(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後捻関節窩コンポーネントが第2のオフセットペグを含み、前記第2のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第2のオフセットペグ軸線を画定し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第3のオフセットペグを含み、前記第3のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第3のオフセットペグ軸線を画定し、
前記中心ペグ軸線が、前記第2のオフセットペグ軸線と前記第3のオフセットペグ軸線との間に位置し、
第5の面が前記中心ペグ軸線と直交し、
前記第2のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第1の交点、及び前記第3のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第2の交点が、前記第1のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第3の交点から等距離にあり、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第2のドリルガイド孔軸線を画定する第2のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドが、前記第3のドリルガイド孔軸線と平行な第3のドリルガイド孔軸線を画定する第3のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドペグ軸線が、前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第3のドリルガイド孔軸線との間に位置し、
第6の面が前記ドリルガイドペグ軸線と直交し、
前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第4の交点、及び前記第3のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第5の交点とが、前記第1のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第6の交点から等距離にある、請求項8に記載のキット。
前記後捻関節窩コンポーネントが第2のオフセットペグを含み、前記第2のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第2のオフセットペグ軸線を画定し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第3のオフセットペグを含み、前記第3のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第3のオフセットペグ軸線を画定し、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第2のドリルガイド孔軸線を画定する第2のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第3のドリルガイド孔軸線を画定する第3のドリルガイド孔を含む、請求項12に記載のキット。
【背景技術】
【0003】
図1に示されるように、一般的な肩又は肩甲上腕関節は、人体内において上腕骨10が肩甲骨12と可動接触する部分に形成される。肩甲骨12は、上腕骨10の骨頭が関節するソケットを形成する関節窩14を有している。このソケットにおいて、肩甲骨12はその関節機能を促進する軟骨16を有している。軟骨の下には軟骨下骨18があり、海綿骨22が収容される空洞を画定する関節窩円蓋20の壁を形成している。関節窩円蓋20を形成する軟骨下骨18は、軟骨16に付着した関節窩円蓋20の外周において関節窩縁24を画定している。患者の生涯において、関節窩14は特にその後部及び/又は上部が磨耗する可能性があり、磨耗により激しい肩の痛みが生じ、患者の肩関節の可動域が制限され得る。このような痛みを軽減し患者の可動域を拡げる目的で、肩関節形成術が行われる場合がある。関節形成術は、1つ以上のプロテーゼによる関節の1つ以上の骨構造の外科的置換術である。
【0004】
肩関節形成術では、プロテーゼ関節窩コンポーネントによる肩甲骨の関節窩の置換を伴うことが多い。従来の関節窩コンポーネントは、関節の手術中にプロテーゼ上腕骨頭(又は、関節窩半関節形成術の場合では、再利用された自然上腕骨頭)を支承することが可能なほぼ側方又は外側を向いたほぼ凹面の支承面を一般的に与える。従来の関節窩コンポーネントはまた、関節窩14を適宜切除し、関節窩円蓋20から海綿骨22を適宜切除することによって構築されたキャビティ内に関節窩コンポーネントを固定するための、ほぼ中央側又は内側に突出したステムも一般的に含む。
