(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017436
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】内部キャビティを伴うコンポーネント製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/15 20060101AFI20161020BHJP
B30B 11/00 20060101ALI20161020BHJP
B22F 5/10 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B22F3/15 K
B30B11/00 E
B22F5/10
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-538174(P2013-538174)
(86)(22)【出願日】2011年11月9日
(65)【公表番号】特表2014-500909(P2014-500909A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】EP2011069701
(87)【国際公開番号】WO2012062786
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年9月10日
(31)【優先権主張番号】10190593.3
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベルグルンド
(72)【発明者】
【氏名】リカルド サンドベルイ
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−089857(JP,U)
【文献】
特表2000−511983(JP,A)
【文献】
特開昭60−166157(JP,A)
【文献】
特開平06−002613(JP,A)
【文献】
特開2005−330873(JP,A)
【文献】
特開平03−211207(JP,A)
【文献】
特開昭58−190538(JP,A)
【文献】
特開2001−047224(JP,A)
【文献】
特開2001−192707(JP,A)
【文献】
特開2001−335814(JP,A)
【文献】
特表2009−540199(JP,A)
【文献】
特開平06−193500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00 − 7/08
B30B 11/00
F02F 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの内部キャビティを有するコンポーネント(100)を製造するための方法において、
少なくとも第1の開口部(12)と第2の開口部(14)とを有する少なくとも1つのキャビティ(11)を含む金属材料の少なくとも第1の予備成形されたコア要素(10)を提供するステップであって、
前記第1の開口部(12)が、第1の表面(33)と第2の表面(34)を有するカバー要素(30)によって被覆され、前記第1の表面(33)が前記第1のコア要素(10)に気密係合されている、ステップと、
前記第1のコア要素(10)と前記少なくとも第1の前記カバー要素(30)とを少なくとも部分的に取り囲む、コンポーネント(100)の形状を少なくとも部分的に画定する型枠(50)を提供するステップと、
前記型枠(50)に金属充填材料(60、61)を充填するステップと、
前記第1のコア要素(10)、前記カバー要素(30)および前記金属充填材料(60、61)の間で金属結合が達成されるような形で既定の温度および、既定の静水圧で既定の時間、気体により加圧される加熱チャンバー内で加熱を行なうステップと、を含み、
前記型枠(50)を金属充填材料で充填した後に前記カバー要素(30)の少なくとも第2の表面(34)が金属充填材料(60、61)で被覆され、かつ前記キャビティ(11)が加熱中前記少なくとも第2の開口部(14)を通して既定の静水圧まで加圧されるような形で、前記第1のコア要素(10)が配置され、
前記第1の予備成形されたコア要素(10)を提供するステップは、
前記金属材料の少なくとも第1の予備成形されたコア要素(10)内に、前記コア要素(10)の表面内の少なくとも2つの開口部(14、18)を含む少なくとも1つのキャビティ(11)と前記コア要素(10)の表面内のさらなる開口部(12)を提供する少なくとも1つの溝(20)とを形成するステップと、を含み、
前記気密係合されるステップは、
