(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バランは、外部電流をキャンセルまたはチョークすることによって不平衡信号を平衡信号に変換するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の平衡アンテナシステム。
前記バランは、電流バラン、同軸バランまたはスリーブバランのうちのいずれかを含み、および/または前記バランは、インピーダンス変換のために構成される、広帯域LCバランによって構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の平衡アンテナシステム。
前記バランは、第1のフィルタと第2のフィルタとを含み、随意に、第1のインピーダンス整合回路は、前記第1のフィルタと第1の放射素子との間に設けられ、第2のインピーダンス整合回路は、前記第2のフィルタと第2の放射素子との間に設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の平衡アンテナシステム。
前記バランは、(a)前記第1のフィルタを構成するハイパスフィルタと、前記第2のフィルタを構成するローパスフィルタと、T結合とを含み、または(b)並列に接続される、前記第1のフィルタを構成するハイパスフィルタと、前記第2のフィルタを構成するバンドパスフィルタとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の平衡アンテナシステム。
前記ハイパスフィルタおよび/または前記ロー/バンドパスフィルタは、1または複数のインダクタまたはキャパシタをそれぞれ含むことを特徴とする、請求項5に記載の平衡アンテナシステム。
前記ハイパスフィルタは、1つまたは直列接続された複数のキャパシタと、1つまたは並列接続された複数のインダクタとを含み、あるいは1つまたは直列接続された複数のキャパシタを含み、インダクタを含まず、
前記ローパスフィルタは、1つまたは直列接続された複数のインダクタと、1つまたは並列接続された複数のキャパシタとを含み、あるいは1つまたは直列接続された複数のインダクタを含み、キャパシタを含まず、
好ましくは、前記ハイパスフィルタは、1つのインダクタと1つのキャパシタとを含み、前記バンドパスフィルタは、複数のインダクタと複数のキャパシタとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の平衡アンテナシステム。
第2のハイパスフィルタおよび/または第2のローパスフィルタが設けられ、随意に、少なくとも1つのスイッチが、前記第2のハイパスフィルタおよび/または前記第2のローパスフィルタを、前記ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタのそれぞれに代えて動作させるのを可能にするように設けられることを特徴とする、請求項5に記載の平衡アンテナシステム。
前記第2のハイパスフィルタおよび/または前記第2のローパスフィルタは、LC回路を含み、前記第2のハイパスフィルタは、直列接続された3つのキャパシタと、並列接続された2つのインダクタとを含み、前記第2のローパスフィルタは、直列接続された3つのインダクタと、並列接続された2つのキャパシタとを含むことを特徴とする、請求項8に記載の平衡アンテナシステム。
前記第1および/または第2の整合回路は、前記第1および/または第2の放射素子のそれぞれを異なる周波数で同調させることを可能にするように再構成可能であり、随意に、前記第1および/または第2の整合回路は、可変キャパシタを含むLC回路を含み、または前記第1および/または第2の整合回路は、第1のインダクタと、キャパシタと、第2のインダクタとを含み、前記第1のインダクタは前記キャパシタと並列に接続され、前記第2のインダクタは前記キャパシタと直列に接続され、前記第1のインダクタはグランドプレーンに接続され、前記キャパシタは同調可能であることを特徴とする、請求項1に記載の平衡アンテナシステム。
少なくとも1つの代替部品が、前記第1および/または第2の整合回路に含まれるように設けられ、少なくとも1つのスイッチが、前記少なくとも1つの代替部品を他の部品に代えて動作させるのを可能にするように設けられることを特徴とする、請求項10に記載の平衡アンテナシステム。
前記第1の放射素子は、略U字状に形成され、基板の第1の端部において、基板の第1の側面に設けられる、第1のストリップによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の平衡アンテナシステム。
前記U字状のストリップは、前記基板の第1の端部の半分に位置され、その開放端面が前記第1の端部の中央領域に向かって内方に臨むように配向され、随意に、給電ラインが、前記基板の中央に最も近接し、前記基板の長さに沿って延びる前記U字状のストリップの始点に設けられることを特徴とする、請求項12に記載の平衡アンテナシステム。
前記第2の放射素子は、前記第1の放射素子に実質的に類似しており、前記基板の第1の側面にも設けられるが、前記第1の放射素子とは反対側の、前記基板の第1の端部の隣接する半分に、前記第2のストリップの開放端が前記第1のストリップの開放端に臨むように、配向され、随意に、間隙が、前記第1および第2の放射素子の各給電ライン間と前記第1および第2のストリップの各端部間とに設けられることを特徴とする、請求項13に記載の平衡アンテナシステム。
グランドプレーンが、前記第1の側面とは反対側の、前記基板の第2の側面に設けられることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の平衡アンテナシステム。
請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの平衡アンテナシステムと、少なくとも1つのさらなるアンテナとを含み、随意に、前記少なくとも1つのさらなるアンテナは、平衡または不平衡アンテナからなり、再構成可能であることを特徴とするMIMO用途のためのアンテナ構造体。
第1のアンテナが該アンテナ構造体の第1の端部に配置され、第2のアンテナが該アンテナ構造体の第2の端部に配置されることを特徴とする、請求項16に記載のアンテナ構造体。
前記少なくとも1つのさらなるアンテナは、2つ以上の相互に結合された放射素子と、各放射素子の周波数帯域の独立した同調のために構成された2つ以上のインピーダンス整合回路とを含み、各放射素子が、駆動状態、フローティング状態およびグランド状態のそれぞれにおいて選択的に動作するように設けられる、再構成可能アンテナによって構成されることを特徴とする、請求項16または17に記載のアンテナ構造体。
前記平衡アンテナシステムは、該アンテナ構造体のグランドプレーンにスロットを設けることによって、前記さらなるアンテナから分離されることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項に記載のアンテナ構造体。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、整合回路を介してバランに接続された放射器を含む平衡アンテナシステムが提供される。
【0009】
したがって、本発明の実施形態は、簡単な構成を有し、異なる周波数の範囲にわたって単一共振で動作可能である平衡アンテナシステムを提供する。整合回路がバランと放射器との間に組み込まれることは、より大きな適応性と放射器の制御とを可能にし、より大きな同調能力をもたらす。
【0010】
放射器は、ループアンテナまたはダイポールアンテナによって構成されてもよく、第1の給電ラインと第2の給電ラインとを含んでもよい。ある実施形態において、放射器は、第1の放射素子と第2の放射素子とを含んでもよい。放射器は、単一の共振周波数を提供するように構成されてもよく、または2つまたは3以上の共振周波数を同時に提供するように構成されてもよい。したがって、単一のアンテナシステムを幅広い周波数範囲をカバーするように構成することができる。
【0011】
整合回路は、第1のインピーダンス整合回路と、第2のインピーダンス整合回路とを含んでもよい。第1のインピーダンス整合回路は、第1の給電ラインおよび/または第1の放射素子に接続されてもよく、第2のインピーダンス整合回路は、第2の給電ラインおよび/または第2の放射素子に接続されてもよい。
【0012】
第1および第2の整合回路は同一であってもよく、バランを介して単一のポートに接続されてもよい。部品数を最小にするために、整合回路およびバランの設計は共に最適化されてもよい。
【0013】
従来の再構成可能な平衡アンテナは、平衡放射素子の各アームにバラクタまたはスイッチを組み込んでいたことに注目されたい。一方、提案した平衡アンテナは、各放射素子に1つずつ設けられる、2つの同一の外部整合回路と、バラン回路とを組み込んでもよく、これはこれまでに文献において提案されていなかった。
【0014】
バランは、外部電流をキャンセルまたはチョークすることによって不平衡信号を平衡信号に変換するように構成されてもよい。バランのいくつかのタイプは、ダイポールアンテナでの使用で知られている。これらは、いわゆる電流バラン、同軸バランおよびスリーブバランを含み、これらのいずれかは本発明の実施形態において用いられる。しかしながら、特定の実施形態において、平衡アンテナシステムに幅広い同調範囲を提供するように、インピーダンス変換のために構成される、広帯域LCバランを用いることが望ましい。
【0015】
バランは、第1のフィルタと第2のフィルタとを含んでもよい。第1のインピーダンス整合回路は、第1のフィルタと第1の放射素子との間に設けられてもよく、第2のインピーダンス整合回路は、第2のフィルタと第2の放射素子との間に設けられてもよい。
【0016】
