【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明者らは実施例で後述する多くの実験を実施し、それを通じて次のような結論に至った。
【0011】
第一、薬物含有層を研究した結果、次のような結論を得た。
【0012】
適合性テスト(compatibility test)の結果を参考して主成分との適合性の良い賦形剤を選定し、主成分の濃度による透過度を観察した結果、対照薬と同等な透過速度(例えば、フラックス(flux))を有するための主成分の濃度は、乾燥後の薬物粘着層の総重量を基準に15〜35重量%、望ましくは25〜35重量%であることが分かった。この処方を、人体の皮膚に24時間適用したとき、製剤の付着性が悪くてパッチが貼付部位から滑って移動する現象が生じ、それによって適用皮膚にダークリング(dark ring)の生じる現象が観察された。それを改善するため、主成分及びアクリル系粘着剤と混合しない他の系列の粘着剤で皮膚粘着層を製造し、薬物を含有する薬物層と重ねる二重層処方を開発することにした。
【0013】
第二、皮膚粘着層を研究した結果、次のような結論を得た。
【0014】
リバスティグミンパッチ製剤の二重層処方のうち、シリコーン粘着剤を使用した皮膚粘着層(第2層)は、皮膚と薬物粘着層との間のバリアの役割をし、主成分の透過度を低下させるため、その厚さが薬物の皮膚透過速度に重要な影響を及ぼす。第2層の厚さを変化させて透過度を観察したところ、対照薬と透過率が同等な処方は、乾燥後の重量を基準にBio PSA 7−4202 30mg/10cm
2またはBio PSA 7−4302 30mg/10cm
2を皮膚粘着層として使用した処方であった。2つの処方のうち最も好適な処方を選定するため、粘着剤の粘着力を比べたときに対照薬の粘着力と類似したBio PSA 7−4302 20〜40mg/10cm
2、望ましくはBio PSA 7−4302 27〜33mg/10cm
2、さらに望ましくはBio PSA 7−4302約30mg/10cm
2処方を本発明によるリバスティグミンパッチの望ましい処方として選定した。
【0015】
第三、高分子を研究した結果、次のような結論を得た。
【0016】
リバスティグミンパッチの主成分であるリバスティグミン遊離塩基は室温で液相であって、乾燥後の薬物粘着層処方のうち主成分が30重量%以上を占める場合、増粘性重合体を添加する必要があるため、主成分と適合性が確保されたポリマー(PLASTOID B)を使用して対照薬と同等な透過度を示すポリマーの比率を設定するための研究を行った。そこで、ポリマーの量を乾燥後の薬物粘着層の総重量対比10重量%ないし30重量%に調節してポリマーの比率を設定する実験を行ったところ、ポリマーの含量が多くなるほど透過率が低くなることが分かった。これはポリマー量の増加と共に粘度が高くなり、薬物の拡散を妨害して薬物の放出を妨害するためであると考えられるが、本発明がこのような理論的推測によって限定されることはない。そこで、処方中のポリマーを乾燥後の薬物粘着層の総重量対比20重量%で含ませた処方が、対照薬と最も類似した透過度を示すことを確認した。
【0017】
第四、結論的に製剤学的研究(formulation study)を通じて選定された、本発明に属する多くの処方のうち最も望ましい最終処方は、下記表1のようである。
【0018】
【表1】
【0019】
表1において、溶媒は乾燥工程で除去される。表1におけるそれぞれの含量はすべて乾燥後の重量を意味する。すなわち、Durotak 87−235AとBio PSA 7−4302は製品自体が高分子以外の一定量の溶媒を含んでいるが、このような溶媒を除いた含量値である。
【0020】
選定された最終処方をもってリバスティグミンパッチを製造した後、メンブレイン(membrane)とヒト死体皮膚(human cadaver skin)で72時間対照薬の透過速度(例えば、フラックス)と比較し、同等であることを確認した。
【0021】
第五、包装条件選定試験の結果、次のような結論を得た。
【0022】
リバスティグミンパッチを安定的に保管するための包装条件を選定するため、苛酷安定性試験を行った。包装条件は大気包装と窒素包装とに区分し、苛酷条件でリバスティグミンパッチの安定性を評価した。その結果、窒素を充填して包装する場合、柔軟物質の増加が少ないことを確認した。
【0023】
すなわち、本発明らは多くの研究を通じて、リバスティグミン含有層に含まれる粘着剤と高分子を適切に選定し、それらの含量を特定の比率で調節し、皮膚粘着層の構成成分を適切に選定し、その厚さを調節し、さらに適切な包装方法で本発明によるリバスティグミンパッチを包装することで、様々な問題を内包しているトコフェロールなどの安定化剤を使用しなくても、リバスティグミンの安定性を確保して適切な放出を果たすことができるという驚くべき発明に至った。
【0024】
したがって、本発明は、
(a)リバスティグミン遊離塩基;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体;及び粘着剤を使用して製造される薬物粘着層、及び
(b)シリコーン粘着剤を含む皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチにおいて、
前記薬物粘着層の粘着剤として2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体が使用されることを特徴とするリバスティグミンパッチを提供し、より望ましくは、前記薬物粘着層の粘着剤としてDURO−TAK
TM 87−235A(ヘンケル(Henkel)社製)が使用される。
