(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017451
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】不斉触媒を用いる二環性化合物の光学分割方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/85 20060101AFI20161020BHJP
C07C 49/627 20060101ALI20161020BHJP
C07C 227/12 20060101ALI20161020BHJP
C07C 229/32 20060101ALI20161020BHJP
C07B 57/00 20060101ALN20161020BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
C07C45/85
C07C49/627
C07C227/12
C07C229/32
!C07B57/00 340
!C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-549310(P2013-549310)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(86)【国際出願番号】JP2012082355
(87)【国際公開番号】WO2013089188
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-274965(P2011-274965)
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100164460
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100119622
【弁理士】
【氏名又は名称】金原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】北脇 隆文
(72)【発明者】
【氏名】金田 岳志
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−074632(JP,A)
【文献】
特開昭60−169434(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/110361(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/169474(WO,A1)
【文献】
Emanuela MAROTTA et al,Tetrahedron Letters,1994年,35(18),pp.2949-2950
【文献】
Suju P. MATHEW et al.,Angewandte Chemie International Edition,,2004年,43,pp.3317-3321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)を有する化合物を製造する方法であり、
【化1】
(1)一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物を、一般式(III)を有する化合物と、光学活性アミン及び溶媒の存在下反応させることにより、一般式(II)を有する化合物を、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物へと変換させた後、
【化2】
(2)一般式(I)を有する化合物を、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物から分離することによって、
【化3】
[各式中、置換基は以下のように定義される。R
1:水素原子又はC1−C6アルキル基、R
2及びR
3:同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基及びカルボキシ基から選ばれる基]
一般式(I)を有する化合物を製造する方法。
[なお、(1)における光学活性アミンが以下に示す群から選択されるいずれか1種である。
【化4】
【化5】
式中の記号は以下のとおりの置換基である。
Me:メチル基、Ph:フェニル基、Bn:ベンジル基、Et:エチル基、iPr:イソプロピル基、
tBu:ターシャリーブチル基、Tf:トリフルオロメタンスルホニル基]
【請求項2】
R1が、水素原子、メチル基又はエチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R2が水素原子であり、R3がカルボキシ基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(1)における一般式(III)を有する化合物の使用量が、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.5−2.0当量である請求項1−3から選択されるいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(1)における光学活性アミンの使用量が、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.01−0.3当量である、請求項1−4から選択されるいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(1)における溶媒が以下に示す群から選択されるいずれか1種である、請求項1−5から選択されるいずれか1項に記載の方法。
アセトニトリル、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,2―ジメトキシエタン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリドン、1,3―ジメチル―2―イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド
【請求項7】
(1)において、さらに塩基を使用することを特徴とする、請求項1−6から選択されるいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される塩基が以下に示す群から選択されるいずれか1種である、請求項7に記載の方法。
リン酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4―メチルモルホリン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン、1、4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4―ピコリン、2,6−ルチジン、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、ジエチルアニリン