第1の表面(33)と第2の表面(34)とを有する少なくとも前記第1のカバー要素(30)を用いて前記さらなる開口部(12)を被覆し、前記カバー要素(30)の前記第1の表面(33)の一部分を、前記第1のコア要素(10)の表面(13)の一部分に気密係合させて、前記キャビティ(11)が前記開口部(14、18)の間に閉鎖断面の連続的流路を形成するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記キャビティ(11)が、ドリル加工および/または切削加工および/または、旋削加工および/または放電加工によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャビティ(11)が、前記第1および第2の開口部(14、18)から前記溝(20)まで前記コア要素(10)内に延在する第1および第2のボア(17、19)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コア要素(10)内の前記少なくとも第2の開口部(14)が、型枠(50)内の入口(51)に気密係合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記型枠(50)が、コンポーネント(100)の形状を画定するカプセルであり、前記第1のコア要素(10)および前記カバー要素(30)が前記カプセル内に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記型枠(50)および前記第1のコア要素(10)が共にコンポーネント(100)の形状を画定するような形で、前記型枠(50)が前記第1のコア要素(10)に対し気密係合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
金属充填材料(60、61)が金属粉末(60)および/または金属片(61)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも第2の予備成形されたコア要素(23)を前記第1の予備成形されたコア要素(10)と接触した状態で配置するステップを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも第2のコア要素(23)が少なくとも1つのキャビティ(15)を含み、前記第2のコア要素(23)は、このキャビティ(15)と第1のコア要素(10)内のキャビティ(11)とが連通するような形で配置されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のコア要素(10)と少なくとも第2のコア要素(23)が異なる材料から製造されていることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記カバー要素(30)が、複数のカバー要素区分(31)を含み、これらの区分が互いにおよび前記第1のコア要素(10、23)と気密係合されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コア要素(10、23)および/または前記カバー要素(30)が、前記キャビティ(11)内に延在する少なくとも1つの冷却用フィン(24、35)を含んでいることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記キャビティ(11)の表面には、冷却効果を増大させるための粗度が具備されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コア要素(10、23)および前記カバー要素(30)が、Ni合金、Co合金、Ti合金、Cu合金、Fe合金または工具鋼または炭素鋼またはハドフィールドタイプの鋼またはステンレス鋼、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、クロム鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼またはその混合物といった材料のいずれかから製造されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に係る少なくとも1つの内部キャビティを有するコンポーネントを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属またはセラミック粉末の熱間静水圧加熱、いわゆるHIPまたはHIPPINGは、さまざまなコンポーネント用として一般的に使用されている製造プロセスである。HIP製造プロセスでは、製造品の形状を画定するカプセルに、所望の組成の金属またはセラミック粉末が充填される。カプセルを排気し、密封し、その後高温および高圧に付して、粉末は圧密体へと高密度化される。
