特許第6017557号(P6017557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017557
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】流体供給システムおよびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/34 20060101AFI20161020BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20161020BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20161020BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20161020BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   G01N30/34 A
   G01N30/26 M
   G01N30/32 F
   G01N30/32 Z
   G01N30/86 T
   G01N30/02 Z
   G01N30/86 Q
【請求項の数】29
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-521959(P2014-521959)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公表番号】特表2014-521941(P2014-521941A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2011062956
(87)【国際公開番号】WO2013013717
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 温道
(72)【発明者】
【氏名】ヴィット,クラオス
(72)【発明者】
【氏名】コークヘト,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトル,ハンス−ゲオルク
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−104989(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/037530(WO,A1)
【文献】 欧州特許第01174179(EP,B1)
【文献】 特表2004−508550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の流体を所定の割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システム(150)であって、前記流体供給システム(150)は、
各流体を提供する流体源(100〜103)にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ライン(104〜107)と、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素(115)を備えており、選択される溶媒供給ライン(104〜107)から流体を所定の割合で取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニット(110)と、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)の前記入口との間に挿置されており、前記ポンピングユニット(110)の流体吸入相の過程で前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結することにより溶媒組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブ(108)と、
前記流体の後続セクションを長手方向に混合して、流れ方向にその連続性を変えるように設計されている長手方向混合ユニット(152)と、
を備える流体供給システム(150)。
【請求項2】
2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システム(150)であって、前記流体供給システム(150)は、
各流体を提供する流体源(100〜103)にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ライン(104〜107)と、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素(115)を備えており、選択される溶媒供給ライン(104〜107)から流体を所定の割合で取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニット(110)と、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)の前記入口との間に挿置されており、前記ポンピングユニット(110)の流体吸入相の過程で前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結することにより溶媒組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブ(108)と、
化学組成、比重または粘度のうちの少なくとも1つが異なる流体の後続セクションを混合するようになされており、前記溶媒供給ライン(104〜107)の数に前記プロポーショニングバルブ(108)が提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニット(152)と、
を備える流体供給システム(150)。
【請求項3】
2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システム(150)であって、前記流体供給システム(150)は、
各流体を提供する流体源(100〜103)にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ライン(104〜107)と、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素(115)を備えており、選択される溶媒供給ライン(104〜107)から流体を所定の割合で取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニット(110)と、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)の前記入口との間に挿置されており、前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブ(108)と、
前記プロポーショニングバルブ(108)の出口または前記プロポーショニングバルブ(108)の前記出口から下流の1もしくは複数の地点で供給される前記流体を内部流体流遅延特性の異なる複数の流動経路に分割するようになされているとともに、1もしくは複数の再合流地点で前記流動経路を結合することによって前記流体を長手方向に混合するようになされている混合ユニット(152)と、
を備える流体供給システム(150)。
【請求項4】
前記異なる内部流体流遅延特性は、異なる内部流動経路の容量によって提供される、請求項3に記載の流体供給システム(150)。
【請求項5】
前記異なる内部流体流遅延特性は異なる内部流動経路の流動抵抗によって提供される、請求項3または請求項4に記載の流体供給システム(150)。
【請求項6】
前記混合ユニット(152)は、前記プロポーショニングバルブ(108)の下流かつ前記ポンピングユニット(110)の上流に配置されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項7】
前記混合ユニット(152)は、前記流体の後続セクションにわたり密度の変動を少なくとも部分的に平衡化するようになされている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項8】
前記プロポーショニングバルブ(108)の前記出口の下流の流動経路は、その比重の差によって生じる前記流体の分配の変動を防ぐように構成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項9】
前記プロポーショニングバルブ(108)の前記出口の下流の流動経路は、その比重の差によって生じる前記流体の後続セクション内の前記流体の分配の変動を防ぐように構成されている一方で、前記混合ユニット(152)は前記流体の後続セクションの密度の変動を少なくとも部分的に平衡化するようになされている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項10】
前記混合ユニット(152)は100μL以下の内部流体収容容量を有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項11】
前記混合ユニット(152)は、結び目付き管(800)を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項12】
前記混合ユニット(152)は、それぞれ管腔内の流体の流動抵抗にそれぞれ寄与する1以上の混合構造物(700,702,704,706)を有する内管腔を備える、またはそれからなる、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項13】
前記1以上の混合構造物は、櫛状構造物、脈状構造物、多腔管、フォームインサート、1以上のノズル、渦巻、1以上のピラー、方形の断面を有するサイドボリューム(700,702)、容量値の異なる方形の断面を有する複数のサイドボリューム(700,702)、前記管腔から異なる方向に沿って延びている複数のサイドボリューム(700,702,704)、直角とは異なる角度の多角形の断面を有するサイドボリューム(704)、および前記管腔のジグザグ部(706)からなる群のうちの少なくとも1つを備える、請求項12に記載の流体供給システム(150)。
【請求項14】
前記混合ユニット(600)は、
前記流体を入口流として受け入れるように構成されている入口(610)、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口(650)、および前記入口(610)と前記出口(620)との間に連結されている複数の流路(630)と、
前記各流路(630)が前記入口流から部分的な流れを受け入れるように、前記入口流を前記複数の流路(630)に分配する分流器(620)と、
前記複数の流路(630)からの前記部分的な流れを前記出口流に結合する合流器(640)とを備えており、
各流路(630)は、実質的に前記流路の流体力学的抵抗を表す流体力学的抵抗を有する第1流動セクション(660)を備え、
1以上の前記流路(630)はそれぞれが前記各流路(630)の前記第1流動セクション(660)と直列に連結されている第2流動セクション(670)を備え、
各第2流動セクション(670)は、前記流体が流れる容量を備え、前記各部分的な流れが前記各第2流動セクション(670)の前記容量を通すのに必要な時間の分だけ前記第1流動セクション(660)から前記第2合流器(640)への流体の伝達を遅らせ、
前記流路(630)への前記部分的な流れの分配は、前記流体の粘度とは実質的に独立している、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項15】
前記混合ユニット(600)は、
前記流体を入口流として受け入れるように構成されている入口(610)、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口(650)、および前記入口(610)と前記出口(650)との間に連結されている複数の流路(630)と、
各流路(630)が前記入口流からの部分的な流れを受け入れるように、前記入口流を前記複数の流路(630)に分配する分流器(620)と、
前記複数の流路(630)からの前記部分的な流れを前記出口流に結合する合流器(640)とを備え、
各流動経路は、前記流動経路の後続のサブセクションで、重力の方向に対して違った角度で前記流体を押し流す流れ方向変更部を備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項16】
前記混合ユニット(152)が、化学組成、比重、または粘度のうちの少なくとも1つが異なる前記流体の後続セクションを、これらの差が当該セクションの空間分布に影響を与える程度まで混合するようになされていること、
前記往復運動要素(115)の吸入移動中に、前記ポンピングユニット(110)の前記入口を介して前記流体が引き込まれるとき、または前記ポンピングユニット(110)の前記入口を介して前記流体が引き込まれる間隔の間に、前記プロポーショニングバルブ(108)が異なる溶媒供給ライン(104〜107)間の切替えを行うこと、
前記プロポーショニングバルブ(108)が複数の切替えバルブを備え、前記切替えバルブが前記ポンピングユニット(110)の前記往復運動要素(115)の吸入移動中に順次起動されること、
