特許第6017427号(P6017427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017427
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】サーマルサイクラー
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20161020BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20161020BHJP
   B01L 7/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M1/02 B
   B01L7/00
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-529710(P2013-529710)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-544496(P2013-544496A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】GB2011051787
(87)【国際公開番号】WO2012038750
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】1016014.1
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511207039
【氏名又は名称】エピスタム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】コブ、 ベン
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0124722(US,A1)
【文献】 特表2010−502228(JP,A)
【文献】 特表2009−531064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを受け入れるためのサンプルブロックと、
前記サンプルブロックに隣接して、前記サンプルブロックを冷却するように構成されたペルティエ型熱電素子と、
前記サンプルブロックに隣接して、前記サンプルブロックを加熱するように構成された非ペルティエ型加熱デバイスと、
前記サンプルブロック及びペルティエ型素子から分離されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクを前記ペルティエ型素子に接続し、前記ペルティエ型素子から前記ヒートシンクに熱エネルギーを伝達させるヒートパイプとを備え、
前記ペルティエ型加熱デバイス及び前記ペルティエ型素子は、前記サンプルブロックの上下に対向する上面及び下面に配置され、さらに前記上面及び前記下面と熱的に接触し、
前記サンプルブロックは前記上面と前記下面とを接続する側に設けられた開口部からサンプルを受容するように方向付けられることを特徴とするサーマルサイクラー。
【請求項2】
前記サンプルブロックは、前記ペルティエ型素子と前記非ペルティエ型加熱デバイスとの間に挟まれることを特徴とする請求項1に記載のサイクラー。
【請求項3】
光学系をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイクラー。
【請求項4】
前記光学系は、光源と光センサとを備え、任意に1以上のレンズを備えることを特徴とする請求項3の記載のサイクラー。
【請求項5】
前記サンプルブロックは、直線状に配置された複数のサンプルチューブ、あるいは、サンプルチューブ列を収容するような大きさと形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項6】
前記サンプルブロックは、使用時にサンプルホルダーを前記側面から収容するような大きさ及び形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項7】
前記サンプルブロックは、前記サーマルサイクラーから取り外し可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項8】
前記非ペルティエ型加熱デバイスは、電気抵抗ヒータであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項9】
前記非ペルティエ型加熱デバイスは、光が当該デバイスを通過できるように1以上の開口部を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項10】
前記ペルティエ型素子は、前記非ペルティエ型加熱デバイスを作動させたときは停止するように構成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項11】
コンピュータプロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項12】
前記サイクラーは、前記コンピュータプロセッサに対するユーザインタラクションを可能にするユーザインターフェースを備えることを特徴とする請求項11に記載のサイクラー。
【請求項13】
前記コンピュータプロセッサは基板上に取り付けられることを特徴とする請求項11又は12に記載のサイクラー。
【請求項14】
前記ペルティエ型素子と、前記非ペルティエ型加熱デバイスと、前記サンプルブロックと、前記ヒートシンク及びパイプも、前記基板に固定されること特徴とする請求項13に記載のサイクラー。
【請求項15】
前記ヒートパイプは、断面が平坦であり、内部に冷却流体を有するマイクロチャネルパイプにより構成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項16】
前記ヒートパイプは、全体としてS字形であり、上部分が前記ヒートシンクに接し、下部分が前記ペルティエ型素子に接していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項17】
前記上部分は傾斜し、前記下部分は全体として水平であることを特徴とする請求項16に記載のサイクラー。
【請求項18】
前記下部分は、前記上部分よりも面積が小さいことを特徴とする請求項16又は17に記載のサイクラー。
【請求項19】
前記サイクラーは、使用時に50W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、30分未満で行うことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項20】
前記サイクラーは、使用時に100W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、20分未満で行うことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項21】
前記サイクラーは、使用時に150W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、20分未満で行うことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項22】
電力を供給するための1以上のバッテリをさらに備えることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項23】
選択可能な電源入力にて動作するように構成されることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項24】
前記サイクラーが室温での使用時に5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上行う場合、前記ヒートシンクは50℃より高く温度上昇しないことを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載のサイクラー。
【請求項25】
前記サイクラーが室温での使用時に5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上行う場合、前記ヒートパイプは63℃より高く温度上昇しないことを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載のサイクラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルサイクリング反応に使用されるサーマルサイクラー装置に関する。また、本発明のいくつかの形態は、サーマルサイクリング反応を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルサイクリングの利用は、現代の分子生物学において不可欠な要素である。例えば、核酸増幅に使用されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、異なる温度でDNA溶解、アニール、重合という一連のステップを用いて、サンプル中のDNA量を大幅に「増幅」する。また、サーマルサイクリングの他の用途も知られている。
【0003】
