特許第6017468号(P6017468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017468
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】修正関節窩装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/40 20060101AFI20161020BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61F2/40
   A61B17/16
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-558134(P2013-558134)
(86)(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公表番号】特表2014-515643(P2014-515643A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】US2012029034
(87)【国際公開番号】WO2012129021
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】13/051,062
(32)【優先日】2011年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デ・ウィルデ・リーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ラッピン・カイル
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−113803(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150223(WO,A1)
【文献】 米国特許第5800551(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
修正肩関節形成術に使用されるキットであって、
第1の円形外周を画定するリップと、第2の円形外周を画定する底部表面とを含む基部コンポーネントを有する少なくとも1つの修正関節窩コンポーネントと、
シャフトと作動部分とを有するリーミング装置であって、前記作動部分は、中央に位置して関節窩に円形空洞をリーミングするリーマー部分と、外側に位置してリーミングされた円形空洞の周囲の関節窩の表面を平滑化する平滑化部分とを有し、前記リーマー部分は、前記リーミング装置により前記関節窩内に空洞が形成された場合、前記基部コンポーネントが前記空洞内に圧入されることなく前記空洞内に適合するように、前記基部コンポーネントに相補的、かつ前記基部コンポーネントよりも僅かに大きい形状を有する、リーミング装置と、を含む、キット。
【請求項2】
前記リップがレセプタクルを画定し、
前記キットが複数の関節コンポーネントを含み、前記複数の関節コンポーネントのそれぞれが、前記レセプタクルと結合するように構成された結合部分を含み、
前記少なくとも1つの修正コンポーネントが、前記基部コンポーネントと、前記複数の関節コンポーネントのうちの選択された1つとを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記複数の関節コンポーネントが、
第1の直径を有する球状の関節面を含む第1の関節コンポーネントと、
第2の直径を有する球状の関節面を含む第2の関節コンポーネントであって、前記第2の直径が前記第1の直径よりも大きい、第2の関節コンポーネントと、を含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
前記複数の関節コンポーネントが、最下点を画定する球状の関節表面を有する第1の関節コンポーネントを含み、前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された際、前記最下点が前記中心軸線と整合されるように構成されている、請求項2に記載のキット。
【請求項5】
前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
前記複数の関節コンポーネントが、最下点を画定する球状の関節表面を有する第1の関節コンポーネントを含み、前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された場合、前記最下点が前記中心軸線からずれるように構成されている、請求項2に記載のキット。
