特許第6017543号(P6017543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017543
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】リバスティグミン含有パッチ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20161020BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20161020BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20161020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61K31/27
   A61K47/32
   A61K9/70 401
   A61K47/34
   A61P25/28
   A61P43/00 111
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-511305(P2014-511305)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公表番号】特表2014-513719(P2014-513719A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】KR2012003986
(87)【国際公開番号】WO2012161489
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0048068
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513288850
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK CHEMICALS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チェ−ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウォン−ノ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨ−ジン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チュン−ギョ
(72)【発明者】
【氏名】イム,チョンソプ
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−517468(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0087768(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/050673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/27
A61K 9/70
A61K 47/32
A61K 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リバスティグミン遊離塩基;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体;及び粘着剤を使用して製造される薬物粘着層と、
(b)シリコーン粘着剤を含む皮膚粘着層と、の二重層を含むリバスティグミン含有パッチにおいて、
前記薬物粘着層の粘着剤として2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体が使用され
前記薬物粘着層及び前記皮膚粘着層のいずれもトコフェロールを含まないことを特徴とするリバスティグミンパッチ。
【請求項2】
前記薬物粘着層の粘着剤としてDURO−TAK(登録商標) 87−235A(ヘンケル社製)が使用されることを特徴とする請求項1に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項3】
前記ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体が、ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのランダム共重合体であり、重量平均分子量が130,000ないし170,000g/molであることを特徴とする請求項1に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項4】
前記ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体が、PLASTOID(登録商標)B(エボニック社製)であることを特徴とする請求項3に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項5】