【請求項9】
請求項
1−8から選択されるいずれか1項により製造された一般式(I)を有する化合物を用いて、一般式(IV)を有する化合物又はその塩を製造する方法。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二環性γ−アミノ酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩、特に、α
2δリガンドとして活性を有する化合物及びその中間体の光学活性な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電位依存性カルシウムチャネルのα
2δサブユニットに対して高親和性結合を示す化合物は、例えば神経因性疼痛の治療において有効であることが明らかになっている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0003】
現在、神経因性疼痛の治療薬として数種類のα
2δリガンドが知られており、α
2δリガンドとしては、例えば、ガバペンチン、プレガバリンなどがある。これらの化合物のようなα
2δリガンドは、てんかんおよび神経因性疼痛等の治療に有用である(例えば、特許文献1)。その他の化合物としては、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4などに開示されている
また、出願人は、これまでにα
2δリガンド及びその製造方法として、特許文献5及び特許文献6を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2006/154929
【特許文献2】US 2003/220397
【特許文献3】US 2004/152779
【特許文献4】US 2003/78300
【特許文献5】US 2010/249229
【特許文献6】WO 2010/110361
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Biol. Chem. 271(10):5768-5776, 1996
【非特許文献2】J Med. Chem. 41:1838-18445, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、二環性γ−アミノ酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩、特に、α
2δリガンドとして活性を有する化合物及びその中間体の光学活性な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
特許文献5又は特許文献6には、Scheme1に記載のような化合物6の製造方法が報告されている。
本出願の発明者らは、化合物6の製造方法における不斉炭素の立体制御の方法に着目して、その効率的な方法を開発するために鋭意研究を続けてきた。これまでの製法では、最終工程の一つ前の工程(Step 4)で光学分割を行っているが、光学分割を早期の工程で実施することに、より効率的な製造方法を確立することが可能であろうと考えた。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、化合物6の製造の早期の工程において、その中間体を光学活性化合物とするような製造方法を開発することである。本出願の発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を継続し、その結果として課題を解決し、本発明を完成させた。
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、各置換基は以下のように定義される。R
1a:水素原子またはC1−C6アルキル基]
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を以下に説明する。
[1] 一般式(I)を有する化合物又は一般式(II)を有する化合物を製造する方法であり、
【0011】
【化2】
【0012】
(1)一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物を、一般式(III)を有する化合物と、光学活性アミン及び溶媒の存在下反応させることにより、一般式(I)を有する化合物又は一般式(II)を有する化合物のどちらか一方を、一般式(I’)を有する化合物及び一般式(I’ ’)を有する化合物、又は、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物へと変換させた後、
【0013】
【化3】
【0014】
(2)一般式(I)を有する化合物を、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物から分離することによって、又は、一般式(II)を有する化合物を、一般式(I’)を有する化合物及び一般式(I’ ’)を有する化合物から分離することによって、
【0015】
【化4】
【0016】
[各式中、置換基は以下のように定義される。R
1:水素原子又はC1−C6アルキル基、R
2及びR
3:同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基及びカルボキシ基から選ばれる基]
一般式(I)を有する化合物又は一般式(II)を有する化合物を製造する方法。
【0017】
本発明の好適な態様としては、以下の発明である。
[2] 一般式(I)を有する化合物を製造する方法であり、
【0018】
【化5】
【0019】
(1)一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物を、一般式(III)を有する化合物と、光学活性アミン及び溶媒の存在下反応させることにより、一般式(II)を有する化合物を、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物へと変換させた後、
【0020】
【化6】
【0021】
(2)一般式(I)を有する化合物を、一般式(II’)を有する化合物及び一般式(II’ ’)を有する化合物から分離することによって、
【0022】
【化7】
【0023】
[各式中、置換基は以下のように定義される。R
1:水素原子又はC1−C6アルキル基、R
2及びR
3:同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基及びカルボキシ基から選ばれる基]
一般式(I)を有する化合物を製造する方法。
[3] R
1が、水素原子、メチル基又はエチル基である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] R
