特許第6017514号(P6017514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017514
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】細胞内におけるDNA増幅方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161020BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161020BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161020BHJP
   C07K 14/36 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/21
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N5/10
   !C07K14/36
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-228366(P2014-228366)
(22)【出願日】2014年11月10日
(62)【分割の表示】特願2010-515933(P2010-515933)の分割
【原出願日】2009年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-70845(P2015-70845A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2008-147927(P2008-147927)
(32)【優先日】2008年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】村上 健
(72)【発明者】
【氏名】隅田 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】矢内 耕二
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05240858(US,A)
【文献】 特許第5717443(JP,B2)
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,2006年,Vol. 103, No. 25,pp.9661-9666
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜()からなる群から選択されるいずれか一つのポリヌクレオチド、および細胞ゲノム内に配置されたDNAユニットを含んでなる組み換え細胞を用意し、
ここで、該DNAユニットは、下記()の第一のDNA断片と、対象遺伝子と、下記()の第二のDNA断片とを少なくとも含んでなり、
前記対象遺伝子または前記ポリヌクレオチドが宿主にとって外来性であり、
前記宿主が放線菌であり、
前記組み換え細胞を遺伝子増幅を生じさせる条件下で培養して、前記DNAユニットを増幅させること
を含んでなることを特徴とする、DNA増幅方法:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、DNA増幅活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、DNA増幅活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA、
)配列番号4に記載の塩基配列で表されるDNA。
【請求項2】
前記DNAユニットが、5’末端から順に、第一のDNA断片、対象遺伝子、および第二のDNA断片を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象遺伝子が、抗生物質の生合成遺伝子群からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記DNAユニットが薬剤耐性遺伝子をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドがDNAであり、前記組み換え細胞のゲノム内に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主が、抗生物質産生菌株である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが宿主にとって外来性であり、前記対象遺伝子が宿主にとって内在性または外来性である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を用いる、前記DNAユニットの複数コピーがゲノムに導入されてなる組み換え細胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2008年6月5日に出願された日本国特許出願2008−147927号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、目的物質を高生産する微生物を短期間に取得するために有用なDNA増幅方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発酵工業に用いられる高生産株は、特殊な遺伝的変異を有する良好株を取得する目的で、変異処理を施しながら、数十年にもわたり選別を繰り返し、育種改良して得られたものである。したがって、これらの高生産変異菌株は、企業の生命線であることは疑いもなく、非常に重要な技術の集約物と位置づけられている。しかし、変異処理による菌株改良は、多大な労力と時間を必要とすること、再現性がないこと、優良菌株を取得する頻度が低いこと、などの欠点がある。そのため、近年では、論理的かつ再現可能な技術として、遺伝子操作技術を用いて菌株改良のスピードアップが進められている。
【0004】
目的物質の生産性を向上させる方法として、該物質の生合成に関わる遺伝子の細胞当たりのコピー数を増加させて、それらの発現量を高めることが挙げられる。抗生物質のような2次代謝産物の生合成に必要な遺伝子は、多数からなり、染色体上でクラスターを形成し、その長さは数十kbに及ぶ。このような場合、クラスター全体の遺伝子のコピー数を増加させる技術が開発されれば、多大な成果が期待できる。目的物質の生合成に関わる遺伝子のコピー数を増加させる方法として、高コピー数を維持できるプラスミドにクローン化する方法があるが、高コピー型プラスミドは安定性維持に欠点を持つため、長い領域のDNAをクローニングすることが難しい。また、長い領域のDNAをクローニングするために大腸菌で開発されたコスミドベクターやBACベクターは、安定性を向上させるためにコピー数が制限されている状況にある。
【0005】
ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)で、所定の遺伝子領域を染色体上でタンデムに増幅できる技術が報告されている(米国特許5240858)。しかし、この技術は10kb以下の遺伝子のコピー数を増幅できる技術として示されているに過ぎず、巨大サイズの遺伝子領域をゲノム上でタンデムに増幅させることに応用することはできていなかった。
【0006】
一方、カナマイシン生合成遺伝子群が、2002年に初めてクローニングされたことが報告された(特開2004−173537)。さらに、発酵工業で用いられているカナマイシン高生産株の遺伝子解析の結果、カナマイシン生合成遺伝子群のコピー数が増幅している現象が報告された(ヤナイ&ムラカミ(Yanai,K. & Murakami,T.)著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),2004年,第57巻,p.351−354)。その後、カナマイシン高生産株においては、カナマイシン生合成遺伝子クラスターを含む増幅ユニットのサイズが145kbであることと、その増幅ユニットが36コピー以上に増幅されていることが示された(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。しかしながら、これらの現象を示す高生産株は、長期間にわたる変異処理とカナマイシン生産性の向上を指標にした選抜が、繰り返し積み重ねられてきた結果として得られたものである(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。したがって、カナマイシン高生産株で発見された巨大サイズのDNA領域の増幅現象を再現することや、それに関与する鍵遺伝子を発見する事は、不可能であろうと考えられていた。
【0007】
このような背景のもと、抗生物質のような2次代謝産物の生合成に必要な遺伝子クラスターにも適用可能な巨大サイズのDNA領域をゲノム上でタンデムに増幅させる方法が、依然として求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、今般、細胞内において、特定タンパク質をコードするポリヌクレオチドの存在下、巨大サイズのDNA領域を効率的に増幅しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、巨大サイズのDNA領域を細胞内において効率的に増幅する方法の提供をその目的としている。
【0009】
そして、本発明によれば、細胞内におけるDNA増幅方法であって、以下の(i)、(ii)および(iii)から選択されるDNAの存在下で、増幅対象のDNAを増幅させることを特徴とする、DNA増幅方法が提供される;
(i)以下の1)、2)、および3)から選択されるタンパク質をコードするDNA:
1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、
2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、
3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、
(ii)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
(iii)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA。
【0010】
また、本発明の別の態様によれば、下記(A)〜(E)からなる群から選択されるいずれか一つのポリヌクレオチド、および細胞ゲノム内に配置されたDNAユニットを含んでなる組み換え細胞を用意し、
ここで、該DNAユニットは、下記(F)〜(H)からなる群から選択される第一のDNA断片と、対象遺伝子と、下記(I)〜(K)からなる群から選択される第二のDNA断片とを少なくとも含んでなり、
対象遺伝子または前記ポリヌクレオチドが宿主にとって外来性であり、
組み換え細胞を遺伝子増幅を生じさせる条件下で培養して、DNAユニットを増幅させること
を含んでなることを特徴とするDNA増幅方法が提供される:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同様なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同様なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(E)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同様なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(F)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA、
(G)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブしダイズするDNA、
(H)配列番号3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有するDNA、
(I)配列番号4に記載の塩基配列で表されるDNA、
(J)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブしダイズするDNA、
(K)配列番号4で表される塩基配列と90%以上の同一性を有するDNA。
【0011】
本発明によるDNA増幅方法によれば、細胞内において、巨大サイズのDNA領域を効率的に増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コスミドAB501の挿入断片を表した図である。
図2】コスミドpAB801の挿入断片を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
寄託
本発明によるコスミドAB501(Escherichia coli JM109/cosmid AB501)は、原寄託日を平成20(2008)年5月14日として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に受託番号FERM BP-11114のもと寄託されている。
また、本発明によるコスミドpAB801(Escherichia coli JM109/pAB801)は、原寄託日を平成21(2009)年4月28日として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM BP-11121のもと寄託されている。
【0014】
定義
本明細書において、「機能的に同等な」タンパク質またはポリヌクレオチドとは、以下のものをいう。