前記シリコーン粘着剤が、ジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカであることを特徴とする請求項1に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項6】
前記シリコーン粘着剤が、BIO−PSA(登録商標)7−4302(ダウコーニング社製)から由来したものであることを特徴とする請求項5に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項7】
前記BIO−PSA(登録商標)7−4302が、乾燥後の重量を基準に27ないし33mg/10cmの容量で使用されることを特徴とする請求項6に記載のリバスティグミンパッチ。
【請求項8】
(a)リバスティグミン遊離塩基;PLASTOID(登録商標)B(エボニック社製);DURO−TAK(登録商標)87−235A(ヘンケル社製);及び選択的に溶媒のみを使用して製造される薬物粘着層と、
(b)BIO−PSA(登録商標)7−4302(ダウコーニング社製);及び選択的に溶媒のみを使用して製造される皮膚粘着層と、の二重層を含むリバスティグミン含有パッチ。
【請求項9】
(a)リバスティグミン遊離塩基;PLASTOID(登録商標)B(エボニック社製);DURO−TAK(登録商標)87−2510(ヘンケル社製);及び選択的に溶媒のみを使用して製造される薬物粘着層と、
(b)BIO−PSA(登録商標)7−4302(ダウコーニング社製);及び選択的に溶媒のみを使用して製造される皮膚粘着層と、の二重層を含むリバスティグミン含有パッチ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちいずれか1項に記載のパッチが、窒素充填して包装されることを特徴とするリバスティグミンパッチ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管安定性が向上し、リバスティグミンを有効成分として含むパッチ(patch)に関する。
【0002】
本出願は、2011年5月20日出願の韓国特許出願第10−2011−0048068号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
(S)‐N‐エチル‐3‐[1‐ジメチルアミノ)エチル]‐N‐メチル‐フェニル‐カルバメートであるリバスティグミン(rivastigmine)は、アルツハイマー病の治療に使用され、中枢神経系においてアセチルコリンエステラーゼの抑制に有用である。
【0004】
このようなリバスティグミンは、パッチ剤形で市販されている。パッチ形態の経皮組成物は、英国特許第2,203,040号の実施例2に開示されている。このようなパッチはリバスティグミンを2つの重合体及び可塑剤と混合して粘性組成物を製造した後、該組成物をホイルに適用して製造される。
【0005】
米国特許第6,335,031号は、安定化剤として抗酸化剤を使用し、リバスティグミンまたはその塩を含む経皮投与組成物に関する。上記米国特許によれば、リバスティグミンを含む経皮投与組成物は密閉された保管条件でも酸素と酸化反応して分解されるため、商業的流通に必要な保管期間を確保し難く、それを解決するため、トコフェロール及びそのエステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、及び没食子酸プロピル(propyl gallate)のような抗酸化剤を含むリバスティグミンの経皮投与組成物を開示している。市販中のリバスティグミン経皮投与製品には、トコフェロールが安定化剤として使用される。
【0006】
しかし、トコフェロールは空気や光によって分解され易いため、不活性雰囲気で冷蔵保管しなければならず、液相であるため、商業生産のとき、取扱い及び保管が困難である。また、生体内で抗凝固作用をし、過量投与の際、出血の危険があるため、多くの医薬品許可機関でトコフェロールの使用量及び吸収量を制限している。
【0007】
したがって、上記のような問題点を解消し、安定性の向上したリバスティグミンパッチが必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許第2,203,040号
【特許文献2】米国特許第6,335,031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、安定性が向上したリバスティグミン含有パッチ製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明者らは実施例で後述する多くの実験を実施し、それを通じて次のような結論に至った。
【0011】
第一、薬物含有層を研究した結果、次のような結論を得た。
【0012】