【請求項6】
前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された場合、前記最下点が前記中心軸線から約1.1ミリメートルずれるように構成されている、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
基部コンポーネント案内穴が、前記レセプタクルから前記底部表面に延び、前記中心軸線と整合される、請求項2に記載のキット。
【請求項8】
前記基部コンポーネントが、
複数の締結具孔を更に含み、前記複数の締結具孔のそれぞれが、前記レセプタクルから前記底部表面に延び、前記中心軸線からずれている、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記リーミング装置が、
前記リーマー部分を通して延びるリーマー案内穴を含む、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
管状コンパクターであって、前記コンパクターを使用して前記関節窩内に空洞が形成された場合、前記基部コンポーネントが、前記空洞内に圧入されることなく、前記管状コンパクターを使用して形成された前記空洞内に適合するように、前記基部コンポーネントに相補的な形状を有し、かつ前記基部コンポーネントよりも僅かに大きい空洞を形成するように構成されている、管状コンパクターを更に含む、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2011年3月18日に出願された「Circular Glenoid Method for Shoulder Arthroscopy」と題された米国特許出願第13/051,011号、同様に2011年3月18日に出願された「Combination Reamer/Drill Bit for Shoulder Arthroscopy」と題された米国特許出願第13/051,026号、及び同様に2011年3月18日に出願された「Device and Method for Retroversion Correction Cone for Shoulder Arthroscopy」と題された米国特許出願第13/051,041号に関連し、これらの特許出願の内容はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的には整形外科学の分野に関し、より詳細には肩関節形成術用の関節窩コンポーネント装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
図1に示されるように、一般的な肩又は肩甲上腕関節は、人体内において上腕骨10が肩甲骨12と可動接触する部分に形成される。肩甲骨12は、上腕骨10の骨頭が関節するソケットを形成する関節窩14を有している。このソケットにおいて、肩甲骨12はその関節機能を促進する軟骨16を有している。軟骨の下には軟骨下骨18があり、海綿骨22が収容される空洞を画定する関節窩円蓋20の壁を形成している。関節窩円蓋20を形成する軟骨下骨18は、軟骨16に付着した関節窩円蓋20の周囲において関節窩縁24を画定している。患者の生涯において、関節窩14は特にその後部及び/又は上部が磨耗する可能性があり、磨耗により激しい肩の疼痛が生じ、患者の肩関節の可動域が制限される場合がある。このような疼痛を軽減し、患者の可動域を拡げる目的で肩関節形成術が行われる場合がある。関節形成術は、1つ又は2つ以上のプロテーゼによる関節の1つ又は2つ以上の骨構造の外科的置換術である。
【0004】
肩関節形成術では、プロテーゼ関節窩コンポーネントによる肩甲骨の関節窩の置換をしばしば行う。従来の関節窩コンポーネントは、関節の手術中にプロテーゼ上腕骨頭(又は、関節窩半関節形成術の場合では、再利用された自然上腕骨頭)を支承することが可能なほぼ側方又は外側を向いたほぼ凹面の支承面を一般的に与える。従来の関節窩コンポーネントはまた、関節窩14を適宜切除し、関節窩円蓋20から海綿骨22を適宜切除することによって構築された空洞内に関節窩コンポーネントを固定するための、ほぼ中央側又は内側に突出したステムも一般的に与える。
【0005】
