(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017488
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】床面仕上げ装置
(51)【国際特許分類】
E04F 21/24 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
E04F21/24 D
E04F21/24 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-75699(P2014-75699)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-196994(P2015-196994A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503429940
【氏名又は名称】有限会社上成工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】木場 義幸
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3892029(JP,B2)
【文献】
特開平07−229303(JP,A)
【文献】
特開平08−156542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/24
E04G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ対象床面に接触しながらプロペラ状に回転する動力式の回転鏝を有する平面均し機と、前記平面均し機に連結手段を介して連結された状態で前記平面均し機の外周の一部に配置された弾性を有する平板状の仕上げ鏝と、前記仕上げ鏝を前記仕上げ対象床面に向かって押圧する押圧手段と、とを備え、
前記連結手段が、前記仕上げ対象面に接触した前記仕上げ鏝を上下移動可能且つ前記平面均し機の外周を水平方向に旋回可能に連結するとともに、前記平面均し機に対し前記仕上げ鏝を、前記仕上げ対象床面上を滑動する方向に沿って、接近離隔可能に連結する機能を有することを特徴とする床面仕上げ装置。
【請求項2】
前記連結手段が、前記平面均し機と前記仕上げ鏝とを連結する方向の長径を有する長孔が開設された軸受部材と、前記長径方向に移動可能な状態で前記長孔内に軸支された軸部材とで構成された請求項1記載の床面仕上げ装置。
【請求項3】
前記仕上げ対象面に接触した前記仕上げ鏝の前記仕上げ対象床面に対する接触角度を変更する角度調節機構を設けた請求項1又は2記載の床面仕上げ装置。
【請求項4】
前記仕上げ鏝が通過した後の前記仕上げ対象床面に接触するブラシ鏝を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の床面仕上げ装置。
【請求項5】
前記平面均し機に作業者が搭乗可能である請求項1〜4のいずれかに記載の床面仕上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル建設現場や各種コンクリート構造物の建設工事現場などにおいて、打設後のコンクリート床面やモルタル床面の最終仕上げ作業を行う際に使用する床面仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタルを用いて建築物の床面を施工する場合、従来、以下のような作業が行われている。まず、施工現場に打設された生コンクリートを平坦に均す「床レベル出し」作業を行う。その後、数時間放置し、「トロウェル」と呼ばれる床面均し機を用いて、コンクリート床面を満遍なく加圧して平面化する。そして、最後に、熟練作業者が仕上げ鏝(角鏝)を用いて、手作業により最終仕上げを行っている。
【0003】
床面施工作業において使用される床面均し機は、コンクリート床面に接した状態でプロペラ状に回転する動力式の回転鏝を有するものが代表的である(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
前述した床面均し機を使用することにより、コンクリート床面を加圧平面化する作業を効率化することができるが、床面均し機で加圧作業した後のコンクリート床面には、回転鏝の回転痕が縞状になって残るので、床面均し機のみで床面の最終仕上げ工程を完了させることは不可能である。このため、最終仕上げ工程は、熟練作業者が仕上げ鏝(角鏝)を使用して手作業で行っている。従って、最終仕上げ工程が完了するまでには、多大な労力と時間とを要するだけでなく、作業者には過大な肉体的負担を強いている。