適合性テスト(compatibility test)の結果を参考して主成分との適合性の良い賦形剤を選定し、主成分の濃度による透過度を観察した結果、対照薬と同等な透過速度(例えば、フラックス(flux))を有するための主成分の濃度は、乾燥後の薬物粘着層の総重量を基準に15〜35重量%、望ましくは25〜35重量%であることが分かった。この処方を、人体の皮膚に24時間適用したとき、製剤の付着性が悪くてパッチが貼付部位から滑って移動する現象が生じ、それによって適用皮膚にダークリング(dark ring)の生じる現象が観察された。それを改善するため、主成分及びアクリル系粘着剤と混合しない他の系列の粘着剤で皮膚粘着層を製造し、薬物を含有する薬物層と重ねる二重層処方を開発することにした。
【0013】
第二、皮膚粘着層を研究した結果、次のような結論を得た。
【0014】
リバスティグミンパッチ製剤の二重層処方のうち、シリコーン粘着剤を使用した皮膚粘着層(第2層)は、皮膚と薬物粘着層との間のバリアの役割をし、主成分の透過度を低下させるため、その厚さが薬物の皮膚透過速度に重要な影響を及ぼす。第2層の厚さを変化させて透過度を観察したところ、対照薬と透過率が同等な処方は、乾燥後の重量を基準にBio PSA 7−4202 30mg/10cmまたはBio PSA 7−4302 30mg/10cmを皮膚粘着層として使用した処方であった。2つの処方のうち最も好適な処方を選定するため、粘着剤の粘着力を比べたときに対照薬の粘着力と類似したBio PSA 7−4302 20〜40mg/10cm、望ましくはBio PSA 7−4302 27〜33mg/10cm、さらに望ましくはBio PSA 7−4302約30mg/10cm処方を本発明によるリバスティグミンパッチの望ましい処方として選定した。
【0015】
第三、高分子を研究した結果、次のような結論を得た。
【0016】
リバスティグミンパッチの主成分であるリバスティグミン遊離塩基は室温で液相であって、乾燥後の薬物粘着層処方のうち主成分が30重量%以上を占める場合、増粘性重合体を添加する必要があるため、主成分と適合性が確保されたポリマー(PLASTOID B)を使用して対照薬と同等な透過度を示すポリマーの比率を設定するための研究を行った。そこで、ポリマーの量を乾燥後の薬物粘着層の総重量対比10重量%ないし30重量%に調節してポリマーの比率を設定する実験を行ったところ、ポリマーの含量が多くなるほど透過率が低くなることが分かった。これはポリマー量の増加と共に粘度が高くなり、薬物の拡散を妨害して薬物の放出を妨害するためであると考えられるが、本発明がこのような理論的推測によって限定されることはない。そこで、処方中のポリマーを乾燥後の薬物粘着層の総重量対比20重量%で含ませた処方が、対照薬と最も類似した透過度を示すことを確認した。
【0017】
第四、結論的に製剤学的研究(formulation study)を通じて選定された、本発明に属する多くの処方のうち最も望ましい最終処方は、下記表1のようである。
【0018】
【表1】
【0019】
表1において、溶媒は乾燥工程で除去される。表1におけるそれぞれの含量はすべて乾燥後の重量を意味する。すなわち、Durotak 87−235AとBio PSA 7−4302は製品自体が高分子以外の一定量の溶媒を含んでいるが、このような溶媒を除いた含量値である。
【0020】
選定された最終処方をもってリバスティグミンパッチを製造した後、メンブレイン(membrane)とヒト死体皮膚(human cadaver skin)で72時間対照薬の透過速度(例えば、フラックス)と比較し、同等であることを確認した。
【0021】
第五、包装条件選定試験の結果、次のような結論を得た。
【0022】
リバスティグミンパッチを安定的に保管するための包装条件を選定するため、苛酷安定性試験を行った。包装条件は大気包装と窒素包装とに区分し、苛酷条件でリバスティグミンパッチの安定性を評価した。その結果、窒素を充填して包装する場合、柔軟物質の増加が少ないことを確認した。
【0023】
すなわち、本発明らは多くの研究を通じて、リバスティグミン含有層に含まれる粘着剤と高分子を適切に選定し、それらの含量を特定の比率で調節し、皮膚粘着層の構成成分を適切に選定し、その厚さを調節し、さらに適切な包装方法で本発明によるリバスティグミンパッチを包装することで、様々な問題を内包しているトコフェロールなどの安定化剤を使用しなくても、リバスティグミンの安定性を確保して適切な放出を果たすことができるという驚くべき発明に至った。
【0024】
したがって、本発明は、
(a)リバスティグミン遊離塩基;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体;及び粘着剤を使用して製造される薬物粘着層、及び
(b)シリコーン粘着剤を含む皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチにおいて、