タンパク質またはポリヌクレオチドには、遺伝子の多型や変異の他、修飾反応等によって、その配列中に構造的な変異が起こりうる。しかしながら、これら変異を有するにもかかわらず、変異を有しないタンパク質またはポリヌクレオチドと実質的に同等の生理、生物学的活性を示すものがあることが知られている。このように、構造的に差異があっても、その機能については大きな違いが認められないものを「機能的に同等な」タンパク質またはポリヌクレオチドという。
【0015】
本願明細書において、「アミノ酸配列の1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の方法により、または天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされたことを意味する。
【0016】
また、本願明細書において、アミノ酸配列または塩基配列についての「同一性」とは、比較される配列間において、各々の配列を構成する塩基またはアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いられる。本明細書において示した「同一性」の数値はいずれも、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であればよく、例えばBLAST等においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、容易に算出することができる。
【0017】
また、本願明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温度低塩濃度溶液中で行うことを意味し、例えば、2×SSC濃度(1×SSC:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)、0.5%SDS溶液中で、60℃、20分間の洗浄条件を意味する。また、ハイブリダイゼーションは、公知の方法に従って行うことができ、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0018】
本明細書において、「RsA領域」とは、Genbankのデータベースにアクセッション・ナンバーAB254080(総塩基数205447bp)として登録されている塩基配列の94693〜94726番の配列)を意味する。また、「RsA領域」とは、Genbankのデータベースにアクセッション・ナンバーAB254081(総塩基数15046bp)として登録されている塩基配列の6177〜6210番の配列を意味する。
【0019】
本発明のポリヌクレオチド/タンパク質
本発明のDNA増幅方法は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質またはこれと機能的に同等なタンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」という)の存在下、細胞内で増幅対象のDNA(以下、「対象遺伝子」ともいう)を増幅させることを一つの特徴とする。
細胞内に本発明のポリヌクレオチドを存在させると、細胞内で巨大サイズのDNAを効率的に増幅しうることは意外な事実である。かかる本発明のポリヌクレオチドは、対象遺伝子のDNA増幅を妨げない限り、細胞ゲノム中に存在してもよく、細胞マトリックス中に存在していてもよい。そして、一つの態様によれば、本発明のポリヌクレオチドは、細胞ゲノム中に存在している。
【0020】
また、本発明のポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよいが、好ましくはDNAである。
本発明の一つの態様によれば、上記ポリヌクレオチドは、以下の(i)、(ii)および(iii)から選択されるDNA(以下、本発明のDNAという)である:
(i)以下の1)、2)、および3)から選択されるタンパク質をコードするDNA:
1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、
2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、
3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、
(ii)配列番号2に記載の塩基配列からなるDNA、
(iii)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつDNA増幅機能を有するタンパク質をコードするDNA。
【0021】
本発明のDNAは、好ましくは、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAであり、より好ましくは、配列番号2に記載の塩基配列からなるDNAである。また、一つの態様によれば、本発明のDNAは、FERM BP−11114の受託番号のもと寄託されたコスミドAB501に含まれるDNAも含むものである。
【0022】
また、別の好ましい態様によれば、本発明のポリヌクレオチドとしては、以下のポリヌクレオチドが挙げられる:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(E)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0023】
また、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質またはこれと機能的に同等なタンパク質(以下、「本発明のタンパク質」という。)は、優れたDNA増幅活性を有し、細胞ゲノム内のDNAの増幅に有利に利用しうる。
【0024】
本発明のタンパク質は、例えば、所望のバッファー等とともに組成物として、培養される細胞に添加し、細胞ゲノム中のDNA領域の増幅に利用してもよい。
したがって、本発明の別の態様によれば、以下の1)〜3)から選択されるタンパク質を含んでなる、DNA増幅用の組成物が提供される。
1)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、
2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでなるタンパク質、
3)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質。
【0025】
本発明のタンパク質において、「1もしくは複数個のアミノ酸」は、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜2個である。
【0026】
また、本発明のタンパク質において、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列」とは、好ましくは、95%以上、より好ましくは98%以上、そしてさらに好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0027】
また、2)および3)のタンパク質は、好ましくは1)のタンパク質と機能的に同等のタンパク質である。なお、2)および3)のタンパク質と1)のタンパク質との機能的な同等性の確認は、例えば、ストレプトマイセス属菌株におけるRsA領域およびRsB領域の間のDNAの増幅レベルを指標として、上記菌株にこれらタンパク質またはそのポリヌクレオチドを適用した場合を比較することにより行うことができる。このような比較実験は、例えば、実施例8〜10を参照すれば、当業者により容易に行われる。
【0028】
増幅対象のDNA領域/DNAユニット
また、本発明のDNA増幅方法において、増幅されるDNA領域としては、RsA領域およびRsB領域の間のDNA領域が好ましい。
RsA領域およびRsB領域は、ストレプトマイセス・カナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)の染色体DNA上に存在する、カナマイシン生合成遺伝子クラスターを含むDNA領域である。RsA領域およびRsB領域の詳細は、ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666に記載されており、この文献は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0029】
RsA領域とRsB領域に挟まれたDNA領域は、本発明のポリヌクレオチドの存在下、DNAユニットとして効率的に増幅しうる。このRsA領域とRsB領域で挟まれたDNAユニットは、好ましくは22〜154kbである。本発明によれば、かかる巨大サイズのDNAユニットであっても有利に増幅することができる。
【0030】
また、RsA領域は配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAであり、RsB領域は配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAである。したがって、一つの態様によれば、本発明のDNA増幅方法においては、以下の(a)および(b)のDNAの存在下で行われる:
(a)配列番号3に記載の塩基配列を含んでなるDNA、
(b)配列番号4に記載の塩基配列を含んでなるDNA。
【0031】
上記(a)に記載の配列番号3に記載の塩基配列を含んでなるDNAとは、配列番号3に記載の塩基配列を含んでいればよく、また、配列番号3に記載の塩基配列より1もしくは複数個の塩基が欠失していても、配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAにおける特異的な組換えに基づく本発明のDNA増幅方法が起こればよい。配列番号3に記載の塩基配列を含んでなるDNAの好ましい例としては、配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0032】
また、上記(b)に記載の配列番号4に記載の塩基配列を含んでなるDNAとは、配列番号4に記載の塩基配列を含んでいればよく、また、配列番号4に記載の塩基配列より1もしくは複数個の塩基が欠失していても、配列番号3に記載の塩基配列からなるDNAと配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAにおける特異的な組換えに基づく本発明のDNA増幅方法が起こればよい。配列番号4に記載の塩基配列を含んでなるDNAの好ましい例としては、配列番号4に記載の塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0033】
また、本発明のDNA増幅方法にあっては、増幅対象のDNAは、RsA領域およびRsB領域と機能的に同等なDNAによって挟まれたDNAユニットであってもよい。ここで、RsA領域およびRsB領域と機能的に同等なDNAとは、RsA領域およびRsB領域と同等に、本発明のポリヌクレオチドの存在下、細胞ゲノム中で増幅されることを意味する。この機能的同等性の確認は、例えば、実施例8〜10を参照すれば、当業者によって容易に行われる。
【0034】
そして、本発明の好ましい態様によれば、上記DNAユニットは、下記(F)〜(H)からなる群から選択される第一のDNA断片と、(I)〜(K)からなる群から選択される第二のDNA断片とを含んでなる:
(F)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA、
(G)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブしダイズするDNA、
(H)配列番号3で表される塩基配列と90%以上の同一性を有するDNAと、
(I)配列番号4に記載の塩基配列で表されるDNA、
(J)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブしダイズするDNA、
(K)配列番号4で表される塩基配列と90%以上の同一性を有するDNA。
【0035】
また、上記(H)および(K)において、「90%以上の同一性を有するDNA」とは、好ましくは、95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有するDNAである。
【0036】
また、目的物質をコードする対象遺伝子は、RsA領域およびRsB領域またはこれらと機能的同等なDNAを有するDNAユニット中に配置されることが好ましい。したがって、本発明の一つの態様によれば、対象遺伝子は、(a)および(b)のDNAの間に存在する。また、本発明の別の態様によれば、上記DNAユニットは、5’末端から順に、第一のDNA断片、対象遺伝子、および第二のDNA断片を含んでなる。
【0037】
また、上記DNAユニットは、細胞のゲノム中に配置されることが好ましい。また、一つの態様によれば、上記DNAユニットおよび本発明のポリペプチドはいずれも、細胞のゲノム内に配置されている。この場合、本発明のポリヌクレオチドとDNAユニットとの細胞ゲノム中における配置および距離は、対象遺伝子の発現レベルを勘案して当業者により適宜決定される。
【0038】
対象遺伝子/目的物質
本発明の対象遺伝子は、上記DNAユニット内に導入しうる限り特に限定されず、単一の遺伝子であってもよく、目的物質の生合成に必要な遺伝子群であってもよい。
【0039】
また、対象遺伝子によってコードされる目的物質は、対象遺伝子のコピー数を増加させることによって生産性が向上しうる物質である限り特に限定されないが、好ましい目的物質としては、医学上および若しくは農業上有用な抗生物質(アミノグリコシド系抗生物質など)、生理活性物質および酵素等が挙げられる。
【0040】