具体的な実施形態において、バランは、ハイパスフィルタ(第1のフィルタ)と、ローパスフィルタ(第2のフィルタ)と、T結合とを含んでもよい。代替の実施形態において、バランは、並列に接続される、ハイパスフィルタ(第1のフィルタ)とバンドパスフィルタ(第2のフィルタ)とを含んでもよい。
【0017】
第1のフィルタは、少なくとも1つのキャパシタを含んでもよく、第2のフィルタは、少なくとも1つのインダクタを含んでもよい。
【0018】
ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタは、それぞれ、1つまたは複数のインダクタあるいはキャパシタを(たとえば、LC回路の形態で)含んでもよい。ある実施形態において、ハイパスフィルタは、1つまたは直列接続された複数(たとえば3つ)のキャパシタと、0、1つまたは並列接続された複数(たとえば2つ)のインダクタとを含んでもよく、ローパスフィルタは、1つまたは直列接続された複数(たとえば3つ)のインダクタと、0、1つまたは並列接続された複数(たとえば2つ)のキャパシタとを含んでもよい。代替の実施形態において、ハイパスフィルタは、インダクタとキャパシタとを含んでもよく、バンドパスフィルタは、複数のインダクタと複数のキャパシタとを含んでもよい。第1のフィルタと第2のフィルタとは、並列に接続されてもよい。
【0019】
あるバラン構造において、第1および第2のフィルタのそれぞれにおける部品数は、次数の大きさに対応してもよく、フィルタにおいてより大きな次数はより広い帯域幅に位相差を与える。特定の構成において、バランは、1つ、2つまたはそれ以上(たとえば5つ)の次数を有するフィルタを含んでもよい(すなわち、それぞれが1つ、2つまたはそれ以上の部品を含む)。しかしながら、出願人は、本発明のある実施形態において、バラン自体の性能はあまり重要ではなく、フィルタにおいて1つのインダクタ(またはキャパシタ)を単に用いることで十分であり得ることを見出した。
【0020】
本発明のある実施形態において、少なくとも1つの代替部品が、第1のフィルタおよび/または第2のフィルタに含まれるように設けられてもよい。少なくとも1つのスイッチが、少なくとも1つの代替部品を他の部品に代えて動作させるのを可能にするように設けられてもよい。
【0021】
本発明のある実施形態において、第2のハイパスフィルタおよび/または第2のローパスフィルタが設けられてもよい。少なくとも1つのスイッチが、第2のハイパスフィルタおよび/または第2のローパスフィルタを、ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタのそれぞれに代えて動作させるのを可能にするように設けられてもよい。
【0022】
第2のハイパスフィルタおよび/または第2のローパスフィルタは、1つまたは複数のインダクタまたはキャパシタを(たとえば、LC回路の形態で)含んでもよい。たとえば、第2のハイパスフィルタは、直列接続された3つのキャパシタと、並列接続された2つのインダクタとを含んでもよく、第2のローパスフィルタは、直列接続された3つのインダクタと、並列接続された2つのキャパシタとを含んでもよい。しかしながら、第2のハイパスフィルタは、前記ハイパスフィルタとは異なる少なくとも1つの部品を有し、第2のローパスフィルタは、前記ローパスフィルタとは異なる少なくとも1つの部品を有するであろうことは理解されるであろう。ある実施形態において、第2のハイパスフィルタはの全ての部品は、前記ハイパスフィルタの部品と異なっており、かつ/または、第2のローパスフィルタの全ての部品は、前記ローパスフィルタの部品と異なっている。
【0023】
第1および/または第2の整合回路は、第1および/または第2の放射素子のそれぞれを異なる周波数で同調させることを可能にするように再構成可能であってもよい。第1および/または第2の整合回路は1つまたは複数のインダクタまたはキャパシタを(たとえばLC回路の形態で)含んでもよく、可変キャパシタ(すなわちバラクタ)を含んでもよい。
【0024】
本発明の実施形態において、第1および第2の整合回路は、構造的に同一(すなわち、同様に配置される同一部品を有する)であってもよい。異なる整合回路がある状況において用いられてもよいけれども、このような構成は非常に良好な共振を提供可能であることが理解されるであろう。
【0025】
特定の実施形態において、第1および/または第2の整合回路は、第1のインダクタと、キャパシタと、第2のインダクタとを含む。第1のインダクタはキャパシタと並列に接続されてもよく、第2のインダクタはキャパシタと直列に接続されてもよい。第1のインダクタはグランドプレーンに接続されてもよく、キャパシタは同調可能であってもよい。
【0026】
本発明のある実施形態において、少なくとも1つの代替部品が、第1および/または第2の整合回路に含まれるように設けられてもよい。少なくとも1つのスイッチが、少なくとも1つの代替部品を他の部品に代えて動作させるのを可能にするように設けられてもよい。
【0027】
ある実施形態において、第1のインダクタは少なくとも2つのインダクタからなる群から選択可能であってもよく、第2のインダクタは少なくとも2つの他のインダクタからなる群から選択可能であってもよい。
【0028】
バランおよび/または第1/第2の整合回路のために代替部品を設けることは、アンテナの構成におけるより大きな適応性を可能にし、したがって、アンテナの同調範囲を非常に増大させることを可能にする。
【0029】
第1の放射素子は、略U字状またはL字状に形成され、基板(たとえばプリント配線基板、PCB)の第1の端部において、基板の第1の側面に設けられる、第1のストリップ(たとえば金属製)によって構成されてもよい。U字状またはL字状のストリップは、基板の第1の端部の半分に位置されてもよく、その開放端/面が第1の端部の中央領域に向かって内方に臨むように配向されてもよい。短い給電ラインが基板の中央に最も近接し、基板の長さに沿って延びるU字状またはL字状のストリップの始点に設けられてもよい。
【0030】
第2の放射素子は、第1の放射素子に実質的に類似していてもよく、基板の第1の側面にも設けられるが、第1の放射素子とは反対側の、基板の第1の端部の隣接する半分に、第2のストリップの開放端/面が第1のストリップの開放端/面に臨むように、配向されてもよい。
【0031】
間隙が第1および第2の放射素子の各給電ライン間と第1および第2のストリップの各端部間とに設けられてもよい。
【0032】
グランドプレーンが、第1の側面とは反対側の、基板の第2の側面に設けられてもよい。グランドプレーンは、実質的に矩形であってもよく、(第1の端部とは反対側の)基板の第2の端部から、給電ラインの自由端に対向する位置まで、基板表面の略全面を占めてもよい。
【0033】
基板は従来のサイズのものであってもよく、一実施形態において、従来の携帯装置に容易に収容可能なように、約166×40mm
2の表面積を有してもよい。基板の厚みは限定されないが、典型的には、数ミリメートルの厚み(たとえば1mm、1.5mm、2mmまたは2.5mm)であることは理解されるであろう。
【0034】
本発明の実施形態において、第1および第2の放射素子は、約40×10mm
2の領域にわたって延びていてもよい。放射器のサイズは限定されないが、より広い動作帯域幅またはより高い利得が要求されるときには、大きくすることができることは理解されるであろう。
【0035】
本発明の実施形態において、アンテナが470MHz〜2200MHzの周波数範囲にわたって、動作帯域にわたって少なくとも6dBの反射損失で動作(すなわち1730MHzにわたって同調)するように設計されたことは実証された。
【0036】
平衡アンテナシステムは、マルチプルインプット・マルチプルアウトプット(MIMO)用途のために構成されてもよい。したがって、平衡アンテナシステムは、多数のアンテナを有するシステムに組み込まれてもよい。各アンテナは、平衡または不平衡であってもよく、追加のスペクトルまたは送信器電力を必要とすることなく、システムの能力を増大させるように、無相関チャネルを提供するように構成されてもよい。
【0037】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様に従う、少なくとも1つの平衡アンテナシステムと、少なくとも1つのさらなるアンテナとを含むMIMO用途のためのアンテナ構造体が提供される。
【0038】
少なくとも1つのさらなるアンテナは、平衡または不平衡アンテナからなってもよく、再構成可能であってもよい。一実施形態において、少なくとも1つのさらなるアンテナは、本発明の第1の態様に従っていてもよい。
【0039】
各アンテナの相対位置は、良好な(または最適な)アンテナアイソレーションを提供するように選ばれてもよい。いくつかの実施形態において、これは、アンテナを最大可能距離(the largest available distance)だけ相互に離間させることによって得られてもよい。実際には、第1のアンテナが該アンテナ構造体の第1の端部に配置されてもよく、第2のアンテナが該アンテナ構造体の第2の端部に配置されてもよい。
【0040】
本発明の実施形態において、第1および第2のアンテナは、少なくとも200mm、少なくとも150mm、少なくとも100mm、または少なくとも50mmだけ離間されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、平衡アンテナシステムは、アンテナ構造体のグランドプレーンにスロットを設けることによって、さらなるアンテナから分離されてもよい。
【0042】
さらなるアンテナの随意的特徴
特定の実施形態において、少なくとも1つのさらなるアンテナは、GB0918477.1に記載された種類の2ポート筐体アンテナによって構成されてもよい。したがって、さらなるアンテナは2つ以上の相互に結合された放射素子と、各放射素子の周波数帯域の独立した同調のために構成された2つ以上のインピーダンス整合回路とを含み、各放射素子が、駆動状態、フローティング状態およびグランド状態のそれぞれにおいて選択的に動作するように設けられる、再構成可能アンテナであってもよい。
