特許第6017459号(P6017459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017459
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】電子素子のための材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/14 20060101AFI20161020BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161020BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20161020BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20161020BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20161020BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   C07D487/14CSP
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C07D519/00 311
   H01L31/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2013-553824(P2013-553824)
(86)(22)【出願日】2012年1月18日
(65)【公表番号】特表2014-513047(P2014-513047A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2012000206
(87)【国際公開番号】WO2012110182
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】102011011539.0
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】マルティノバ、イリナ
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】プフルム、クリストフ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/148016(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/077956(WO,A1)
【文献】 特開2008−255324(JP,A)
【文献】 特開2003−300979(JP,A)
【文献】 特開2000−268962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/00
C07D 519/00
C09K 11/00
H01L 31/00
H01L 51/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、(II)または(III)の化合物;
【化1】
式中、以下が、出現する記号に適用される;
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRであり;
、NRであり;
Yは、C(Rあり;
は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、N(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり;H、D、F、CN、N(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれ;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族有機基であって、さらに、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の置換基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよい。
【請求項2】
少なくとも一つのRまたはRは、以下から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化合物:
−間で結合する一以上の二価のアリール基を介して任意に結合してよく、1以上の基Rにより置換されてよい、1〜20個のC原子を有するヘテロアリール基、
−1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造および
−1以上の基Rにより置換されてよいアリールアミン基。
【請求項3】
ヘテロアリール基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよいピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンおよびベンゾイミダゾールから選ばれ、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上の基Rにより置換されてよいナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ベンズアントラセニル、ピレニル、ビフェニル、テルフェニルおよびクアテルフェニルから選ばれることを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
少なくとも一つの以下の工程を含む、請求項1〜3何れか1項記載の化合物の製造方法:
(a)ピロールの窒素原子とアリールもしくはヘテロアリール基との間のカップリング反応;および
(b)工程(a)でカップルしたピロール環とアリールもしくはヘテロアリール基との間の閉環反応。
【請求項5】
請求項1〜3何れか1項記載の少なくとも一つの化合物と少なくとも一つの溶媒とを含む調合物。
【請求項6】
請求項1〜3何れか1項記載の化合物の電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)での使用。
【請求項7】
請求項1〜3何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含む、特に、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる電子素子。
【請求項8】
請求項1〜3何れか1項記載の化合物が、正孔輸送層または正孔注入層中で正孔輸送材料としておよび/または発光層中でのマトリックス材料としておよび/または電子輸送層中で電子輸送材料として使用されることを特徴とする、請求項7記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)、(II)または(III)の化合物、この化合物のその電子素子での使用および一以上の式(I)、(II)または(III)の化合物を含む電子素子に関する。本発明は、さらに、式(I)、(II)または(III)の化合物の製造法と一以上の式(I)、(II)または(III)の化合物を含む調合物に関する。
【0002】
本発明の化合物等の有機半導体材料は、多くの異なる電子素子用途のために開発されている。本発明の化合物を機能性材料として使用することができる有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO1998/27136に記載されている。
【0003】
さらなる改良が、有機エレクトロルミネッセンス素子の特性データに関して、特に、広範な商業的使用の面で、いまだ必要とされている。この点で、特に、重要なことは、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命、効率と駆動電圧および達成される色値である。特に、青色発光エレクトロルミネッセンス素子の場合に、素子の寿命に関して改善の余地がある。
【0004】
加えて、高い熱安定性と高いガラス転移温度を有し、分解することなく昇華する有機半導体材料として使用できる化合物が望ましい。
【0005】
さらに、とりわけ、電子素子での使用のための代替マトリックス材料への需要が存在する。特に、良好な効率、長い寿命と低い駆動電圧を同時にもたらす燐光エミッターのためのマトリックス材料への需要が存在する。有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命と効率を制限することが多いのは、まさに、マトリックス材料の特性である。
