特許第6017541号(P6017541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017541
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】移動式要素を有するレーザノズル
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/06 20140101AFI20161020BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20161020BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20161020BHJP
【FI】
   B23K26/06
   B23K26/38 A
   B23K26/142
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-510854(P2014-510854)
(86)(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公表番号】特表2014-518771(P2014-518771A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】FR2012050907
(87)【国際公開番号】WO2012156608
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】1154224
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベッカー、イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ジャーノー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レフェブール、フィリップ
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−040695(JP,A)
【文献】 特開平07−251287(JP,A)
【文献】 特開平04−185761(JP,A)
【文献】 特開平05−237682(JP,A)
【文献】 特開2000−202676(JP,A)
【文献】 特開2003−154477(JP,A)
【文献】 特開2011−025295(JP,A)
【文献】 米国特許第04031351(US,A)
【文献】 特開昭52−037298(JP,A)
【文献】 国際公開第02/018091(WO,A1)
【文献】 欧州特許第2709793(EP,B1)
【文献】 中国特許第103547405(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/06
B23K 26/142
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通する軸方向ハウジング(5)を備え、その前面(1a)に位置する第1の出口オリフィス(11)を備えるノズル本体(1)と、
前記ノズル本体(1)の前記軸方向ハウジング(5)内に配置され、スカートを形成する前部(2a)を備える可動要素(2)であって、前記ノズル本体(1)の前記軸方向ハウジング(5)内で並進移動することが可能であり、第2の出口オリフィス(12)がスカートを形成する前部(2)で表面に出ている軸方向通路(4)を備える、可動要素(2)とを備えるレーザノズル(1、2)において、
前記可動要素(2)が、前記可動要素(2)にかかるガス圧力の影響下で、前記可動要素(2)のスカートを形成する前記前部(2a)が、前記ノズル本体(1)の前記前面(1a)にある前記第1の出口オリフィス(11)から前記軸方向ハウジング(5)の外に突出するまで、前記軸方向ハウジング(5)内で前記第1の出口オリフィス(11)の方向に並進移動することが可能であり、
弾性要素(8)が、前記軸方向ハウジング(5)内の、前記ノズル本体(1)と前記可動要素(2)との間に配置され、前記弾性要素(8)によって、前記軸方向ハウジング(5)内での前記第1の出口オリフィス(11)の方向への前記並進移動とは逆向きの傾向の弾性復帰力が前記可動要素(2)にかかることを特徴とする、ノズル。
【請求項2】