【0043】
さらなるアンテナの少なくとも1つの放射素子は、非共振共振器によって構成されてもよい。特定の実施形態において、2つの非共振共振器が用いられる。各放射素子は、広帯域および/または狭帯域範囲の周波数にわたって動作するように構成されてもよい。特定の実施形態において、各インピーダンス整合回路は広帯域同調回路と狭帯域同調回路とを含んでもよい。
【0044】
一実施形態において、さらなるアンテナは、第1の側面に印刷されたブランドプレーンを有する基板上に設けられる。第1の放射素子は、第1の側面とは反対側の、基板の第2の側面に設けられ、グランドプレーンから側方に離間されてもよい。第1の放射素子は、金属パッチによって構成されてもよく、該パッチは平面状などであってもよい。具体的な実施形態において、第1の放射素子は、平面部とグランドプレーンに直交する部分とを有する、L字状の金属パッチによって構成されてもよい。直交部分は、直交部分がいわゆる第1の間隙によってグランドプレーンから離間されるように、グランドプレーンから最も遠い平面部の縁から延びてもよい。
【0045】
第2の放射素子は、金属パッチによって構成されてもよく、該パッチは平面状などであってもよい。特定の実施形態において、第2の放射素子は、グランドプレーンに直交する平面状金属パッチによって構成される。第2の放射素子は、グランドプレーンと第1の放射素子の直交部分との間(すなわち第1の間隙内)に配置されてもよい。グランドプレーンと第2の放射素子との間の距離は、いわゆる第2の間隙を形成する。本実施形態において、第2の放射素子と第1の放射素子の直交部分との間の距離はその間の相互結合の量を決定することが理解されるであろう。したがって、この距離は、全体にわたって、相互間隙と称するであろう。
【0046】
各放射素子の形状は特に限定されないが、たとえば、正方形状、長方形状、三角形状、円状、楕円状、環状、星形状または不規則形状であってもよい。さらに、各放射素子は、少なくとも1つのノッチまたは切欠きを含んでもよい。各放射素子の形状および構成は、問題となっている用途に対するさらなるアンテナの所望の特性に依存することは理解されるであろう。
【0047】
同様に、グランドプレーンのサイズおよび形状は、全ての動作モードに対する最適な特性を提供するように変化されてもよい。したがって、第1のグランドプレーンは、たとえば、正方形状、長方形状、三角形状、円状、楕円状、環状または不規則形状であってもよい。さらに、グランドプレーンは、少なくとも1つのノッチまたは切欠きを含んでもよい。
【0048】
さらなるアンテナの各放射素子は、関連する給電ポートを有してもよい。各給電ポートは、関連する放射素子の動作状態を選択する制御手段を含む制御モジュールに接続されてもよい。制御手段は、放射素子を、フロートさせる、グランドプレーンに接続させる、またはその関連するインピーダンス整合回路によって駆動させるように選択的に構成されるスイッチを含んでもよい。
【0049】
上述の実施形態において、第1の給電ポートは、第1の放射素子と第1のインピーダンス整合回路を有する第1の制御モジュールとの間に設けられてもよく、第2の給電ポートは、第2の放射素子と第2のインピーダンス整合回路を有する第2の制御モジュールとの間に設けられてもよい。
【0050】
第1の給電ポートは放射素子の中心に、または中心を外れて(すなわち、他方側よりも放射素子の一方側により近くに)位置付けられてもよい。
【0051】
具体的な実施形態において、第1の給電ポートは、第1の放射素子の長さに沿う距離の約3分の1の位置に配置されてもよい。これは、非対称電流をグランドプレーンに沿って発生させて、これによって多くの異なる共振をサポートするという点で有利である。また、各方向において異なる電気長を有するために、第1の放射素子がより多くの共振を発生させることが可能となる。加えて、第1の給電ポートを中心から外れて位置付けることによって、第2の放射素子のためのより多くの空間を第1の放射素子に近づけて位置付けることを可能にし、これによって、2つの放射素子間でより良好な結合を結果として生じる。
【0052】
第1の給電ポートは、グランドプレーンにその縁にそって接続されてもよい。第1の給電ポートは、縁の中心で、またはその一方側であるいはその一方側に向かって接続されてもよい。第1の給電ポートがグランドプレーンの一方側に接続されることによって、第2の放射素子がグランドプレーンの幅を完全に用いることを可能にする。しかしながら、それは、また、放射素子とグランドプレーンとの間での異なる結合効率を結果として生じる。
【0053】
ある実施形態において、第2の給電ポートは第1の給電ポートに近接して配置される。これは、各給電ポートが、独立して動作(オン)、または隣接する給電ポートへのドライバとして動作(グランド)、または電気的に切断(オフ)することを可能にする。したがって、各放射素子に関して、異なる動作モードを選択することによって、各放射素子の動作周波数を動的に同調することができる。以下の表は、第1の給電ポート(給電ポート1)と第2の給電ポート(給電ポート2)に対する上述の状態の組み合わせを選択することに基づいて、いくつかの可能性のある動作状態を提供する。
【0055】
モード1およびモード2は第1の放射素子および第2の放射素子の動作モードをそれぞれ示していることが理解されるであろう。したがって、給電ポートがオンであるとき、関連する放射素子は対応するインピーダンス整合回路によってサポートされる周波数で共振する駆動(または給電)アンテナとして機能する。給電ポートがオフである(すなわち、電気的に切断される)とき、関連する放射素子はフロートする(すなわち任意のサポートされた周波数で共振する)ことが許容される。給電ポートがグランドであるとき、関連する放射素子は、寄生素子(すなわち、特定の周波数で共振し、他の放射素子がその周波数をサポート「するのを効率よく妨げる)として機能する。したがって、本発明の実施形態が従来のアンテナ設計を超えて増大した同調性を可能にする動作モードの種々のセットを可能にすることが理解されるであろう。
【0056】
本発明の実施形態において、さらなるアンテナの第1の放射素子は、約0.4〜3GHzの同調範囲を有してもよく、さらなるアンテナの第2の放射素子は、約1.6〜3GHz(またはそれ以上)の同調範囲を有してもよい。
【0057】
単一の同調キャパシタが、さらなるアンテナの各放射素子を、各動作モードにおいて、同調するために利用されてもよい。単一の同調キャパシタは、バラクタダイオードによって構成されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、3つまたはそれ以上の放射素子が、さらなるアンテナの周波数同調アジリティをさらに増加させるために利用されてもよい。3番目またはそれ以降の放射素子は、先に規定した第1の間隙の内部に位置してもよい。3番目またはそれ以降の放射素子は、3GHzよりも高い周波数において動作するように構成されてもよい。
【0059】
前述のようにさらなるアンテナを利用することの利点は、当業者が、アンテナを、多数の動作周波数まで容易に構成することを可能にすることであると理解されるであろう。さらに、種々のインピーダンス整合回路構成が、さらなるアンテナをリスニングモードおよびアプリケーションモードの両方において動作させるために、容易に実装されることができる。したがって、前述のさらなるアンテナの設計は、幅広い周波数同調範囲または広帯域性能を提供することができる。しかしながら、それは、2つのポートが同じ周波数にあるとき2つのポート間に強い結合があるので、そのままで、MIMO性能を提供することができない。比較的低い周波数(たとえば、700MHz)においてさえ、シミュレーション結果は、結合がおよそゼロであることを示したが、携帯電話用途に適した製品のために、少なくとも−15dBの結合が好ましいことが知られている。
【0060】
したがって、MIMO用途に適する少なくとも2つの結合していない再構成可能なアンテナを提供するために、さらなるアンテナを、本発明の第1の態様の平衡アンテナシステムと組み合わせることが望ましい。シミュレーションは、本発明の第2の態様の実施形態によって、少なくとも−30.53dBのアイソレーションが達成され、したがって、そのような構造を、MIMO装置にとって、理想的なものにすることを示した。また、その結果は、当該アンテナ構造体が、幅広い同調可能範囲(すなわち、470MHz〜2200MHz)を提供することができ、DVB−H、GSM710、GSM850、GSM900、GPS1575、GSM1800、PCS1900、およびUMTS2100をカバーする移動式装置における使用の可能性を有することを示唆している。したがって、提案されたアンテナ構造体は、MIMO用途、特に、電話、ラップトップ、およびPDAなどの小型の端末携帯装置に対する、理想的な候補である。
【0061】
パラメータ研究は、本発明の実施形態に従う特定のアンテナ構造体の最適な構成を評価するために行われてもよいことが理解されるであろう。
添付の図面を参照して、本発明の実施形態が説明される。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1Aおよび
図1Bを参照すると、本発明の第1実施形態に従う平衡アンテナシステム10が示されている。平衡アンテナシステム10は、以下により詳細に述べるように、再構成可能であり、携帯電話、ラップトップコンピュータ、またはPDAなどの、携帯用製品における使用のために設計されている。
【0064】
平衡アンテナシステム10は、該システムが通常の携帯電話に容易に収容されるように、およそ16×40mm
2の表面積と、およそ1.15mmの厚みとを有するマイクロ波基板12(たとえば、プリント回路基板、PCB)上に設けられる。
【0065】