前記プロポーショニングバルブ(108)が少なくとも1つのマルチポート選択バルブを備えること、
前記プロポーショニングバルブ(108)が、マルチプレクサ手法に対応する前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されるものを選択するように構成されていること、
前記往復運動要素(115)の吸入移動の所定の部分が、前記ポンピングユニット(110)に引き込まれる異なる溶媒に割り当てられており、容量パケット、タイムスライスおよび前記往復運動要素(115)の位置のうちの1つを計量することによって調合が行われること、
前記ポンピングユニット(110)が、前記第1往復運動要素(115)と連動して、前記ポンピングユニット(110)の前記入口で供給される流体を押しのけて、前記ポンピングユニット(110)の前記出口でさらに加圧された前記流体を供給するように構成されている別の往復運動要素を備えること、
前記流体供給システム(150)が、前記ポンピングユニット(110)の下流に配列されて、別の往復運動要素によって、前記ポンピングユニット(110)の前記出口および別のポンピングユニットの入口で供給される前記流体を押しのけて、前記別のポンピングユニットの出口でさらに加圧された前記流体を供給するように構成されている別のポンピングユニットを備えること、
前記流体供給システム(150)が、前記ポンピングユニット(110)に流体力学的に並列に配列されて、前記ポンピングユニット(110)と合わせて交互に別の往復運動要素によって、前記プロポーショニングバルブ(108)から供給または吸入される前記流体を押しのけるように構成されている別のポンピングユニットを備えること、
とのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)。
【請求項17】
記流体間の密度の差から生じる前記混合物中の潜在的に不完全な混合を分析するようになされているとともに、前記流体供給システム(150)の動作を、前記不完全な混合を少なくとも部分的に抑制するように、改変することができる制御ユニット(400)、をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に流体供給システム(150)。
【請求項18】
前記制御ユニット(400)は、前記往復運動要素(115)のストロークの調整、前記プロポーショニングバルブ(108)によって提供される流体パケットのサイズの調整、前記ポンピングユニット(110)による前記流体の吸入速度の調整、前記プロポーショニングバルブ(108)および前記ポンピングユニット(110)のうちの少なくとも1つを制御する制御システム(400)へのディザの付加、前記ポンピングユニット(110)のポンピングチャンバ(117)の内容物の急速な押しのけ、溶媒の組成の調整、および混合を促進するまたは沈降を防ぐ添加剤の前記流体への添加からなる群のうちの少なくとも1つによって前記不完全な混合を少なくとも部分的に抑制するようになされている、請求項17に記載の流体供給システム(150)。
【請求項19】
移動相の試料流体の成分を分離する試料分離システム(350)であって、前記試料分離システム(350)は、
前記流体を前記移動相として前記試料分離システム(350)に推進するようになされている、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)と、
前記移動相の前記試料流体の成分を分離するようになされている分離ユニット(308)と、
を備える試料分離システム(350)。
【請求項20】
前記試料流体を前記移動相に導入するようになされている試料導入部(309)と、
前記試料流体の分離成分を検出するようになされている検出器(310)と、
前記試料流体の分離成分を捕集するようになされている捕集ユニット(312)と、
前記試料分離システム(350)から受信するデータを処理するようになされているデータ処理装置と、
前記移動相を脱気する脱気装置と、
のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項19に記載の試料分離システム(350)。
【請求項21】
記構成デバイス(500)は、前記混合物中の前記流体の不完全な混合を示す情報を判定するようになされている判定ユニット(502)と、
前記流体供給システム(150)の構成を変更することにより、前記混合物中の前記流体の混合を促進するようになされている混合促進ユニット(504)と、
さらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流体供給システム(150)
【請求項22】
前記判定ユニットは、
(1)前記不完全に混合された流体混合物を使用して行われる試料分離に関するアーティファクトを分析すること、
(2)異なる密度および/もしくは異なる粘度を有する流体間の層形成を示す情報を判定すること、
(3)流路のいずれかの中に、前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)との間の前記流動経路の一部を形成する前記流路内の前記流体の移動もしくは伝達の平均線速度とは異なる移送速度で移動もしくは伝達する少なくとも1つの流体セクションを特定する一方で、前記流体セクションが前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)との間の前記流動経路の内容物の平均とは密度もしくは粘度のうちの1つが異なること、
(4)前記混合物中の前記流体の不完全な混合が発生する前記流動経路の位置を突き止めること、
(5)前記プロポーショニングバルブ(108)と前記ポンピングユニット(110)との間の導管、および前記ポンピングユニット(110)のポンピングチャンバからなる群から選択される前記流体供給ユニットの流動経路の位置で、前記混合物中の前記流体の不完全な混合を示す情報を判定すること、または
(6)(1)から(5)の組み合わせ、
から選択される少なくとも1つによって判定を行うようになされており、
前記混合促進ユニットは、
(a)前記流体供給システム(150)の構成を変更することにより、試料分離性能を促進すること、
(b)部分的な流路のいずれかの前記流体セクションもしくはその少なくとも一部を、前記流路の平均に対応する移送速度で強制的に移動もしくは伝達すること、
(c)前記流体供給システム(150)の構成を変更することにより、前記突き止められた位置で前記流体の混合を促進すること、
(d)前記流体の後続セクションを混合するための前記流体供給システム(150)の混合ユニット(152)を制御することにより、前記混合物中で異なる密度もしくは粘度を有する前記流体の混合を促進すること、
(e)前記流体供給システム(150)の動作モードを定義するパラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータ値の変更、前記流体供給システム(150)の少なくとも1つの流体の変更、前記流体供給システム(150)の少なくとも1つのコンポーネントの変更、および流体供給システム(150)の少なくとも1つの幾何学的条件の変更からなる群のうちの少なくとも1つによって、前記流体供給システム(150)の構成を変更すること、
(f)前記流体のうち密度が最も大きい流体がポンピングチャンバ(117)の底部セクション(506)に位置しているときに、前記往復運動要素(115)が前記ポンピングチャンバ(117)内部の下側反転地点に位置付けられるように前記ポンピングユニット(110)を制御すること、または
(g)(a)から(f)の組み合わせ、
から選択される少なくとも1つによって混合の促進を行うようになされている、請求項21に記載の流体供給システム(150)
【請求項23】
2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法であって、
複数の溶媒供給ライン(104〜107)を、各流体を提供する流体源(100〜103)に流体接続するステップと、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給する往復運動要素(115)を備え、選択される溶媒供給ライン(104〜107)から流体を取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するポンピングユニット(110)を制御するステップと、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)との間に挿置されて、前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブ(108)を使用して、溶媒の組成を調節するステップと、
流れ方向でその連続性を変えるように前記流体の後続セクションを長手方向に混合するステップと、
を含む方法。
【請求項24】
2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法であって、
複数の溶媒供給ライン(104〜107)を、各流体を提供する流体源(100〜103)に流体接続するステップと、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給する往復運動要素(115)を備え、選択された溶媒供給ライン(104〜107)から流体を取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するポンピングユニット(110)を制御するステップと、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)の前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブ(108)を使用して、溶媒の組成を調節するステップと、
溶媒供給ライン(104〜107)の数に前記プロポーショニングバルブ(108)が提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニット(152)によって、前記流体の後続セクションを混合するステップと、
を含む方法。
【請求項25】
2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法であって、
複数の溶媒供給ライン(104〜107)を、各流体を提供する流体源(100〜103)に流体接続するステップと、
ポンピングユニット(110)の入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニット(110)の出口で加圧流体を供給する往復運動要素(115)を備え、選択される溶媒供給ライン(104〜107)から流体を取り込んで、その出口で前記流体の加圧混合物を供給するポンピングユニット(110)を制御するステップと、
前記溶媒供給ライン(104〜107)と前記ポンピングユニット(110)の前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ライン(104〜107)のうちの選択されたものを前記ポンピングユニット(110)の前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブ(108)を使用して、溶媒の組成を調節するステップと、
前記プロポーショニングバルブ(108)の出口で供給される前記流体を内部流体路容量の異なる複数の流体路に分割し、前記流体路の終わりで前記流体を結合することによって、前記流体を混合することによって、前記流体を混合するステップと、
を含む方法。
【請求項26】
記流体間の密度の差から生じる前記混合物中の前記流体の潜在的に不完全な混合を分析して、前記流体供給システム(150)の動作を、前記不完全な混合を少なくとも部分的に抑制するように、または沈降を少なくとも低減するように改変するステップをさらに含む請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
記混合物中の前記流体の不完全な混合またはさらには沈降を示す情報を判定するステップと、
前記流体供給システム(150)の構成を変更することによって、前記混合物中の前記流体の混合を促進するステップとをさらに含む請求項23から請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項23から請求項27のいずれか1項に記載の方法を制御もしくは実行するソフトウェアプログラムであって、コンピュータなどのデータ処理システム(400,500)で実行される、ソフトウェアプログラム。
【請求項29】
請求項28に記載の前記ソフトウェアプログラムを記憶しているデータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給システム、構成デバイス、流体供給システムの動作方法、およびソフトウェアプログラムまたは製品に関する。本発明は特に、高速液体クロマトグラフィアプリケーションの試料分離システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィにおいて、流体試料および溶離液(液体移動相)は導管および試料の成分の分離を行うカラムに、ポンプで注入される。カラムは、流体分析種の異なる成分を分離できる材料(充填剤)を備えている。このような充填剤、いわゆる固定相またはシリカゲルを含んでもよい吸着剤は、導管を通して他の要素(制御ユニット、試料および/もしくは緩衝剤を含む容器など)に接続されたカラム管に充填される。移動相の組成は、寄与率を変えて異なる流体成分から移動相を構成することによって調整することができる。
