特許第6017424号(P6017424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017424
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】マグネシウム心材を有する固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20161020BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61B17/56
   A61B17/04
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-528229(P2013-528229)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-540470(P2013-540470A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011049994
(87)【国際公開番号】WO2012033689
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月15日
【審判番号】不服2015-20981(P2015-20981/J1)
【審判請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】61/380,884
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507215725
【氏名又は名称】シンセス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SYNTHES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヴォワザール,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ボウデュバン,ニコラス
【合議体】
【審判長】 山口 直
【審判官】 内藤 真徳
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/109057(WO,A1)
【文献】 特表2008−528080(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/003294(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/045749(WO,A1)
【文献】 特表2001−517999(JP,A)
【文献】 特表2001−503298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定装置であって、
長手方向軸に沿って遠位先端部から近位端へと延在する生分解性内部心材であって、前記固定装置が前記長手方向軸に沿って骨に挿入されるときに前記遠位先端部が前記骨の皮質部分を破るよう前記遠位先端部は尖った形状または先細りの形状を有する、生分解性内部心材と、
近位端および遠位端を画定するスリーブであって、前記スリーブは、前記生分解性内部心材の前記遠位先端部が前記スリーブの前記遠位端を遠位方向に過ぎて延在するように前記心材の長さの一部に沿って前記心材を囲繞し、前記スリーブは、エネルギー源によって活性化されたときに軟化して周囲の骨組織へと侵入する素材で形成される熱可塑性ポリマーを含む、スリーブと
を備え
前記スリーブは、前記スリーブの前記近位端から前記遠位端へと円錐状に先細りする形状を有する、固定装置。
【請求項2】
前記生分解性内部心材は生分解性の金属内部心材である請求項1に係る固定装置。
【請求項3】
前記心材がマグネシウム又はマグネシウム合金を含む請求項2に係る固定装置。
【請求項4】
前記心材が鉄合金を含む請求項2に係る固定装置。
【請求項5】
前記心材がバルク金属ガラスを含む請求項2に係る固定装置。
【請求項6】
前記心材が非バルク金属ガラスを含む請求項1又は2に係る固定装置。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーは生分解性である請求項1〜6のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項8】
前記心材は中空である請求項1〜7のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項9】
