【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1:ストレプトマイセス・カナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)JCM4775株のカナマイシン生合成遺伝子群の増幅
1)継代培養とカナマイシン生産性向上
ストレプトマイセス・カナマイセティカス
JCM4775株
(理研バイオリソースセンター)の凍結乾燥菌体(L-tube)を前培養培地{コーンスティープリカー;3%、ドライイースト;0.25%、CaCl
2;0.1%、Staminol(日本農業資材株式会社:発売、サッポロビール株式会社:製造);0.1%、殺菌前pH7.5、250ml容量の三角フラスコに40ml容量を仕込む}に植菌した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、Aとした(1世代目)。ついで、これを2種類の前培養培地(抗生物質無添加区、250μg/mlのカナマイシン添加区)に1ml移植した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、抗生物質無添加区をB、250μg/mlのカナマイシン添加区をCとした(2世代目)。ついで、Bの培養液をカナマイシン無添加区の前培養培地に1ml移植した。これを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、Dとした(3世代目)。Cの培養液は、それぞれ500μg/mlおよび2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1mlづつ移植した。これらを48時間培養(ロータリーシェーカーを用いて、220rpmの回転数で、28℃で実施)し、500μg/mlのカナマイシン添加区をE、2000μg/mlのカナマイシン添加区をFとした(3世代目)。
【0059】
上記で得られた菌株を保存するために、1世代目(A)、2世代目(B、C)、3世代目(D、E、F)ともに48時間の培養終了時点で、同量の20 %スキムミルクと混合し、-80℃で凍結保存した。保存中のA、B、C、D、E、Fの各菌株の0.5mlをそれぞれ抗生物質無添加の前培養培地に植菌し、48時間培養した。培養終了後、それらの50μlを生産用寒天培地(Starch 1%、Glucose 0.25%、Soybean meal 0.6%、Peptone 0.15%、KCl 0.0025%、MgSO
4・7H
2O 0.025%、K
2HPO
4 0.05%、NaCl 0.15%、CaCO
3 0.15%、殺菌前pH7.0、20ml/シャーレ)に塗布した。これらを28℃で7日間培養した。 表面にストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775が生育した寒天培地をコルクボーラー(直径5mm)で打ち抜き、この円盤状のピースをバチルス・サブチルス(
B. subtilis) ATCC6633を含んだ寒天平板に乗せ、37℃で18時間培養し、カナマイシンによる阻止円を形成させた。生産量を調べる標準として、生産用寒天培地に、0μg/ml、10μg/ml、100μg/ml、500μg/mlの濃度のカナマイシンを添加した培地を作成し、同じく、コルクボーラー(直径5mm)で打ち抜いた。これにより形成される阻止円と、先の阻止円とを比較した結果、生産用寒天培地に生産されたカナマイシン濃度は、それぞれ、A;10μg/ml、B;10μg/ml、C;150μg/ml、D;10μg/ml、E;200μg/ml、F;250μg/mlであった。このように、1世代目(A)のカナマイシン生産能力が、3世代目(E、F)では、20倍から25倍向上した。
【0060】
2)遺伝子増幅の証拠:PCR法による組換え結合部位(RsB/RsA)の検出
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間培養の終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心分離に供した。得られた上澄み液をデカント後、菌体を真空凍結乾燥に供した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、以下の方法で染色体DNAを分離した。つまり、乾燥菌体の1/10量にTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8)1mlと50μl(濃度:20mg/ml)のリゾチーム溶液を加えた。37℃で30分間溶菌させた後、Genomic DNA Purification kit、MagExtractor
(商標)-Genome-(TOYOBO社製)に添付されている溶解・吸着液を2ml加えた。攪拌後、1mlをエッペンドルフチューブに移し、12000rpm、5分間の遠心分離に供した。上澄み液の850μlを蓋なしのエッペンドルフチューブに移し、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いてキット添付の指示書に従ってDNAを分離した。次に、1)で得られたA、B、C、D、E、Fの各菌株の染色体DNAを用いて、PCR法による遺伝子増幅試験を行った。用いた合成プライマーは、KM-16’(5 ’-CCGGCACTTCCGCTCCAA-3’、配列番号5)とKM-17’(5 ’-GCGGGTTCGCCAACTCCA-3’、配列番号6)である。PCR反応は、TaKaRa LA TaqR withGC Buffer(タカラバイオ株式会社製)を用いて、添付されたプロトコールを一部修正して行った。つまり、反応液組成は、TaKaRa LA Taq
(商標)(5 units/μl)を0.5μl、2×GC Buffer IIを25μl、dNTP溶液(各2.5mM)を8μl、Dimethyl Sulfoxideを2.5μl、染色体DNAを100pmol(1μl)、プライマー KM-16’を100pmol(1μl)、プライマー KM-17’を100pmol(1μl)、滅菌水(11μl) であり、最終容量を50μlとした。アニーリング温度は50℃で実施し、増幅サイクルは25回で実施し、エクステンションは72℃で2分間の反応を採用した。RsA領域(5’-GAAGTGACGATACCTTGGTCCTCTCAAATCAAGA-3’、配列番号3)とRsB領域(5’-ACCACGACGACACCCTGGTCCGCGCGGAGGAGGT-3’、配列番号4)でDNA組換えが起これば1.2kbのDNA断片が増幅されることになる(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。反応終了液をアガロースゲル電気泳動に供した結果、A、B、Dの各菌株の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、C、E、Fの各菌株の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られた。増幅バンドのエチジウムブロミドによる染色の強度は、CはEとFの約半分であった。この結果から、カナマイシンを添加して継代培養することによって、RsA領域とRsB領域の間のDNA領域が増幅したことが示された。
【0061】
3)遺伝子増幅の証拠:サザンブロット解析による増幅遺伝子領域の検出
A、B、C、D、E、Fの染色体DNAの各5μgを
BamHIで切断し、アガロースゲル電気泳動に供した。定法に従い、アガロースゲル中のDNAをHybond
TM-N+(GEヘルスケアバイオサイエンス製)にブロッティングした。ハイブリダイゼーションはECL
(商標) Direct Nucleic Acid Labelling and Detection System(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を使用し、添付の取扱説明書に従って実施した。プローブには、pKM92由来の4.95kbの
SphI断片(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を使用した。
【0062】
野生株では9.6kbの
BamHI断片が検出されるが、RsA領域とRsB領域でDNA組換えが起これば、10.8kbの
BamHI断片が新たに検出される(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)。ハイブリダイゼーションの結果、全てのサンプルに9.6kbのバンドが検出された。Fのサンプルには10.8kbのバンドも検出され、9.6kbと10.8kbのバンドの濃さはほぼ同等であった。Eのサンプルにも10.8kbのバンドが検出されたが、非常にわずかな濃さであった。このように、EおよびFのサンプルに10.8kbの
BamHI断片が検出されたことから、EおよびF の菌株では、RsA領域とRsB領域でDNA組換えが起こり、この間のDNA領域が増幅したことが示された。
【0063】
実施例2: 化学合成したRsA領域を有するコスミド203-7の作成と野生株への導入