前記薬物粘着層の粘着剤として2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体が使用されることを特徴とするリバスティグミンパッチを提供し、より望ましくは、前記薬物粘着層の粘着剤としてDURO−TAKTM 87−235A(ヘンケル(Henkel)社製)が使用される。
【0025】
より望ましくは、前記薬物粘着層に含まれるブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体はブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのランダム共重合体であり、重量平均分子量が130,000ないし170,000g/molであり、最も望ましくはこのような共重合体としてPLASTOIDTM B(エボニック(Evonik)社製)が使用される。
【0026】
より望ましくは、前記皮膚粘着層のシリコーン粘着剤としてジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカが使用され、最も望ましくはこのようなシリコーン粘着剤としてBIO−PSATM7−4302(ダウコーニング(Dow Corning)社製)が使用される。
【0027】
このようなシリコーン粘着剤は、使用量によってリバスティグミンの放出に多くの影響を及ぼすが、実験の結果、前記BIO−PSATM 7−4302は乾燥後の重量を基準に27ないし33mg/10cmの容量で使用されることが望ましく、乾燥後の重量を基準に約30mg/10cmの用量で塗布されて製造されることが最も望ましかった。
【0028】
本発明は、また、
(a)実質的に、リバスティグミン遊離塩基;PLASTOIDTMB(エボニック社製);及びDURO−TAKTM 87−235A(ヘンケル社製)のみからなる薬物粘着層、及び
(b)実質的に、BIO−PSATM7−4302(ダウコーニング社製)のみからなる皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチを提供する。
【0029】
本発明は、また、
(a)実質的に、リバスティグミン遊離塩基;PLASTOIDTMB(エボニック社製);及びDURO−TAKTM 87−2510(ヘンケル社製)の固形分のみからなる薬物粘着層、及び
(b)実質的に、BIO−PSATM7−4302(ダウコーニング社製)の固形分のみからなる皮膚粘着層の二重層を含むリバスティグミン含有パッチを提供する。
【0030】
ここで「実質的に」とは、言及された成分外の他の成分(特に、トコフェロールのような抗酸化剤)を1重量%以下で含むことを意味し、望ましくは0.5重量%以下、より望ましくは0.1重量%以下、最も望ましくは0.05重量%以下で含むことを意味する。
【0031】
本発明によるリバスティグミン含有パッチにおいて、薬物粘着層は、薬物粘着層の総重量対比リバスティグミン遊離塩基25ないし35重量%;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(望ましくはPLASTOIDTMB)16ないし24重量%;及び2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体(望ましくはDURO−TAKTM87−235A の固形分)45ないし55重量%からなることが望ましく、皮膚粘着層は、乾燥後の重量でジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカ(望ましくはBIO−PSATM 7−4302の固形分)27ないし33mg/cm(より望ましくは30mg/cm)の用量で製造されることが望ましい。
【0032】
また、本発明は、
(a)リバスティグミン遊離塩基;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体(望ましくは、PLASTOIDTMB(エボニック社製));2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体(望ましくは、DURO−TAKTM87−235A(ヘンケル社製))、及び溶媒を、乾燥後の薬物粘着層の総重量対比リバスティグミン遊離塩基25ないし35重量%;ブチルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体16ないし24重量%;及び2‐エチルヘキシルアクリレート58ないし66重量部、メチルアクリレート28ないし36重量部、及びアクリル酸4ないし8重量部のランダム共重合体45ないし55重量%になるように成分を混合し、該混合物で薬物形成層を形成する段階、及び
(b)乾燥後の重量でジメチルシロキサン処理トリメチル化シリカ(望ましくはBIO−PSATM7−4302の固形分)27ないし33mg/cm(より望ましくは30mg/cm)の含量になるように皮膚粘着層を製造する段階を含むリバスティグミン遊離塩基含有パッチの製造方法を提供する。
【0033】
本発明による製造方法において、(b)段階は(a)段階の後に行われても、(a)段階の前に行われても良く、(a)段階と同時に行われることもできる。