図1Aに示されるように、第1の放射素子14が、基板12の第1の側面16であって、基板の第1の端部18に設けられる。第1の放射素子14は、実質的にU字形状の第1のストリップ層20から形成され、該第1のストリップ層は、基板12の第1の端部18の半分に位置し、その開放端22が第1の端部18の中央領域に向かって内方に臨むように配向される。短い給電ライン24が、基板12の中心に最も近い、第1のストリップ20の始点に設けられ、基板12の長さに沿って延びる。
【0066】
また、第1の放射素子に実質的に類似する第2の放射素子26が、基板12の第1の側面16に設けられ、基板12の第1の端部18の隣接する半分に位置する。したがって、第2の放射素子26は、実質的にU字形状の第2のストリップ層28から形成され、該第2のストリップ層も、その開放端30が第1の端部18の中央領域に向かって内方に臨むように配向される。したがって、第2の放射素子26は、第1の放射素子14とは反対方向に配向される。再び、短い給電ライン32が、基板12の中心に最も近い、第2のストリップ28の始点に設けられ、基板12の長さに沿って延びる。
【0067】
間隙34が、第1および第2の放射素子14,26の各給電ライン24,32の間、および第1および第2のストリップ20,28の各端36の間に設けられる。したがって、第1および第2の放射素子14,26は、ダイポールアンテナ37を形成する。
図1Aに示された実施形態において、第1および第2の放射素子14,26は、およそ40×10mm
2の領域にわたって、一緒に延在する。
【0068】
図1Bに示されるように、グランドプレーン38が、基板12の第2の側面40上であって、第1の側面16の反対側に設けられる。グランドプレーン38は、実質的に、矩形であり、基板12の(第1の端部18の反対の)第2端42から給電ライン24,32の実質的に反対の位置まで、基板12表面の実質的に全体を占める。グランドプレーン38は、およそ100×40mm
2のサイズを有する。
【0069】
平衡アンテナシステム10は、バランおよび2つの整合回路であって、第1および第2の放射素子14,26に接続され、明瞭性の理由により
図1Aおよび
図1Bにおいては示されていないが、グランドプレーン40の反対側である基板12の第1の側面16に設けられる、バランおよび2つの整合回路を含む。
【0070】
適切なバラン50の一例が、LC回路図として
図2Aに示されている。この特定のバラン50は、広帯域構成を有し、実質的に、IizukaおよびWatanabeによって、特開2005−198167号公報に記載されている。したがって、バラン50は、T結合52への入力を形成する第1の(不平衡)ポートZ
uを含み、該T結合は、第1のポートZ
uにおいて受信した電気信号を、ハイパス54およびローパス56に分割するように構成される。ハイパス54は、第1のハイパスフィルタ(HPF)に供給するように配置され、ローパスは、第2のローパスフィルタ(LPF)に供給するように配置される。
【0071】
ハイパスフィルタ(HPF)は、L−C回路から構成され、該L―C回路は、直列に接続された3つのキャパシタC
H1,C
H2,C
H1、および前記キャパシタ間に設けられた各分岐から並列に接続された2つのインダクタL
H1,L
H1を有する。各インダクタL
H1は、グランドプレーン40に接続され、キャパシタC
H1,C
H2,C
H1からの出力は、インピーダンスZ
bHを構成する。
【0072】
ローパスフィルタ(LPF)は、LC回路から構成され、該LC回路は、直列に接続された3つのインダクタL
L1,L
L2,L
L1、および前記インダクタ間に設けられた各分岐から並列に接続された2つのキャパシタC
L1,C
L1を有する。各キャパシタC
L1は、グランドプレーン40に接続され、インダクタL
L1,L
L2,L
L1からの出力は、インピーダンスZ
bLを構成する。Z
bHおよびZ
bLは、協同して、平衡出力Z
bを形成する。
【0073】
図3に示されているように、本発明の本実施形態に従う平衡アンテナシステム10は、
図2に示されたバラン50であって、
図1Aに示された平衡ダイポールアンテナ37に給電するために用いられ、それらの間に設けられたインピーダンス整合回路60を有する、バラン50を含む。この図面において、入力ポート1が示されており、それは、バラン50の第1の(不平衡)ポートZ
uに給電して、平衡アンテナシステム10を駆動することに気付くであろう。より具体的には、バラン50からのインピーダンスZ
bHを有するハイパスフィルタは、ダイポールアンテナ37の整合回路60およびフィード1(すなわち、
図1Aの給電ライン24)に接続され、バラン50からのインピーダンスZ
bLを有するローパスフィルタは、ダイポールアンテナ37の整合回路60およびフィード2(すなわち、
図1Aの給電ライン32)に接続される。
【0074】
以下により詳細に説明するように、ダイポールアンテナ37とバラン50との間に整合回路を組込むことによって、システムは、再構成可能とされることができ、DVB−H、すべてのGSM、およびUMTS2100周波数帯域をカバーすることができる470MHz〜2200MHzの幅広い同調範囲を提供するために使用されることができる。
【0075】
図4は、本発明の実施形態において使用されることができる特定のインピーダンス整合回路の回路図を示す。この図面において、インピーダンスZ
bHを有するハイパスフィルタおよびインピーダンスZ
bLを有するローパスフィルタのための、バラン50からフィード1およびフィード2のそれぞれまでの経路が分離され、それによって、インピーダンス整合回路60が、第1の整合回路62および第2の整合回路64に分けられることに注目すべきである。この特定の実施形態において、第1および第2の整合回路62,64は同一であり、インピーダンス変換を平衡ダイポールアンテナ37の各レッグに提供するように構成される。
【0076】
より具体的には、第1および第2整合回路62,64は、各々、グランドプレーン40に平行に接続されたインダクタL
2、ならびに、直列に接続されたキャパシタC
1/C
2およびインダクタL
1を含む。キャパシタC
1/C
2は、第1および第2整合回路62,64のインピーダンスが、周波数の領域にわたって、アンテナ37を同調すべく調整されることを可能にするように、可変である。
【0077】
図4に示された実施形態は、周波数のある領域にわたる同調を可能にすることができるが、
図5に示されているような多重バラン構成および多重インピーダンス整合構成を、統合された同調回路70に含めることによって、より大きな同調範囲が達成される。この実施形態において、入力ポート1(不平衡給電ライン)が、回路70の左側に設けられ、該不平衡給電ラインは、バラン構成72を介して、2つの平衡給電ラインに変換される。ハイパスフィルタは、第1のインピーダンス整合回路74と、フィード1を介して、平衡ダイポールアンテナ37とに接続され、ローパスフィルタは、第2のインピーダンス整合回路76に接続され、フィード2を介して、平衡ダイポールアンテナ37に接続される。
【0078】
バラン構成72は、第1のハイパスフィルタ78、および第2のハイパスフィルタ80を含み、該第1および第2のハイパスフィルタは、構成において、
図2に関連して前述したハイパスフィルタに同一であるが、キャパシタおよびインダクタの各々については異なる値を有する。第1の(単極双投)スイッチ82が、第1または第2のハイパスフィルタ78,80のうちの常に利用されるべき1つを選択するために設けられる。また、第1のローパスフィルタ84、および第2のローパスフィルタ86が、設けられ、該第1および第2のローパスフィルタは、構成において、
図2に関連して前述したローパスフィルタに同一であるが、ふたたび、キャパシタおよびインダクタの各々については異なる値を有する。第2の(単極双投)スイッチ82が、第1または第2のローパスフィルタ84,86のうちの常に利用されるべき1つを選択するために設けられる。
【0079】
第1のインピーダンス整合回路74は、
図4に関連して前述した形式を有するが、インダクタとして並列に選択されることができる(L
2)3つの異なるインダクタ(L7,L8,L9)、およびインダクタとして直列に選択されることができる(L
1)さらなる3つの異なるインダクタ(L1,L2,L3)を含む。第1のインピーダンス整合回路74のための部品の、所望の組み合わせを作動させるために、種々のスイッチが提供される。上述のように、同調可能なキャパシタC
1(すなわち、バラクタ)が、インダクタの2つのセットの間に設けられる。同調可能なキャパシタC
1は、0.2pFから10pFまで同調されることができる。
【0080】
同様に、第2のインピーダンス整合回路76は、
図4に関連して前述した形式を有するが、インダクタとして並列に選択されることができる(L
2)3つの異なるインダクタ(L14,L15,L16)、およびインダクタとして直列に選択されることができる(L
1)さらなる3つの異なるインダクタ(L4,L5,L6)を含む。第2のインピーダンス整合回路76のための部品の、所望の組み合わせを作動させるために、種々のスイッチが提供される。前と同様に、同調可能なキャパシタC
2(すなわち、バラクタ)が、インダクタの2つのセットの間に設けられる。同調可能なキャパシタC
2は、0.2pFから10pFまで同調されることができる。
【0081】
図5に示された回路は、シミュレーションツール(CST Microwave Studio(登録商標))を用いて設計され、該シミュレーションツールにおいては、
図1Aおよび
図1Bのアンテナ構造体が過渡ソルバーを用いてシミュレーションされて、アンテナ応答を表す1−Port S−Parameterファイルが生成され、該ファイルは、整合回路を設計するための出発点として用いられた。第1および第2の整合回路74,76内部の部品の値は、文献の範囲内の標準的公式を用いて算出された。その後、Microwave Office(AWR Corporationから利用できる、無線周波数/マイクロ波設計プラットフォーム)が、アンテナの反射損失特性を最適化するために、各インダクタの値を調節すべく用いられた。キャパシタC
