(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017500
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
G02B26/12
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-133531(P2014-133531)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12035(P2016-12035A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 将見
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−081659(JP,A)
【文献】
特開平11−231248(JP,A)
【文献】
特開2005−215515(JP,A)
【文献】
特開平03−042516(JP,A)
【文献】
特開平08−179234(JP,A)
【文献】
特開2008−131828(JP,A)
【文献】
特開2006−187970(JP,A)
【文献】
特開2010−020200(JP,A)
【文献】
実開昭60−007005(JP,U)
【文献】
特開平11−190826(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0024699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 − 26/12
B41J 2/47
H04N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜角度が互いに異なる複数の傾斜反射面を有する角錐台形状のチルトミラーがモータの回転子軸の一端側に回転子と共に抜け止めかつ回り止めされて組み付けられ、前記回転子軸は固定子ハウジングに設けられた軸受部によって回転可能に軸支された光走査装置であって、
前記チルトミラーの頂部には軸方向に厚肉に形成された面取り部が設けられ、該面取り部に前記回転子軸が貫通する凹部が形成されており、当該凹部の直上に組み付けられる抜け止め部と前記凹部内底部との間には前記チルトミラーを前記回転子に向かって常時付勢する弾性部材が前記抜け止め部に抜け止めされて埋設されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記凹部の直上に前記回転子軸が貫通する抜け止めワッシャーが前記面取り部から隙間を設けて組み付けられている請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記凹部内底部と前記抜け止め部との間には、コイルばねが圧縮されて嵌め込まれている請求項1又は請求項2記載の光走査装置。
【請求項4】
前記回転子と前記チルトミラーとは凹凸嵌合により回り止めされて組み付けられている請求項1乃至請求項3記載のいずれか1項記載の光走査装置。
【請求項5】
前記チルトミラーの嵌合孔の孔底部と、前記回転子ヨークに設けられた突起部の先端部との間に隙間を設けて凹凸嵌合されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光源から照射された光を走査したり反射光を受光したりするチルトミラーを回転子とともに回転子軸に組み付けられた光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置としては、正多角柱状のポリゴンミラーを回転子とともに回転子軸に嵌め込まれて組み付けられる。具体的には、固定子ハウジングに回転可能に軸支された回転子軸に回転子ヨークが回転可能に固定されている。回転子ヨークに対してポリゴンミラーは回り止めかつ抜け止めされて組み付けられる。ポリゴンミラーは、変形や歪を避けるため、回転子軸に対して直接固定されることなく回転子ヨークと一体に組み付けられる。しかしながら、回転子軸の軸端に組み付けられるため、回転子ヨークの天板を板状の押さえばねなどの付勢部材を用いてポリゴンミラーを回転子ヨークに向かって軸方向に押さえ込むことで抜け止めして組み付けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−330062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような角柱状のポリゴンミラーは、一般に天板部分は平坦な形状であり、多角錐台状のチルトミラーも天板部分は平坦な形状であり押さえばねなどの付勢部材を設ける面積が十分にある。
【0005】
しかしながら、チルトミラーの光量を増やして、ミラー反射面積を広く確保したい場合には、天板部分の面積は可及的に狭くする必要があるため、押さえばね等の付勢部材を設けるスペースがなくなる。ミラーを回転子軸に対して圧入などの歪が発生しやすい固定方法を採用することはできない。