前記可動要素(2)が、前記軸方向ハウジング(5)内で前記ノズル本体(1)の前記前面(1a)に位置する前記第1の出口オリフィス(11)の方向に並進移動すると、前記可動要素(2)のスカートを形成する前記前部(2a)が、前記ノズル本体(1)の前記前面(1a)にある前記第1の出口オリフィス(11)から前記軸方向ハウジング(5)の外に突出することを特徴とする、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体(1)の前記軸方向ハウジング(5)の底部(15)が肩部(9)を備え、前記可動要素(2)の周壁が停止部(10)を備え、前記弾性要素(8)が前記肩部(9)と前記停止部(10)との間に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のノズル。
【請求項4】
少なくとも1つの封止要素(7)が、前記ノズル本体(1)と前記可動要素(2)との間に配置されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの封止要素(7)が、前記可動要素(2)の外周壁に設けられた周溝(14)内に配置されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項6】
前記可動要素(2)が、
前記前部(2a)の前記スカートが前記ノズル本体(1)の前記軸方向ハウジング(5)内に完全に、またはほぼ完全に格納されるアイドル位置と、
前記前部(2a)の前記スカートが前記第1の出口オリフィス(11)から前記ノズル本体(1)の前記軸方向ハウジング(5)の外に完全に、またはほぼ完全に突出する作動位置とを備えるいくつかの位置間で動くことが可能であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項7】
前記可動要素(2)の前記軸方向通路(4)が、円錐形状、切頭円錐形状、または中細形状の輪郭を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項8】
少なくとも1つの集束光学系を備えるレーザ集束ヘッドであって、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のレーザノズルをさらに備えることを特徴とする、レーザ集束ヘッド。
【請求項9】
レーザ発生器と、レーザ集束ヘッドと、前記レーザ発生器と前記レーザ集束ヘッドとに連結されたレーザビーム搬送デバイスとを備えるレーザ設備であって、前記レーザ集束ヘッドが、請求項8に記載のものであることを特徴とする、レーザ設備。
【請求項10】
前記レーザ発生器が、CO2型、YAG型、ファイバまたはディスク型のものであることを特徴とする、請求項9に記載のレーザ設備。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のノズル、請求項8に記載のレーザ集束ヘッド、あるいは請求項9または10に記載のレーザ設備が使用される、レーザビームによって切断するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断ガスを切断カーフに集中させるスカートを備える内部可動要素を有する、レーザビーム切断に使用することができるレーザノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームによる切断には、ガスを誘導する作用を有し、かつレーザビームを通過させることが可能な、一般に銅から作製されたノズルの使用が必要となる。
【0003】
こうしたノズルは、通常、0.6から2mmの間の作業距離について直径0.5から3mmの間の出口オリフィスを有する。
【0004】
切断を可能とするには、溶融金属を排除するために、ガスがカーフに入ることを可能とするように、集束ヘッドにおいて高圧力、一般に数バールの圧力を使用することが必要である。
【0005】
しかし、使用するガスの大部分、通常50%から90%の間のガスは、切断工程、すなわち溶融金属の排出には作用せず、これはガスが切断カーフの両側から始まるからである。
【0006】
こうしたガスの損失は、実際にはノズルオリフィスの流動の断面と、焦点のサイズとの差が非常に大きいことによる。したがって、例示として、直径1.5mmの出口オリフィスを有するノズルの流動の断面は、このノズルを通過するレーザビームによって生成される焦点の断面よりも25倍大きい。
【0007】
しかし、使用されるガスの割合が不十分であると、切断不良、特にフラッシュの付着および/または酸化痕(trace of oxidation)が出現する。
【0008】
ノズルオリフィスの直径を低減させることによってこの問題を是正しようとすると、レーザビームがノズルの内側に当たり、そこを損傷させることになり、さらにまた、切断品質および/または切断性能も損なわれるという危険を負うことになるので、理想的でない。