【0003】
特許文献1は、流体を入口管から出口管に進行していく混合装置を開示している。液体のすべてのセグメントが多数の制限路を経由して出口路に少しずつ移送される。制限路間の距離が、貯蔵路としての入口チャンバから出口まで進行しながら、流れのあらゆるセグメントの分散パターンを決定する。出口路が互いに近くに置かれるほど、各位置での出口コレクタへの浸透性が高くなる。異なる流動遅延で流体の部分的な流れの遅延が生じ、部分的な流れに異なる流量が生じると、所定の流れ分配作用が生じるので、分散パターンが決定される。
【0004】
特許文献2は、溶媒を所定の比率で混合するために液体クロマトグラフィシステムで使用可能な連結されたプロポーショニングバルブおよびミキサを開示しており、中央チャンバに回転自在に配設されている磁気駆動式攪拌器を含む。複数の入口ラインが溶媒を間隔を置いた位置でチャンバに進入させる。チャンバは出口ラインにも連通しており、気泡が攪拌器に閉じ込められるのを防止するとともに、システムを通る流れを遮断する手段が設けられている。選択的に制御されるバルブ部材が入口ラインを通る溶媒の流れを制御するので、予め選択された溶媒混合比が得られる。
【0005】
特許文献3は、設定濃度およびさらに時間可変濃度または混合比で混合される2種類の液体からなる溶離液を提供するシステムおよび方法を開示している。2つの液体のそれぞれを低脈動下でオンオフバルブに吸引することによって移送するステップと、オンオフバルブの動作を周期的に制御するステップと、バルブ動作の各周期中に混合領域に供給される各液体の量を制御するステップと、上記ステップによって混合領域に形成される溶離液を実質的に吸引することによって、同じ低脈動下でそれを排出または供給するステップとを含む。
【0006】
特許文献4は、十分に制御された比率および流量で液体を混合するポンピングシステムを開示している。ポンピングシステムは、ポンプの上流に配置されている液体混合器を備える。液体は容器から取り込まれ、オンオフソレノイドバルブが交互に開くことによって混合チャンバに所定の割合で周期的に導入される。システムは、バルブの開閉時の速度の不連続性の影響を避けるために、副室にベローズなどの減衰手段を使用して入力で制御される。ポンプの吐出しは入力とともに排出端で制御する。システムは液体クロマトグラフィ装置のために使用される。
【0007】
特許文献5は、低圧混合ポンプシステムにおいて液体組成の誤差を低減する方法を開示している。混合ポンプシステムの吸込口に所望の混合流体の各組成の切替え間隔を表すパケットが提供される。各パケットについて、パケット内の組成の少なくとも1つに関連する切替え時間が調節される。調節される切替え時間は、混合ポンプシステムの吸込み反応の望ましくない振動数特性に従って特に選択される時間オフセットに基づく。このように調節されたパケットが寄与する容量の平均は、混合ポンプシステムの流出流における所望の成分割合を達成する組成容量に等しい。切替え時間を調節することで、混合ポンプシステムの流出流における組成の誤差を低減または排除することができる。
【0008】
特許文献6は、集合的にフォトダイオードのアレイである個別の光センサを備えるフローセルのアレイを含むクロマトグラフモニタを開示している。フォトダイオードからの出力は多重送信される。情報を失わないように、フォトダイオードはそれぞれ、1つの入口がマルチプレクサを通して吸光度モニタの一部を形成する信号処理回路に接続されていない時間中、エネルギを蓄える複数の回路の対応するものを通してマルチプレクサへの複数の入力の別々のものに接続されている。
【0009】
特許文献7は、液体の混合チャンバを開示しており、液体は、微細孔フィルタによって2つの区画に分割されている特に液体クロマトグラフ用の混合チャンバに、ある期間にわたって交互に順次計測された量で供給される。入口パイプがこれら区画のうちの一方の区画に接続され、出口パイプが他方に接続されている。2つの区画はそれぞれ、接続されているパイプの開口からフィルタプレートに向かって円錐形に広がっている。フィルタプレートは、好ましくは、細孔径が2〜50μmの範囲のスチールまたはガラスフリットからなる。
【0010】
特許文献8は、それぞれ貫通穴を有しており、混合部を形成するように貫通穴が3つの金属板材料を貫通することができるような位置に、この順序で1組としてまとめられている3つの金属板材料を開示している。それぞれ混合部を有する複数の組は、貫通穴のすべてが板材料のそれぞれの組を貫通することができるような位置で一体化されている。それぞれの組の混合部は互いに平行に接続されている。
【0011】
特許文献9は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)ユニットが溶離液ラインに溶離液ストリームを生成する溶離液源を有することを開示している。溶離液ラインに導入ユニットが接続され、導入ユニットにピラードユニット(pillared unit)が接続されている。ピラードユニットには検出器が接続されている。混合チャンバユニットを形成する共通混合チャンバ内に混合チャンバおよび粒子フィルタが配置されて、直接および連続してストリーミングに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1,174,179号明細書
【特許文献2】米国特許第4,496,245号明細書
【特許文献3】米国特許第4,155,683号明細書
【特許文献4】米国特許第6,116,869号明細書
【特許文献5】国際出願公開第2010/030720号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0224403号明細書
【特許文献7】米国特許第4,475,821号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/042340号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第10 2006 058 026号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第309596 A1号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1577012 A1号明細書
【特許文献12】米国特許第4,982,597 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
複数の流体を合成して1つの溶媒組成を形成する従来のクロマトグラフィシステムでは、溶媒組成に、クロマトグラフィ性能に悪影響を及ぼすアーティファクトが発生するおそれがある。
【0014】
また、高度に均質な加圧流体組成を供給するニーズがある。このような本発明の目的は、本願の独立請求項に記載された事項によって解決される。さらなる実施形態を従属請求項に示す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面の実施形態によると、2以上の流体を所定の割合または制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源(特に、各槽またはパイプライン)にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口に供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの入口と間に挿置されており、前記ポンピングユニットの流体吸入相の過程で前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することによって、溶媒組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、(特に、密度および/または粘度の差が役割を果たす種類の)流体の後続セクションを長手方向に混合して、その連続を流れ方向に改変するようになされている長手方向混合ユニット(そのため、長手方向とは導管の流体パケットのシーケンスの流れ方向をいう)とを備える。
【0016】
本発明の第2の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続している複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されており、前記ポンピングユニットの流体吸入相の過程で前記溶媒供給ラインのうちの選択したものと前記ポンピングユニットの前記入口とを順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、化学組成、比重または粘度のうちの少なくとも1つが異なる流体の後続セクション(流れ方向で後に続く流体パケット、流体の層、もしくは流動経路のブラインド穴から流れ出る流体)を混合するようになされており、前記溶媒供給ラインの数に前記プロポーショニングバルブが提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニット(または、混合ユニットは、前記プロポーショニングバルブが前記溶媒供給ラインのそれぞれをいったんポンピングユニットに順次流体連結する連続的な時間間隔内に、前記溶媒供給ラインのそれぞれが提供する部分的な流体容量の合計以下の内部流体収容容量を有してもよい)とを備える。この場合、比重は得られた混合物の重力を基準にする。流体の一定のセクションは、生成される混合物の平均(mean)または平均(average)密度よりも軽くまたは重くてもよく、浮上または沈降を生じさせる。
【0017】
本発明の第3の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することによって溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、前記プロポーショニングバルブの出口または前記プロポーショニングバルブの出口の下流の1もしくは複数の地点で供給される流体を内部流体流遅延の異なる複数の経路に分割するようになされるとともに、1もしくは複数の再合流地点(つまり、分割された流体が再合流する1以上の地点で、その地点は分割地点の下流に配置してもよい)で流動経路を結合することによって、流体を長手方向に混合する(つまり、個々の流体部分が流動経路のそれぞれを通過する遅延時間が異なることを考慮すると、個々の流体部分は異なる時点で結合位置に到達し、そのため長手方向の混合が生じる)ようになされている混合ユニットとを備える。
【0018】
本発明の第4の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択される前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されており、前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、流体間の比重(または密度)の差から生じる混合物内の流体の潜在的に不完全な混合を分析するとともに、不完全な混合から生じる変動を少なくとも部分的に抑制するために、流体供給システムの動作を改変するようになされている制御ユニットとを備える。
【0019】
さらに別の実施形態によると、移動相で試料流体(特に、試料液体)の成分を分離する試料分離システムが提供され、前記試料分離システムは上記述べた特徴を有するとともに、流体を移動相として前記試料分離システムに推進するようになされている流体供給システムと、移動相で試料流体の成分を分離するようになされている分離ユニット、好ましくはクロマトグラフィカラムとを備える。
【0020】
本発明の第5の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システム(またはこのような流体供給システムを有する上記の種類の試料分離システム)を構成するようになされている構成デバイスが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされている前記ポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブとを備える、構成デバイスにおいて、前記構成デバイスは、混合物内の流体の不完全な混合を示す情報を判定するようになされている判定ユニットと、前記流体供給システムの構成を変更することによって、混合物内の流体の混合を促進するようになされている混合促進ユニットとを備える。
【0021】
本発明の第1の側面の別の実施形態によると、比重の異なる2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、その連続を流れ方向に改変するように流体の後続セクションを長手方向に混合するステップとを含む。
【0022】
本発明の第2の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、前記溶媒供給ラインの数に前記プロポーショニングバルブが提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニットにより流体の後続セクションを混合するステップとを含む。
【0023】