肩関節形成術の目的は、肩の正常な運動機能を回復することである。したがって、公知のシステムは、関節内の関節面の幾何形状、及びプロテーゼが移植される骨内におけるプロテーゼの位置決めを注意深く制御することによって正常な運動機能を再現しようとするものである。このため、上腕骨コンポーネントの関節面は一般的に球状であり、上腕骨コンポーネントの位置決めは、上腕骨の解剖頸を上腕骨頭の再形成における基準面として用いることによって行われる。
【0006】
公知のシステムでは、関節窩コンポーネントは関節窩の幾何学的中心に配置される。この幾何学的中心は、関節窩縁の最上部の点から関節窩縁の最下部の点に到る線(「Saller線」)を引くことによって確立される。関節窩縁の最後部の点と関節窩縁の最前部の点との間に第2の線が引かれる。このように引かれた2本の線の交点が、関節窩縁によって囲まれる領域の幾何学的中心と考えられる。例として、図2に肩甲骨12の矢状面図を示す。図2では、Saller線30は、関節窩縁24の最上部の点32と関節窩縁24の最下部の点34との間に延びている。第2の線36が、関節窩縁24の最後部の点38から関節窩縁の最前部の点40へと延びている。関節窩14の幾何学的中心42は、線36とSaller線30との交点に位置している。本明細書で使用するとき、後、前、上、及び下とは、特に断らないかぎりは、図2に示される肩甲骨12の向きに対して用いられる。
【0007】
時間の経過と共に、移植された関節窩コンポーネントは緩くなる場合がある。緩くなったコンポーネントは、個人に疼痛の増大をもたらす可能性がある。しかしながら、この問題点の修正は困難であり得る。例えば、緩くなったコンポーネントの置換術は、多数の異なる関節窩欠損により複雑化し得る。関節窩欠損は、中心(関節窩の中心領域内の空隙範囲)、周囲(関節窩縁範囲内の空隙範囲)、又は組み合わせ(関節窩の中心領域から関節窩縁範囲に延びる空隙範囲)に分類され得る。軽度から中度の欠損の存在下でのコンポーネントの置換術は、特に中心領域に限定される場合、残りの空隙範囲を満たす骨移植を有し又は有さずに、既知のコンポーネントを使用して達成することができる。しかしながら、広い中心欠損及び組み合わせ欠損を含む場合、同種移植などの他の手技を必要とする。移植材料が関節窩内に組み込まれた後、置換コンポーネントを同種移植片内に移植する第2の手術が行われる。
【0008】
移植手技の代替は、コンポーネントを特定の患者欠損に特注生産することである。勿論、特注生産は、所定の手技の費用を増大させる。更に、各手技が独特である場合、再現可能な結果を得ることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
修正手技において正常な運動機能を確立することが可能な、関節窩コンポーネントが尚必要とされている。更に、関節窩が多様な欠損を有する場合でも、そのようなコンポーネントの配置を容易にする技術、器具類及びインプラントが必要とされている。インプラント手技を過剰に複雑化することなく、除去を必要とする骨の量を低減するよう配置できる関節窩コンポーネントも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において本発明は、肩甲骨内の以前移植された関節窩コンポーネントにアクセスすることと、以前移植された関節窩コンポーネントを除去することと、肩甲骨の下関節窩円の中心を同定することと、修正関節窩コンポーネントを受容するための肩甲骨の関節窩を準備することと、修正関節窩コンポーネントを選択することと、準備された関節窩内の同定された下関節窩円の中心に基づいて、選択された修正関節窩コンポーネントを移植することと、を含む、修正関節窩コンポーネントを移植する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、修正関節窩コンポーネントを移植する方法は、肩甲骨の画像を獲得することと、画像に基づいて肩甲骨の下関節窩円の中心を同定することと、修正関節窩コンポーネントを選択することと、以前移植された関節窩コンポーネントを肩甲骨から除去することと、プロテーゼを受容するための肩甲骨の関節窩を準備することと、同定された下関節窩円の中心に基づいて、選択された修正関節窩コンポーネントを準備された関節窩内に移植することと、を含む。
【0012】
本発明の上記の特徴及び利点、並びに更なる特徴及び利点は、現時点において想到される本発明を製造及び使用する最良の態様の開示を含む、以下の詳細な説明及び付属の図面を参照することで当業者には直ちに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】解剖学的に正常な肩関節の冠状面図。