1およびC
2は、設計工程のこの段階の間、10pFにそれぞれ固定された。同一のシミュレーションツールが、明細書において記載された、すべてのシミュレーションのために用いられたことに気付くであろう。
【0082】
出願人は、これらのシミュレーションの間に、所望の動作帯域(470MHz〜2200MHz)全体にわたる単一の共振周波数であって、少なくとも6dBの反射損失を有する単一の共振周波数を得るためには、バラン72のための2つの異なる構成とともに、整合回路74,76の各々のための3つの異なる構成が要求されることを発見した。これらの異なる構成は、
図5に示される回路に統合されたが、必要に応じて、3つの別個の回路として提供されることができる。
【0083】
以下の表2は、要求されるスペクトル範囲を生成するために、
図5に示されたスイッチに要求される論理状態を記載する。本実施形態において、
図5のスイッチ82のような、単極双投スイッチは、‘1’によって表される‘on’位置、および‘0’によって表される‘off’位置にある。
図5に示されたような双極双投スイッチに対して、‘0’は、ノード1および2が接続され、ノード4および5が接続される状態を表すが、‘1’は、ノード1および3が接続され、ノード4および6がそれぞれ接続される状態を表す。
図5に示されているように、各スイッチは、初期設定位置において示される。
【0085】
したがって、表2に記載され、モードA,B,およびCとして表された3つの状態は、アンテナの動作の、3つの相対的に狭い帯域に関する。
【0086】
モードA動作において、バラクタC
1およびC
2を、
図6に示されるように、10pFから1.11pFまで一緒に変化させることによって、共振周波数を、470MHzから640MHzまで動かすことが可能である。
【0087】
図7は、バラクタC
1およびC
2を共に10pFから0.21pFまで変化させることによって、共振周波数を630MHzから1520MHzまで同調することができるモードB動作を示す。
【0088】
同様に、
図8は、モードC動作を示し、バラクタC
1およびC
2を10pFから0.38pFまで共に変化させた場合、共振周波数は1500MHzから2200MHzまで変化することを示す。
【0089】
したがって、理想的な構成要素を用いるシミュレーション結果は、本アンテナ構造体が1730MHzの幅広い同調範囲を有することを示す。よって、アンテナの共振周波数は、DVB−H、GSM710、GSM850、GSM900、GPS1575、GSM1800、PCS1900およびUMTS2100帯をカバーするように同調することができる。
【0090】
バラクタC
1およびC
2は、上述の例ではそれぞれ共に変化するが、他の実施形態において、同調は各バラクタを異なる値に設定することによって達成されてもよいことに気付くであろう。
【0091】
マルチプルインプット・マルチプルアウトプット(MIMO)用途に適したアンテナ構造体90は、本発明における他の実施形態に係る
図9Aおよび
図9Bに示されている。アンテナ構造体90は、2ポート筐体アンテナ100と組み合わせて、上述の平衡アンテナシステム10を備える。上述のように、MIMOデバイスは、追加のスペクトルまたは送信電力を必要とすることなく通信回線の容量を増加させるために複数の無相関チャネル/アンテナを利用する。無相関アンテナは、必要な(または最高の)アンテナ間のアイソレーションを導入するために適切な位置で終端するべきである。アンテナが使用可能な最大距離(例えば、基板12の一方の上端と、下縁部で他端と)で離間される場合に、最も高いアイソレーション値が達成されることが多い。この特定の実施形態において、アンテナは、基板12の長さに沿って約100mmの距離で分離される。
【0092】
本願において、本発明に係るMIMOシステムの多くの例が記載されている。最初の3つの例について、MIMOシステムは、2つの別個のアンテナを備えることに気付くであろう。一方、第4の例では、MIMOシステムは、3つの別個のアンテナを備える。
【0093】
図9Aおよび
図9Bに示されるMIMOシステムにおいて、2ポート筐体アンテナ100は、GB0918477.1に詳細に記載されている種類のものであり、同時デュアルバンド動作が可能である非共振結合素子112,114の対を備える。結合素子112,114は、40×5×7mm
3の比較的小さな容積空間を占め、基板12の第2面40と同一面の筐体116の先端部に位置し、一方、平衡アンテナシステム10のダイポールアンテナ37は、反対側の第1の側面16に位置する。
【0094】
より具体的には、2つの結合素子112,114は、互いに近接して取り付けられ、グランドプレーン38上で駆動される。第1の結合素子112は、グランドプレーン38に平行な筐体116を構成する平面部分と、グランドプレーン38に直交する直交部分118とを有するL字状の金属パッチによって構成されている。上述のように、平面部分116は、グランドプレーン38から基板の反対側に設けられ、そこから側方に離間されている。直交部分118は、いわゆる第1の間隙120によってグランドプレーン38から離間されるように、グランドプレーン38から最も遠い平面部116の縁から延びる。この特定の実施形態において、第1の間隙120は10mm以下である。
【0095】
また、第2の結合素子114は、この例において、平面矩形を形成する金属パッチによって構成されている。また、第2の放射素子114は、グランドプレーン38に直交して配向され、第1の間隙120内に配置されている。したがって、第2の放射素子141は、L字状の第1の結合素子12によって2つの隣接する面に有効に囲まれている。図示の実施形態では、第2の結合素子114は、第1の結合素子112の約半分の長さであり、第1の結合素子112の縁からわずかに差し込まれている。グランドプレーン38と第2の結合素子114との間の距離は、いわゆる第2の間隙122を形成する。第2の結合素子114と第1の結合素子12の直交部分118との間の距離は、それらの間の相互結合の量を決定する。したがって、この距離は相互間隙124と称される。
【0096】
図示されていないが、各放射素子112,114は、それぞれ第2の給電ポート126および第3の給電ポート128を介して、第1および第2の制御モジュールに接続されている。第2の給電ポート126(ポート2)は、第1の結合素子112と第1の制御モジュール(図示せず)の直交部分118との間に延び、第1の結合素子112の長さに沿った距離の約3分の1の距離に配置されている。第3の給電ポート128(ポート3)は、第2の給電ポート126に隣接して配置され、隣接する第2の制御モジュール(図示せず)に接続されている。GB0918477.1号明細書に記載されているように、各結合素子112,114は、選択的に独立して駆動させることができ、フロートさせることができ、または各制御モジュールの動作によってグランド状態に接続されることができる。したがって、平衡ダイポールアンテナ37の同調に関連して上述の方法と同様の方法において異なる動作モードを選択することによって、各結合素子112,114の動作周波数を動的に同調することができる。
【0097】
ポート1を介して平衡アンテナシステム10を駆動し、筐体アンテナ100の結合素子112,114のそれぞれを動作させるためにポート2およびポート3を用いることによって、MIMOアンテナ構造体90を動作させることができる。実証目的のために、ポート1は
図5に示されるものと同様の回路に接続され、ポート2のみが筐体アンテナ100に接続され動作された。より具体的には、ポート2はGB0918477.1に記載された種類の回路に接続され、ポート3は50オームの負荷にのみ接続されたが、個別に同調することが可能であった。
【0098】
図10は、上述の状況下における
図9Aおよび
図9BのMIMOアンテナ構造体のSパラメータのグラフを示す。したがって、平衡アンテナシステム10の反射損失は、約−11.62dBであることが見出されたが、筐体アンテナ100のポート2の反射損失は約−35.92dBであった。また、S21反射損失(平衡アンテナ10と筐体アンテナ100との間のアイソレーションの尺度である)は、約−30.53dBであることが
図10から明らかである。
【0099】
平衡アンテナ10と筐体アンテナ100との間のわずかなアイソレーションは、平衡アンテナ10が駆動される(
図11A)か、または筐体アンテナ100が駆動される(
図11B)ときに取得される
図11Aおよび
図11Bの電流分布プロットから説明することができる。したがって、それぞれの例において、電流は駆動されるアンテナの周囲に特に集中し、他のアンテナにはほとんどまたは全く電流が流れないことが分かる。
【0100】
また、
図12Aおよび
図12Bは、平衡アンテナ10が駆動されるか、または筐体アンテナ100が駆動されるときの平均的な電流分布を示す図によってこの結果を裏付けている。
【0101】
図13Aおよび
図13Bに示されるように、MIMOアンテナシステムのための電流分布の指向性は、平衡アンテナが駆動されたとき(
図13A)と、筐体アンテナが駆動されるとき(
図13B)とで異なっている。したがって、このことは2つのアンテナ間の結合が弱い理由を説明する。
【0102】
なお、本シミュレーションは、理想的な部品を用いて計算されることに気付くであろう。実際には、
図5の整合回路のアンテナ構造体90との統合が、アンテナ構造体の効率および利得に影響を与えるであろう。この影響は、アンテナ構造体90が整合回路に接続された後、平衡アンテナが−1.038dBの全効率と0.7664dBの実現利得とを有し、一方、筐体型アンテナが−5.06dBの全効率と−3.072dBの実現利得とを有するように計算された。したがって、これらの結果は、整合回路の付加損失を反映する。
【0103】
図14Aおよび
図14Bは、
図1Aおよび