また、DNA増幅した細胞を選抜することを勘案すれば、DNAユニット中に、薬剤耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子を挿入しておくことが好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、DNA増幅を起こさせる生物の中で遺伝子発現し、遺伝子産物が機能するものであれば特に限定はされないが、好ましくはカナマイシン耐性遺伝子である。
【0041】
本発明の対象遺伝子またはポリペプチドの宿主への導入/ベクター
また、本発明対象遺伝子またはポリペプチドは、宿主に対して内在性または外来性のいずれであってもよいが、少なくとも一方は宿主に対して外来性であることが好ましい。
【0042】
本発明の対象遺伝子またはポリペプチドは、宿主細胞内にベクターを用いて好適に導入される。
本発明のポリヌクレオチドを宿主に導入する場合、(A)〜(C)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを機能しうる形で含んでなる、DNA増幅用ベクターが好ましく用いられる:
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、DNA増幅活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、DNA増幅活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0043】
上記ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを機能しうる形で含んでなり、これにより細胞内において本発明のタンパク質を発現することができる。ここで「機能しうる形で含んでなる」とは、本発明のポリヌクレオチドが、後述する適切な発現に必要な要素の制御下に、本発明のタンパク質の発現を可能にする様式でベクター中に挿入されていることを意味する。
【0044】
また、本発明のポリペプチドの存在下、対象遺伝子は、上述の通り、RsA領域およびRsB領域またはこれと機能的同等なDNAで挟まれたDNAユニット中に配置することが好ましい。したがって、対象遺伝子を宿主に導入する際には、(F)〜(H)からなる群から選択される第一のDNA断片、対象遺伝子、(I)〜(K)からなる群から選択される第二のDNA断片を含んでなるDNAユニットを含んでなる、DNA増幅用ベクターであって、前記DNAユニットを細胞ゲノムに導入しうる、ベクターが好ましく用いられる。
【0045】
また、対象遺伝子および本発明のポリヌクレオチドは、プロモーター配列や転写終結シグナル配列等の発現に必要な要素とともに、宿主細胞に導入されることが好ましい。プロモーターや転写終結シグナルは、対象遺伝子および本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子の本来のプロモーターおよび転写終結シグナル配列に加え、効率の良い遺伝子発現を促すため、導入する宿主の生物種に応じて適宜決定してよい。
【0046】
また、プロモーター配列、転写終結シグナル配列の他の発現に必要な要素としては、例えば、目的遺伝子を効率的に発現させるためのエンハンサー、IRES(internal ribosome entry site)配列等が挙げられる。発現に必要な要素はその性質に応じて、ベクターにおける適切な位置に配置することが可能である。また、発現に必要な要素は、宿主との組み合わせおよび目的物質の生産性を勘案して選択してもよい。
【0047】
また、相同組換えにより、本発明のポリヌクレオチドまたはDNAユニットを宿主ゲノムに導入する場合、ベクターには、宿主ゲノムの一部と相同組換え可能な同一性を有する相同DNA配列を配置する。ベクターに含まれる相同DNA配列は、本発明のポリペプチドまたは対象遺伝子の効率的な組み換えおよび発現を妨げない限り、単数であっても複数であってもよいが、好ましくは2つである。さらに、かかる2つの相同DNA配列は、導入されるDNAユニットの5’末端および3’末端に配置されていることが好ましい。したがって、本発明の一つの態様によれば、ベクターは、5’末端に配置された相同DNA配列と、目的タンパク質遺伝子の発現ユニットと、3’末端に配置された相同DNA配列とを少なくとも含んでなる。
【0048】
また、相同DNA配列は、宿主ゲノムと相同組換え可能な同一性および長さを有する。相同組換え反応の生じやすさまたはその確実性を考慮すれば、相同DNA配列と宿主ゲノムとの同一性は十分に高い方が好ましく、両者は同一配列であることが好ましい。また、二つの相同DNA断片の長さは各々、導入部位、導入効率等を勘案して当業者によって適宜選択される。
【0049】
本発明に用いられるベクターはいずれも、細胞ゲノムへ対象遺伝子または本発明のポリヌクレオチドを導入しうるものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクターおよびBACベクター等が挙げられるが、好ましくは、コスミドベクターである。
【0050】
上記ベクターは、当技術分野で周知となっている標準的方法を利用して構築することができ、例えば、Sambrook, J.らの「Molecular Cloning: a laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1989)に記載の方法に従って構築することができる。
【0051】
ベクターの細胞への導入方法
上記ベクターの細胞への導入は、当該技術分野において公知の方法を用いることが可能であり、例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法および接合伝達法などが挙げられる。かかる導入方法は、宿主細胞の種類、ベクターのサイズ、導入効率等を勘案して当業者により適宜選択される。
【0052】
細胞の培養/選択
本発明のDNA増幅方法にあっては、対象遺伝子および本発明のポリヌクレオチドが導入された細胞を、遺伝子増幅を生じさせる条件下で培養して、DNAユニットを増幅させる。
上記細胞が上記選択マーカー遺伝子を有する場合には、適切な選択培養条件下で細胞を培養することにより、DNAユニットが増幅された細胞を取得することができる。例えば、宿主として、カナマイシン生合成遺伝子群およびカナマイシン耐性遺伝子をいずれも含む菌株を用いた場合には、カナマイシンを添加した培地で菌株を3世代程度継代培養し、さらに、この間カナマイシン添加量を順次向上させることによって、DNAユニットが増幅された菌株を選抜することができる。
【0053】
また、組換え細胞の選択においては、PCR反応等による組換え細胞のゲノムDNA解析や、サザンブロッティング法等を用いることにより、複数コピーのDNAユニットを含む組換え細胞を正確に選択することができる。
【0054】
組み換え細胞/組み換え微生物
また、本発明の組み換え細胞は、上述の手法により製造されるものであり、増幅対象の上記DNAユニットの複数コピーがゲノムに導入されてなることを特徴とする。よって、本発明の方法により得られる微生物は、対象遺伝子の複数コピーが導入された増幅DNA領域を含んでなる。かかる組換え細胞および微生物は、目的物質を効率的に産生する上で有利に利用することができる。
【0055】
そして、上記細胞において、DNAユニットは好ましくは宿主に対して外来性である。また、DNAユニットコピー数は2以上である。また、本発明のより好ましい態様によれば、上記組換え細胞におけ対象遺伝子は、少なくともプロモーター配列および転写終結シグナル配列を含んだDNAユニットとしてゲノム中に組込まれてなる。また、上記組換え細胞における対象遺伝子またはDNAユニットは、好ましくはタンデムに並んで繰り返し組込まれてもよい。
【0056】
宿主
また、宿主は、本発明のDNA増幅の実施を妨げない限り特に限定されないが、好ましくは、微生物であり、より好ましくは抗生物質産生菌株等である。より具体的には、宿主としては、好ましくは放線菌であり、より好ましくはストレプトマイセス(Streptomyces)属由来菌であり、さらに好ましくは、ストレプトマイセス・カナマイセティカス、ストレプトマイセス・セリカラーまたはストレプトマイセス・リビダンスであり、さらに好ましくはストレプトマイセス・カナマイセティカスである。
【0057】
目的物質の製造
また、本発明にあっては、上記方法により取得された、複数コピーの対象遺伝子を含む組み換え細胞を培地中で培養し、目的物質を産生させることができる。組み換え細胞の培養条件の詳細は、細胞の性質および状態等に応じて当業者によって適宜決定される。
また、目的物質は、遠心分離、ゲルろ過、フィルターろ過などの公知の手法により単離することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1:ストレプトマイセス・カナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)JCM4775株のカナマイシン生合成遺伝子群の増幅
1)継代培養とカナマイシン生産性向上
ストレプトマイセス・カナマイセティカス
JCM4775株(理研バイオリソースセンター)の凍結乾燥菌体(L-tube)を前培養培地{コーンスティープリカー;3%、ドライイースト;0.25%、CaCl2;0.1%、Staminol(日本農業資材株式会社:発売、サッポロビール株式会社:製造);0.1%、殺菌前pH7.5、250ml容量の三角フラスコに40ml容量を仕込む}に植菌した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、Aとした(1世代目)。ついで、これを2種類の前培養培地(抗生物質無添加区、250μg/mlのカナマイシン添加区)に1ml移植した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、抗生物質無添加区をB、250μg/mlのカナマイシン添加区をCとした(2世代目)。ついで、Bの培養液をカナマイシン無添加区の前培養培地に1ml移植した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、Dとした(3世代目)。Cの培養液は、それぞれ500μg/mlおよび2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1mlづつ移植した。これらを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、500μg/mlのカナマイシン添加区をE、2000μg/mlのカナマイシン添加区をFとした(3世代目)。
【0059】
上記で得られた菌株を保存するために、1世代目(A)、2世代目(B、C)、3世代目(D、E、F)ともに48時間の培養終了時点で、同量の20 %スキムミルクと混合し、-80℃で凍結保存した。保存中のA、B、C、D、E、Fの各菌株の0.5mlをそれぞれ抗生物質無添加の前培養培地に植菌し、48時間培養した。培養終了後、それらの50μlを生産用寒天培地(Starch 1%、Glucose 0.25%、Soybean meal 0.6%、Peptone 0.15%、KCl 0.0025%、MgSO4・7H2O 0.025%、K2HPO4 0.05%、NaCl 0.15%、CaCO3 0.15%、殺菌前pH7.0、20ml/シャーレ)に塗布した。これらを28℃で7日間培養した。 表面にストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775が生育した寒天培地をコルクボーラー(直径5mm)で打ち抜き、この円盤状のピースをバチルス・サブチルス(B. subtilis) ATCC6633を含んだ寒天平板に乗せ、37℃で18時間培養し、カナマイシンによる阻止円を形成させた。生産量を調べる標準として、生産用寒天培地に、0μg/ml、10μg/ml、100μg/ml、500μg/mlの濃度のカナマイシンを添加した培地を作成し、同じく、コルクボーラー(直径5mm)で打ち抜いた。これにより形成される阻止円と、先の阻止円とを比較した結果、生産用寒天培地に生産されたカナマイシン濃度は、それぞれ、A;10μg/ml、B;10μg/ml、C;150μg/ml、D;10μg/ml、E;200μg/ml、F;250μg/mlであった。このように、1世代目(A)のカナマイシン生産能力が、3世代目(E、F)では、20倍から25倍向上した。
【0060】
2)遺伝子増幅の証拠:PCR法による組換え結合部位(RsB/RsA)の検出