【0005】
肩関節形成術の目的は、肩の正常な運動機能を回復することである。したがって、公知のシステムは、関節内の関節面の幾何形状及びプロテーゼが埋め込まれる骨内におけるプロテーゼの位置決めを注意深く制御することによって正常な運動機能を再現しようとするものである。このため、上腕骨コンポーネントの関節面は一般的に球状であり、上腕骨コンポーネントの位置決めは、上腕骨の解剖頸を上腕骨頭の再形成における基準面として用いることによって行われる。
【0006】
公知のシステムでは、関節窩コンポーネントは関節窩の幾何学的中心に配置される。この幾何学的中心は、関節窩縁の最上部の点から関節窩縁の最下部の点に到る線(「Saller線」)を引くことによって確立される。関節窩縁の最後部の点と関節窩縁の最前部の点との間に第2の線が引かれる。このように引かれた2本の線の交点が、関節窩縁によって囲まれる領域の幾何学的中心と考えられる。例として、
図2に肩甲骨12の矢状面図を示す。
図2では、Saller線30は、関節窩縁24の最上部の点32と関節窩縁24の最下部の点34との間に延びている。第2の線36は、関節窩縁24の最後部の点38から関節窩縁の最前部の点40へと延びている。関節窩14の幾何学的中心42は、線36とSaller線30との交点に位置している。本明細書で言うところの前、後、上、下とは、特に断らないかぎり、
図2に示される肩甲骨12の向きに対して用いられる。
【0007】
個人の特定の形態に応じて、インプラントの所望の位置が決定された後に、インプラントを受容する関節窩を準備することは問題となる場合がある。1つの特定の困難な形態は、「関節窩後捻(glenoid retroversion)」と称される。関節窩後捻では、関節窩が不均等な劣化を受けている。既知の関節窩コンポーネントは、骨の平らな基部上に埋め込まれるように構成されているため、関節窩コンポーネントを埋め込むことができる前に表面の相当の準備が必要である。いくつかの手法では、関節窩インプラントの所望の配向が達成され得るように、骨移植片を使用して関節窩を平らにする。しかしながら、骨移植手技を用いることは一般に、インプラント手技を複雑化する2段階手技である。
【0008】
別の手法では、インプラントが埋め込まれる関節窩の領域が、単に、最も深い欠損のレベルに平坦化され、より厚い関節窩インプラントが使用されて、関節窩コンポーネントの関節面のための所望の位置を達成する。この手法は有効であるが、大量の骨の除去を必要とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明文及び添付の図面の全体を通じて同様の参照符合は、同様の部材を示す。
【0015】
図3〜5は、後捻関節窩コンポーネント100を示す。関節窩コンポーネント100は、球状関節面104及び反対側の骨接触面106を有する本体部分102を含む。骨接触面106は略平面状である。外側壁108が骨接触面106から離れるように延び、円形である本体部分102の外周を画定している。本体部分102は、
図3で最も明確に見られるように、側方から見た場合、関節窩コンポーネント100の上端部109が、骨接触面106の角度に対して角度付けされている面を画定するため、略くさび形である。それ故、骨接触面から関節窩コンポーネント100の上端部までの外側壁108の高さは、最小高さ領域110から、最小高さ領域110の正反対の最大高さ領域112までの範囲である。
【0016】
関節窩コンポーネント100は更に、骨接触面106の中心から離れるように延びるフィン付き中心ペグ114を含む。3つのオフセットペグ116、118及び120が、中心ペグ114と外側壁108との間の位置において骨接触面106から離れるように延びている。オフセットペグ118は、中心ペグ114及び最小高さ領域110と整合されている一方、オフセットペグ116及び120は、骨接触面106の周囲において、最小高さ領域110と最大高さ領域112の真ん中の角位置に存在する(
図5参照)。球状関節面104の最下点122は、関節窩コンポーネント100の中心線124上に位置している。
【0017】
加えて、フィン付き中心ペグ114は、この実施形態では中心線124と同じ長手方向軸線を画定する。3つのオフセットペグ116、118及び120のそれぞれは、中心線124と平行な長手方向軸線(図示せず)を画定する。長手方向軸線124は、骨接触面106により画定される面と直交しない。それ故、中心線124及び骨接触面106は、
