(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017434
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】引き込み式挿入体を有するキーおよび関連する挿入体延出モジュール
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
E05B19/00 K
E05B19/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-537142(P2013-537142)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公表番号】特表2013-544992(P2013-544992A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011069388
(87)【国際公開番号】WO2012059569
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】1004340
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506415218
【氏名又は名称】ヴァレオ セキュリテ アビタクル
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ、ドランド
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/23294(WO,A1)
【文献】
実開昭56−81425(JP,U)
【文献】
特開2007−231604(JP,A)
【文献】
特開平10−214536(JP,A)
【文献】
特開平10−269887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
H01H 13/00− 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングを形成するために組み付けられる上側ハーフシェル(3)および下側ハーフシェルと、
前記ケーシング内に装着されるように構成される挿入体展開モジュールであって、
前記挿入体展開モジュールは、
引き込み位置と展開位置との間で回動できるように前記ケーシング内に装着される挿入体と、
ユーザにより軸方向に押圧されるように前記上側ハーフシェル(3)から軸方向に突出するとともに、前記ケーシングの対応する回転防止手段(10)と係合する回転防止手段(9)を含むプッシュボタン(8)であり、これらの回転防止手段(9,10)がプッシュボタン(8)の軸方向の並進(A−A)を案内する、プッシュボタン(8)と、
前記プッシュボタン(8)が押圧されるときに前記挿入体を展開位置へ向けて回動させるために、第1の端部が前記挿入体に取り付けられ、第2の端部が前記プッシュボタン(8)に取り付けられる弾性戻し要素と、
を備え、
前記挿入体展開モジュールは、前記ケーシングの一方の前記ハーフシェルの相補的保持手段(18)と係合する前記プッシュボタン(8)に設けられる保持手段(17)を備え、
これらの保持手段(17,18)は、前記プッシュボタン(8)が軸方向に並進移動(A−A)できるようにするべく構成され、
前記相補的保持手段は、前記ケーシングが開放され又は分解された場合に、前記ケーシングの前記一方のハーフシェルにおいて前記挿入体展開モジュールを保持することを特徴とする引き込み式キー。
【請求項2】
前記プッシュボタン(8)の前記保持手段(17)が前記プッシュボタン(8)と一体の部分として形成されることを特徴とする請求項1に記載のキー。
【請求項3】
前記保持手段(17)、軸方向並進(A−A)のガイドとしての役目を果たす前記プッシュボタン(8)の前記回転防止手段(9)、および、前記挿入体を前記引き込み位置でロックするために前記挿入体と係合する保持突起(16)は、前記プッシュボタン(8)と一体の部分として形成されることを特徴とする請求項2に記載のキー。
【請求項4】
前記ケーシングの前記相補的保持手段(18)が前記上側ハーフシェル(3)に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のキー。
【請求項5】
前記ケーシングの前記相補的保持手段(18)が前記上側ハーフシェル(3)の1つの内壁に一体部分として形成されることを特徴とする請求項4に記載のキー。
【請求項6】
前記ケーシングの前記下側ハーフシェルの内部キャビティ内に収容される遠隔制御装置を備え、