Genbankのデータベースにアクセッション・ナンバーAB254080(総塩基数205447bp)として登録されている、ストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のカナマイシン生合成遺伝子クラスターの塩基配列のうち、RsC領域とRsD領域の間(28935〜135581番目の塩基配列)の106.6kbからなるDNA領域に、DNA増幅を引き起こす鍵遺伝子の存在を調べるために、RsA領域(94693〜94726番目の塩基配列、配列番号3)を有するが、RsC-RsD間のDNA領域のほとんどを欠失した菌株を以下の方法で作成し、DNA増幅能を調べた。
【0064】
1)コスミドAB201の作成
コスミド4-5(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)の挿入断片の右端にアプラマイシン耐性遺伝子と新たな制限酵素
EcoRV部位を挿入したコスミドAB201を以下のようにして作成した。
プラスミドpIJ773[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]を
HindIIIと
EcoRIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、目的とするアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.3kbのDNA断片を得た。これを鋳型にして、以下に示す塩基配列からなる2種類の合成プライマー(RsA1U、RsA1L)を用いて、PCR法により約1.4kbのDNA断片を増幅させた。
【0065】
RsA1U: 5'-CACGGCACGGAATACCACTGCGTGCCCGTCGACGACGGTATTCCGGGGATCCGTCGACC-3'(配列番号7)
RsA1L: 5'-CCAGGTCGGGAAGGGTGCTCTCCGCGCGAGCGGAGGTGATATCTTGATTTGAGAGGACCAAGGTATCGTCACTTCTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'(配列番号8)
【0066】
PCR反応は、TaKaRa LA Taq
(商標) with GC Buffer(タカラバイオ社製)を用いて、実施例1の2)に記載の条件で行った。反応液の全量から、QIAquickR PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、pIJ773由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片を精製した。
【0067】
次に、E.coli BW25113/pIJ790[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]にコスミド4-5を導入し、E.coli BW25113/pIJ790/cosmid4-5株を得た。本株をクロラムフェニコール、カナマイシンおよびアンピシリンをそれぞれ25μg/ml、25μg/mlおよび50μg/mlの濃度で含む100mlの LB液体培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0. 5%塩化ナトリウム)に植菌し、30℃で一晩培養した。65ml容量の試験管に、10mlのSOB培地(2%バクトトリプトン、0.5%酵母エキス、0.05%塩化ナトリウム、0.0186%塩化カリウム)を仕込み、クロラムフェニコール、カナマイシン、アンピシリン、L-アラビノースを、それぞれ25μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、10mM 濃度で添加した。これに、一晩培養したE.coli BW25113/pIJ790/cosmid4-5株の培養液100μlを移植し、30℃で4時間振とう培養した。培養液の全量を、4℃、3000rpm、5分間の遠心で集菌した後、氷中にて冷却した10%のグリセリン溶液10mlに懸濁した。この操作を繰返した後、冷却した10%のグリセリン溶液100μlに再懸濁させた。次に、エッペンドルフチューブに50μlの菌体けん濁液を採取し、上述のpIJ773由来のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約1.4kbのDNA断片溶液を5μl加えた。これを、予め氷中にて冷却した2mmギャップのエレクトロポレーションキュベット (ビーエム機器株式会社製:BM6200)に移した。エレクトロポレーションは、Electro Cell Manipulator600(ビーエム機器株式会社製)にて、12.5kV、25μF、128Ωの条件にて行った。処理後の菌体には、予め氷中にて冷却したLB液体培地を1ml添加し、37℃で1時間静置培養した。これを、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB寒天培地に塗布し、37℃で終夜培養し、アンピシリンとアプラマイシンの両者に耐性を示す株を得た。この株を、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミドAB201を単離した。
【0068】
2)コスミドAB202の作成
コスミド5-13(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)の挿入断片の左端にストレプトマイシン耐性遺伝子と新たな制限酵素
Bsp1407I部位を挿入したコスミドAB202を以下のようにして作成した。
【0069】
まず、プラスミドpIJ778[グスト(Gust,B.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2003年,第100巻,p.1541−1546]を
HindIIIと
EcoRIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、目的とするストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.8kbのDNA断片を得た。これを鋳型にして、以下に示す塩基配列からなる2種類の合成プライマー(RsA2U、RsA2L)を用いて、PCR法により約1.9kbのDNA断片を増幅させた。
【0070】
RsA2U:5'-CTCGCGCGGGAGCACCCCAGGCTGCCTGCAGAAAACTGTACATTCCGGGGATCCGTCGACC-3'(配列番号9)
RsA2L:5'-AGTTCGCATCGCCCATCTAAGGAACTGGTGGGCCTTAGCTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'(配列番号10)
【0071】
反応液の全量から、QIAquick
(商標) PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて、pIJ778由来のストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.9kbのDNA断片を精製した。これを、上述の方法と同様にして得たE. coli25113/pIJ790/cosmid5-13にエレクトロポレーション法で導入し、アンピシリンとストレプトマイシンの両者に耐性を示す株を得た。この株を、アンピシリンとストレプトマイシンをそれぞれ、50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミドAB202を単離した。
【0072】
3)コスミド203-7の作成
コスミドAB201のアプラマイシン耐性遺伝子を含む約16kbの
Bsp1407I−
EcoRV断片を、コスミドAB202の
Bsp1407I−
EcoRV部位に挿入してコスミド203-7を作成することとした。
【0073】
まず、コスミドAB201を
Bsp1407I、
EcoRV、
SphIで三重消化した後、アガロースゲル電気泳動に供し、約16kbの
Bsp1407I−
EcoRV断片をQIAquick
(商標) Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いてアガロースゲルから精製した。ついで、コスミドAB202を
Bsp1407Iと
EcoRVで二重消化し、同様にアガロースゲルから抽出、精製したコスミドAB201由来のベクター断片と混合し、ライゲーション反応を実施した。
【0074】
ライゲーション後のDNA溶液を、MaxPlax
(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE
(商標) Biotechnologies社製)を用いて
in vitroパッケージングした。これを
E.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布した。出現したコロニーを、アンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で培養し、コスミド203-7を単離した。コスミド203-7の挿入断片の両末端の塩基配列を解析した結果、コスミド203-7は、コスミド4-5由来の
BstAUI-
EcoRV断片の挿入時に、コスミド5-13由来の
Bsp1407I断片(123007〜123183番目の塩基配列、177bp)が同時に挿入されていることが判明した。よって、コスミド203-7は、RsC-RsD間のDNA領域(28935〜135581番目の塩基配列)のうち33306〜128995番目の塩基配列の欠失があるが、RsA領域として34bp(94693〜94726番目の塩基配列)と上記の