また、仮にチルトミラーの天板部分に板ばね等を設けるとすれば、軸方向の高さが高くなり、軸方向に大型化しやすいという課題もある。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、チルトミラーの反射面積を可及的に広く確保しつつ、抜け止めを確実に行える光走査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
傾斜角度が互いに異なる複数の傾斜反射面を有する
角錐台形状のチルトミラーがモータの回転子軸の一端側に回転子と共に抜け止めかつ回り止めされて組み付けられ、前記回転子軸は固定子ハウジングに設けられた軸受部によって回転可能に軸支された光走査装置であって、前記チルトミラーの頂部には
軸方向に厚肉に形成された面取り部が設けられ、該面取り部に前記回転子軸が貫通する凹部が形成されており、当該凹部の直上に組み付けられる抜け止め部と前記凹部内底部との間には前記チルトミラーを前記回転子に向かって常時付勢する弾性部材が
前記抜け止め部に抜け止めされて埋設されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、チルトミラーの頂部に
軸方向に厚肉に形成された面取り部に凹部が設けられ、該凹部の直上に組み付けられる抜け止め部と凹部内底部との間に弾性部材が
抜け止め部に抜け止めされて埋設されているので、チルトミラーを回転子に向かって常時付勢して抜け止めすることができる。よって、チルトミラーを軸方向に高く成形して反射面の反射面積を増や
して広範囲に反射光を走査することができ、しかも軸方向に大型化することなく抜け止めも行うことができる。
【0009】
前記凹部の直上に
前記回転子軸が貫通する抜け止めワッシャーが
前記面取り部から隙間を設けて組み付けられていることが好ましい。
これにより、抜け止めワッシャーを凹部の直上に
回転子軸を貫通させて設けるだけで弾性部材を圧縮して組み付けることができる。
【0010】
前記凹部内底部と前記抜け止め部との間には、
コイルば
ねが圧縮されて嵌め込まれていてもよい。これにより、凹部を貫通する回転子軸にばね部材を同心状に嵌め込んで抜け止めワッシャーを凹部の直上に設けると、
コイルばねが押し縮められるのでこの弾発力によりチルトミラーを回転子ヨークに対して押さえ込むことができる。
【0011】
前記回転子と前記チルトミラーとは凹凸嵌合により回り止めされて組み付けられていることが望ましい。回転子と一体に回転するチルトミラーが相対回転するのを防ぎ、組み付けも容易に行える。
【0012】
また、
前記チルトミラーの嵌合孔の孔底部と、前記回転子ヨークに設けられた突起部の先端部との間に隙間を設けて凹凸嵌合されていることが好ましい。
これにより、抜け止め部と面取り部との間の隙間に加えて弾性部材による過度の押圧力を逃がして吸収しやすくし回転子側からチルトミラー側に作用する振動を弾性部材によって吸収し易くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上述したようにミラーの反射面積を可及的に広く確保しつつ、抜け止めを確実に行える光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1のチルトミラー頂部の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る光走査装置の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、レーザー照射装置を光源とするレーザー光を反射させて広範囲に照射する光走査装置について説明する。
【0016】
図1に示すように、光走査装置1は、モータ2に傾斜が異なる反射面を有するチルトミラー3がモータ2の回転子軸4の一端側に回転子ヨーク5と共に抜け止めかつ回り止めされて組み付けられている。
先ずモータ2の構造から説明すると、ベースプレート6には固定子ハウジング7が一体に組み付けられている。ベースプレート6上には、回転子磁石5dの磁極を検出するホールIC等のモータ基板8が組み付けられている。
【0017】
筒状の固定子ハウジング7の筒体内部には、第一軸受部9a及び第二軸受部9bが各々組み付けられている。第一軸受部9a及び第二軸受部9bとしては、例えば転がり軸受が用いられる。固定子ハウジング7の外周面には、段付き部7aが設けられている。この段付き部7aには、固定子10が組み付けられている。固定子10は、固定子コア10aがインシュレータにより覆われ各極歯10bにはモータコイル10cが巻かれたものが段付き部7aに組み付けられる。固定子コア10aは、固定子ハウジング7に対して圧入及び接着により組み付けられる。
【0018】
