(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017462
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】薄肉中空ガラス製品を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C03B 9/335 20060101AFI20161020BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
C03B9/335
B65D1/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-557114(P2013-557114)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2014-509582(P2014-509582A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012054127
(87)【国際公開番号】WO2012120119
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】1151962
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513228502
【氏名又は名称】ポシェ・デュ・クルヴァル
【氏名又は名称原語表記】POCHET DU COURVAL
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー、アントワヌ
(72)【発明者】
【氏名】カステックス、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】カヴァルッチ、デニス
(72)【発明者】
【氏名】レガステロワ、シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ぺラン、オリヴィエ
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−295446(JP,A)
【文献】
特公昭61−008021(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 9/00 − 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部及び底部を有する中空ガラス製品を製造する方法であって、
少なくとも1つの溶融ガラスパリソンをパリソン金型内に投入することと、
前記パリソン金型内で前記少なくとも1つのパリソンから前記製品のブランクを成形することと、
前記製品の前記ブランクを仕上げ金型内に移すことと、
加圧ガスが、前記製品を成形するように前記ブランク内に吹き込まれることによって、前記仕上げ金型内で前記製品を成形することと
を含む方法において、
前記仕上げ金型内で前記製品を成形する間、余分のガラスは、凸状のふくらみを形成するように前記製品の前記底部から外に方向付けられ、前記ふくらみは、前記製品の前記底部の厚さが一定となるように取り除かれることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記仕上げ金型内での前記製品の成形中、前記製品の前記壁部の主面と前記仕上げ金型の内壁との間に生じるガスは、前記仕上げ金型の外側に向かう経路で流されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外側の前記ふくらみは、少なくとも1回の切断作業、及びこれに続く前記製品の前記底部の外面の少なくとも1回の研磨作業によって、前記製品の前記底部から除去されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
壁部及び底部を含む中空ガラス製品を製造する装置であって、
溶融ガラスパリソンの少なくとも1つの分配器と、
少なくとも1つの溶融ガラスパリソンを連続的に受け入れるのを目的としたキャビティを含むパリソン金型と、
前記パリソン金型内で前記製品のブランクを成形する手段と、
前記ブランクを仕上げ金型のキャビティ内に移す手段と、
前記仕上げ金型内で前記製品を成形する手段であって、加圧ガスを供給する装置と、前記仕上げ金型の上側部分に取り付けられるとともに前記加圧ガスを供給する装置に接続されるブローノズルとを含む、前記製品を形成する手段と、
を備える装置において、
前記仕上げ金型の前記キャビティが、前記製品の外側に向けられた凸状のふくらみを前記製品の前記底部に形成するための凹状の窪み部が設けられるボトムを含み、前記装置が、一定の厚さを有する前記製品の前記底部を得るように前記ふくらみを除去する手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記仕上げ金型は、前記製品の前記壁部の主面と前記仕上げ金型の内壁との間に生じるガスを前記仕上げ金型の外側に向けて流すための少なくとも1つの通気穴を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記製品の前記底部の外側の前記ふくらみを切断する手段と、前記製品の前記底部の外面を研磨する手段とを備えることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉中空ガラス製品、例えばビン又はそのようなタイプの任意の他の製品等を製造するための方法及び装置に関する。