本発明の第3の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法において、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、前記プロポーショニングバルブの出口または前記プロポーショニングバルブの前記出口の下流の1もしくは複数の地点で供給される流体を内部流体流遅延の異なる複数の流体経路に分割して、分割地点の下流の1もしくは複数の地点で流体路を結合することにより流体を流動経路に沿って長手方向に混合することによって流体を混合するステップとを含む。
【0024】
本発明の第4の側面の別の実施形態によると、流体供給システムにおいて2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから比重の異なる流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、流体間の密度の差から生じる混合物内の流体の潜在的に不完全な混合を分析するステップと、前記流体供給システムの動作を不完全な混合を少なくとも部分的に抑制するようにまたは沈降もしくは浮上を少なくとも減少するように改変するステップとを含む。
【0025】
本発明の第5の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムを構成する方法が提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブとを備える、前記方法において、前記方法は、混合物内の流体部分の不完全な混合またはさらに沈降もしくは浮上を示す情報を判定するステップと、前記流体供給システムの構成を変更することによって、混合物内の流体の混合を促進するステップとを含む。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によると、コンピュータ(例えば、ポータブルコンピュータ、ポータブルデータプロセッサまたは専用コントローラ)などのデータ処理システムで実行したときに、上記述べた特徴を有する方法のいずれかを制御または実行するために、好ましくはデータキャリア上に記憶されているソフトウェアプログラムまたは製品が提供される。
【0027】
本発明の実施形態は、あらゆる種類のデータキャリア上に記憶され、またはあらゆる種類のデータキャリアによって提供することができるとともに、あらゆる適したデータ処理ユニットで、またはそれによって実行してもよい1以上の適したソフトウェアプログラムによって、一部もしくは全体を具体化またはサポートすることができる。ソフトウェアプログラムまたはルーチンは、流体供給制御の状況で適用できることが好ましい。本発明の実施形態による流体供給制御手法は、コンピュータプログラムにより、つまりソフトウェアにより、または1以上の特別な電子最適化回路を使用して、つまりハードウェアもしくはハードウェアを制御するときに不揮発性メモリに記憶されているプログラムの形態で、つまり埋め込み型ソフトウェアの形態で、もしくはハイブリッド形態で、つまり上記コンポーネントのいずれかの組み合わせにより実施または支援することができる。換言すると、ソフトウェア、ファームウェア(埋め込み型ソフトウェア)および/またはハードウェア(例えば、ASIC、特定用途向け集積回路により)でのあらゆる実施態様が可能である。
【0028】
本出願において、「流体」という用語は特にあらゆる液体、あらゆる気体、あらゆる液体と気体との混合物を意味してもよく、任意で固体粒子を含んでもよい。特に、液体クロマトグラフィの分析種は必ずしも液体ではなく、溶解固体または溶解気体とすることができる。
【0029】
本出願において、「混合ユニット」という用語は、特に、流体混合物の均質性を高めるために、流体部分間の相互作用を促進することのできる流体部材を意味してもよい。混合は、例えば、流体パケットのシーケンスの順序を少なくとも部分的に変更し、および/または流体セクションがより均質な分布になるように流体の異なる部分を相互作用させるように流体に運動、特に乱流を発生することによるなど、様々な方法で行ってもよい。
【0030】
本出願において、「長手方向混合ユニット」という用語は、特に、異なる流体セクションの相互作用の促進、または流動経路に沿った方向に、つまりその垂直方向だけではなく流体導管の管腔に沿った方向に一定の流体セクションの順序の変更を行うことのできる混合ユニットを意味してもよい。そのため、このような長手方向混合ユニットの混合性能は、流れ方向が好適な方向を形成する異方性であってもよい。
【0031】
本出願において、「内部流体収容容量」という用語は、特に、混合する流体を満たすことのできる各混合ユニット内部の中空空間の容量を意味してもよい。ある実施形態では、1バッチ内で混合する流体パケット(このようなバッチは作用する溶媒供給ラインそれぞれからの1つの流体パケットを含む)は、内部流体収容容量以上の容量を有してもよい。換言すると、ミキサの容量は1バッチの流体容量以下である。例えば、プロポーショニングバルブは、その切替え論理により、個々の溶媒供給ラインからの流体パケットの個々の容量を画定してもよい。プロポーショニングバルブにより画定される1バッチ内のこれら個々の容量の合計は、混合ユニットの内部流体収容容量より大きく(または等しく)てもよい。
【0032】
本出願において、「内部経路容量」という用語は、特に、各流体を満たすことのできる各流動経路内の中空空間(管腔など)の容量を意味してもよい。
【0033】
本出願において、「密度の差」または「比重の差」という用語は、特に、異なる溶媒容器から出る流体の個々のセクションが異なる物理的密度を有していてもよいことを意味してもよい。例えば、水とアセトニトリル(ACN)または他の有機溶媒が、その密度に関して大幅に異なっていると、混合流体の個々のセクションが重力もしくは浮力の影響が異なるために意図せず分離することがある。
【0034】
本出願において、「沈降」という用語は、特に、密度の差(もしくは比重の差)および/または粘度などの他の部分的なパラメータに関する差のために、流体の異なるセクションが意図せず分離して、ある分画が別のものの下に沈降することがあることを意味してもよい。同様に、ある分画が流体中で浮上することがある。
【0035】
2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給することに関し、極端な比重の液体部分がフローストリームから逸れて、いくらか後の時点で流通されるかもしれないセクションに静止する場合、非常に乱れていると考えられる。このような挙動は組成の偏差をもたらし、正味の影響はゼロであるが、送出される流体の予測不可能な容量にわたり発生する。この乱れの容量は複数のポンプストロークにわたる、またはさらにシステム全体の容量もしくは分離ピークの保持容量にも及ぶことがある。そのため自然なシステムの分散がこの乱れを抑制する可能性は全くない。
【0036】
本出願において、「内部流体流遅延特性」という用語は、特に、流動経路を形成する異なる流路において、流体がこの流路を通過するときに経験する遅延が、異なる流動経路では異なるように、少なくとも1つの流れ関連のパラメータが異なっていることがあることを意味してもよい。例えば、各経路の経路長または内容量が異なる経路間で異なっている場合、より長い導管またはより大きい容量に沿って流れなければならない流体は、短いまたは低容量の経路に沿って流れる別の流体よりも大きく遅延することがある。また、各流動経路を流れるときの流体に作用するフローインピーダンス(これは流動経路導管の形状、表面仕上げもしくは温度に依存してもよい)が遅延に対する影響を及ぼすことがある。異なる流体部分の異なる遅延を調整することにより、後の部分が前の部分に追いつくときに適切な混合を促進してもよい。
【0037】
本出願において、「流体構成システムの構成を変更することによって混合を促進する」という用語は、特に、流体供給システムを、不適切もしくは不十分な混合または問題のある沈降もしくは浮上がそれぞれ少なくとも部分的に補償または低減されて、様々な流体がより効率的に混合または再分配されるように操作されることを意味してもよい。例えば、システム構成は、流動経路に沿った密度の変動の影響の分析に応答して変更してもよい。このように構成の変更(例えば、混合ユニットの動作の)は混合を改善するように行われてもよい。
【0038】
本発明の実施形態は、特にクロマトグラフィデバイスなどの流体分離システムのための従来の流体供給システムの欠陥の詳細分析に基づいている。従来、このようなシステムで発生するおそれのあるアーティファクトは当業者によって誤って解釈されてきており、本発明者らはこのようなアーティファクトの原因を正しく理解することに成功した。異なる溶媒組成として連続した流体パケットを流動経路に導入して試料分離手順の溶媒として使用する状況において、流体カラムで不適切に混合された部分は、実験で組成の乱れもしくは不規則または一定の溶媒組成のピークとして検出されてきた。本発明者らは、このようなアーティファクトは、一定の事例では、ポンピングユニットの1ストロークの容量に割り当てられるタイムスライスと比べて非常に長い繰り返し時間で周期的または準周期的に発生することも観察した。例えば、20〜60ストロークもの大きな繰り返し間隔のアーティファクトは、今まで当業者には理解されてこなかった。本発明者らは、このようなアーティファクトの原因が密度および/または粘度が大きく変わる混合物の流体組成の不適切な混合であることを体系的に発見した。本発明者らは、例えば、HPLCアプリケーションによく使用される水とアセトニトリル(ACN)とを混合するとき、流動経路の相対的に高い密度と相対的に低い密度のセクションの層形成効果または成層化を突き止めた。さらに、本発明者らは、異なる流体組成の粘度の値が異なると、当該組成の混合不良になるおそれがあり、ひいては上記説明したアーティファクトを刺激または拡大する結果になることも突き止めた。
【0039】
アーティファクトの無作為または準周期的パターンを招く個々の流体組成の望ましくない層状の分布には多くの影響が起因するであろうが、本発明者らは、本発明の第1の側面の実施形態により、流動経路の長手方向での流体の混合を促進することでアーティファクトの強い抑制を達成できることも発見した。このような長手方向の混合は、例えば一定の密度および粘度を有する一定の流体パケットの部分を別の密度および/または粘度を有する別の流体パケットの部分を追いつかせて、その密度の異なる個々の流体セクションは容量が小さく、互いに近づけて分配されるように個々の流体パケットの部分を再分配するように行ってもよいので、軸方向の混合は成層化の抑制の点で効率的になることができる。
【0040】
本発明の第2の側面の実施形態によると、内部容量が非常に小さい混合ユニット(特に、混合ユニットの流体収容容量がポンピングユニットの1ストローク中に押しのけられる流体容量以下であるもの)を使用すると、システムの混合物の均質性を非常に効率的に改善できることが発見された。混合ユニットの内部容量を小さくすることにより、経路内での滞留流体との混合物の望ましくない形成を防ぎ、例えば、グラジエント分析の速度を改善してもよい。この場合の長手方向の混合は、主に複数の吸入ストロークにわたり混合することではなく、発生すると1ポンプサイクル(ストローク)の継続時間よりも非常に長い特性間隔で散発的または準周期的な乱れを生じる可能性のある個々の流体部分の沈降または浮上を防止することが意図される。
【0041】
本発明の第3の側面の実施形態によると、流体パケットを各流体パケットについて設計遷移時間値をもつ流体力学的に平行な流路に分割し、各流路を通過した後に再び流体パケットを結合することは、アーティファクトの抑制に対し非常に有利な影響をもつことも発見された。
【0042】
本発明の第4の側面の実施形態によると、流体混合物の不適切に混合されたセクションを特定し、機械関連のパラメータを変更して、当該変更がアーティファクトを減少したかどうかをモニタリングするシーケンスを、アーティファクト形成の体系的な抑制のために使用できることが発見された。例えば、流体供給システムの異なるコンポーネントを接続している導管の長さ、向きおよび傾きなどのパラメータも、アーティファクトに対して著しい影響をもつことがあり、供給される混合物の均質性を改善するために変更してもよい。
【0043】
本発明の第5の側面の実施形態によると、校正または構成手順中に、流体供給システムは密度の変動により生じる混合アーティファクトを分析することも可能である。このような手順中、成層化効果などの発生が検出されることがあり、混合を改善するための対策を取ることにより流体供給の効率および正確さを改善することができる。
【0044】
以下に、流体供給システムの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は試料分離システム、構成デバイス、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0045】
ある実施形態において、異なる内部流体流遅延特性は異なる内部流動経路容量によって提供される。流体が異なる流動経路容量に分割される場合、容量を通過する遅延時間は異なるので、流体が分割経路の端部で再統合される場合、個々のセクションは空間的に分割されて分配されるので、混合の改善が生じる。
【0046】
ある実施形態において、異なる内部流体流遅延特性は異なる内部流動経路の流動抵抗によって提供される。このような状況では、流動抵抗は流動経路を通過する流体部分の異なる遅延時間を調整するために設計パラメータとして使用される。例えば、異なる流動経路の容量は同じであるが、流動経路が流体導管の直径および長さに関して異なっている場合、長くて狭い流動経路が異なる流動抵抗値を生じることになるため、様々な流動経路を通る流体の通過/搬送時間は異なることになる。