図2図1の肩関節の矢状面図。
図3】本発明の原理に従って肩甲骨内に移植することが可能な後捻(retroversion)関節窩コンポーネントの前面斜視図。
図4】本発明の原理に従って肩甲骨内に移植することが可能な、図3の後捻関節窩コンポーネントの基部の前面斜視図。
図5図3の後捻関節窩コンポーネントの基部の平面図。
図6図3の後捻関節窩コンポーネントの基部の側方断面図。
図7図3の後捻関節窩コンポーネントの関節コンポーネントの前面斜視図。
図8図3の後捻関節窩コンポーネントの関節コンポーネントの側方断面図。
図9図3の後捻関節窩コンポーネントの側方断面図。
図10】案内ピンと組み合わせリーミング/平滑化工具とを含むキットを使用して、図3の後捻関節窩コンポーネント基部を肩甲骨内に移植するのに使用され得る医療手技を示す。
図11】移植された関節窩コンポーネントの不必要な移動をもたらす重度の中心骨損失を有し、図10の手技に従ってアクセスされた、移植関節窩コンポーネントを有する肩甲骨の矢状面図。
図12】以前移植した関節窩コンポーネントが除去された後の図11の肩甲骨の矢状面図。
図13】案内ピンが肩甲骨の関節窩軸線と整合するように、案内ピン配置案内が案内ピンの配置を案内するよう配置されている、図11の肩甲骨の前面斜視図。
図14】キット内に含まれ得る組み合わせリーミング/平滑化(planning)装置を案内するのに使用されている、図13の案内ピンの側面斜視図。
図15】平滑化(planning)部分及びリーミング部分を示す、図14の組み合わせリーミング/平滑化(planning)装置の部分底面斜視図。
図16】空洞がリーミングされ、骨移植片及びコンパクターを使用して空洞の周囲の骨損失範囲を置換することにより関節窩が修復された後の、図14の肩甲骨の側面斜視図。
図17】基部コンポーネントが肩甲骨の関節窩軸線と整合して配置されるように、基部コンポーネントの案内孔が案内ピンと整合されている、図16の肩甲骨の側面斜視図。
図18】基部の2つの締結具孔内に挿入された締結具が肩甲骨の外側支柱(lateral pillar)及び脊柱支柱(spina pillar)にアクセスできるように基部コンポーネントが回転されている、図17の肩甲骨の矢状平面図。
図19】選択された関節コンポーネントの結合部分が基部コンポーネントのレセプタクルと整合されている、図18の肩甲骨の断面図。
図20】関節コンポーネントの最下点が肩甲骨の関節窩軸線に配置されるように、関節コンポーネントが基部コンポーネントと結合された図19の肩甲骨の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明文及び添付の図面の全体を通じて同様の参照符合は同様の部材を示す。
【0015】
図3は、後捻関節窩コンポーネント100を示す。関節窩コンポーネント100は、基部コンポーネント102及び関節コンポーネント104を含む。更に図4〜6を参照すると、基部コンポーネント102は、リップ108と底部表面110との間に延びる壁106を含む。壁106はリップ108において、底部表面110における壁106の円形外周と比較して僅かに大きい円形外周を画定している。
【0016】
リップ108は、実質的に円筒形であるレセプタクル112を画定している。レセプタクル112はリップ108から下部表面114に延びる。3つの締結具孔116、118及び120は、下部表面114及び底部表面110を通して延びる。案内孔122も、下部表面114及び底部表面110を通して延びる。案内孔122及びレセプタクル112は、中心に位置している。したがって、案内孔122、レセプタクル112及び外側壁106は、単一の軸線124を画定する。
【0017】
図6及び7に示す関節コンポーネント104は、球状の関節面134及び結合部分136を含む。結合部分136は、実質的に円筒形の形状を有し、レセプタクル112の直径よりも僅かに大きい直径を有するサイズである。関節面は、c 138が関節コンポーネント104の中心軸線140上に位置するように位置決めされている。したがって、関節コンポーネント104が図8に示すように基部コンポーネント102と結合した際、最下点138は、基部コンポーネントの軸線124上に位置する。
【0018】
