(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを備える電源装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車など車両用の電源装置や工場、家庭用の蓄電装置などに利用されている。このような電源装置に用いられる電池セルは、外装缶を金属ケースとしている。金属ケースの外装缶で構成された電池セルは、間にセパレータを介在させて積層して電池積層体とし、端面にそれぞれエンドプレートを配置して、エンドプレートで挟着するように固定している。
【0003】
また各電池セルは、高温時などに内圧が上昇した際、内部のガスを外部に排出できるよう安全弁を設けている。このようなガスを安全に誘導して排出するため、安全弁はガスダクトに連通されている(例えば特許文献1参照)。このガスダクトは、
図22の分解斜視図に示すように、電池積層体210の上面に、各安全弁と気密にシールさせるようにして固定している。このようなガスダクト212は樹脂製とし、両端に固定用のねじ穴213を開口している。一方エンドプレート214側にも、ねじ穴215を開口しており、固定ねじ216を用いてエンドプレート214にねじ止めして固定している。
【0004】
一方で電池セルは、急速に充放電するなどしたときや高温時など、何らかの異常によって内圧が上昇することがある。この場合には電池セルの外装缶が膨らむため、電池積層体の積層方向の長さが一時的に増大する。このため
図23(a)、(b)に示すようにエンドプレート214も膨張方向に拡散されるが、その一方でガスダクト212は硬質部材であるためその全長が変化しないことから、結果としてエンドプレート214に固定されたガスダクト212の端縁で、エンドプレート214の膨張によって固定ねじ216とねじ穴215が干渉して、引き裂かれるようにして破損することが考えられる。この状態では、ガスダクト212と電池積層体との固定が損なわれるため、ガスダクト212が安全弁から外れてしまい、安全弁から放出されるガスが漏れる事態となって好ましくない。
【0005】
特に近年は電源装置の小型化のため、ガスダクトをできるだけ小さくする傾向にあるため、ガスダクトの固定構造も簡素化される方向にある結果、連結の強度も弱くなることから、このような連結の破損に対する対策が求められているところ、有効な解決策が提案されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電源装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1の電源装置を背面から見た斜視図である。
【
図3】
図1の電源装置からガスダクトを外した状態を示す分解斜視図である。
【
図4】
図3の電源装置を背面から見た分解斜視図である。
【
図5】
図3の電源装置をさらに分解した状態を示す分解斜視図である。
【
図8】
図7のガスダクトを底面側から見た斜視図である。
【
図10】
図9の電源装置のX−X線における垂直断面図である。
【
図12】
図11(a)のガスダクトの固定手段の拡大平面図である。
【
図13】
図11(b)のガスダクトの固定手段の拡大平面図である。
【
図14】変形例に係るガスダクトの固定手段を示す平面図である。
【
図15】他の変形例に係るガスダクトの固定手段を示す平面図である。
【
図16】さらに他の変形例に係るガスダクトの固定手段を示す平面図である。
【
図17】さらにまた他の変形例に係るガスダクトの固定手段を示す平面図である。
【
図18】さらにまた他の変形例に係るガスダクトの固定手段を示す平面図である。
【
図19】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図20】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図21】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【
図22】従来の電源装置からガスダクトを外した状態を示す分解斜視図である。
【
図23】
図23(a)は
図22に示すガスダクトと電池積層体との連結部分を示す模式拡大平面図であり、
図23(b)は
図23(a)の電池積層体が膨張してガスダクトとの連結が破壊される状態を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを備える車両を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを備える車両を以下のものに特定しない。また特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0016】
以下、電源装置の一実施の形態として車両用電源装置に適用した例を、
図1〜
図5に基づいて説明する。これらの図において、
図1は本発明の一実施の形態に係る電源装置100を示す斜視図、
図2は
図1の電源装置100を背面から見た斜視図、
図3は
図1の電源装置100からガスダクトを外した状態を示す分解斜視図、
図4は
図3の電源装置100を背面から見た分解斜視図、
図5は
図3の電源装置100をさらに分解した状態を示す分解斜視図を、それぞれ示している。この電源装置100は、
図1〜
図2の斜視図に示すように箱形としている。この電源装置100を複数、直列又は並列に接続して、より大容量、大出力の電源装置を構成できる。各電源装置100は、