【0009】
さらに、ガスがカーフ内に入るのを補助しようとする様々な解決策を提案する文献がいくつか存在し、例えばEP−A−1669159、特開昭62−006790、特開昭61−037393、特開昭63−108992、特開昭63−040695、および米国特許第4,031,351(A)号がある。
【0010】
しかし、これらの解決策はいずれも、実施するのに複雑な構成を有することが多く、市販のノズルの寸法よりも大きい寸法を有し、かつ/または有効性が限られていることが多いので、とても理想的であるとは言えない。さらに、既存の解決策は、産業用レーザ切断に使用するには適さない。
【0011】
特に、米国特許第4031351(A)号の文献には、切断ガスをカーフ内に注入するのを補助するために、切断すべき部品の表面に端部が押し付けられる可動要素を備えるレーザ切断ノズルが開示されている。このように端部を押し付けるために、このノズルには、可動要素を、切断すべき部品の方向に動かし、その可動要素を前記部品の表面に押し付けて保持するように、可動要素に圧力をかけるばねが設けられている。
【0012】
しかし、この解決策では、特に産業上で利用するには、いくつかの大きな問題が生じることが提起されている。
【0013】
第一に、切断ガスの圧力に加えて、ばねによってかかる力によって、可動要素が、切断すべき部品に高い力をかけることになる。その結果、部品がそこから切断される金属シートが変形し、シートの表面上に摩擦および擦傷が生じ、さらには連れ動き(entrainment)、すなわちシートが動いてしまうという危険があり、こうしたシートは、一般には産業用切断機の台上に単に配置されるだけである。こうした危険は全て、金属シートが薄くなるほど大きくなる。
【0014】
可動要素の端部と、部品の表面との間にOリング封止部が存在するため、金属シートにかかる摩擦力の増大がさらに助長され、また、可動要素の使用寿命の点においても問題が課されるが、それは、レーザビームがその最も高い出力密度を有し、かつ溶融金属が跳ね返る危険が高いこのレベルで、非常に高い温度にノズルが曝されるからである。
【0015】
最後に、この解決策ではまた、特に連続した部品を切断する際の、切断ガスまたはビームを送達せずに、切断ヘッドを金属シートの上方で迅速に移動させる段階中に、または溶融金属の跳ね返りが顕著になる金属シートの穿孔段階中に、問題が課される。したがって、こうした状況では、ノズルとシートとが永続的に接触していることは禁じられることになる。
【発明の概要】
【0016】
したがって、ここでの課題は、溶融金属の排出に作用するガスの割合を増大させ、それによって損失されるガスの割合を制限しながら、使用するガスの総量、および必要となるガス圧力を低減させることによって、レーザ切断に使用するガスの有効性を向上させることを可能とすることであり、このことを、産業レベルで実施することができ、レーザ切断デバイスを過度に複雑にすることのない解決策を提案することによって可能とすることである。
【0017】
本発明の解決策は、
− 軸方向に貫通する軸方向ハウジングを備え、前面に位置する第1の出口オリフィスを備えるノズル本体と、
− ノズル本体の軸方向ハウジング内に配置され、スカートを形成する前部を備える可動要素であって、ノズル本体の軸方向ハウジング内で並進移動することが可能であり、第2の出口オリフィス(12)がスカートを形成する前部で表面に出ている(emerge)軸方向通路を備える、可動要素と
を備えるレーザノズルにおいて、
− 可動要素が、可動要素にかかるガス圧力の影響下で、可動要素のスカートを形成する前部が、ノズル本体の前面にある第1の出口オリフィスから軸方向ハウジングの外に突出するまで、軸方向ハウジング内で第1の出口オリフィスの方向に並進移動することが可能であり、
− 弾性要素が、軸方向ハウジング内の、ノズル本体と可動要素との間に配置され、前記弾性要素によって、軸方向ハウジング内での第1の出口オリフィスの方向への並進移動とは逆向きの傾向の弾性復帰力が可動要素にかかる
ことを特徴とする、レーザノズルである。
【0018】
状況によっては、本発明のノズルは、以下の技術的特徴、すなわち
− 可動要素が、軸方向ハウジング内でノズル本体の前面に位置する第1の出口オリフィスの方向に並進移動すると、可動要素のスカートを形成する前部が、ノズル本体の前面の第1の出口オリフィスから軸方向ハウジングの外に突出すること、
− ノズル本体の軸方向ハウジングの底部が肩部を備え、可動要素の周壁が停止部を備え、弾性要素が肩部と停止部との間に配置されること、
− 少なくとも1つの封止要素、例えば1つまたは複数のOリング封止部が、ノズル本体と可動要素との間に配置されること、