この実施形態の関節窩コンポーネント100はモジュール式であるが、他の実施形態では、一体的に形成されてもよい。一体的に形成されたユニットは、耐久性の生体適合性プラスチック又は任意の他の好適な耐久性の生体適合性材料で形成されてもよい。例えば関節窩コンポーネント100はポリエチレンで形成することができる。関節窩コンポーネント100に特によく適しているポリエチレンの1つに、例えば超高分子量ポリエチレン(「UHMPE」)などの高分子量ポリエチレンがある。このようなUHMWPEの1つが、New Brunswick,New JerseyのJohnson & JohnsonよりMARATHON(商標)UHMWPEとして販売されており、参照により本明細書に組み込まれるMcKellopに付与された米国特許第6,228,900号及び同第6,281,264号により詳しく述べられている。
【0019】
関節コンポーネント104及び基部コンポーネント102が別々に形成されている図3の実施形態では、様々なコンポーネントは、異なる材料で形成されてもよい。それ故、関節面134はUHMWPEで形成され得る一方、結合部分136及び基部コンポーネント102は、例えばコバルトクロム合金、ステンレス鋼合金、チタン合金、又は任意の他の好適な耐久性の材料などの好適な生体適合性金属で形成されてもよい。この実施形態では、関節面134は任意の好適な方法で結合部分136に固定される。例えば、関節面134を結合部分136に固着させてもよく、又は関節面134をポリエチレンで形成し、結合部分136に対して圧縮成形してもよい。代替的に、関節面134を、例えば接着剤によって結合部分136に接着してもよい。代替的に、関節面134は、関節面134を結合部分136内にテーパーロック又は他の方法によって圧入することによって結合部分136に機械的に連結されてもよく、結合部分136が例えばリブ、リップ、つめ、及び/又は他の突起、並びにこれらと嵌まり合う溝、うね、又はくぼみ(図示せず)などの任意の他の好適な連結機構を有してもよい。
【0020】
代替的な実施形態では、外側壁106及び底部表面110の1つ又は2つ以上が、関節窩コンポーネント100内への骨の侵入を促進する多孔質コーティングを有してもよい。多孔質コーティングは任意の適当な多孔質コーティングであってよく、例えばNew Brunswick,New JerseyのJohnson & Johnsonの製品であり、参照により本明細書に組み込まれるPilliarに付与された米国特許第3,855,638号により詳しく述べられるPOROCOAT(登録商標)を使用することができる。
【0021】
関節窩コンポーネント100は、関節窩コンポーネント100の移植を容易にするのに使用され得る器具類を組み込んだキットに含まれてもよい。そのような器具類には、下記により詳しく述べられるリーマー及び案内ピンを挙げることができる。加えて、キットは、異なる高さ及び幅を有する基部コンポーネントを含んでもよい。典型的な高さは、10〜30ミリメートル(mm)の範囲であってもよい。キットは更に、異なる直径を有する関節コンポーネントを含んでもよい。一実施形態において、キットは、約23mm〜約30mmの範囲の多様な直径を有する関節コンポーネントを含む。
【0022】
キット内の基部コンポーネントのそれぞれは、他の基部コンポーネント102のそれぞれのレセプタクル112と同一の形状及び寸法を有するレセプタクル112を有すると共に、関節コンポーネント104のそれぞれは、他の関節コンポーネント104のそれぞれの結合部分136と同一の形状及び寸法を有する結合部分136を有することが好ましい。したがって、任意の関節コンポーネント104は、キット内の任意の基部コンポーネント102と結合されることができる。
【0023】
関節窩コンポーネント100を含むキットを使用して、図10に示す手技150に従って、関節窩コンポーネントを以前受容している肩甲骨内に関節窩コンポーネント100を移植することができる。手技150によれば、ブロック152において、所望の外科的手法に従って肩甲骨にアクセスする。次いで、ブロック154において、以前移植した関節窩コンポーネントを除去する。ブロック156において、同時係属の米国特許出願第号[代理人整理番号1671−0479]に更に記載されている下関節窩円の中心を、肩甲骨に関して同定する。下関節窩円の視覚的同定と、したがって下関節窩円の中心との視覚的同定とは、ブロック152において肩甲骨にアクセスした後に可能であるが、代替的に、下関節窩円の中心は、患者を切開する前又は切開した後にイメージング又は他の技術の援助により同定されてもよい。
【0024】