Bsp1407I断片(177bp)を含んだコスミドである。
【0075】
4)コスミド203-7のストレプトマイセス・カナマイセティカスへの導入
E. coli ET12567/pUZ8002株[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に、定法に従いコスミド203-7を導入し、
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7を得た。
【0076】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775と
E. coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7のコンジュゲーションは以下のようにして実施した。まず、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株を前培養培地で、28℃、48時間培養した後、改変R2寒天培地(水95ml中に、Sucrose 10.3g、K
2SO
4 0.025g、 MgCl
2・6H
2O 1.01g、Glucose 1g、Difco Casaminoacids 0.01g、 寒天2.2g、別殺した10%イーストエキストラクト5mlを加えた)に、100μlの培養液を塗り付けた。28℃で7日間培養後、20%グリセリン溶液3mlを添加して寒天培地表面の菌糸をかきとった。3000rpm、5分間遠心して集菌後、3mlの20%グリセリン溶液に菌体を懸濁した。一方、
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7株を、アンピシリンおよびアプラマイシンをそれぞれ50μg/mlの濃度で添加したLB液体培地で、37℃、18時間培養した後、培養液1mlを100mlのLB液体培地(アンピシリンおよびアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml含む)に移植し、37℃、4時間培養した。培養液50mlを3000rpm、5分間遠心して集菌し、菌体を20ml のLB液体培地に懸濁した。この操作を2回繰り返した後、菌体を2mlの LB液体培地に懸濁した。
【0077】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775の菌体懸濁液100μlと
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid203-7の菌体懸濁液100μlを、1.5ml容のチューブの中で合併し、遠心で集菌した。これを、100μlの20%グリセリン溶液に懸濁した後、20ml容量のMS寒天培地(寒天:2%、マニトール:2%、ダイズ粉末:2%、10mM MgCl
2)に塗布した。28℃で18時間培養後、アプラマイシン400μgと ナリジキ酸1500μgを含む滅菌水1mlを重層した。28℃、5日間培養した後、寒天培地上で生育したストレプトマイセス・カナマイセティカスのコロニーのうち1株を釣菌し、ガラスホモゲナイザーでホモゲナイズ後、アプラマイシン20μg/mlとナリジキ酸10μg/mlを添加したNutrient寒天培地(Difco社製、Nutrient Broth、寒天2%含む)に塗布し、4日間、28℃で培養後した。生育したコロニーを前培養培地に植菌し、28℃、48時間培養し、等量の20%スキムミルク溶液と混合後、凍結乾燥保存した(ストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株)。
【0078】
5)PCR法による組換え部位(RsB/RsA)の検出
上記4)で得られたストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の凍結乾燥菌体(L-tube)を前培養培地に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0079】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を行った。用いた合成プライマーが、KM-18’(5 ’-CTCGACAAGGTCTGCAAGCC-3’、配列番号11)とM19 ’L(5 ’-ATCTTGATTTGAGAGGACCA-3’、配列番号12)である以外は、実施例1の2)に記載の方法と同様にして行なった。その結果、どの染色体DNAを用いても目的の約0.9kbのDNA断片は増幅せず、ストレプトマイセス・カナマイセティカスRsAcos3株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していない事が判明した。よって、DNA増幅に必要な遺伝子は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0080】
実施例3:RsC-RsA領域間の約37kbのDNA領域の欠失を有するストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株の作成
RsC-RsA領域間(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列)のDNA領域を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株を以下のようにして作成した。
【0081】
1)プラスミドpAB305の構築
コスミド2-1(非特許文献2)を鋳型にして、プライマーAfrU:5'-GGAGAAGCATGCGAGGACAAGTCGCGGCTTGAAC-3'(配列番号13)とAfrLRV:5'-CAGGCGGATCCCTGCGATATCCGTAGCGCGCATAAACGAAGAA-3'(配列番号14)を用いて、PCRにより約3.4kbのA断片(47230〜50602番目の塩基配列)を増幅させた。これを
BamHIと
SphIで二重消化し、pUC118の
BamHI−
SphI部位に挿入してプラスミドpAB301を得た。
【0082】
次に、コスミド1-3(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を鋳型にして、プライマーBfrU:5'-GCAGATGGATCCAGAGTCTAGATTCAGCTCGTTGATCACCATGTC-3'(配列番号15)、とBfrL:5'-CAGGCGAATTCCGCGTGGAATCGCTCCGCATCTT-3'(配列番号16)を用いて、PCRにより約3.9kbのB断片(87961〜91943番目の塩基配列)を増幅させた。これを
BamHIと
EcoRIで二重消化し、pUC118の
BamHI−
EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB302を得た。
【0083】
次に、pAB302由来のB断片(
BamHI−
EcoRI断片)をpAB301の
BamHI−
EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB303を得た。さらに、pAB303にチオストレプトン耐性遺伝子(
tsr)を導入するため、プラスミドpIJ 702[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]を
BclIで消化し、
tsr遺伝子を含む約1kbの
BclI断片をpUC118の
BamHI部位に挿入し、プラスミドpUC118tsrを得た。これを
XbaIと
SmaIで二重消化し、
tsr遺伝子を含む
XbaI−
SmaI断片をpAB303の
EcoRV−
XbaI部位に挿入して、A断片−tsr遺伝子−B断片を挿入断片として有するプラスミドpAB304を得た。さらに、pAB304を
SphIと
EcoRIで二重消化し、A断片−tsr遺伝子−B断片を約8.5kbの
SphI−
EcoRI断片として単離し、pSET152[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]の
SphI−
EcoRI部位に挿入してプラスミドpAB305を得た。
【0084】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305 cure株の作成とDNA増幅能評価
E. coli ET12567/pUZ8002株に定法に従いプラスミドpAB305を導入し、E.coliET12567/pUZ8002/pAB305とした。
次に、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775と
E. coli ET12567/pUZ8002/pAB305とのコンジュゲーションを実施例2の4)に記載の方法と同様にして実施した。得られたアプラマイシン耐性株は、再度アプラマイシン20μg/mlとチオストレプトン10μ/ml を含むNutrient 寒天培地を用いてチオストレプトン耐性を確認し、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株とした。前述の方法でストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株より調製した染色体DNAを鋳型とし、プライマーに4tsrU:5 ’-ataagcgcctctgttcctcg-3’(配列番号17)とBfrLoutL:5 ’-gactcaccctcagccagaat-3’(配列番号18)を用いてPCRを実施した結果、約4kbのDNA断片が増幅した。この結果から、プラスミドpAB305がB断片領域の相同組換えによって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775の染色体DNAに組み込まれたことが示された。