2が水素原子であり、R
3がカルボキシ基である、[1]−[3]から選択されるいずれか1項に記載の方法。
[5] (1)における一般式(III)を有する化合物の使用量が、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.5−2.0当量当量である[1]−[4]から選択されるいずれか1項に記載の方法。
[6] (1)における光学活性アミンが以下に示す群から選択されるいずれか1種である、[2]−[5]から選択されるいずれか1項に記載の方法。
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
[式中の記号は以下のとおりの置換基である。
Me:メチル基、Ph:フェニル基、Bn:ベンジル基、Et:エチル基、iPr:イソプロピル基、
tBu:ターシャリーブチル基、Tf:トリフルオロメタンスルホニル基]
[7] (1)における光学活性アミンの使用量が、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.01−0.3当量である、[1]−[6]から選択されるいずれか1項にに記載の方法。
[8] (1)における溶媒が以下に示す群から選択されるいずれか1種である、[1]−[7]から選択されるいずれか1項に記載の方法。
アセトニトリル、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,2―ジメトキシエタン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリドン、1,3―ジメチル―2―イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド
[9] (1)において、さらに塩基を使用することを特徴とする、[1]−[8]から選択されるいずれか1項に記載の方法。
[10] 使用される塩基が以下に示す群から選択されるいずれか1種である、[9]に記載の方法。
リン酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4―メチルモルホリン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン、1、4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4―ピコリン、2,6−ルチジン、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、ジエチルアニリン
[11] [2]−[10]から選択されるいずれか1項により製造された一般式(I)を有する化合物を用いて、一般式(IV)を有する化合物又はその塩を製造する方法。
【0027】
【化10】
【発明の効果】
【0028】
本発明は、二環性γ−アミノ酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩、特に、α
2δリガンドとして活性を有する化合物及びその中間体の光学活性な製造するために有用である。
本発明は、その製造の早期の工程において、その中間体を光学活性化合物とするような製造方法であることから効率的である。
また、一般式(III)を有する化合物にカルボキシ基を有することにより、精製工程をより効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
C1−C6アルキル基とは、炭素数が1−6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等があり、好適には、メチル基、エチル基、プロピル基である。
【0030】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子であり、好適には、塩素原子である
。
【0031】
一般式(I)又は一般式(II)を有する化合物として、好適には、R
1が水素原子、メチル基又はエチル基を有する化合物である。
【0033】
一般式(III)を有する化合物として、好適には、R
2が水素原子又は塩素原子であり、R
3が塩素子、ニトロ基又はカルボキシ基である。
【0035】
一般式(III)を有する化合物として、より好適には、4−ニトロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、4−ホルミル安息香酸であり、特に好適には、4−ホルミル安息香酸である。 一般式(III)を有する化合物にカルボキシル基が存在させることによって、反応終了後にアルカリ水溶液で有機層を洗浄するだけで不要の反応剤やアルドール付加生成物を水層に除去することができ、簡便な操作で高純度の光学活性な一般式(I)又は一般式(II)を有する化合物を効率的に取得することができる。
【0036】
一般式(III)を有する化合物の使用量は、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.5−2.0当量が好適であり、0.8−1.2当量がより好適である。
【0037】
本発明において、一般式(I)を有する化合物を製造する際に使用される「光学活性アミン」としては、以下のTable1に示すような光学活性2−置換ピロリジン誘導体若しくはビナフチル骨格を有するアミン触媒が好適である。なお、一般式(II)を有する化合物を製造する際には、一般式(I)を有する化合物を製造する際に使用される光学活性アミンと逆の立体配置を有するエナンチオマーを用いればよい。
光学活性アミンの使用量は、一般式(I)を有する化合物と一般式(II)を有する化合物とのラセミ混合物に対して、0.01−0.3当量が好適であり、0.05−0.15当量がより好適である。
Table1
【0040】
さらに好適には、以下に示す光学活性アミンである。
(R,R)―2,5−ビス(メトキシメチル)ピロリジン、
(R)−(2―ピロリジル)−1H−テトラゾール、
(R)−2−(メトキシメチル)ピロリジン、
(R)−2−(エトキシメチル)ピロリジン、
(R)−2−(イソプロポキシメチル)ピロリジン、
(R)−2−(t−ブトキシメチル)ピロリジン、
(R)−2−(フェノキシメチル)ピロリジン、
(R)―ジフェニルメチルピロリジン、
N―[(2R)―2―ピロリジニルメチル]−トリフルオロメタンスルホンアミド、
(R)―2−[ビス(4−メチルフェニル)メチル]ピロリジン、
(R)―2−[ビス(3,5−ジメチルフェニル)メチル]ピロリジン、
(R)―2−[ビス(4−フルオロフェニル)メチル]ピロリジン、
(S)−4,5−ジヒドロ−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピン−2,6−ジイルビス(ジフェニルメタノール)((S)-4,5-dihydro-3H-dinaphtho[2,1-c:1',2'-e]azepine-2,6-diylbis(diphenylmethanol))