【0005】
このような問題を解決するため、熟練作業者の手作業による最終仕上げ工程を省略するとともに、作業者の肉体的負担を軽減することのできる床面仕上げ装置が提案されている(例えば、特許文献3〜6参照。)。これらの床面仕上げ装置は、原動機によりプロペラ状に回転する回転鏝と、回転鏝によって均された面を平面に仕上げるための平板状の仕上げ鏝とを備えている。
【0006】
特許文献3〜6に記載された床面仕上げ装置は、プロペラ式の回転鏝による均し作業後のコンクリート床面に残る縞状の回転痕などを、その後に続いてコンクリート床面上を滑動する平板状の仕上げ鏝によって消すようにしたものである。しかしながら、実際には、これらの床面仕上げ装置が通過した後のコンクリート床面には、人間の目で容易に分かる程度の細かな凹凸や縞状痕が残ることが多い。
【0007】
例えば、特許文献3,4に記載の床面仕上げ装置の場合、バネなどの弾性材による付勢力を仕上げ鏝の左右両端付近に加えることによってコンクリート床面を押圧する構造となっているため、仕上げ鏝の左右両端部分に押圧力が集中して、この両端部分が通過した後のコンクリート床面に縞状痕が残ることが多い。また、仕上げ鏝の左右両端が拘束されているため、仕上げ前のコンクリート床面の凹凸状態に対する追従性が悪く、コンクリート床面の状況に即した仕上げ作業を行うことができない。
【0008】
また、特許文献5記載の床面仕上げ装置は、ハンドルに設けられた、自転車のブレーキレバー状のレバーを作業員が手で握ると、鏝本体の金属板がコンクリート床面に当接して仕上げ作業を行う構造となっている。このため、鏝本体による仕上げ作業中、作業員は休み無くレバーを握り続けなければならず、肉体的負担が大である。また、レバーを握る力が変化すると、直ちに鏝本体の傾斜角度およびコンクリート床面に対する押圧力が変化するため、均一な仕上げ面を得ることは不可能に近い。
【0009】
さらに、仕上げ鏝の動きは、レバーと連結したワイヤによって拘束されているため、仕上げ前のコンクリート床面の凹凸状態に対する追従性が悪く、特許文献3,4記載の床面仕上げ装置と同様、コンクリート床面の状態に即した仕上げ作業を行うことができない。
【0010】
特に、特許文献5記載の床面仕上げ装置は、作業員がハンドルを操作して回転鏝を有する本体部を傾けることによって進行方向をコントロールする方式であるため、本体部を傾けると仕上げ鏝も追随して傾き、その都度、仕上げ面に対する仕上げ鏝の押圧力が変化するため、仕上げ面に凹凸が生じる。
【0011】
また、特許文献6記載の床面仕上げ装置は、仕上げ鏝部が枢支アームを介してトロウェルに拘束されているので、トロウェルの動きが仕上げ鏝部に伝わり易く、仕上げ前のコンクリート床面の凹凸状態に対する追従性も悪い。このため、特許文献6記載の床面仕上げ装置のみにより、床面コンクリート床面の状況に即した最終仕上げ作業を完了させることができない。
【0012】
このように、特許文献3〜6に記載の床面仕上げ装置を使用しても、コンクリート床面に凹凸や縞状痕などが残ってしまうため、これらの床面仕上げ装置のみにより、コンクリート床面の平面均しから最終仕上げまでを完了させることは事実上不可能であった。即ち、特許文献3〜6記載の床面仕上げ装置を使用しても、熟練作業者の手作業による最終仕上げ工程を無くすことができないのが実状であった。
【0013】
そこで、本願発明者は、永年に亘って床面仕上げ装置に関する研究を行った結果、熟練作業者の手作業に頼ることなく、コンクリート床面の最終仕上げを行うことができる床面仕上げ装置を開発し、例えば、特許文献7などにおいて開示している。特許文献7記載の床面仕上げ装置を使用することにより、平面性および美観性に優れたコンクリート床面を比較的短時間で形成することができ、作業者の労力軽減および熟練作業者の削減を図ることができる。
【0014】
また、本願発明者は、特許文献7中の
図13,
図14などにおいて、作業者が搭乗して床面仕上げ作業を行うことができる床面仕上げ装置60を開示している。この床面仕上げ装置60は、
図10に示すように、原動機(図示せず)によってプロペラ状に回転する回転鏝63が左右2カ所に配置された床面均し機165と、二本の昇降アーム65を介して平面均し機165の背面側に配置された仕上げ鏝68とを備えている。平面均し機165の上方には、平面均し機165に搭乗した作業者が腰掛けるための搭乗部Sが設けられている。
【0015】