【0085】
次に、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株からアプラマイシン感受性かつチオストレプトン耐性株の分離を以下のようにして実施した。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305株を前培養培地で、28℃、48時間培養した(1世代目)。この培養液1mlを新たな前培養培地に植菌し、さらに28℃、48時間培養した(2世代目)。同様の操作を5世代まで繰り返し、3世代目からは前培養培地に直径5mmのガラスビーズを5個加え、菌糸をほぐれ易くした。5世代目の培養液は、単コロニーとして分離できるように希釈してNutrient寒天培地に塗布した。72時間後、生育したコロニーを、チオストレプトン(10μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)をそれぞれ添加したNutrient寒天培地にレプリカした。5400株の表現型を調べた結果、48株のアプラマイシン感受性株が得られ、このうち7株がチオストレプトン耐性を示した。これらの株より染色体DNAを調製し、PCRにより、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうち、50603〜87960番目の塩基配列が
tsr遺伝子に置換されていることを確認し、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株とした。
【0086】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株のDNA増幅能力を調べるために、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載した方法と同様にして、染色体DNAを調製した。
【0087】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載した方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜50602番目の塩基配列および87961〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0088】
実施例4:RsC-RsA領域間に約37kbおよび RsA-RsD領域間に約22kbのDNA領域の欠失を有するストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の作成
RsC-RsA領域(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列)およびRsA-RsD領域(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の97641〜120061番目の塩基配列)を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株を以下のようにして作成した。
【0089】
1)コスミド3-7::AB402の作成
E. coli BW25113/pIJ790株にコスミド3-7(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を導入し、
E. coli BW25113/pIJ790/cosmid 3-7株を得た。実施例2の1)に記載したプラスミドpIJ773由来の約1.3kbの
EcoRI−
HindIII断片を鋳型とし、プライマーとして97682U(5 ’-TCTTCTGTCGTCTCATCCATCGTGCTGGCCTTCGATGACATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号19)と120181L(5 ’-GGGAAAGTACGGGAAAAGATCTCGGTTACTCGCGATCCATGTAGGCTGGATCTGCTTC-3 ’、配列番号20) を用いて、PCRにより約1.4kbのアプラマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を増幅させた。実施例2の1)に記載の方法と同様にして、
E.coli BW25113/pIJ790/cosmid3-7株のコンピテントセルを作成し、上述の約1.4kbのアプラマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片でエレクトロポレーションによる形質転換を行った。アプラマイシンとアンピシリンの両者に耐性を示す形質転換体(
E.coliBW25113/cosmid3-7::AB402株)を培養してコスミド3-7::AB402を調製した。
【0090】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の作成とDNA増幅能評価
次に、
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド3-7::AB402を導入してE.coliET12567/pUZ8002/cosmid3-7::AB402を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB305cure株とE.coliET12567/pUZ8002/cosmid3-7::AB402を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、得られたアプラマイシン耐性株をストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株の染色体DNAを調製し、各種プライマーを用いてPCRを行い、コスミド3-7::AB402の挿入断片が二重交差による相同組換えでストレプトマイセス・カナマイセティカスの染色体DNAに組み込まれていることを確認した。よって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株はアクセッション・ナンバーA B254080の塩基配列の50603〜87960番目の塩基配列および97641〜120061番目の塩基配列の領域を欠失していることが示された。
【0091】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスM27株のDNA増幅能力を調べるために、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0092】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の33306〜50602番目の塩基配列、87961〜97640番目の塩基配列および120062〜128995番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0093】
実施例5:コスミドAB501およびM29株の作成
アクセッション・ナンバーA B254080の塩基配列の29219〜87960番目の塩基配列、97641〜120061番目の塩基配列および120621〜139619番目の塩基配列のすべての領域を欠失した菌株作成のためのコスミドAB501は以下のようにして作成した。
【0094】
1)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株染色体DNAのコスミドライブラリー作成とスクリーニング
実施例4で作成したストレプトマイセス・カナマイセティカス M27株を、前培養培地で、28℃、48時間培養後、培養液1mlを250mlの三角フラスコに40mlを仕込んだ改変YEME液体培地(0.3% Difco yeast extract、0.5% Difco Bacto-peptone、0.3% Oxoid malt extract、0.1% Glucose、3.4% Sucrose、5mM MgCl2・6H2O、0.5% Glycine )に移植した。28℃、24時間培養した後、遠心により集菌した。フラスコ4本分の菌体を40mlのSET buffer(75mM NaCl、25mM EDTA (pH8)、20mM Tris-HCl (pH7.5))に懸濁した。これに、50mg/mlのリゾチーム水溶液を800μl添加後、37℃で60分間保持した。20mg/mlのProteinase K水溶液を1120μlと4.8mlの10% SDS溶液を添加し、55℃で2時間、加温した。5M NaCl溶液を16ml添加し、40mlのクロロホルムを加え、良く混合した後、30分間、室温に放置した。室温で、4500×
g、15分間遠心し、水層を新たなチューブに移した。これに、0.6倍容量のイソプロパノールを混合し、3分間後に先を閉じたパスツールピペットにてDNAを巻き取った。これを、70%のエタノールでリンスした後、自然乾燥させ、5mlのTE bufferに溶解した。得られたDNAの濃度は、0.75mg/mlであった。