図3〜
図4の分解斜視図に示すように、複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、ガスダクト30とを備えている。ガスダクト30は、各二次電池セル1の安全弁3と連通されている。
(電池積層体10)
【0017】
電池積層体10は、
図5の分解斜視図に示すように、複数枚の二次電池セル1を、絶縁性のセパレータ6を介して積層し、両側の端面にエンドプレート20を配置して締結したブロック体である。セパレータ6は、隣接する二次電池セル1の外装缶2同士が導通することを阻止するため、絶縁性に優れた樹脂製とする。また必要に応じて、二次電池セル同士の間に、冷却空気を流すための空気路を設けるよう、セパレータの表面に凹凸を設けることもできる。
(バインドバー12)
【0018】
両端面のエンドプレート20同士は、バインドバー12で締結される。バインドバー12は、電池積層体10の側面に配置されており、エンドプレート20とねじ止めされる。この例では、電池積層体10の左右にそれぞれ2本のバインドバー12が設けられており、上下に離間して配置され、4箇所でエンドプレート20と締結される。なお、バインドバー12の配置位置は電池積層体10の側面に限られず、上面等とすることもできる。このバインドバー12は、金属製の板材を折曲して構成される。このようにしてバインドバー12で締結されたエンドプレート20同士の間に二次電池セル1の積層体を挟持することによって、電池積層体10を強固に保持できる。隣接する二次電池セル1同士は、バスバー14を介して電気的に接続される。また電池積層体10の上面には、バスバー14を覆うカバー15が装着されている。さらに電池積層体10の下面には、必要に応じて冷却用の冷却プレートが配置される。冷却プレートと電池積層体は、例えばエンドプレートを貫通させたボルトなどによって固定される。
(二次電池セル1)
【0019】
二次電池セル1は、
図6の斜視図に示すように、その厚さを上辺の横幅よりも薄くした薄型の外装缶2を利用している。換言すれば、外装缶2は厚みのある矩形の板状の形状としている。この外装缶2は、外装缶2の四隅を面取りした略箱形形状としている。また外装缶2の上面で外装缶2を封止する封口板4には、一対の電極端子5を突出させると共に、電極端子5の間に安全弁3を設けている。安全弁3は、外装缶2の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。安全弁3の開弁により、外装缶2の内圧上昇を停止することができる。なお、ここでは一般的に安全弁3から排出される排出ガスを効率よく誘導するために、安全弁3が電池積層体10の一面(本実施形態では上面)に並ぶように、二次電池セル1は積層される。
【0020】
二次電池セル1を構成する素電池は、リチウムイオン電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。特に薄型電池にリチウムイオン電池を使用すると、パック電池全体の容量に対する充電容量を大きくできる特長がある。
【0021】
このような二次電池は、大電流での充放電によって内部のガス圧が上昇することがある。このため二次電池を内蔵する電源装置100には、安全弁3を開弁してガスを放出した際に、このガスが意図しない部位から漏れ出さないよう、所定の経路に案内するためのガス排出路が設けられる。具体的には、電池積層体10の上面には、ガス排出路の一部を構成するガスダクト30が配置される。
(ガスダクト30)
【0022】
ガスダクト30は、安全弁3から放出されるガスを所定のガス排出路に案内するよう、各二次電池セル1の安全弁3と対向する姿勢に、電池セル積層体の上面に固定ねじ50によって固定されている。ガスダクト30は、高圧、高温のガスが排出された際に破壊されない十分な強度に設計され、好ましくは耐熱性、耐薬品製に優れた樹脂製とする。この例ではポリブチレンテレフタラート製としている。ただ、ガスダクトを剛性に優れたステンレスなどの金属製とすることもできる。
図7及び
図8の斜視図に示すガスダクト30は、中空の箱形に形成され、一端に連結口31を設けている。さらにガスダクト30の底面には、電池積層体10の各安全弁3と連通させるための連通口32を開口している。連通口32と安全弁3とは、シール部材(図示せず)等を介して気密に接続される。シール部材には、弾性を有するシート状の部材としたシリコーン系樹脂等が利用できる。また連結口31は、図示しないガス排出経路と気密に連通されており、ガス排出経路でもって安全弁3から排出されるガスを外部に安全に排出する。
なお、上記実施形態では、ガスを外部へ排出するように構成しているが、本発明のガスダクトは、ガスを外部へ排出する構成に限定するものではない。ガスダクトは、意図しない場所へガスが流出することを防ぐためのものであり、電源装置の構成によっては、短絡等を防止するために基板へガスが吹き付けることを防止する構成とするのみであっても良い。具体的には、電源装置が車両の外に設けられる構成や、電源装置をさらに密閉ケースで覆う構成等の場合は、基板へのガスの吹きつけを防止するのみでよい場合もある。すなわち、ガス排出流路は、明確な配管の形態であることを必ずしも要さず、ガスの流路を規制するガイドのような部材も含む。