一般的なサーマルサイクリング装置は、1以上の反応器を収容する適切な数の凹部を有する金属サンプルブロックからなる。サンプルブロックは、96ウェルプレート形式、又は、一般的には0.5μl又は0.2μlのマイクロ遠心チューブ(エッペンドルフ社)である個々の反応チューブに対応する形状であればよい。金属ブロックは、反応サンプルへの熱エネルギー伝達や反応サンプルからの熱エネルギー伝達を行うサーマルマスとして作用する。一般に、サーマルサイクリングエネルギーは、ペルティエ効果素子(PE)としても知られる熱電冷却(TEC)装置を用いて得られる。また、サーマルサイクリング装置は、一般に、ペルティエへの熱伝達やペルティエからの熱伝達を補助するヒートシンクと、大型ファン等とを用いて、冷却時に、ペルティエにより発生してヒートシンクに伝達された余分な熱を取り除く。
【0004】
ペルティエ素子は、電流を温度勾配に変換する固体素子である。ペルティエ素子は、高温面と低温面の二面を有する。このモジュールは、低温面から高温面に熱を移動させるという点でヒートポンプとして作用する。電流の方向を切り換えることにより、高温面と低温面の状態が交替するので、この電流の調節により、PCRに必要な加熱及び冷却が得られるようにサンプルブロック温度を周期化する。装置が適切に機能し、効果的に冷却を行うために、ペルティエの高温面では熱を取り除く方法が必要である。高温面からの熱除去手段の効率が高くなるほど、低温面はより低温で動作し、より迅速に熱伝達の最適温度に達する。これは、使用するヒートシンクの質量や、ヒートシンクから余分な熱を取り除くためのファンの気流によって制限される。一般に、サーマルサイクラーの設計は、特定のヒートシンクの定格電力と、その設計で収容できるヒートシンクやファンの大きさとの妥協案になる。標準的なペルティエブロック・サーマルサイクラーでは、ヒートシンク部とファン部が、その装置の構成部分と質量の大部分を占める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサーマルサイクラーは利便性もあるが、多数の問題点もある。ここで重要なのは、加熱と冷却の両方にペルティエ素子を使用すると効率が低下する点である。例えば、ペルティエ素子はヒートシンクとしての大きなサーマルマスを有するが、サンプルブロックへの効率的な熱伝達を可能にするために、ヒートシンク自体を加熱又は冷却しなければならない。加熱と冷却の両方において適度な効率を達成するのは複雑であり、多くのサーマルサイクラー設計では、ペルティエ素子の加熱冷却機能と、サンプルブロックに対する所望の熱伝達率との間で妥協点を見出す必要がある。この妥協の結果、従来のサーマルサイクラーでは、達成できる最大加熱又は冷却率が毎秒3℃に過ぎず、この程度の性能を達成するのに高電力オーバーヘッドを有するのが一般的である。
【0006】
本発明は、それに代わるサーマルサイクラー構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、サンプルを受け入れるためのサンプルブロックと、前記サンプルブロックに隣接して、前記サンプルブロックを冷却するように構成されたペルティエ型熱電素子と、前記サンプルブロックに隣接して、前記サンプルブロックを加熱するように構成された非ペルティエ型加熱素子と、前記サンプルブロック及びペルティエ型素子から分離されたヒートシンクと、前記ヒートシンクを前記ペルティエ型素子に接続し、前記ペルティエ型素子から前記ヒートシンクに熱エネルギーを伝達させるヒートパイプとを備えるサーマルサイクラーを提供する。
【0008】
本発明に係るサーマルサイクラーは、加熱機能と冷却機能とを分け、それぞれが所望の機能を行うように最適化される。さらに、別々の加熱素子と冷却素子とを使用するということは、ヒートシンクのサーマルマスが、ペルティエ素子の性能やサンプルブロックの加熱冷却効率に影響を与えなくてすむということである。また、従来の加熱素子、例えば、電気抵抗加熱素子は、一般に、加熱と冷却の両方に使用されるペルティエ型素子よりも効率が良い。ペルティエ型素子は、冷却のみ、あるいは、加熱のみに使用した場合に効率が良いからである。
【0009】
好ましい構成において、サンプルブロックは、ペルティエ型素子と非ペルティエ型加熱素子との間に挟まれる。例えば、ペルティエ素子と加熱素子とを、サンプルブロックにおける対向面に配置する。従来のサーマルサイクラー装置は積層構成を用いており、サンプルブロックをペルティエ素子の上に配置し、ペルティエ素子をシートシンクの上に配置し、ヒートシンクを冷却ファンの上に配置している。そして、サンプルチューブをサンプルブロック内に上部から装着する。この従来構成では、サンプルブロックとペルティエ素子の間以外に非ペルティエ型加熱素子を好適に配置できる位置がなく、加熱素子を介して冷却しなくてはならないことから、さらに効率が低下してしまう。
【0010】