前記ケーシングを取り外し可能な態様で開放し或いは閉塞するために、2つのハーフシェルである上側ハーフシェルと下側ハーフシェルとがスナップ嵌合によって係合することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のキー。
【請求項7】
前記プッシュボタン(8)の前記保持手段(17)と前記ケーシングの前記相補的保持手段(18)とが取り外し可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のキー。
【請求項8】
前記プッシュボタン(8)の前記保持手段(17)と前記ケーシングの前記相補的保持手段(18)とがスナップ嵌合によって係合することを特徴とする請求項7に記載のキー。
【請求項9】
少なくとも1つのスナップ嵌合切欠き(17)が前記プッシュボタン(8)の1つの側壁に形成され、
前記上側ハーフシェル(3)の1つの内壁が少なくとも1つの相補的な弾性タブ(18)を有し、該タブの端部は、前記スナップ嵌合切欠き(17)へ向けて突き出すスナップ嵌合歯(18a)を有することを特徴とする請求項8および、請求項2または請求項3、および請求項4から6のいずれか一項に記載のキー。
【請求項10】
前記プッシュボタン(8)が通過する前記上側ハーフシェル(3)の貫通穴(7)のカラーに形成される少なくとも2つの切り込み(10)によって形成される少なくとも2つの相補的な弾性タブ(18)を備え、
前記切り込み(10)は、前記プッシュボタン(8)を軸方向で案内するとともに、前記プッシュボタンが回転するのを防止するために、前記プッシュボタン(8)の前記回転防止手段(9)と係合することを特徴とする請求項9に記載のキー。
【請求項11】
引き込み式キーのための挿入体展開モジュールであって、該モジュールが前記キーのケーシング内に装着されるように構成され、
キービット支持体(11)と、該キービット支持体(11)に強固に取り付けられるキービットとを含む挿入体と、
前記キービット支持体(11)のハウジング(5)内に受けられるとともに、そのハウジング(5)から軸方向で前記キービット支持体(11)から突出するプッシュボタン(8)であり、前記プッシュボタン(8)が、前記ケーシングの対応する回転防止手段(10)と係合するようになっている回転防止手段(9)を含み、これらの回転防止手段(9,10)が前記プッシュボタン(8)の軸方向の並進(A−A)を案内する、プッシュボタン(8)と、
第1の端部が前記キービット支持体(11)に取り付けられ、第2の端部が前記プッシュボタン(8)に取り付けられる弾性戻し要素と、
を備え、
前記挿入体展開モジュールは、前記プッシュボタン(8)に設けられるとともに前記ケーシングの一方のハーフシェルの相補的保持手段(18)と係合するようになっている保持手段(17)を備え、
前記相補的保持手段は、前記ケーシングが開放され又は分解された場合に、前記ケーシングの前記一方のハーフシェルにおいて前記挿入体展開モジュールを保持することを特徴とする挿入体展開モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングと、ケーシング内に引き込まれ得る挿入体とを備える、特に自動車用の引き込み式挿入体を有するキーに関する。また、本発明は、ケーシング内に装着されるようになっている挿入体展開モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのハーフシェルを有するケーシングと、ケーシング内に装着されるように構成される挿入体展開モジュールとを備える特に自動車用の引き込み式キーは、国際公開第2010/023294号パンフレットから既に知られる。
【0003】
挿入体展開モジュールは、挿入体がケーシング内に引き込まれる引き込み位置と挿入体がケーシングの外側に至らされる展開位置との間で回動できるように装着されるキービットを形成する挿入体を備える。また、挿入体展開モジュールは、ユーザによって作動されるようにケーシングの上側ハーフシェルから軸方向に突出するプッシュボタン、および、弾性戻し要素も備える。弾性戻し要素の第1の端部は、プッシュボタンが作動されるときに挿入体を展開位置へ向けて回動させるべく挿入体に取り付けられ、第2の端部はプッシュボタンに取り付けられる。また、プッシュボタンは、ケーシングの対応する回転防止手段と係合する回転防止手段も備え、これらの回転防止手段はプッシュボタンの軸方向並進を案内する。
【0004】
回転が防止されるプッシュボタンは、いかなる任意の形状を有するプッシュボタンを使用できるようにするとともに、挿入体がより良好な曲げ強度を有することができるようにする。
【0005】
