされたピークの赤外分光技法を用いるピーク面積比によって測定される、不飽和炭素原子の芳香族炭素原子との比を示す、
の1つ以上が満たされる、上述の2、6〜8及び11〜12のいずれかに記載の方法。
18.
上述の1、3〜5、13及び15のいずれかに記載の、または上述の2、6〜8及び11のいずれかに記載の方法に従って製造された前記触媒前駆体組成物を、硫化された水素処理触媒組成物を製造するのに十分な条件下に硫化する工程を含む、硫化された水素処理触媒組成物の製造方法であって、下記、すなわち、
前記硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の平均数が1.5〜3.5であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物が、積重ね層の前記平均数が第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった同一の硫化された水素処理触媒組成物よりも少ない、少なくとも0.8の積重ね層であるように、硫化第6族金属の複数の積重ね層を含む層状構造を示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも少なくとも57%大きい水素化脱窒素RMAを示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、第1もしくは第2有機化合物を使用して処理されなかった硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す;
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも少なくとも30%大きい水素化脱窒素RMAを示す;および
前記硫化された水素処理触媒組成物を水素処理条件下に減圧軽油原料に暴露すると、前記硫化された水素処理触媒組成物が、10個未満の炭素原子を有する単一の有機化合物のみで処理された硫化触媒組成物よりも最大500%大きい水素化脱窒素RMAを示す、
の1つ以上が満たされる方法。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
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図15
図16