ブロック156において下関節窩円の中心が同定された後、下関節窩円の中心を通して延び、関節窩の関節面と直交する関節窩軸線を同定する(ブロック158)。代替的な手法では、関節窩軸線は、下関節窩円の中心以外の位置にて肩甲骨を通して延びてもよい。関節窩軸線は、患者を切開する前又は切開した後に、イメージング又は他の技術の援助により同定されてもよい。
【0025】
次に、案内ピンの長手方向軸線が関節窩軸線と同延となるように、案内ピンを肩甲骨内に配置する(ブロック160)。次いで、関節窩内に円形空洞をリーミングし(ブロック162)、関節窩表面を平滑化する(ブロック164)。この円形空洞は、修正関節窩基部コンポーネント102の直径よりも僅かに大きいことが好ましい。それにより、下記により詳しく述べるように、有意に損なわれている場合がある関節窩に応力を与えずに基部コンポーネント102を配置することが可能となる。ブロック166において、必要であれば、案内ピン上に骨移植片コンパクターを使用して、修正関節窩コンポーネントを受容する必要のない関節窩の空隙範囲内を満たす。次いで、基部コンポーネント102の案内孔122を案内ピンと整合し、かつ案内ピン上に挿入する(ブロック168)。
【0026】
次いで、案内ピンを案内として使用して、準備された関節窩内に基部コンポーネント102を移植する(ブロック170)。案内ピンは関節窩軸線上に配置され、また案内孔122内に配置されているため、案内ピンを使用することにより基部コンポーネントの中心軸線124(図6参照)が関節窩軸線と確実に整合される。ブロック172において、基部コンポーネント122を更に案内ピンの周囲にて回転させて、締結具孔116、118及び120の1つ又は2つ以上を、A.Karellseら、「Pillars of the Scapula」,Clinical Anatomy,vol.20,pp.392〜399(2007)により記載されているような肩甲骨の支柱の対応する1つと整合してもよい。典型的には、締結具孔116、118及び120の少なくとも2つは、外側支柱及び脊柱支柱にアクセスするように配置されてもよい。上述したように、関節窩内の空洞は基部コンポーネント102よりも僅かに大きいため、基部コンポーネント102の回転が容易になる。
【0027】
次いで、案内ピンを除去してもよく(ブロック174)、1つ又は2つ以上の締結具を締結具孔116、118及び120を通して挿入して、基部コンポーネント102を肩甲骨に取り付けてもよい(ブロック176)。基部コンポーネント102のしっかりした固定を確実にするために、1つ又は更には2つの締結具が肩甲骨の1つ又は2つ以上の支柱内の硬い骨材料内に延びることが好ましい。締結具孔116、118及び120は、しっかりした固定の達成を補助するように、様々な角度の締結具配置を可能にするように構成されてもよい。次いで、所望の関節コンポーネントを獲得し(ブロック178)、結合部分136をレセプタクル112と整合する(ブロック180)。次いで、結合部分136をレセプタクル112内に移動し、関節コンポーネント104を基部コンポーネント102に結合する(ブロック182)。この結合は、結合部分136及びレセプタクル112が摩擦嵌合、Morseテーパなどを形成するように、結合部分136及びレセプタクル112を形成することによって容易になり得る。上述したように、関節コンポーネント104は最下点138が軸線140上に存在するように基部コンポーネント102と結合するよう構成されているため、関節コンポーネント104が基部コンポーネント102に結合された後、最下点138は関節窩軸線と整合されるであろう。
【0028】
図11〜20は、手技220の様々な時点における肩甲骨50を示す。図11では、肩甲骨12は、ブロック152後にて、以前移植した関節窩コンポーネント52と共に示されている。図12は、コンポーネント52を除去した後の肩甲骨50を示す。図12の肩甲骨50は、関節窩コンポーネント52の不安定性をもたらしていた重度の中心骨損失を有する。本明細書に開示した方法及び装置を使用して、軽度から重度の範囲に亘る、中心、周囲、及び組み合わせ欠損を含む多様な関節窩欠損の存在下で後捻関節窩移植を行うことができる。基部コンポーネント102は、上述したように肩甲骨内に圧入されていないため、重度の欠損の存在下においても肩甲骨の一部分を破砕する可能性が低減される。
【0029】
図13は、修正関節窩コンポーネント移植手技を行う際に使用されるキット内に含まれ得る案内ピン190及び案内ピン配置案内192を示す。案内ピン配置案内192は、実質的に下関節窩円上の中心に置かれるように肩甲骨50上に配置される。それ故、案内ピン190は、案内ピン190の長手方向軸線が関節窩軸線と整合した状態で肩甲骨50内に配置される。