【0047】
ある実施形態において、混合ユニットはプロポーショニングバルブの下流かつポンピングユニットの上流に配置されている。このような種類の混合構造物をポンピングユニットの低圧側に配列すると、混合物の均質性を促進するのに特に効果的なことが判明した。不適切な混合の原因は特にプロポーショニングバルブ付近に発生し、ポンピングユニットの動作はすでに適切に混合された流体組成で行うことが好ましく、混合ユニットをプロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間に配置することが特に適切であることが分かっている。
【0048】
ある実施形態において、混合ユニットは、沈降/浮上を防止しながら、流体の後続セクションにわたる密度勾配を少なくとも部分的に平衡化するようになされている。したがって、混合ユニットは、流動経路に沿って異なる流体パケットの比重に関する差が、混合ユニットの性能により少なくとも部分的に補償されるように制御してもよく、またはそのように構成してもよい。換言すると、密度変動の平衡を、混合ユニットの静的設計パラメータまたは動的制御パラメータとして使用してもよい。
【0049】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブの出口の下流にある流動経路は、比重の差によって生じる流体の分配の改変を防ぐように構成されている。より具体的には、プロポーショニングバルブの出口の下流にある流動経路は、比重の差によって生じる流体の後続セクション内の流体の分配の改変を防ぐように構成してもよく、混合ユニットは流体の後続セクションの密度変動を少なくとも部分的に平衡化するようになされていてもよい。そのため、この流動経路は特に異なる密度値から生じる層形成効果を防ぐように構成してもよい。
【0050】
ある実施形態において、混合ユニットは約100μL、特に約50μL以下、さらに特定すると約10μL以下の内部流体収容容量を有する。このように小さい内部流体収容容量により、非常に少数のパケットの適切な混合を起こしてもよい。
【0051】
ある実施形態において、混合ユニットは、プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の流動経路に配列されている結び目付き管、特に結び目付き吸入管を備える、またはそれからなる。撓み管に結び目を作ると、流れを意図的に乱し、効果的な混合を起こす単純であるが非常に効率的な手段であることが判明している。アーティファクトの抑制のために管に結び目を作ることは、プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の導管で特に効果的であるだろう。
【0052】
ある実施形態において、混合ユニットは、それぞれが管腔の流体の流動抵抗にそれぞれ寄与する1以上の混合構造物(意図的な乱流構造物として)を有する内部管腔(例えば、円形の断面を有する)を有する管を備える、またはそれからなる。例えば、円筒形の管腔に、流れを乱して混合性能を改善する1以上の側方延長部を装備してもよい。例えば、当該混合構造物は櫛状構造物、脈状構造物、多腔管、フォームインサート、1以上のノズル、渦巻、1以上のピラー、方形の断面を有するサイドボリューム、容量値が異なる方形の断面を有する複数のサイドボリューム、管腔から異なる方向に沿って延びている複数のサイドボリューム、直角とは異なる角度をもつ多角形の断面を有するサイドボリューム、管腔のジグザグ部分等を備えていてもよい。当然、他の種類の混合構造物も同様に実施してもよい。
【0053】
ある実施形態において、混合ユニットは、流体を入口流として受け入れるように構成されている入口と、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口と、入口と出口とを連結する複数の流路と、入口流を複数の流路に分配して、各流路が入口流からの部分的な流れを受け入れるようにする分流器と、複数の流路からの部分的な流れを出口流に結合する合流器とを備えており、各流路は流路の著しい流体力学的抵抗を実質的に表す流体力学的抵抗を有する第1流動セクションを備え、流路の1以上はそれぞれ各流路の第1流動セクションと直列に連結されている第2流動セクションを備え、各第2流動セクションは流体が流れる容量を備えて、各部分的な流れが各第2流動セクションの容量を通るのに必要な時間分だけ第1流動セクションから合流器までの流体の伝達を遅延させ、流路への部分的な流れの分配は流体の粘度と実質的に独立している。当該実施形態における部分的な流れの分配は流体の粘度と実質的に独立しているため、ミキサは特に流体の粘度が経時的に変化するアプリケーションにおいて改善された特性を示す。HPLCでは、粘度が変化する典型的なアプリケーションはいわゆるグラジエントモードであり、複数の異なる溶媒の混合比を経時的に変更することによって、流体の組成が経時的に変化する。ある実施例として、移動相を提供するために、2つの溶媒の水およびアセトニトリル(ACN、式:CHCN)を混合してもよいだろう。グラジエントモードでは、水とアセトニトリルの混合比は、例えば100パーセントの水から始めて100パーセントのアセトニトリルにするなど、経時的に変化させる(例、連続的または段階的に)。混合流体(ここでは、移動相)の粘度は実際の混合比に依存するため、グラジエントモード中の時間に対する関数になる。流体の粘度に対して部分的な流れの分配が独立しているため、ミキサが提供する流体の混合も流体の粘度に対して実質的に独立することになるため、ミキサは前述のHPLCにおけるグラジエントモードなど流体の粘度が経時的に変化するアプリケーションに特に適し、有利になる。また、このミキサの実施形態での溶離液の組成の変化は、溶媒の特別な特性とはほぼ独立して、予測可能かつ再現可能に起こる。
【0054】
ある実施形態において、混合ユニットは、流体を入口流として受け入れるように構成されている入口と、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口と、入口と出口とを連結している複数の流路と、各流路が入口流から部分的な流れを受け入れるように入口流を複数の流路に分配する分流器と、複数の流路からの部分的な流れを出口流に結合する合流器とを備えており、各流動経路は、流体を後続の流動経路サブセクションで重力の方向に対して可変する角度で押し流す流れ方向変更部を備える。このような流れ方向変更部は混合を効率的に促進することが判明している。
【0055】
ある実施形態において、往復運動要素の吸入移動中、流体がポンピングユニットの入口を介して引き込まれるとき、プロポーショニングバルブは異なる溶媒供給ライン間の切替えを行う。そのため、流体の混合は吸入プロセス中に切替えによって行うことができる。流体がポンピングユニットの入口を介して引き込まれる間隔の間に、プロポーショニングバルブが異なる溶媒供給ラインの切替えを行うことも可能である。そのため、切替えは流体が静止している間の時間間隔にも行ってもよい。
【0056】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブは複数の切替えバルブを有しており、切替えバルブはポンピングユニットの往復運動要素の吸入移動中に順次起動させる。切替えバルブのそれぞれを切替えのために互いに回転自在な2つの切替え部材、つまりステータおよびロータから形成してもよい。
【0057】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブは溶媒供給ラインのうちのマルチプレクサ手法に対応して選択されるものを選択するように構成されている。この状況において、「マルチプレクサ」という用語は、ある時点において、複数の切替えバルブのうちの1つが常にポンピングユニットに連結されることを意味してもよい。マルチプレクサは複数の流入流体流のうちの1つを選択して、選択される流入流体流を単一の流出流体流に送る。2つのバルブを同じ溶媒の2つの源と並列に接続して、バルブを同時にまたは重複して切替えることが特に可能である。このことは、2つのバルブを通る流れが、2つのバルブを同時に開かせることが適切であるような望ましい特性を有することがあるため有利であろう。
【0058】
ある実施形態において、往復運動要素の吸入移動の所定の部分は、ポンピングユニットに引き込まれる異なる溶媒に割り当てられ、容量パケット、タイムスライスおよび往復運動要素の位置のうちの1つを計量することによって調合を行う。この状況において、容量パケットとは、所定の容量を有する流体部分と定義してもよい。「タイムスライス」という用語は、往復運動要素のデューティサイクル内の単一相を画定し、したがって往復運動要素が所定の運動パターンであれば、所定の吸入容量部分に換算する一定の所定の時間間隔を意味してもよい。吸入プロセスの始まりのポンピングチャンバ内の往復運動要素の基準位置(例えば、ポンピングチャンバの反転地点)に対する位置も、計量する流体量の尺度として使用してもよい。
【0059】
ある実施形態において、制御ユニットは、往復運動要素のストロークを調整し、プロポーショニングバルブが提供する流体パケットのサイズを調整し、ポンピングユニットによる流体の吸入速度を調整し、ポンピングユニットが流体を吸入する順序を調整し、プロポーショニングバルブおよびポンピングユニットのうちの少なくとも1つを制御するための制御システムにディザを付加し、ポンピングユニットのポンピングチャンバの内容物を流体システムの他の部分に急速に移送し、溶媒の組成を調整し、および/または流体に添加剤を添加して混合を促進することによって、不完全な混合による沈降/浮上を少なくとも部分的に抑制するようになされている。他の実施形態では、制御ユニットは流体の混合を改善するようにシステムの他のパラメータを変更してもよい。
【0060】
ある実施形態において、ポンピングユニットは、往復運動要素と連動して、ポンピングユニットの入口で供給される流体を押しのけて、ポンピングユニットの出口でさらに加圧された流体を供給するようになされている別の往復運動要素を備える。この実施形態において、複数の往復運動要素、例えば2つのピストンは1つの同じポンピングチャンバで往復運動してもよい。複数の往復運動要素はすべて単一の往復運動要素のみの場合について上記説明したように制御してもよい。
【0061】
ある実施形態において、流体供給システムは、ポンピングユニットの下流に配列されて、別の往復運動要素によって、ポンピングユニットの出口および別のポンピングユニットの入口で供給される流体を押しのけて、別のポンピングユニットの出口でさらに加圧された流体を供給するようになされている別のポンピングユニットを備える。この実施形態において、個々の往復運動要素およびチャンバを備える複数のポンピングユニットを設けてもよい。例えば、複数のポンピングユニットは直列に流体力学的に連結していてもよい。複数のポンピングユニットはすべて単一のポンピングユニットのみの場合について上記説明したように制御してもよい。
【0062】
ある実施形態において、往復運動要素はピストン、膜を備えており、または圧力チャンバとして改造されていてもよい。しかし、往復運動要素がポンピングチャンバ内で往復運動することが可能で、チャンバ内で流体に利用できる容量の往復運動変化を生じさせる限り、往復運動要素の他の実施形態も同様に可能である。
【0063】
以下に、構成デバイスの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は試料分離システム、流体供給システム、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0064】
ある実施形態において、判定ユニットは、不完全に混合された流体混合物を使用して実施される試料分離に関して、アーティファクトを分析するようになされている。そのため、混合促進ユニットは、流体供給システムの構成を変更することによって、試料分離性能を促進するようになされてもよい。このような実施形態において、溶媒組成の不適切な混合の望ましくない影響は、クロマトグラフィ分離性能に対するその影響により間接的に検出されてもよい。この情報をさらに、混合を改善するために混合促進ユニットにより特別に処理してもよい。
【0065】
ある実施形態において、判定ユニットは、異なる密度および/または異なる粘度を有する流体間の層形成を示す情報を判定するようになされている。例えば、流体部分間の作用力(重力など)および/または相互作用を考慮することにより、層形成をモデル化することが可能である。
【0066】
ある実施形態において、判定ユニットは、溶媒供給ラインとポンピングユニットとの間の流動経路で詰まっているまたは逆流している混合物の少なくとも1つの滞留流体セクションを特定するようになされている。そのため、混合促進ユニットは流動経路において滞留流体セクションを前方に押しやるようになされていてもよい。滞留流体セクション、つまり流体供給システムの導管または流体部材に通常もしくは所望よりも大幅に長く留まっていて、例えばそれぞれ特に大きいもしくは小さい密度値のために、流体部分の特定のセクションに閉じ込められているおそれのある流体セクションは、アーティファクトの原因として本発明者らによって突き止められた。流体供給システムの流動経路または動作を、滞留流体セクションで満たされるポケットの発生を防ぐことのできるように構成することで、適切に混合された流体の提供を一層改善することができる。