図3の面内で最小角度126を画定する。
【0018】
この実施形態の関節窩コンポーネント100は、耐久性を有する生体適合性プラスチック又は他の任意の好適な耐久性の生体適合性材料で形成された一体成形された部材である。例えば関節窩コンポーネント100はポリエチレンで形成することができる。関節窩コンポーネント100に特に適しているポリエチレンの1つに、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)などの高分子量ポリエチレンがある。このようなUHMWPEの1つが、New Brunswick,New JerseyのJohnson & JohnsonよりMARATHON(商標)UHMWPEとして販売されており、参照により本明細書に組み込まれるMcKellopに付与された米国特許第6,228,900号及び同第6,281,264号により詳しく述べられている。
【0019】
関節窩コンポーネント100の関節面104及び他の部分が異なる材料で形成されている実施形態では、関節窩コンポーネント100の関節面104以外の部分は、例えばコバルトクロム合金、ステンレス鋼合金、チタン合金、又は他の任意の好適な耐久性材料などの好適な生体適合性金属で形成することができる。これらの実施形態では、関節面104は任意の好適な方法で本体部分102に固定される。例えば、関節面104を本体部分102に固着させてもよく、あるいは関節面104をポリエチレンで形成し、本体部分102に対して圧縮成形することもできる。また、関節面104を、例えば接着剤によって本体部分102に接着することもできる。また、関節面104は、関節面104を本体部分102内にテーパーロック又は他の方法によって圧入することによって本体部分102に機械的に連結してもよく、本体102が例えばリブ、リップ、つめ、及び/又は他の突起、並びにこれらと嵌まり合う溝、うね、又はくぼみ(図示せず)などの他の好適な連結機構を有してもよい。
【0020】
代替的な実施形態では、外側壁108、骨接触面106、中心ペグ114、並びにオフセットペグ116、118及び120のうちの1つ以上が、関節窩コンポーネント100内への骨の侵入を促進する多孔質コーティングを有してもよい。多孔質コーティングは任意の好適な多孔質コーティングであってよく、例えばNew Brunswick,New JerseyのJohnson & Johnsonの製品であり、参照により本明細書に組み込まれるPilliarに付与された米国特許第3,855,638号により詳しく述べられるPOROCOAT(登録商標)を使用することができる。
【0021】
関節窩コンポーネント100は、関節窩コンポーネント100の埋め込みを容易にするのに使用され得る器具類を組み込んだキットに含まれていてもよい。キットに含まれ得る品目の1つは、
図6〜9に示されるドリルガイド150である。ドリルガイド150は、上面154と、反対側の骨接触面156とを含む本体部分152を有している。本体部分152の形状は、本体部分102と実質的に同じである。それ故、骨接触面156は、略平面状である。外側壁158は、骨接触面156から離れるように延び、本体部分152の外周を画定する。本体部分152は、
図9にて最も明確に見られるように略くさび形である。それ故、ドリルガイド150の骨接触面156から上面154までの外側壁158の高さは、最小高さ領域160から最大高さ領域162までの範囲である。
【0022】
ドリルガイド150は更に、骨接触面156の中心から離れるように延びる中心ペグ164を含む。中心ペグ164は、関節窩コンポーネント100のフィン付き中心ペグ114の幅とほぼ同一の幅であり、フィン付き中心ペグ114より僅かに短い。中心ペグ164は、中心軸線166を画定する。3つのオフセットガイド孔168、170及び172が、中心ペグ164と外側壁158との間の位置において、骨接触面156と上面154との間に延びている。3つのガイド孔168、170及び172のそれぞれは、中心軸線166に平行な長手方向軸線(図示せず)を画定する。
【0023】
以下により詳細に述べる目的により、3つのガイド孔168、170及び172のそれぞれは、対応する3つのオフセットペグ116、118及び120のうちの1つに対応する。それ故、中心ペグ164からのガイド孔168、170及び172の径方向間隔は、中心ペグ114からの対応するオフセットペグ116、118又は120の径方向間隔と同一である。更に、最小高さ領域160に対する、骨接触面156の周囲におけるガイド孔168、170及び172の角度位置は、最小高さ領域110に対する、骨接触面106の周囲における対応するオフセットペグ116、118又は120の角度位置と同一である。換言すれば、ガイド孔170は0度(