本サイクラーは、例えば、光源と、光検出器とを備え、任意に1以上のレンズ等の光学系をさらに備えてもよい。これにより、ある反応がリアルタイムで進行する際に、その反応による蛍光信号又は他の信号を検出するのに本サイクラーを用いることができる。光源と光センサは、可視光線だけでなく、いずれの電磁放射に対応していてもよい。また、本サイクラーは、特定波長の光を制限するフィルタをさらに備えてもよい。また、本サイクラーは、第2の光源をさらに備えてもよい。これにより、2つの光源が異なる波長で発光する比較的低コストの2ラベル検出システムが可能となる。本サイクラーで、各サイクリング反応において複数のサンプル又は反応器を使用する場合、サイクラーは、各サンプルについて、光源とセンサとの組み合わせを少なくとも1つ備えるとよい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、光源はLED等であり、光センサはフォトダイオード等である。センサとしては、ダイナミックレンジが広く、検出可能な核酸コピー数が大きいログレスポンス検出器がよい。この構成により、レンズや複雑な光学部品構成を必要とせずに、簡単でロバストな部品を使用することができる。このような光源と光センサとの組み合わせならば、反応の進行についての定性情報(例えば、増幅が起きていこと)を得るのに十分であることがわかっている。多くの場合、こうしたデータがあれば十分であり、反応の進行を数量化する必要はない。
【0012】
また、LEDとフォトダイオードとを有する構成を用いることで、サンプルに対する光源やセンサの重要な位置決めや離間を行う必要性が少なくなり、サイクラーをさらにロバストにすることができる。好ましくは、光源とセンサとは異なる波長光で動作する。例えば、好ましい光源は490nmで発光し、好ましいセンサは530nmの光に対して最も感度が高い。これは、生化学反応における一般的な蛍光物質と一致する。また、信号のノイズやバックグラウンドの除去を促進するために、1又は複数のLEDの変調発光を用いることもできる。
【0013】
サンプルブロックがペルティエ型素子と加熱素子との間に挟まれる場合、サンプルブロックは、直線状に配置された複数のサンプルチューブ、あるいは、サンプルチューブ列を収容するような大きさと形状であることが好ましい。これにより、均一な加熱及び冷却が確保できる。ペルティエ素子と加熱素子は、好ましくは、通常の使用状態においてはサンプルブロックの上下に配置され、サンプルブロックは、サンプルホルダーを側面から(従来のサイクラーのように上からではなく)収容するような向きに配置される。さらに、この構成によれば、従来の構成と比較して、開口部が側面にあるため、異物が開口部に入ったりサンプルを汚染したりしにくく、サイクラー内にある光学系を曇らせにくいという利点がある。
【0014】
加熱素子とペルティエとの間にサンプルブロックを挟んだ構造により、質量を最小化した設計を可能にしつつ、サンプルホルダーの収容と熱伝達のための最適な形状と大きさが可能である。表面対面積の比が高いチューブと併せて、サンプルブロックから反応器への熱伝達率は非常に効率的である。
【0015】
サンプルホルダーは、一般に水平に収容される必要はなく、90度未満の角度、例えば、80度、70度、60度、50度、45度、40度未満で十分である。
【0016】
サンプルブロックは、サーマルサイクラーから取り外し可能であってもよい。これにより、交換可能なブロック又は相互に取り替え可能なブロックを使用して、例えば、種々の大きさや構成のサンプルチューブを収容することができる。
【0017】
非ペルティエ型加熱素子は好適なヒータであればよく、好ましくは電気抵抗ヒータである。また、他の加熱素子を使用してもよい。加熱素子は、光が素子を通過できるように1以上の開口部を有してもよい。これにより、サンプルブロックやヒータの外部に配置された光源と検出器との組み合わせを用いることができる。
【0018】
好ましくは、ペルティエ型素子は、ヒータを作動させたときは停止するように構成され、また、好ましくはその逆の状態になるように構成される。ヒータを作動させ、ペルティエ型素子を停止させた場合、ペルティエ型素子は、サンプルブロックからヒートパイプとヒートシンクとの組立体への熱損失を抑制する断熱材として作用する。これにより、サンプルブロックの加熱にかかる時間が大幅に短くなり、実用性が向上する。特に、この構成におけるペルティエの配置は、「サーマルゲート」として作用し、オフ時には加熱中の熱損失防止部となり、オン時には効率的な冷却路となる。
【0019】
サーマルサイクルの冷却期間において、ペルティエの高温面からヒートパイプを介して熱が取り除かれる。ヒートパイプは、好ましくは、断面が全体的に平坦であり、内部にアセトン又は他の冷却流体を有するマイクロチャネルパイプにより構成されてもよい。例えば、Amec Thermasol社のFlat Cool Pipes(フラットクールパイプ)が好適である。従来のヒートパイプは、冷却流体として水が充填された断面が丸い銅パイプによるものが一般的である。これら従来のパイプは、上述の好ましいパイプと比べると効率が低く、上述の好ましいパイプの方が設置面積もはるかに小さい。従来のヒートパイプでは、ファンとヒートシンクをブロックの上部に重ねなければならず、装置が相当の高さになってしまう。従来の方法は部品を縦に重ねることに限定されているが、Flat Cool Pipesや同様のパイプならば、部品を横に連続して配置することができる。これにより、コンパクトな部品配置が得られる。また、重要なことであるが、これによって、ヒートシンクをヒートパイプの下に配置することができ、従来の構成と比べて空間設置面積の効率が高い。