前記スリーブは、光を回折する金属微粒子又は有機色素微粒子を含む請求項1〜8のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項10】
前記内部心材は、前記内部心材を横方向に貫通して縫合糸を収容する貫通孔を備える請求項1〜9のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項11】
前記スリーブは、前記スリーブを横方向に貫通する貫通開口部を備え、前記貫通開口部は前記内部心材の貫通孔と一直線に並びかつ前記内部心材の前記貫通孔と連通する請求項1〜10のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項12】
前記固定装置は骨アンカー又は骨ねじである請求項1〜11のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項13】
前記エネルギー源は、放射線装置、レーザ、熱源、電磁場、光源、又は超音波装置のいずれか一つである請求項1〜12のいずれか一項に係る固定装置。
【請求項14】
前記スリーブは、プレス嵌めによって前記内部心材に固定されている、請求項1〜13のいずれか一項に係る固定装置。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、2010年9月8日に出願された「マグネシウム心材を有する固定装置」と称する米国仮特許出願第61/380,884号の優先権を主張するものであり、その全開示内容がそれの参考としてここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、軟組織の骨への縫合の際及び骨固定の際に使用される固定装置に関する。さらに詳細には、本発明は生分解性金属又は金属合金の心材を備えた固定装置に関する。本発明の典型的な実施形態は固定装置の挿入方法に関する。
【背景技術】
【0003】
軟組織の裂け目、骨折又は関節脱臼はいずれも概して、固定装置が正確に扱われることを要求する。しかしある場合には、固定装置を収容するために穴を穿設したり、固定装置を骨の中に打ち込んだりすると、骨が損傷したり割れたりするおそれがある。こうして損傷した骨は、例えば修正インプラントを挿入することによって修復することができる。しかし、小さい骨や薄い骨の場合、修正インプラントを挿入することは困難であり、不可能でさえあることもある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、長手方向軸と、前記長手方向軸と同軸の先端部を備えた内部心材と、前記心材を囲繞し熱可塑性ポリマーを含むスリーブとを有する骨アンカーであって、前記心材は、生分解性金属と金属合金とガラス金属とのうちいずれか一つを含む骨アンカーに関する。
【0005】
本発明の典型的な実施形態に係る骨アンカーにより、インプラントは完全に吸収されることが可能となるため、体内に何らの形跡も残されず、また、骨アンカーを除去するための第2の手術の必要性がなくなり、インプラントの移動の危険性が減少する。本発明において用いられる骨アンカーは単一皮質であり得るため、撮像の妨げとはならない。
【0006】
本発明の典型的な一実施形態に係る骨アンカーは、マグネシウム又はマグネシウム合金を含む心材を備える。他の典型的な実施形態において、骨アンカーはスパーク陽極酸化処理された表面を有することとしてもよい。
【0007】
他の典型的な実施形態に係る骨アンカーは、鉄合金を含む心材を備える。鉄合金は、クロム酸塩溶液、ホウ酸塩緩衝液又は硝酸の中でパッシベート処理をすることによって形成することとしてもよい。鉄合金は、Fe35Mnなどいかなる適切な鉄合金であってもよい。
【0008】
別の典型的な実施形態に係る骨アンカーは、アモルファスガラス金属、好適にはバルク金属ガラスを含む心材を有する。
【0009】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、バルク金属ガラスはMgCaZnのタイプ、例えばMg63Zn32CaやMg60Zn35Ca、Mg32ZnCa又はMg35ZnCaとしてもよい。これらの素材は、水と接触したときにおけるより少量の水素ガスの形成によって劣化することがあるが、より高い機械強度が達成できる。
【0010】
さらに別の典型的な実施形態に係る骨アンカーは、非バルク金属ガラスを含む心材を備え、この非バルク金属ガラスは例えば、生分解性マグネシウム合金であるMgZnZr、MgAlZn、MgAlZn、MgAl0.4Mn、MgAl0.2Zn、MgYRe(Re=希土類)、MgZn1.7Ce0.6Zrである。典型的な部材はWE43として市販されている。
【0011】