図8参照)にある一方、孔172は90度にあり、オフセットペグ118は0度にあり(
図5参照)、オフセットペグ120は90度にある。
【0024】
加えて、中心軸線166は、骨接触面156により画定される面と直交しない。それ故、中心軸線166及び骨接触面156は、
図9の面内で最小角度174を画定する。最小角度174は、後捻関節窩コンポーネント100の最小角度126と同一である。それ故、
図10〜11に示すように、中心線124が中心軸線166と整合すると、ガイド孔168、170及び172のそれぞれの長手方向軸線は、対応するオフセットペグ116、118又は120の長手方向軸線と整合され、骨接触面106は、骨接触面156により画定される面と平行な面内に位置するであろう。例として、
図10〜11では、ガイド孔170はオフセットペグ118に対応し、ガイド孔170及びオフセットペグ118の長手方向軸線は、軸線174と同延である。
【0025】
関節窩コンポーネント100を含むキットは更に、
図12及び13に示すピン配置ガイド180を含んでもよい。配置ガイド180は、基部182及び隆起部184を含む。基部182上に参照マーク186が設けられている。第1のガイド孔188は、隆起部184の上面190から基部182の底面192へ延びている。第1のガイド孔188は、底面192と直交する中心軸線194を画定する。第2のガイド孔196も、隆起部184の上面190から基部182の底面192へ延びている。第2のガイド孔196は、中心軸線198を画定する。中心軸線198は、底面192と角度200を形成し、この角度200は、
図3の側面図の面内で関節窩コンポーネント100の中心線124と関節窩コンポーネント100の骨接触面106との間に形成される角度と同一である。
【0026】
関節窩コンポーネント100を含むキットは、
図14に示す手技220に従って肩甲骨12内に埋め込まれてもよい。手技220によれば、肩甲骨12には、所望の外科的手法に従ってブロック222においてアクセスする。ブロック224では、同時係属の米国特許出願第号[代理人整理番号1671−0479]に更に記載されている下関節窩円の中心を、肩甲骨に関して同定する。下関節窩円の視覚的同定、したがって下関節窩円の中心の視覚的同定は、ブロック222において肩甲骨12にアクセスした後に可能であるが、代替的に、下関節窩円の中心は、患者を切開する前又は切開した後にイメージング又は他の技術の援助により同定されてもよい。
【0027】
ブロック224において下関節窩円の中心が同定された後、下関節窩円の中心を通して延び、かつ関節窩の関節面と直交する関節窩軸線を同定する(ブロック226)。代替的な手法では、関節窩軸線は、下関節窩円の中心以外の位置にて肩甲骨を通して延びてもよい。関節窩軸線は、患者を切開する前又は切開した後に、イメージング又は他の技術の援助により同定されてもよい。
【0028】
次に、関節窩に関する解除面を決定する(ブロック228)。本明細書で使用されるとき、「解除面」は、関節窩がその面まで切除され得る面であり、それにより関節窩コンポーネント100の配置に好適な、骨の実質的に連続的な広がりがもたらされると共に、切除する必要のある骨の量が最小限となる。ブロック230では、所望のリーミングガイドピンの位置を同定する。リーミングガイドピンの配置は、解除面と直交し、かつ以下により詳細に述べるように、リーミングガイドピンがピン配置ガイド180の第1のガイド孔188を通して延びるようにピン配置ガイド180が配置された後、第2のガイド孔の中心軸線198が関節窩軸線と同延となる、関節窩内の位置にあるように選択される。ブロック228及び230の分析は、イメージング又は他の技術の援助により、患者を切開する前又は切開した後に同定されてもよい。
【0029】
ブロック232では、同定された位置にリーミングガイドピンを配置し、ブロック234では、リーミングガイドピンを使用してリーマーを案内して、同定された解除面まで関節窩をリーミングする。同定された解除面が露出したらリーマーを除去し、ブロック236において、リーミングガイドピンが第1のガイド孔188を通して延びるようにピン配置ガイド180を解除面上に配置する。必要に応じて、ピン配置ガイド180を回転させて、第2のガイド孔196の中心軸線198を関節窩軸線と整合する。所望であれば、参照マーク186を使用してピン配置ガイド180の位置決めを補助してもよい。コンピューター支援手技を用いて、前述した工程の精密さを向上させてもよい。
【0030】
ピン配置ガイド180を解除面上に配置した後、孔開けガイドピンを第2のガイド孔196を通して肩甲骨12内に挿入する(ブロック238)。次いで、ピン配置ガイド180及びリーミングガイドピンを除去する(ブロック240)。ブロック242では、ガイドピンを案内として使用して中心ペグ孔を開け、ブロック244において、孔開けガイドピンを除去する。