平面均し機165の背面側に配置された水平支軸64に二本の昇降アーム65が回動可能に軸支され、平面均し機165の背面側の中央部分に立設された垂直支軸62に水平支軸64の中央部が取り付けられている。水平支軸64は垂直支軸62を中心に回動可能である。昇降アーム65の先端側に取り付けられた仕上げ鏝68の中央部分に滑車67が配置され、垂直支軸62の上端部分に滑車69が配置されている。仕上げ鏝68は水平支軸64を中心に回動して昇降可能であり、且つ、垂直支軸62を中心に旋回可能である。
【0016】
また、水平支軸64を中心に仕上げ鏝68を回動昇降させるために、電動式の巻き取り機61に基端側が巻回されたワイヤ66の先端側が滑車69を経由して滑車67に掛け渡され、滑車67でUターンした状態で垂直支軸62に固定されている。作業者(図示せず)は搭乗部Sに腰掛けて、2本の操作ハンドルHをそれぞれ左右の手で把持し、前後左右に傾動操作することにより、平面均し機165とともに床面仕上げ装置60全体の前進後退、左右移動及び方向変換を行うことができる。
【0017】
図10に示すように、作業者が操作ハンドルHを操作しながら、床面仕上げ装置60を仕上げ対象床面に沿って矢線P方向に水平移動させていくと、プロペラ状に回転する回転鏝63で仕上げ対象床面の加圧均しを行い、その後に続いて仕上げ対象床面上を滑動する仕上げ鏝68によって最終仕上げを行うことができる。
【0018】
床面仕上げ装置60は、左右2カ所に回転鏝63が配置された床面均し機165を備えているため、床面均し機165の幅方向W(矢線P方向と直交する方向)のサイズが大きな仕上げ鏝68を装着することができる。従って、幅方向Wのサイズが大きな仕上げ鏝68を装着した床面仕上げ装置60を矢線P方向に進行させれば、1回の移動により、仕上げ対象床面を幅広く仕上げることが可能であるため、施工面積が広大である場合の作業効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実開平5−57198号公報
【特許文献2】特開昭62−148762号公報
【特許文献3】実開昭50−45025号公報
【特許文献4】実開昭50−73219号公報
【特許文献5】特開2004−225523号公報
【特許文献6】特開2011−117176号公報
【特許文献7】特許第3892029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図10に示す従来の床面仕上げ装置60は、前述したように、1回の移動により仕上げ対象床面を幅広く仕上げることができる点において優れている。しかしながら、床面仕上げ装置60を使用してコンクリート床面の仕上げ作業を行っている最中に、操作ハンドルHを操作して床面仕上げ装置60を方向変換させようとしたとき、例えば、左側(矢線L方向)に方向変換(旋回)させようとしたとき、仕上げ鏝68よりも先に平面均し機165が矢線L方向に向かうので、平面視状態にて、仕上げ鏝68は平面均し機165に対し相対的に斜めを向いた状態、即ち、
図10中にて二点鎖線で示している仕上げ鏝68xに示す状態となる。
【0021】
ところが、この後、そのままの状態で平面均し機165が矢線L方向に進行すると、仕上げ鏝68xの左端部68xaが仕上げ対象床面に突き当って、仕上げ対象床面を損傷させることがある。同様に、床面仕上げ装置60を右側(矢線R方向)に方向変換させる際に平面均し機165を右側(矢線R方向)に進行させたときも、仕上げ鏝68xの右端部68xbが仕上げ対象床面に突き当ったり、仕上げ対象床面を引っ掻いたりして、当該仕上げ対象床面を損傷させることがある。
【0022】
このように、従来の床面仕上げ装置60は、仕上げ作業中に方向変換(旋回)しようとすると、旋回方向の内周側に位置する仕上げ鏝68の端部68xa,68xbが仕上げ対象床面に突き掛かったり、引っ掻いたりして、仕上げ対象床面を損傷することがある。このため、床面仕上げ装置60による仕上げ作業中にUターンなどの方向変換(旋回)が必要になった場合、その都度、仕上げ鏝68を上昇させて、仕上げ対象床面から離した状態にして方向変換(旋回)を行っている。
【0023】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コンクリート床面の仕上げ作業中に、コンクリート床面を損傷することなく、容易に方向変換可能な床面仕上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の床面仕上げ装置は、仕上げ対象床面に接触しながらプロペラ状に回転する動力式の回転鏝を有する平面均し機と、前記平面均し機に連結手段を介して連結された状態で前記平面均し機の外周の一部に配置された弾性を有する平板状の仕上げ鏝と、前記仕上げ鏝を前記仕上げ対象床面に向かって押圧する押圧手段と、とを備え、