さらに別の典型的な実施形態において、非バルク金属ガラスはその表面を、米国材料試験協会のASTM B893に基づく硬質陽極酸化、スパーク陽極酸化、プラズマ電解質酸化、マイクロアーク酸化(MAO)、又は100Vでの陽極酸化によって処理することとしてもよい。
【0012】
骨アンカーの別の典型的な実施形態において、熱可塑性ポリマーは生分解性であり、またポリラクチド・ファミリー又はカプロラクトン・ファミリー(これらのファミリーのすべてのコポリマーを含む)に属することとしてもよい。
【0013】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、心材を中空とすることによって金属素材の劣化を最小限に抑えることができる。
【0014】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、心材の遠位先端部は、スリーブの遠位端を遠位方向に過ぎて延在することとしてもよい。心材の遠位先端部を尖った形状として、その尖った先端部が皮質を破って骨に侵入するようにすることもできる。
【0015】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、スリーブは、光を回折する金属微粒子又は有機色素微粒子を含むこととしてもよい。
【0016】
さらに別の典型的な実施形態において、骨アンカーは、骨アンカーに取り付けられた縫合糸をさらに備えることとしてもよい。
【0017】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、内部心材は、内部心材を横方向に貫通する貫通孔を有して、その貫通孔に縫合糸を挿入させることとしてもよい。
【0018】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、スリーブは、スリーブを横方向に貫通する貫通開口部を有して、その貫通開口部が内部心材の貫通孔と一直線に並びかつ内部心材の貫通孔と連通することとしてもよい。
【0019】
さらに別の典型的な実施形態において、骨アンカーはエンドキャプをさらに備え、このエンドキャップは内部心材の近位端に取り付け可能であってかつエンドキャップを横方向に貫通する通り穴を備えており、その通り穴に縫合糸を通させることとしてもよい。
【0020】
骨アンカーのさらに別の典型的な実施形態において、内部心材は、縫合糸を骨アンカーに取り付けるためのフックを内部心材の近位端に備える。
【0021】
本発明のさらに別の態様によると、本発明は骨アンカーを骨に挿入する方法に関する。この方法は、a)心材の遠位先端部を骨に押し付けることによって骨アンカーを骨に挿入する工程と、b)スリーブに電磁放射線を照射することによってスリーブを加熱し、それによって熱可塑性ポリマーを軟化及び/又は溶融させ、スリーブを周囲の骨組織へと侵入させる工程とを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態が、例として、添付の図面を参照しながら以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の典型的な実施形態に係る骨アンカーの骨への挿入前の長手方向断面図を示す。
図2図2は、図1の骨アンカーの、先端部を介した骨への挿入/嵌入後の状態を示す。
図3図3は、図2の挿入された骨アンカーがそのスリーブを介してレーザ光を照射されることによって活性化する状態を示す。
図4図4は、図3の軟化して部分的に溶融したスリーブ素材が周囲の骨構造内へと侵入する状態を示す。
図5図5は、本発明の別の典型的な実施形態に係る骨アンカーの長手方向断面図を示す。
図6図6は、本発明の別の典型的な実施形態に係る骨アンカーの長手方向断面図を示す。
図7図7は、本発明のさらに別の典型的な実施形態に係る骨アンカーの長手方向断面図を示す。
図8図8は、本発明のまたさらに別の典型的な実施形態に係る骨アンカーの長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、下記の説明及び添付の図面を参照してさらに理解され得るが、ここで同様の構成要素は同じ参照符号を付されている。本発明は、骨及び軟組織のいくつかの損傷の治療に関し、またとりわけ、骨の中に挿入されて固定され得る装置に関する。本発明の典型的な実施形態は、骨アンカーなどの固定装置であって、部分的に周囲の骨組織へと侵入して周囲の骨組織内に骨アンカーを固定するためにエネルギー活性化され得るスリーブを備えた固定装置を記載する。本明細書において用いられる「近位」及び「遠位」との用語は、外科医又は装置の他のユーザに近付く方向(近位)、そして遠ざかる方向(遠位)を指すものと意図されていることに留意すべきである。
【0025】
