特許第6017426号(P6017426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファム チー キム ロアンの特許一覧

<>
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000002
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000003
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000004
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000005
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000006
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000007
  • 特許6017426-頸椎疾患治療用の頸部枕 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017426
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】頸椎疾患治療用の頸部枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20161020BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A47G9/10 V
   A61F5/01 D
   A47G9/10 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-528795(P2013-528795)
(86)(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公表番号】特表2013-540478(P2013-540478A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】IB2011053563
(87)【国際公開番号】WO2012038846
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年8月4日
(31)【優先権主張番号】2-2010-00198
(32)【優先日】2010年9月20日
(33)【優先権主張国】VN
(73)【特許権者】
【識別番号】513065974
【氏名又は名称】ファム チー キム ロアン
【氏名又は名称原語表記】PHAM THI KIM,Loan
(74)【代理人】
【識別番号】100106541
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 信和
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】ファム チー キム ロアン
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3077760(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3103115(JP,U)
【文献】 米国特許第05575295(US,A)
【文献】 特開昭60−188159(JP,A)
【文献】 特開2004−129885(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10140105(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頸椎の疾患を治療するための頸部枕であって、
弾性力を有した発泡体、ゴム、または綿のような材質によって形成されたパッド入り部材と、樹脂、または圧縮されたゴムのような高強度材によって形成された固体ブロックと、の2つの部分を含んで構成され、
前記パッド入り部材は、長方形形状のフラットな底面、立垂された左右側面、曲線で形成された前面、細く形成された後面、および前記前面に接続された平面部と中央部で僅かにくぼんだ凹部と前記後面に接続され大きく突出した凸部とを備えた波状の上面を有し、
前記固体ブロックは、前記パッド入り部材の内部で、前記パッド入り部材の前記後面に沿うとともに、大きく突出した前記上面の前記凸部の下方に埋め込まれ、
前記固体ブロックは上部と下部とを有し、前記上部の前記前面から前記後面への方向の幅が前記頸椎と同様の幅であり、前記下部の前記前面から前記後面への方向の幅は、前記患者の首が前記固体ブロック上に載せられた場合に前記固体ブロックが傾かず、前記首に常に真っすぐで垂直な力がかかるように前記上部の幅よりも広く形成され、
前記固体ブロックの高さは、前記患者が前記固体ブロックに前記首を載せた場合に前記垂直な力が前記首を前方に曲げることができる高さである頸部枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頸椎疾患治療用のデバイス、さらに詳しくは頸椎疾患治療用の頸部枕に関する。
【背景技術】
【0002】
身体中のほとんどの筋肉は、使用されていない場合、完全に弛緩している。しかしながら、首の筋肉は、頭をその位置に保持するために休みなく働き続けなければならない。人間の首は、絶えず重力と闘っている。さらに、首は、曲げる、もち上げる、回転させる、及びねじる動作を行なわなければならず、この結果、椎間板および関節面を劣化させてしまう。これにより椎間板が薄くなり、脊椎骨間の間隔が狭くなる。非典型的および典型的頸部の椎骨C0−C2およびC2−T1の持続的な収縮、緊張および運動制限は、それぞれ、頭痛および頸痛、さらには、脊椎後弯症、まっすぐな頸椎および頸部の椎間板ヘルニアを含む頸椎疾患に至らせるかもしれない。これらの頸椎疾患を治療するため、頸部の椎間板を人工椎間板と置換すること、治療薬剤の投与およびカイロプラティックによる治療等、いくつかの試みがなされてきた。
【0003】
しかしながら、人工椎間板への置換は、万人向きではなく、特に、骨粗鬆症、関節疾患およびステンレスアレルギーを持った人向けではない。さらに、人工椎間板と置換を行なうためには、感染症、過度の出血、および神経、脊髄、食道あるいは声帯の損傷といった複合した症状に至るかもしれない椎間板切除が必要となる。アセトアミノフェンやNSAID(エヌセイド)のような薬の投与によって頸痛を軽減することもできるが、残念ながら、それらは一時的なものである。さらに、それらの薬は頸椎疾患の治療薬としては限界があるとともに、肝臓および腎臓障害、消化管出血および潰瘍の原因となる。カイロプラティックによる治療は、3つの治療法のなかでは安全であるように見える。カイロプラティック療法師は、患者を治療するため、例えば、関節を動かす特別な手技や、器具を用いる技法のような脊柱に対する効果的な手法を用いる。しかしながら、患者を治療する過程で、患者の背骨に過大な力をかけ過ぎ、背骨が損傷してしまう危険を有している。他方、カイロプラティック療法師が、強くなく弱い非常に安全な力でその病気の治療を行なえば、治療期間は通常非常に長くなる。カイロプラティック療法師が患者を治療するのが1日に1〜2時間だけという事実を考慮すると、治療期間は、さらに長くなる。その病気の治療期間を安全に短く治療するためには、カイロプラティック療法師が施術するときに加える安全な力の大きさを再現可能な器具を患者が備え、そして、その器具は、毎日の治療時間を増加させるために患者がいつでも必要なときに使用するのに十分扱い易いことが必要であり、これによって治療期間が短縮される。