【0031】
次いで、中心ペグ164を中心ペグ孔内に配置することにより、リーミングした関節窩上にドリルガイド150を配置する(ブロック246)。中心軸線166は、関節窩コンポーネント100の中心線124と関節窩コンポーネント100の骨接触面106とにより形成される角度と同一の角度を骨接触面156と形成するため、また、第2のガイド孔の中心軸線198と配置ガイド180の底面192との間の角度は、関節窩コンポーネント100の中心線124と関節窩コンポーネント100の骨接触面106とにより形成される角度と同一であるため、ドリルガイド150の骨接触面156は、単一の位置のみにおいて、切除された関節窩上で平坦に横たわるであろう。ドリルガイド150を切除された関節窩上に平坦に配置した後、ガイド孔168、170及び172を使用して、関節窩内でのペグ孔の形成を案内する(ブロック248)。
【0032】
次いで、ドリルガイド150を除去する(ブロック250)。ブロック252では、中心ペグ114を中心ペグ孔内に挿入し、また実質的に同時にオフセットペグ116、118及び120をペグ孔内に挿入することにより、関節窩コンポーネント100を切除関節窩上に配置する。ペグ116、118及び120は骨接触面106の周囲にて対称的に位置していないため、ドリルガイド150と同様、関節窩コンポーネント100は、単一の配向のみにて取り付けられ得る。一旦配置されると、関節窩コンポーネント100の中心線124は関節窩軸線と同延となり、最下点122は、下部関節窩円の中心に配置される。
【0033】
図15〜23は、手技220の様々な時点における肩甲骨12を示す。
図15では、リーミングガイドピン260がピン配置ガイドアセンブリー262の補助により肩甲骨内に埋め込まれているブロック232後の肩甲骨12を示す。リーミングガイドピン260は、ブロック226で同定された関節窩軸線からずれた長手方向軸線(図示せず)を画定している。
図16では、リーミングガイドピン260を使用してリーマー264を案内して、解除面266を露出させる。この例では、露出面は、関節窩の下縁部に延びている。肩甲骨12に対する解除面266の角度により、2洞(bi-cave)関節窩の2つの凹面間の先端突起部は除去されない。
【0034】
図17は、リーマー264が除去され、ピン配置ガイド180が配置された後の肩甲骨12を示す。リーミングガイドピン260が第1のガイド孔188を通して挿入されている状態で、孔開けガイドピン270の完全な挿入(
図18参照)が可能ではない場合がある。このような状況では、238において、孔開けガイドピン270を部分的に肩甲骨内に挿入した後、リーミングガイドピン260を除去して、孔開けガイドピン270を肩甲骨12内に完全に挿入することを可能にすることができる(
図18参照)。いくつかの状況においては、孔開けガイドピン270の肩甲骨12内への任意の挿入前に、リーミングガイドピン260を完全に又は部分的に除去してもよい。
【0035】
図18に示すように、孔開けガイドピン270を肩甲骨12内に完全に挿入し、リーミングガイドピン260を除去した後、孔開けガイドピン270の長手方向軸線(図示せず)は関節窩軸線(図示せず)と同延となる。次いで、ピン配置ガイド180を除去してもよい(ブロック240)。次に、孔開けガイドピン270を使用してドリル(図示せず)を案内し、中心ペグ孔272を開ける(ブロック242)。次いで、孔開けガイドピン270を除去する(ブロック244)。
【0036】
中心ペグ孔272が準備され、孔開けガイドピン270が除去された状態で、
図20及び21に示すようにドリルガイド150を肩甲骨12上に取り付けることができる(ブロック246)。上述したように、中心ペグ164の中心軸線166は底面156に対して角度付されているため、底面1556は1つのみの位置で肩甲骨12のリーミングされた関節窩上に平坦に横たわるであろう(
図20参照)。更に、ガイド孔168、170及び172は、より少量の骨が除去された肩甲骨12の一部上に必ず配置される。
【0037】
ドリルガイド150が取り付けられた状態で、ドリルガイド150を使用して、オフセットペグ116、118及び120を受容するためのペグ孔の孔開けを案内し(ブロック248)、その結果、
図22の構成がもたらされ、
図22にはペグ孔272から離間されたペグ孔274が示されている。次いで、中心ペグ114をペグ孔272内に挿入し、オフセットペグ118をペグ孔274内に挿入し、オフセットペグ116及び120を対応するペグ孔(図示せず)内に挿入することにより、関節窩コンポーネント100を埋め込む。