前記連結手段が、前記仕上げ対象面に接触した前記仕上げ鏝を上下移動可能且つ前記平面均し機の外周を水平方向に旋回可能に連結するとともに、前記平面均し機に対し前記仕上げ鏝を
、前記仕上げ対象床面上を滑動する方向に沿って、接近離隔可能に連結する機能を有することを特徴とする。
【0025】
ここで、前記連結手段を、前記平面均し機と前記仕上げ鏝とを連結する方向の長径を有する長孔が開設された軸受部材と、前記長径方向に移動可能な状態で前記長孔内に軸支された軸部材とで構成することができる。
【0026】
また、前記仕上げ対象床面に対する前記仕上げ鏝の接触角度を変更する角度調節機構を設けることができる。
【0027】
さらに、前記仕上げ鏝が通過した後の前記仕上げ対象床面に接触するブラシ鏝を設けることもできる。
【0028】
一方、前記平面均し機に作業者が搭乗可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、コンクリート床面の仕上げ作業中に、コンクリート床面を損傷することなく、容易に方向変換可能な床面仕上げ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態である床面仕上げ装置を示す一部省略側面図である。
【
図2】
図1に示す床面仕上げ装置の一部拡大図である。
【
図3】
図1に示す床面仕上げ装置の一部省略平面図である。
【
図4】
図3に示す平面仕上げ装置の一部拡大図である。
【
図5】
図1に示す床面仕上げ装置による作業工程を示す模式平面図である。
【
図6】
図1に示す床面仕上げ装置による作業工程を示す模式平面図である。
【
図7】
図1に示す床面仕上げ装置による作業工程を示す模式平面図である。
【
図8】
図1に示す床面仕上げ装置による作業工程を示す模式平面図である。
【
図9】その他の実施形態である床面仕上げ装置を示す一部省略側面図である。
【
図10】従来の床面仕上げ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1〜
図8に基づいて、本発明の第1実施形態である床面仕上げ装置100について説明する。
【0032】
図1〜
図4に示すように、床面仕上げ装置100は、仕上げ対象床面Fに接触しながらプロペラ状に回転する複数の動力式の回転鏝1,2を有する平面均し機10と、平面均し機10の後方に連結手段30を介して連結された状態で平面均し機10の外周の一部に配置された弾性を有する平板状の仕上げ鏝70と、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fに向かって押圧する押圧手段90と、を備えている。
【0033】
平面均し機10の上方には、平面均し機10に搭乗した作業者(図示せず)が腰掛けるための搭乗部Sが設けられ、搭乗部Sの下方には、回転鏝1,2を駆動するための原動機11及び原動機11の回転を減速して回転鏝1,2に伝えるための動力伝達機構12などが配置され、搭乗部Sの前方には、作業者が左右の手で操作する2本の操作ハンドルH1,H2が起立状に配置されている。
【0034】
後述するように、作業者(図示せず)は搭乗部Sに腰掛けて、2本の操作ハンドルH1,H2をそれぞれ左右の手で把持し、前後左右に傾動操作することにより、平面均し機10とともに床面仕上げ装置100全体を前進後退させたり、左右移動させたり、方向変換させたりすることができる。なお、床面仕上げ装置100における前後左右及び上下の各方向は、平面均し機10の搭乗部Sに矢線P方向を向いて腰掛けた作業者を基準として表現したものである(以下、同様とする。)。
【0035】
連結手段30は、平面均し機10と仕上げ鏝70とを連結する方向の長径31aを有する長孔31が開設された軸受部材32と、長径31aの方向に移動可能な状態で長孔31内に軸支された軸部材33とで構成されている。軸受部材32は、平面均し機10の後方のガード部材13において当該平面均し機10の幅方向Wの中心を挟んで左右対称の位置にそれぞれ二個一組をなすように配置されている。
【0036】
左右二組の軸受部材32はそれぞれ矢線P方向と平行であって且つ互いに平行をなすように配置され、二個の軸受部材32の間に主アーム91の前端部91a側が隙間Gを設けた状態で挟持され、軸受部材32の長孔31及び主アーム91の前端部91aを貫通する軸部材33が設けられている。主アーム91は軸部材33を中心に回動自在であり、軸部材33とともに長孔31の長径31a方向に移動自在である。また、軸部33の外径は長孔31の短径より小さく、軸部33の外周面と長孔31の内周面(平面部分)との間には常に隙間が形成されている。