また、弾性戻し要素がプレストレスを付与された状態でケーシングとは無関係に組み付けられ得る挿入体展開モジュールは、それを予め組み立てて、ある供給業者により、異なる製造業者へ、例えば車両の開放可動部の中央ロック/アンロックを制御するための遠隔制御装置を専門に扱う製造業者へ供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/023294号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の引き込み式キーの改良を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、本発明は、
ケーシングを形成するために組み付けられる上側ハーフシェルおよび下側ハーフシェルと、
前記ケーシング内に装着されるように構成される挿入体展開モジュールであって、
引き込み位置と展開位置との間で回動できるようにケーシング内に装着される挿入体と、
ユーザにより軸方向に押圧されるように上側ハーフシェルから軸方向に突出するとともに、ケーシングの対応する回転防止手段と係合する回転防止手段を備えるプッシュボタンであり、これらの回転防止手段がプッシュボタンの軸方向の並進を案内する、プッシュボタンと、
プッシュボタンが押圧されるときに挿入体を展開位置へ向けて回動させるために、その第1の端部が挿入体に取り付けられ、その第2の端部がプッシュボタンに取り付けられる弾性戻し要素と、
を備える前記挿入体展開モジュールと、
を備える引き込み式キーにおいて、
前記挿入体展開モジュールが、ケーシングの一方のハーフシェルの相補的保持手段と係合するプッシュボタンに設けられる保持手段を備え、これらの保持手段が、プッシュボタンが軸方向に並進移動できるようにするべく構成されることを特徴とする引き込み式キーに関する。
【0009】
このように、2つのハーフシェル、すなわち、上側ハーフシェルと下側ハーフシェルとを組み付ける前に複数の保持手段を使用して挿入体展開モジュールをケーシングの一方のハーフシェルに取り付けることができるため、ケーシング内への挿入体展開モジュールの装着が容易になる。
【0010】
また、ケーシングが取り外し可能な開閉のための手段を有すると、ユーザは、ケーシングの内部に容易にアクセスして、例えば、セルまたはバッテリーなどの遠隔制御装置の電力供給手段を交換することができるとともに、続けて、ケーシングのハーフシェルの一方の背面にハッチを必要とすることなく、また、保持手段によりケーシングに保持されるようになっている挿入体展開モジュールのケーシング内への再配置の困難がなく、この手段を交換することができる。
【0011】
更に、保持手段は、それ自体の回転が防止されるプッシュボタンに設けられるため、保持手段は、挿入体が引き込み位置または展開位置へ回動するのを防止しない。
【0012】
このように、プッシュボタンは、ケーシングと協働する挿入体展開モジュールによって様々な機能を果たすための、とりわけ、挿入体展開モジュールをケーシングに保持するとともにプッシュボタンを案内するための幾つかの手段を与える。したがって、挿入体展開モジュールに属する複数の手段を形成する部分の数が減少される。
【0013】
引き込み式キーの単独で或いは組み合わせて考慮される1つ以上の特徴によれば、
プッシュボタンの保持手段がプッシュボタンと一体の部分として形成され、
保持手段、軸方向並進のガイドとしての役目を果たすプッシュボタンの回転防止手段、および、挿入体を引き込み位置でロックするために挿入体と係合する保持突起は、プッシュボタンと一体の部分として形成され、
ケーシングの相補的保持手段が上側ハーフシェルに設けられ、
ケーシングの相補的保持手段が上側ハーフシェルの1つの内壁に一体部分として形成され、
引き込み式キーがケーシングの下側ハーフシェルの内部キャビティ内に収容される遠隔制御装置を備え、ケーシングを取り外し可能な態様で開放し或いは閉塞するために、2つのハーフシェル、すなわち、上側ハーフシェルと下側ハーフシェルとがスナップ嵌合によって係合し、
プッシュボタンの保持手段とケーシングの相補的保持手段とが取り外し可能であり、
プッシュボタンの保持手段とケーシングの相補的保持手段とがスナップ嵌合によって係合し、
少なくとも1つのスナップ嵌合切欠きがプッシュボタンの1つの側壁に形成され、上側ハーフシェルの1つの内壁が少なくとも1つの相補的な弾性タブを有し、該タブの端部は、スナップ嵌合切欠きへ向けて突き出すスナップ嵌合歯を有し、
キーは、プッシュボタンが通過する上側ハーフシェルの貫通穴のカラーに形成される少なくとも2つの切り込みによって形成される少なくとも2つの相補的な弾性タブを備え、前記切り込みは、プッシュボタンを軸方向で案内するとともに、プッシュボタンが回転するのを防止するために、プッシュボタンの回転防止手段と係合する。
【0014】