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間培養の終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心分離に供した。得られた上澄み液をデカント後、菌体を真空凍結乾燥に供した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、以下の方法で染色体DNAを分離した。つまり、乾燥菌体の1/10量にTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8)1mlと50μl(濃度:20mg/ml)のリゾチーム溶液を加えた。37℃で30分間溶菌させた後、Genomic DNA Purification kit、MagExtractor(商標)-Genome-(TOYOBO社製)に添付されている溶解・吸着液を2ml加えた。攪拌後、1mlをエッペンドルフチューブに移し、12000rpm、5分間の遠心分離に供した。上澄み液の850μlを蓋なしのエッペンドルフチューブに移し、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いてキット添付の指示書に従ってDNAを分離した。次に、1)で得られたA、B、C、D、E、Fの各菌株の染色体DNAを用いて、PCR法による遺伝子増幅試験を行った。用いた合成プライマーは、KM-16’(5 ’-CCGGCACTTCCGCTCCAA-3’、配列番号5)とKM-17’(5 ’-GCGGGTTCGCCAACTCCA-3’、配列番号6)である。PCR反応は、TaKaRa LA TaqR withGC Buffer(タカラバイオ株式会社製)を用いて、添付されたプロトコールを一部修正して行った。つまり、反応液組成は、TaKaRa LA Taq(商標)(5 units/μl)を0.5μl、2×GC Buffer IIを25μl、dNTP溶液(各2.5mM)を8μl、Dimethyl Sulfoxideを2.5μl、染色体DNAを100pmol(1μl)、プライマー KM-16’を100pmol(1μl)、プライマー KM-17’を100pmol(1μl)、滅菌水(11μl) であり、最終容量を50μlとした。アニーリング温度は50℃で実施し、増幅サイクルは25回で実施し、エクステンションは72℃で2分間の反応を採用した。RsA領域(5’-GAAGTGACGATACCTTGGTCCTCTCAAATCAAGA-3’、配列番号3)とRsB領域(5’-ACCACGACGACACCCTGGTCCGCGCGGAGGAGGT-3’、配列番号4)でDNA組換えが起これば1.2kbのDNA断片が増幅されることになる(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。反応終了液をアガロースゲル電気泳動に供した結果、A、B、Dの各菌株の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、C、E、Fの各菌株の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られた。増幅バンドのエチジウムブロミドによる染色の強度は、CはEとFの約半分であった。この結果から、カナマイシンを添加して継代培養することによって、RsA領域とRsB領域の間のDNA領域が増幅したことが示された。
【0061】
3)遺伝子増幅の証拠:サザンブロット解析による増幅遺伝子領域の検出
A、B、C、D、E、Fの染色体DNAの各5μgをBamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動に供した。定法に従い、アガロースゲル中のDNAをHybondTM-N+(GEヘルスケアバイオサイエンス製)にブロッティングした。ハイブリダイゼーションはECL(商標) Direct Nucleic Acid Labelling and Detection System(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を使用し、添付の取扱説明書に従って実施した。プローブには、pKM92由来の4.95kbのSphI断片(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を使用した。
【0062】
野生株では9.6kbのBamHI断片が検出されるが、RsA領域とRsB領域でDNA組換えが起これば、10.8kbのBamHI断片が新たに検出される(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。ハイブリダイゼーションの結果、全てのサンプルに9.6kbのバンドが検出された。Fのサンプルには10.8kbのバンドも検出され、9.6kbと10.8kbのバンドの濃さはほぼ同等であった。Eのサンプルにも10.8kbのバンドが検出されたが、非常にわずかな濃さであった。このように、EおよびFのサンプルに10.8kbのBamHI断片が検出されたことから、EおよびF の菌株では、RsA領域とRsB領域でDNA組換えが起こり、この間のDNA領域が増幅したことが示された。
【0063】
実施例2: 化学合成したRsA領域を有するコスミド203-7の作成と野生株への導入
Genbankのデータベースにアクセッション・ナンバーAB254080(総塩基数205447bp)として登録されている、ストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のカナマイシン生合成遺伝子クラスターの塩基配列のうち、RsC領域とRsD領域の間(28935〜135581番目の塩基配列)の106.6kbからなるDNA領域に、DNA増幅を引き起こす鍵遺伝子の存在を調べるために、RsA領域(94693〜94726番目の塩基配列、配列番号3)を有するが、RsC-RsD間のDNA領域のほとんどを欠失した菌株を以下の方法で作成し、DNA増幅能を調べた。
【0064】
1)コスミドAB201の作成
コスミド4-5(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)の挿入断片の右端にアプラマイシン耐性遺伝子と新たな制限酵素EcoRV部位を挿入したコスミドAB201を以下のようにして作成した。
プラスミドpIJ773[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]をHindIIIとEcoRIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、目的とするアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片を得た。これを鋳型にして、以下に示す塩基配列からなる2種類の合成プライマー(RsA1U、RsA1L)を用いて、PCR法により約1.4kbのDNA断片を増幅させた。
【0065】
RsA1U: 5'-CACGGCACGGAATACCACTGCGTGCCCGTCGACGACGGTATTCCGGGGATCCGTCGACC-3'(配列番号7)
RsA1L: 5'-CCAGGTCGGGAAGGGTGCTCTCCGCGCGAGCGGAGGTGATATCTTGATTTGAGAGGACCAAGGTATCGTCACTTCTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'(配列番号8)
【0066】
PCR反応は、TaKaRa LA Taq(商標) with GC Buffer(タカラバイオ社製)を用いて、実施例1の2)に記載の条件で行った。反応液の全量から、QIAquickR PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、pIJ773由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片を精製した。
【0067】
次に、E.coli BW25113/pIJ790[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]にコスミド4-5を導入し、E.coli BW25113/pIJ790/cosmid4-5株を得た。本株をクロラムフェニコール、カナマイシンおよびアンピシリンをそれぞれ25μg/ml、25μg/mlおよび50μg/mlの濃度で含む100mlの LB液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0. 5%塩化ナトリウム)に植菌し、30℃で一晩培養した。65ml容量の試験管に、10mlのSOB培地(2%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.05%塩化ナトリウム、0.0186%塩化カリウム)を仕込み、クロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリン、L-アラビノースを、それぞれ25μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、10mM 濃度で添加した。これに、一晩培養したE.coli BW25113/pIJ790/cosmid4-5株の培養液100μlを移植し、30℃で4時間振とう培養した。培養液の全量を、4℃、3000rpm、5分間の遠心で集菌した後、氷中にて冷却した10%のグリセリン溶液10mlに懸濁した。この操作を繰返した後、冷却した10%のグリセリン溶液100μlに再懸濁させた。次に、エッペンドルフチューブに50μlの菌体けん濁液を採取し、上述のpIJ773由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片溶液を5μl加えた。これを、予め氷中にて冷却した2mmギャップのエレクトロポレーションキュベット (ビーエム機器株式会社製:BM6200)に移した。エレクトロポレーションは、Electro Cell Manipulator600(ビーエム機器株式会社製)にて、12.5kV、25μF、128Ωの条件にて行った。処理後の菌体には、予め氷中にて冷却したLB液体培地を1ml添加し、37℃で1時間静置培養した。これを、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB寒天培地に塗布し、37℃で終夜培養し、アンピシリンとアプラマイシンの両者に耐性を示す株を得た。この株を、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミドAB201を単離した。
【0068】
2)コスミドAB202の作成
コスミド5-13(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)の挿入断片の左端にストレプトマイシン耐性遺伝子と新たな制限酵素Bsp1407I部位を挿入したコスミドAB202を以下のようにして作成した。
【0069】
まず、プラスミドpIJ778[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]をHindIIIとEcoRIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、目的とするストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.8kbのDNA断片を得た。これを鋳型にして、以下に示す塩基配列からなる2種類の合成プライマー(RsA2U、RsA2L)を用いて、PCR法により約1.9kbのDNA断片を増幅させた。
【0070】
RsA2U:5'-CTCGCGCGGGAGCACCCCAGGCTGCCTGCAGAAAACTGTACATTCCGGGGATCCGTCGACC-3'(配列番号9)
RsA2L:5'-AGTTCGCATCGCCCATCTAAGGAACTGGTGGGCCTTAGCTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'(配列番号10)
【0071】
反応液の全量から、QIAquick(商標) PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて、pIJ778由来のストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.9kbのDNA断片を精製した。これを、上述の方法と同様にして得たE. coli25113/pIJ790/cosmid5-13にエレクトロポレーション法で導入し、アンピシリンとストレプトマイシンの両者に耐性を示す株を得た。この株を、アンピシリンとストレプトマイシンをそれぞれ、50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミドAB202を単離した。
【0072】
3)コスミド203-7の作成
コスミドAB201のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約16kbのBsp1407I−EcoRV断片を、コスミドAB202のBsp1407I−EcoRV部位に挿入してコスミド203-7を作成することとした。
【0073】
まず、コスミドAB201をBsp1407I、EcoRV、SphIで三重消化した後、アガロースゲル電気泳動に供し、約16kbのBsp1407I−EcoRV断片をQIAquick(商標) Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてアガロースゲルから精製した。ついで、コスミドAB202をBsp1407IとEcoRVで二重消化し、同様にアガロースゲルから抽出、精製したコスミドAB201由来のベクター断片と混合し、ライゲーション反応を実施した。
【0074】
ライゲーション後のDNA溶液を、MaxPlax(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE(商標) Biotechnologies社製)を用いてin vitroパッケージングした。これをE.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布した。出現したコロニーを、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミド203-7を単離した。コスミド203-7の挿入断片の両末端の塩基配列を解析した結果、コスミド203-7は、コスミド4-5由来のBstAUI-EcoRV断片の挿入時に、コスミド5-13由来のBsp1407I断片(123007〜123183番目の塩基配列、177bp)が同時に挿入されていることが判明した。よって、コスミド203-7は、RsC-RsD間のDNA領域(28935〜135581番目の塩基配列)のうち33306〜128995番目の塩基配列の欠失があるが、RsA領域として34bp(94693〜94726番目の塩基配列)と上記のBsp1407I断片(177bp)を含んだコスミドである。