【0006】
先行技術にしたがうと、カルバゾール誘導体、たとえば、ビス(カルバゾリル)ビフェニルが、マトリックス材料として使用されることが多い。ここで、特に、材料の寿命とガラス転移温度に関して、改善の余地が、未だに存在する。
【0007】
さらに、たとえば、WO 2005/084081、WO 2004/093207およびWO 2004/013080に記載されたケトン化合物が、先行技術にしたがって、OLEDでのマトリックス材料として使用される。また、さらに、トリアジン化合物が、たとえば、WO 2010/015306、WO 2007/063754およびWO 2008/056746に開示されたものが、マトリックス材料として先行技術にしたがって、使用される。しかしながら、異なる化学構造を有する代替化合物、特に、寿命、効率と駆動電圧に関して改善を果たすものに対する需要が、引き続き存在する。
【0008】
また、関心事は、混合マトリックス系のマトリックス成分としての代替材料の提供である。本願の意味での混合マトリックス系は、二個以上の異なるマトリックス化合物が、発光層として、一(以上)のドーパント化合物と一緒に混合されて使用される。これらの系は、燐光有機エレクトロルミネッセンス素子の場合に、特に、関心がある。より詳細な情報として、参照が、出願WO 2010/108579になされる。混合マトリックス系のマトリックス成分として言及されてもよい先行技術から知られる化合物は、とりわけ、CBP(ビスカルバゾリルビフェニル)およびTCTA(トリカルバゾリルトリフェニルアミン)である。しかしながら、混合マトリックス系のマトリックス成分としての使用のための代替化合物に対する需要が、引き続き、存在する。特に、電子素子の駆動電圧と寿命の改善をもたらす化合物に対する需要が存在する。
【0009】
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子の上記言及した特性に関して顕著な作用を有するのは、まさしく電子輸送材料であることから、新規な電子輸送材料の提供が望ましい。特に、良好な効率、長い寿命と低い駆動電圧を同時にもたらす電子輸送材料に対する需要が存在する。
【0010】
出願WO 2010/136109およびWO 2011/000455は、インデンもしくはインドールとカルバゾール単位の異なる結合幾何学を有するインデノカルバゾール誘導体とインドロカルバゾール誘導体を開示する。化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子での機能性材料として、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料としておよび電子輸送材料として、非常に、極めて適している。しかしながら、代替化合物、特に、それにより、駆動電圧の減少、パワー効率の増加および寿命の増加を達成することができるものに対する需要が引き続き存在する。
【0011】
出願JP 2006/066580は、とりわけ、有機エレクトロルミネッセンス素子でのホスト材料としての使用のための縮合芳香族環を含むカルバゾール誘導体を開示する。
【0012】
出願JP 2007/088016は、とりわけ、OLEDでの使用のための互いに縮合した複数のピロール環を有する有機半導体材料を開示する。
【0013】
未公開出願DE 102010033548.7は、互いに縮合した複数の複素環式芳香族五員環を有する有機半導体材料を開示する。前記出願にしたがうと、材料は、好ましくは、OLEDで使用される。
【0014】
本発明は、式(I)、(II)または(III)の化合物に関し、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子における使用に関して有利な特性を示す。有利な特性は、以下のセクションの一つでおよび実験例で詳細に説明される。
【0015】
したがって、本発明は、式(I)、(II)または(III)の化合物に関する。
【化1】
【0016】
式中、以下が、出現する記号に適用される;
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRおよびNから選ばれ;
X、Yは、出現毎に同一であるか異なり、BR、C(R、C=O、C=NR、C=C(R、C=S、Si(R、NR、PR、P(=O)R、O、S、S=OおよびS(=O)から選ばれる二価基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、骨格上の置換基Rまたは骨格の原子に結合してよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、N(R、N(Ar、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(上記言及した基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、上記言及した基中の1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく、ここで、上記言及した基中の1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;ここで、2個以上の基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、N(R、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(上記言及した基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、上記言及した基中の1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく、ここで、上記言及した基中の1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;ここで、2個以上の基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族有機基であって、さらに、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の置換基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0017】
本発明の化合物中で0、1、2、3、4、5または6個のZは、Nであり、残りの基Zは、CRである。さらに好ましくは、式(I)、(II)または(III)の化合物中の芳香族六員環毎の0、1または2個の基Zは、Nであり、残りの基Zは、CRである。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、Xは、BR、C=O、C=C(R、NR、PR、P(=O)R、O、S、S=OおよびS(=O)から選ばれる。Xは、特に、好ましくは、C=O、NR、O、S、S=OおよびS(=O)から選ばれる。Xは、非常に、特に、好ましくは、NRである。
【0019】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、Yは、C(R、C=O、NR、PR、P(=O)R、O、SおよびS(=O)から選ばれる。Yは、特に、好ましくは、CR、NR、OおよびSから選ばれる。Yは、非常に、特に、好ましくは、C(Rである。
【0020】
本発明の、特に、好ましい態様では、XとYの好ましい態様は、互いに結合して出現する。好ましいものは、XとYの、特に、好ましい態様または非常に、特に、好ましい態様の結合した出現である。
【0021】
本発明の好ましい態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれる。芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、特に、好ましくは、1以上の基Rで置換されてよいベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ベンズアントラセン、テトラセン、ペンタセン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、ベンゾトリアゾールおよびトリアジンから選ばれる一以上のアリールもしくはヘテロアリール基を含む。アリールもしくはヘテロアリール基は、好ましくは、単結合および/または1〜8個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜8個の炭素原子を有するアルケニレン基、C=O、NR、OまたはSから選ばれる二価基により互いに結合する。