また、本発明は、引き込み式キーのための挿入体展開モジュールであって、該モジュールが前記キーのケーシング内に装着されるように構成され、前記挿入体展開モジュールが、
キービット支持体と、該キービット支持体に強固に取り付けられるキービットとを備える挿入体と、
キービット支持体のハウジング内に受けられるとともに、そのハウジングから軸方向でキービット支持体から突出するプッシュボタンであり、前記プッシュボタンが、ケーシングの対応する回転防止手段と係合するようになっている回転防止手段を備え、これらの回転防止手段がプッシュボタンの軸方向の並進を案内する、プッシュボタンと、
その第1の端部がキービット支持体に取り付けられ、その第2の端部がプッシュボタンに取り付けられる弾性戻し要素と、
を備え、
前記挿入体展開モジュールが、プッシュボタンに設けられるとともにケーシングの相補的保持手段と係合するようになっている保持手段を備えることを特徴とする挿入体展開モジュールにも関連する。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、単なる例示であって専ら非限定的である以下の説明および添付図面を読むと更に明確に分かる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】組み付け状態の引き込み式キーの挿入体展開モジュールの要素および上側ハーフシェルの詳細の断面図を示している。
【
図2】
図1の引き込み式キーの挿入体展開モジュールの要素および上側ハーフシェルの斜視図を示し、上側ハーフシェルおよび挿入体展開モジュールが分解状態にある。
【
図3】
図1のプッシュボタンの斜視図を示している。
【0017】
図中、同一の要素が同じ参照符号を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に自動車用の引き込み式キーは、カバーを形成する上側ハーフシェル3(
図1,2および4)と、ベースを形成する下側ハーフシェル(図示せず)とを備える。上側ハーフシェル3および下側ハーフシェルは、引き込み式キーのためのケーシングを形成するべく組み付けられる。
【0019】
2つのハーフシェルは、一般に、プラスチックから形成され、例えばスナップ嵌合によって(または、ラッチ、すなわち、弾性変形によって)組み付けられ得る。このため、上側ハーフシェル3は、ケーシングを取り外し可能な態様で開放し或いは閉じるために、スナップ嵌合窪みの形態を成す下側ハーフシェルの対応する特徴部と弾性変形によって係合するようになっている外周スナップ嵌合縁部4を有する。
【0020】
下側ハーフシェルは、例えば、遠隔制御装置(図示せず)を収容することができるようにする内部キャビティを有する。それ自体知られる態様で、遠隔制御装置は、キーの様々な機能、特に、開放可動部の中央ロック/アンロックおよび自動車盗難防止システムまたは駐車場内での自動車の場所の特定といった機能を制御できるようにする。
【0021】
遠隔制御装置は、車両の開放可動部の中央ロック/アンロック、車両盗難防止システムのためのトランスポンダ、および、セルまたはバッテリーから成る電力供給手段の遠隔制御のための電子回路を有するプリント回路基板を備える。
【0022】
遠隔制御機能は、上側ハーフシェル3に設けられる作動手段6を用いてユーザにより作動され、また、上側ハーフシェルの裏面を
図2および
図4において見ることができる。作動手段6は、プリント回路基板のスイッチを起動させることができるようにする。
【0023】
また、上側ハーフシェル3は、挿入体展開モジュールのプッシュボタン8が通過できる貫通穴7も備える。例えば、貫通穴7は円形であり、プッシュボタン8は、円柱状の側壁を伴う対応するベル形状を有する。
【0024】
プッシュボタン8は、それがユーザにより押圧されて挿入体展開モジュールからの挿入体の展開を引き起こすことができるように上側ハーフシェル3の貫通穴7から軸方向に(
図1の長手方向軸A−Aに沿って)突出する。
【0025】
プッシュボタン8は、プッシュボタン8が押圧されるときにプッシュボタンがケーシングに対して回転するのを防止するためにケーシングの対応する回転防止手段と係合する回転防止手段を備える。これらの回転防止手段は、プッシュボタン8の長手方向軸A−Aに沿うプッシュボタン8の軸方向並進もガイドする。
【0026】
図3に示される1つの典型的な実施形態によれば、軸方向ガイドとしての役目を果たすプッシュボタン8の回転防止手段は、プッシュボタン8の側壁の外面上に同じ高さで一定の間隔で離間される3つの案内スナッグ9を備える。案内スナッグ9は、軸A−Aに沿うプッシュボタン8の軸方向の摺動を案内するとともに、プッシュボタンが回転するのを防止するために、上側ハーフシェル3の貫通穴7のカラーに形成される3つのそれぞれの対応する切り込み10(