【0025】
より望ましくは、前記薬物粘着層に含まれるブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体はブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのランダム共重合体であり、重量平均分子量が130,000ないし170,000g/molであり、最も望ましくはこのような共重合体としてPLASTOID
TM B(エボニック(Evonik)社製)が使用される。
【0026】
より望ましくは、前記皮膚粘着層のシリコーン粘着剤としてジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカが使用され、最も望ましくはこのようなシリコーン粘着剤としてBIO−PSA
TM7−4302(ダウコーニング(Dow Corning)社製)が使用される。
【0027】
このようなシリコーン粘着剤は、使用量によってリバスティグミンの放出に多くの影響を及ぼすが、実験の結果、前記BIO−PSA
TM 7−4302は乾燥後の重量を基準に27ないし33mg/10cm
2の容量で使用されることが望ましく、乾燥後の重量を基準に約30mg/10cm
2の用量で塗布されて製造されることが最も望ましかった。
【0028】
本発明は、また、
(a)実質的に、リバスティグミン遊離塩基;PLASTOID
TMB(エボニック社製);及びDURO−TAK
TM 87−235A(ヘンケル社製)のみからなる薬物粘着層、及び
(b)実質的に、BIO−PSA
TM7−4302(ダウコーニング社製)のみからなる皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチを提供する。
【0029】
本発明は、また、
(a)実質的に、リバスティグミン遊離塩基;PLASTOID
TMB(エボニック社製);及びDURO−TAK
TM 87−2510(ヘンケル社製)の固形分のみからなる薬物粘着層、及び
(b)実質的に、BIO−PSA
TM7−4302(ダウコーニング社製)の固形分のみからなる皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチを提供する。
【0030】
ここで「実質的に」とは、言及された成分外の他の成分(特に、トコフェロールのような抗酸化剤)を1重量%以下で含むことを意味し、望ましくは0.5重量%以下、より望ましくは0.1重量%以下、最も望ましくは0.05重量%以下で含むことを意味する。
【0031】
本発明によるリバスティグミン含有パッチにおいて、薬物粘着層は、薬物粘着層の総重量対比リバスティグミン遊離塩基25ないし35重量%;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(望ましくはPLASTOID
TMB)16ないし24重量%;及び2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体(望ましくはDURO−TAK
TM87−235A の固形分)45ないし55重量%からなることが望ましく、皮膚粘着層は、乾燥後の重量でジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカ(望ましくはBIO−PSA
TM 7−4302の固形分)27ないし33mg/cm
2(より望ましくは30mg/cm
2)の用量で製造されることが望ましい。
【0032】
また、本発明は、
(a)リバスティグミン遊離塩基;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(望ましくは、PLASTOID
TMB(エボニック社製));2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体(望ましくは、DURO−TAK
TM87−235A(ヘンケル社製))、及び溶媒を、乾燥後の薬物粘着層の総重量対比リバスティグミン遊離塩基25ないし35重量%;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体16ないし24重量%;及び2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体45ないし55重量%になるように成分を混合し、該混合物で薬物形成層を形成する段階、及び
(b)乾燥後の重量でジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカ(望ましくはBIO−PSA
TM7−4302の固形分)27ないし33mg/cm
2(より望ましくは30mg/cm
2)の含量になるように皮膚粘着層を製造する段階を含むリバスティグミン遊離塩基含有パッチの製造方法を提供する。
【0033】
本発明による製造方法において、(b)段階は(a)段階の後に行われても、(a)段階の前に行われても良く、(a)段階と同時に行われることもできる。
【0034】
このように二重層で製造されたパッチの場合、薬物粘着層(薬物含有層)/皮膚粘着層内に存在する他の成分の存在及び混合比によって、主成分の放出に非常に深刻な影響が及ぶため、添加物及び各成分の含量を細密に調節しなければならない。
【0035】
本発明によるリバスティグミンパッチの人体に対する投与用量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態、疾患の程度などによって変わり得る。市販中のリバスティグミンの経皮投与製品は、アルツハイマー型痴呆、パーキンソン病痴呆などの治療に9ないし18mgを1日1回皮膚に適用する。