図1〜4は、長手方向軸2に沿って延在する内部心材3と、前記心材3の周囲に延在するスリーブ4とを備える骨アンカー1の実施形態を示す。また骨アンカー1は、内部心材3及び/又はスリーブ4に装着される縫合糸6をさらに備える。縫合糸6を用いて、単純な仕方で軟組織を骨に再付着させることができる。心材3は、遠位端5から近位端10に延在し、マグネシウムやマグネシウム合金などの生分解性金属又は金属合金で構成され得る。好ましい実施形態において、心材3の断面は略円形である。例えば、内部心材3は、固体円筒であってもよく、あるいは劣化する金属素材の量を最小限に抑える管であってもよい。遠位端5に尖った及び/又は先細の先端部を設けて、骨11を予備穿設する必要なしに骨アンカー1を骨11に挿入させることができる。尖った及び/又は先細の先端部5は、骨11の皮質に押し付けられると骨11の皮質を破ることができ、そのため骨アンカー1を骨11の皮質内に挿入することができる。
【0026】
スリーブ4は、心材3の周囲を囲繞し、遠位端8から近位端9へと延在する。しかし心材3の遠位端5はスリーブ4の遠位端8を遠位方向に過ぎて延在するため、心材3の先細の遠位先端部は骨アンカー1の骨11への挿入を促進することができる。さらに、心材3の近位端10がスリーブ4の近位端9を近位方向に過ぎて延在することとしてもよい。こうして、スリーブ4は、心材3の長さの一部のみに沿って心材3の周囲に延在することができる。さらにスリーブ4は、近位端9から遠位端8の側へと略円錐状に先細りする形状としてもよい。スリーブ4は、内部心材3上のコーティングとして形成してもよく、又は、プレス嵌めなど周知の仕方によって内部心材3に固定させてもよい。
【0027】
スリーブ4は、例えば、以下の群から選択され得る熱可塑性ポリマーを含むこととしてもよい:ポリ−アルファ−ヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、トリメチレンカーボネイト、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシ酪酸、そしてこれらのコポリマーと混合物。
【0028】
またスリーブ4は好適には以下の群から選択される熱可塑性ポリマーをさらに含むこととしてもよい:金属、炭素、セラミック、PEEK、非熱可塑性ポリマー。ここで非熱可塑性ポリマーは好適には以下の群から選択される:ポリメチルメタクリレート、及び/又は、リン酸カリウム、硫酸カルシウム又は骨セメントなどの無機素材。またスリーブ4は、以下の発色団及び色素をさらに含むこととしてもよい:クロロフィル、カーボンブラック、グラファイト、フルオレセイン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、エオシン;エオシンY(514nm)、エチルエオシン(532nm)、アクリジン、アクリジンオレンジ、銅フタロシアニン、クロム−コバルト−酸化アルミニウム、クエン酸鉄アンモニウム、ピロガロール、ログウッド・エキス、クロロフィル銅錯体、D&CブルーNo.9、D&CグリーンNo.5、[フタロシアニナト(2−)]銅、D&CブルーNo.2、D&CブルーNo.6、D&CグリーンNo.6、D&CバイオレットNo.2、D&CイエローNo.10。一つの典型的な実施形態において、スリーブ4は、特定の場合においては光を吸収せず、周囲のもの、ポリマー、又は追加的に導入された発色団から吸収された光を照射する蛍光性発色団を含むこととしてもよい。
【0029】
これらの追加的素材は、金属微粒子又は有機色素微粒子の形態として、スリーブ4全体において、又はスリーブ4の分容積の部分のみにおいてスリーブ4に分布させることとしてもよい。図3に示すようにスリーブ4が放射線装置7、例えばレーザによって加熱されると、金属微粒子又は有機色素微粒子は光を回折するように機能することができる。さらに内部心材3は、内部心材3が骨11内に固定されている間に骨アンカー1に照射される電磁放射線を反射する反射器として機能することもできる。スリーブ4が電磁放射線の照射を受けて加熱されると、熱可塑性ポリマーは軟化して部分的には溶融し、スリーブ4は周囲の骨組織へと侵入する。電磁放射線の照射が止まるとスリーブ4の素材は冷めて凝固し、スリーブ4は図4に示すように骨11の窩洞内に固定される。
【0030】
本発明の典型的な実施形態によると、骨アンカー1は骨11に挿入されて、骨折部分を固定し、及び/又は骨プレートなどのインプラントを骨折した骨11に固定することができる。図2に示すように、先細の遠位先端部5を骨11に押し込むことによって骨アンカー1を骨11に挿入することができる。骨アンカー1が所望のとおりに骨11に挿入されると、スリーブ4はエネルギー源7によって活性化する。適切なエネルギー源としては、放射線装置、レーザ、熱源、電磁場、光源、又は超音波装置などがある。もちろん、当業者が理解し得るように他のエネルギー源であってもよい。図3に示すようにエネルギー源は、スリーブ4を加熱して図4に示すように前記スリーブ4を部分的に溶融させて周囲の骨組織へと侵入させる熱源である。溶融したスリーブ4は冷めると凝固し、骨アンカー1を骨11内に固定する。