【0095】
このようにして調製した染色体DNAを
MboIで部分消化した後、CIAP(calf intestinal alkaline phosphatase)を用いて脱リン酸化した。一方、コスミドベクターであるSuperCos 1(ストラタジーン社)は、
XbaIで消化した後、CIAP による脱リン酸化を行い、さらに
BamHIで消化した。これらを混合し、Mighty Mix 6023(タカラバイオ社)を用いて26℃、10分間のライゲーション反応を行った。反応後のDNA溶液をMaxPlax
(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE
(商標) Biotechnologies社製)を用いて
in vitroパッケージングした。これを
E.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布し終夜培養した。出現したコロニーをアンピシリンとアプラマイシンをそれぞれ50μg/ml濃度で添加したLB液体培地で、37℃、終夜培養した。培養液からコスミドDNAを分離し、各コスミドの挿入断片の両末端の塩基配列を解析した。アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列上の29213番目の位置の
NdeIおよび139611番目の位置の
AflIIを含むクローンとしてコスミド1-10を選択した。
【0096】
2)コスミド203-7::strの作成
コスミド1-10の
NdeI−
AflII断片(約33kb)を実施例2の3)に記載のコスミド203-7の
NdeI−
AflII部位に置換・挿入するために、まず、コスミド203-7のアプラマイシン耐性遺伝子をストレプトマイシン耐性遺伝子と置換することとした。実施例2の2)に記載のpIJ778由来
HindIII−
EcoRI断片を鋳型とし、プライマーにRsA1Ussp(5 ’- CACGGCACGGAATACCACTGCGTGCCCGTCGACGACAATATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号21)とRsA1LRV(5 ’-CAGACTCTGAGTGATATCTTGATTTGAGAGGACCAAGGTTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3 ’、配列番号22)を用いて、ストレプトマイシン耐性遺伝子を含む約1.9kbのDNA断片をPCRで増幅させた。このDNA断片を用いて、
E. coli BW25113/pIJ790/cosmid 203-7をエレクトロポレーション法で形質転換した。アプラマイシンに感受性を示し、アンピシリンおよびストレプトマイシンの両者に耐性を示す形質転換体よりコスミドDNAを調製し、コスミド203-7::strとした。
【0097】
3)コスミドAB501の作成
コスミド1-10の
NdeI、
DraIおよび
AflIIによる三重消化物と、コスミド203-7::strの
NdeIおよび
AflIIによる二重消化物を混合し、Mighty Mix 6023(タカラバイオ社)によるライゲーション反応を行った。反応後のDNA溶液をMaxPlax
(商標) Lambda Packaging Extracts(EPICENTRE
(商標) Biotechnologies社製)を用いて
in vitroパッケージングした。これを
E.coli XL1-BlueMRA株に感染させ、アンピシリン(50μg/ml)とアプラマイシン(20μg/ml)を添加したLB寒天培地に塗布した。得られたコロニーについて、ストレプトマイシン感受性およびアプラマイシン耐性を確認するとともに、プライマーとしてKM37(5 ’- TCTGCTCACC TCTGCGTCAG-3’、配列番号23)およびチオストレプトン耐性遺伝子に由来するtsrL(5 ’-TGACGAATCGAGGTCGAGGA-3’、配列番号24)を用いたPCRにより、
NdeI部位における組換えを確認してクローンを選抜し、コスミドAB501を調製した。
【0098】
コスミドAB501を
KpnIで消化したところ、理論上の制限酵素地図と一致しない約8kbの断片が検出されたため、コスミド501を構築の過程で、挿入断片であるコスミド1-10由来の
NdeI−
AflII断片に欠失が起きている事が判明した。そこで、欠失領域を含むと推定された約4kbの
XbaI−
KpnI断片をコスミドAB501からpUC19にサブクローニングし、塩基配列を解析した。その結果、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列上の120620番目の塩基(T)と139620番目の塩基(T)が連結していることが明らかとなり、120621〜139619番目の塩基配列が欠失していることが示された。よって、コスミドAB501は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうちの16650〜29218番目、87961〜97640番目、120062〜120620番目および139620〜146821番目の塩基配列から成り立っている。但し、次項で述べるストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株の作成には影響しないが、コスミド5-13に由来する114645〜114723の塩基配列が16650番目の塩基の上流に付加されていた。
【0099】
4)ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株の作成とDNA増幅能の評価
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミドAB501を導入して
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid AB501を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株と
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid AB501を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、得られた100株のアプラマイシン耐性株を、アプラマイシン20μg/mlおよびチオストレプトン10μ/ml を添加したNutrient 寒天培地に塗布し、チオストレプトンに対する感受性を調べた。98株はチオストレプトンには感受性であり、87961〜97640番目の塩基配列と139620〜146821番目の塩基配列の領域での二点交差の相同組換えによって生じたと推定され、目的の菌株ではないことが示された。一方、2株はチオストレプトンに対して耐性を示し、16650〜29218番目の塩基配列と139620〜146821番目の塩基配列の領域での二点交差の相同組換えによって生じた菌株であると推定された。さらに、これら2株の染色体DNAに対するPCR解析から、コスミドのベクター部分は染色体に挿入されていないことが判明し、二点交差による相同組換え株であることが明らかとなったことから、この株をストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の29219〜87960番目の塩基配列、97641〜120061番目の塩基配列および120621〜139619番目の塩基配列の領域を欠失した菌株である。
【0100】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0101】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカス M29株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2に記載した、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していないストレプトマイセス・カナマイセティカス RsAcos3株の欠失領域との比較から、DNA増幅に必要な遺伝子は、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列および120062〜120620番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0102】
実施例6:ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株の作成とDNA増幅能の評価
1)コスミド5-13::AB113の作成
実施例2の1)に記載した方法に従い、pIJ773由来の
EcoRI−
HindIII断片を鋳型とし、プライマーとしてM13U(5'-GGAGCACTTGCCGGTCTGGCCCAGAACGCGGACGCCGTCATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号25)とM13L (5'-AGAGCAGTCAGGCTGGCAACCGCACATCCACGCGATCGTTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'、配列番号26)を用いてPCRにより約1.4kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、