【0037】
このように、連結手段30は、仕上げ対象面Fに接触した仕上げ鏝70を上下移動可能且つ平面均し機10の外周を水平方向に旋回可能に連結するとともに、平面均し機10に対し仕上げ鏝70を接近離隔可能に連結する機能を有している。
【0038】
二本の主アーム91の後端部91bは幅方向Wと平行に配置された水平部材92に固着され、水平部材92の両端部の支軸93にそれぞれ副アーム94の前端部94aが回動自在に取り付けられている。二本の副アーム94の後端部94bには、仕上げ鏝70を取り付けるための固定部材95が固着され、この固定部材95に仕上げ鏝70が複数のネジ(図示せず)を用いて着脱可能に取り付けられている。
【0039】
固定部材95の中央部分には、後述する昇降アーム80の後端部80bに係止されたワイヤ81を係止するためのフック部材96が設けられている。水平部材92と固定部材95との間には、支軸93を中心にして副アーム94及び固定部材95を上方に引き上げる方向(
図2中の矢線U方向)に回動するように付勢する複数のバネ97と、
図2中の矢線U方向への副アーム94及び固定部材95の回動を所定位置で阻止するための支持部材98及びストッパ99が設けられている。支持部材98は固定部材95の前面部分に固定され、ストッパ99は水平部材92の上面部分に固着されている。
【0040】
平面均し機10のガード部材13の中央部分には、昇降アーム80をシーソー状に回動自在に支える水平支軸83を有する支持部材86が立設され、平面均し機10の搭乗部Sの後部に配置された電動機84で作動する伸縮シリンダ85に昇降アーム80の前端部80aが軸支されている。
【0041】
電動機84を作動させて伸縮シリンダ85を伸展させると昇降アーム80の前端部80aが下降し、これに伴って昇降アーム80の後端部80bが水平支軸83を中心に上昇方向に回動するので、後端部80bとフック部材96との間に係止されたワイヤ81により固定部材95及び仕上げ鏝70などが引き上げられ、主アーム91の後端部91b側も軸部材33を中心に回動しながら上昇する。
【0042】
前述と逆に、電動機84を作動させて伸縮シリンダ85を収縮させると昇降アーム80の前端部80aが上昇し、これに伴って昇降アーム80の後端部80bが水平支軸83を中心に下降方向に回動するので、後端部80bとフック部材96との間に係止されたワイヤ81とともに固定部材95及び仕上げ鏝70などが下降し、主アーム91の後端部91b側も軸部材33を中心に回動しながら下降する。
【0043】
このように、伸縮シリンダ85を進展させることにより、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fから離脱させることができ、伸縮シリンダ85を収縮させることにより、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fに接触させることができる。仕上げ鏝70が仕上げ対象床面Fに接触するまで下降させたとき、
図2に示すように、昇降アーム80の後端部80bとフック部材96との間のワイヤ81は大きく湾曲する程度まで弛緩した状態となるので、後述する仕上げ作業中における仕上げ鏝70及び固定部材95などの動きがワイヤ81によって拘束されたり、制限されたりすることはない。なお、電動機84で作動する伸縮シリンダ85は、仕上げ鏝70の昇降手段の一例であり、これに限定しないので、その他の方式(例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、ワイヤ巻き上げ機、手動昇降機など)を採用することもできる。
【0044】
一方、固定部材95の中央部分にはワイヤ82の後端部が係止され、ワイヤ82の前端部が平面均し機10に設けられた角度調節レバー(図示せず)に係止されている。角度調節レバーをワイヤ82の引張方向に操作すると、バネ97の付勢力に逆らって副アーム94及び固定部材95が支軸93を中心にして下降する方向(
図2中の矢線D方向)に回動する。角度調節レバーをワイヤ82の弛緩方向に操作すると、バネ97の復元力により副アーム94及び固定部材95が支軸93を中心にして上昇する方向(
図2中の矢線U方向)に回動する。このように、平面均し機10に設けられた角度調節レバー(図示せず)を操作することにより、仕上げ対象床面Fに仕上げ鏝70が接触している場合の接触角度を変更することができる。
【0045】