【0031】
図5は、図1〜4について上述された骨アンカー1と略類似する骨アンカー100の別の実施形態を示す。骨アンカー100も同様に、熱によって活性化し得るスリーブ104によって囲繞される内部心材103を備える。しかし内部心材103は、内部心材103を横方向に貫通する貫通孔113を備える。またスリーブ104は、内部心材103の貫通孔113と一直線に並ぶ対応する貫通開口部114を備える。貫通孔113は内部心材103の長さ沿いの中間部分に設けることができ、一方で 貫通開口部114はスリーブ104の近位端109の側に設けることができる。縫合糸106は、内部心材103の貫通孔113と、スリーブ104の対応する貫通開口部114とを通過して、縫合糸106が内部心材103とスリーブ104の双方に取り付けられることとしてもよい。
【0032】
図6は、上述の骨アンカー1と略類似となり得る骨アンカー200の別の実施形態を示す。骨アンカー200も同様に、内部心材203と、内部心材203の周囲に延在するスリーブ204とを備える。しかし骨アンカー200は、内部心材203の近位端210に結合されるように適合及び設計されたエンドキャップ215をさらに備える。エンドキャップ215は、例えば心材203の近位端210に挿入かつ結合される寸法及び形状とされた円錐接続部を備えることとしてもよい。エンドキャップ215は、エンドキャップ215を横方向に貫通する(例えば骨アンカー200の長手方向軸202に対して略垂直な)通り穴216を備えて、縫合糸206が通り穴216を通過して、縫合糸206が近位端210の内部に固定され得ることとしてもよい。
【0033】
図7は、上述の骨アンカー1と略類似となり得る骨アンカー300の別の実施形態を示し、骨アンカー300はスリーブ304によってその周囲を囲繞される内部心材303を備える。しかし内部心材303は、内部心材303を横方向に貫通する貫通孔313をさらに備える。貫通孔313は、内部心材303の近位端310に近位の位置において、そしてスリーブ304の近位端309に近位の位置において、内部心材303を貫通する。こうして縫合糸306は、スリーブ304のいかなる部分も通過することなく、内部心材303の貫通孔313を通過することができる。
【0034】
図8は、上述の骨アンカー1と略類似となり得る骨アンカー400の別の実施形態を示し、骨アンカー400は内部心材403と、内部心材403の周囲に延在するスリーブ404とを備える。しかし内部心材403は、内部心材403の近位端410においてフック417をさらに備える。フック417は、内部心材403の近位端410を収納してフック417を取り付けるための寸法及び形状とされたリング419を備える。リング419は、例えばプレス嵌めによって内部心材403に取り付けられることとしてもよい。あるいは、フック417は、リング419の内部表面419に沿って、内部心材のねじ山部分と係合するねじ山418を備えることとしてもよい。フック417は、縫合糸の内部心材403への取り付けを容易にする。
【0035】
本発明は、固定装置が軟組織を骨に縫合して再付着させるために用いられる骨アンカーであるとする実施形態を採用して説明されてきた。当業者であれば他の実施形態がもちろん可能であることを理解するであろう。その種のある実施形態は骨ねじである(図示せず)。骨ねじは、縫合糸を特徴としない点を除き、上記の実施形態で記載した構成と概して同じ構成を有する。骨ねじは、例えば骨ねじが、固定を要する骨の選択された部分において骨プレートを定位置に固定するためのアンカーとして機能することを可能とするねじヘッドをさらに備える。
【0036】
本発明とその利点について詳細に説明したが、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書において種々の変更、代替及び改変がなされ得ることが理解されるべきである。さらに本願の範囲は、本明細書に記載のプロセス、機械、製品、物質の合成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されるものとは意図されていない。当業者であれば本発明の開示内容から容易に理解し得るように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能をなしあるいは実質的に同じ結果を達成する、現存のもしくは後に開発されるプロセス、機械、製品、物質の合成物、手段、方法又は工程は、本発明に基づいて利用することができる。