回転子11は、回転子軸4が固定子ハウジング7の第一軸受部9a及び第二軸受部9bによって回転可能に軸支されている。回転子ヨーク5は、回転子ハブ5aに対して環状の回転子ヨーク部5bがかしめられて一体に組み付けられている。回転子ハブ5aの中央部には、回転子ヨーク5b側に向かって筒状のスリーブ5cが軸方向に起立形成されている。このスリーブ5cの筒孔には、回転子軸4が圧入、焼嵌め、接着等により一体に組み付けられている。回転子ハブ5aに形成されたスリーブ5cと軸方向反対側には突起部5eが突設されている。突起部5eは複数設けられていてもよい。また、回転子ヨーク5bの内周面には回転子磁石5dが一体に組み付けられている。回転子磁石5dは周方向にN極及びS極が交互に着磁されており、固定子10の極歯10bと対向して組み付けられる。
【0019】
回転子11には、チルトミラー3が一体に組み付けられる。チルトミラー3は、傾斜角度が異なる複数の反射面3aが形成された角錐台形状をしている。中心部には、回転子軸4を挿入可能な軸孔(貫通孔)3bが設けられている。チルトミラー3は母材(金属材若しくは樹脂材)に対して金属蒸着又は研磨等されて反射面3aが鏡面に仕上げられている。また、チルトミラー3は、モータ2に対向する面に、回転子ヨーク5を収納可能な収納凹部3cが形成されている。この収納凹部3cの内底部3dには、嵌合孔3eが設けられている。
【0020】
固定子10を固定子ハウジング7に組み付け、回転子11を回転子軸4が固定子ハウジング7に挿入されて軸支された後で、チルトミラー3が、回転子
ハブ5aに重ね合わせるように回転子軸4に軸孔3bを挿入して組み付けられる。チルトミラー3は、収納凹部3cに回転子ヨーク5が収納され、嵌合孔3eに突起部5eが嵌め込まれるように内底部3dを回転子ハブ5aと重ね合わせて組み付けられる。突起部5eと嵌合孔3eに凹凸嵌合することで、回転子11と一体に回転するチルトミラー3が相対回転するのを防ぎ、組み付けも容易に行える。
【0021】
図2に示すように、チルトミラー3の頂部には面取り部3fが設けられ、該面取り部3fには回転子軸4が貫通する凹部3gが形成されている。抜け止めワッシャー12(抜け止め部)は、回転子軸4が貫通する凹部3gの直上に面取り部3fから隙間を設けて組み付けられる。抜け止めワッシャー12は、回転子軸4に設けられた止め輪13(スナップリング、eリング)によって軸方向位置が固定されている。
【0022】
前記凹部3gの内底部3hと抜け止めワッシャー12との間には、コイルばね14(弾性部材)が圧縮されて嵌め込まれている。このコイルばね14の弾発力によりチルトミラー3を回転子ヨーク5に向かって常時付勢することで軸方向に抜け止めされている。
【0023】
また、
図2に示すように、チルトミラー3は、嵌合孔3eに突起部5eが嵌め込まれることで回転子10に対して回り止めされて組み付けられている。抜け止めワッシャー12と面取り部3fとの間の隙間に加えて突起部5eの先端部と嵌合孔3eとの孔底部との間にも隙間を設けて嵌め込まれている。これは、コイルばね14による過度の押圧力を逃がして吸収すること及び回転子11側からチルトミラー3側に作用する振動をコイルばね14によって吸収し易くするためである。尚、凹部3gには、コイルばね14に限らず、板バネ、皿ばね、ゴム材等の他の弾性部材であってもよい。
【0024】
また、チルトミラー3の頂部には面取り部3fが設けられていたが、抜け止めワッシャー12の姿勢が安定して組み付けられるのであれば、反射面3aの面積をかせぐうえでは面取り部3fを可及的に省略することが望ましい。
【0025】
以上説明したように、チルトミラー3の頂部に設けられた凹部3gの直上に組み付けられる抜け止めワッッシャ−12と凹部内底部3hとの間に弾性部材(コイルばね14)が組み付けられているので、チルトミラー3を回転子ヨーク5bに向かって常時付勢して抜け止めすることができる。よって、チルトミラー3を軸方向に高く成形して反射面3aの反射面積を増やすことができ、しかも軸方向に大型化することなく抜け止めも行うことができる。
【0026】
また、チルトミラー3の頂部に面取り部3fが設けられ、該面取り部3fに回転子軸4が貫通する凹部3gが形成されていると、抜け止めワッシャー12を凹部3gの直上に組み付けるだけで凹部3g内に装填された弾性部材(コイルばね14)を圧縮して組み付けることができる。
具体的には、凹部3gを貫通する回転子軸4にコイルばね14を同心状に嵌め込み、抜け止めワッシャー12を凹部3gの直上に設けると、コイルばね14が押し縮められるのでこの弾発力によりチルトミラー3を回転子ヨーク5に対して押さえ込むことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 光走査装置 2 モータ 3 チルトミラー 3a 反射面 3b 軸孔 3c 収納凹部 3d,3h 内底部 3e 嵌合孔 3f 面取り部 3g 凹部 4 回転子軸 5 回転子ヨーク 5a 回転子ハブ 5b 回転子ヨーク 5c スリーブ 5d 回転子磁石 5e 突起部 6 ベースプレート 7 固定子ハウジング 7a 段付き部 8 モータ基板 9a 第一軸受部 9b 第二軸受部 10 固定子 10a 固定子コア 10b 極歯 10c モータコイル 11 回転子 12 抜け止めワッシャー 13 止め輪 14 コイルばね