− 前記少なくとも1つの封止要素が、可動要素の外周壁に設けられた周溝内に配置されること、
− 可動要素が、
・前部のスカートがノズル本体の軸方向ハウジング内に完全に、またはほぼ完全に格納されるアイドル位置と、
・前部のスカートが第1の出口オリフィスからノズル本体の軸方向ハウジングの外に完全に、またはほぼ完全に突出する作動位置と
を備えるいくつかの位置間で動くことが可能であること、
− 可動要素の軸方向通路が、円錐形状、切頭円錐形状、または中細形状の輪郭を有すること、
− ノズル本体が、導電材料、特に銅、黄銅などから作製されること、
− 可動要素が、完全に、または部分的に電気的絶縁材料から形成されること、
− あるいは、可動要素が、導電性であり、かつ温度/熱に耐性のある材料、特に銅、黄銅などから作製され、前記絶縁要素が、ノズルと可動インサートの壁との間に配置された少なくとも1つの絶縁界面を備えること、
のうちの1つまたは複数を備えることができる。絶縁界面は、ノズル本体に配置されたスリーブ、またはノズル本体もしくは可動要素によって支えられている絶縁クラッドのいずれかである。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つの集束光学系、例えば1つまたは複数のレンズまたはミラー、特に集束レンズおよびコリメーションレンズを備えるレーザ集束ヘッドであって、本発明によるレーザノズルをさらに備えることを特徴とする、レーザ集束ヘッドに関する。
【0020】
さらに、本発明はまた、レーザ発生器と、レーザ集束ヘッドと、前記レーザ発生器と前記レーザ集束ヘッドとに連結されたレーザビーム搬送デバイスとを備えるレーザ設備であって、前記レーザ集束ヘッドが、本発明によるものである、レーザ設備に関する。
【0021】
好ましくは、レーザ発生器またはレーザ源は、CO2型、YAG型、ファイバまたはディスク型、好ましくはファイバまたはディスク型のものであり、特にイッテルビウムファイバレーザ源である。
【0022】
さらに別の態様によれば、本発明はまた、本発明によるノズル、本発明によるレーザ集束ヘッド、または本発明による設備が使用される、レーザビーム切断方法に関する。
【0023】
次に、添付の図を参照しながら示す以下の説明によって、本発明がよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】従来型のレーザ切断設備の集束ヘッドの概略図。
図1B】ノズルオリフィスの寸法と比較した、レーザスポットの寸法の概略図。
図2】本発明によるノズル本体の断面図。
図3】本発明によるノズルの断面図。
図4A】可動要素が図4Bとは異なる位置にある、本発明のノズルを示す図。
図4B】可動要素が図4Aとは異なる位置にある、本発明のノズルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aは、集束されたレーザビームと、切断すべき金属部品30、例えば鋼シートまたはステンレス鋼シート中に、ビーム22によって形成された切断カーフ31から、ビームによって溶融した金属を排出させる働きをする補助ガス(矢印23)とがそこを通過する従来型のレーザノズル21が取り付けられた、従来型のレーザ切断設備の集束ヘッド20を示す。
【0026】
補助ガスは、酸素、空気、CO2、もしくは水素などの活性ガス、またはアルゴン、窒素、もしくはヘリウムなどの不活性ガス、またはこれらの活性ガスおよび/または不活性ガスのいくつかの混合体でよい。ガスの組成は、特に切断すべき部品の性質に従って選択する。
【0027】
部品に当たったビームによって、そこの金属が溶融することになり、溶融した金属は、補助ガスの圧力によってその部品の下方に排出されることになる。
【0028】
図1Bは、ビーム22の焦点寸法S2と比較した、ノズル21のオリフィス24の流動S1の断面を明白に示している。この図から分かるように、断面S1は、ビーム22の焦点寸法S2よりもはるかに大きく、このため従来型のノズルでは、補助ガスの消費量が高くなり、そのうちのほんの僅かな割合だけが、溶融金属を切断カーフ31から排出させる働きをすることになる。
【0029】
ガスの消費量、ならびに切断に必要となる圧力を大幅に低減させるために、本発明は、どのようなレーザ出力およびビーム波長であっても、ガスがより高い割合でカーフ31に入り、その中の溶融金属を効果的に排出させることを可能とする特定のノズル構成によって、使用するガス流量および/またはガス圧力が低減したレーザビームを用いた切断に適し、かつそのように設計された改良型レーザノズルを提案するものである。
【0030】