【0022】
本発明のさらに好ましい態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、N(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(上記言及した基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、上記言及した基中の1以上の隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、-NR-、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR-で置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上の基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよい。
【0023】
さらに好ましい態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、CN、Si(R、N(R、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(上記言及した基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、上記言及した基中の1以上の隣接しないCH基は、-C≡C-、-RC=CR-、Si(R、C=O、C=NR、-NR-、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR-で置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれ;ここで、2個以上の基Rは、たがいに結合してもよく、および環もしくは環構造を形成してよい。
【0024】
本発明の化合物は、置換基RまたはRとして、以下から選ばれる少なくとも一つを有することが、さらに好ましい。
【0025】
−間で結合する一以上の二価のアリール基を介して任意に結合してよく、1以上の基Rにより置換されてよい、1〜20個のC原子を有するヘテロアリール基、
−1以上の基Rにより置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造および
−1以上の基Rにより置換されてよいアリールアミン基。
【0026】
ここで、上記言及したヘテロアリール基は、好ましくは、夫々1以上の基Rにより置換されてよいピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンおよびベンゾイミダゾールから選ばれ、上記言及した芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、夫々1以上の基Rにより置換されてよいナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ベンズアントラセニル、ピレニル、ビフェニル、テルフェニルおよびクアテルフェニルから好ましくは、選ばれる。
【0027】
上記言及したアリールアミン基は、好ましくは、以下の式(A)の基であり、
【化2】
【0028】
ここで、記号*は、化合物の残基への結合であり、およびさらに、
Ar、Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、それぞれ、1以上の基Rで置換されてよい5〜20個の芳香族環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール基であり、ここで、ArおよびAr、ArおよびAr、ArおよびAr、ArおよびArから選ばれる一以上の組み合わせは、各場合に、単結合またはBR、C(R、C=O、C=NR、C=C(R、C=S、Si(R、NR、O、S、S=OおよびS(=O)から選ばれる二価基により互いに結合してよく、および
qは、0、1、2、3、4または5である。
【0029】
上記言及したヘテロアリール基は、間で結合する一以上の二価のアリール基を介して任意に結合してよく、好ましくは、以下の式(B)の基であり、
【化3】
【0030】
ここで、記号*は、化合物の残基への結合であり、およびさらに、
Arは、上記定義のとおりであり
kは、0、1、2または3である。
【0031】
HetArは、1以上の基Rで置換されてよい1〜20個のC原子を有するヘテロアリール基である。
【0032】
基XとYが、示されるとおりに定義される式(I)、(II)および(III)の化合物の好ましい態様は、以下の表に示される。(式(I-1)〜(I-32)、(II-1)〜(II-32)および(III-1)〜(III-32))
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【0033】
本発明の特に、好ましい態様によれば、表に示される好ましい式は、上記に示す基Z、R、RおよびRの好ましい態様と組み合わせて出現する。
【0034】
以下の表は、本発明にしたがう化合物の例である。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【化5-9】
【化5-10】
【化5-11】
【化5-12】
【化5-13】
【化5-14】
【化5-15】
【化5-16】
【0035】
本発明による化合物は、たとえば、ハートウイッグ-ブーフバルト反応およびフリーデルクラフツアルキル化等の、当業者に知られた有機合成法により合成することができる。
【0036】
本発明の化合物を調製することができる種々の合成方法が、例として以下に示される。得られた化合物は、式(I)、(II)または(III)の化合物の定義にしたがって、任意の所望の位置で置換されてよい。明確さのために、置換基は、以下の図では明確には示されず、骨格だけが示される。必要ならば保護基技術により、所望の置換基を導入することができる方法は、有機合成分野の当業者に知られている。
【0037】
スキーム1は、二価基Xとして基NRと二価基Yとして基CRを含む本発明の式(I)の化合物の合成方法である。このプロセスは、示された商業的に入手可能なピロロインドール化合物から出発して、フェニルボロン酸誘導体と反応し、その結果、カップリングが、ピロールの窒素原子とフェニル基との間で起こる。ピロールの窒素原子の近くに存在するカルボキシレートラジカルは、次いで、有機リチウム化合物の付加反応により三級アルコールに還元され、フェニル基との閉環反応が、酸性条件下実施される。アリールもしくはヘテロアリール基を、次いで、ハートウイッグ-ブーフバルトカップリングでインドールの窒素原子上に導入することができる。
【0038】
スキーム1
【化6-1】
【0039】
スキーム2は、二価基Xとして基NRと二価基Yとして基OもしくはSを含む本発明の式(I)の化合物の合成方法を示す。プロセスは、異なる閉環反応が、基Yの導入のために使用されるという事実により、スキーム1で示されるものと本質的に相違する。使用される出発物質は、ピロールの窒素原子の近くにフッ素原子を含むピロロインドール誘導体である。対応する位置に-OHまたは-SH基を含むフェニル基が、ピロールの窒素原子にカップルする。閉環反応は、そこで、強塩基性条件下(NaH)、-OHまたは-SH基とピロール環のフッ素置換炭素原子との間で起こる。所望のOまたはSブリッジがプロセス中で生成される。
【0040】
スキーム2
【化6-2】
【0041】
スキーム3は、本発明の式(II)の化合物の合成方法を示す。合成経路は、使用される出発物質が異性体ピロロインドール誘導体であるという相違以外は、実質的にスキーム1と類似している。
【0042】
スキーム3
【化6-3】
【0043】
上記合成経路は、例として役立つことだけを意図している。当業者は、所与の状況で有利らしければ、本発明の化合物の合成のための代替の合成法に頼ることができるであろう。さらに、当業者は、有機合成化学分野の専門知識を利用して、示される合成法を拡張しおよび/または変形し、本発明の化合物を調製することができであろう。
【0044】