【0030】
図14は、案内ピン190が組み合わせリーミング装置194を案内するのに使用されている肩甲骨50を示し、このリーミング装置194も本開示によるキット内に含まれ得る。組み合わせリーミング装置194は、シャフト196及び作業部分198を含む。シャフト196及び作業部分198は、案内ピン190が組み合わせ装置194を正確に位置決めするのに使用されることを可能にするよう管状(cannulated)である。作業部分198は、外側平滑化部分202及び中心リーミング部分204を含む。平滑化部分202及び中心リーミング部分204は、関節窩表面の同時のリーミング及び平滑化を可能にする。代替的に、2つの別個の装置を連続して使用してもよい。
【0031】
肩甲骨50がリーミング及び平滑化された後、いくつかの欠損範囲が存在し得る。したがって、骨移植材料を使用して空隙範囲を満たしてもよい。一実施形態において、キットは、リーミング部分204のような形状を有する管状コンパクターを含む。管状コンパクターは案内ピン190により案内されて骨移植片材料210を詰める(図16参照)一方、基部コンポーネント102の外側壁106よりも僅かに大きく成形された空洞212を維持し、又は最終的に形成することができる。
【0032】
次いで、図17に示すように案内孔202を案内ピン190と整合し、基部コンポーネント102をピン190により空洞212内に案内する。次いで、所望により基部コンポーネント102を空洞212内で回転させて締結具孔116、118又は120を位置決めし、締結具を締結具孔116、118又は120を通過させて硬い骨内に固定する。例として、図18は、締結具孔116を通過している締結具が外側支柱内に固定され得ると共に、締結具孔118を通過している締結具が脊柱支柱内に固定され得るように配置された基部コンポーネント102を示す。したがって、基部コンポーネント102のいくつか又は全部が骨移植片210上に配置され得る場合であっても(例えば図19参照)、基部コンポーネントは肩甲骨50に堅固に固定され得る。それ故、骨移植片材料210が使用されて肩甲骨50の欠損範囲内を満たす場合でも、第2の手術は必要ない。
【0033】
任意の所望の連続(sequence)にて基部102を肩甲骨50に固定して、案内ピン190を除去した後、図19に示すように、選択された関節コンポーネント104の結合部分136を基部コンポーネント102のレセプタクル112と整合する。次いで、結合部分136をレセプタクル112内に移動し、Morseテーパ嵌合によるなどの任意の所望の方法で結合部分136とレセプタクル112との間にて関節コンポーネント104を基部コンポーネント102に結合し、図20の構成をもたらす。図20において、上述したように基部コンポーネント102が、案内孔122の軸線124が関節窩軸線と整合するように固定されたため、最下点138が関節窩軸線上に位置している。
【0034】
前述の実施例では、単一の関節窩コンポーネント100のみを詳細に記載したが、キットは、多数の異なる関節窩コンポーネントを組み込んでもよい。キット内の各関節窩コンポーネントは、異なる直径を有してもよい。加えて、手技150は、上述したものに加えて、多数のやり方で変更されてもよい。例として、上記の実施例では、ブロック182において関節窩コンポーネント100は最下点138が下関節窩円の中心と整合した状態で移植されたが、最下点138は代替的に、下関節窩円の中心からずれていてもよい。例えば、最下点138は、ブロック160において、案内ピン190をずれた位置に配置することにより、下関節窩円の中心から上方及び後方へ約1.1mm、下関節窩円の中心からずれてもよい。イメージング及びコンピューターベースのシステムを使用して、関節窩コンポーネントをこの位置に配置することを補助してもよい。
【0035】
更に、手技150にて特定の連続を記載したが、工程の多数は異なる順序で、及び/又は他の工程と同時に行われてもよい。
【0036】
上述した方法によれば、球状の関節面を有する関節窩コンポーネントは、修正手技において肩の回転点に、又は回転点に非常に近接して、移植される。関節窩コンポーネントの位置により、関節面の曲率半径と一致する曲率半径を有する上腕骨コンポーネントを使用して、拘束嵌合を提供することができる。本明細書で使用するとき、用語「一致する」は、関節面の曲率半径の差が2mm未満であることを意味する。