また、上記実施形態では、ガスダクトは、電池積層体の上面に配置されているが、安全弁の位置によっては、側面側等、電池積層体の上面以外の位置に配置される構成とすることもできる。つまり、ガスダクトは、各二次電池セル1の安全弁3と対向する姿勢に、電池セル積層体の面上に配置されるようになっている。
【0023】
またガスダクト30の中間部分を電池積層体10と固定するために、セパレータ6の上端には、爪部7が設けられている。一方、ガスダクト30の側面には、
図5、
図7等に示すようにダクト係止片33が複数、互いに離間されて設けられる。ダクト係止片33は、爪部7と対応する位置に設けられている。ダクト係止片33を爪部7と係合させることで、ガスダクト30は中間部分においても電池積層体10と固定される。これによって、安全弁3から排出されるガスの圧力で、ガスダクト30が上方に押し上げられて外れる事態を回避できる。
【0024】
なお、この例では一部のセパレータ6とガスダクト30とを係合構造で固定しているが、本発明はこの構造に限らず、例えばすべてのセパレータとガスダクトとを固定することもできる。また固定構造も係合構造に限らず、接着や溶接など他の構造も適宜利用できる。また、上記実施形態の樹脂製のガスダクト30は、成形が容易であり、例えばガスダクト30と、連結口31を備える排出管とを一体に成形することもできる。さらに、爪部7とダクト係止片33による嵌合構造でガスダクト30を押さえ、ガスダクトとシール部材とを密着させる構造とすることで、ガスダクトを樹脂製として爪部7とダクト係止片33との嵌合を容易に行うことができ、電源装置の組み立て作業を効率よく行える。
(エンドプレート20)
【0025】
エンドプレート20は、樹脂製のエンドセパレータ22と金属製の金属プレート21とで構成される。これによって、樹脂製のエンドセパレータ22で端縁の二次電池セル1と絶縁を図りつつ、金属プレート21でバインドバー12と締結する際の機械強度を高めることができる。ただ、エンドプレートは必ずしも分割して構成する構成に限られず、適切な絶縁性と機械強度が達成されるのであれば一体の樹脂製又は金属製としてもよい。
【0026】
エンドセパレータ22の上面には、ガスダクト30を連結するための固定ねじ50を螺合するためのエンド側ねじ穴23が開口されている。
図3及び
図4の分解斜視図に示す例では、各エンドプレート20のほぼ中央に、2つのエンド側ねじ穴23が開口され、内部にはねじ溝が切られている。またエンド側ねじ穴として、インサートナットなどを利用することもできる。
(固定手段34)
【0027】
一方、ガスダクト30の両端には、エンドプレート20と固定するための固定手段34が設けられる。このようにガスダクト30の中間部位をセパレータ6と固定するのみならず、両端をエンドプレート20と固定することで、より強固な連結が図られ、例えば安全弁3からの高圧ガス排出時の圧力で、ガスダクト30が浮き上がって電池積層体10から外れる事態を回避できる。特にセパレータ6は樹脂製である上、爪部7による係合であるため、連結強度が限られてしまうことから、ガスダクト30端部での螺合によって、より強固な固定構造を付加して、信頼性を高めることができる。なお本明細書において、ねじや螺合には、リベットやこれを用いた固定構造も含む意味で使用する。またリベットを用いる固定構造は、リベットを別体で用いる構成に限られない。例えばエンドプレートに突起を設けて、この突起をガスダクトの固定穴に挿通して、先端をかしめて固定する構造も包含する。
(スリット状35)
【0028】
固定手段34は、電池セルの積層方向に平行に延長されたスリット状に形成される。スリット状35を、エンド側ねじ穴23に重ねた状態で、
図9の平面図に示すように固定ねじ50を上方から螺合することで、ガスダクト30を電池積層体10に固定する。スリット状35の固定手段34は、
図9の平面図及び
図10の断面図に示すように、エンドプレート20の長さ方向における中心軸に対してほぼ対称に、左右に設けられている。なお
図9の例では、右側の端部では2つのスリット状35が、左側の端部では1つのスリット状35が、それぞれ設けられている。さらに各スリット状35の幅は、固定ねじ50の軸52を挿入できるよう、軸52の外径よりも広く、かつ固定ねじ50のねじ頭51の外径よりも狭くしている。この様子を、
図9の一点鎖線で囲んだ固定ねじ50の固定部分の拡大平面図である
図12に示す。
【0029】
さらにスリット状35は、その端縁を開放した平面視U字状に形成している。これによって、
図13に示すように開放端としたスリット状35によって膨張方向への移動が制限されず、固定手段34の破損を回避できる。すなわち、
図10及び
図11に示すように、二次電池セル1のいずれかが急速充電や放電によって加熱され、外装缶2内部の圧力が高くなると、外装缶2が膨張する方向に変形する。この結果、電池積層体10の端面を挟持するエンドプレート20は、外装缶2に強い力で押し出される結果、外側に広がるように移動することとなる。ここで、
図22の分解斜視図及び
図23(a)の平面図に示すように、仮にガスダクト30とセパレータの固定が、ガスダクト30の端面に貫通された丸穴に固定ねじ50をねじ止めしている構造であるとすれば、外装缶2が膨張すると、
図23(b)に示すようにエンドプレート20が押し出されることで、固定ねじ50もこれにつれて移動される結果、丸穴の部分が破壊されてガスダクト30とエンドプレート20の連結が損なわれ、安全弁3から排出されたガスがガスダクト30との連結部分で漏れて、外部に排出されない状態となってしまうことが考えられる。