【0075】
4)コスミド203-7のストレプトマイセス・カナマイセティカスへの導入
E. coli ET12567/pUZ8002株[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に、定法に従いコスミド203-7を導入し、E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7を得た。
【0076】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775とE. coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7のコンジュゲーションは以下のようにして実施した。まず、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株を前培養培地で、28℃、48時間培養した後、改変R2寒天培地(水95ml中に、Sucrose 10.3g、K2SO4 0.025g、 MgCl2・6H2O 1.01g、Glucose 1g、Difco Casaminoacids 0.01g、 寒天2.2g、別殺した10%イーストエキストラクト5mlを加えた)に、100μlの培養液を塗り付けた。28℃で7日間培養後、20%グリセリン溶液3mlを添加して寒天培地表面の菌糸をかきとった。3000rpm、5分間遠心して集菌後、3mlの20%グリセリン溶液に菌体を懸濁した。一方、E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7株を、アンピシリンおよびアプラマイシンをそれぞれ50μg/mlの濃度で添加したLB液体培地で、37℃、18時間培養した後、培養液1mlを100mlのLB液体培地(アンピシリンおよびアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml含む)に移植し、37℃、4時間培養した。培養液50mlを3000rpm、5分間遠心して集菌し、菌体を20ml のLB液体培地に懸濁した。この操作を2回繰り返した後、菌体を2mlの LB液体培地に懸濁した。
【0077】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775の菌体懸濁液100μlとE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7の菌体懸濁液100μlを、1.5ml容のチューブの中で合併し、遠心で集菌した。これを、100μlの20%グリセリン溶液に懸濁した後、20ml容量のMS寒天培地(寒天:2%、マニトール:2%、ダイズ粉末:2%、10mM MgCl2)に塗布した。28℃で18時間培養後、アプラマイシン400μgと ナリジキ酸1500μgを含む滅菌水1mlを重層した。28℃、5日間培養した後、寒天培地上で生育したストレプトマイセス・カナマイセティカスのコロニーのうち1株を釣菌し、ガラスホモゲナイザーでホモゲナイズ後、アプラマイシン20μg/mlとナリジキ酸10μg/mlを添加したNutrient寒天培地(Difco社製、Nutrient Broth、寒天2%含む)に塗布し、4日間、28℃で培養後した。生育したコロニーを前培養培地に植菌し、28℃、48時間培養し、等量の20%スキムミルク溶液と混合後、凍結乾燥保存した(ストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株)。
【0078】
5)PCR法による組換え部位(RsB/RsA)の検出
上記4)で得られたストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の凍結乾燥菌体(L-tube)を前培養培地に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0079】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を行った。用いた合成プライマーが、KM-18’(5 ’-CTCGACAAGGTCTGCAAGCC-3’、配列番号11)とM19 ’L(5 ’-ATCTTGATTTGAGAGGACCA-3’、配列番号12)である以外は、実施例1の2)に記載の方法と同様にして行なった。その結果、どの染色体DNAを用いても目的の約0.9kbのDNA断片は増幅せず、ストレプトマイセス・カナマイセティカスRsAcos3株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していない事が判明した。よって、DNA増幅に必要な遺伝子は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0080】
実施例3:RsC-RsA領域間の約37kbのDNA領域の欠失を有するストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株の作成
RsC-RsA領域間(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列)のDNA領域を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株を以下のようにして作成した。
【0081】
1)プラスミドpAB305の構築
コスミド2-1(非特許文献2)を鋳型にして、プライマーAfrU:5'-GGAGAAGCATGCGAGGACAAGTCGCGGCTTGAAC-3'(配列番号13)とAfrLRV:5'-CAGGCGGATCCCTGCGATATCCGTAGCGCGCATAAACGAAGAA-3'(配列番号14)を用いて、PCRにより約3.4kbのA断片(47230〜50602番目の塩基配列)を増幅させた。これをBamHIとSphIで二重消化し、pUC118のBamHI−SphI部位に挿入してプラスミドpAB301を得た。
【0082】
次に、コスミド1-3(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を鋳型にして、プライマーBfrU:5'-GCAGATGGATCCAGAGTCTAGATTCAGCTCGTTGATCACCATGTC-3'(配列番号15)、とBfrL:5'-CAGGCGAATTCCGCGTGGAATCGCTCCGCATCTT-3'(配列番号16)を用いて、PCRにより約3.9kbのB断片(87961〜91943番目の塩基配列)を増幅させた。これをBamHIとEcoRIで二重消化し、pUC118のBamHI−EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB302を得た。
【0083】
次に、pAB302由来のB断片(BamHI−EcoRI断片)をpAB301のBamHI−EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB303を得た。さらに、pAB303にチオストレプトン耐性遺伝子(tsr)を導入するため、プラスミドpIJ 702[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]をBclIで消化し、tsr遺伝子を含む約1kbのBclI断片をpUC118のBamHI部位に挿入し、プラスミドpUC118tsrを得た。これをXbaIとSmaIで二重消化し、tsr遺伝子を含むXbaI−SmaI断片をpAB303のEcoRV−XbaI部位に挿入して、A断片−tsr遺伝子−B断片を挿入断片として有するプラスミドpAB304を得た。さらに、pAB304をSphIとEcoRIで二重消化し、A断片−tsr遺伝子−B断片を約8.5kbのSphI−EcoRI断片として単離し、pSET152[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]のSphI−EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB305を得た。
【0084】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305 cure株の作成とDNA増幅能評価
E. coli ET12567/pUZ8002株に定法に従いプラスミドpAB305を導入し、E.coliET12567/pUZ8002/pAB305とした。
次に、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775とE. coli ET12567/pUZ8002/pAB305とのコンジュゲーションを実施例2の4)に記載の方法と同様にして実施した。得られたアプラマイシン耐性株は、再度アプラマイシン20μg/mlとチオストレプトン10μ/ml を含むNutrient 寒天培地を用いてチオストレプトン耐性を確認し、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株とした。前述の方法でストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株より調製した染色体DNAを鋳型とし、プライマーに4tsrU:5 ’-ataagcgcctctgttcctcg-3’(配列番号17)とBfrLoutL:5 ’-gactcaccctcagccagaat-3’(配列番号18)を用いてPCRを実施した結果、約4kbのDNA断片が増幅した。この結果から、プラスミドpAB305がB断片領域の相同組換えによって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775の染色体DNAに組み込まれたことが示された。
【0085】
次に、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株からアプラマイシン感受性かつチオストレプトン耐性株の分離を以下のようにして実施した。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株を前培養培地で、28℃、48時間培養した(1世代目)。この培養液1mlを新たな前培養培地に植菌し、さらに28℃、48時間培養した(2世代目)。同様の操作を5世代まで繰り返し、3世代目からは前培養培地に直径5mmのガラスビーズを5個加え、菌糸をほぐれ易くした。5世代目の培養液は、単コロニーとして分離できるように希釈してNutrient寒天培地に塗布した。72時間後、生育したコロニーを、チオストレプトン(10μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)をそれぞれ添加したNutrient寒天培地にレプリカした。5400株の表現型を調べた結果、48株のアプラマイシン感受性株が得られ、このうち7株がチオストレプトン耐性を示した。これらの株より染色体DNAを調製し、PCRにより、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうち、50603〜87960番目の塩基配列がtsr遺伝子に置換されていることを確認し、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株とした。
【0086】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株のDNA増幅能力を調べるために、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載した方法と同様にして、染色体DNAを調製した。
【0087】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載した方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜50602番目の塩基配列および87961〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0088】
実施例4:RsC-RsA領域間に約37kbおよび RsA-RsD領域間に約22kbのDNA領域の欠失を有するストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の作成
RsC-RsA領域(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列)およびRsA-RsD領域(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の97641〜120061番目の塩基配列)を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株を以下のようにして作成した。
【0089】
1)コスミド3-7::AB402の作成
E. coli BW25113/pIJ790株にコスミド3-7(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を導入し、E. coli BW25113/pIJ790/cosmid 3-7株を得た。実施例2の1)に記載したプラスミドpIJ773由来の約1.3kbのEcoRI−HindIII断片を鋳型とし、プライマーとして97682U(5 ’-TCTTCTGTCGTCTCATCCATCGTGCTGGCCTTCGATGACATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号19)と120181L(5 ’-GGGAAAGTACGGGAAAAGATCTCGGTTACTCGCGATCCATGTAGGCTGGATCTGCTTC-3 ’、配列番号20) を用いて、PCRにより約1.4kbのアプラマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を増幅させた。実施例2の1)に記載の方法と同様にして、E.coli BW25113/pIJ790/cosmid3-7株のコンピテントセルを作成し、上述の約1.4kbのアプラマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片でエレクトロポレーションによる形質転換を行った。アプラマイシンとアンピシリンの両者に耐性を示す形質転換体(E.coliBW25113/cosmid3-7::AB402株)を培養してコスミド3-7::AB402を調製した。