図1Bの平衡アンテナ10と、
図9Aおよび
図9Bの筐体アンテナ100とを含む、他の結合MIMOアンテナシステム140の正面図および背面図をそれぞれ示すが、この場合において、筐体アンテナ100は、基板12の端ではなく側面に取り付けられている。筐体アンテナ100は、この構成における2つのアンテナ間に可能な最大のアイソレーションをもたらすように、平衡アンテナ10に比べて基板12の反対側の端(および基板の反対側)に向かって取り付けられている。図示されるように、前記アンテナは基板12の長さに沿って約60mmの距離で分離される。
【0104】
上述のように、ポート1は平衡アンテナ10に接続されて
図5の回路によって駆動され、ポート2は(GB0918477.1に記載されている種類の整合回路によって駆動される)大きな結合素子112に接続され、ポート3は小さな結合素子114に接続されて50オームの負荷のみにつながれた。
【0105】
図15は、
図5の整合回路を組み込む平衡アンテナ10の反射損失が約−22.16dBであるが、一方、筐体アンテナ100の反射損失が約−46.98dBであることを示している。平衡アンテナ10と筐体アンテナ100との間のS12アイソレーションが、約−22.62dBであることも
図15から明らかである。
【0106】
図16Aおよび
図16Bは、
図1Aおよび
図1Bの平衡アンテナ10と、(
図1Aおよび
図1Bに示されたものと同一であり)平衡アンテナ10に比べて基板12の反対側の端に向かって(および基板12の同一の側面上に)取り付けられるが、平衡アンテナ10に直角に配向され、図示されるように上端に沿って配置される第2平衡アンテナ152とを含む、他の結合MIMOアンテナシステム150の正面図と背面図とをそれぞれ示す。図示されるように、アンテナは、基板12の長さに沿って約60mmの距離で分離される。
【0107】
この実施形態において、ポート1は上述のように接続され、ポート2は第2平衡アンテナ152に接続され、
図5に示されるものと同様のさらなる最適化回路に接続されている。
【0108】
図17は、各アンテナがそれぞれの整合回路に接続されているときの、MIMOアンテナシステム150のSパラメータを示す。平衡アンテナ10の反射損失は約−11.12dBであるが、一方、第2平衡アンテナ152の反射損失は約−9.52dBである。また、本実施形態において、2つの平衡アンテナ間のS12アイソレーションは約−17.65dBであることが分かる。
【0109】
図18Aおよび
図18Bは、(
図1Aおよび
図1Bに関して記載されたものと同一である)2つの平衡アンテナ10と、
図9Aおよび
図9Bに関して記載された筐体アンテナ100とを含む、他の結合MIMOアンテナシステム160の正面図および背面図をそれぞれ示す。しかしながら、この特定の実施形態において、基板162は約90×60mm
2の面積を有し、筐体アンテナ100は基板162の長辺の中間に取り付けられ、2つの平衡アンテナ10は筐体アンテナ100から最も遠い基板162の2つの角のそれぞれに向けて取り付けられている。また、2つの平衡アンテナ10は、基板162の長さに対して約45°の傾斜角度で内側に配向されている。2つの平衡アンテナ10は、それぞれ基板162の短手方向に沿った方向に筐体アンテナ100から約30.64mm分離され、基板162の長手方向に沿って互いに約19.29mm分離されている。
【0110】
この実施形態において、ポート1およびポート2は平衡アンテナ10のそれぞれに接続され、それぞれの整合回路とポート3とは、筐体アンテナ100(およびその最適化された整合回路)の大きな結合素子112に接続されている。小さな結合素子114は、この実施形態における開回路として残される。
【0111】
図19は、整合回路を組み込む平衡アンテナ10の第1反射損失が約−28.32dBであるが、一方、整合回路を組み込む平衡アンテナ10の第2反射損失が約−12.14dBであり、整合回路を組み込む大きな結合素子112の反射損失が約−23.41dBであることを示す。また、適合は、これらのアンテナ間のアイソレーションは、2つの平衡アンテナの間で約−10.885dB、筐体アンテナと第2平衡アンテナとの間で−16.88dB、筐体アンテナと第1平衡アンテナとの間で−17.07dBであることを示している。
【0112】
図20は、本発明の実施形態で用いることができる代替のバラン170の回路図を示す。バラン170は、IEEE Microwave and Wireless Components Letters, Vol. 15, No.2, February 2005で出版された「Compact 28-GHz Subharmonically Pumped Resistive Mixer MMIC Using a Lumped-Element High-Pass/Band-Pass Balun」においてYeh, LiuおよびChiouによって実質的に記載されたようなLC回路を含む。
【0113】
図示されるように、バラン170は、ハイパスフィルタ(第1フィルタ)172と、バンドパスフィルタ(第2フィルタ)174とを備える。第1(アンバランス)ポートZ
uは、T結合を介してハイパスフィルタ172と、バンドパスフィルタ174とに接続されている。ハイパスフィルタ172は、キャパシタCとインダクタLとを備え、インピーダンスZ
b1から構成される出力を備える。バンドパスフィルタ174は、3つのインダクタと、2つのコンパクタとを備え、インピーダンスZ
b2から構成される出力を備える。本実施形態においてインダクタLは全て同一であるが、バンドパスフィルタ174において(2Cで表わされた分路キャパシタを構成する)キャパシタの1つは、他のキャパシタCの2倍の値である。
【0114】
本質的に、バラン170は並列に接続された、1つのハイパスフィルタ172と1つのバンドパスフィルタ174とを含む異相パワースプリッタであることに気付くであろう。このバラン170は、広帯域動作をもたらすことができる(また、より少ない損失をもたらす上述のバラン50よりも少ない構成要素を有する)が、実際には、バラン170は、アンバランス出力Z
b1とZ
b2との間に180°未満の位相差をもたらしてもよい。したがって、180°の位相差が必要な実施形態では、
図2に示される種類のバランを採用することがより便利であり、180°の位相差が必要ない実施形態では、
図20に示される種類のバランを採用することがより便利であろう。
【0115】
また、バラン170が本発明の実施形態において採用される場合、ただ1つのバラン170構造と、それぞれ第1および第2整合回路のただ2つの構造を採用することによって約470〜2200MHzの所望の同調範囲を得ることができる。したがって、
図5に示される実施形態に比べて単純な回路を採用することができる。
【0116】
本発明のさらなる実施形態に係る平衡アンテナシステム200は、
図21A〜
図21Cに示される。上述のように、平衡アンテナシステム200は、以下でより詳細に説明するように、再構成可能であり、携帯電話、ラップトップまたはPDAなどの携帯製品において用いるために設計される。
【0117】
平衡アンテナシステム200は、当該システムが容易に従来の携帯電話に収容できるように、約110mmの長さL
1、約40mmの幅W、および約5mmの厚みHを有するマイクロ波基板202(たとえば、プリント回路基板、PCB)に設けられる。
【0118】
図21Cに最もよく示されるように、第1の放射素子204は、基板202の第1の端部208において、基板202の第1の側面206に設けられている。第1の放射素子204は、第1の端部208に向かって基板202の半分に位置し、かつその開放面212が第1の端部208の中央領域に向かって内方に臨むように配向される実質的にL字状の第1のストリップ層によって構成されている。短い給電ライン214は、基板202の中央に近接する第1の放射素子204の始点に設けられ、基板202の長辺に沿って延びている。
【0119】
第1の放射素子204と実質的に類似する第2の放射素子216も、基板202の第1の側面206に設けられ、基板202の第1の端部208の隣接する半分に位置している。したがって、第2の放射素子216は、実質的にL字型の第2のストリップ層によって構成され、当該第2のストリップ層は、その開放面220が第1端部208の中央領域に向かって内方に臨むように配向される。したがって、第2の放射素子216は、第1の放射素子204とは反対方向に配向される。短い給電ライン222は、基板202の中央に最も近い第2の放射素子216の始点に改めて設けられ、基板202の長辺に沿って延びる。
【0120】
間隙224は、第1および第2の放射素子204,216のそれぞれの給電ライン214,222の間と、第1および第2のストリップのそれぞれの端226の間とに設けられる。したがって、第1および第2の放射素子204,216は、大きなダイポールアンテナ227を形成する。
図21Cに示される実施形態において、第1および第2の放射素子204,166は、基板202の長辺に沿って約70mm延びる長辺l
1と、基板202の幅に沿って約19mm延びる短辺l
2とを有する。それぞれ第1および第2のストリップの幅Wは、約1mmであり、間隙224は約2mmの範囲dを有する。給電ライン214,222のそれぞれは、約10mmの長さl
3を有する。
【0121】
図21Bに示されるように、グランドプレーン228は、第1の側面206とは反対側の、基板202の第2の側面230に設けられる。グランドプレーン228は、実質的に矩形であり、基板202の(第1端部208とは反対の)第2端232から給電ライン214,222の自由端に実質的に対向する位置まで基板202全体を実質的に占める。グランドプレーン228は、約100mmの長辺L
2を有し、基板202の全幅Wにわたって延びる。
【0122】
また、平衡アンテナシステム200は、バランと、第1および第2の放射素子204,216に接続される2つの整合回路とを含み、第1および第2の放射素子は、明瞭化のために