【0067】
ある実施形態において、判定ユニットは、混合物内で流体の不完全な混合が発生する流動経路の位置を突き止めるようになされている。そのため、混合促進ユニットは、流体供給システムの構成を変更することによって(特に、検出された1以上の位置で)、突き止められた位置での流体の混合を促進するようになされていてもよい。これは、例えば、不適切に混合された流体の部分の特定を可能にする一定の位置に配列されている1以上のセンサによって行うことができる。例えば、様々な流体が適切に混合されていない位置の推定が可能な流動経路に沿って一定の位置で蛍光測定または同様な他の測定を行ってもよい。
【0068】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体の後続セクションを混合することによって、混合物内の流体の混合を促進するために、流体供給システムの混合ユニットを制御するようになされている。例えば、混合ユニットは、流体成分の混合物の特性に対する影響を有する1以上の調整可能なパラメータを有してもよい。
【0069】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体供給システムの動作モードを定義するパラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータ値を変更し、流体供給システムの少なくとも1つの流体を変更し、流体供給システムの少なくとも1つのコンポーネントを変更し、および/または流体供給システムの少なくとも1つの幾何学的条件を変更することによって、流体供給システムの構成を変更するようになされている。当該パラメータは所望の混合特性に対応して変更してもよい。
【0070】
ある実施形態において、判定ユニットは、流体供給ユニットの特定の流動経路位置で混合物内の流体の不完全な混合を示す情報を判定するようになされている。本発明者はプロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の導管、およびポンピングユニットのポンピングチャンバが、流体の当該成層化または望ましくない再分配を特に促しやすい流動経路の位置であることを突き止めた。プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の接続キャピラリは、アーティファクトが発生するおそれのある流動経路のクリティカルセクションであると特に突き止められている。ポンピングチャンバに関わる容量も流体の個々の部分による層形成を生じやすい。
【0071】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体供給導管が供給する流体間で密度の最も大きい流体がポンピングチャンバの底部セクションに位置するとき、往復運動要素がポンピングチャンバ内の下側反転地点に位置付けられるようにポンピングユニットを制御するようになされている。密度が最も大きい流体がポンピングチャンバの底部セクションにあるとき、ピストンをその最も下の位置に制御することは、流体がアーティファクトを生じるのを効果的に防止するだろう。
【0072】
以下に、試料分離システムの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は流体供給システム、構成デバイス、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0073】
本発明の実施形態によると、試料分離システムはさらに、試料を移動相に投入するようになされている試料導入部、試料の分離した成分を検出するようになされている検出器、試料の分離した成分を捕集するようになされている捕集ユニット、液体分離システムから受信するデータを処理するようになされているデータ処理ユニット、移動相を脱気する脱気装置、試料の成分を分離するためのクロマトグラフィカラムなどの分離ユニットのうちの少なくとも1つを備える。
【0074】
本発明の実施形態は、Agilent 1290 Series Infinity システム、Agilent 1200 Series Rapid Resolution LCシステム、またはAgilent 1100 HPLCシリーズ(すべて本出願人のアジレント・テクノロジー-www.agilent.com-が提供し、参照によりこれに組み込むものとする)など、ごく普通に入手できるHPLCシステムに基づいて具現化してもよいだろう。
【0075】
HPLCシステムのある実施形態は、ポンプ作動チャンバ内の液体を液体の圧縮率が顕著になる高圧に圧縮して、前記液体を高圧で送出するためにポンプ作動チャンバで往復運動するためのピストンを有するポンピング装置を備える。
【0076】
HPLCシステムのある実施形態は、直列または並列のいずれかで連結されている2つのポンピング装置を備える。特許文献10で開示されるように、直列では、第1ポンピング装置の出口が第2ポンピング装置の入口に連結されて、第2ポンピング装置の出口がポンプの出口を提供する。並列では、第1ポンピング装置の入口が第2ポンピング装置の入口に連結されて、第1ポンピングシステムの出口が第2ポンピング装置の出口に連結されているので、ポンプの出口を提供する。いずれの場合も、第1ポンピング装置の液体出口は、第2ポンピング装置の液体出口に対して、好ましくは本質的に180度相シフトしているので、1つのポンピング装置だけがシステムに供給すると同時に、他方は液体を吸入することになり(例、供給から)、そのため出力で連続的な流れを提供することができる。しかし、少なくとも例えば一定の遷移相中は、2つのポンピング装置が並列に動作してもよいので、ポンピング装置間のポンピングサイクルの(より)滑らかな遷移を提供することは明らかである。相シフトは、液体の圧縮率から生じる液体の流れの脈動を補償するために変化してもよいだろう。約120度の相シフトを有する3つのピストンポンプを使用することも周知である。
【0077】
分離デバイスは、固定相を提供するクロマトグラフィカラムを備えることが好ましい。カラムはガラス管もしくはスチール管(例、直径が10μmから10nmで、長さが1cmから1m)またはマイクロ流体カラム(例えば特許文献11で開示されるもの、もしくは本出願人のアジレント・テクノロジーが提供するAgilent 1200 Series HPLC−Chip/MS System、例えば、http://www.chem.agilent.com/Scripts/PDS.asp?IPage=38308を参照)であってもよいだろう。個々の成分は固定相で別々に保持され、異なる速度で溶離液とともにカラムを伝達しているとき互いに分離する。カラムの末端で、分離されたほぼ1つずつを溶離する。全体のクロマトグラフィプロセス中またはその一定の相中、溶離液は一連の分画で捕集されてもよいだろう。カラムクロマトグラフィの固定相または吸着剤は通常固体材料である。カラムクロマトグラフィの最も一般的な固定相は、表面改質シリカゲルであり、その次はシリカゲルおよびアルミナである。以前はセルロース粉末がよく使われていた。イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ(RP)、順相クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ等が周知である。固定相は通常微粉またはゲルである一方、粒子は部分的もしくは全体的に、広い表面積を提供するメソ多孔性または微孔性にすることができる。また、高速液体クロマトグラフィ分離のために、連続多孔性固定相体を備えるモノリスカラムも存在する。
【0078】
移動相(または溶離液)は、純粋な溶媒または異なる溶媒の混合物のいずれかとすることができる。これは、例えば、問題の成分の保持を調整するため、および/または移動相の量を最小限にしてクロマトグラフィを実行するために選択することができる。移動相は好ましくは、異なる成分を効果的に分離および/または単離できるように選択することができる。移動相は、好ましくは水で希釈した例えばメタノールまたはアセトニトリルなどの有機溶媒を含んでもよいだろう。グラジエント動作のために、水および有機溶媒は個別の供給ラインまたは槽から送出してもよく、そこからグラジエントポンプがプログラミングされたブレンドをシステムに送出する。一般的に使用される他の溶媒は、イソプロパノール、THF、ヘキサン、エタノール、もしくは他の有機もしくは無機液体成分、および/またはそのあらゆる組み合わせもしくはこれらと前述の溶媒とのあらゆる組み合わせ、もしくは水を含めて前述の溶媒のいずれかを含む予め混合された混合物としてもよい。
【0079】
試料液体は、あらゆる種類のプロセス液、果汁などの天然試料、血漿などの体液を含んでもよいだろう、または発酵ブロスからなどの反応の結果としてもよい。
【0080】
流体は好ましくは液体であるが、気体および/もしくは超臨界流体(例えば特許文献12で開示される、例えば超臨界流体クロマトグラフィ―SFC―で使用されるもの)であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0081】
移動相の圧力は2〜200MPa(20〜2000バール)、特に10〜150MPa(100〜1500バール)、さらに特定すると50〜120MPa(500〜1200バール)の範囲としてもよいだろう。
【0082】
本発明の実施形態は1以上の適したソフトウェアプログラムによって部分的もしくは全体的に具現化またはサポートすることができ、前記ソフトウェアプログラムはあらゆる種類のデータキャリア上に記憶されまたはそれによって提供することができるとともに、あらゆる適したデータ処理ユニットでもしくはそれによって実行してもよいだろう。ソフトウェアプログラムまたはルーチンは制御ユニットに、もしくはそれによって適用することができることが好ましい。
【0083】
本発明の実施形態の他の目的および付随する利点の多くは、添付の図面に関連して以下の実施形態のより詳細な説明を参照すると容易に認識され、よりよく理解できるであろう。実質的もしくは機能的に等しいまたは類似の特徴は、同じ参照記号で参照する。図面の図は模式的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】本発明の実施形態による流体供給システムを示す図である。
図2図1の流体供給システムを用いて注入される流体パケットのシーケンスを模式的に図示しており、流体パケットの順序を変更してもよいことを示している。
図3】本発明の実施形態によるクロマトグラフィ試料分離システムを示す図である。
図4】本発明の別の実施形態による流体供給システムを示す図である。
図5】本発明の実施形態による付属の構成デバイスとともに流体供給システムを示す図である。
図6】流体パケットのセクションを複数の流動経路に分割することができ、混合するためにそれを再統合することのできる本発明の実施形態による混合ユニットを示す図である。
図7】管状流動経路に沿って配置されている様々な混合促進構造物を備える中空の円筒形導管を有する本発明のある実施形態による混合ユニットを模式的に示す図である。
図8】結び目付き中空プラスチック管によって形成されている本発明の実施形態による混合ユニットを示す図である。
図9】著しいアーティファクトを示す従来の流体供給システムによって得られる溶媒組成の時間依存度を示すグラフである。
図10図9に関係する従来の流体供給システムを示す図である。
図11】本発明の実施形態による流体供給システムを示す図である。
図12図11の流体供給システムで得られる、基本的にアーティファクトのない流体組成の時間依存度を示すグラフである。
図13】U字状の下垂管における沈降影響を示す図である。
図14】本発明の実施形態による非常に小さな内部流体収容容量を有する混合ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下の実施形態において、パケット状に調合直後に長手方向混合を伴う沈降などの密度の影響を処理する低圧混合技術が提供される。
【0086】
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムでは、通常、費用効率の高い実施態様は、吸入相中に低圧で溶媒調合をした後に、ポンプで高圧を生じさせることに基づいている。
【0087】
関連した経済的な利点のために、4チャンネルプロポーショニングバルブが使用されることが多く、これはいわゆる「クォータナリーシステム(quaternary system)」の特徴的な部分である。クォータナリーシステムは4つまでの異なる溶媒の構成成分にわたるそのグラジエント能力のために安価で柔軟性があるが、性能の点ではなおバイナリーポンピングの性能に劣る。
【0088】
当該従来のシステムの欠点の一つがグラジエント遅延に関するものであるが、他にはグラジエント精度に関するものである。一般にポンプが生成する混合物の組成安定性と定義されるグラジエント精度は、ポンプの下流に混合容量を追加して改善することができるが、これはグラジエント遅延に関する欠点を大幅に増幅する。
【0089】
溶媒混合物の組成の規則的および不規則的な変動は、プロポーショニングバルブの下流、より具体的には4チャンネルプロポーショニングバルブ(さらに一般にマルチチャンネルプロポーショニングバルブもしくはマルチチャンネルグラジエントバルブ、MCGVという)の下流にあるシステムの部分に、溶媒層形成または成層化を許す条件によって生じる可能性があることが発見された。さらに、ポンプから下流で少し混合を追加してもあまり役立たない(液体クロマトグラフィの分野の当業者には予想外である)が、これらの変動はポンプの上流に配置されている混合容量の量を制限することで実質的に低減することができることが発見された。