E.coli BW25113/pIJ790/cosmid5-13をエレクトロポレーション法で形質転換し、得られたアプラマイシン耐性の形質転換体よりコスミド5-13::AB113を得た。
【0103】
2)ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株の作成とDNA増幅能の評価
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド5-13::AB113を導入して
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid5-13::AB113を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株と
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid 5-13::AB113を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株の染色体DNAをPCRで解析した結果、コスミド5-13::AB113は、アプラマイシン耐性遺伝子の両側にあるストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のDNA領域を介した2点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが明らかとなり、本株をストレプトマイセス・カナマイセティカスAB113-2株とした。ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列のうちの118626〜130558番目の塩基配列を欠失した菌株である。
【0104】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB113-2株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。1世代目および3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0105】
次に、1世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、ストレプトマイセス・カナマイセティカスAB113-2株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、実施例2および5に記載した結果と併せ、DNA増幅に必要な遺伝子はアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0106】
実施例7:orf1082遺伝子破壊株の作成とDNA増幅能の評価
アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列の間に存在する遺伝子は
orf1079遺伝子〜
orf1086遺伝子の8種の遺伝子である。このうち、
orf1082遺伝子産物(配列番号1)がDNA関連蛋白質と同一性を示すことから、
orf1082遺伝子の破壊株を以下のようにして作成し、そのDNA増幅能を評価した。
【0107】
実施例2の1)に記載の方法と同様にして、pIJ773由来の
EcoRI−
HindIII断片を鋳型とし、プライマーとしてM8U(5'-TCAAGACCTCCGATACGGGCTTCTGTGCCGTTCAGTCGAATTCCGGGGATCCGTCGACC-3’、配列番号27)とM8L (5'-CAACGCCGTCGACCTCTACGGCGAGGACACGGTGGAGAATGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3'、配列番号28)を用いてPCRにより約1.4kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、
E. coli BW25113/pIJ790株にコスミド1-3を導入して得た
E. coli BW25113/pIJ790/cosmid 1-3をエレクトロポレーション法で形質転換し、得られたアプラマイシン耐性の形質転換体よりコスミド1-3::AB108を得た。
【0108】
次に、
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミド1-3::AB108を導入して
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid1-3::AB108を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775株と
E.coli ET12567/pUZ8002/cosmid 1-3::AB108を実施例2の4)に記載の方法と同様にしてコンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株のうちストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株の染色体DNAをPCRで解析した結果、コスミド1-3::AB108は、アプラマイシン耐性遺伝子の両側にあるストレプトマイセス・カナマイセティカス由来のDNA領域を介した2点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが示され、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株がorf1082遺伝子破壊株であることが明らかとなった。
【0109】
ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg /mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量から、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0110】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、どの染色体DNAを用いても目的の約1.2kbのDNA断片は増幅せず、ストレプトマイセス・カナマイセティカス AB1-3(8)株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有していない事が判明した。よって、
orf1082遺伝子(配列番号2)がRsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域の増幅に必須な遺伝子であることが明らかとなった。
【0111】
実施例8:カナマイシン生合成遺伝子群に挿入されたメラニン遺伝子の発現
ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775の染色体DNA上に存在するRsA領域とRsB領域の間に、異種菌株由来の遺伝子として、GenBankのデータベースにアクセッション・ナンバーM11582として登録されている
melC1遺伝子および
melC2遺伝子(Bernan,V. et al., Gene, 37, 101-110 (1985) 「The nucleotide sequence of the tyrosinase gene fromStreptomyces antibioticus and characterization of the gene product)からなるメラニン生合成遺伝子群を以下のようにして挿入した。
【0112】
プラスミドpSET152を
BamHI、
SphIおよび
HindIIIで三重消化し、アガロースゲル電気泳動後、アプラマイシン耐性遺伝子を含む約2.8kbの
BamHI−
SphI断片をゲルから抽出、精製した。また、挿入断片として、pKM95(ヤナイ&ムラカミ(Yanai,K. & Murakami,T.)著,「ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal of Antibiotics)」,(日本),2004年,第57巻,p.351−354)を
BamHIおよび
SphIで二重消化し、アガロースゲル電気泳動後、カナマイシン生合成遺伝子のorf9遺伝子を含む3.25kbの
BamHI−
SphI断片をゲルから抽出、精製した。両DNA断片を混合し、ライゲーションキット(タカラバイオ社製)を用いて連結した後、
E. coli DH5αを形質転換した。アプラマイシン耐性を示す形質転換体よりプラスミドpAB101を調製した。
次に、プラスミドpIJ702を
BamHI、
EcoRVおよび
NdeIで三重消化し、アガロースゲル電気泳動後、
melC1遺伝子および
melC2遺伝子を含む2.97kbの
BamHI−
EcoRV断片をゲルから抽出、精製した。これをプラスミドpAB101の
BamHI−
EcoRV部位に挿入してプラスミドpAB102(9.02kb)を得た。
【0113】
E. coli ET12567/pUZ8002株にプラスミドpAB102を導入して
E.coli ET12567/pUZ8002/AB102を得た。ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775株と