【0002】
本発明はまた、この方法を用いて得られる中空ガラス製品にも関する。
【背景技術】
【0003】
通常、例えばビン等の中空ガラス製品の製造は、種々の制約を満たさなければならなく、そして、特に、形状の制約(例えば首部の位置)、製造用ツーリングの制約(例えば抜き取るためのもの)、ガラスの配分及び重量に関する制約、並びに包装に関する特有の制約を満たさなければならない。
【0004】
このタイプの製品を製造する1つの既知の方法は、少なくとも1つの溶融ガラスパリソンを所定の温度でパリソン金型に導入することと、パリソン金型内に加圧ガス(例えば空気等)を噴射することによってパリソン金型内で上記少なくとも1つのパリソンから物品を予成形することとで構成される。
【0005】
こうして製造された製品のブランクは、仕上げ金型内に移され、加圧ガスをまた噴射することによって、その仕上げ金型で製品が最終的なかたちで成形される。
【0006】
現在まで、中空ガラス製品、特に香水及び化粧用を目的としたビンは、非常に質感が高くみなされ且つ豪華なイメージを伝えるのに寄与する厚肉ガラスを分布させることを伴って、作製されてきた。しかしながら、トレンドは、明るさ、洗練性、優雅さ及び見かけ上の割れやすさのイメージを伝えるように、事実上無反射なガラス壁を有する中空ガラス製品を製造することである。
【0007】
工業化が可能である中空ガラス製品でこの結果を得るためには、いくつかの条件が満たされなければならない、すなわち、
−非常に薄いガラスの肉厚と、
−眼による知覚の混乱を避けるように可能なかぎりガラスを最大限に均一に分布させることと、
−製品を手で取り扱うための十分な機械的な強度と
である。
【0008】
上述の方法を用いる場合、パリソン金型を調整しブランクの幾何学形状を調整することによって、薄く均一な肉厚を有するガラス壁を得ることが可能になるが、余分のガラスが、製品の底部でこの製品の軸を中心として残る。
【0009】
この余分のガラスは、専門家が「マルロケット(marloquette)」又は「警察帽」と称する弓なりに過度に厚くなったものを製品の内部に形成する。この余分な肉厚によって、ガラスの分布の均一性が崩れる。
【0010】
さらに、製品の壁部の肉厚が薄くなることを踏まえると、ガラスの応力を分散させることは、厚い壁部を有する製品に現在用いられる製造時間サイクルよりもはるかに長い製造時間サイクルが必要となる。ブロー段階の間で、気体状界面が、ブランクと仕上げ金型の壁部との間に形成されて閉じ込められる。時間が非常に短いせいで、この界面は逃げることができず、それにより、製品の主面の変形が引き起こされる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、これらの欠点を回避する薄肉中空ガラス製品を製造するための方法及び装置を提案することを目的とする。
【0012】
それ故、本発明は、薄肉の壁部及び薄肉の底部を有する中空ガラス製品を製造するための方法に関する。そして、この方法は、
少なくとも1つの溶融ガラスパリソンをパリソン金型内に投入することと、
パリソン金型内で上記少なくとも1つのパリソンから製品のブランクを成形することと、
製品のブランクを仕上げ金型内に移すことと、
仕上げ金型内で製品を成形することと
を含む方法において、
仕上げ金型内で製品を成形する間、余分のガラスは、凸状のふくらみを形成するように製品の底部から外に方向付けられ、このふくらみは、製品の底部の厚さが実質的に一定となるように取り除かれることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の特徴によれば、
仕上げ金型内での製品の成形中、製品の壁部の主面と上記仕上げ金型の内壁との間に生じるガスは、上記仕上げ金型の外側に向かう経路で流され、
外側のふくらみは、少なくとも1回の切断作業、及びこれに続く製品の底部の外面の少なくとも1回の研磨作業によって、製品の底部から除去される。
【0014】
本発明はまた、薄肉の壁部及び薄肉の底部を含む中空ガラス製品を製造するための装置にも関する。そして、この装置は、
−溶融ガラスパリソンの少なくとも1つの分配器と、
−少なくとも1つの溶融ガラスパリソンを連続的に受け入れるのを目的としたキャビティを含むパリソン金型と、
−パリソン金型内で上記製品のブランクを成形する手段と、
−ブランクを仕上げ金型のキャビティ内に移す手段と、
−仕上げ金型内で製品を成形する手段と
を備える装置において、
仕上げ金型のキャビティが、上記製品の外側に向けられた凸状のふくらみを製品の底部に形成するための凹状の窪み部が設けられたボトムを含み、この装置が、実質的に一定の厚さを有する製品の底部を得るようにふくらみを除去する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、
仕上げ金型が、製品の壁部の主面と仕上げ金型の内壁との間に生じるガスを上記金型の外側に向けて流すための少なくとも1つの通気穴を含み、
この装置が、製品の底部の外側のふくらみを切断する手段と、製品の底部の外面を研磨する手段とを備える。
【0016】
本発明はまた、上記で規定された方法を用いて得られる薄肉の壁部及び薄肉の底部を有する中空ガラス製品にも関し、この製品は、側部の壁部が0.5mm〜3mmの厚さ、好ましくは約1mmの厚さを有し、底部が1.5mm〜4mmの厚さを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の特徴及び利点は、例示として与えられると共に添付図面を参照してなされる以下の説明で明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による薄肉中空ガラス製品を製造するための装置の一部の概略図である。