【0037】
本発明の種々の改良及び改変が添付の請求項の広い範囲から逸脱することなく当業者に
よってなされることが理解されるであろう。かかる改良及び改変の一部が上述されたが、
他の改良及び改変も当業者には明らかであろう。
〔実施の態様〕
(1) 長手方向軸に沿って遠位先端部から近位端へと延在する生分解性内部心材と、
前記心材3の長さの一部に沿って前記心材を囲繞し、エネルギー源によって活性化されたときに軟化して周囲の骨組織へと侵入する素材で形成される熱可塑性ポリマーを含むスリーブとを備える固定装置。
(2) 前記生分解性内部心材は生分解性の金属内部心材である実施態様1に係る固定装置。
(3) 前記心材がマグネシウム又はマグネシウム合金を含む実施態様2に係る固定装置。
(4) 前記心材が鉄合金を含む実施態様2に係る固定装置。
(5) 前記心材がバルク金属ガラスを含む実施態様2に係る固定装置。
(6) 前記バルク金属ガラスがMgCaZnのタイプである実施態様5に係る固定装置。
(7) 前記バルク金属ガラスが、Mg63Zn32Ca、Mg60Zn35Ca、Mg32ZnCa、Mg35ZnCaのうちいずれか一つである実施態様5に係る固定装置。
(8) 前記心材が非バルク金属ガラスを含む実施態様1又は2に係る固定装置。
(9) 前記非バルク金属ガラスがMgZnZr、MgAlZn、MgAlZn、MgAl0.4Mn、MgAl0.2Zn、MgYRe(Re=希土類)、MgZn1.7Ce0.6Zrのうちいずれか一つである実施態様8に係る固定装置。
(10) 前記非バルク金属ガラスが硬質陽極酸化又はマイクロアーク酸化(MAO)によって処理された表面を有する実施態様8に係る固定装置。
(11) 前記熱可塑性ポリマーは生分解性である実施態様1〜10のいずれか一つに係る固定装置。
(12) 前記心材は中空である実施態様1〜11のいずれか一つに係る固定装置。
(13) 前記心材の前記遠位先端部は先細でありかつ前記スリーブの遠位端を遠位方向に過ぎて延在する実施態様1〜12のいずれか一つに係る固定装置。
(14) 前記スリーブは、光を回折する金属微粒子又は有機色素微粒子を含む実施態様1〜13のいずれか一つに係る固定装置。
(15) 前記固定装置に取り付けられる縫合糸をさらに備える実施態様1〜14のいずれか一つに係る固定装置。
(16) 前記内部心材は、前記内部心材を横方向に貫通して縫合糸を収容する貫通孔を備える実施態様1〜15のいずれか一つに係る固定装置。
(17) 前記スリーブは、前記スリーブを横方向に貫通する貫通開口部を有して、前記貫通開口部は前記内部心材の貫通孔と一直線に並びかつ前記内部心材の前記貫通孔と連通する実施態様1〜16のいずれか一つに係る固定装置。
(18) 前記内部心材の前記近位端に取り付け可能であるエンドキャップであって、前記エンドキャップを横方向に貫通して前記縫合糸を収容する通り穴を有してなるエンドキャップを備える実施態様15に係る固定装置。
(19) 前記内部心材は、前記縫合糸を前記固定装置に取り付けるためのフックを前記内部心材の近位端に備える実施態様15に係る固定装置。
(20) 前記固定装置は骨アンカー又は骨ねじである実施態様1〜19のいずれか一つに係る固定装置。
(21) 前記エネルギー源は、放射線装置、レーザ、熱源、電磁場、光源、又は超音波装置のいずれか一つである実施態様1〜20のいずれか一つに係る固定装置。
(22) 固定装置を骨に挿入する方法であって、前記方法は、
a)固定装置の内部心材の遠位先端部を骨の目標部分に押し付けることによって前記固定装置を前記骨の目標部分に挿入する工程であって、前記内部心材は前記固定装置の長手方向軸に沿ってその遠位先端部から近位端まで延在し、前記固定装置は前記内部心材の長さの一部に沿って前記内部心材の周囲に延在するスリーブをさらに備えてなる工程と、
b)前記スリーブに活性化エネルギーを照射して前記スリーブの熱可塑性ポリマーを軟化させ、前記スリーブを前記スリーブの周囲の骨組織へと侵入させ、前記固定装置を前記骨組織内に固定させるために前記スリーブを部分的に溶融させる工程とを含む方法。
(23) 前記固定装置が骨アンカー又は骨ねじである実施態様22に記載の方法。
(24) 前記活性化エネルギーの照射は、放射線装置、レーザ、熱源、電磁場、光源又は超音波装置を用いてなされる実施態様22又は23に記載の方法。
図1
図2
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図5
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図7
図8