E.coli ET12567/pUZ8002/AB102を実施例2の4)に記載の方法と同様にして、コンジュゲーションし、アプラマイシン耐性株を得た。取得したアプラマイシン耐性株のうちストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775/AB102-4株の染色体DNAをPCRで解析した結果、プラスミドpAB102は、カナマイシン生合成遺伝子群由来のDNA領域を介した1点交差による相同組換えによって染色体DNAに組み込まれていることが示された。
【0114】
ストレプトマイセス・カナマイセティカスJCM4775/AB102-4株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、250μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、2000μg/mlのカナマイシンを含む前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(3世代目)。
1世代目、2世代目、3世代目ともに48時間の培養終了時点で、培養液の30mlを7500rpm、10分間の遠心して集菌し、菌体を凍結乾燥した。この乾燥菌体の1/10量を用いて、MFX-6000(TOYOBO社製)装置を用いて、実施例1の2)に記載の方法と同様にして染色体DNAを調製した。
【0115】
次に、1世代目、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、2世代目および3世代目の染色体DNAを用いた場合には1.2kbの増幅断片が得られ、これらの株は、pAB102を含むRsA領域とRsB領域の間のDNA領域が増幅している事が判明した。
【0116】
次に、上記ストレプトマイセス・カナマイセティカス JCM4775/AB102-4株の1世代目および3世代目の菌株を、1%カザミノ酸、0.05%チロシンおよび0.0005%硫酸銅を添加した前培養培地で48時間培養した後、培養上清のメラニン生産量を調べた。方法は、ムンらの方法[ムン(Mun,Y.)ら著,「バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブルティン・(Biological and Pharmaceutical Bulletin)」,(日本),2004年,第27巻,p.806−809]を一部改変して行った。即ち、20%ジメチルスルフォキシドを含む2N水酸化ナトリウム溶液と培養上清とを等量混合し、80℃で30分間過熱後、黒濁浮遊物を除去し、日立分光光度計(U-2810)を用いて、475nmの吸光度を測定した。1世代目菌株の吸光度は0.42であり、3世代目菌株の吸光度は0.62であった。したがって、1世代目菌株に比較して、3世代目菌株は、メラニン生産遺伝子のコピー数の増加に伴い、メラニンを大量に生産していることが判明した。
【0117】
実施例9:RsC-RsD間のDNA領域を欠失したストレプトマイセス・カナマイセティカスにおけるDNA増幅
1)プラスミドpKM2003の作成
Sma-Stu-1(5'-GGGAGGCCTA-3’、配列番号29)とSma-Stu-2(5'-AGCTTAGGCCTCCC-3’、配列番号30)をアニーリングした後、予め
HindIIIおよび
SmaIで二重消化しておいたプラスミドpUC119と連結して、プラスミドpUC119-Stuを得た。
次に、RsA領域およびorf1082遺伝子を含む約6.6kbの
SmaI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の88479〜95063番目の塩基配列)をコスミド1-3から調製し、pUC119-Stuの
SmaI部位に挿入した。得られたプラスミドを
KpnIで消化して挿入断片の方向を調べ、
SmaI断片中に存在する
KpnI部位(94889番目)がpUC119-Stuの
HindIII部位側に挿入されているプラスミドを選択し、pKM2001と命名した。
【0118】
コスミド5-13(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)よりアクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の135493〜139615番目の塩基配列からなる約4.1kbの
StuI断片を調製してpKM2001の
StuI部位に挿入し、
SmaI断片下流に135493番目から139615番目の塩基配列の方向で
StuI断片が挿入されたプラスミドを選択し、pKM2002と命名した。
【0119】
放線菌の接合伝達用プラスミドpSET152[ビアマン(Bierman,M.)ら著,「ジーン(Gene)」,(蘭国),1992年,第116巻,p.43−49]を
SphI消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑化した後、
HindIIIリンカー(宝酒造株式会社製)を連結してpSET153を構築した。pSET153由来の約2.8kbの
HindIII−
EcoRI断片と、pKM2002由来の約10.7kbの
HindIII−
EcoRI断片を連結して接合伝達可能なプラスミドpKM2003を構築した。
【0120】
(2)pKM2003のストレプトマイセス・カナマイセティカスへの導入とDNA増幅能評価
E. coli ET12567/pUZ8002株[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に、定法に従いプラスミドpKM2003を導入し、
E.coli ET12567/pUZ8002/pKM2003を得た。
【0121】
pKM2003を導入するストレプトマイセス・カナマイセティカスとして、アクセッション・ナンバーAB254080塩基配列のうち、RsC領域とRsD領域の間(28935〜135581番目の塩基配列)の106.6kbからなるDNA領域が欠失した12-6-4株(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)を用いた。ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株はRsA領域およびorf1082遺伝子を含むRsC領域とRsD領域の間のDNA領域を欠失しているためDNA増幅能を失った菌株である。ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株と
E. coli ET12567/pUZ8002/pKM2003とのコンジュゲーションを実施例2の4)に記載の方法と同様にして実施した。得られたアプラマイシン耐性株より調製した染色体DNAを鋳型とし、プライマーにKM-25:5’-CCGCTCTCATTCGGTCAG-3’(配列番号31)とKM-202:5’-CCCCTGACTTTCGTCGAG-3’(配列番号32)を用いてPCRを実施した結果、約4.6kbのDNA断片が増幅した。この結果から、プラスミドpKM2003が
StuI断片領域の相同組換えによって、ストレプトマイセス・カナマイセティカス 12-6-4株の染色体DNAに組み込まれたことが示された。
【0122】
本株のDNA増幅能力を調べるため、本株を前培養培地(40ml)に植菌した。48時間培養し(1世代目)、ついで、500μg/mlのカナマイシンを添加した前培養培地に1ml移植し、48時間培養した(2世代目)。さらに、カナマイシンの濃度を2000μg/ml、4000μg/ml、6000μg/mlまで上げて同様の継代培養を行い3世代目、4世代目および5世代目の培養液を得た。1世代目および5世代目の培養液から5mlをサンプリングし、7500rpm、10分間の遠心して集菌した。得られた菌体からSalting out法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]を用いて染色体DNAを調製した。
【0123】
次に、1世代目および5世代目の染色体DNAを用いて、PCR法によるRsA領域とRsB領域における組換えの検出実験を実施例1の2)に記載の方法と同様にして行った。但し、組換え検出用プライマーとして、KM-17’の代わりにKM-201:5’-CCATCCCGTCGAAGAGCC-3’(配列番号33)を使用した。その結果、1世代目の染色体DNAを用いた場合には増幅するDNA断片は検出されなかったが、5世代目の染色体DNAを用いた場合には1.0kbの増幅断片が得られた。増幅したDNA断片の塩基配列を解析した結果、予想通りの塩基配列からなるDNA断片であることを確認した。この結果から、ストレプトマイセス・カナマイセティカス12-6-4/pKM2003株は、RsA領域とRsB領域の間にあるDNA領域を増幅させる能力を有している事が判明した。よって、DNA増幅に必要な遺伝子はpKM2003に含まれる
SmaI断片、即ち、アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の88479〜95063番目の塩基配列の間に存在することが示された。
【0124】
実施例10:ストレプトマイセス・セリカラーおよびストレプトマイセス・リビダンスにおけるDNA増幅
1)コスミドpAB801の作成
5‘末端をリン酸基で修飾して化学合成した2種類のオリゴヌクレオチドA(5’-AATTC CCTGCAGG TCTAGA ACTAGT A-3’、配列番号34)とB(5’-AGCTT ACTAGT TCTAGA CCTGCAGG G-3’、配列番号35)を混合後アニールし、予め