【0004】
オルソンの特許(米国特許第5,644,809号明細書)では、睡眠する人々の頸部の脊椎と胸部の脊椎との整合を適切に維持するための枕について説明している。しかしながら、この枕は頸椎疾患を治療する機能を有していない。
【0005】
チャン−ホーの特許出願(国際公開第W0/2009/148215号公報)では、頭および頸椎を適切な高さに維持することにより頸椎を保護する枕について説明している。しかしながら、この枕は頸椎疾患を治療する機能を有していない。
【0006】
最後に、サン−ヒュンの特許出願(国際公開第WO/2007/091863号公報)では、使用者の頭、首、肩、そして背中を支持する枕について説明している。その枕は、使用者が脊椎、神経組織および血管を強化するために枕の上に横たわると関節および筋肉の継ぎ目を弛緩させ、それによって様々な病気を予防する。しかしながら、この枕もまた頸椎疾患を治療する機能を有していない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、頸椎疾患治療用の頸部枕を提供することである。これらの疾患には、脊椎後弯症、まっすぐな頸椎および頸部の椎間板ヘルニアを含む。
【0008】
本発明によれば、頸椎疾患治療用の頸部枕は、発泡体、ゴムあるいは綿のような弾性力のある材料によって形成されたパッド入り部材を含んでいる。そのパッド入り部材は、長方形形状のフラットな底面、立垂された左および右側面、曲線で形成された前面、細く形成された後面、および前面に接続された平面部、中央部で僅かにくぼんだ凹部および後面と接続され大きく突出した凸部を有した波状の上面を備えている。さらに、その頸部枕は、樹脂、若しくは圧縮されたゴムのような高強度材によって形成されたほとんど直方体の固体ブロックを有している。この直方体の固体ブロックは、パッド入り部材の内部でパッド入り部材の後面に沿って、かつ大きく突出した上面の凸部の下方に埋め込まれている。
【0009】
上面のその大きく突出した凸部と直方体の固体ブロックとによって強固な突出領域が形成されている。患者が、仰向けに寝たとき、患者の頭の後頭部が、僅かにくぼんだ上面の凹部上にあり、患者の首が突出領域上にあると、突出領域は、その突状の形状によって、強いが、しかし安全な反力を患者の頭および体にかかる各重力に対抗して生成することができる。明らかに、その反力は彼の頸椎に作用する。これにより、強固な突出領域は、まっすぐな頸部または脊柱後弯症に対して内部の屈曲を徐々に調節して自然な状態に戻し頸椎疾患を治療することができる。また、同様のメカニズムで、その突出領域は、患者の椎間板を徐々に押して元の位置に戻すことにより頸部の椎間板ヘルニアを治療することができる。
【0010】
上記の簡潔な説明により、ややおおまかに述べられている本発明のより重要な特徴は、以降に説明する詳細な説明によって、よりよく理解されるとともに、従来技術に対する本発明の貢献もよりよく評価されるかもしれない。もちろん、以下に本発明のさらなる特徴が記載されており、その特徴は、本明細書に添付された特許請求の範囲の主題となるものである。本発明を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明で述べられる構造の詳細、そして、続いて説明される図面に示される部品の配置によって制限されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態に適用することができるとともに、他の様々な方法で実施することが可能である。また、説明で使用された学術用語および専門用語は、内容を説明するためのものであり、これらによって本発明が制限されるものではないことを理解されたい。これにより、当業者は、本発明で開示した概念が、本発明におけるいくつかの目的を実行するための他の構造、方法およびシステムを設計するための基礎として容易に利用できることを理解するであろう。このように、本特許請求の範囲では、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、そのような同等の構成を含むものであると見なされることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
後述される詳細な説明が与えられると本発明は一層よく理解されるであろう。その説明には以下に示す添付図面を参照するものとする。
図1】本発明に係る頸椎疾患治療用の頸部枕の左後方からの斜視図である。
図2図1に示される枕の右後方からの斜視図である。
図3図1に示される枕の右前方からの斜視図である。
図4図1に示される枕の左後方からの斜視図である。
図5図4の切断線A−Aにおける枕の側面断面図である。
図6図4の切断線B−Bにおける枕の正面断面図である。
図7図1に示される枕の上に仰向け状態で横たわる人を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2および図3に、パッド入り部材101によって構成されている頸椎疾患治療用の頸部枕100の斜視図を示す。パッド入り部材101は、長方形形状のフラットな底面102、立垂された左側面104、立垂された右側面106、曲線で形成された前面107、細く形成された後面103、および前面107に接続された平面部105aと中央部で僅かにくぼんだ凹部105bと後面103に接続され大きく突出した凸部105cとを有する波状の上面105を備え、さらに、パッド入り部材101は、パッド入り部材101の内部に、パッド入り部材101の後面103に沿い、かつ大きく突出した上面105の凸部105cの下方に配置されるよう挿入された固形の発泡体、樹脂、若しくは圧縮されたゴムのような高強度材によって形成されたほとんど直方体の固体ブロック200を有している。
【0013】
その固体ブロック200と上面105が有する大きく突出した凸部105cとによって強固な突出領域300が形成されている。患者が、仰向けに寝たとき、患者の頭の後頭部が、僅かにくぼんだ上面105の凹部105b上にあり、患者の首が図7に示すように突出領域300上にあると、突出領域300はその突状の形状により、強いが、しかし安全な反力F3を患者の頭にかかる重力F1および患者の体にかかる重力F3に対抗して生成することができる。明らかに、反力F3は彼の頸椎に作用する。これにより、強固な突出領域は、まっすぐな頸椎または脊柱後弯症の内部の屈曲を徐々に調節することによって自然な状態に戻し頸椎疾患を治療することができる。また、同様のメカニズムで、強固な突出領域300は、徐々に患者の椎間板を押して元の位置に戻すことにより頸部の椎間板ヘルニアを治療することができる。この場合、使用者は椎間板ヘルニアの椎間板が強固な突出領域300の頂点の真上にくるよう首を載置する必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7