特許第6017526号(P6017526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017526
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】回転体駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/21 20160101AFI20161020BHJP
   H02K 29/12 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   H02K11/21
   H02K29/12
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-255286(P2014-255286)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-116406(P2016-116406A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 将見
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−162795(JP,A)
【文献】 特開平7−7901(JP,A)
【文献】 特開平2−60449(JP,A)
【文献】 特開平5−191993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/00−11/40
H02K29/00−29/14
H02K 5/00− 5/26
H02K 7/00− 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反射面を有する回転体が、モータの回転子軸の一端側に回転子と共に組み付けられ、当該回転子軸は固定子ハウジングの軸受部によって回転可能に軸支され、前記固定子ハウジングに前記回転子の回転位置を検出するモータ基板が組み付けられた回転体駆動装置であって、
前記回転体の前記モータ基板に対向する端面外周縁部に環状に組み付けられた周波数発電着磁部と、前記モータ基板に環状に形成された周波数発電パターンが前記周波数発電着磁部に近接して対向配置され、
前記周波数発電着磁部の一部に前記回転体の基準反射面に対応した位置検出用着磁部が径方向外側若しくは径方向内側に突設され、前記モータ基板に前記位置検出用着磁部に対向して磁気センサが設けられていることを特徴とする回転体駆動装置。
【請求項2】
外周面に複数の反射面が面取りされた前記回転体の最外周側の端面外周縁部に沿って前記周波数発電着磁部が一体に組み付けられている請求項1記載の回転体駆動装置。
【請求項3】
前記周波数発電着磁部は、磁性体であるバックヨークを介して前記回転体に一体に組み付けられている請求項1又は請求項2記載の回転体駆動装置。
【請求項4】
前記回転体は、複数の傾斜反射面を有するチルトミラー若しくは複数の反射面を有するポリゴンミラーであって、回転子ヨークに対して軸方向に抜け止めされて一体に組み付けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の回転体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチルトミラーやポリゴンミラーなどの回転体を回転子とともに回転子軸に組み付けられた回転体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アウターロータ型の回転子の構成は、カップ状の回転子ヨークが回転子軸の一端側に一体に組み付けられ、回転子軸は固定子ハウジングに回転可能に軸支される。回転子ヨークの内周側には環状の回転子磁石が設けられ、回転子磁石は固定子ハウジングに組み付けられた固定子鉄心の極歯に対向して組み付けられる。
【0003】
また、回転子の位置検出としては、回転子ヨークの外周側の一部に、回転子磁石とは別の位置検出用磁石が設けられている。この位置検出用磁石を、モータ基板に設けられた磁極検出センサ(ホールIC等)により磁極位置を検出して、ロータの回転位置検出が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−88480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような回転子磁石と別の位置検出用磁石を設けるとすれば、部品点数が増えて製造コストが嵩むうえに、組立工数も増える。
また、回転子磁石のように駆動用磁石に別の位置検出用磁石を設けたり磁石突起部を位置検出用に設けたりするとすれば、当該位置検出用磁石においてトルクリップルが大きくなり、回転安定性に影響するおそれがある。
更には、回転子と一体に組み付けられる負荷として例えば複数の反射面を有する回転体である場合には、回転基準面がどこかを知りたいという要求があった。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、負荷となる回転体の一部に位置検出用着磁部を基準反射面と位置合わせして組み付けることで回転安定性及び回転制御性の良い回転体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
複数の反射面を有する回転体が、モータの回転子軸の一端側に回転子と共に組み付けられ、当該回転子軸は固定子ハウジングの軸受部によって回転可能に軸支され、前記固定子ハウジングに前記回転子の回転位置を検出するモータ基板が組み付けられた回転体駆動装置であって、前記回転体の前記モータ基板に対向する端面外周縁部に環状に組み付けられた周波数発電着磁部と、前記モータ基板に環状に形成された周波数発電パターンが前記周波数発電着磁部に近接して対向配置され、前記周波数発電着磁部の一部に前記回転体の基準反射面に対応した位置検出用着磁部が径方向外側若しくは径方向内側に突設され、前記モータ基板に前記位置検出用着磁部に対向して磁気センサが設けられていることを特徴とする。