EcoRIおよび
HindIII で二重消化しておいたpUC19と連結して、プラスミドpUC19-linkerを構築した。本プラスミドのマルチプルクローニングサイトは
EcoRI-
SbfI-
XbaI-
SpeI-
HindIIIとなっている。
実施例5に記載のコスミドAB501から得たRsA領域およびorf1082遺伝子を含む約10kbの
XbaI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)をpUC19-linkerの
XbaI部位に挿入しプラスミドpAB601を得た。
XbaI断片の方向性は、pUC19-linkerのマルチプルクローニングサイトに対して
EcoRI-
SbfI-
XbaI-RsA-orf1082-
XbaI-
SpeI-
HindIIIとなるような向きで挿入されていた。
【0125】
次に、実施例2に記載した方法と同様にして、両端に
SpeI部位および
SbfI部位を有するストレプトマイシン耐性遺伝子断片をコスミドpKM7(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)に導入した。まず、プラスミドpIJ778から得たストレプトマイシン耐性遺伝子を含む
HindIII-
EcoRI断片を鋳型にして、pKM7Δ12U(5’-GATCCCCGTGCACACCGAGGGCGAGCTCGCCCCGACTAGTATTCCGATCCGTCGACC-3’、配列番号36) およびpKM7Δ12L(5’-GTCGGTCACCGCCCGTACGACGGCCGGTTCCGCCTGCAGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC-3’、配列番号37)をプライマーに用いてPCRを行い、約1.9kbのDNA断片を増幅させた。このDNA断片を用いて、pKM7を
E. coli BW25113/pIJ790株に導入して得た
E. coli BW25113/pIJ790/pKM7株をエレクトロポレーション法で形質転換し、アンピシリンとストレプトマイシンに耐性を示すクローンを得た。このクローンから、コスミドpKM7::strを単離した。
【0126】
次に、プラスミドpAB601由来の約10kbの
SbfI-
SpeI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)を、コスミドpKM7::strの
SbfI-
SpeI部位に挿入したコスミドpAB701を以下に述べるようにして調製した。まず、プラスミドpAB601およびコスミドpKM7::strをそれぞれ
SpeIおよび
SbfIで二重消化し、混合後、Rapid DNA Dephos and ligation Kit(Roche:Cat No. 04898125001)を用いて、添付の指示書に従いライゲーション反応を行った。ライゲーション反応物をキット{Packeging kits:
E. coli XL1-BlueMRA and MaxPlax
(商標) Lambda Packaging Extracts (EPICENTRE
(商標) Biotechnologies社製)}を用いてin vitroパッケージングした。パッケージング後、反応液を
E. coli XL1-Bllue MRA株に感染させ、アンピシリン100μg/mlとカナマイシン100μg/ml LBを含む寒天培地に塗布した。37℃で終夜培養した結果、寒天培地上で生育するクローンを検出できた。これらのクローンには、(1)pKM7::strを含むもの、(2)pAB701を含むもの、の2種類のコスミドを含む可能性がある。目的物のコスミドpAB701を含むクローンはストレプトマイシン感受性を示すことから、アンピシリン100μg/mlおよびカナマイシン100μg/mlを含む LB寒天培地と、アンピシリン100μg/ml、カナマイシン100μg/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを含む LB寒天培地に各クローンをレプリカした結果、369クローンのうち、293株がストレプトマイシン感受性を示した。これらのクローンからコスミドを調製し、
SpeIおよび
SbfIによる二重消化で約10kbのDNA断片が生じることを確認し、コスミドpAB701とした。
【0127】
次に、コスミドpAB701を
E. coli BW25113/pIJ790株に導入し、
E. coli BW25113/pIJ790/pAB701株を得た。プラスミドpMJCOS1(ヤナイ(Yanai,K.)ら著,「プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」,(米国),2006年,第103巻,p.9661−9666)由来の5.2kbの
SspI断片でBW25113/pIJ790/pAB701株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlとアプラマイシン50μg/mlを含むLB寒天培地で終夜培養した。生育したコロニーよりコスミドを調製し、pAB801とした(
図2)。コスミドpAB801は、挿入断片として、プラスミドpAB601由来の約10kbの
SbfI-
SpeI断片(アクセッション・ナンバーAB254080の塩基配列の87961〜97640番目の塩基配列を含む)とコスミドpKM7に由来する約27.8kbのDNA断片(アクセッション・ナンバーAB164642の塩基配列の7107〜19547番目の塩基配列および15046bpから成るアクセッション・ナンバーAB254081の塩基配列を含む)を有し、さらにベクター部分にプラスミドpSET152由来の
oriT、
attP、
int領域を有し、放線菌に接合伝達可能なコスミドである。
【0128】
(2)コスミドpAB801のストレプトマイセス・セリカラーおよびストレプトマイセス・リビダンスへの導入とDNA増幅の評価
実施例2に記載の方法に従い、
E. coli ET12567/pUZ8002株にコスミドpAB801を導入し、
E. coli ET12567/pUZ8002/pAB801株を得た。
ストレプトマイセス・リビダンス1326株 およびストレプトマイセス・セリカラー MT1110株を、MS培地[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]に塗布し、30℃で5日間培養し、胞子を形成させた。この胞子を集め、3mlの滅菌水に懸濁し保存した。この胞子懸濁液200μlを、400μlの2×YT液体培地と合わせ、50℃で10分間加熱処理した。一方、
E. coli ET12567/pUZ8002/pAB801株は、LB液体培地(クロラムフェニコール25μg/ml、カナマイシン25μg/ml、アンピシリン50μg/ml、アプラマイシン50μg/ml 添加)50mlに植菌し、37℃で終夜培養した。このうち500μlを、新たなLB液体培地(クロラムフェニコール25μg/ml、カナマイシン25μg/ml、アンピシリン50μg/ml、アプラマイシン50μg/ml 添加)50mlに植え継ぎ、37℃で、4時間培養した。全量から菌体を集めた、これを抗生物質無添加のLB液体培地で二回洗浄し、1.5mlのLB液体培地に懸濁した。この500μlを、先の加熱処理した胞子懸濁液に加えた。これを遠心分離に供したあと、50μlのLBと50μlの2xYTを加えて懸濁した。懸濁液の90μlと10μlをそれぞれMS培地に塗布した。これらを30℃で終夜培養し、0.5mgのナリジキシン酸と1.25mgのアプラマイシンを含む1mlの滅菌水を各シャーレに重層した。30℃で3日間培養した結果、90μl塗布した区では、全面に、10μlの区では、シャーレ当たり約1000個の耐性株の生育を見た。これらの株をMS培地(25μg/mlナリジキシン酸と50μg/mlアプラマイシンを含む)にレプリカし、30℃で3日間生育させた。生育したアプラマイシン耐性株をホモゲナイズして、MS培地(25μg/mlナリジキシン酸と50μg/mlアプラマイシンを含む)に塗布し、37℃で7日間培養して胞子を着生させた。
【0129】
これらの胞子を、SOB液体培地(25μg/mlナリジキシン酸を含む)および250μg/mlカナマイシンを含むSOB液体培地(25μg/mlナリジキシン酸を含む)に植菌し、30℃で48時間培養した。各培養液から菌体を集め、ソルティングアウト法[プラクティカル・ストレプトマイセス・ジェネティックス(Practical Streptomyces Genetics)」,「ザ・ジョーン・イネス・ファンデーション(The John Innes Foundation)」,(英国),ノルウィック(Norwick),2000年]により染色体DNAを調製した。これらの染色体DNAを鋳型にして、実施例1に記載の方法に従い、PCR法でRsA領域とRsB領域によるDNA組換えの検出を行った。その結果、カナマイシンを添加しない培養区では、1.2kbの増幅断片は検出できなかったが、カナマイシンを添加した培養区では、1.2kbの増幅断片が検出できた。したがって、コスミドpAB801を導入したストレプトマイセス・リビダンス1326株 およびストレプトマイセス・セリカラー MT1110株において、RsA領域とRsB領域の間に存在するDNA領域が増幅したことが示された。