【0090】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の作成とDNA増幅能評価
次に、E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド3-7::AB402を導入してE.coliET12567/pUZ8002/cosmid3-7::AB402を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株とE.coliET12567/pUZ8002/cosmid3-7::AB402を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、得られたアプラマイシン耐性株をストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の染色体DNAを調製し、各種プライマーを用いてPCRを行い、コスミド3-7::AB402の挿入断片が二重交差による相同組換えでストレプトマイセス・カナマイセティカスの染色体DNAに組み込まれていることを確認した。よって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株はアクセッション・ナンバーA B254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列および97641〜120061番目の塩基配列の領域を欠失していることが示された。
【0091】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスM27株のDNA増幅能力を調べるために、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0092】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜50602番目の塩基配列、87961〜97640番目の塩基配列および120062〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0093】
実施例5:コスミドAB501およびM29株の作成
アクセッション・ナンバーA B254080の塩基配列の29219〜87960番目の塩基配列、97641〜120061番目の塩基配列および120621〜139619番目の塩基配列のすべての領域を欠失した菌株作成のためのコスミドAB501は以下のようにして作成した。
【0094】
1)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株染色体DNAのコスミドライブラリー作成とスクリーニング
実施例4で作成したストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株を、前培養培地で、28℃、48時間培養後、培養液1mlを250mlの三角フラスコに40mlを仕込んだ改変YEME液体培地(0.3% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto-peptone、0.3% Oxoid malt extract、0.1% Glucose、3.4% Sucrose、5mM MgCl2・6H2O、0.5% Glycine )に移植した。28℃、24時間培養した後、遠心により集菌した。フラスコ4本分の菌体を40mlのSET buffer(75mM NaCl、25mM EDTA (pH8)、20mM Tris-HCl (pH7.5))に懸濁した。これに、50mg/mlのリゾチーム水溶液を800μl添加後、37℃で60分間保持した。20mg/mlのProteinase K水溶液を1120μlと4.8mlの10% SDS溶液を添加し、55℃で2時間、加温した。5M NaCl溶液を16ml添加し、40mlのクロロホルムを加え、良く混合した後、30分間、室温に放置した。室温で、4500×g、15分間遠心し、水層を新たなチューブに移した。これに、0.6倍容量のイソプロパノールを混合し、3分間後に先を閉じたパスツールピペットにてDNAを巻き取った。これを、70%のエタノールでリンスした後、自然乾燥させ、5mlのTE bufferに溶解した。得られたDNAの濃度は、0.75mg/mlであった。
【0095】
このようにして調製した染色体DNAをMboIで部分消化した後、CIAP(calf intestinal alkaline phosphatase)を用いて脱リン酸化した。一方、コスミドベクターであるSuperCos 1(ストラタジーン社)は、XbaIで消化した後、CIAP による脱リン酸化を行い、さらにBamHIで消化した。これらを混合し、Mighty Mix 6023(タカラバイオ社)を用いて26℃、10分間のライゲーション反応を行った。反応後のDNA溶液をMaxPlax(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE(商標) Biotechnologies社製)を用いてin vitroパッケージングした。これをE.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布し終夜培養した。出現したコロニーをアンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で、37℃、終夜培養した。培養液からコスミドDNAを分離し、各コスミドの挿入断片の両末端の塩基配列を解析した。アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列上の29213番目の位置のNdeIおよび139611番目の位置のAflIIを含むクローンとしてコスミド1-10を選択した。
【0096】
2)コスミド203-7::strの作成
コスミド1-10のNdeI−AflII断片(約33kb)を実施例2の3)に記載のコスミド203-7のNdeI−AflII部位に置換・挿入するために、まず、コスミド203-7のアプラマイシン耐性遺伝子をストレプトマイシン耐性遺伝子と置換することとした。実施例2の2)に記載のpIJ778由来HindIII−EcoRI断片を鋳型とし、プライマーにRsA1Ussp(5 ’- CACGGCACGGAATACCACTGCGTGCCCGTCGACGACAATATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号21)とRsA1LRV(5 ’-CAGACTCTGAGTGATATCTTGATTTGAGAGGACCAAGGTTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3 ’、配列番号22)を用いて、ストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.9kbのDNA断片をPCRで増幅させた。このDNA断片を用いて、E. coli BW25113/pIJ790/cosmid 203-7をエレクトロポレーション法で形質転換した。アプラマイシンに感受性を示し、アンピシリンおよびストレプトマイシンの両者に耐性を示す形質転換体よりコスミドDNAを調製し、コスミド203-7::strとした。
【0097】
3)コスミドAB501の作成
コスミド1-10のNdeI、DraIおよびAflIIによる三重消化物と、コスミド203-7::strのNdeIおよびAflIIによる二重消化物を混合し、Mighty Mix 6023(タカラバイオ社)によるライゲーション反応を行った。反応後のDNA溶液をMaxPlax(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE(商標) Biotechnologies社製)を用いてin vitroパッケージングした。これをE.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布した。得られたコロニーについて、ストレプトマイシン感受性およびアプラマイシン耐性を確認するとともに、プライマーとしてKM37(5 ’- TCTGCTCACC TCTGCGTCAG-3’、配列番号23)およびチオストレプトン耐性遺伝子に由来するtsrL(5 ’-TGACGAATCGAGGTCGAGGA-3’、配列番号24)を用いたPCRにより、NdeI部位における組換えを確認してクローンを選抜し、コスミドAB501を調製した。
【0098】
コスミドAB501をKpnIで消化したところ、理論上の制限酵素地図と一致しない約8kbの断片が検出されたため、コスミド501を構築の過程で、挿入断片であるコスミド1-10由来のNdeI−AflII断片に欠失が起きている事が判明した。そこで、欠失領域を含むと推定された約4kbのXbaI−KpnI断片をコスミドAB501からpUC19にサブクローニングし、塩基配列を解析した。その結果、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列上の120620番目の塩基(T)と139620番目の塩基(T)が連結していることが明らかとなり、120621〜139619番目の塩基配列が欠失していることが示された。よって、コスミドAB501は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうちの16650〜29218番目、87961〜97640番目、120062〜120620番目および139620〜146821番目の塩基配列から成り立っている。但し、次項で述べるストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株の作成には影響しないが、コスミド5-13に由来する114645〜114723の塩基配列が16650番目の塩基の上流に付加されていた。
【0099】
4)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株の作成とDNA増幅能の評価
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミドAB501を導入してE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid AB501を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株とE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid AB501を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、得られた100株のアプラマイシン耐性株を、アプラマイシン20μg/mlおよびチオストレプトン10μ/ml を添加したNutrient 寒天培地に塗布し、チオストレプトンに対する感受性を調べた。98株はチオストレプトンには感受性であり、87961〜97640番目の塩基配列と139620〜146821番目の塩基配列の領域での二点交差の相同組換えによって生じたと推定され、目的の菌株ではないことが示された。一方、2株はチオストレプトンに対して耐性を示し、16650〜29218番目の塩基配列と139620〜146821番目の塩基配列の領域での二点交差の相同組換えによって生じた菌株であると推定された。さらに、これら2株の染色体DNAに対するPCR解析から、コスミドのベクター部分は染色体に挿入されていないことが判明し、二点交差による相同組換え株であることが明らかとなったことから、この株をストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の29219〜87960番目の塩基配列、97641〜120061番目の塩基配列および120621〜139619番目の塩基配列の領域を欠失した菌株である。
【0100】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0101】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列および120062〜120620番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0102】
実施例6:ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株の作成とDNA増幅能の評価
1)コスミド5-13::AB113の作成