【0034】
このように二重層で製造されたパッチの場合、薬物粘着層(薬物含有層)/皮膚粘着層内に存在する他の成分の存在及び混合比によって、主成分の放出に非常に深刻な影響が及ぶため、添加物及び各成分の含量を細密に調節しなければならない。
【0035】
本発明によるリバスティグミンパッチの人体に対する投与用量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態、疾患の程度などによって変わり得る。市販中のリバスティグミンの経皮投与製品は、アルツハイマー型痴呆、パーキンソン病痴呆などの治療に9ないし18mgを1日1回皮膚に適用する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によるリバスティグミンパッチは安定性に優れ、適切な放出パターンを示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】粘着剤の比率を選定するための実験における皮膚透過度測定結果である。
図2】皮膚粘着層の処方を設定するための実験における皮膚透過度測定結果である。
図3】高分子選定研究における皮膚透過度測定結果である。
図4】本発明による最も望ましい処方の、メンブレインを用いた皮膚透過度測定結果である。
図5】本発明による最も望ましい処方の、ヒト死体皮膚を用いた皮膚透過度測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の理解に役立つように実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が下記実施例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界において平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0039】
<実施例1>粘着剤(adhesive)に関する研究
リバスティグミンパッチの主成分であるリバスティグミンベースをパッチ剤として開発するため、好適な粘着剤を選定する実験を行った。
【0040】
粘着剤の選定
リバスティグミンパッチ製造に好適な粘着剤を選定するため、リバスティグミンベースと多種の粘着剤とを混合して外観、混和性、及び適合性を確認した。
【0041】
適合性テストのため、粘着剤の組成中に含まれる高分子の種類、官能基、架橋の有無、組成中の溶媒を考慮して次のような10種類の粘着剤を候補物質として選定した。下記表2に選定された粘着剤の情報を示した。
【0042】
【表2】
【0043】
表2において、EAはエチルアセテートを、IPAは2‐プロパノールを、MeOHはメタノールを、EtOHはエタノールをそれぞれ意味する。
【0044】
粘着剤の候補物質は、アクリル系列またはアクリレート‐ビニルアセテート系列の高分子を有し、また、官能基がないか、ヒドロキシル基またはカルボキシル基の官能基を有する。架橋剤の有無による適合性の差異も重要な要素として評価した。粘着剤による外観と混和性を下記表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示されたように、2週間主成分と粘着剤との混合物の性状を観察した結果、初期に無色又は淡黄色であった粘着剤の場合、無色又は淡黄色から黄色に変わった後、茶色に性状が変わることが観察された。87−202Aで黄色に性状が変わることが観察され、87−2852、87−2516、及び87−2052で茶色に性状が変化することが観察された。このように性状の変化が激しい粘着剤は、共通的に架橋剤を有する粘着剤であることが確認できた。87−4287の場合、無色からやや黄色くなる程度の変化が観察された。主成分と粘着剤との間の混和性を観察した結果、87−4098を除いたすべての粘着剤で主成分と粘着剤との間の混和性が良好であった。
【0047】
上記の実験結果から、リバスティグミンパッチの主成分との混合に好適な粘着剤は3番及び6番の粘着剤である87−2510及び87−235A粘着剤であることが分かった。この2つの粘着剤の柔軟物質の発生量を比べたとき、87−235Aと主成分との混合物がより安定的であった。したがって、本発明によるリバスティグミンパッチの開発に使用する粘着剤として87−235Aを選定し、次の研究を行った。
【0048】
粘着剤の比率選定
次に、リバスティグミンパッチ製剤の処方研究において、プレフォーミュレーション研究過程で選定された87−235A粘着剤を使用して対照薬であるExelonTMと同等な透過度を有する処方を選定しようとした。リバスティグミンベースは室温で液相であって、パッチ剤として開発するとき、液相である主成分が薬物含有層の処方のうち30重量%以上の場合は増粘性重合体を添加する必要があるため、主成分と適合性が確保されたポリマー(PLASTOID B)を添加することにした。そこで、対照薬と同等な透過度を有する主成分の比率を設定するため、主成分とポリマーとの比率を3:2の重量比に固定し、粘着剤の量を調節して、粘着層の比率を設定する実験を行った。プレフォーミュレーション研究の結果を参照し、粘着剤としてはDurotak 87−235A、ポリマーとしてはPLASTOID Bを使用した。主成分と粘着剤との比率を変化させた候補処方は次のようである。ポリマーの比率最適化は、次の研究段階で行った。