本発明によれば、レーザノズルは、少なくとも2つの必須の構成要素、すなわちノズル本体1と、ノズル本体1の内部で動くことが可能となるように配置された、ノズル本体1と協働する可動要素2とを備え、その実施形態を図2および図3に示す。
【0031】
より正確には、図2から分かるように、導電材料、例えば銅または黄銅から形成されたノズル本体1は、レーザ設備のレーザ集束ヘッド20に取り付けられるものである。
【0032】
有利には、ノズル本体1は、本体1の後面1bから前記本体1の前面1aまで、その本体を貫通して延びる軸AAの軸方向ハウジング5を有する回転体部品である。
【0033】
軸方向ハウジング5は、ノズル本体1の前面1aと後面1bとの2つの面が表面に出ている。したがって、後面1bは、ノズル本体1の第1の入口オリフィス11’を担持し、前面1aは、第1の出口オリフィス11を担持し、第1の入口オリフィス11’と第1の出口オリフィス11とは軸AAで同軸である。
【0034】
この軸方向ハウジング5は、実際には凹状であり、例えばハウジング5の中央に向かって半径方向に突出した内側肩部9を備える円筒形状であり、前記内側肩部9は、軸方向ハウジング5の、ノズル本体1の前面1aに位置する第1の出口オリフィス11の断面の絞り部(restriction)15によって形成されている。
【0035】
本発明のノズルはまた、図3から分かるように、ノズル本体1のハウジング5内に挿入される可動要素2を備える。この可動要素2は、ノズル本体1のハウジング5の内部で軸AAに沿って並進移動するのに適し、そのように設計されている。
【0036】
より正確には、この可動要素2は、ノズル本体1の軸方向ハウジング5内に配置され、通常は円筒形状、すなわち管状の、スカート6を形成する前部2aを備え、また、第2の出口オリフィス12が前記スカート6を形成する前部2で表面に出ている軸方向通路4を備える。
【0037】
ノズルの使用中、レーザビーム22と補助ガス23とは、可動要素2の軸方向通路4を通過し、前記スカート6を形成する前部2で表面に出ている第2の出口オリフィス12から出る。
【0038】
可動要素2は、優先的には、複合材料であってもなくても、絶縁材料、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、Vespel(登録商標)、セラミック、またはPyrex(登録商標)によって形成され、レーザ切断ノズルの内部幾何形状を再現し、すなわち可動要素2は内部輪郭を有することができ、すなわち軸方向通路4は、出口チャネルが円筒状或いは非円筒状の円錐形状、切頭円錐形状、中細型(すなわちラバル管)形状、または他の適切な任意の幾何形状の輪郭を有することができる。
【0039】
可動要素2は、ノズル本体1に対して軸AAに沿って軸方向に動くことが可能である。実際には、可動要素2は、前記可動要素2にかかる補助ガス23の圧力の影響下で動き、補助ガス23は、可動要素2を切断すべき部品30の方向に押し付ける傾向がある。
【0040】
可動要素2が軸AAに沿って並進移動することによって、スカート6が切断すべきシートの頂面30の方により近接して動くことになり、図4Aに示すように、互いに接触することになる。
【0041】
したがって、ガスはスカート6によって誘導され、レーザスポット、したがってカーフに集中することになり、そのためガスの有効性が大幅に改善され、金属の排出がより良好に行われることになる。
【0042】
ばねなどの弾性要素8が、可動要素2に対して、その可動要素2を切断すべき部品から離す傾向の方向に弾性復帰力をかけるように、軸方向ハウジング5内の、ノズル本体1と可動要素2との間に配置されている。
【0043】
したがって、切断終了時に、ガスを遮断し、ガス圧力を可動要素2にかけるのを停止すると、可動要素2は、そのアイドル位置に戻ることができ、したがってスカート6は、図4Bに示すようにハウジング5の内部に戻ることになる。
【0044】
さらに、弾性要素8により、可動要素2が切断ガスの影響下で切断すべき部品の方向に動くときに、前記可動要素によってその部品にかかる圧力を制限することが可能となる。より正確には、弾性要素8の復帰力は、有利には、切断すべき部品がそこから切断されるシートのいかなる変形、擦傷、または連動の危険もはるかに最小限に抑えられ、さらには排除されるように、可動要素2によって金属シートにかかる圧力を制限しながら、前記可動要素をその切断すべき部品と接触したまま保持するように設定される。
【0045】
さらに、いかなる切断ガスまたはビームもない場合に、弾性要素8によって切断ヘッドがシートの上方で迅速に短距離を移動しやすくなり、その理由は、可動要素にかかるガス圧力が停止し、スカート6がハウジング5の内部に戻るからである。
【0046】