図21A〜21Cに示されていないが、グランドプレーン228に対向して、基板202の第1の側面206上に設けられるであろう。
【0123】
図22は、適切なバラン240と、
図21A〜
図21Cのアンテナ200のための整合回路配置250との回路図を示している。バラン240は、(1nHの)1つのインダクタL5と、(0.1pFの)1つのキャパシタCとを含み、当該インダクタL5およびキャパシタCは、不平衡信号Z
uを分割するT結合242から並列分岐して接続される。整合回路装置250は、バラン240のインダクタL5に接続され、実際に第1の放射素子204の給電ライン214に供給される平衡信号Z
b1で終端する第1の整合回路252と、バラン240のキャパシタC3に接続され、実際に第2の放射素子216の給電ライン222に供給される平衡信号Z
b2で終端する第2の整合回路254とを備える。第1および第2の整合回路252,254は、それぞれ、インダクタL3,L4(それぞれ3.5nH)と、キャパシタC1,C2(それぞれ10pF)と、第2インダクタL1,L2(それぞれ9.4nH)とを備える。それぞれの場合において、キャパシタC1,C2は、10pFから0.2pFまで変化させることができるバラクタで置き換えられてもよい。
【0124】
図23に示されるように、平衡給電Z
b1およびZ
b2を必要な動作帯域幅内の不平衡給電Z
uに変換するために、第1の整合回路252および第2の整合回路254とバラン240との統合は、約180°の所要の位相差がもたらされるように最適化された。
【0125】
図24は、
図22の回路によって給電されたとき、大きな平衡アンテナ200用の周波数に対するシミュレートされた反射係数を示す。より具体的には、平衡アンテナは、同時に3つの共振をもたらすように構成されており、整合回路配置250におけるバラクタ(C
1およびC
2で示される)は、上述の6dBの反射損失を維持したままで、3つの共振周波数を同時に移動させ、低帯域(700MHz〜1010MHz)、中帯域(1620MHz〜2490MHz)、高帯域(2740MHz〜3000MHz)をカバーするように10pFから0.2pFまで変化させることができる。したがって、本アンテナ構造体200は、現実の部品の損失を考慮しても、必要な動作帯域内で高い効率をもたらすことができる。アンテナ構造体のさらなる最適化、またはさらなる整合回路の追加は、関心のある任意の残りの周波数帯域をカバーするように用いられてもよい。
【0126】
図25A、
図25Bおよび
図25Cは、他の実施形態に係る、単一の可変共振周波数を有する再構成可能な平衡ダイポールアンテナ300を示す。平衡アンテナ300は、2.33の誘電率、0.0009の損失正接、1.143mmの厚み、約114mmの長さL
1および約40mmの幅Wを有するマイクロ波基板302であるTaconic TLY−3−0450−C5上に設けられる。アンテナ300は、基板302の第1端306に取り付けられた2つの金属放射素子304を備え、それらは約40mm×14mmの総面積を占めるように基板302の幅W上に実質的に延びている。放射素子304は、0.01778mmの金属の厚みを有し、たとえばスペーサ(図示せず)を用いて、基板302上5mmの高さHに取り付けられている。したがって、アンテナ300を容易に従来の携帯電話に収容することができる。
【0127】
図25Bに示されるように、金属グランドプレーン307は、基板302の背面に設けられている。グランドプレーン307は、100×40mm
2の面積を占め、放射素子304が配置された領域の端に対向する位置で終端する。
【0128】
放射素子304は、各放射素子304間に2mmの間隙が設けられるようにして、基板302の長手方向の中心軸の両側に対称に配置される。各放射素子304は、実質的には長方形状であるが、各長方形の内側部分310が、第1の端部306で欠落し、欠落した内側部分310から、基板302の縁に近接する位置であって、その縁から間を空けた位置まで延びる横スリット312が、第1の端部306から少し離れて設けられるように、L字型の切欠き308が第1の端部306に隣接して設けられる。各放射素子304の外側の縁で、第1の端部306とは反対側の端部には、小さな長方形314の形をした切欠きがさらに設けられる。給電ライン315は、放射素子304を後述する制御回路に接続するために、第1の端部306とは反対側の端部において、放射素子304のそれぞれの内側の縁に隣接して設けられる。平衡アンテナ300のすべての特徴の寸法が、以下の表3で与えられる。
【0130】
図26は、
図25A〜
図25Cのアンテナ300のためのバラン320と整合回路322とを含む回路図である。実際には、バラン320および整合回路320は、基板302上であって、グランドプレーン307とは反対側に設けられ、給電ライン315を介して放射素子304に接続される。本実施形態では、バラン320は、並列に接続された10.4nHのインダクタと1.9pFのキャパシタとを含んでいる。整合回路322は、2つの同一の回路を含み、その2つの回路はそれぞれ、バラン320の枝と放射素子304の1つとの間に接続され、また、41nHのインダクタと直列に接続された、最大で10pFのバラクタC
1と並列に接続された1.3nHのインダクタを含んでいる。
【0131】
図27に示すように、
図26のバラクタC
1を10pFから0.1pFまで変化させることによって、少なくとも6dBの反射損失で、アンテナ300の周波数を、およそ700MHzから最大で2434MHzまで同調することができる。DVB−Hの帯域もしくは2500MHzを超える帯域のためには、さらなる整合回路が設けられるであろう。このように、アンテナ300は、回路内における集中定数素子に関して散逸損失が高く、700MHzのような低い周波数で低効率であるが、そのサイズは、たとえば腕時計型携帯電話などの小さな端末におけるMIMO用途に適している。
【0132】
本発明のさらなる実施形態では、
図21A〜
図21Cに示されている構造と同じ構造であって、以下の表4に列挙された寸法を有する再構成可能な平衡アンテナが与えられる。
【0134】
このように、アンテナは、大きさが50mm×40mmで、1mmのトラック幅を有し、金属の厚みが0.01778mmであるL字型のダイポールアームを含み、全体的な大きさが110×40mm
2であり、100×40mm
2の大きさのグランドプレーンを有している。そのアンテナは、マイクロ波基板物質であるTaconic TLY−3−0450−C5上に形成され、そのマイクロ波基板材料は、誘電率が2.33であり、損失正接が0.0009であり、厚みが1.143mmである。
【0135】
図28は、上記のアンテナのための回路図を示している。この回路は、基板202上であって、グランドプレーン228とは反対側に設けられ、かつ給電ライン214,222を介して放射素子204,216に接続される、バラン330と整合回路332とを含んでいる。本実施形態では、バラン330は、並列に接続された12nHのインダクタと2pFのキャパシタとを含んでいる。整合回路332は、2つの同一の回路を含み、その2つの回路はそれぞれ、バラン330の分岐部と放射素子204,216の1つとの間に接続され、また、26nHのインダクタと直列接続された、最大で10pFのバラクタC
1と並列接続された7.3nHのインダクタを含んでいる。
【0136】
図29に示すように、
図28のバラクタC
1を10pFから0.1pFまで変化させることによって、少なくとも6dBの反射損失で、633MHzから3000MHzを超える値までの範囲を同時にカバーするように3つの離れた周波数を同調することができる。より具体的には、6dBを超える反射損失を維持しながら、低帯域の共振周波数を648MHzから1616MHzまでの範囲で、中間帯域の共振周波数を1704MHzから2560MHzまでの範囲で、高帯域の共振周波数を2280MHzから3000MHzを超えるまでの範囲で同調することができる。DVB−Hの帯域のためには、さらなる整合回路が用いられるであろう。このように、集中定数素子および基板において、低い周波数で低効率をもたらす散逸損失があるにもかかわらず、並外れた同調範囲により、このアンテナを、特に低損失材料から形成する場合に、小さな端末におけるMIMO用途に適したものにしている。
【0137】
図30は、本発明の実施形態に係るさらなる再構成可能な平衡アンテナ400の正面図および背面図を示している。アンテナ400は、
図21A〜
図21Cに示されている上記のアンテナに類似しているが、今回は、以下の表5に列挙された寸法を有している。
【0139】
このように、アンテナ400は、大きさが70mm×40mmで、1mmのトラック幅を有し、金属の厚みが0.01778mmであるL字型のダイポール放射素子404を含み、全体的な大きさが110×40mm
2であり、100×40mm
2の大きさのグランドプレーン406を有している。そのアンテナは、マイクロ波基板材料402であるTaconic TLY−3−0450−C5上に形成され、そのマイクロ波基板物質402は、誘電率が2.33であり、損失正接が0.0009であり、厚みが1.143mmである。ポート408は、適切な回路を介して、放射素子404を駆動するグランドプレーン406上に設けられる。
【0140】
図31は、アンテナ400のための回路図を示している。この回路は、基板402上であって、グランドプレーン406とは反対側に設けられ(ポート408を介して駆動可能であるが)、かつ給電ラインを介して放射素子404に接続される、バラン410と整合回路412とを含んでいる。本実施形態では、バラン410は、並列に接続された13.2nHのインダクタと2.3pFのキャパシタとを含んでいる。整合回路412は、2つの同一の回路を含み、その2つの回路はそれぞれ、バラン410の枝と放射素子404の1つとの間に接続され、また、9.4nHのインダクタと直列に接続された、最大で10pFのバラクタC