【0049】
【表4】
【0050】
上記の処方でパッチを製造して皮膚透過度試験を行った。パッチの製造において主成分は、すべての処方で10cm当りに18mgを含むようにした。皮膚透過度試験条件は以下のようであり、実験結果を図1に示した。
【0051】
【表5】
【0052】
図1に示されたように、主成分の濃度が高くなるほど透過度も高くなる結果が得られた。対照薬であるExelonTMと同等な透過速度(例えば、フラックス)を有するための主成分の濃度は15ないし30重量%であった。追加的な研究は主成分の比率を調節して対照薬と同等な透過度を示す処方を確保する方向で行い、粘着層の付着性とコールドフロー(cold flow)の発生を考慮して粘着剤の変更を考慮する方向で研究を行った。
【0053】
粘着層の付着性及びコールドフローの評価
上記のようにして確保したリバスティグミンパッチ製剤の処方を人体の皮膚に24時間適用して粘着層の付着性及びコールドフローを評価したが、製剤の付着性が悪くてパッチが粘着部位から滑って移動し、それによってダークリングが生じる現象が観察された。これは、リバスティグミンパッチの主成分であるリバスティグミンベースが室温で液相の物質であり、液相の主成分を粘着剤と混合する場合、粘着剤の粘着力を減少させるため、パッチが皮膚の粘着部位から滑って移動してダークリングが発生すると考えられる。それを改善するため、主成分及びアクリル系粘着剤と混合しない他の系列の粘着剤で皮膚粘着層を製造し、薬物を含有する薬物層と重ねる二重層処方を開発して上記の問題を解決しようとした。
【0054】
<実施例2>皮膚粘着層の研究
皮膚粘着層の粘着剤の選定
上記の薬物含有層の研究で選定された薬物粘着層の処方を使用して皮膚粘着層の研究を行った。リバスティグミンパッチ製剤の皮膚粘着層は薬物粘着層と分離した層を維持しなければならないため、薬物粘着層の粘着剤として使用されるアクリル系粘着剤と混合されてはならない。また、リバスティグミンパッチの主成分が皮膚粘着層との混和性が良い場合、薬物粘着層の薬物が濃度勾配によって皮膚粘着層に移動して皮膚粘着層の粘着力に影響を与える恐れがあるため、主成分と皮膚粘着層の粘着剤とは混合され易くてはならない。上記の条件を満たす粘着剤を選定するため、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びポリイソブチレン系粘着剤の主成分との混和性を評価した。粘着剤と主成分との混和性を観察した結果、ゴム系粘着剤及びポリイソブチレン系粘着剤は主成分との混和性が良好であって、シリコーン粘着剤は主成分のと混和性が悪くて層が分離する現象が生じた。乾燥後の厚さが50μmになるように各粘着剤をフィルムに塗布した後、人体の皮膚に24時間付着してコールドフロー発生を評価した。コールドフローによるダークリングの発生程度を0から5まで数値化して平均を求めて評価し、10人を対象にして上膊部位にパッチを付着して実験を行った。評価項目はパッチの粘着状態、ダークリングの発生程度、粘着力の強度を評価し、評価基準は以下のようである。粘着剤の粘着力評価項目の得点基準を下記表6に示した。
【0055】
【表6】
【0056】
粘着剤の混和性及び粘着力によるダークリング発生程度を下記表7に示した。
【0057】
【表7】
【0058】
評価の結果、シリコーン系粘着剤では対照薬と比べて同等以下の程度のダークリングが観察され、ゴム系粘着剤及びポリイソブチレン系粘着剤では既存のアクリル系粘着剤と同等以上のダークリングが発生することを分かった。
【0059】
上記のような実験結果に基づいて、ゴム系粘着剤及びポリイソブチレン系粘着剤はアクリル系粘着剤及びリバスティグミンパッチの主成分との混和性を有するため、皮膚粘着層として使用できず、コールドフローを最小限に発生させるためにアクリル系粘着剤及び主成分と混合されないシリコーン系粘着剤を皮膚粘着層として使用しなければならないことが分かった。
【0060】
皮膚粘着層の処方設定
リバスティグミンパッチ製剤の二重層処方のうち、シリコーン粘着剤を使用した皮膚粘着層(第2層)は、皮膚と薬物粘着層との間のバリアの役割をすることで、主成分の透過度を低下させる。したがって、その厚さが皮膚透過度に重要な影響を及ぼすと予想された。そこで、単位面積当りの粘着剤量を変化させて二重層を製造し、それぞれの皮膚透過度を観察した。薬物粘着層としては薬物含有層(第1層)の研究で使用されたI100526−2処方を使用し、3種類のシリコーン系粘着剤を多様な厚さに塗布した皮膚粘着層を重ねて対照薬と同等な皮膚透過度を確保する研究を行った。
【0061】
【表8】
【0062】