【0020】
ヒートパイプは、好ましくは、全体としてS字形であり、上部分がヒートシンクに接し、下部分がペルティエ素子に接している。上部分は傾斜し(好ましくは20度程度だが、実施形態によっては最大90度)、下部分は全体として水平である(好ましくは0度程度だが、実施形態によっては最大90度)。下部分は、好ましくは、上部分よりも面積が小さい(例えば、10%、20%、30%、40%、50%の面積)。一般的にはヒートパイプの50%より多くの部分を傾斜させて上部分を構成するが、最大効率をえるために、ヒートパイプの少なくとも最後部の20%を、発熱する下部分よりも高くなるように傾斜させることが好ましい。これにより、熱源からの効率的な熱伝達が可能となり、また、パイプ内の冷却流体の再循環が可能となる。もちろん、S字形のヒートパイプの使用は本発明において不可欠ではなく、水平形状等、他の形状を用いてもよい。
【0021】
ヒートパイプの上部分はヒートシンクに接続される。ヒートシンクは、任意に軸流ファンを備えてもよい。これは、余分な熱が発生してヒートパイプの上部分に伝達されたときに、この余分な熱を取り除くために使用される。ヒートシンクは、好適な形状や材料であればいずれのものでもよいが、任意に、ピンフィンを備えた鍛造アルミニウムパッドとする。好ましくは、ピンは一平方センチメートル当たり16個よりも多い「密集型」で配置される。
【0022】
一般に10、20、30又は40CFM(平方フィート/分)より大きい高気流ファンを用いて、ヒートシンクから熱を取り除く。直接衝突による気流を用いて、ヒートシンクから余分な熱を取り除き、この気流を装置外部に向ける。他のフィン型ヒートシンクを用いる場合、軸流ファン、ブロアファン、横流ファン等、好適なファンであればいずれのものであっても、必要な気流を得ることができる。
【0023】
本サイクラーは、さらに、光源と検出器の監視及び制御、温度調整、サイクリングプログラム等のいずれか、あるいは、すべてを行うのに使用されるコンピュータプロセッサを備えてもよい。プロセッサは、特定の反応について適切なサイクリングプログラムを選択できるように、ユーザによってプログラミング可能であることがよい。例えば、本サイクラーは、所望のサイクリングプログラムの選択、入力、編集を可能にするキーボートやタッチスクリーン等のユーザインターフェースを備えてもよい。
【0024】
コンピュータプロセッサは、回路基板やPCB等の基板に取り付けられてもよい。本発明の好ましい実施形態において、サイクラーの他の構成部品、例えば、ペルティエ型素子、ヒータ、サンプルブロック、ヒートシンク及びパイプは、この基板に固定される。例えば、これらの構成部品はボルトで基板に固定されてもよい。これにより、構成と組み立てが容易になり、サイクラーの設置面積を小さくすることができる。もちろん、構成部品のすべてを基板に直接固定する必要はない。構成部品のうちのいくつかは、他の部分に固定されてもよい(例えば、ヒータを基板に固定し、サンプルブロックをヒータに固定し、ペルティエ素子をサンプルブロックに固定してもよい)。筐体内に基板と他の構成部品を封入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態によるサーマルサイクラーの外観図である。
図2図1のサーマルサイクラーの下面の外観図である。
図3図1のサーマルサイクラーの内部シャーシ構成部品の側面図である。
図4図1のサーマルサイクラーの内観図である。
図5a図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
図5b図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
図5c図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
図5d図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
図5e図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