図2)と係合する。
【0027】
回転が防止されるプッシュボタン8は、いかなる任意の形状を有するプッシュボタンを使用できるようにするとともに、挿入体がより良好な曲げ強度を有することができるようにする。
【0028】
プッシュボタン8および挿入体に加えて、挿入体展開モジュールは弾性戻し要素(図示せず)を備える。
【0029】
より正確には、挿入体は、キービット支持体11と、キービット支持体11に強固に取り付けられるキービット(図示せず)とを備える。キービットは、例えば、その一端がキービット支持体11の相補的な止まり穴12内に入れ子にされる(
図2)。キービット支持体11/キービットアセンブリは、例えばピンによって固定保持される。
【0030】
プッシュボタン8はキービット支持体11のハウジング5内に受けられ、プッシュボタンは、ハウジングから突出する(
図1)とともに、それがユーザにより押圧されるときに長手方向軸A−Aに沿ってハウジング内へと軸方向で摺動できる。
【0031】
弾性戻し要素は、プッシュボタン8が押圧されるときに挿入体を展開位置へ向けて回動させるために挿入体に取り付けられる第1の端部と、プッシュボタン8に取り付けられる第2の端部とを有する。戻し要素は、例えば螺旋ねじりバネである。
【0032】
プッシュボタン8は戻し要素を収容する中空の内部空間を有し、該内部空間の底部は、第2の端部が上側ハーフシェル3に対して回転するのを防止する第1のスロット14を有する(
図1)。また、キービット支持体11の基部は、キービット支持体11のための回動端部ストッパとしての役目も果たす径方向ブリッジによりキービット支持体11の側壁に接続される中空ペグ15を備えることができる。中空ペグ15は、弾性戻し要素(図示せず)の第1の端部を取り付けるための第2のスロットを有する。
【0033】
挿入体は、ケーシング内の引き込み位置とケーシングから突出する展開位置との間で回動できるようにケーシング内に装着される。引き込み位置において、挿入体は、例えば、挿入体の形状に対応する例えば略L形状を成すケーシングの1つの境界の凹部13内に収容される。展開位置において、挿入体は、キービットを対応するロック内へ挿入できるように180°にわたって回動してケーシングから突出する。
【0034】
また、プッシュボタン8およびキービット支持体11は、引き込み位置で挿入体を保持するべく係合する。この目的を果たすため、プッシュボタン8は、引き込み位置で挿入体を保持するための少なくとも1つの保持突起16を備え、また、キービット支持体11は、保持突起16と係合する対応する穴(図示せず)を備える。引き込み位置では、保持突起16が対応するアセンブリ内に係合し、それにより、戻し要素にプレストレスがかけられる。プッシュボタンが押圧されると、保持突起16が対応する穴から解放され、それにより、キービット支持体11が展開位置へと回動できるようになる。したがって、プッシュボタンがユーザにより押圧されると、プッシュボタン8が挿入体を解放する。ユーザがプッシュボタンを解放すると、弾性要素がプッシュボタン8をキービット支持体11から突出する位置へと戻す。
【0035】
挿入体、プッシュボタン8、および、弾性要素を備える挿入体展開モジュールは、弾性戻し要素がプレストレスを付与された状態で装着されつつケーシングとは無関係に組み付けられ得るユニットを形成する。したがって、挿入体展開モジュールを予め組み立てて、ある供給業者から、異なる製造業者へ、例えば遠隔制御装置を専門に扱う製造業者へ、挿入体展開モジュールを供給することができる。
【0036】
展開モジュールが組み付けられると、展開モジュールをケーシング内に装着することができる。この目的を達成するため、挿入体展開モジュールは、プッシュボタン8に設けられてケーシングの上側ハーフシェル3または下側ハーフシェルの相補的な保持手段と係合する保持手段を備える。また、保持手段は、プッシュボタン8がケーシングに対して軸方向に並進移動できるようにするべく構成される。
【0037】
このように、2つのハーフシェル、すなわち、上側ハーフシェルと下側ハーフシェルとを組み付ける前に複数の保持手段を使用して挿入体展開モジュールをケーシングの一方のハーフシェルに取り付けることができるため、ケーシング内への挿入体展開モジュールの装着が容易になる。
【0038】
また、保持手段は、回転が防止されるプッシュボタン8に設けられるため、保持手段は、挿入体が引き込み位置または展開位置へ回動するのを防止しない。
【0039】
ケーシングの相補的な保持手段は、例えば、ケーシングの上側ハーフシェル3に設けられ、その場合、保持手段は、例えば、上側ハーフシェル3の内面の一体部分として形成される。
【0040】