また、伸縮シリンダ85を収縮させて、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fに接触させたとき、主アーム91及び主アーム91の後端部91bの後方に連接された各種部材(水平部材92、副アーム94、固定部材95及び支持部材98など)の重さにより、仕上げ鏝70が仕上げ対象床面Fに押圧されるようになっている。即ち、主アーム91及び主アーム91の後端部91bの後方に連接された各種部材の自重が仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fに向かって押圧する押圧手段90として機能している。
【0046】
ここで、床面仕上げ装置100の使い方及び機能などについて説明する。
図1,
図3に示すように、施工現場に搬入した床面仕上げ装置100を、コンクリート固化前の仕上げ対象床面F上に載置し、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面Fに対し適切な接触角度で接触させた後、原動機11を始動して平面均し機10の回転鏝1,2を回転させる。
【0047】
この後、搭乗部Sに腰掛けた作業者が操作ハンドルH1,H2を操作しながら、床面仕上げ装置100を仕上げ対象床面Fに沿って矢線P方向に水平移動させていくと、プロペラ状に回転する回転鏝1,2によって仕上げ対象床面Fの加圧均しが行われ、その後に続いて仕上げ対象床面F上を滑動する仕上げ鏝70によって床面の最終仕上げを行うことができる。
【0048】
このとき、仕上げ鏝70は、矢線P方向に向かって仰角をもった傾斜姿勢で昇降可能及び旋回可能に保持されながら、平面均し機10の牽引力以外の動き(振動、搖動など)の影響を受けることなく、その状態で押圧手段90により仕上げ対象床面Fに向かって押圧されているため、仕上げ前のコンクリート床面の凹凸状態に対する追従性が良好であり、恰も熟練作業者が手作業で行うような鏝作業を仕上げ対象床面Fに施すことができる。このため、平面性および美観性に優れたコンクリート床面を比較的短時間で形成することができ、作業者の労力軽減および熟練作業者の削減を図ることができる。
【0049】
なお、押圧手段90の代わりの押圧手段あるいは押圧手段90に付加する押圧手段として、固定部材95に着脱可能な錘を設けることもできる。また、押圧手段としては、バネ、ゴムなどの弾性変形可能な部材、あるいは密封された気体の圧力によって弾性力を発生する気体シリンダなどを用いることも可能である。
【0050】
床面仕上げ装置100が矢線P方向に直進しているとき、
図5に示すように、左右二つの連結手段30を構成する軸部材33は、それぞれ軸受部材32の長孔31の後端部分に位置しているので、仕上げ鏝70の左右両端部はそれぞれ矢線Q方向に移動可能である。従って、仕上げ鏝70の左右両端部の滑動抵抗に差が生じたとき、仕上げ鏝70は矢線Q方向の動きで対応することができ、仕上げ対象床面を傷つけることはない。
【0051】
次に、
図6〜
図8に基づいて、床面仕上げ装置100の旋回動作について説明する。なお、床面仕上げ装置100が旋回するときの平面均し機10に対する仕上げ鏝70の追従動作については、動きが速く目視観察のみでは完全に解明できず、不明な点もあるので、一部推測を交えて説明している。
図6に示すように、平面均し機10を左旋回させると、その直後、仕上げ鏝70は平面均し機10に対し斜めを向いた状態となる。このとき、右側の連結手段30の軸部材33は長孔31の後端部分に位置し、左側の連結手段30の軸部材33は長孔31の前端部分に位置する。
【0052】
平面均し機10が左旋回しているとき、仕上げ鏝70の左端部分(旋回方向の内側部分)は仕上げ対象床面に引っ掛かることがあるが、このとき、
図7に示すように、仕上げ鏝70の左端部分が床面から受ける接触抵抗により、仕上げ鏝70の左端部分は矢線Q1方向へ逃げるように(平面均し機10から離れる方向に)移動可能であるため、仕上げ対象床面を損傷することがない。
【0053】
平面均し機10の左旋回が完了した後は、
図8に示すように、左右の連結手段30の軸部材33は、直進状態のときと同様に、長孔31の後端部分に位置するので、そのまま仕上げ作業を続行することができる。また、図示していないが、平面均し機10が右旋回するときも前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