このように、負荷となる回転体のモータ基板に対向する端面外周縁部に環状に組み付けられた周波数発電着磁部の一部に回転体の基準反射面に対応した位置検出用着磁部が径方向外側若しくは径方向内側に突設されている。これにより、回転体の一部に位置検出用着磁部を基準反射面と位置合わせして設けることで回転安定性及び回転制御性の良い回転体駆動装置を提供することができる。また、回転体のモータ基板に対向する端面外周縁部に直接周波数発電着磁部を設け、当該周波数発電着磁部に近接してモータ基板に周波数発電パターンを対向配置したことにより、回転体の回転位置情報を高精度で高精細に検出することができる。
【0008】
外周面に複数の反射面が面取りされた前記回転体の最外周側の端面外周縁部に沿って前記周波数発電着磁部が一体に組み付けられていると、回転子ヨークに設ける場合と比較して周波数発電着磁部(FGマグネット)の外径を可及的に大きくすることができ、着磁極数を増やすと同時に周波数発電パターンの外径も大きくなり、周波数発電パターンを構成する発電線素数および連結線素数も増えるので回転体の回転位置情報を高精細に検出することができる。
【0009】
前記周波数発電着磁部は、磁性体であるバックヨークを介して前記回転体に一体に組み付けられていることが好ましい。
これにより、周波数発電着磁部(FGマグネット)で発生した磁束通路を広げることで対向する周波数発電パターン(FGパターン)と鎖交する磁束が増えるので、検出感度が向上する。
【0010】
前記回転体は、複数の傾斜反射面を有するチルトミラー若しくは複数の反射面を有するポリゴンミラーであって、回転子ヨークに対して軸方向に抜け止めされて一体に組み付けられていてもよい。
この場合、チルトミラー若しくはポリゴンミラーの回転基準面を基準とした回転位置情報を高精度かつ高精細に検出して回転制御性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
上述したように負荷となる回転体と回転子の回転基準位置を正確に位置合わせして組み付けることで回転安定性及び回転制御性の良い回転体駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光走査装置の断面図である。
図2図1の光走査装置からチルトミラーを取り外した状態の斜視図である。
図3図1のFGマグネットの平面図である。
図4図1のモータ基板にモータが組み付けられた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る回転体駆動装置の一例として光走査装置を用いて添付図面を参照しながら説明する。先ず、光走査装置は、例えば車間距離、障害物までの距離等を測定するためのレーザー照射装置を光源とするレーザー光を反射させて広範囲に照射する。
【0014】
図1に示すように、光走査装置1は、モータ2(図2参照)に傾斜が異なる反射面3aを例えば4面有するチルトミラー3(回転体)がモータ2の回転子軸4の一端側に回転子ヨーク5と共に抜け止めかつ回り止めされて組み付けられている。
先ずモータ2の構造から説明すると、ベースプレート6には軸受ハウジング7が一体に組み付けられている。ベースプレート6上には、回転子磁石9の磁極を検出するホールIC等のモータ基板8が組み付けられている。
【0015】
筒状の軸受ハウジング7の筒体内部には、第一軸受部10a及び第二軸受部10bが各々組み付けられている。第一軸受部10a及び第二軸受部10bとしては、例えば転がり軸受が用いられる。軸受ハウジング7の外周面には、段付き部7aが設けられている。この段付き部7aには、固定子11が組み付けられている。固定子11は、固定子コア11aがインシュレータにより覆われ各極歯11bにはモータコイル11cが巻かれたものが段付き部7aに組み付けられる。固定子コア11aは、軸受ハウジング7に対して圧入及び接着により組み付けられる。
【0016】
回転子12は、回転子軸4が軸受ハウジング7の第一軸受部10a及び第二軸受部10bによって回転可能に軸支されている。筒状の回転子ヨーク5は、回転子ハブ13に対してかしめられて一体に組み付けられている。回転子ハブ13の中央部には、回転子ヨーク5側に向かって筒状のスリーブ13aが軸方向に起立形成されている。このスリーブ13aの筒孔には、回転子軸4が圧入、焼嵌め、接着等により一体に組み付けられている。回転子ハブ13に形成されたスリーブ13aと軸方向反対側には突起部13b(図2参照)が突設されている。突起部13bは複数設けられていてもよい。また、回転子ヨーク5の内周面には回転子磁石9が一体に組み付けられている。回転子磁石9は周方向にN極及びS極が交互に着磁されており、固定子11の極歯11bと対向して組み付けられる。
【0017】
回転子11には、チルトミラー3が一体に組み付けられる。チルトミラー3は、図1に示すように、傾斜角度が異なる複数(例えば4面)の反射面3aが形成された角錐台形状をしている。中心部には、回転子軸4を挿入可能な軸孔(貫通孔)3bが設けられている。また、チルトミラー3の上面部には凹部3cが軸孔3bの周囲に形成されている。この凹部3c内には、回転子軸4の一端が挿入されて、押さえばね14及び抜け止めワッシャー15が嵌め込まれ、チルトミラー3が回転子軸4に対して抜け止めされて組み付けられている。また、回転子軸4の軸端部は、凹部3cより上方に突出しないように組み付けられている。これにより、チルトミラー3の軸方向の組み付けスペースを小さくすることができる。
【0018】
チルトミラー3は母材(金属材若しくは樹脂材)に対して金属蒸着、又は研磨等されて反射面3aが鏡面に仕上げられている。また、チルトミラー3は、モータ2に対向する下面側に、回転子ヨーク5を収納可能な収納凹部3dが形成されている。