【0030】
そこで本実施の形態においては、上述の通り、開放端としたスリット状35に固定ねじ50を固定することで、
図11(b)に示すように、固定ねじ50との固定部分が移動しても、スリットに沿って滑るように移動することで変位が吸収され、固定手段34の破損を回避できる。この結果、ガスダクト30とエンドプレート20との連結が維持されて、安全弁3から放出されるガスをガスダクト30に案内する機能を奏することが可能となる。
【0031】
このようにスリット状35をガスダクト30の端部で、ガスダクト30を跨ぐように両側に離間させて設けることで、ガスダクト30の左右でそれぞれエンドプレート20と固定し、連結強度を高めることができる。なお上記実施形態では、ガスダクト30を強固に固定するために、ガスダクト30の両端をエンドプレート20にネジ止めする構成となっているが、強度的に問題なければ、ガスダクト30の両端をエンドセパレータ22にネジ止めする構成としても良い。
【0032】
図7等の例では、ガスダクト30の一方の端部に、スリット状35の固定手段34を2つ、他方の端部にはスリット状35を1つ設けている。ただ、この構成に限らず、
図14の変形例に示すように、ガスダクト30Bの両側にそれぞれ2つのスリット状35Bの固定手段34Bを設けることも可能であることは言うまでもない。この構成であれば、ガスダクト30Bが左右対称となるため、ガスダクト30Bの取り付け時に姿勢を気にすることなく装着でき、作業性を高めることができる。
【0033】
なお固定手段は、スリット状を2つ設ける例に限らず、
図15に示すガスダクト30Cのように1つのみのスリット状35Cとしてもよいし、または3つ以上とすることもできる。このようにスリット状の数は、要求される強度やスペースなどに応じて適宜変更できる。
【0034】
さらに
図16に示すガスダクト30Dのように、一方の固定手段34Dのみをスリット状35Dとし、他方の固定手段34’はねじ穴とする構成とすることもできる。この構成では、片側のスリット状35Dのみが固定部分のずれを吸収できるので、膨張に対する吸収力が半減するものの、スリット状35Dの固定手段34D側で電池積層体の膨張を吸収することができるため、ある程度の膨張には対応できる。このため、使用する二次電池セルの数や予想される膨張に応じて、スリット状を両側に設けるか、片側のみで足りるかなどについても、適宜選択できる。
【0035】
加えて、以上の例ではスリット状35は、端縁をオープンさせたU字状としているが、
図18に示すように、ガスダクト30Eのスリット状を長穴36とすることもできる。この場合は、膨張による固定ねじ50の移動によって長穴36の端縁が破損されないよう、長穴36の長手方向を十分な長さとする。
さらに上記の例では、固定手段を、ガスダクト側に形成した固定穴と、エンドプレートあるいはエンドセパレータ側に固定するねじ、リベットなどの固定部材で構成した例を説明したが、固定穴と固定部材を入れ替えても同様の効果が得られることはいうまでもない。例えば、
図17に示すように、ガスダクト30Fの端縁にねじやリベット等の固定部材50Fを固定し、エンドプレート20F側にこの固定部材50Fを挿入するスリット状の固定穴35Fを形成することでも、電池積層体の膨張を吸収できる。
【0036】
以上のように、固定手段をスリット状としたことによって、エンドプレートにガスダクトを螺合によって強固に固定でき、かつ電池積層体の膨張にも対応できるため、固定構造の信頼性を高めることができる。
【0037】
以上の電池セルを積層して構成した電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0038】
図19に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0039】
また
図20に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(蓄電用電源装置)
【0040】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、載置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を
図21に示す。この図に示す電源装置100は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の二次電池セル1が直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0041】
電源装置100で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100と接続されている。電源装置100の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。
図21の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0042】
各電池パック81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池パック81同士を直列、並列に接続するための端子である。また電池ユニット82は並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。