このように、床面仕上げ装置100を用いたコンクリート床面の仕上げ作業中に仕上げ鏝70の左端部分や右端部分に片寄った滑動抵抗が生じたとき、軸部材33の長孔31の長径方向の移動に伴う平面均し機10に対する仕上げ鏝70の接近離隔移動で対応することができるので、平面均し機10の旋回中に仕上げ対象床面Fを損傷することがない。従って、床面仕上げ装置100はコンクリート床面の仕上げ作業中に、仕上げ鏝70を仕上げ対象床面に接地したままの状態で、コンクリート床面を損傷することなく、容易に方向変換可能である。
【0055】
床面仕上げ装置100においては、二個一組の軸受部材32と軸部材33と備えた連結手段30を左右二箇所に設けているが、これに限定しないので、平面均し装置10及び仕上げ鏝70の幅方向Wのサイズに応じて、一箇所若しくは三か所以上に連結手段30を設けることもできる。
【0056】
床面仕上げ装置100においては、長孔31が開設された軸受部材32を平面均し機10側の部材(ガード部材13)に設け、長径31aの方向に移動可能な状態で長孔31内に軸支された軸部材33を仕上げ鏝70側の部材(主アーム91)に設けているが、これと逆に、仕上げ鏝70側の部材に軸受部材32を設け、平面均し機10側の部材に軸部材33を設けることもできる。
【0057】
床面仕上げ装置100においては、連結手段30として、連結手段30は、長孔31が開設された軸受部材32と、長径31aの方向に移動可能な状態で長孔31内に軸支された軸部材33とで構成されているが、これに限定しないので、平面均し機10に対し仕上げ鏝70を接近離隔可能に連結する機能を有するものであれば、例えば、レールとスライダとの組み合わせ機構、シリンダとピストンとの組み合わせ機構、リンク機構、パンタグラフ機構、弾性伸縮機構などを用いることもできる。
【0058】
床面仕上げ装置100を構成する平面均し機10は作業者が搭乗部Sに腰掛けて作業を行う騎乗式であるが、これに限定しないので、作業者が平面均し機を所定方向に引張りながら作業を行う歩行式の平面均し機においても実施可能である。
【0059】
次に、
図9に基づいて、本発明のその他の実施形態である床面仕上げ装置200について説明する。なお、床面仕上げ装置200において、前述した床面仕上げ装置100を構成する部分と同じ部分は、
図1〜
図4中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0060】
図9に示すように、床面仕上げ装置200においては、仕上げ鏝70が通過した後の仕上げ対象床面に接触するブラシ鏝71を備えている。ブラシ鏝71は、仕上げ対象床面Fに対する接触角度を調節するためのリンク機構72及びブラシ鏝71を仕上げ対象床面Fに接触離隔させる昇降操作用のワイヤ73などを有し、リンク機構72と連接された把持部材74を用いて固定部材95に着脱可能に取り付けられている。また、ネジ75を緩めればブラシ鏝71のみの取り換えも可能である。
【0061】
床面仕上げ装置200を使用すれば、仕上げ鏝70によって仕上げられたコンクリート床面にブラシ目を形成することができる。なお、ブラシ鏝71は、ワイヤ73の前端側に設けられた操作レバー(図示せず)を操作することにより、仕上げ鏝70から独立して、ブラシ鏝71のみを仕上げ対象床面Fに接触離隔できる。従って、必要に応じて、ブラシ鏝71を仕上げ対象床面Fから離脱させておけば、床面仕上げ装置200を用いて、前述した床面仕上げ装置100と同様の仕上げ作業のみを行うこともできる。
【0062】
なお、前述した床面仕上げ装置100,200は本発明を例示するものであり、本発明に係る床面仕上げ装置は
図1〜
図9に基づいて説明した床面仕上げ装置100,200に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の床面仕上げ装置は、コンクリート床面やモルタル床面を構築する土木建設業などの分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,2 回転鏝
H1,H2 操作ハンドル
10 平面均し機
11 原動機
12 動力伝達機構
13 ガード部材
30 連結手段
31 長孔
31a 長径
32 軸受部材
33 軸部材
70 仕上げ鏝
71 ブラシ鏝
72 リンク機構
73,81,82 ワイヤ
74 把持部材
75 ネジ
80 昇降アーム
80a,91a,94a 前端部
80b,91b,94b 後端部
83 水平支軸
84 電動機
85 伸縮シリンダ
86,98 支持部材
90 押圧手段
91 主アーム
92 水平部材
93 支軸
94 副アーム
95 固定部材
96 フック部材
97 バネ
99 ストッパ
100,200 床面仕上げ装置
F 仕上げ対象床面
S 搭乗部
G 隙間