実施例2の1)に記載した方法に従い、pIJ773由来のEcoRI−HindIII断片を鋳型とし、プライマーとしてM13U(5'-GGAGCACTTGCCGGTCTGGCCCAGAACGCGGACGCCGTCATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号25)とM13L (5'-AGAGCAGTCAGGCTGGCAACCGCACATCCACGCGATCGTTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'、配列番号26)を用いてPCRにより約1.4kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、E.coli BW25113/pIJ790/cosmid5-13をエレクトロポレーション法で形質転換し、得られたアプラマイシン耐性の形質転換体よりコスミド5-13::AB113を得た。
【0103】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株の作成とDNA増幅能の評価
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド5-13::AB113を導入してE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid5-13::AB113を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株とE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid 5-13::AB113を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株の染色体DNAをPCRで解析した結果、コスミド5-13::AB113は、アプラマイシン耐性遺伝子の両側にあるストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のDNA領域を介した2点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが明らかとなり、本株をストレプトマイセス・カナマイセティカスAB113-2株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうちの118626〜130558番目の塩基配列を欠失した菌株である。
【0104】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0105】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカスAB113-2株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2および5に記載した結果と併せ、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0106】
実施例7:orf1082遺伝子破壊株の作成とDNA増幅能の評価
アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列の間に存在する遺伝子はorf1079遺伝子〜orf1086遺伝子の8種の遺伝子である。このうち、orf1082遺伝子産物(配列番号1)がDNA関連蛋白質と同一性を示すことから、orf1082遺伝子の破壊株を以下のようにして作成し、そのDNA増幅能を評価した。
【0107】
実施例2の1)に記載の方法と同様にして、pIJ773由来のEcoRI−HindIII断片を鋳型とし、プライマーとしてM8U(5'-TCAAGACCTCCGATACGGGCTTCTGTGCCGTTCAGTCGAATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号27)とM8L (5'-CAACGCCGTCGACCTCTACGGCGAGGACACGGTGGAGAATGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'、配列番号28)を用いてPCRにより約1.4kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、E. coli BW25113/pIJ790株にコスミド1-3を導入して得たE. coli BW25113/pIJ790/cosmid 1-3をエレクトロポレーション法で形質転換し、得られたアプラマイシン耐性の形質転換体よりコスミド1-3::AB108を得た。
【0108】
次に、E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド1-3::AB108を導入してE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid1-3::AB108を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株とE.coli ET12567/pUZ8002/cosmid 1-3::AB108を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株のうちストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株の染色体DNAをPCRで解析した結果、コスミド1-3::AB108は、アプラマイシン耐性遺伝子の両側にあるストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のDNA領域を介した2点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが示され、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株がorf1082遺伝子破壊株であることが明らかとなった。
【0109】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg /mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0110】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、どの染色体DNAを用いても目的の約1.2kbのDNA断片は増幅せず、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していない事が判明した。よって、orf1082遺伝子(配列番号2)がRsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域の増幅に必須な遺伝子であることが明らかとなった。
【0111】
実施例8:カナマイシン生合成遺伝子群に挿入されたメラニン遺伝子の発現
ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775の染色体DNA上に存在するRsA領域とRsB領域の間に、異種菌株由来の遺伝子として、GenBankのデータベースにアクセッション・ナンバーM11582として登録されているmelC1遺伝子およびmelC2遺伝子(Bernan,V. et al., Gene, 37, 101-110 (1985) 「The nucleotide sequence of the tyrosinase gene fromStreptomyces antibioticus and characterization of the gene product)からなるメラニン生合成遺伝子群を以下のようにして挿入した。
【0112】
プラスミドpSET152をBamHI、SphIおよびHindIIIで三重消化し、アガロースゲル電気泳動後、アプラマイシン耐性遺伝子を含む約2.8kbのBamHI−SphI断片をゲルから抽出、精製した。また、挿入断片として、pKM95(ヤナイ&ムラカミ(Yanai,K. & Murakami,T.)著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),2004年,第57巻,p.351−354)をBamHIおよびSphIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、カナマイシン生合成遺伝子のorf9遺伝子を含む3.25kbのBamHI−SphI断片をゲルから抽出、精製した。両DNA断片を混合し、ライゲーションキット(タカラバイオ社製)を用いて連結した後、E. coli DH5αを形質転換した。アプラマイシン耐性を示す形質転換体よりプラスミドpAB101を調製した。
次に、プラスミドpIJ702をBamHI、EcoRVおよびNdeIで三重消化し、アガロースゲル電気泳動後、melC1遺伝子およびmelC2遺伝子を含む2.97kbのBamHI−EcoRV断片をゲルから抽出、精製した。これをプラスミドpAB101のBamHI−EcoRV部位に挿入してプラスミドpAB102(9.02kb)を得た。
【0113】
E. coli ET12567/pUZ8002株にプラスミドpAB102を導入してE.coli ET12567/pUZ8002/AB102を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775株とE.coli ET12567/pUZ8002/AB102を実施例2の4)に記載の方法と同様にして、コンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株のうちストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775/AB102-4株の染色体DNAをPCRで解析した結果、プラスミドpAB102は、カナマイシン生合成遺伝子群由来のDNA領域を介した1点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが示された。
【0114】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775/AB102-4株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0115】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、これらの株は、pAB102を含むRsA領域とRsB領域の間のDNA領域が増幅している事が判明した。
【0116】
次に、上記ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775/AB102-4株の1世代目および3世代目の菌株を、1%カザミノ酸、0.05%チロシンおよび0.0005%硫酸銅を添加した前培養培地で48時間培養した後、培養上清のメラニン生産量を調べた。方法は、ムンらの方法[ムン(Mun,Y.)ら著,「バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブルティン・(Biological and Pharmaceutical Bulletin)」,(日本),2004年,第27巻,p.806−809]を一部改変して行った。即ち、20%ジメチルスルフォキシドを含む2N水酸化ナトリウム溶液と培養上清とを等量混合し、80℃で30分間過熱後、黒濁浮遊物を除去し、日立分光光度計(U-2810)を用いて、475nmの吸光度を測定した。1世代目菌株の吸光度は0.42であり、3世代目菌株の吸光度は0.62であった。したがって、1世代目菌株に比較して、3世代目菌株は、メラニン生産遺伝子のコピー数の増加に伴い、メラニンを大量に生産していることが判明した。
【0117】
実施例9:RsC-RsD間のDNA領域を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカスにおけるDNA増幅
1)プラスミドpKM2003の作成
Sma-Stu-1(5'-GGGAGGCCTA-3’、配列番号29)とSma-Stu-2(5'-AGCTTAGGCCTCCC-3’、配列番号30)をアニーリングした後、予めHindIIIおよびSmaIで二重消化しておいたプラスミドpUC119と連結して、プラスミドpUC119-Stuを得た。
次に、RsA領域およびorf1082遺伝子を含む約6.6kbのSmaI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の88479〜95063番目の塩基配列)をコスミド1-3から調製し、pUC119-StuのSmaI部位に挿入した。得られたプラスミドをKpnIで消化して挿入断片の方向を調べ、SmaI断片中に存在するKpnI部位(94889番目)がpUC119-StuのHindIII部位側に挿入されているプラスミドを選択し、pKM2001と命名した。
【0118】
コスミド5-13(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)よりアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の135493〜139615番目の塩基配列からなる約4.1kbのStuI断片を調製してpKM2001のStuI部位に挿入し、SmaI断片下流に135493番目から139615番目の塩基配列の方向でStuI断片が挿入されたプラスミドを選択し、pKM2002と命名した。
【0119】
放線菌の接合伝達用プラスミドpSET152[ビアマン(Bierman,M.)ら著,「ジーン(Gene)」,(蘭国),1992年,第116巻,p.43−49]をSphI消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑化した後、HindIIIリンカー(宝酒造株式会社製)を連結してpSET153を構築した。pSET153由来の約2.8kbのHindIII−EcoRI断片と、pKM2002由来の約10.7kbのHindIII−EcoRI断片を連結して接合伝達可能なプラスミドpKM2003を構築した。