が好適である。
特に好適には、
(R,R)―2,5−ビス(メトキシメチル)ピロリジン又は
(R)―ジフェニルメチルピロリジンである。
適宜、使用する光学活性アミンのエナンチオマーを選択することによって、一般式(I)を有する化合物又は一般式(II)を有する化合物を製造することができる。
溶媒としては、アセトニトリル、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,2―ジメトキシエタン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリドン、1,3―ジメチル―2―イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの高極性の溶媒が好適であり、
テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリドンがより好適である。
塩基としては、リン酸カリウム、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4―メチルモルホリン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ―7―エン、1、4―ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4―ピコリン、2,6−ルチジン、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、ジエチルアニリンが好適であり、
4―メチルモルホリン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、4―ピコリン、N−メチルピペリジンがより好適である。
反応温度は、20−80℃が好適であり、30−50℃がより好適である。
一般式(I)を有する化合物又は一般式(II)を有する化合物を用いて、先に記載の特許文献6(WO 2010/110361)に記載の方法と同様に製造を行うことにより、一般式(IV)又は一般式(IV’)を有する化合物を製造することができる。
【0042】
本発明における「塩」とは、一般式(IV)で表される化合物等において、その構造中にアミノ基及びカルボキシル基を有することにより酸または塩基とを反応させることにより塩を形成するので、その塩をいう。
【0043】
一般式(IV)を有する化合物等は、大気中に放置したり、または、再晶析を行ったりすることにより、水分を吸収して吸着水が付き、水和物となる場合があり、そのような水和物も本発明の塩に包含される。
【0044】
一般式(IV)を有する化合物又はその塩は、α
2δリガンドとして活性を示し、電位依存性カルシウムチャンネルのα
2δサブユニットに対して親和性があり、痛み、中枢神経性障害、およびその他の障害の治療および/または予防に使用される医薬組成物の有効成分として有用である。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(1R,5S)―3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オン
【0046】
【化16】
【0047】
4−ホルミル安息香酸(22.1g)、4―メチルモルホリン(16.3g)をN―メチル−2−ピロリドン(60 mL)に溶解させ、3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オンのラセミ混合物(20.0g)、(R)―ジフェニルメチルピロリジン塩酸塩(4.02g)を加えた。
反応混合物を40℃に温め、20時間撹拌し、室温に冷却した。反応混合物にメチルt―ブチルエーテル(100mL)、1mol/l塩酸水(140mL)を加え、激しく攪拌し、有機層を分離した。再度、水層をメチルt―ブチルエーテル(100mL)で抽出した。有機層を合致し、水(200mL)、炭酸水素ナトリウム(18.5g)を加え、激しく攪拌し、有機層を分離した。
有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、濃縮した。得られた残渣を減圧蒸留し、標記化合物7.84g(39%、98% ee)を無色オイルとして得た。
(実施例2)
(1R,5S)―3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オン
【0048】
【化17】
【0049】
3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オンのラセミ混合物(100g)のN―メチル−2−ピロリドン(300mL)溶液に、4−ホルミル安息香酸(110g)、4―メチルモルホリン(74.3g)を添加した後、(R,R)―(―)―2,5−ビス(メトキシメチル)ピロリジン(11.7g)を加えた。
反応混合物を40℃に温め、28時間撹拌した後、室温に冷却し、さらに12時間攪拌した。反応混合物を10℃に冷却し、ヘキサン(500mL)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(700mL)を加え、激しく攪拌し、有機層を分離した。水層をヘキサン(200mL)で3回抽出し、有機層を合致した。合致した有機層を水(200mL)で洗浄し、濃縮した。得られた残渣を減圧蒸留し、標記化合物45.3g(45%、97% ee)を無色オイルとして得た。
(実施例3)
3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オンの光学純度の分析方法
実施例1及び2で得られた(1R,5S)―3−エチルビシクロ[3.2.0]ヘプタ―3−エン―6―オン(以下、RS−異性体と称する。)とその反対の立体配置を有する光学異性体(以下、SR−異性体と称する。)との存在比率は、以下に示したような条件でガスクロマトグラフィー分析を行って決定した。
カラム:Cyclosil-B(0.25mm×30 m, DF=0.25 mm)
検出器:FID
注入口の温度:230℃
気化室の温度:230℃
オーブンの温度:130℃(0-13 min) -> 20℃/min -> 230℃(18-20 min)
流速:1.5 mL/min (He)
注入量:1μL
分析時間:20分
試料の調製:反応液10mLをHexane/5%NaHCO3aq.で分液して得られたHexane層を分析に用いた
ee%:{[(RS−異性体area)−(SR−異性体area)] / [(RS−異性体area)+(SR−異性体area)]}×100
保持時間:RS−異性体:約7.1min、SR−異性体:約8.2min