したがって、引き込み式キーがケーシングの下側ハーフシェルの内部キャビティ内に収容される遠隔制御装置を備える場合であって、ケーシングを取り外し可能な態様で開放し或いは閉塞するために2つのハーフシェルがスナップ嵌合によって係合する場合、ユーザは、セルまたはバッテリーなどの電力供給手段に容易にアクセスすることができるとともに、続けて、下側ハーフシェルの背面にハッチを必要とすることなく、また、複数の保持手段により上側ハーフシェル3に保持されるようになっている挿入体展開モジュールのケーシング内への再配置を困難にすることなく、この手段を交換することができる。
【0041】
プッシュボタン8の保持手段およびケーシングの相補的な保持手段は、例えばそれらがスナップ嵌合により係合するという点において、取り外し可能である。
【0042】
この目的を達成するため、少なくとも1つのスナップ嵌合切欠き17がプッシュボタンの1つの側壁に形成される(
図3)。例えば、一定の間隔で離間される3つのスナップ嵌合切欠き17が、ケーシングから突出するプッシュボタン8の上部よりも下側において、プッシュボタン8の側壁に同じ高さで形成される。
【0043】
また、上側ハーフシェル3の1つの内壁は、スナップ嵌合切欠きの方へ延びる少なくとも1つの相補的な弾性タブ18を有し、このタブの一端は、スナップ嵌合切欠き17の内部へ向けて突き出すスナップ嵌合歯18aを有する(
図1)。したがって、上側ハーフシェル3は、例えば、内壁の一体部分として形成される3つの相補的な弾性タブ18を有する(
図4)。
【0044】
相補的な弾性タブ18は、プッシュボタン8、したがって挿入体展開モジュールを上側ハーフシェル3にスナップ嵌合させるために、スナップ嵌合切欠き17と弾性変形によって係合する。
【0045】
弾性タブ18の歯18aは、スナップ嵌合切欠き17の上縁および下縁により形成される2つの軸方向ストッパ間で軸方向に並進移動でき、それにより、プッシュボタン8は、該プッシュボタン8が上側ハーフシェル3に保持されつつ、ケーシングに対して軸方向に並進移動できる。
【0046】
弾性タブ18は、例えば、プッシュボタン8の回転防止手段を軸方向で案内するために貫通穴7のカラーに形成される切り込み10間に残される上側ハーフシェル3の残存材料によって形成される。したがって、残存するカラー部分の端部が、プッシュボタン8のスナップ嵌合切欠き17ヘ向けて貫通穴7の中心方向に突き出すスナップ嵌合歯18aを有する。
【0047】
保持手段、軸方向並進のガイドとしての役目を果たす回転防止手段、および、挿入体を引き込み位置でロックするために挿入体と係合する保持突起16は、例えば、プッシュボタン8と一体の部分として形成される。言い換えると、
図3から分かるように、単一部品として形成されるプッシュボタン8は、戻し要素を収容するための中空の内部空間と、戻し要素の第2の端部を取り付けるためにプッシュボタン8の基部と一体の部分として形成されるリップ14と、例えばプッシュボタン8の側壁から突出する案内スナッグ9によって形成される軸方向並進ガイドとしての役目を果たす回転防止手段と、例えばプッシュボタン8の前記側壁に形成される切欠き17から成る保持手段とを有する。
【0048】
このように、プッシュボタン8は、ケーシングと協働する挿入体展開モジュールによって様々な機能を果たすための、とりわけ、挿入体展開モジュールをケーシングに保持するとともにプッシュボタン8の動きを案内するための幾つかの手段を与える。したがって、挿入体展開モジュールに属する複数の手段を形成する部分の数が減少される。
【0049】
この場合、プッシュボタン8を上側ハーフシェル3の貫通穴7に通して、このハーフシェルの弾性タブ18をプッシュボタン8のスナップ嵌合切欠き17にスナップ嵌合させることにより、挿入体展開モジュールをスナップ嵌合によって上側ハーフシェル3に組み付けることができる。その後、下側ハーフシェルが上側ハーフシェル3にスナップ嵌合されて、ケーシングが形成される。
【0050】
したがって、プッシュボタン8が押圧されると、戻し要素が緩み、キービット支持体11が回動して、キービットがその凹部13から抜け出る。その後、ユーザは、対応するロック内の展開位置にある挿入体のキービットを使用できる。使用後、ユーザは、プッシュボタン8の保持突起16をキービット支持体11の対応する穴に再び係合させるためにプッシュボタン8を押圧することにより元の凹部13内の引き込み位置へと挿入体を収めることができる。また、ケーシングの内部へのアクセスは、例えば電力供給手段を交換するために必要とされ、その場合、ユーザは、挿入体展開モジュールが上側ハーフシェル3に保持されたままであるため、挿入体展開モジュールをケーシング内に再び容易に組み付けることができないというリスクを伴うことなく、上側ハーフシェル3を下側ハーフシェルから分解する。