【0090】
実験室での現実の測定から、著しい組成の乱れはしばしば長期にわたるストローク(ゆうに50ストロークのセット)に及ぶことが分かっている。さらに当該乱れは規則的パターン(安定した振動数)で現れることができる。そのため、システムには、システムの液体容量全体の搬送時間よりも長く履歴の追跡を維持できる要素があると考えられている。例えば、システムの容量が約1mLであるのに、これらの乱れはかなり繰り返してかけ離れた2.5mLを示すことがある。当該アーティファクトは長期間理解されていなかった。
【0091】
本発明者らは、非常に長い一連の複雑な試験で、この影響は使用する溶媒の種類に関係することを発見した。密度が大幅に異なる液体を混合するとき、前述の組成乱れを表すパターンはより顕著である。さらに、このパターンのストローク容量設定への強い依存を観察することができる。
【0092】
このような低圧調合法では、吸入ストロークの終わりに、実際に入口バルブ(主シリンダの底部)に配置されている液体部分は水またはアセトニトリルのいずれかであるかもしれない。
【0093】
アセトニトリルが主送出ストロークサイクル中にポンプシリンダの入口部分を満たす液体である場合、ポンプシリンダの内容物とまだ完全に混合されていないアセトニトリルはポンプヘッドの液体混合物中に浮上するおそれがある。今度はこの浮上液体プラグが、やがてポンプチャンバの最上部の1つであるピストンシールの凹みに蓄積するおそれがある。
【0094】
浮上液体の蓄積量が十分になり、流れているストリームがその少なくとも一部を結集する可能性がでてくる場合、予期しない、未制御の望ましくないより多くの有機組成のプラグがシステムに移動する。
【0095】
マルチチャンネルグラジエントバルブからポンピングユニットの入口バルブまで接続している入口管および液体の密度により分離する可能性のある流動経路のあらゆる部分で、同じ影響が発生するおそれがある。例えば水はこの管の最下点で沈降する可能性がある。しばしば、入口管に軽く触れる(その他相対的に落ち着いているより密度が高い溶媒のプラグを乱す)だけで、有機成分の痕跡の沈下を引き起こす可能性がある。
【0096】
この発見のゆえに、本発明者らは対応するアーティファクトを抑制する対策を提案する。
【0097】
1つの対策は、パケット状に調合した溶媒プラグを集中的に混合して(容量をあまり多く無駄せずに)、適切な結果を得ることに関する。
【0098】
別の対策は、滞留溶媒(浮上もしくは沈降)が蓄積し、最終的に(散発的事象)フローストリームに逆流する容量を最小限にし、または防止することに関する。均質なフラッシングをサポートするために特別なインサートまたは幾何学的配列を追加することができる。
【0099】
図1は、液体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている液体供給システムを示す。液体供給システムは4つの槽100,101,102,103を備えており、槽はそれぞれ各溶媒A,B,C,Dを収容している。槽100〜103のそれぞれは、各液体供給ライン104,105,106,107を介してプロポーショニングバルブ108に流体接続されている。プロポーショニングバルブ108は4本の液体供給ライン104〜107のうちの選択されるものを供給ライン109に接続して、異なる液体供給ライン間を切替えるようになされている。供給ライン109はポンピングユニット110の入口に接続されている。そのため、溶媒の計量はポンピングユニット110の低圧側で行われる。
【0100】
図1に示す実施例では、ポンピングユニット110は第2ピストンポンプと直列に流体接続されている第1ピストンポンプ111を備える。第1ピストンポンプ111には入口バルブ113および出口バルブ114が装備されている。第1ピストン115は第1モータ116によって駆動され、第1ポンプチャンバ117の内部で往復運動する。第2ピストン118は第2モータ119によって駆動され、第2ポンプチャンバ120の内部で往復運動する。あるいは、両ピストン115,118は、例えば差動ドライブまたはギアなどの共通の駆動システムによって作動させることができる。
【0101】
第1ピストンポンプ111の吸入相中、入口バルブ113は開き、出口バルブ114は閉じて、第1ピストン115は下向きの方向に移動する。したがって、供給ライン109を介して供給される溶媒は第1ポンプチャンバ117に引き込まれる。第1ピストン115の下向きストローク中、プロポーショニングバルブ108は異なる液体供給ライン間を切替えてもよく、そのため異なる溶媒間を切替えてもよい。このように、第1ピストン115の下向きストローク中、異なる溶媒が次々に第1ポンプチャンバ117に引き込まれてもよい。代替構成では、各液体供給ライン104〜107ごとに個別の入口バルブがあってもよく、これはさらにプロポーショニングバルブ108と同様に、およびプロポーショニングバルブ108の代わりに制御される。
【0102】
プロポーショニングバルブ108とポンピングユニット110との間の流動経路には、混合ユニット152が相互接続されている。混合ユニット152は、プロポーショニングバルブ108の出口で供給され、不適切に(improperly)混合される可能性のある、様々な流体パケットを混合するために設けられている。本発明の別の実施形態では、混合ユニット152は改良された混合を達成し、最終的にはアーティファクトが導管121の上流の組成の乱れから、特に前述した供給ライン109またはシリンダチャンバ117での不規則な液体分配から生じる導管121でのアーティファクトの抑制を達成するような別な方法で構成してもよい。
【0103】
ある実施形態では、混合ユニット152は、流れ方向でその連続性を変えるように、流体の後続セクションを長手方向に混合する長手方向混合ユニットとして構成されている。そのため、流体パケットのシーケンスのうちの流体パケットの一部または部分が別々に遅延すると、他の流体パケットに分配され、さらにパケットの連続に沿ったその部分を分配することにより、パケットは自動的に混合される。このパケットの部分の再分配は、自動的にこれら流体パケットを相互作用させるので、長手方向、つまり流動経路に沿って効果的な混合を促進する。
【0104】
図1の混合ユニット152は特に流体の後続セクションを混合するようになされており、溶媒供給ライン104〜107の数(つまり、4)にプロポーショニングバルブ108によって提供される1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する。図示する実施形態では、4本の溶媒供給ライン104〜107がある。1つのセクションの容量は、流体容器100〜103のうちの1つが導管109に接続されているタイムスライスが使用される計量手法に従い容量も画定しているため(流速と組み合わせて)、図2から求めることができる。それに応じて、混合ユニット152を基本的に流体パケットのフルセットを収容するのに足るだけの非常に小さい内部容量を有する寸法にすることにより、各容器100〜103のうちの1つを同じ時間で混合ユニット152内に収容することができるので、改善された混合が得られる。
【0105】
さらに別の実施形態では、図1の混合ユニット152はプロポーショニングバルブ108の出口で供給される流体をプロポーショニングバルブ108の出口の下流の1または複数の地点で異なる内部流体流遅延特性を有する複数の流動経路に分割するようになされている。この状況において、混合ユニット152はさらに、分割地点の下流の1または複数の地点で流動経路を結合することによって、流体を長手方向に混合するようになされていてもよい。流体を異なる容量および/または異なる流動抵抗値を有する異なる流動経路に分割し、さらに様々な流動経路を流れた後でそれを後で結合することにより、様々な流動経路に関わる遅延を異ならせることで、効率的な混合、そのため密度の差またはグラジエントによってもたらされる望ましくない液体の再分配により生じる組成の変動を抑制する結果を得てもよい。
【0106】
図2は、3つの異なる溶媒A,B,Cを所定の計量手法に従い第1ピストンの下向きのストローク中に第1ポンプチャンバ117に引き込む実施例を示す。最初に、第1液体供給ライン104はポンピングユニットの入口に接続されており、溶媒Aは第1ポンプチャンバ117に引き込まれる。第1ピストン115が一定量の溶媒Aを引き込んだ後、プロポーショニングバルブ108は時点200で溶媒Aから溶媒Bに切り替える。次に、第2液体供給ライン105を介して一定量の溶媒Bが引き込まれる。時点201で、プロポーショニングバルブ108は溶媒Bから溶媒Cに切り替える。その後、一定量の溶媒Cが時点203まで第1ポンプチャンバ117に引き込まれる。さらに、第1ポンプチャンバ117に一定量の溶媒Dが引き込まれる。時点203は第1ピストンの下向きのストロークの終わりを示す。
【0107】
第1ピストン115の下向きのストローク中、第2ピストン118は上向きのストロークを行い、流体流を送出し、ポンピングユニットの出口121で、高圧の複合溶媒流が提供される。
【0108】
異なる溶媒のそれぞれの量が第1ポンプチャンバ117に引き込まれた後、入口バルブ113が遮断され、第1ポストン115は上向き方向への移動を開始し、第1ポンプチャンバ117に収容されている液体をシステム圧力まで圧縮する。代替構成において、プロポーショニングバルブ108が高圧に耐えることができる場合、追加の入口バルブ113は省いてもよい。出口バルブ114が開き、次の溶媒移送相中に、第1ピストン115は上向き方向に移動し、第2ピストン118は下向き方向に移動し、複合溶媒は第1ポンプチャンバ117から第2ポンプチャンバ120に移送される。溶媒移送相中、第1ピストンポンプ111によって供給される複合溶媒の量は第2ピストンポンプ112によって引き込まれる複合溶媒の量を超えるので、出口125で複合溶媒の連続的な流れが維持される。
【0109】
十分に画定された量の複合溶媒が第1ピストンポンプ111から第2ピストンポンプ112に供給された後、出口バルブ114は遮断されて、第2ピストン118は上向き方向に移動するので、複合溶媒の連続的な流れが維持されながら、第1ピストン115は下向き方向への移動を開始し、入口バルブ113が開くので、再び異なる溶媒が第1ポンプチャンバ117に引き込まれる。
【0110】
図1に図示する流体供給システム150は、例えば、複合溶媒の流れを、試料液体の成分を分離するようになされている分離デバイスに供給するために使用してもよい。図3はこのような試料分離システムの設定を図示している。
【0111】
試料分離システムは4つの異なる溶媒A,B,C,Dを収容し、プロポーショニングバルブ304に流体連結されている4つの槽300〜303を備える。プロポーショニングバルブ304は異なる溶媒間を切替えて、各溶媒をポンピングユニット306の入口305に、ポンピングユニットの低圧側で提供することを受け持つ。そのため異なる溶媒はまとめてポンピングユニット306の低圧側に運ばれる。ポンピングユニット306は複合溶媒の流れを、例えばクロマトグラフィカラムであってもよい分離デバイス307に供給するようになされている。試料導入部308はポンピングユニット306と分離デバイス307との間に配置されている。試料導入部308により、試料液体309を分離流動経路に導入してもよい。ポンピングユニット306によって供給される複合溶媒の流れは、試料を分離デバイス307に推進する。分離デバイス307を通過中に、試料の成分が分離される。分離デバイス307の下流に配置されている検出ユニット310は、分離デバイス307の出口に現れるときに試料の様々な成分を検出するようになされている。
【0112】
図1を参照して説明してきた混合ユニット152は、プロポーショニングバルブ304の下流かつポンピングユニット306の上流に配置されている。
【0113】
図1図2に図示する流体供給システムは、液体分離システム、例えば液体クロマトグラフィシステムで使用するのによく適している。しかし、図3に図示する流体供給システムは他の分野でも同様に使用してもよいことに留意するべきである。
【0114】
図4は、本発明の別の実施形態による流体供給システム150を図示している。
【0115】
この実施形態では、センサ402、例えば、光学もしくは紫外線光検出器、または熱伝導、流量、センサ、音響センサ、接触型もしくは非接触型伝導度センサ、屈折率変換器もしくはセンサなどの別の種類の検出器もしくは同様な他のものなどがポンピングユニット110の下流に配列されており、導管121を流れる混合物およびその組成を検出する。センサ402の上流での不適切な混合がセンサ402によって検出される場合、混合性能を採用または微調整しなければならない。センサ402の位置で顕著な組成の偏差がある場合、センサ402は対応する情報を制御ユニット400に送出してもよい。
【0116】
制御ユニット400はマイクロプロセッサまたは中央処理装置であってもよい。制御ユニット400は、流体間の密度差から生じる混合物中の流体の潜在的な混合アーティファクトを、センサ402が提供するデータに基づいて分析するようになされているとともに、流体供給システム150の動作を不十分なまたは不適切な混合を(insufficient or improper mixing)少なくとも部分的に抑制するように改変するようになされている。換言すると、センサ402で不適切な混合が検出されると、制御ユニット400は流体供給システム150の動作を、混合を改善するように変更する。このために、例えば、制御ユニット400はプロポーショニングバルブ108の動作を変更し、例えば切替えサイクルまたは切替え順を変更することが可能である。