【0003】
一部のコンポーネントは、例えば冷却用流路などの内部キャビティを含む。しかしながら、金属ワーク内でのフライス加工または中ぐり加工などの従来の方法を用いて湾曲した内部流路を有するコンポーネントを達成することは困難である。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、内部流路を有するコンポーネントを製造するためのHIP法について記述している。内部流路は、製造品の形状を画定する金型の内部に配置されているプリフォームで形成される。金型には金属粉末が充填され、静水圧下で加熱され、こうして、金属粉末は、圧密品になるまで高密度化する。プリフォームはその後、取出され、こうして製造品の中に内部キャビティが残る。コンポーネント内に内部キャビティを形成するため、予備成形管を使用することも公知である。管は、加熱および圧密ステップ後、圧密された製造品の中に残る。
【0005】
上述の方法に伴う問題点は、最終コンポーネント内の内部キャビティの高い位置精度を達成するのが困難であるということにある。これは主として、コンポーネントの製造中粉末が加熱され高い静水圧に付された場合、埋込まれた流路形成用プリフォームが移動することに起因している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/049251号パンフレット
【特許文献2】独国特許第4426544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上述の課題の少なくとも1つを解決する、少なくとも1つの内部キャビティを有するコンポーネントを製造するための改善された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的は、少なくとも1つの内部キャビティを有するコンポーネントを製造するための方法において、
少なくとも第1の開口部と第2の開口部とを有する少なくとも1つのキャビティを含む金属材料の少なくとも第1の予備成形されたコア要素を提供するステップであって、前記第1の開口部が、第1の側面と第2の側面を有するカバー要素によって被覆され、前記第1の側面が前記少なくとも第1のコア要素に気密接合されている、ステップと、
前記少なくとも第1のコア要素と前記カバー要素とを少なくとも部分的に取り囲む、コンポーネントの形状を少なくとも部分的に画定する型枠を提供するステップと、
前記型枠に金属充填材料を充填するステップと、
前記少なくとも第1のコア要素、前記カバー要素および前記金属充填材料の間で金属結合が達成されるような形で既定の温度および既定の静水圧で既定の時間、気体により加圧される加熱チャンバー内で加熱を行なうステップと、を特徴とし、
前記型枠を金属充填材料が充填した後に前記カバー要素の少なくとも第2の側面が金属充填材料で被覆され、かつ前記キャビティが加熱中前記少なくとも第2の開口部を通して既定の静水圧まで加圧されるような形で、前記少なくとも第1のコア要素が配置されている、方法によって達成される。
【0009】
発明力ある方法を用いると、原則として任意の形状または形態の内部キャビティまたは流路を有するコンポーネントを製造することができる。これは、例えば円形溝などの任意の形状のキャビティをコア要素の表面内にフライス加工などで容易に形成することができるために、可能となっている。溝をカバー要素で被覆することによって、コア要素内に閉鎖断面の連続的流路が達成される。方法の以下のステップにおいて、コア要素は、コンポーネント内に内部キャピティが具備されるような形で最終コンポーネントの本体内に少なくとも部分的に組込まれる。最終コンポーネントを構成する要素聞に金属結合が形成されることから、最終コンポーネントの強度は、非常に高い。最終コンポーネントの強度は、鍛造された単独の中実ワークから製造されたコンポーネント内と
実質的に同じである。内部キャビティを含むコア要素の剛性および気孔の欠知のため、コア要素は、静水圧下での加熱ステップ中不動であり続ける。したがって、最終コンポーネント内では、内部キャビティの位置の極めて高い寸法的精度が達成される。
【0010】
好ましい実施形態によると、第1の予備成形された中実コア要素を提供するステップには、
金属材料の少なくとも第1の中実コア要素の中に、前記コア要素の表面内の少なくとも2つの開口部を含む少なくとも1つのキャビティ(11)と前記コア要素の表面内のさらなる開口部を提供する少なくとも1つの溝とを形成するステップと、