【0120】
(2)pKM2003のストレプトマイセス・カナマイセティカスへの導入とDNA増幅能評価
E. coli ET12567/pUZ8002株[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に、定法に従いプラスミドpKM2003を導入し、E.coli ET12567/pUZ8002/pKM2003を得た。
【0121】
pKM2003を導入するストレプトマイセス・カナマイセティカスとして、アクセッション・ナンバーAB254080塩基配列のうち、RsC領域とRsD領域の間(28935〜135581番目の塩基配列)の106.6kbからなるDNA領域が欠失した12-6-4株(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を用いた。ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株はRsA領域およびorf1082遺伝子を含むRsC領域とRsD領域の間のDNA領域を欠失しているためDNA増幅能を失った菌株である。ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株とE. coli ET12567/pUZ8002/pKM2003とのコンジュゲーションを実施例2の4)に記載の方法と同様にして実施した。得られたアプラマイシン耐性株より調製した染色体DNAを鋳型とし、プライマーにKM-25:5’-CCGCTCTCATTCGGTCAG-3’(配列番号31)とKM-202:5’-CCCCTGACTTTCGTCGAG-3’(配列番号32)を用いてPCRを実施した結果、約4.6kbのDNA断片が増幅した。この結果から、プラスミドpKM2003がStuI断片領域の相同組換えによって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株の染色体DNAに組み込まれたことが示された。
【0122】
本株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、500μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、カナマイシンの濃度を2000μg/ml、4000μg/ml、6000μg/mlまで上げて同様の継代培養を行い3世代目、4世代目および5世代目の培養液を得た。1世代目および5世代目の培養液から5mlをサンプリングし、7500rpm、10分間の遠心して集菌した。得られた菌体からSalting out法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]を用いて染色体DNAを調製した。
【0123】
次に、1世代目および5世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。但し、組換え検出用プライマーとして、KM-17’の代わりにKM-201:5’-CCATCCCGTCGAAGAGCC-3’(配列番号33)を使用した。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、5世代目の染色体DNAを用いた場合には1.0kbの増幅断片が得られた。増幅したDNA断片の塩基配列を解析した結果、予想通りの塩基配列からなるDNA断片であることを確認した。この結果から、ストレプトマイセス・カナマイセティカス12-6-4/pKM2003株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、DNA増幅に必要な遺伝子はpKM2003に含まれるSmaI断片、即ち、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の88479〜95063番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0124】
実施例10:ストレプトマイセス・セリカラーおよびストレプトマイセス・リビダンスにおけるDNA増幅
1)コスミドpAB801の作成
5‘末端をリン酸基で修飾して化学合成した2種類のオリゴヌクレオチドA(5’-AATTC CCTGCAGG TCTAGA ACTAGT A-3’、配列番号34)とB(5’-AGCTT ACTAGT TCTAGA CCTGCAGG G-3’、配列番号35)を混合後アニールし、予めEcoRIおよびHindIII で二重消化しておいたpUC19と連結して、プラスミドpUC19-linkerを構築した。本プラスミドのマルチプルクローニングサイトはEcoRI- SbfI-XbaI-SpeI-HindIIIとなっている。
実施例5に記載のコスミドAB501から得たRsA領域およびorf1082遺伝子を含む約10kbのXbaI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)をpUC19-linkerのXbaI部位に挿入しプラスミドpAB601を得た。XbaI断片の方向性は、pUC19-linkerのマルチプルクローニングサイトに対してEcoRI-SbfI-XbaI-RsA-orf1082-XbaI-SpeI-HindIIIとなるような向きで挿入されていた。
【0125】
次に、実施例2に記載した方法と同様にして、両端にSpeI部位およびSbfI部位を有するストレプトマイシン耐性遺伝子断片をコスミドpKM7(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)に導入した。まず、プラスミドpIJ778から得たストレプトマイシン耐性遺伝子を含むHindIII-EcoRI断片を鋳型にして、pKM7Δ12U(5’-GATCCCCGTGCACACCGAGGGCGAGCTCGCCCCGACTAGTATTCCGATCCGTCGACC-3’、配列番号36) およびpKM7Δ12L(5’-GTCGGTCACCGCCCGTACGACGGCCGGTTCCGCCTGCAGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’、配列番号37)をプライマーに用いてPCRを行い、約1.9kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、pKM7をE. coli BW25113/pIJ790株に導入して得たE. coli BW25113/pIJ790/pKM7株をエレクトロポレーション法で形質転換し、アンピシリンとストレプトマイシンに耐性を示すクローンを得た。このクローンから、コスミドpKM7::strを単離した。
【0126】
次に、プラスミドpAB601由来の約10kbのSbfI-SpeI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)を、コスミドpKM7::strのSbfI-SpeI部位に挿入したコスミドpAB701を以下に述べるようにして調製した。まず、プラスミドpAB601およびコスミドpKM7::strをそれぞれSpeIおよびSbfIで二重消化し、混合後、Rapid DNA Dephos and ligation Kit(Roche:Cat No. 04898125001)を用いて、添付の指示書に従いライゲーション反応を行った。ライゲーション反応物をキット{Packeging kits:E. coli XL1-BlueMRA and MaxPlax(商標) Lambda Packaging Extracts (EPICENTRE(商標) Biotechnologies社製)}を用いてin vitroパッケージングした。パッケージング後、反応液をE. coli XL1-Bllue MRA株に感染させ、アンピシリン100μg/mlとカナマイシン100μg/ml LBを含む寒天培地に塗布した。37℃で終夜培養した結果、寒天培地上で生育するクローンを検出できた。これらのクローンには、(1)pKM7::strを含むもの、(2)pAB701を含むもの、の2種類のコスミドを含む可能性がある。目的物のコスミドpAB701を含むクローンはストレプトマイシン感受性を示すことから、アンピシリン100μg/mlおよびカナマイシン100μg/mlを含む LB寒天培地と、アンピシリン100μg/ml、カナマイシン100μg/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを含む LB寒天培地に各クローンをレプリカした結果、369クローンのうち、293株がストレプトマイシン感受性を示した。これらのクローンからコスミドを調製し、SpeIおよびSbfIによる二重消化で約10kbのDNA断片が生じることを確認し、コスミドpAB701とした。
【0127】
次に、コスミドpAB701をE. coli BW25113/pIJ790株に導入し、E. coli BW25113/pIJ790/pAB701株を得た。プラスミドpMJCOS1(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)由来の5.2kbのSspI断片でBW25113/pIJ790/pAB701株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlとアプラマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地で終夜培養した。生育したコロニーよりコスミドを調製し、pAB801とした(図2)。コスミドpAB801は、挿入断片として、プラスミドpAB601由来の約10kbのSbfI-SpeI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)とコスミドpKM7に由来する約27.8kbのDNA断片(アクセッション・ナンバーAB164642の塩基配列の7107〜19547番目の塩基配列および15046bpから成るアクセッション・ナンバーAB254081の塩基配列を含む)を有し、さらにベクター部分にプラスミドpSET152由来のoriTattPint領域を有し、放線菌に接合伝達可能なコスミドである。
【0128】
(2)コスミドpAB801のストレプトマイセス・セリカラーおよびストレプトマイセス・リビダンスへの導入とDNA増幅の評価
実施例2に記載の方法に従い、E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミドpAB801を導入し、E. coli ET12567/pUZ8002/pAB801株を得た。
ストレプトマイセス・リビダンス1326株 およびストレプトマイセス・セリカラー MT1110株を、MS培地[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に塗布し、30℃で5日間培養し、胞子を形成させた。この胞子を集め、3mlの滅菌水に懸濁し保存した。この胞子懸濁液200μlを、400μlの2×YT液体培地と合わせ、50℃で10分間加熱処理した。一方、E. coli ET12567/pUZ8002/pAB801株は、LB液体培地(クロラムフェニコール25μg/ml、カナマイシン25μg/ml、アンピシリン50μg/ml、アプラマイシン50μg/ml 添加)50mlに植菌し、37℃で終夜培養した。このうち500μlを、新たなLB液体培地(クロラムフェニコール25μg/ml、カナマイシン25μg/ml、アンピシリン50μg/ml、アプラマイシン50μg/ml 添加)50mlに植え継ぎ、37℃で、4時間培養した。全量から菌体を集めた、これを抗生物質無添加のLB液体培地で二回洗浄し、1.5mlのLB液体培地に懸濁した。この500μlを、先の加熱処理した胞子懸濁液に加えた。これを遠心分離に供したあと、50μlのLBと50μlの2xYTを加えて懸濁した。懸濁液の90μlと10μlをそれぞれMS培地に塗布した。これらを30℃で終夜培養し、0.5mgのナリジキシン酸と1.25mgのアプラマイシンを含む1mlの滅菌水を各シャーレに重層した。30℃で3日間培養した結果、90μl塗布した区では、全面に、10μlの区では、シャーレ当たり約1000個の耐性株の生育を見た。これらの株をMS培地(25μg/mlナリジキシン酸と50μg/mlアプラマイシンを含む)にレプリカし、30℃で3日間生育させた。生育したアプラマイシン耐性株をホモゲナイズして、MS培地(25μg/mlナリジキシン酸と50μg/mlアプラマイシンを含む)に塗布し、37℃で7日間培養して胞子を着生させた。
【0129】
これらの胞子を、SOB液体培地(25μg/mlナリジキシン酸を含む)および250μg/mlカナマイシンを含むSOB液体培地(25μg/mlナリジキシン酸を含む)に植菌し、30℃で48時間培養した。各培養液から菌体を集め、ソルティングアウト法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]により染色体DNAを調製した。これらの染色体DNAを鋳型にして、実施例1に記載の方法に従い、PCR法でRsA領域とRsB領域によるDNA組換えの検出を行った。その結果、カナマイシンを添加しない培養区では、1.2kbの増幅断片は検出できなかったが、カナマイシンを添加した培養区では、1.2kbの増幅断片が検出できた。したがって、コスミドpAB801を導入したストレプトマイセス・リビダンス1326株 およびストレプトマイセス・セリカラー MT1110株において、RsA領域とRsB領域の間に存在するDNA領域が増幅したことが示された。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]