したがって、さらに、本発明は、少なくと以下の工程を含む、式(I)、(II)または(III)の化合物の製造方法に関する。
【0045】
(a)ピロールの窒素原子とアリールもしくはヘテロアリール基との間のカップリング反応;および
(b)工程(a)でカップルしたピロール環とアリールもしくはヘテロアリール基との間の閉環反応。
【0046】
上記記載の本発明による化合物、特に、臭素、沃素、塩素、ボロン酸あるいはボロン酸エステル等の反応性脱離基により置換された化合物は、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの調製のためのモノマーとして使用することもできる。ここで、オリゴマー化またはポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基を介して実行することができる。
【0047】
したがって、本発明は、さらに、一以上の式(I)、(II)または(III)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーに関し、ここで、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへの結合は、式(I)、(II)または(III)の中のRまたはRにより置換された任意の所望の位置に局在化されてよい。式(I)、(II)または(III)の化合物の結合に応じて、化合物は、オリゴマーもしくはポリマーの側鎖の部分または主鎖の部分である。本発明の意味でのオリゴマーは、少なくとも三個のモノマー単位から構築される化合物を意味するものと解される。本発明の意味でのポリマーは、少なくとも10個のモノマー単位から構築される化合物を意味するものと解される。本発明のオリゴマーまたはポリマー、デンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。本発明のオリゴマーまたはポリマーは、直鎖、分岐鎖もしくは樹状であってよい。線状に結合した構造においては、式(I)、(II)または(III)の単位は、たがいに直接結合するか、または二価の基、たとえば、置換もしくは非置換アルキレンキ基により、またはヘテロ原子により、または二価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により、たがいに結合してよい。分岐および樹状構造においては、三個以上の式(I)、(II)または(III)の単位は、たとえば、三価もしくは多価の基、たとえば、三価もしくは多価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により結合し、分岐もしくは樹状オリゴマーまたはポリマーを生じてもよい。上記記載したとおりの同じ選好が、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の式(I)、(II)または(III)の繰り返し単位にあてはまる。
【0048】
オリゴマーまたはポリマーの調製のために、本発明によるモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合するか共重合する。適切で好ましいコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO00/22026にしたがう)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO06/061181にしたがう)、パラ-フェニレン(たとえば、WO92/18552にしたがう)、カルバゾール(たとえば、WO04/070772もしくはW004/113468にしたがう)、チオフェン(たとえば、EP1028136にしたがう)、ジヒドロフェナントレン(たとえば、WO 05/014689もしくはWO 07/006383にしたがう)、シス-およびトランス-インデノフルオレン(たとえば、WO04/041901もしくはWO04/113412にしたがう)、ケトン(たとえば、WO05/040302にしたがう)、フェナントレン(たとえば、WO05/104264もしくはWO07/017066にしたがう)または複数のこれらの単位から選ばれる。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、さらなる単位、たとえば、ビニルトリアリールアミン(たとえば、WO07/068325にしたがう)もしくは燐光金属錯体(たとえば、WO06/03000にしたがう)等の発光(蛍光または燐光)単位および/または電荷輸送単位、特に、トリアリールアミン系のものをも通常含む。
【0049】
本発明によるポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、有利な特性、特に、長い寿命、高い効率と良好な色座標を有する。
【0050】
本発明によるポリマーおよびオリゴマーは、一以上の型のモノマーの重合により一般的に調製され、少なくとも一つのモノマーは、ポリマー中に式(I)、(II)または(III)の繰り返し単位を生じる。適切な重合反応は、当業者に知られ、文献に記載されている。C-CまたはC-N結合を生じる、特に、適切で、好ましい重合反応は、以下のものである:
(A)スズキ重合;
(B)ヤマモト重合;
(C)スチル重合および
(D)ハートウイッグ-ブフバルト重合
重合をこれらの方法により実行することができる方法とポリマーを反応媒体から分離し、精製することができる方法は、当業者に知られ、文献、たとえば、WO 2003/048225、WO 2004/037887およびWO 2004/037887に詳細に記載されている。
【0051】
したがって、本発明は、また、スズキ重合、ヤマモト重合、スチル重合またはハートウイッグ-ブフバルト重合により調製されることを特徴とする本発明によるポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーの調製方法に関する。本発明によるデンドリマーは、当業者に知られた方法によりもしくはそれに類似して調製することができる。適切な方法は、文献、たとえば、Frechet, Jean M. J.; Hawker, Craig J., "Hyperbranched polyphenylene and hyperbranched polyesters: new soluble, three-dimensional, reactive polymers"、 Reactive & Functional Polymers (1995), 26(1-3), 127-36; Janssen, H. M.; Meijer, E. W.、 "The synthesis and characterization of dendritic molecules", Materials Science and Technology (1999), 20 (Synthesis of Polymers), 403-458; Tomalia, Donald A., "Dendrimer molecules", Scientific American (1995), 272(5), 62-6、WO 2002/067343 A1およびWO 2005/026144 A1に記載されている。
【0052】
液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる本発明の化合物の加工のためには、本発明の化合物の調合物を必要とする。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンであり得る。
【0053】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(I)、(II)もしくは(III)の化合物または少なくとも一つの式(I)、(II)もしくは(III)の単位を含むポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーと少なくとも一つの溶媒、好ましくは、有機溶媒を含む調合物、特に、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンに関する。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、出願WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0054】