第1の側面と第2の側面とを有する少なくとも第1のカバー要素を用いて前記さらなる開口部を被覆し、前記カバー要素の前記第1の側を前記少なくとも第1のコア要素に気密接合させて、前記キャビティが前記開口部の間に閉鎖断面の連続的流路を形成するステップと、が含まれる。
【0011】
好ましくは、キャビティは、ドリル加工および/または切削加工および/または、旋削加工および/または放電加工によって形成される。
【0012】
前記キャビティは、前記第1および第2の開口部から前記溝まで前記コア要素内に延在する第1および第2のボアを含んでいてよい。
【0013】
一変形形態によると、前記少なくとも第2の開口部は、型枠内の入口に気密連結されている。
【0014】
一変形形態によると、前記型枠は、コンポーネントの形状を画定するカプセルであり、少なくとも第1のコア要素およびカバー要素は、前記カプセル内に配置されている。
【0015】
一変形形態によると、型枠は、型枠および第1のコア要素が共にコンポーネントの形状を画定するような形で、第1のコア要素に対し気密接合されている。
【0016】
金属充填材は、好ましくは金属粉末材料および/または金属片である。
【0017】
一変形形態によると、方法には、少なくとも追加のコア要素を前記第1の予備成形されたコア要素と接触した状態で配置するステップが含まれる。
【0018】
一変形形態によると、前記追加のコア要素は少なくともキャビティを含んでいてよく、前記追加のコア要素は、このキャビティと第1のコア要素内のキャビティとが連通するような形で配置されている。
【0019】
一変形形態によると、前記コア要素は、複数のカバー要素区分を含み、これらの区分は互いにおよび前記少なくとも第1のコア要素と気密連結されている。
【0020】
好ましくは、前記コア要素および/または前記コア要素区分は、プレートかまたは機械加工された部品である。
【0021】
一変形形態によると、前記コア要素および/またはカバー要素は、前記キャビティ内に延在する少なくとも1つの冷却用フィンを含む。
【0022】
好ましくは、前記キャビティには、冷却効果を増大させるための粗化された表面が具備されている。
【0023】
一変形形態によると、前記キャビティの表面には、窪みまたは横方向溝が具備されている。
【0024】
好ましくは、コア要素およびカバー要素は、Ni合金、Co合金、Ti合金、Cu合金、Fe合金または工具鋼または炭素鋼またはハドフィールドタイプの鋼またはステンレス鋼、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、クロム鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼またはその混合物といった材料のいずれかから製造される。
【0025】
一変形形態によると、第1のコア要素および少なくとも1つの追加のコア要素は、異なる材料から製造されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施形態にしたがって製造される内部キャビティを伴うコンポーネントを概略的に示す。
【
図2a】それぞれに、本発明の第1の好ましい実施形態で使用されるコア要素の概略的斜視図、コア要素の下部側の図およびコア要素の側面図を示す。
【
図2b】それぞれに、本発明の第1の好ましい実施形態で使用されるコア要素の概略的斜視図、コア要素の下部側の図およびコア要素の側面図を示す。
【
図2c】それぞれに、本発明の第1の好ましい実施形態で使用されるコア要素の概略的斜視図、コア要素の下部側の図およびコア要素の側面図を示す。
【
図3a】本発明の第1の好ましい実施形態において使用されるカバー要素の上面図を概略的に示す。
【
図3b】本発明の第1の好ましい実施形態のコア要素とカバー要素の断面を概略的に示す。
【
図4】カプセル内に配置されているコア要素とカバー要素のアセンブリの断面を概略的に示す。
【
図5】本発明の第1の好ましい実施形態にしたがってカプセルに金属充填材料が充填されている
図4のアセンブリを概略的に示す。
【
図6】本発明のさらなる実施形態および変形形態を概略的に示す。
【
図7】本発明のさらなる実施形態および変形形態を概略的に示す。
【
図8】本発明のさらなる実施形態および変形形態を概略的に示す。
【