図5f図1のサーマルサイクラーの光学系及びサンプルブロックの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、図1を参照して、本発明に係るサーマルサイクラーの外観を示す。サイクラー10は、持ち運び用ハンドル14が形成された外筐体12を備えている。筐体12の上面には、ユーザによるサイクラーの操作を可能にするタッチスクリーン式インターフェース16が設けられている。筐体の前面には、サンプルホルダー20を挿入可能な開口部18が設けられている。サンプルホルダー20は、(本実施形態では)厚さの薄いプラスチックからなる3本のサンプルチューブ22を備えている。
【0027】
サイクラー10の下面を図2に示す。外筐体は、ヒートシンク28に隣接する冷却ファン26が取り付けられた開口部24を備えている。筐体には、ファン26をベンチトップから持ち上げて空気を循環させるための支持部30が形成されている。
【0028】
サイクラー10の内部構造を図3に示す。この図において外筐体12は図示省略されている。PCB基板32が設けられ、この基板上に、サイクラーの制御及び操作(例えば、タッチスクリーンを介したユーザインターフェースの操作、加熱素子及び冷却素子の作動、光学系の動作)に必要な種々の電子部品が取り付けられている。基板32には、ヒートシンク28とファン26との組立体がボルトにより固定されている。また、サンプルブロック34が基板32に固定されているが、ヒートシンク28からは分離されている。
【0029】
サンプルブロック34の下にペルティエ素子36が取り付けられ、サンプルブロック34と熱接触している。サンプルブロック34の上には電気抵抗ヒータ38がある。
【0030】
ペルティエ素子36は、冷却材としてアセトンを用い、マイクロチャネルが形成された断面平坦型のヒートパイプ40に固定されている。ヒートパイプ40は全体としてS字形であり、ヒートシンク28及びファン26に接触する上部分42と、ペルティエ素子36に接触する下部分44とを備えている。上部分42は、約20度に傾斜しているが、下部分44は全体として水平(約0度)である。下部分44は上部分42の約半分の面積である。
【0031】
内部シャーシを図4に示す。基板32は、サイクラーの動作に必要な電子部品及びプロセッサを備えている。一方、他の構成部品は、ボルト46又は他の固定具により基板32に固定されている。図中、ヒートパイプ40とサンプルブロック34の一部が見える。製造を容易にするために、組立体全体を筐体12内に取り付けることができる。
【0032】
サンプルブロック組立体34の詳細を図5に示す。ブロックは、光学系(他図では図示省略)の種々の構成部品を備えている。3個のLED48を備えたPCB46が光学系構成部50内に配置される。光学系構成部50は、サンプルチューブを収容するための3つの開口部52と、LEDからの光を通過させるための開口部54とを備えている。LED48の上方の開口部には490nmのガラス励起フィルタ56が配置され、このフィルタの上方に電気ヒータ38が配置される。ヒータ38は、各LEDの位置に合わせた3つの開口部58を有している。そして、サンプルブロック34が構成部50内に配置され、サンプルブロック34の後部に535nmのガラス発光フィルタ60が配置される。サンプルブロックは、各LEDの位置に合わせた開口部と発光フィルタとを備えてもよいが、適切な波長の光を透過させてもよく、また、好適な位置に導波管を設けてもよい。そして、組立体全体をサイクラーの他の構成部品と合わせればよい。
【0033】
使用時において、サイクラーは以下のように動作する。ユーザがタッチスクリーンインターフェース16を使用して、所望のサイクリングプログラムをプログラミングしてもよい。これにより、制御電子装置が各構成部品を適切に動作させる。そして、サンプルホルダー20のサンプルチューブ22内にサンプルを装着し、その後、開口部18を介してサンプルブロック34にホルダーを挿入すればよい。
【0034】
ユーザがタッチスクリーンの「スタート」アイコン(又は同様のアイコン)を押すと、ヒータ38とペルティエ素子36が適切に操作される。まず、サンプル温度を所望の第1温度に上昇させるようにヒータ38を作動させる。同時にペルティエ素子36を停止して、サンプルブロックとヒートパイプ40との間の断熱材として作用するようにし、サンプルブロック内の温度を保持する。サンプルブロックが所望時間、所望温度に達したら、ヒータ38を停止し、ペルティエ素子36を作動させればよい。サンプルブロック34を冷却するようにペルティエ素子36を動作させ、サンプルブロックからヒートパイプ40に熱伝達を行う。そして、ヒートパイプ40が下部分44から上部分42に熱伝達を行う。そして、ヒートシンク28とファン26を介して熱を消散させる。このサイクルを任意に繰り返す。
【0035】
さらに、サイクリング中又はサイクリング後に、光学系を用いてサイクリング反応の進行を確認してもよい。LEDを作動させて、サンプルに対して照明を行う。そして、発光光を光センサで検出する。経時的に又は特定時点にて、発光光の強度、あるいは、単に発光光の有無を確認してもよい。これにより、リアルタイムのPCRを行うことができる。