【
図2】本発明による装置のパリソン金型の概略縦断面図である。
【
図3】本発明による装置のパリソン金型の概略縦断面図である。
【
図4】本発明による装置の仕上げ金型の概略縦断面図である。
【
図5】本発明による装置の仕上げ金型の概略縦断面図である。
【
図6】本発明による装置の仕上げ金型の概略縦断面図である。
【
図7】仕上げ金型内での成形行程の後に得られる中空ガラス製品の概略図である。
【
図8】最終的な中空ガラス製品の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による方法を実施するための装置が、中空ガラス製品30の製造について、例えば
図8に示すような薄肉の側壁部31及び薄肉の底部32を含んだ全体として平行六面体形状のビンの製造について、説明される。側壁部31は、0.5mm〜3mmの厚さ、好ましくは約1mmの厚さを有し、底部32は、1.5mm〜4mmの厚さを有する。
【0020】
当然ながら、この装置はまた、種々の形状及び薄い肉厚を有する中空の製品を製造することも可能にする。
【0021】
図1に示すように、上記装置は、図示しない溶融炉に配置される溶融ガラス分配器1と、参照符号10により全体的に示されるパリソン金型とを備える。
【0022】
既知のタイプの分配器1は、注入オリフィス2の出口でパリソン3を送り出し、このパリソン3は従来から図示しないハサミを用いて切断されている。
【0023】
分配器1の出口では、パリソン3は導管4内に落下し、この導管4は、ブランク5を形成するためのキャビティ10aを含むパリソン金型10にパリソン3を搬送する。この目的のために、パリソン金型10のキャビティ10aは、その入口に漏斗13を含む。
【0024】
図2に概略的に示すように、パリソン金型10の下側部分は、図示しない例えば空気等の加圧ガスの供給装置に接続されるブローノズル12を含む。
【0025】
図3に示すように、ひとたびパリソン3がパリソン金型10のキャビティ10a内に導入されると、上記パリソン金型の上側の開口にある漏斗13上にボトム14が置かれ、そして、加圧空気がブローノズル12を通じて噴射され、それによりガラスを締めてブランク5に輪状部5aを形成する。次いで、漏斗13を取り外すことが可能になるように、ボトム14が上げられる。このボトム14はパリソン金型10の頂部に配置され、それによりブランク5の底部を形つくることが可能になる、そして加圧空気がノズル12を通じて吹き込まれる。
【0026】
製品30のブランク5はこうして得られる。
【0027】
このように、ブランク5は、軸15aを中心に枢軸回転するハンドリングアーム15(
図1)によって抜き取られ、
図4〜
図6に概略的に示す仕上げ金型20内に移される。この仕上げ金型20はキャビティ20aを含み、キャビティ20aの下側部分は、着脱自在なボトム21によって覆われている。この着脱自在なボトム21は、得られるべき製品30の底部32を形つくることを可能にする。
【0028】
図4〜
図6に見られるように、キャビティ20aのボトム21は凹状の窪み部22を含む。ブランク5が仕上げ金型20内に導入されてしまうと(
図5)、ブローノズル23が仕上げ金型20の上側部分に取り付けられ、上記ブローノズルは例えば空気等の加圧ガスを供給する装置(図示しない)に接続される。
【0029】
この作業の後、加圧ガスが、製品30を成形するようにブランク5内に吹き込まれる(
図6)。
【0030】
仕上げ金型20内での上記製品30の成形中、余分のガラスは、上記仕上げ金型21のボトム21に形成された窪み部22に収容され、
図7に示すように、製品30の底部の外側に向かって凸状のふくらみ33を形成する。それ故、製品30の底部32の内部の分散したものが窪み部22内で沈降し、底部32の内面32aが水平になる。
【0031】
仕上げ金型20を用いて得られる製品30が、
図7に示されており、着脱自在なボトム21を取り外すことによって、仕上げ金型20から抜き取られる。
【0032】
次いで、こうして形成された外側のふくらみ33を除去するために、操作者は、
図8に示されるような実質的に一定の厚さを有する底部32を得るように、少なくとも1回の切断作業、及びこれに続く製品30の底部32の外面32bの少なくとも1回の研磨作業を実施する。
【0033】
仕上げ金型20における成形作業中、ブランク5の主面と上記仕上げ金型20のキャビティ20aの内壁との間にガスの緩衝部が生じることを可能にするように、上記仕上げ金型20は、
図4〜
図6において参照符号25によって明示される少なくとも1つの通気穴を含む。
【0034】
これらの図面に示されている例示的な実施形態では、各通気穴25は、仕上げ金型20の壁部に形成される導管によって形成される。各通気穴25は、ガスを逃がすことを可能にする一方で溶融ガラスがその通気穴から流出するのを防ぐ要素を内方に含む。各通気穴25は、仕上げ金型20において任意の他の配置構成によって形成されてもよい。
【0035】
高温化学的処理及び低温化学的処理が、ガラスの外面を補強するように製品30に施されてもよい。
【0036】
本発明による方法は、ガラスの均一な分布を有し且つ側壁部及び底部が薄肉であるにもかかわらずこのタイプの製品に必要な堅さを有する薄肉中空ガラス製品を得ることができることを可能にする。