図9】本発明のさらなる実施形態および変形形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の方法にしたがって製造されるコンポーネント100を示す。コンポーネント100は、内部キャビティ11すなわちコンポーネントの本体の内側に延在するキャビティを含む。原則として、コンポーネントは、コア要素に対し金属結合されている金属材料の一部分60、61とキャビティ11とを含むコア要素10を含む。キャビティ11は例えば、コンポーネントを冷却するための冷却液用流路であってよい。流路11は、閉鎖断面を有し、コンポーネントの上部表面110上に位置設定された第1および第2の開口部14および18の間に延在する。流路の第1の部分17は、開口部14からコンポーネントの下部表面120に向かって延在する。下部表面120から既定の距離のところにおいて、流路11は、方向転換し、コンポーネントの下部表面に対して平行に円形状20に延在する。流路の円形部分20は、流路の第2の垂直部分19に至るまで延在し、この部分19はそれ自体、コンポーネントの上部表面上の開口部18まで延在する。作動中、水などの冷却液が、開口部14を通って導入される。冷却液は、流路11を通って流れ、コンポーネントの下部部分から熱を除去し、コンポーネントの上部部分上の第2の開口部18を通って退出する。
【0028】
以上の記述が、発明力ある方法を用いて製造され得るコンポーネントの一般的記述であることを指摘しておかなければならない。内部キャビティを伴う任意のタイプのコンポーネントの製造のために、この方法を応用できるということは明白である。例えば、空冷式弁棒または流冷式弁座などのディーゼルエンジン向けのコンポーネントなど。コンポーネントは同様に、液冷式軸受、液冷式ロールまたは液冷式熱シールドでもあり得る。コンポーネントの本体の内側に延在するキャビティ11が任意の形態または断面を有するものであり得、かつコンポーネント内部を任意の要領で延在し得るということも明白である。さらに、キャビティが任意の数の開口部を含み得ること、そして開口部がコンポーネントの任意の外部表面上に位置設定され得ることも、明白である。コンポーネントは2つ以上の流路を含むことができるということもまた明白である。
【0029】
以下では、少なくとも1つの内部流路を有するコンポーネントを製造するための発明力ある方法の第1の好ましい実施形態について記述する。
【0030】
第1のステップでは、コア要素が製造される。
図2aは、キャビティ11を有するコア要素10を示している。コア要素10は、金属材料の中実ブロックから製造され、任意の適切な形態またはサイズを有することができる。コア要素の材料は、任意の金属材料、例えばNi合金、Co合金、Ti合金、Cu合金、またはFe合金または工具鋼または炭素鋼またはハドフィールドタイプの鋼またはステンレス鋼、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、クロム鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼またはその混合物といった材料のいずれかであり得る。コア要素は、鍛造、圧延、鋳造、フリーフォーミングまたは焼結などの任意の好適な方法によって製造されてよい。しかしながら、以下で説明する理由により、コア要素の材料は気密でなければならない。すなわちそれは閉鎖気孔を有していなければならない。こうして、コア要素は気孔を含んでいてよいものの、これらの気孔は相互連結されていなくてよいことが意図される。典型的には、コア要素は6%未満の気孔率を有しているべきである。本実施形態において、コア要素10は、鍛造炭素鋼から製造されている。
【0031】
コア要素10内には少なくとも1つのキャビティ11が形成される。キャビティは、ドリル加工、フライス加工、切削加工、旋削加工、放電加工および動力プレス加工とそれに続く焼結などの任意の好適な方法によって形成されてよい。本実施形態において(
図2a参照)、キャビティ11は、その上部表面16からその下部表面13までコア要素を通ってドリル加工されている2つの垂直なボア17、19を含む。ボア17、19はこうしてコア要素の上部表面16内の2つの上部開口部14、18からコア要素の下部表面13上の2つの下部開口部21、22まで延在する。キャビティ11はさらに、ボア17および19の下部開口部21、22で開始し終了する円形溝20を含む。
図2b参照。円形溝20は、コア要素の下部表面13内にフライス加工されており、したがって溝は下部表面13で開放している。こうして、開口部12が溝20の全長にわたり延在する。
図2cは、溝20の開口部12が下部表面13内に見えるコア要素の長手方向断面を示す。同様に見えるのは、コア要素を通る垂直方向のボア17とその上部および下部開口部14、21である。
【0032】