【0117】
追加でまたは代わりに、混合の均質性を改善するために、ピストン116,119の動作を変更することも可能である。フィードバックシステムを用いて、変更により混合性能の改善または改悪が生じるかどうかを、センサ402の位置で検出することができる。例えば、試行錯誤アルゴリズムを用いて、十分に適切なまたはさらに最適な混合が得られるまで、改善は受け入れ、改悪は拒絶する。
【0118】
図4の実施形態では、制御ユニット400は、追加でまたは代わりに、前述した混合ユニット152などの混合ユニットを制御することも可能であることに留意するべきである。
【0119】
本発明の別の実施形態を図5に示しており、図1に図示する流体供給システム150に統合されている構成デバイス500を示す。しかし、構成デバイス500は流体供給システム150とは別に配列することも可能で、例えば校正のために(例えば工場で)流体供給システム150に着脱可能に装着してもよく、その場合、別の流体供給システム150を校正するために使用することができる。
【0120】
図5の実施形態において、センサ402はここでもポンピングユニット110の出口に設けられて、容器100〜103から来る溶媒の潜在的に不適切な混合に関する情報を提供する。情報は、混合物中の流体の不適切な混合を示す情報を判定するようになされている構成デバイス500の判定ユニット502に供給される。判定ユニット502は情報を、さらに流体供給システム150の構成を変更することによって混合物中の流体の混合を促進するようになされている構成デバイス500の混合促進ユニット504に送る。
【0121】
図示する実施形態では、混合促進ユニット504は、それに応じて混合を改善するように混合ユニット152を制御することができる。しかし、混合促進ユニット502の出力を使用してプロポーショニングバルブ108および/またはポンピングユニット110の制御を変更することも可能である。さらに別の実施形態では、混合促進ユニット504はオペレータに流体供給システム150を手動で改変するよう、例えば接続キャピラリの長さを改変する、流体供給システム150のコンポーネントの幾何学的配列を改変する(ポンピングユニット110を枢動するなど)等を提案する。
【0122】
図6は、混合ユニット152として本明細書で説明するように流体供給システム150で実施する、本発明による混合ユニット600の実施形態を示す。混合ユニット600は、流体の長さ方向に沿って組成、粘度、溶離強さまたは温度などの特性の異なる流体を混合するために使用する。
【0123】
図6の実施形態では、ミキサ600は混合する流体の入口流を受け入れる入口610を備える。分流器620は入口610からの流れを受け入れて、それを(流体的に平行な)複数の流路630に分配する。したがって、分流器620は複数の平行な部分的な流れを複数の(並列の)流路630に提供する。
【0124】
図6の分流器620は、流体を流路630に実質的に同時に分配する、および/または様々な流体の特性が流路630の第1セクション660で実質的に同時に到達するように設計されている。
【0125】
図6の実施形態では、分流器620は、所定の部分的な流体容量の部分を低分流器容量と組み合わせて制限路のすべてにほぼ同時に到達する多段構成を備える。非常に低い分流器の総容量を達成するために、他の実施形態も可能である。
【0126】
複数の流路630は最終的には合流器640に連結されており、これは複数の流路630からの部分的な流れを結合して、それを出口流に提供する。出口流は出口650によって出力される。合流器640の容量は通例、主に遅延に寄与し、混合特性には寄与しないため、最低限の容量を提供するように設計することが好ましい。
【0127】
複数の流路630はそれぞれが第1流動セクション660を備えており、流路630の一部はさらに各第1流動セクション660に直列で連結されている第2流動セクション670を備える。
【0128】
図6の実施形態では、第1流路630Aは、分流器620と合流器640とを直接連結している第1流動セクション660A(のみ)を備える。第2流路630Bは第2流動セクション670Bに連結されている第1流動セクション660Bを備え、これがさらに合流器640にも連結している。したがって、第3流路630Cは第2流動セクション670Cに連結されている第1流動セクション660Cを備えており、これがさらに合流器640に連結されている。さらにそれに応じて別の流路についてもこれが続く。図6では、さらに別の第1流動セクション660D〜660Lおよび第2流動セクション670D〜670Lが示されており、それぞれ直列に、最終的には合流器640に連結している。
【0129】
第1流動セクション660A〜660Lは、各第2流動セクション670B〜670Lよりも大幅に大きい流体力学的抵抗を提供するように設計されているので、各流路630の総流体力学的抵抗は各第1流動セクション660の流体力学的抵抗によって支配される。また、図6の特定の実施形態では、第1流動セクション660A〜660Lの全部が実質的に同じ長さおよび断面を有するように設計されているので、各第1流動セクション660は実質的に同じ流体力学的抵抗を有する。各流路630の流体力学的抵抗がその各第1流動セクション660に支配されることを考慮すると、各流路630は、分流器620で流路630に導入されるときの流体に対し実質的に同じ流体力学的抵抗を提供すると考えることができると想定できる。分流器620を流路630に実質的に均等に入口流を分配するように設計すると、各流路の部分的な流れは実質的に等しいと想定できる。粘度変化は第1セクション630A〜630Lに同時に到達するため、当該実施形態における流路630への部分的な流れの分配は、流体の粘度とは実質的に独立しており、部分的な流れがこのように一定に維持される場合の分配比は提供される溶媒の粘度とは独立している。
【0130】
各流路630の流体力学的抵抗はその各第1流動セクション660で支配されるが、各第2流動セクション670は各部分的な流れが各第2流動セクション670の容量を通るのに必要な時間分だけ流体の伝達(各第1セクション660から合流器640まで)を遅延させる容量を有する。各流路630では、第2流動セクション670の容量は各第1流動セクション660の容量よりも大幅に大きくなるように設計されている。当該実施形態では、各部分的な流れの伝達時間は、主に各第2流動セクションの容量に影響されることになる。各第2流動セクション670の容量を異なって設けることにより、(所望の)流動特性を得ることができる。第2流動セクションがない流路630を少なくとも1つ有することにより、ミキサ600の全体的に得られる流動特性は、第1流動セクション660のみから得られる最低限の遅延を有するように設計することができる。
【0131】
図7は、流体供給システム150の上記実施形態の混合ユニット152として実施可能な別の構造を図示しており、図7では混合ユニット750と表している。混合ユニット750は内管腔(図示せず)を取り囲んで、流体パケットの流体導管の役割を果たす管710を備えている。この流体導管に沿って、多数の混合構造物が配列されている。第1混合構造物700は管710のサイドボリューム(方形の断面を有する)である。第2混合構造物702は管710の別のサイドボリューム(方形の断面を有する)であるが、第1混合構造物700と比較すると流体導管710に対して反対方向に延びている。第2混合構造物702のさらに下流は、(図7の断面図で)多角形のサイドボリュームを有する第3混合構造物であり、管710の延長方向に対して鋭角αを有することによって、ある種のアンダーカット720を形成している。さらに下流は、導管710の対向する部位の2つの三角形のサイドボリュームの配列であり、第4の混合構造物706を形成している。
【0132】
混合ユニット750を用いて、図7に図示する矢印に対応する方向に沿って流れる流体を、後続の流体パケットの混合を促進するように意図的に定められた方法で混合構造物700,702,704,706に分配される。
【0133】
図8は、上記実施形態で示す混合ユニット152として使用することのできる別の混合ユニット850を図示する。混合ユニット850は可撓性のプラスチック管802を結ぶことにより形成され、それによって結び目付き管セクション800を形成する。結び目付き管セクション800は、流体部材に接続するための第1取付具804と別の流体部材に接続するための第2取付具806との間に配列されている。結び目付き管800は、プロポーショニングバルブ108とポンピングユニット110との間の流動経路に、つまり吸入導管の一部として配列してもよい。管102に結び目を作ることは、混合性能を改善する非常に単純でありながら効率的な手段である。
【0134】
以下に、従来の流体供給システム1000を、流体混合性能に関して、本発明の実施形態による流体供給システム150と比較する。図9および図10から分かるように、従来の流体供給システム1000は性能不良を示すが、本発明の実施形態による流体供給システム150ははるかに優れた混合性能を提供する。
【0135】
図9は、測定時間を分単位でプロット化した横座標902を有するグラフ900を示す。縦座標904に沿って、前述したように作動するシステム1000が割合に応じて計量して送出する溶媒組成の一定の流体成分の濃度を示す測定信号をプロット化している。図9に示す測定信号906は、図4および図5に図示するセンサ402などのセンサによって得ることができる。図9から分かるように、アーティファクト908は非常に顕著であり、不適切な混合であることが示されている。
【0136】
図10は、図9の性能が得られる従来の流体供給システム1000を示す。キャピラリ1002はプロポーショニングバルブ1004(これに4つの溶媒供給源がA,B,C,Dの位置で接続されている)をポンプ1006に流体連結している。また、減衰ユニット1008を設けていてもよい(例えば、弾性チャンバ)。プロポーショニングバルブ1004は、それぞれが流体パケットをボトルから導管1002に供給する対応のボールバルブ1012を起動するように構成されている4つのソレノイド1010を有する。別の導管1014の下流に、試料導入部、分離カラム等などHPLCシステムの別のコンポーネントを接続することができる。
【0137】
ポンプ1006は、吸入シリンダ1016と流体をシステムに搬送する第2シリンダ1018とを備える。受動的な入口バルブ1020が出口バルブ1022とともに示されている。例えば、重力gの影響下でたるむ導管1002はその最下部に溶媒組成の高密度成分の沈降を生じさせるとともに、入口バルブ1020に向かうより軽い成分の浮上またはプロポーショニングバルブ1004に戻る後方移動を生じさせることがある。
【0138】
図11は、図10の流体供給システム1000に加えて、混合ユニット600を有する実施形態による流体供給システム150を示す。プロポーショニングバルブ1004とポンプ1006との間の導管1002で適切に混合することにより、図12のグラフ1200に示すように、アーティファクト908は実質的に抑制する、またはさらに排除することができる。これは本質的にリップルのない曲線1202から分かる。
【0139】
図13は、溶媒組成を導く下垂管1002を示す。図13の矢印を比較する。図13は、相対的に密度が高いHOなどの第1溶媒組成1300が管1002のたるんだセクションに沈降する可能性があることを示している。水と比較して密度の低い別の流体は水1300の上に沈降し、参照番号1302で示されている。密度が非常に低い流体1304はより高い密度の流体1302,1300の上を流れる。そのため、流体1300,1302は管1002のたるんだ部分に意図せず不必要に長くとどまることがあり、そのため散発的に乱れ、実際の流れに制御されずに混ざることになると、システムのクロマトグラフィ分離性能を劣化させる滞留流体になることがある。
【0140】
図13にさらに示されているのは、その後供給される異なる溶媒または異なる溶媒組成の流体パケット1306である。図11の実施形態に混合ユニット600を統合することにより、説明した沈降または層形成効果は抑制する、またはさらに排除することができる。
【0141】
図14は、本発明の別の実施形態により実施可能な、50μLという非常に小さい内部容量Vを有する混合ユニット1450を示す。第1回転要素1402および第2回転要素1404がこのチャンバに配列されており、それに収容されている流体の乱流を追加するために回転してもよい。そのため、システムにポンプで吸引される流体パケット1306は、ポンピングユニット内で混合される。例えば、それぞれ5μLの10成分を混合する場合、混合ユニット1450の50μLの内部容量Vが完全に満たされる。
【0142】
本明細書で「備える、含む(comprising)」という用語は他の要素または特徴を排除せず、「a」または「an」は複数を排除しないことに留意するべきである。また、異なる実施形態に関連して説明する要素を組み合わせてもよい。請求項の参照記号は請求項の範囲を制限すると解釈してはならないことにも留意するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14