本発明の式(I)、(II)または(III)の化合物は、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)での使用のために適している。置換に応じて、化合物は、種々の機能および/または層に使用される。
【0055】
たとえば、電子欠損基を含む本発明の化合物、たとえば、一以上の窒素原子を含む六員環ヘテロアリール環基または二以上のヘテロ原子を含む五員環ヘテロアリール環基は、燐光ドーパントのためのマトリックス材料としての、電子輸送材料としてのまたは正孔障壁材料としての使用のために、特に、適している。
【0056】
さらに、5〜20個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造により、特に、12〜20個の芳香族環原子を有する芳香族環構造および/または一以上のアリールアミノ基により置換された本発明の化合物は、正孔輸送材料としての使用または蛍光ドーパントとしての使用のために、特に、適している。
【0057】
本発明の化合物は、好ましくは、発光層中でマトリックス材料として、正孔輸送層中で正孔輸送層材料として、電子輸送層中で電子層材料として、好ましくは、使用される。本発明の化合物は、さらに、好ましくは、正孔注入層中で使用される。しかしながら、それらは、他の層および/または機能、たとえば、発光層中で蛍光ドーパントとしてまたは正孔もしくは電子障壁材料として使用することもできる。
【0058】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物の電子素子での使用に関する。ここで、電子素子は、好ましくは、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)から選ばれ、特に、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれる
本発明は、さらに、また、少なくとも一つの式(I)、(II)または(III)の化合物を含む電子素子に関する。ここで、電子素子は、好ましくは、上記言及した素子から選ばれる。アノード、カソードおよび少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層、電子輸送層もしくは他の層であってよい少なくとも一つの有機層は、好ましくは、発光層か他の層であってよい少なくとも一つの有機層は、少なくとも一つの式(I)、(II)または(III)の化合物を含むことを特徴とするものが、特に、好ましい。
【0059】
カソード、アノードおよび発光層に加えて、有機エレクトロルミネセンス素子は、さらなる層を含んでよい。これらは、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層、電荷生成層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J.Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J.Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)、カップリングアウト層および/または有機あるいは無機p/n接合を含んでもよい。しかしながら、これら層の夫々は、必ずしも存在する必要はなく、層の選択は使用される化合物と、エレクトロルミネッセンス素子が蛍光であるか燐光であるかに常に依存することが指摘されねばならない。夫々の層と機能に好ましく使用される化合物は、後のセクションで明白に開示される。
【0060】
式(I)、(II)または(III)の化合物が、一以上の燐光ドーパントを含む電子素子中で使用されることが、本発明にしたがって、好ましい。ここで、化合物は、種々の層、好ましくは、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層または発光層中で使用することができる。しかしながら、式(I)、(II)または(III)の化合物は、本発明にしたがって、一以上の蛍光ドーパントを含み燐光ドーパントを含まない電子素子に使用することもできる。
【0061】
適切な燐光発光ドーパント(三重項エミッター)は、特に、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光する化合物であり、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0062】
本発明の目的のために、すべてのルミネッセントイリジウム、白金または銅錯体が、燐光化合物とみなされる。
【0063】
上記の燐光ドーパントの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2005/033244、WO 2005/019373およびUS2005/0258742により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切である。当業者は進歩性を必要とすることなく、有機エレクトロルミネッセンス素子中で本発明の化合物と組み合わせて更なる燐光錯体を使用することもできよう。
【0064】
適切な燐光ドーパントのさらなる例は、後のセクションの表で明らかにされる。
【0065】
本発明の態様では、式(I)、(II)または(III)の化合物は、一以上のドーパント、好ましくは、燐光ドーパントと組み合わせてマトリックス材料として使用される。化合物は、それらが、一以上の電子欠損基、たとえば、一以上の窒素原子を含む六員環ヘテロアリール環基または二以上の窒素原子を含む五員環ヘテロアリール環基を含むならば、マトリックス材料としての使用のために、特に、適している。
【0066】
マトリックス材料とドーパントとを含む系中でのドーパントは、混合物中でのその割合がより少ない成分を意味するものと解される。対応して、マトリックス材料は、マトリックス材料とドーパントとを含む系中で、混合物中でのその割合がより多い成分を意味するものと解される。
【0067】
発光層中のマトリックス材料の割合は、この場合、蛍光発光層に対しては、50.0〜99.9体積%、好ましくは、80.0〜99.5体積%、特に、好ましくは、92.0〜99.5体積%であり、燐光発光層に対しては、85.0〜97.0体積%である。
【0068】
対応して、ドーパントの割合は、蛍光発光層に対しては、0.1〜50.0体積%、好ましくは、0.5〜20.0体積%、特に、好ましくは、0.5〜8.0体積%であり、燐光発光層に対しては、3.0〜15.0体積%である。
【0069】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層は、また、複数のマトリックス材料(混合マトリックス系)および/または複数のドーパントを含んでもよい。この場合にも、ドーパントは、系中でのその割合がより少ないものであり、マトリックス材料は、系中でのその割合がより多いものである。しかしながら、個々の場合では、系中の個々のマトリックス材料の割合は、個々のドーパントの割合よりも少なくてよい。
【0070】
本発明のさらに好ましい態様では、式(I)、(II)または(III)の化合物は、混合マトリックス系の成分として使用される。混合マトリックス系は、好ましくは、二または三種の異なるマトリックス材料、特に、好ましくは、二種のマトリックス材料を含む。ここで、二種のマトリックス材料の一方は、好ましくは、正孔輸送特性を有する材料であり、他方の材料は、電子輸送特性を有する材料である。ここで、二種の異なるマトリックス材料は、1:50〜1:1の範囲、好ましくは、1:20〜1:1、特に、好ましくは、1:10〜1:1のおよび非常に、特に、好ましくは、1:6〜1:1の範囲である。混合マトリックス系は、好ましくは、燐光有機エレクトロルミネッセンス素子中で使用される。
【0071】
混合マトリックス系は、一以上のドーパントを含んでよい。ドーパント化合物または複数のドーパント化合物は、本発明にしたがって、全体としての混合物中、0.1〜50.0体積%の割合を、好ましくは、全体としての混合物中、0.5〜20.0体積%の割合を有する。対応して、マトリックス成分は、全体としての混合物中、50.0〜99.9体積%の割合を、好ましくは、全体としての混合物中、80.0〜99.5体積%の割合を有する。
【0072】
混合マトリックス系は、好ましくは、燐光有機エレクトロルミネッセンス素子中で使用される。
【0073】
混合マトリックス系のマトリックス成分として本発明の化合物と組み合わせて使用することができる、特に、適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがう芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドもしくは芳香族スルホキシドあるいはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527もしくはWO 2008/086851に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/015306、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、WO 10/136109もしくは WO 2011/0004550にしたがうインデノカルバゾール誘導体、または、たとえば、WO 2011/088877および WO 2011/128017にしたがう架橋カルバゾールである。
【0074】
本発明の化合物を含む混合マトリックス系での使用のための好ましい燐光ドーパントは、以下の表に示される燐光ドーパントである。
【0075】
本発明のさらに好ましい態様では、式(I)、(II)または(III)の化合物は、正孔輸送材料として使用される。そこで、化合物は、好ましくは、正孔輸送層中および/または正孔注入層中で使用される。本発明の意味での正孔注入層は、アノードに直接隣接する層である。本発明の意味での正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に位置する層である。化合物は、特に、12〜20個の芳香族環原子を有する一以上の芳香族環構造および/または一以上のアリールアミノ基により置換されるならば、正孔輸送材料として使用される。
【0076】
式(I)、(II)または(III)の化合物が、正孔輸送層中で正孔輸送材料として使用されるならば、化合物は、正孔輸送層中で純粋材料として、すなわち100%の割合で使用することができるか、正孔輸送層中でさらなる化合物、特に、p-ドーパントと組み合わせて使用することができる。
【0077】
本発明のさらなる態様では、式(I)、(II)または(III)の化合物は発光層で蛍光ドーパントとして使用される。化合物は、一以上の芳香族環構造、好ましくは、12〜20個の芳香族環原子を含む芳香族環構造により置換されるならば、蛍光ドーパントとして適切である。本発明の化合物は、好ましくは、緑色または青色エミッターとして使用される。
【0078】
発光層中の混合物中のドーパントとしての式(I)、(II)または(III)の化合物の割合は、この場合、0.1〜50.0体積%、好ましくは、0.5〜20.0体積%、特に、好ましくは、0.5〜8.0体積%である。対応して、マトリックス材料の割合は、50.0〜99.9体積%、好ましくは、80.0〜99.5体積%、特に、好ましくは、92.0〜99.5体積%である。
【0079】
蛍光ドーパントとしての本発明の化合物と組み合せての使用のための好ましいマトリックス材料は、以下のセクションの一つで言及される。それらは、好ましいとして示された蛍光ドーパントとのためのマトリックス材料に対応する。
【0080】
本発明のさらなる態様では、化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送層中の電子輸送材料として使用される。この場合、本発明の化合物は、一以上の電子欠損基、たとえば、一以上の窒素原子を含む六員環ヘテロアリール環基または二以上の窒素原子を含む五員環ヘテロアリール環基を含むことが好ましい。
【0081】
有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層をも含んでもよい。この場合に、これらの発光層は、特に、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光波長を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光もしくは燐光を発し、青色および黄色、オレンジ色もしくは赤色発光することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいものは、3層構造であり、すなわち、3個の発光層を有する構造であり、ここで、これらの層の一以上は、式(I)、(II)または(III)の化合物を含み、その3層は青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、たとえば、WO 05/011013参照。)。同様に、広発光帯域を有し、それにより白色発光を呈するエミッターが、白色発光のために適している。代替としておよび/または追加的に、本発明の化合物は、このような系中で、正孔輸送層中または電子輸送層中または他の層中に存在してもよい。
【0082】
一以上の本発明の化合物を含む電子素子に好ましく使用されるさらなる機能性材料は、以下に示される。
【0083】
特に、適切な燐光ドーパントは、以下の表に示される化合物である。
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】
【化7-8】
【化7-9】
【化7-10】
【0084】
好ましい蛍光ドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテルおよびアリールアミンのクラスから選ばれる。モノスチリルアミンは、1個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1個の、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個の置換あるいは非置換スチリル基と少なくとも1つの、好ましくは、芳香族アミンを含む化合物を意味するものと解される。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するスチリルホスフィンとスチリルエーテルはアミンと同様に定義される。本発明の意味でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造、特に、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族アントラセンジアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9.10-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は、好ましくは、ピレンに、1位もしくは1.6-位で結合する。さらに好ましいドーパントは、たとえば、WO 2006/122630にしたがうインデノフルオレンアミンあるいはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 2008/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 2007/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。スチリルアミンのクラスからの蛍光ドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、たとえば、WO 2006/000388、WO 2006/058737、WO 2006/000389、WO 2007/065549およびWO 2007/115610に記載されるさらなるドーパントである。さらに好ましいのは、DE 102008035413に開示された縮合炭化水素である。さらに、式(I)、(II)または(III)の化合物を蛍光ドーパントとして使用することができる。
【0085】
適切な蛍光ドーパントは、さらに、以下の表に示される構造と、JP 2006/001973、WO 2004/047499、WO 2006/098080、WO 2007/065678、US2005/0260442およびWO 2004/092111に開示されたこれらの構造の誘導体である。
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【0086】
好ましくは、蛍光ドーパントのための適切なマトリックス材料は、種々の物質のクラスからの材料である。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461にしたがう2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ- DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 2004/081017にしたがう)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 2004/058911にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 2005/084081およびWO 2005/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 2006/048268にしたがう)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 2006/177052にしたがう)またはベンズアントラセン(たとえば、WO 2008/1452398にしたがう)のクラスから選択される。適切なマトリックス材料は、さらに、好ましくは、本発明の化合物である。特に、好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選ばれる。非常に、特に、好ましいマトリックス材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選ばれる。本発明の意味でのオリゴアリーレンは、少なくとも三個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0087】
好ましくは、蛍光ドーパントのための適切なマトリックス材料は、たとえば、以下の表に示される材料と、WO 2004/018587、WO 2008/006449、US5935721、US2005/0181232、JP2002/273056、EP681019、US2004/0247937およびUS2005/0211958に開示されたこれらの材料の誘導体である。
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【0088】
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の正孔注入もしくは正孔輸送層中で、または電子輸送層中で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術によりこれらの層に使用される他の材料である。
【0089】
有機エレクトロルミネッセンス素子のカソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む。また、適切なのは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を含む合金、たとえば、マグネシウムと銀を含む合金である。多層構造の場合、たとえば、AgあるいはAlのような比較的高い仕事関数を有するさらなる金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Ca/Ag、Ba/AgもしくはMg/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に挿入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属フッ化物もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩である(たとえば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)。さらに、リチウムキノリナート(LiQ)をこの目的のために使用することができる。この層の層厚は、好ましくは、0.5〜5nmである。
【0090】
アノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVより高い仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高い還元電位を有する金属であり、他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。いくつかの用途のためには、少なくとも一つの電極は、有機材料の照射(有機太陽電池)もしくは光のアウトカップリング(OLED、O−laser)の何れかを可能とするために、透明でなければならない。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。
【0091】
素子は(用途に応じて)適切に構造化され、接点を供され、本発明による素子の寿命が水および/または空気の存在で短くなることから、最後に封止される。
【0092】
好ましい態様では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、通常10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0093】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そしてそれにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0094】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、ノズル印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、あるいはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の式(I)、(II)または(III)の化合物が、この目的のために必要である。高い溶解性は、化合物の適切な置換により達成することができる。
【0095】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造のために、一以上の層を溶液からまた一以上の層を昇華プロセスにより適用することが、さらに、好ましい。
【0096】
一以上の本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明用途の光源として、医療および/または化粧用途(たとえば、光治療)の光源として、表示装置に使用することができる。
【0097】
有機エレクトロルミネッセンス素子における式(I)、(II)または(III)の化合物の使用に関して、以下に言及する一以上の優位性を達成することができる。
【0098】
本発明の化合物は、燐光ドーパントのためのマトリックス材料としての使用と電子輸送材料としての使用に、非常に、極めて適している。これらの機能における本発明の化合物の使用に関して、有機エレクトロルミネッセンス素子の良好なパワー効率、低い駆動電圧と良好な寿命が達成される。
【0099】
さらに、本発明の化合物は、溶液中で高い酸化安定性により特徴付けられ、化合物の精製と取扱い中および電子素子でのそれらの使用に関して、有利な効果を有する。
【0100】
さらに、本発明の化合物は、温度安定性であり、それゆえに、分解することなく、実質的に昇華することができる。したがって、化合物の精製は単純化され、化合物をより高度な純度で得ることができ、材料を含む電子素子の性能データにプラスの効果を有する。したがって、特に、より長い駆動寿命を有する素子を製造することができる。
【0101】
本発明は、次の例によって、より詳細に説明される。
【0102】

A)合成例
以下の合成は、他に断らない限り、無水溶媒中で、保護ガス雰囲気下で行われる。使用することができる出発物質または試薬は、たとえば、3,4-ジメチルピロロ[3,4-b]インドール-3,4(2H)-ジカルボキシレート(Science of Synthesis2002,9,441-552)、2-(3-ブロモフェニル)-4,6-ジフェニルピリジン、4-(3-ブロモフェニル)-4,6-ジフェニルピリジン、4-(3-,5ジブロモフェニル)-4,6-ジフェニルピリジン(WO2005/085387)および2-(3-,5-ジブロモフェニル)-4,6-ジフェニルピリジンである。
【0103】
例1
a)ジエチル2-フェニル-2H-ピロロ[3,4-b]インドール-3,4-ジカルボキシレート
【化10】
【0104】
53g(176ミリモル)のジエチルピロロ[3,4-b]インドール-3,4(2H)-ジカルボキシレートと129g(1059ミリモル)のフェニルボロン酸が、2000mlのジクロロメタン中に溶解され、脱気される。71mlのトリアリールアミンと40g(356ミリモル)の酢酸銅(II)と111gの分子篩(0.4NM)が、添加される。反応混合物は、引き続き、保護ガス雰囲気下室温で80h撹拌される。冷却された溶液はトルエンで希釈され、水で何度も洗浄され、乾燥され、蒸発される。生成物は、トルエン/ヘプタン(1:2)でシリカゲル上のカラムクロマトグラフにより精製される。収率:55.4g(141ミリモル)で、理論値の80%。
【0105】
b)エチル2-フェニル-2,4-ジヒドロピロロ[3,4-b]インドール-3-ジカルボキシレート
【化11】
【0106】
1500mlのMeOH/HO(3:1)中の41g(300ミリモル)のKCO溶液が、37.6g(100ミリモル)のジエチル2-フェニル-2H-ピロロ[3,4-b]インドール-3,4-ジカルボキシレートに添加され、混合物は、還流下2h加熱される。冷却後、混合物は、ジクロロメタンで抽出され、相分離後、乾燥され、蒸発される。生成物は、トルエン/ヘプタン(1:2)でシリカゲル上のカラムクロマトグラフにより精製される。収率:19.7g(65ミリモル)で、理論値の65%。
【0107】
c)2-(2-フェニル-2,4-ジヒドロピロロ[3,4-b]インドール-3-イル)プロパン-2-オル
【化12】
【0108】
64.7g(213ミリモル)のエチル2-フェニル-2,4-ジヒドロピロロ[3,4-b]インドール-3-カルボキシレートが、1500mlの無水THFに溶解され、脱気される。混合物は、−78℃に冷却され、569ml(854ミリモル)のメチルリチウムが、40minかけて添加される。混合物は、1hかけて−40℃まで暖められ、反応は、TLCにより監視される。反応が終わると、−30℃でMeOHにより注意深くクエンチされる。反応溶液は、1/3まで蒸発され、混合され、1lの塩化メチレンで洗浄される。有機相はMgSOで乾燥され、蒸発される。収率:55.5g(191ミリモル)、理論値の90%、H-NMRによる純度約94%。
【0109】
d)中間体d)
【化13】
【0110】
12.6g(43.6ミリモル)の2-(2-フェニル-2,4-ジヒドロピロロ[3,4-b]インドール-3-イル)プロパン-2-オルが、1.200mlの脱気トルエン中に溶解され、40gのポリリン酸と28mlのメタンスルホン酸の懸濁液が添加され、混合物は60℃で1h加熱される。バッチは冷却され、水が添加される。固形物が沈殿し、塩化メチレン/THF(1:1)で溶解される。溶液は、20%NaOHを使用して、注意深くアルカリ性にされ、層は分離され、MgSOで乾燥される。得られた固形物は、ヘプタンで撹拌洗浄される。収率:10.8g(39ミリモル)、理論値の92%、H-NMRによる純度約98%。
【0111】
e)例化合物1
【化14】
【0112】
68g(250ミリモル)の中間体d)が、保護ガス雰囲気下、1000mlのジメチルホルムアミド中に溶解され、鉱物油(345ミリモル)中60%の13.8gのNaHが添加される。室温で1時間後、1000mlのTHF中の73g(270ミリモル)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンが滴下される。反応混合物は、引き続き、室温で12h撹拌される。この後、反応混合物は、氷上に注がれ、ジクロロメタンで三度抽出される。結合した有機相は、NaSOで乾燥され、蒸発される。残留物は、トルエンで抽出され、トルエンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。純度は99.9%で、収率は99g(79%)である。
【0113】
以下の化合物が、同様の合成手順により得られる:
【化15】
【0114】
4-(2-ブロモフェニル)-2,6-ジフェニルピリジンの合成
【化16】
【0115】
23g(409ミリモル)の水酸化カリウムが、500mlのエタノール中で溶解され、40g(255ミリモル)のベンズアミド塩酸塩と室温の129g(452ミリモル)の(3-(ブロモフェニル)-1-フェニル-2-プロペン-1-オンとともに溶解され、500mlのエタノールが添加され、混合物は還流下3h撹拌される。室温まで冷却後、沈殿した固形物は吸引濾過され、少量のEtOHで洗浄され、乾燥され、55g(129ミリモル)、50%の無色結晶形の4-(2-ブロモフェニル)-2,6-ジフェニルピリジンの生成物を得る。
【0116】
例2
【化17】
【0117】
21g(79.8ミリモル)の2,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロ-10-アザインデノ [2,1,-b]フルオレン、34g(87ミリモル)の4-(2-ブロモフェニル)-2,6-ジフェニルピリジン、15.9ml(15.9ミリモル)の1モル/lのトリ-tert-ブチルホスフィンと1.79g(7.9ミリモル)の酢酸パラジウムが、保護ガス雰囲気下、120mlのp-キシレン中に懸濁される。反応混合物は、還流下16h加熱される。冷却後、有機相は分離され、200mlの水で三度洗浄され、引き続き、蒸発乾固される。残留物は、熱トルエンで抽出され、トルエンから再結晶化され、最後に高真空中で昇華される。純度は99.9%で、収率は36g(62ミリモル)、理論値の81%である。
【0118】
以下の化合物が、同様の合成手順で得られる:
【化18】
【0119】
B.素子の例:OLEDの製造
本発明によるOLEDと先行技術にしたがうOLEDが、WO 2004/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、ここに記載される特別な状況(層の厚さの変化、材料)に適合される。
【0120】
種々のOLEDに対するデータが、以下の例E1〜E8で示される(表1と2参照)。厚さ150nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)で水からのスピンコートにより適用、H.C.Stack,Goslar独から購入。)で被覆される。これらの被覆されたガラス板は、OLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子障壁層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔障壁層(HBL)/電子輸送層(ETL)/随意に、電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造は、表1に示される。OLEDの製造のために必要とされる材料は、表3に示される。
【0121】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合でマトリックス材料または材料と前混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、H5:TER2(88%:12%)等の表現は、材料H5が88体積%の割合で層中に存在し、TER2が12体積%の割合で層中に存在することを意味する。
【0122】
OLEDは、標準方法により特性決定される。このために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/mで測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表2での表現U1000は、輝度1000cd/mに対して必要とされる電圧を示す。CE1000とPE1000は、1000cd/mで達成された電流およびパワー効率をそれぞれ示す。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/mでの外部量子効率である。
【0123】
種々のOLEDに対するデータが、表2に要約される。本発明による材料により、赤および緑色燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用に関して良好な効率と駆動電圧を得られる(表2の例E1〜E7)。さらに良好な性能データが、電子輸送材料としての材料H3の使用について得られる(例E8)。
【0124】
表1:OLEDの構造
【表1】
【0125】
表2:OLEDのデ−タ
【表2】
【0126】
表3:OLEDのための材料の構造式
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】