第2のステップでは、カバー要素が提供される。カバー要素は、コア要素内でのキャビティの形成ステップ中に発生するコア要素内の開口部を被覆するために採用されており、こうして、閉鎖断面をもつ連続流路がコア要素内で達成されるようになっている。コア要素が複数のキャビティを含む場合、複数のカバー要素が提供されることは明白である。
【0033】
カバー要素は、任意の金属材料から、任意の好適な方法で製造されてよい。例えば、条片または棒材料から切り取ることができ、鍛造要素、機械加工体、金属粉末焼結体またはフリーフォーミング体であり得る。ただし、カバー要素は気密であり、例えば閉鎖気孔を有するものである必要がある。好ましくはカバー要素は、Ni合金、Co合金、Ti合金、Cu合金、またはFe合金または工具鋼または炭素鋼またはハドフィールドタイプの鋼またはステンレス鋼、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、クロム鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼または二相ステンレス鋼またはその混合物という材料のいずれかから製造される。カバー要素は任意の好適な形状を有することができ、例えばそれは、平坦なプレートであってもよいし、あるいはブロック形状を有していてよい。その物理的寸法、例えばその幅および厚みは、最終コンポーネントの強度要件およびコンポーネント製造中のプロセス状況により左右される。コア要素内の1つまたは複数の開口部を共に被覆する複数のカバー要素区分を提供することも同様に可能である。これに伴う利点は、コア要素内の複雑な形状をもつ開口部を容易に被覆できるということにある。カバー要素区分の使用はさらに、コア要素を複雑な形状へと機械加工するのにかかる時間を短縮する。
【0034】
図3aは、部分的に円形の形状を有し、炭素鋼条片から製造されるカバー要素30を示す。こうして、カバー要素30は、
図2bに示されているコア要素10内の溝20の開口部12を被覆するために採用される。
図3aはさらに、カバー要素30が複数のカバー要素区分31を含んでいてよいことを表わしている。
【0035】
図3bは、カバー要素30が気密接合されているコア要素10の断面図である。
図3bはさらに、コア要素の下部表面13内の溝20および開口部12、ならびに、コア要素の上部表面内の開口部14とコア要素の下部表面内の開口部21の間で延在するボア17を示す。カバー要素30は、第1の表面33と第2の表面34を有し、コア要素10の下部表面13内の開口部12上に位置づけされる。カバー要素30は、カバー要素30の第1の表面33の一部分が、開口部12の各々の側でコア要素10の表面13の一部分と直接金属接触状態となるような形で位置づけされる。こうして、カバー要素30は、コア要素内のボア17、19の下部開口部21、22および溝20を完全に被覆するような形で位置づけされる。こうして、コア要素内に閉鎖断面をもつ連続的流路11が達成される。連続的流路は、コア要素の上部表面16上の開口部14、18の間に延在する。
図3bはコア要素13の断面図であることから、ボア17と開口部14および21のみが見える。
【0036】
カバー要素30は、コア要素に気密接合される。これは、コア要素の表面13に対してカバー要素を溶接することで達成されてよい。
図3cとは、
図3b内の丸で囲まれた部域の拡大部分を示す。
図3では、コア要素10の表面13とカバー要素30の間の境界内に具備されている気密性接合部37、例えば溶接ビードが見える。気密性溶接ビードは、カバー要素の全周にわたり具備される。
【0037】
カバー要素30が複数のカバー要素区分を含む場合、カバー要素区分は互いに対しておよびコア要素に対して気密接合される。これは、任意の好適な順序で、例えば最初に区分をコア要素に接合してその後互いに接合するといった順序で実施されてよい。
【0038】
さらなるステップでは、少なくともコンポーネントの形状を画定しかつコア要素とカバー要素のアセンブリを少なくとも部分的に取り囲む型枠が提供される。
【0039】
本実施形態において(
図4参照)、型枠は、最終コンポーネントの形状、すなわちコンポーネントの外部輪郭を画定するカプセル50である。カプセルは、底面壁52と4つの側壁を含み、そのうち側壁53および55が見える。カプセルはさらに、コア要素内のキャビティ11内に気体を取込むための開口部51が内部に具備されたカバー54を含む。カプセルは、金属シート、例えば軟鋼板から製造され、これらは共に溶接される。
【0040】
コア要素10の上部側16にある開口部14および18の少なくとも1つは、カプセル50内の気体入口51に連結されている。コア要素内の開口部はこうして、例えばコア要素と型枠の間の溶接などにより型枠内の開口部に気密接合されている。
図4は、入口51に連結されている開口部14のみを示す。これにより気体は、後続する静水圧下での加熱ステップ中に、コア要素10内のキャビティ11の中に入ることができる。したがって、キャビティは、カプセル上およびコア要素上に作用しているものと同じ静水圧まで加圧されることから、キャビティ11が加熱ステップ中に変形することはない。
【0041】
本発明によると、コア要素13は、空隙70すなわち空間がカプセル10とコア要素の表面13の間に作り出されるような形で設計されカプセル内に配置される(
図4参照)。空隙70は、カバー要素30がある位置に作り出される。
【0042】
コア要素および/またはカプセルは同様に、カプセルの壁とコア要素の間にさらなる空隙が作り出されるような形で配置されてもよい。
図4は、コア要素とカプセルの側壁53の間の空隙80を示す。
【0043】
カプセルには、金属充填材料が充填される。カプセルの充填中、カプセル内の全ての空隙に金属材料が充填される。
図5は、金属材料が充填されているカプセル50を示す。本実施形態において、カプセル50内に充填される金属材料は、粒度が1〜500μmの金属粉末60である。金属充填材料は、任意の金属材料であり得ると考えられる。異なる空隙に異なるタイプの金属材料を充填することができる。例えば、空隙80に、Co系合金、Ni系合金、高速鋼またはMMCなどの耐摩耗合金を充填してコンポーネントの露呈部域内の耐摩耗性を提供できると考えられる。
【0044】
空隙70を充填することにより、コア要素の表面13およびカバー要素30は金属充填材料で被覆される。したがって、最終コンポーネント内で、少なくともカバー要素そして好ましくはコア要素も同様に、最終コンポーネントの外側部分を構成する高密度金属材料層により被覆され、この層に金属結合される。こうして、カバー要素およびコア要素の少なくとも一部分は、最終コンポーネント内に組込まれることになる。
【0045】
カプセル内のコア要素およびカバー要素の位置に応じて、カプセルの充填ステップは、組立てられたコア要素とカバー要素をカプセル内に位置づけする前に、またはアセンブリをカプセル内に位置づけした後に実施されてよい。同様に、最初にカプセルを部分的に充填し、その時点でコア要素をカプセル内に配置し、その後にカプセルを完全に充填することも可能である。
【0046】
さらなるステップにおいて、カプセル、コア要素、カバー要素および充填材料は、コア要素、カバー要素および充填材料の間に金属結合が達成されるような形で、既定の温度および既定の圧力で既定の時間、加熱される。
【0047】
こうして、カプセルは、通常HIPチャンバと呼ばれる加熱可能な圧力チャンバの中に入れられる。加熱チャンバは、気体、典型的にはアルゴンで加圧され、この気体は、500バールを超える静水圧までチャンバ内に圧送される。チャンバは、カプセル内の金属材料の融点より低い温度、例えば、最低の融点をもつ材料の融点またはカプセル内で材料間の反応により形成し得る任意の相の融点より50〜500℃低い温度まで加熱される。典型的には、カプセルは、コンポーネントのサイズおよび使用材料に応じて1〜3時間加熱される。
【0048】
上述の通り、コア要素10内のキャビティ11は、それが圧潰するのを防ぐため、加熱中加圧される。例えばカバー要素とコア要素間の境界を通ってキャビティ11から金属充填材料内に気体が全く漏出しないことが重要である。キャビティ11から金属充填材料内またはカプセル内の他の金属要素の境界内に漏出した場合、金属充填材料の粒子または細片の間に気体の薄膜が形成し、これらの粒子または細片が金属結合を形成するのを防げる。したがって、カバー要素はコア要素に対し気密接合されなければならない。
【0049】
同じ理由で、コア要素およびカバー要素の材料が開放気孔を含まないこと、すなわち気体が内部を通って漏出し得る相互連結している気孔を含まないことが重要である。
【0050】
加熱ステップに先立ち、例えば空気などの全ての気体残渣がカプセルから確実に除去されるように、カプセル内に真空を引き込んでもよい。キャビティとHIPチャンバ内の雰囲気とを連結する開口部51を除く全ての開口部が、その後封止される。
【0051】
高圧高温のため、コア要素、カバー要素および充填材料は可塑変形し、さまざまな拡散プロセスを通して高密度の密着した製造品の形に金属結合する。金属結合中、金属表面は、酸化物、介在物または他の汚染物質などの欠陥の無い界面を伴って共に完璧に結合する。したがって、共に金属結合された2つの金属要素は一体型本体を形成する。
【0052】