図23に、最終的な埋め込み配置を示す。
図23では、骨接触面106はリーミングされた肩甲骨12上に据えられ、中心線124は関節窩軸線と同延となっている。
【0038】
前述の実施例は、単一の関節窩コンポーネント100のみを詳細に記載したが、キットは多数の異なる関節窩コンポーネントを組み込んでもよい。キット内の各関節窩コンポーネントは、異なる直径のものであってもよい。加えて、様々な最大壁高及び様々な最小壁高を有して骨接触面と中心ペグの中心軸線との間に異なる角度を有する関節窩コンポーネントを含んでもよい。そのようなキットで、対応する関節窩コンポーネントを用いて手技220を行うことができるように、多数のドリルガイド及びピン配置ガイドが提供されてもよい。
【0039】
上述したように、異なるくさび形を有する関節窩コンポーネントを提供することにより、外科医は後捻外科手技中に除去する必要がある骨の量を最小限にすることができる。加えて、オフセットペグ116、118及び120のそれぞれは、実質的に同一の形状及び寸法を有するとして示したが、別の実施形態では、オフセットペグは異なる形状及びサイズを有してもよい。
【0040】
加えて、手技220は多くの方法で変更されてもよい。例として、上記の実施例では、ブロック252において関節窩コンポーネント100は最下点122が下関節窩円の中心と整合した状態で埋め込まれたが、最下点122は代替的に、下関節窩円の中心からずれていてもよい。例えば、最下点122は、下関節窩円の中心から上方及び後方へ約1.1mm、下関節窩円の中心からずれてもよい。イメージング及びコンピューターベースのシステムを使用して、関節窩コンポーネントをこの位置に配置することを補助してもよい。
【0041】
更に、手技220における特定の連続を記載したが、工程の多くは、異なる順序で、及び/又は他の工程と同時に行われてもよい。
【0042】
上述した方法によれば、球状の関節面を有する関節窩コンポーネントは、肩の回転点に、又は回転点に非常に近接して、埋め込まれる。関節窩コンポーネントの位置により、関節面の曲率半径と一致する曲率半径を有する上腕骨コンポーネントを使用して拘束嵌合を提供することができる。本明細書で使用するとき、用語「一致する」とは、関節面の曲率半径の差が2mm未満であることを意味する。
【0043】
以上の本発明の説明はあくまで例証するものであって、本発明の範囲を上記に記載した正確な条件に限定することを目的としたものではない。更に、本発明を特定の例示的な実施形態を参照して上記に詳細に説明したが、多くの変形例及び改変例が、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲及び趣旨の範囲内に存在するものである。
【0044】
〔実施の態様〕
(1) 関節窩コンポーネントを埋め込むためのキットであって、
第1の面を画定する略平坦な関節窩骨接触面と、前記関節窩骨接触面から離れるように延びる第1のオフセットペグと、凹状関節面と、前記凹状関節面の周囲に延び、かつ前記関節窩骨接触面の略反対側の上面であって、第2の面を画定し、前記第2の面が前記第1の面に対して角度付けされている、上面と、を含む、後捻関節窩コンポーネントと、
前記第1のオフセットペグを受容するための肩甲骨内の穴の形成においてドリルを案内するように構成されているドリルガイドと、
を含む、キット。
(2) 前記ドリルガイドが、
第3の面を画定する略平坦なドリルガイド骨接触面と、
前記ドリルガイドの底部から離れるように延び、かつドリルガイドペグ軸線を画定するドリルガイドペグであって、前記ドリルガイドペグ軸線が前記第3の面と90度以外の角度を形成する、ドリルガイドペグと、
前記ドリルガイドの底面から上方向に延び、かつ第1のドリルガイド孔軸線を画定する第1のドリルガイド孔であって、前記第1のドリルガイド孔軸線が前記第3の面と90度以外の角度を形成する、第1のドリルガイド孔と、
を含み、前記ドリルガイドペグ軸線と前記第3の面とにより画定される第1の最小角度が、前記第1のドリルガイド孔軸線と前記第3の面とにより画定される第2の最小角度と同一である、実施態様1に記載のキット。
(3) 前記後捻関節窩コンポーネントが更に、
前記関節窩骨接触面から離れるように延び、かつ中心ペグ軸線を画定する中心ペグであって、前記中心ペグ軸線が前記第1の面と90度以外の角度を形成する、中心ペグを含み、前記中心ペグ軸線と前記第1の面とにより画定される第3の最小角度が、前記第1の最小角度と同一である、実施態様2に記載のキット。