【0037】
以上の本発明の説明はあくまで説明的なものであって、本発明の範囲を上記に記載した正確な条件に限定することを目的としたものではない。更に、本発明を特定の例示的な実施形態を参照して上記に詳細に説明したが、多くの変形例及び改変例が以下の「特許請求の範囲」において定義される本発明の範囲及び趣旨の範囲内に存在するものである。
【0038】
〔実施の態様〕
(1) 修正肩関節形成術(revision shoulder arthroplasty)に使用されるキットであって、
第1の円形外周を画定するリップと、第2の円形外周を画定する底部表面とを含む基部コンポーネントを有する少なくとも1つの修正関節窩コンポーネントと、
関節窩内に空洞を準備するためのリーマーであって、前記リーマーにより前記関節窩内に空洞が形成された場合、前記基部コンポーネントが前記空洞内に圧入されることなく前記空洞内に適合するように、前記基部コンポーネントに相補的な形状を有し、かつ前記基部コンポーネントよりも僅かに大きいリーマー部分を含む、リーマーと、を含む、キット。
(2) 前記リップがレセプタクルを画定し、
前記キットが複数の関節コンポーネントを含み、前記複数の関節コンポーネントのそれぞれが、前記レセプタクルと結合するように構成された結合部分を含み、
前記少なくとも1つの修正コンポーネントが、前記基部コンポーネントと、前記複数の関節コンポーネントのうちの選択された1つとを含む、実施態様1に記載のキット。
(3) 前記複数の関節コンポーネントが、
第1の直径を有する球状の関節面を含む第1の関節コンポーネントと、
第2の直径を有する球状の関節面を含む第2の関節コンポーネントであって、前記第2の直径が前記第1の直径よりも大きい、第2の関節コンポーネントと、を含む、実施態様2に記載のキット。
(4) 前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
前記複数の関節コンポーネントが、最下点を画定する球状の関節表面を有する第1の関節コンポーネントを含み、前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された際、前記最下点が前記中心軸線と整合されるように構成されている、実施態様2に記載のキット。
(5) 前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
前記複数の関節コンポーネントが、最下点を画定する球状の関節表面を有する第1の関節コンポーネントを含み、前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された場合、前記最下点が前記中心軸線からずれるように構成されている、実施態様2に記載のキット。
【0039】
(6) 前記基部コンポーネント及び前記第1の関節コンポーネントが、前記第1の関節コンポーネントが前記基部コンポーネントと結合された場合、前記最下点が前記中心軸線から約1.1ミリメートルずれるように構成されている、実施態様5に記載のキット。
(7) 前記レセプタクルが中心軸線を画定し、
基部コンポーネント案内穴が、前記レセプタクルから前記底部表面に延び、前記中心軸線と整合される、実施態様2に記載のキット。
(8) 前記基部コンポーネントが、
複数の締結具孔を更に含み、前記複数の締結具孔のそれぞれが、前記レセプタクルから前記底部表面に延び、前記中心軸線からずれている、実施態様7に記載のキット。
(9) 前記リーマーが、
前記リーマー部分を通して延びるリーマー案内穴と、
前記リーマー部分の外側に位置する平滑化部分と、を含む、実施態様7に記載のキット。
(10) 管状コンパクターであって、前記コンパクターを使用して前記関節窩内に空洞が形成された場合、前記基部コンポーネントが、前記空洞内に圧入されることなく、前記管状コンパクターを使用して形成された前記空洞内に適合するように、前記基部コンポーネントに相補的な形状を有し、かつ前記基部コンポーネントよりも僅かに大きい空洞を形成するように構成されている、管状コンパクターを更に含む、実施態様9に記載のキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
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図18
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図20