次にカプセル10は冷却させられ、必要な場合にはその後完成したコンポーネントから剥ぎ取られる。
【0053】
以下に記すのは、記載されている本発明のいくつかのさらなる実施形態および変形形態である。
【0054】
図6は、コアとカプセルの間の空隙に金属片が充填されている一変形形態を示す。他の部分および詳細は、最初に記載した実施形態の場合と同じである。
【0055】
これに関連して「金属片」というのは、以上で言及した粉末粒子よりも実質的に大きい金属材料片であることが意図されている。この細片は、カプセルと組立てられたコアおよびカバー要素との間の空隙に充填するのに好適である任意の形状およびサイズを有し得る。金属片は、コア要素に関して記載したものと同じ方法を用いて同じ材料から製造されてよい。
【0056】
図7は、コンポーネントの形状を部分的に画定する型枠50がコア要素10に対し気密接合されている一変形形態を示す。型枠50は、4つの側壁を含み、そのうち、側壁53および55が見える。型枠50は、さらにカバー54を含む。側壁は、型枠50がカバー要素およびコア要素を部分的にとり囲むような形で、型枠の底面壁を構成するコア要素10に対し気密に溶接される。したがって、最終コンポーネントの形状は、型枠50とコア要素10を合わせたものによって画定される。この実施形態の利点は、共に形成され溶接される必要のあるシート材料が少なくて済むという点にある。こうしてHIPの間に潜在的な漏出を構成し得る溶接および接合部の数は削減される。この場合、コア要素中のキャビティ11は、
図7に見ることができるように、加熱チャンバ内の雰囲気に直接開放している。しかしながら、型枠50は、同様に、キャビティがHIP中に加圧されるような形でコア要素内のキャビティに連結されている出口も含み得ると考えられる。この変形形態の他の部分および詳細は、最初に記述した実施形態の場合と同じである。
【0057】
図8は、第1のコア要素10および第2のコア要素23がカプセル50内に配置されている一変形形態を示している。コア要素10および23は、互いに金属接触状態に配置され気密に溶接されている。コア要素10はキャビティ11を含み、コア要素14はキャビティ15を含む。コア要素10、23は、キャビティ11および15が連通状態になるような形で配置される。コア要素10および23は、異なる材料から製造されてよい。この場合、コア要素10はステンレス鋼から製造され、コア要素23は炭素鋼から製造される。ステンレス鋼コア要素10は、コンポーネントの露出部域で耐腐食性を提供する。こうしてコンポーネントの耐用年数は延長される。さらにコンポーネントの実質的部分が低コストの炭素鋼から製造されることから、コンポーネントは費用効率が良い。この変形形態の他の部分および詳細は、最初に記述した実施形態の場合と同一である。
【0058】
要素10または14に隣接してさらなるコア要素、例えば炭素鋼金属充填材料(
図8には図示せず)からの炭素の拡散の危険性を最小限におさえるステンレス鋼またはNi合金のコア要素を配置することも同様に可能である。第1および第2のコア要素の間の合金要素の拡散を防ぐために第1のコア要素と第2のコア要素の間に第3のコア要素を配置することも同様に可能である(図示せず)。
【0059】
コンポーネント内の冷却効率を改善するために、冷却フィンをキャビティ11内および/またはカバー要素20上、すなわちキャビティ11に面する側に形成することができる。
図9は、キャビティ11内に形成された2つの冷却フィン24とカバー要素30内に形成された冷却フィン35とを概略的に示している。キャビティの表面を粗化すること、例えばグリットでブラスティングすることによって、キャビティ11内を流れる冷却液の乱流を増大させることも同様に可能である(
図7には示さず)。乱流の増加は、冷却効果を増大させる。流路の表面内に形成された横方向の溝または窪みにより流路内の乱流を増大させることも同様に可能である。
【0060】
本明細書中では特定の実施形態が詳細に開示されてきたが、これは例示を目的としてのことにすぎず、添付のクレームに対する限定的意図をもつものではない。開示された実施形態および変形形態を組合せることも可能である。詳細には、発明人らは、クレームにより定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対しさまざまな置換、改変および修正を加えることができることを企図している。例えば、
図7を参照して記述した部分的型枠を、
図8の下で記述した2つのコア要素のまわりに配置できると考えられる。金属充填材料に関しては、例えば、金属粉末と金属充填材料の混合物を1つまたは複数の空隙に充填することが可能である。