(4) 前記第1のオフセットペグが第1のオフセットペグ軸線を画定し、前記第1のオフセットペグ軸線が、前記第1の面と90度以外の角度を形成し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第2のオフセットペグを含み、前記第2のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第2のオフセットペグ軸線を画定し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第3のオフセットペグを含み、前記第3のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第3のオフセットペグ軸線を画定し、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第2のドリルガイド孔軸線を画定する第2のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドが、前記第3のドリルガイド孔軸線と平行な第3のドリルガイド孔軸線を画定する第3のドリルガイド孔を含み、
前記第1のオフセットペグ軸線と前記第1の面とにより画定される第4の最小角度が、前記第1の最小角度と同一である、実施態様3に記載のキット。
(5) 更に、
ピン配置ガイドを含み、前記ピン配置ガイドが、
第4の面を画定する骨接触面と、
前記ピン配置ガイドの底部から上方向に延び、かつ第1のピンガイド孔軸線を画定する第1のピンガイド孔であって、前記第1のピンガイド孔軸線が前記第4の面と直交する、第1のピンガイド孔と、
前記ピン配置ガイドの前記底部から上方向に延び、かつ第2のピンガイド孔軸線を画定する第2のピンガイド孔であって、前記第2のピンガイド孔軸線が前記第4の面と90度以外の角度を形成する、第2のピンガイド孔と、
を含む、実施態様3に記載のキット。
【0045】
(6) 前記第2のピンガイド孔軸線と前記第4の面とにより画定される第5の最小角度が、前記第1の最小角度と同一である、実施態様5に記載のキット。
(7) 前記関節窩骨接触面が円形の周辺部を画定し、
前記中心ペグが、前記円形の周辺部内にて中心に置かれ、
前記凹状関節面の最下点が、前記中心ペグ軸線上に位置する、実施態様3に記載のキット。
(8) 前記第1のオフセットペグが第1のオフセットペグ軸線を画定し、
前記第3の最小角度、前記中心ペグ軸線、及び前記第1のオフセットペグ軸線が同一平面上にあり、
前記第1の最小角度、前記ドリルガイドペグ軸線、及び前記第1のドリルガイド孔軸線が同一平面上にあり、
前記中心ペグ軸線及び前記第1のオフセットペグ軸線が、それらの間に第1の最小距離を画定し、
前記ドリルガイドペグ軸線及び前記第1のドリルガイド孔軸線が、それらの間に第2の最小距離を画定し、
前記第1の最小距離が前記第2の最小距離と等しい、実施態様3に記載のキット。
(9) 前記後捻関節窩コンポーネントが第2のオフセットペグを含み、前記第2のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第2のオフセットペグ軸線を画定し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第3のオフセットペグを含み、前記第3のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第3のオフセットペグ軸線を画定し、
前記中心ペグ軸線が、前記第2のオフセットペグ軸線と前記第3のオフセットペグ軸線との間に位置し、
第5の面が前記中心ペグ軸線と直交し、
前記第2のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第1の交点、及び前記第3のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第2の交点が、前記第1のオフセットペグ軸線と前記第5の面との第3の交点から等距離にあり、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第2のドリルガイド孔軸線を画定する第2のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドが、前記第3のドリルガイド孔軸線と平行な第3のドリルガイド孔軸線を画定する第3のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドペグ軸線が、前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第3のドリルガイド孔軸線との間に位置し、
第6の面が前記ドリルガイドペグ軸線と直交し、
前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第4の交点、及び前記第3のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第5の交点とが、前記第1のドリルガイド孔軸線と前記第6の面との第6の交点から等距離にある、実施態様8に記載のキット。