【0036】
本明細書で説明するように、このサイクラーは従来技術のサイクラーと比べていくつかの利点がある。まず、加熱機能と冷却機能とを分離し、非ペルティエ型ヒータを用いることにより、全体として効率が向上する。また、ヒートパイプを用いてペルティエ素子から余分な熱を取り除くとともに、加熱機能と冷却機能とを分離して、ペルティエ素子をヒータ作動時の「ゲート」として使用することにより、サンプルブロックとヒータと冷却部とからなる組立体と、ヒートシンクとファンとからなる組立体を物理的に分離することができ、サイクラーの物理的な設置面積を改善できる。
【0037】
さらに、「廃熱」の全体的な熱プロファイルが低い。単一のペルティエ素子を使用して加熱と冷却の両方を行う標準的なサーマルサイクラーにおいては、ヒートシンクが65℃〜85℃を超える温度まで上昇することがある。本システムの場合、ヒートシンクは40℃〜45℃までしか上昇しないので、標準よりもかなり低温である。これは、従来のPCR機器では使用されていない直線的で平坦なヒートパイプ内で、エネルギーの再循環が行われることにも起因する。ヒートパイプは、冷却時にペルティエの高温面から熱を確実に効率的に取り除き、これにより熱エネルギーを再循環させて、ペルティエの高温面を急速に冷却する。ヒートシンクから放出される熱エネルギーの方がはるかに低いので、ペルティエ素子の所要電力は非常に少ない。
【0038】
組立体全体としては複数の電源入力により動作することができるが、これは重要なことである。例えば、携帯型のフィールドベースの装置の場合、電力プロファイルが非常に低いので、バッテリで電源を供給すればよい。本発明によるサイクラーは、50W未満の合計電力で動作可能であり、それでも30サイクルのサイクル時間は30分未満である。電力を増やせばサイクル時間が減り、熱交換機構に過負荷をかけないですむ。本願の設計により、この「複数電源」能力が可能となる。100Wの入力ならばサイクル時間は20分に短縮され、150Wならば15分になる。特に、本発明の好ましい実施形態の使用時において、サイクラーは、50W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、30分未満で行う。また、100W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、20分未満で行う。また、150W以下の電力で動作させた場合、5秒の標準サイクルをそれぞれ50℃、72℃、95℃にて30サイクル以上、20分未満で行う。これに対し、標準的なブロックサーマルサイクラーの場合、必要な電力は500Wより大きくなる。Finnzymes社製Pikoサーマルサイクラー等の高速ブロックサイクラーは180W、ロシュ(Roche)社製lightCycler2.0等のエアサイクラーは800Wが必要である。
【0039】
実際、本発明のサイクラーを50Wで動作させて行った試験で、ヒートパイプは47℃〜57℃で変化したが、ヒートシンクは40℃で一定であった。100Wの場合、ヒートパイプは50℃〜60℃であったが、ヒートシンクは48℃で一定であった。150Wの場合、ヒートパイプは53℃〜63℃であったが、ヒートシンクは49℃で一定であった。
【0040】
したがって、供給電力を可変にすれば、冷却効率は高いままで、いずれの状況においてもヒートシンクは50℃を超えない。つまり、排気された空気は40℃よりはるかに低いということである。これによる利点は、環境温度が上昇しても、装置の性能が乱れないことである。
【0041】
本システムのもうひとつの利点は、本構成の効率性と、システムから熱を取り除く経路が複数あることから、変化する外部環境温度の影響を受けにくいことである。このことは、やはり携帯型装置の場合、重要である。したがって、環境温度が50℃を超える場合でも、本装置により従来ユニットと同様のサーマルサイクリング時間が得られる。これは、ファンとヒートシンクが大きなオーバーヘッドを有し、環境温度が上昇した場合に、ヒートシンクの気化特性ではなく、ファンとヒートシンクによってシステムから熱をさらに取り除くからである。実際、標準的なペルティエ型サイクラーは30℃〜40℃までしか動作できないが、本発明のいくつかの実施形態は最高55℃以上の環境温度でも動作しうると、本出願人は考えている。
【0042】
この構成により、高い熱伝達特性を有するアルミニウムや熱可塑性エラストマーポリマーによる低質量サンプルブロックを使用することができる。したがって、ブロックの可撓性が得られ、消耗部品が固定されてしまうことがない。また、固体ブロックや長尺で厚さの薄いチューブの場合には一般に不可能である良好な抵抗嵌めが、ここでは可能となる。
【0043】
本発明の他の作用効果については明らかであろう。
図1
図2
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