【0019】
また、図1に示すチルトミラー3の下面部、即ち反射面3aが形成された最外周側の下端面外周縁部に沿って環状の周波数発電着磁部(FGマグネット)16が磁性体であるバックヨーク17を介して一体に組み付けられている。尚、バックヨーク17は省略することもできる。また、チルトミラー3のモータ基板8に対向する端面外周縁部に直接FGマグネット16が一体に設けられている。FGマグネット16は、図3に示すように環状の磁性体が周方向にN極とS極が交互になるように着磁されて形成されている。FGマグネット16の着磁極数は、回転子磁石9に比べてはるかに多い極数、例えば120極に着磁されている。
【0020】
また、図4に示すように、モータ基板8にはFGマグネット16の対向する基板面に、周波数発電パターン(FGパターン)18が対向配置されている。FGパターン18は、径方向に放射状となるように形成された複数の発電線素18aのパターンと、隣り合う発電線素18a同士を接続するように周方向に形成された複数の連結線素18bのパターンが交互に連続する矩形波状に周回して形成され、一対の引出線18c,18dからFG信号が出力される。図3に示すFGマグネット16が、モータ基板8に形成されたFGパターン18の上方で回転すると、電磁誘導によって、FGパターン18の各発電要素18aにおいて誘導起電力が誘起され、一対の引出線18c,18dからFG信号が検出されるようになっている。
【0021】
図3に示すように環状に形成されたFGマグネット16の一部には、径方向外側に突設された位置検出用突起部16a(位置検出用着磁部)が形成されている。この位置検出用突起部16aは、チルトミラー3の基準反射面(回転基準面)と周方向位置が対応する位置となるように形成されている。位置検出用突起部16aの着磁極はN極であってもS極であってもいずれでもよい。
【0022】
また、位置検出用突起部16aは、図2に示す回転子ハブ13に設けられた突起部13bの周方向位置と対応する位置となるように形成されている。尚、図3に示すように、FGマグネット16に設けられる位置検出用突起部16aは径方向外側に限らず、径方向内側に位置検出用突起部16bを設けてもよい。また、モータ基板8には、位置検出用突起部16aに対向してホールIC21(磁気センサ)が設けられている。ホールIC21は、チルトミラー3が基準反射面より1回転する度に1回の検出信号を検出し、チルトミラー3の回転数や回転速度を制御するため用いられる。
【0023】
光走査装置の組み付け作業の一例について説明する。図1において、軸受ハウジング7にベース板6及びモータ基板8を組み付け、固定子11を組み付け、回転子12を回転子軸4が軸受ハウジング7の貫通孔に挿入して第一,第二軸受部10a,10bに回転可能に軸支されることでモータ2が組み立てられる。
【0024】
回転子12に形成された突起部13bとチルトミラー3の図示しない凹部を重ね合わせることで、チルトミラー3の基準反射面と回転子ハブ13に設けられた突起部13bの周方向位置が位置合わせされかつチルトミラー3の基準反射面がFGマグネット16の位置検出用突起部16aと位置合わせして組み付けられる。
【0025】
また、チルトミラー3の上面部に形成された凹部3cの軸孔3bに回転子軸4の一端が挿入されて、押さえばね14及び抜け止めワッシャー15が嵌め込まれ、チルトミラー3が回転子軸4に対して抜け止めされて組み付けられる。回転子軸4の他端は、抜け止めワッシャー20によって、軸受ハウジング7(第二軸受部10b)に抜け止めされて組み付けられる。
【0026】
以上説明したように、負荷となるチルトミラー3のモータ基板8に対向する端面外周縁部に環状に組み付けられたFGマグネット16の一部に、チルトミラー3の基準反射面に対応した位置検出用突起部16aが径方向外側若しくは径方向内側に突設されている。これにより、チルトミラー3に位置検出用突起部16aを基準反射面と位置合わせして設けることで回転安定性及び回転制御性の良い回転体駆動装置を提供することができる。
また、図3に示すFGマグネット16に、図4に示すFGパターン18を近接して対向配置したことにより、チルトミラー3の回転位置情報を高精度で高精細に検出することができる。よって、チルトミラー3の回転制御性を向上することができる。
また、チルトミラー3の最外周側の下端面外周縁部に沿って環状のFGマグネット16が一体に組み付けられているので、回転子ヨークに設ける場合と比較してFGマグネット16の外径を大きくすることができ、着磁極数が増えると同時に周波数発電パターン18の外径も大きくなるので、発電線素18aおよび連結線素数18bも増えるのでチルトミラー3体の回転位置情報を高精細に検出することができる。
【0027】
上述した実施例では、回転体は、複数の傾斜反射面3aを有するチルトミラー3を用いたが、これに限定されることのなく、例えば複数の反射面を有するポリゴンミラー等であってもよい。
また、アウターロータ型のモータについて説明したが、インナーロータ型モータについて適用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 光走査装置 2 モータ 3 チルトミラー 3a 反射面 3b 軸孔 3c 凹部 3d 収納凹部 4 回転子軸 5 回転子ヨーク 6 ベースプレート 7 軸受ハウジング 7a 段付き部 8 モータ基板 9 回転子磁石 10a 第一軸受部 10b 第二軸受部 11 固定子 11a 固定子コア 11b 極歯 11c モータコイル 12 回転子 13 回転子ハブ 13a スリーブ 13b 突起部 14 押さえばね 15,20 抜け止めワッシャー 16 FGマグネット 16a,16b 位置検出用突起部 17 バックヨーク 18 FGパターン 18a 発電線素 18b 連結線素 18c,18d 引出し線 21 ホールIC
図1
図2
図3
図4