(10) 関節窩コンポーネントを埋め込むためのキットであって、
第1の面を画定する略平坦な関節窩骨接触面と、前記関節窩骨接触面から離れるように延び、かつ関節窩ペグ軸線を画定する関節窩ペグであって、前記関節窩ペグ軸線が前記第1の面と90度以外の角度を形成する、関節窩ペグと、凹状関節面と、を含む、後捻関節窩コンポーネントと、
肩甲骨内の穴の形成においてドリルを案内するように構成されているドリルガイドであって、第2の面を画定する略平坦なドリルガイド骨接触面と、前記ドリルガイドの底部から離れるように延び、かつドリルガイドペグ軸線を画定するドリルガイドペグとを含み、前記ドリルガイドペグ軸線が前記第2の面と90度以外の角度を形成し、前記中心ペグ軸線と前記第1の面とにより画定される第1の最小角度が、前記ドリルガイドペグ軸線と前記第2の面とにより画定される第2の最小角度と同一である、ドリルガイドと、を含む、キット。
【0046】
(11) 前記ドリルガイドが、
前記ドリルガイドの底面から上方向に延び、かつ第1のドリルガイド孔軸線を画定する第1のドリルガイド孔を含み、前記第1のドリルガイド孔軸線が、前記ドリルガイドペグ軸線と平行である、実施態様10に記載のキット。
(12) 前記後捻関節窩コンポーネントが更に、前記関節窩骨接触面から離れるように延び、かつ第1のオフセットペグ軸線を画定する第1のオフセットペグを含み、
前記第1の最小角度、前記関節窩ペグ軸線、及び前記第1のオフセットペグ軸線が同一平面上にあり、
前記関節窩ペグ軸線及び前記第1のオフセットペグ軸線が、それらの間に第1の最小距離を画定し、
前記第2の最小角度、前記ドリルガイドペグ軸線、及び前記第1のドリルガイド孔軸線が同一平面上にあり、
前記ドリルガイドペグ軸線及び前記第1のドリルガイド孔軸線が、それらの間に第2の最小距離を画定し、
前記第1の最小距離が前記第2の最小距離と等しい、実施態様11に記載のキット。
(13) 前記後捻関節窩コンポーネントが第2のオフセットペグを含み、前記第2のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第2のオフセットペグ軸線を画定し、
前記後捻関節窩コンポーネントが第3のオフセットペグを含み、前記第3のオフセットペグが、前記第1のオフセットペグ軸線と平行な第3のオフセットペグ軸線を画定し、
前記ドリルガイドが、前記第1のドリルガイド孔軸線と平行な第2のドリルガイド孔軸線を画定する第2のドリルガイド孔を含み、
前記ドリルガイドが、前記第3のドリルガイド孔軸線と平行な第3のドリルガイド孔軸線を画定する第3のドリルガイド孔を含む、実施態様12に記載のキット。
(14) 前記関節窩ペグ軸線が、前記第2のオフセットペグ軸線と前記第3のオフセットペグ軸線との間に位置し、
第3の面が前記中心ペグ軸線と直交し、
前記第2のオフセットペグ軸線と前記第3の面との第1の交点、及び前記第3のオフセットペグ軸線と前記第3の面との第2の交点が、前記第1のオフセットペグ軸線と前記第3の面との第3の交点から等距離にあり、
前記ドリルガイドペグ軸線が、前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第3のドリルガイド孔軸線との間に位置し、
第4の面が前記ドリルガイドペグ軸線と直交し、
前記第2のドリルガイド孔軸線と前記第4の面との第4の交点、及び前記第3のドリルガイド孔軸線と前記第4の面との第5の交点が、前記第1のドリルガイド孔軸線と前記第4の面との第6の交点から等距離にある、実施態様13に記載のキット。
(15) 更に、
ピン配置ガイドを含み、前記ピン配置ガイドが、
第3の面を画定する骨接触面と、
前記ピン配置ガイドの底部から上方向に延び、かつ第1のピンガイド孔軸線を画定する第1のピンガイド孔であって、前記第1のピンガイド孔軸線が前記第3の面と直交する、第1のピンガイド孔と、
前記ピン配置ガイドの前記底部から上方向に延び、かつ第2のピンガイド孔軸線を画定する第2のピンガイド孔であって、前記第2のピンガイド孔軸線が前記第3の面と90度以外の角度を形成する、第2のピンガイド孔と、
を含む、実施態様12に記載のキット。
【0047】
(16) 前記第2のピンガイド孔軸線と前記第3の面とにより画定される第3の最小角度が、前記第1の最小角度と同一である、実施態様15に記載のキット。
(17) 前記関節窩骨接触面が円形の周辺部を画定し、
前記関節窩ペグが、前記円形の周辺部内にて中心に置かれ、
前記凹状関節面の最下点が、前記関節窩ペグ軸線上に位置する、実施態様16に記載のキット。