皮膚粘着層の厚さは単位面積当りのシリコーン粘着剤の重量をもって調節し、10cmに30mgの重量を有するとき皮膚粘着層の厚さは30umであった。また、10cmで60mgの重量を有するとき、皮膚粘着層の厚さは60umであることを確認した。処方の48時間の皮膚透過度の結果は図2に示した。
【0063】
図2に示されたように、すべての種類の処方で皮膚粘着層が厚くなるほど皮膚と薬物との間のバリアが厚くなり、薬物の透過率が低くなることが分かった。対照薬と透過率が同等な処方は、Bio PSA 7−4202 30mg/10cm及びBio PSA 7−4302 30mg/10cmを皮膚粘着層として使用した処方であった。
【0064】
<実施例3>高分子の研究
リバスティグミンパッチを製造するとき、主成分であるリバスティグミンベースが液相の性状であるため、パッチに塗布されたとき、一定厚さを維持できずに流れる現象が生じた。このような現象が生じれば、塗布厚さが不安定になり、乾燥後の含量を一定に維持し難くなる。そこで、混合物の塗布に必要な粘度を確保するため、増粘剤及び塗膜形成要素(film former)として適用されるポリマーを処方中に含むことにした。リバスティグミンパッチの製造に好適なポリマーを選定するため、リバスティグミンベースと多種のポリマーとの適合性を評価し、PLASTOID Bが外観、混和性、及び適合性の面で適することを上記の研究で確認した。選定されたPLASTOID Bを使用し、処方において好適なポリマーの比率を設定する実験を行った。
【0065】
リバスティグミンパッチ製剤の処方を研究するため、プレフォーミュレーション研究過程で選定されたポリマーを使用して対照薬と同等な透過度を有する処方を選定しようとした。リバスティグミンパッチの主成分であるリバスティグミンベースは室温で液相であって、処方中の主成分が30重量%以上の場合、増粘性重合体を添加する必要があるため、主成分と適合性が確保されたポリマー(PLASTOID B)を添加することにした。対照薬と同等な透過度を有するポリマーの比率を設定するため、粘着剤比率設定の研究結果に従って薬物含有層(第1層)の主成分と粘着剤との比率を3:5に固定し、ポリマーの量を10重量%ないし30重量%に調節してポリマーの比率を設定する実験を行った。このとき、皮膚粘着層(第2層)の処方は、既に選定されたBio PSA 7−4302 30mg/10cm(乾燥後の重量基準)を使用した。ポリマーの比率を変化させた候補処方は、以下のようである。
【0066】
【表9】
【0067】
上記の処方でパッチを製造して皮膚透過度の試験を行った。すべての処方において10cm当りの主成分が18mgになるようにしてパッチを製造し、ポリマーの比率による含量の差異は、含量を確認してから補正して透過速度(例えば、フラックス)試験結果に反映した。ポリマーの比率が30重量%のとき、混合液の粘度が高くなって塗布時の性状が悪かったため、30重量%より高い比率の処方は製造しなかった。48時間皮膚透過度を観察した結果を図3に示した。
【0068】
図3に示されたように、ポリマーの含量が高くなるほど透過率が低くなることが分かった。これは、ポリマー含量の増加と共に粘度が高くなり、薬物の拡散を妨害して薬物の放出を妨害するためであると考えられる。したがって、処方のうちポリマーを20%含む処方(I100614−2)が、対照薬と最も同等な透過度を示すことが確認できた。
【0069】
<実施例4>最終処方の選定
リバスティグミンパッチの製剤学的研究の結果、上記の実施例を通じて選定された、本発明によるリバスティグミン含有パッチを製造するための最も望ましい処方は以下の表のようである。
【0070】
【表10】
【0071】
選定された最終処方をもってリバスティグミンパッチを製造し、72時間、メンブレイン及びヒト死体皮膚で本発明によるパッチと対照薬との透過速度(例えば、フラックス)を比較観察した結果を図4(メンブレイン)及び5(ヒト死体皮膚)に示した。
【0072】
図4及び図5に示されたように、製剤学的研究を通じて選定された本発明のリバスティグミンパッチ処方がメンブレイン及びヒト死体皮膚で対照薬と同等な透過性を示すことが確認できた。
【0073】
<実施例5>包装条件の選定試験
リバスティグミンパッチの安定的な保管に必要な包装条件を選定するため、苛酷安定性試験を行った。苛酷試験に使用された包装材は、アルミニウムパウチ包装及びポリアクリロニトリル材質を含むサシェ(sachet)包装を使用した。
【0074】
具体的に、大気中の酸素が製剤の安定性に及ぼす影響を評価するため、包装条件を大気中包装と窒素包装とに区分して、苛酷条件における本発明によるリバスティグミンパッチの安定性を評価した。その結果を表11に示した。
【0075】
【表11】
【0076】
上記の結果に示されたように、窒素包装したとき、リバスティグミンパッチの柔軟物質の増加が最も小さく、この結果からリバスティグミンパッチの包装に適した条件が確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5