1と並列に接続された1.9nHのインダクタを含んでいる。
【0141】
図32に示すように、
図31のバラクタC
1を10pFから0.28pFまで変化させることによって、少なくとも6dBの反射損失で、705MHzから3000MHzを超えるまでの範囲を同時にカバーするように3つの離れた周波数を同調することができる。より具体的には、6dBを超える反射損失を維持しながら、低帯域の共振周波数を705MHzから951MHzまでの範囲で、中間帯域の共振周波数を1692MHzから2457MHzまでの範囲で、高帯域の共振周波数を2826MHzから3000MHzを超えるまでの範囲で同調することができる。理想的な構成要素を用いたシミュレーション結果では、アンテナ400が、3つの帯域の挙動を有することを示している。低帯域は、LTE700,GSM850およびEGSM900をカバーするように同調可能であり、中間帯域は、PCN,GSM1800,GSM1900,PCSおよびUMTSをカバーするように同調可能であるので、低帯域および中間帯域は、既存の携帯電話サービスのほとんどをカバーすることができる。出願人はまた、実在の部品を組み込むことにより、684MHzで全効率について少なくとも−3.77dBが与えられることを見出した。したがって、アンテナ400は、先の実施形態に関連した低い周波数での低効率の問題に対処することができると考えられる。
【0142】
図33Aおよび
図33Bはそれぞれ、本発明の実施形態に係る、MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)用途に適した別の平衡アンテナ500の正面図および背面図を示している。アンテナ500は、本質的に、
図9Aおよび
図9Bに示されている上記の2ポート筐体アンテナ100と組み合わされた
図30のアンテナ400を含んでいる。このように、2ポート筐体アンテナ100は、GB0918477.1に詳細に記載された種類のものであり、同時デュアルバンド動作可能な一対の非共振の結合素子112,114を含んでいる。
【0143】
MIMOアンテナ500は、全体的な大きさが118×40mm
2であり、100×40mm
2のグランドプレーン502を有している。筐体アンテナ100は、40×4×7mm
3という小さな体積を占め、基板402の、放射素子404が配置される端部とは反対側の第2の端部から離れて実装される。
図33Aに示すように、放射素子404は、機械的な支持を受けるために、放射素子404自体よりも幅広で長尺である追加のU字型の基板504上に設けられている。平衡アンテナ素子400および筐体アンテナ100内の結合素子112,114は、ロハセル(Rohacell(商標))材料によって支持されている。第1のポートであるポート1は、適切な回路を介して、放射素子404を駆動するグランドプレーン502を通じて設けられている。同様に、第2のポートであるポート2は、結合素子114を駆動する基板402の縁に設けられ、第3のポートであるポート3は、結合素子112を駆動するグランドプレーン502の第2の端部を通じて設けられている。
【0144】
図34は、各ポートと放射素子404および結合素子112,114のそれぞれとの間に設けられた要素のための回路図を示している。このように、平衡アンテナ400に関して、ポート1は、並列に接続された13nHのインダクタと3pFのキャパシタとを含むバラン510に接続される。バラン510の各腕は、同一の整合回路512を介して、放射素子404の1つに接続される。各整合回路512は、5.6nHのインダクタと直列に接続された、最大で10pFのバラクタC
1と並列に接続された1.9nHのインダクタを含んでいる。筐体アンテナ100に関して、第1のL形回路網の整合回路514は、ポート2と結合素子114との間に接続され、第2のL形回路網の整合回路516は、ポート3と結合素子112との間に接続される。第1の整合回路514は、27nHのインダクタと直列に接続された、最大で10pFのバラクタC
2に並列に接続された5.1nHのインダクタを含んでいる。第2の整合回路516は、2nHのインダクタと直列に接続された、最大で10pFのバラクタC
3に並列に接続された2.4nHのインダクタを含んでいる。
【0145】
MIMOアンテナ500は、CST Microwave Studio(登録商標)でシミュレートされ、そのアンテナの周波数応答を示すs4pファイルが、Applied Wave Reserch社のMicrowave Officeを用いて、各整合回路に関して上記で列挙された最適なコンポーネントの値を決定するために用いられた。
【0146】
アンテナ500はまた、型式がMV34003−150Aであり、0Vから15Vまでの印加電圧に対して、キャパシタンスが0.409pFから15.435pF(上記の範囲よりも広範である)までの間で可変である4つのバラクタダイオードC1,C1,C2,C3を用いて実証された。10kΩの抵抗が組み込まれた直流バイアス線路が、正電圧を供給するために、各バラクタのアノードに取り付けられた。その抵抗は、直流線路上に現れる残留高周波信号を減衰させるために用いられた。負電圧は、Mini−Circuit社のバイアスティーZX85−122G−S+を使用することによって、SMAコネクタ(たとえば、インピーダンスが50オームの同軸高周波コネクタ)の内部のコンダクタから供給された。
【0147】
図35は、
図34の回路におけるバラクタを、およそ15.4pFから0.4pFまで変化させたときの周波数に対する測定された反射係数を示している。このように、アンテナ500は、3つの同時に存在する帯域において動作可能であることが分かる。筐体アンテナ100のポート2および3は、測定中には開回路とした。すべてのバラクタで電圧を0Vから15Vを変化させると、その結果として、6dBを超える反射損失を維持しながら、共振周波数が、低帯域では646MHzから848MHzまで変化し、中間帯域では1648MHzから2074MHzまで変化し、高帯域では2512MHzから3000MHzを超える値まで変化した。以下の表6は、バラクタ電圧を0Vから15Vまで変化させながら、筐体アンテナ100の両方のポートに関して測定された反射係数を示している。各ポートについての測定中、他の2つのポートは開回路のままである。平衡アンテナ400とは異なって、筐体アンテナ100の各ポートは、単一の共振を生じさせる。各ポートの周波数はそれぞれ、597MHzから1124MHzまで、および1586MHzから2332MHzまで変化する。このように、アンテナ500は、646MHzから848MHzまで、および1648MHzから2074MHzまで、MIMO動作を与える。もしバラクタのキャパシタンス同調範囲がより広ければ、周波数同調範囲は増大し得るであろう。
【0148】
ポート2および3に関する様々な周波数での瞬間的な帯域幅が、表6に示されている。同じ周波数に関するポート1の帯域幅についても示されている。これらのうちの最小のものは、瞬間的なMIMOの帯域幅を表している。ポート2が、ポート3よりもかなり狭い帯域幅を与えていることが分かる。表6は、最小のMIMOの帯域幅が14MHz(中心周波数771MHzのとき)であり、最大のMIMOの帯域幅が93MHz(中心周波数1812MHzのとき)であることを示している。
【0150】
以下の表7は、MIMOアンテナ500に関する測定されたSパラメータを与えている。これらの結果から、S21が帯域の全体にわたって少なくとも15dBであるので、アイソレーションが良好であることが明らかである。
【0152】
図36は、
図33Bに類似しているが、グランドプレーン502がポート1のまわりにU字型のスロット520を含むように変更されている。ある用途に関して、MIMOアンテナ500は、主要な送信および受信アンテナ(たとえば筐体アンテナ100)のために少なくとも−4.5dBの全効率を有し、2番目の受信アンテナ(たとえば平衡アンテナ400)のために−5.5dBを有することが好ましい。しかしながら、筐体アンテナ100の実現利得は、
図33Aおよび
図33Bに従って平衡アンテナ400を一体化したときに、低い周波数で少なくとも5dB低下する。この問題に対処するために、出願人は、
図36に示すように、グランドプレーン502内にスロット520を導入することによって、平衡アンテナ400および筐体アンテナ100の整合回路を分離することを提案している。
【0153】
以下の表8は、
図36に示すように、スロット520を含むMIMOアンテナ500に関する、シミュレートされた反射係数、放射効率、全効率および実現利得を示している。この実施形態では、筐体アンテナ100に関する実現利得は、現在687MHzで−7.89MHzであるので、他のパラメータに影響を与えることなく、単にスロット520を含むことによって、6.28dB(79.6%)だけ改善している。
【0155】
上記のことから、本発明の実施形態は、幅広い周波数範囲(たとえば、646MHzから3000MHzを超えるまで)にわたって同調可能であるとともに、別のアンテナとともに良好なアンテナアイソレーションを有するMIMOアンテナ構造体に組み入れられ得る再構成可能な平衡アンテナを提供することができることが明らかである。平衡アンテナは、DVB−H,GSM710,GSM850,GSM900,GPS1575,GSM1800,PCS1900およびUMTS2100として知られる既存の携帯電話サービスの帯域をカバーすることができ、MIMO用途、特にモバイル装置、ラップトップおよびPDAのような小さな端末に理想的な候補である。
【0156】
本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態に様々な変更が加えられてもよいことが、当業者に理解されるであろう。特に、一の実施形態に関連して記載された特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよい。