(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方法が、前記冷却剤流体回路(2)が「暖房」モードとして知られるモードで構成される場合のみ実施されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
自動車、特に、少なくとも部分的に電気モータによって動力が供給される電気自動車またはハイブリッド自動車には、通常、自動車の乗員室に分配されることが意図された内部空気流の空気熱力学パラメータを修正するための暖房、換気および/または空調装置が装備されている。
【0004】
電気車両またはハイブリッド車両のより詳細な範囲において、内部空気流の冷却および/または加熱は、冷却剤流体が循環する空調ループによって実行される。
【0005】
空調ループは、特に、コンプレッサと、外部熱交換器と、膨張部材と、少なくとも1つの内部熱交換器とを備え、これらに冷却剤流体が流れる。内部熱交換器は、暖房、換気および/または空調装置のハウジングに搭載され、前記ハウジングは、一般に、車両の乗員室に設置される。ハウジングは、車両のユーザの要求に応じて内部空気流の空気熱力学パラメータを修正するために、内部空気流を運ぶことが意図される。外部熱交換器は、車両に対して外部空気流が通過するようにするために、車両の前面に沿って配設されることが好ましい。
【0006】
空調ループは、さまざまな運転モード、特に、「冷房」モードとして知られるモードまたは「暖房」モードとして知られるモードで使用されてもよい。
【0007】
「冷房」モードとして知られるモードにおいて、冷却剤流体は外部熱交換器の方へ送られる。この構成において、外部熱交換器は、冷却剤流体が外部空気流によって冷却される凝縮器として作用する。次に、冷却剤流体は膨張部材へ循環し、内部熱交換器を通過する前に膨張部材において圧力降下を受ける。この構成において、内部熱交換器は、暖房、換気および/または空調装置に運ばれる内部空気流によって冷却剤流体が加熱される蒸発器として作用する。したがって、このようにして、内部空気流は、車両乗員室の温度を低下させるために冷却される。空調ループは閉回路である。その結果、冷却剤流体はコンプレッサに戻る。
【0008】
「暖房」モードとして知られるモードにおいて、冷却剤流体は内部熱交換器の方へ送られる。この構成において、内部熱交換器は、暖房、換気および/または空調装置に運ばれる内部空気流によって冷却剤流体が冷却される凝縮器として作用する。したがって、内部空気流は、車両乗員室の温度を上昇させるために加熱される。次に、冷却剤流体は、膨張部材へ循環し、外部熱交換器を通過する前に膨張部材において圧力降下を受ける。この構成において、外部熱交換器は、外部空気流によって冷却剤流体が加熱される蒸発器として作用する。続いて、冷却剤流体はコンプレッサに戻る。
【0009】
内部熱交換器が、暖房、換気および/または空調装置のハウジングに設置される場合、車両乗員室の直接的な熱調整システムが規定される。
【0010】
内部熱交換器が、暖房、換気および/または空調装置のハウジングに直接取り付けることができない場合、乗員室内に分配されることが意図された内部空気流へ空調ループから熱量を輸送する熱伝達流体回路を使用することが知られている。
【0011】
このようにして、熱伝達流体回路は、空調ループ内を循環する冷却剤流体と、熱伝達流体回路内を循環する熱伝達流体との間で熱交換を行うように構成された第1の熱交換器を備える。加えて、熱伝達流体回路は第2の熱交換器を備え、第2の熱交換器は、内部熱交換器として働き、熱伝達流体回路内を循環する熱伝達流体と、乗員室内に分配されることが意図された内部空気流との間での熱交換を実行するように意図される。
【0012】
熱伝達流体回路を含むこのような構成は、車両乗員室の間接的熱調整システムを規定する。
【0013】
本発明に係る方法は、車両乗員室の間接的熱調整システムに関する。
【0014】
寒い天候時に車両が始動される場合、車両乗員室をできるだけ早く暖めることが望ましい。空調ループの「高圧」部として知られる部分を循環する冷却剤流体が特定の圧力閾値を超えると、このような暖房が得られる。しかし、残念ながら、熱伝達流体回路内の熱伝達流体の温度は低い。いずれにせよ、熱伝達流体の温度は、車両の乗員室の外気温に近い。
【0015】
このような状況では、第1の熱交換器内を循環する熱伝達流体は、空調ループ内を循環する冷却剤流体を過度に冷却する。熱力学サイクルの観点から、熱伝達流体によって冷却剤流体が冷却されると、空調ループの「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力が上昇する。このような現象は、上述した所望の目的にそぐわない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のことから、本発明の目的は、主に、空調ループの「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力上昇を促すように、熱伝達流体と冷却剤流体との間での熱交換を制限することによって上述した欠点を解決することである。
【0017】
このような圧力上昇により、熱伝達流体を効果的に加熱でき、したがって、乗員室に分配されることが意図された内部空気流の温度が上昇して、ユーザが想定する快適性の条件が保証される高いレベルまで冷却剤流体の温度が上昇される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このように、本発明の課題は、冷却剤流体回路、いわゆる、空調ループと、冷却剤流体回路によって発生した熱量を、乗員室に分配可能な内部空気流に送り出すように輸送することが意図された熱伝達流体回路とを備える車両乗員室の熱調整システムを制御する方法である。この制御方法は、熱伝達流体の流量を調整するステップを含み、このステップ中に、
冷却剤流体の圧力が所定の圧力閾値以下の間、熱伝達流体の流量が流量閾値未満に保たれ、
冷却剤流体の圧力が所定の圧力閾値を超えると、熱伝達流体の流量が流量閾値より増大される。
【0019】
好適には、流量閾値は、熱伝達流体回路の熱伝達流体の最大流量の10%〜20%であり、特に、少なくとも600l/hに等しい。さらに、特に、流量閾値は、100l/hに等しくてもよい。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、圧力閾値は以下の式で求められる。
P
d limit=P
sat[P
air out/Δ(Q
air,Q
cal)+T
air in+T
delta]
式中、
P
d limitは圧力閾値であり、
P
satは冷却剤流体の飽和圧力であり、
P
air outは内部空気流に供給される動力であり、
Δ(Q
air,Q
cal)は熱伝達流体回路によって実現される熱交換能力であり、
T
air inは内部空気流の温度であり、
T
deltaは熱力学サイクルの確立を保証する温度差である。
【0021】
本発明の別の特徴によれば、冷却剤流体回路は、「高圧」部として知られる部分と、「低圧」部として知られる部分とを備える。本発明によれば、冷却剤流体の圧力は、「高圧」部として知られる部分で測定される。
【0022】
好適には、冷却剤流体の圧力が圧力閾値を超えると、乗員室に必要とされる快適レベルを保証するために、熱伝達流体の流量は、要求される動力を供給するのに適した値まで増大される。
【0023】
冷却剤流体回路が始動される場合であって、乗員室の外気温が低ければ、特に、5℃以下であれば、熱伝達流体の流量が流量閾値未満に制限されることに特に留意されたい。
【0024】
このような方法は、冷却剤流体回路が「暖房」モードとして知られるモードに構成される場合、特に好適である。
【0025】
最後に、本発明は、「冷房」モードとして知られるモードまたは「暖房」モードとして知られるモードで少なくとも運転可能である冷却剤流体回路と、冷却剤流体回路によって発生した熱量を、乗員室に分配可能な内部空気流に送り出すように輸送することが意図された熱伝達流体回路とを備える、車両乗員室の熱調整システムに及ぶ。熱調整システムは、冷却剤流体の圧力に応じて熱伝達流体回路における熱伝達流体の流量を修正する制御デバイスを備える。
【0026】
流量は、冷却剤流体回路が「暖房」モードとして知られるモードで構成される場合に修正されることが好ましい。制御デバイスは、熱伝達流体回路内に搭載される熱伝達流体用の循環ポンプの回転速度を修正する。
【0027】
本発明による第1の利点は、本発明に係る熱調整システムを備えた自動車、特に、電気自動車またはハイブリッド自動車の乗員室の暖房にかかる時間を短縮可能なことである。
【0028】
本発明の別の利点は、冷却剤流体回路内に一体化されたコンプレッサに供給するエネルギー源に直接関わることである。コンプレッサへの供給が行われる電源が電動モータへの供給にも使用される場合、本発明に係る制御方法は、「暖房」モードとして知られるモードが運転状態に設定されたとき、コンプレッサの電力消費量の急増を回避する。
【0029】
以下、非制限的な実施例により提示され、本発明の理解および本発明の実施方法の説明の補助に役立つとともに、適切な場合には、本発明の定義に寄与する添付の図面を参照しながら例示的に与えられる実施形態を含む以下の詳細な説明を読むことにより、本発明はさらに深く理解され、さらなる特徴および利点がより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る車両乗員室の熱調整システム1の概略図である。より具体的には、
図1は、空調ループ2と、熱伝達流体回路3とを備える熱調整システム1を部分的に示す。本発明によれば、空調ループ2および熱伝達流体回路3は、相互作用状態にある。
【0032】
空調ループ2は、「冷却剤流体回路2」としても知られている。同様に、熱伝達流体回路3は、「二次ループ3」としても知られている。
【0033】
冷却剤流体回路2は閉ループであり、例えば、フッ素化化合物、特に、R134aなどの亜臨界冷却剤流体またはR744Aの名称で知られる二酸化炭素などの超臨界冷却剤流体が閉ループ内を循環する。
【0034】
冷却剤流体は、コンプレッサ14によって循環状態に設定され、コンプレッサ14は、例えば、電動式のものであり、前記コンプレッサ14の機能は冷却剤流体の圧力および温度を上昇させることである。
【0035】
冷却剤流体回路2は、図示されていない、少なくとも1つの外部熱交換器をさらに備える。外部熱交換器は、車両乗員室に対する外部空気流と冷却剤流体回路2内を循環する冷却剤流体との間で熱交換を行うように構成されている。
【0036】
外部熱交換器は、冷却剤流体回路2が「冷房」モードとして知られるモードで運転される場合、ガス冷却器または凝縮器として使用されうる。さらに、外部熱交換器は、冷却剤流体回路2が「暖房」モードとして知られるモードで運転される場合、蒸発器として使用されてもよい。
【0037】
加えて、冷却剤流体回路2は、少なくとも1つの膨張部材15をさらに備え、膨張部材15は、冷却剤流体の圧力を低下させ、ひいては、冷却剤流体回路2において起こる熱力学サイクルの動作に必要な膨張を保証することができる。
【0038】
さらに、冷却剤流体回路2は、図示されていない、非循環量の冷却剤流体を格納することが意図されたボトルまたはアキュムレータを備える。
【0039】
また、冷却剤流体回路2は、中間熱交換器4を備える。中間熱交換器4は、熱伝達流体回路3を循環する熱伝達流体と冷却剤流体回路2を循環する冷却剤流体との間での熱交換を行うことができるようにするため、「中間」と呼ばれる。
【0040】
冷却剤流体回路2には、冷却剤流体回路2の上述したさまざまなコンポーネントを接続することが意図された複数のパイプが補完される。
【0041】
このように、冷却剤流体回路2が「暖房」モードとして知られるモードで構成される場合、冷却剤流体は、冷却剤流体の熱量を熱伝達流体に伝える。言い換えれば、中間熱交換器4の第1の出口5での熱伝達流体の出口温度は、中間熱交換器4の第1の入口6での熱伝達流体の入口温度より高い。
【0042】
したがって、中間熱交換器4の第2の出口7での冷却剤流体の出口温度は、中間熱交換器4の第2の入口8での冷却剤流体の入口温度より低い。
【0043】
上記に提示した冷却剤流体回路2は、コンプレッサ14が運転状態にあるとき、2つの部分、すなわち、それぞれ、「高圧」部として知られる部分と、「低圧」部として知られる部分とを有する。
【0044】
熱伝達流体回路2の「高圧」部として知られる部分は、冷却剤流体回路2が「暖房」モードとして知られるモードに構成される場合、コンプレッサ14の出口オリフィス16と膨張部材15の入口オリフィス17との間の部分である。熱伝達流体回路2の「高圧」部として知られる部分では、冷却剤流体は高圧高温の状態にある。
【0045】
熱伝達流体回路2の「低圧」部として知られる部分は、冷却剤流体回路2が「暖房」モードとして知られるモードに構成される場合、膨張部材15の出口オリフィス19とコンプレッサ14の入口オリフィス18との間の部分である。熱伝達流体回路2の「低圧」部として知られる部分において、冷却剤流体は低圧低温状態にあり、すなわち、熱伝達流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の高圧より低い圧力および高温より低い温度にある。
【0046】
「冷房」モードとして知られるモードで冷却剤流体回路2が使用される場合、熱伝達回路2の「高圧」部として知られる部分および「低圧」部として知られる部分は、「暖房」モードとして知られるモードに対して上述した説明とは逆のものになる。
【0047】
熱伝達流体回路3は、中間熱交換器4の少なくとも一部を組み込む。また、熱伝達流体回路3は、熱伝達流体を循環状態に設定するための少なくとも1つの循環ポンプ9を備える。
【0048】
循環ポンプ9は、例えば、可変速度で制御デバイス13によって電気的に制御されてもよく、これにより熱伝達流体回路3における熱伝達流体の流量Q
calに影響を与えることができるようになる。
【0049】
当然ながら、熱伝達流体の流量Q
calを修正するために、例えば、熱伝達流体回路3への可変断面絞りの取り付けなどの他の手段が用いられてもよい。
【0050】
また、熱伝達流体回路3は、ユニットヒータ10、いわゆる、内部熱交換器10を備える。ユニットヒータ10は、熱伝達流体と車両乗員室に分配されることが意図された内部空気流11との間での熱交換を行うように構成された熱交換器である。
【0051】
好適には、ユニットヒータ10は、車両に装備された暖房、換気および/または空調装置のハウジング12の内部空気流11に対して横断するように搭載される。
【0052】
暖房、換気および/または空調装置のハウジング12により、内部空気流11を運ぶことができる。内部空気流11は、ハウジング12内において、図示しないエンジンファンを介して動き始める。
【0053】
ユニットヒータ10は、中間交換器4から生じ、熱伝達流体によって輸送される熱量を内部空気流11に伝達することが意図される。
【0054】
熱伝達流体回路3には、熱伝達流体回路3の上述したさまざまなコンポーネントを接続することが意図された複数のパイプが補完される。
【0055】
図2は、本発明に係る車両乗員室を熱調整するシステムの制御方法の主なステップと、任意選択ステップとを示すフローチャートを示す。
【0056】
この制御方法は、冷却剤流体回路2の始動に対応する初期ステップ20から始まる。「始動」という用語は、冷却剤流体が冷却剤流体回路2を循環するようにするために、コンプレッサ14が運転状態に移ることを意味するものとして理解されたい。
【0057】
初期ステップ20は、特に、車両のユーザが乗員室を暖めたい場合に実行され、特に、「暖房」モードとして知られるモードでの冷却剤流体回路2の設定を要求することに留意されたい。
【0058】
選択的に、車両乗員室の外気温が低い場合、例えば、5℃未満の場合、このような温度閾値を検証する段階が、「暖房」モードとして知られるモードにおいて、冷却剤流体回路2を運転状態に移す前のステップをなしうる。検証段階は選択的であり、初期ステップ20中に実行されうる。
【0059】
初期ステップ20の後、制御方法は、冷却剤流体回路2が始動されると、冷却剤流体回路2を循環する冷却剤流体および熱伝達流体回路3を循環する熱伝達流体の状態に関するデータを収集する獲得ステップ21を含む。
【0060】
獲得ステップ21は、本発明による制御方法における選択的なステップである。
【0061】
データを収集することで、制御方法の後続ステップにおいて使用される情報および信号を獲得することができる。
【0062】
収集された情報および状態信号は、例えば、以下のものである。
−ハウジング12における内部空気流11の移動方向において、ユニットヒータ10の上流の内部空気流11の温度T
air in。温度T
air inは、温度センサによって測定された、車両乗員室の外気温に類似したものであってもよい。
−内部空気流11の流量Q
air。例えば、内部空気流11の流量Q
airは、内部空気流11をハウジング12内で動かすようにすることが意図されたエンジンファンのコマンドU
ventと、車両の速度V
vehとに依存してもよい。
−冷却剤流体回路2の「高圧」部の地点で測定された圧力P
d。あるいは、圧力P
dは、冷却剤流体の温度から導き出されてもよい。しかしながら、冷却剤流体回路2内の圧力P
dを測定することが好適である。このため、本発明は、コンプレッサ14の圧力センサの取り付けを、例えば、コンプレッサ14の出口オリフィス16に提供することが好ましい。
−乗員室の快適性レベルを保証するために供給される空気に与えられる動力P
air out。動力P
air outは、特に、ユーザが必要とする乗員室の温度、乗員室の外気温、太陽光量などに依存する。
−熱伝達流体回路3における熱伝達流体の流量Q
cal。熱伝達流体の流量Q
calは、制御デバイス13によって送信される循環ポンプ9の制御信号から得られる。
【0063】
冷却剤流体回路2が、例えば、「暖房」モードとして知られるモードで始動された後、制御方法は、制御ステップ22を含み、この制御ステップ中、熱伝達流体回路3の制御デバイス13は循環ポンプ9を制御する。
【0064】
特に、熱伝達流体回路3の制御デバイス13は、循環ポンプ9を低速で制御することで、熱伝達流体は、所定の流量閾値Q
cal limitより低い流量で熱伝達流体回路を循環する結果をもたらす。
【0065】
流量閾値Q
cal limitは、中間熱交換器4内での熱交換が、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力上昇を促すように決定される。言い換えれば、流量閾値Q
cal limitは、熱伝達流体が冷却剤流体を冷却しないようにする目的で選択される。このようにして、熱伝達流体と冷却剤流体との間での熱交換が制限される。
【0066】
好適には、始動段階中の冷却剤流体と熱伝達流体との間での熱交換は、流量閾値Q
cal limitが、熱伝達流体回路2の熱伝達流体の最大流量Q
cal maxの10%〜20%である場合に制限される。熱伝達流体の最大流量Q
cal maxは、好適には、少なくとも600l/hに等しい。
【0067】
一例として、100l/hに等しい流量閾値Q
cal limitにより、乗員室に送られる最低限の暖房と、冷却剤流体が乗員室の暖房需要に見合う高圧に達するためにかかる時間との間に有効な妥協を見出すことができることが判明した。
【0068】
次に、この制御方法は、圧力決定ステップ23を含み、このステップ中、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力閾値P
d limitが決定される。
【0069】
冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力閾値P
d limitは、冷却剤流体回路2に対する外部条件、特に、乗員室の外気温および/またはユーザの要求温度に応じて変化する。
【0070】
圧力閾値P
d limitは、以下の式により求められる。
P
d limit=P
sat[P
air out/Δ(Q
air,Q
cal)+T
air in+T
delta]
式中、
P
d limitは、制限された流量での動作から、乗員室の快適性の需要を満たすために必要な動力供給に適した流量での動作への通過を決定する冷却剤流体の圧力閾値である。
P
satは、冷却剤流体の飽和圧力である。
P
air outは、乗員室の快適性レベルを保証するために、内部空気流11に供給される動力である。
Δ(Q
air,Q
cal)は、熱伝達流体回路3によって実現される熱交換能力である。一例として、熱交換能力は、中間熱交換器4およびユニットヒータ10によって形成されるサブアセンブリのものである。
T
air inは、ハウジング12における内部空気流11の移動方向において、ユニットヒータ10の上流の内部空気流11の温度である。内部空気流11の温度T
air inは、温度センサによって測定された、車両乗員室の外気温に類似したものであってもよい。
T
deltaは、熱力学サイクルの確立を保証する温度差である。特に、温度差T
deltaにより、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分の冷却剤流体圧力が、空気に適用される要求動力に適合したレベルに達することが可能になる。一例として、温度差T
deltaは、特に、0〜10℃の間で変動するものであってもよい。
【0071】
この制御方法が、獲得ステップ21を含むものであれば、圧力比較ステップ24を含み、このステップ中、冷却剤流体の圧力P
dは、圧力決定ステップ23の間に決定された圧力閾値P
d limitと比較され、前記圧力P
dは、獲得ステップ21中に得られる。
【0072】
この制御方法が獲得ステップ21を含まなければ、圧力比較ステップ24は、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の有効圧力を決定する予備ステップを組み込む。
【0073】
有効圧力を決定する予備ステップは、冷却剤流体の温度から冷却剤流体の有効圧力を推測することを含んでもよい。しかしながら、有効圧力を決定する予備ステップが、冷却剤流体回路2内の圧力の獲得を含むことが好適である。このため、本発明は、コンプレッサの領域、例えば、コンプレッサ14の出口オリフィスの領域に圧力センサの取り付けを提供する。
【0074】
冷却剤流体の評価または測定された圧力P
dが、圧力決定ステップ23において決定される圧力閾値P
d limit以下であれば、この制御方法は制御ステップ22に戻る。
【0075】
実際には、これは、中間熱交換器4での冷却剤流体の圧力P
dが、乗員室を急速に暖めるのに十分なレベルに到達しないという事実を反映する。このようにして、この制御方法は、熱伝達流体回路3の熱伝達流体の流量Q
calを、制御ステップ22において決定される流量閾値Q
cal limit未満に保つ。
【0076】
本発明による制御方法がない場合、乗員室に分配される内部空気流11の温度が低下する段階が観察される。このような状況は、車両のユーザによって特に不快なものである。
【0077】
一方で、圧力比較ステップ24において実行される比較が、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが、圧力決定ステップ23において決定された圧力閾値P
d limitを超えることを示せば、この制御方法は、増速ステップ25を提供し、このステップ中、制御デバイス13は、循環ポンプ9の回転速度を上げる。循環ポンプ9の回転速度が上がると、熱伝達流体の流量Q
calが、既に決定された流量閾値Q
cal limitを超えて増大する。
【0078】
好適な選択的方法において、熱伝達流体回路3における熱伝達流体の流量Q
calは、特に、乗員室の外気温、太陽光量、乗員室内のユーザが要求する温度および乗員室内の瞬時温度などによって決定される乗員室の快適性レベルを保証するために、内部空気流11に供給される動力P
air outとして既に規定された要求動力に対応するレベルまで増大される。
【0079】
最後に、本発明による制御方法は、終了ステップ26を含む。
【0080】
具体的には、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが圧力閾値P
d limitを超える場合、「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが、圧力閾値P
d limitを下回ることがないため、本発明による制御方法を反復するために制御デバイス13の計算リソースを利用することは無用であると見なされる。
【0081】
図3は、内部熱交換器4で得られる動力Pの変化を時間の関数として示すグラフである。Y軸には、利用可能な熱量を示す利用可能な動力Pが表され、X軸には、時間が表されている。
【0082】
参照番号27が付与され、点線で示した第1の曲線は、熱伝達流体の流量Q
calが、流量閾値Q
cal limit未満に常に保たれる場合の中間熱交換器4で利用可能な動力Pの変化を示す。
【0083】
参照番号28が付与され、点線で示した第2の曲線は、熱伝達流体の流量Q
calが、流量閾値Q
cal limitを超えた場合の中間熱交換器4で利用可能な動力Pの変化を示す。
【0084】
冷却剤流体回路2が始動される瞬間であるT
0と、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体圧力P
dが所定の圧力閾値P
d limit未満である瞬間であるT
1との期間、中間熱交換器4で利用可能な動力が、熱伝達流体の流量Q
calが流量閾値Q
cal limit未満に常に保たれる構成(第1の曲線27)の場合、熱伝達流体の流量Q
calが流量閾値Q
cal limitを超える構成(第2の曲線28)と比較して大きいことが分かる。
【0085】
この傾向は、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが所定の圧力閾値P
d limitを超える時間に対応する瞬間T
1の後に逆になる。具体的には、T
1の後、熱伝達流体の流量Q
calが流量閾値Q
cal limitを超える構成(第2の曲線28)が、熱伝達流体の流量Q
calが流量閾値Q
cal limit未満に常に保たれる構成(第1の曲線27)より大きな動力量を供給する。
【0086】
図3は、本発明に係る制御方法が、熱伝達流体回路3における熱伝達流体の流量Q
calを管理する方法を示す、参照番号29が付与された第3の曲線を示す。
【0087】
本発明によれば、この制御方法は、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが、所定の圧力閾値P
d limit未満である限り、すなわち、T
0とT
1との間の期間、制御デバイス13は、熱伝達流体の流量Q
calを流量閾値Q
cal limit未満に保つように循環ポンプ9を制御する。引き続き、冷却剤流体回路2の「高圧」部として知られる部分における冷却剤流体の圧力P
dが所定の圧力閾値P
d limitを超えるとすぐに、すなわち、T
1の後、制御デバイス13は、熱伝達流体の流量閾値Q
cal limitが超えられるように循環ポンプ9を制御する。
【0088】
一例として、循環ポンプ9の速度は、熱伝達流体の最大流量Q
cal maxの80%〜100%を供給するように管理される。
【0089】
明確には、本発明は、上述され、純粋に一例として与えられた実施形態に限定されるものではない。本発明は、本発明の範囲内において当業者が想定しうるさまざまな修正例、別の形態および他の変形例、ならびに、特に、別々にまたは組み合わせて用いられうる上述したさまざまな実施形態の任意の組み合わせを含む。