このように、本発明のノズルを支持している集束ヘッドを必ずしも上昇させる必要なく、スカートだけを上昇させることが可能であり、したがってこの切断方法は産業レベルで大幅に実施しやすくなる。
【0047】
弾性要素8によってまた、一般に切断段階に先行するシートの穿孔段階中の、スカート6の摩耗現象を制限することが可能となる。これは、穿孔は通常、低いガス圧力、通常は4バール未満のガス圧力で実施されるからである。弾性要素によって、スカート6がハウジング5内に完全に、またはほぼ完全に上昇し、したがって穿孔によって生じる溶融金属の跳ね返りから保護されるように、スカート6に十分な復帰力がかかる。
【0048】
可動要素2の外周壁は、停止部、好ましくは前記可動要素2の周囲全体またはその一部に延在する環状の停止部を備え、弾性要素8は、肩部9と停止部10との間に配置されることに留意されたい。
【0049】
したがって、実際には、本発明によるノズルの可動要素2は、少なくとも
図4Bに示す、前部2aのスカート6がノズル本体1の軸方向ハウジング5内に完全に、またはほぼ完全に格納されるアイドル位置と、
図4Aに示す、前部2aのスカート6が第1の出口オリフィス11からノズル本体1の軸方向ハウジング5の外に完全に、またはほぼ完全に突出し、切断すべき部品と接触する作動位置と
を備える、いくつかの位置間で動くことが可能である。
【0050】
当然ながら、可動要素2は、スカート6がノズル本体1の軸方向ハウジング5の外に一部分だけが突出する中間位置を占めることもできる。こうした中間位置は、特にガスによって可動要素2にかかる圧力に依存し得る。
【0051】
任意選択で、ノズル本体1と可動インサート2との間の封止を実現する少なくとも1つの封止要素7、特に1つまたは複数のOリング封止部7を、ノズル本体1と可動要素2との間に配置する。
【0052】
図3から分かるように、本発明のノズルは標準寸法のものであり、すなわちその寸法は、従来型の切断ノズルと比べて増大しておらず、このことは、連続切断、すなわち同じ金属シート内で、様々な部品間の間隔(separation)がほとんどない部品において有利であり、かつ適合性がある。
【0053】
さらに、本発明のノズルは、静電容量センサシステムと適合性があるという他の利点を有する。これは、銅または他の導電材料から作製されたこの部品が、標準ノズルと同様に、静電容量センサによって指定された高さに適合するからである。ガス圧力下で切断すべきシート30と接触するのは可動インサート2であり、したがってガス洩れが制限される。
【0054】
本発明のノズルは、出口オリフィス12の直径が0.5から5mmの間の可動要素2を備える。好ましくは、可動要素2の前部2aは、3から8mmの間、さらに好ましくは約6mmの外径を有する。
【0055】

本発明によるノズルの、標準ノズルと比較した有効性、したがって可動要素に取り付けられたスカートの使用によってガスを切断カーフ内に向ける利点を示すために、集束光学系、すなわちレンズを備えるレーザ集束ヘッドに導かれるレーザビームを発生するためのCO2型のレーザ発生器を有する切断設備を用いて、比較試験を実施する。
【0056】
レーザ集束ヘッドは、状況に応じて、直径1.8mmの出口オリフィスを有する標準ノズル、または図3に記載の円筒状可動スカートと、直径1.8mmの円筒状出口チャネルとを有するノズルを装備している。
【0057】
使用する補助ガスは、窒素である。
【0058】
切断部品は、厚さ5mmの304Lステンレス鋼シートである。
【0059】
レーザビームは4kWの出力を有し、切断速度は2.6m/分である。
【0060】
得られた結果では、以下のことが示された。
【0061】
− 標準ノズルでは、14バールのガス圧力では、高品質の切断を得るには不十分である。その理由は、14バールでは、切断縁部に多数のばりが付着するからである。これは、排出すべき溶融金属に対するガスの作用が不十分であるため、溶融金属の放出がうまく行われていないことを実証している。これらのばりをなくすには、16バールの圧力が必要であった。
【0062】
− 本発明のノズルでは、1から5バールの間の範囲の圧力で実施した試験によって、高品質の切断が得られ、すなわち切断縁部にばりが付着しなかった。ノズルのスカートによってガスが溝に誘導され、溶融金属が効果的に排出される。
【0063】
これらの試験は、他の条件は全て等しいまま、使用すべきガス圧力を標準ノズルに比べて大幅に低減させることが可能となり、したがってガスの消費量もやはり低減させることが可能となる本発明によるノズルの有効性を明白に実証している。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B