【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面の実施形態によると、2以上の流体を所定の割合または制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源(特に、各槽またはパイプライン)にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口に供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの入口と間に挿置されており、前記ポンピングユニットの流体吸入相の過程で前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することによって、溶媒組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、(特に、密度および/または粘度の差が役割を果たす種類の)流体の後続セクションを長手方向に混合して、その連続を流れ方向に改変するようになされている長手方向混合ユニット(そのため、長手方向とは導管の流体パケットのシーケンスの流れ方向をいう)とを備える。
【0016】
本発明の第2の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続している複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されており、前記ポンピングユニットの流体吸入相の過程で前記溶媒供給ラインのうちの選択したものと前記ポンピングユニットの前記入口とを順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、化学組成、比重または粘度のうちの少なくとも1つが異なる流体の後続セクション(流れ方向で後に続く流体パケット、流体の層、もしくは流動経路のブラインド穴から流れ出る流体)を混合するようになされており、前記溶媒供給ラインの数に前記プロポーショニングバルブが提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニット(または、混合ユニットは、前記プロポーショニングバルブが前記溶媒供給ラインのそれぞれをいったんポンピングユニットに順次流体連結する連続的な時間間隔内に、前記溶媒供給ラインのそれぞれが提供する部分的な流体容量の合計以下の内部流体収容容量を有してもよい)とを備える。この場合、比重は得られた混合物の重力を基準にする。流体の一定のセクションは、生成される混合物の平均(mean)または平均(average)密度よりも軽くまたは重くてもよく、浮上または沈降を生じさせる。
【0017】
本発明の第3の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を所定の割合で取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することによって溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、前記プロポーショニングバルブの出口または前記プロポーショニングバルブの出口の下流の1もしくは複数の地点で供給される流体を内部流体流遅延の異なる複数の経路に分割するようになされるとともに、1もしくは複数の再合流地点(つまり、分割された流体が再合流する1以上の地点で、その地点は分割地点の下流に配置してもよい)で流動経路を結合することによって、流体を長手方向に混合する(つまり、個々の流体部分が流動経路のそれぞれを通過する遅延時間が異なることを考慮すると、個々の流体部分は異なる時点で結合位置に到達し、そのため長手方向の混合が生じる)ようになされている混合ユニットとを備える。
【0018】
本発明の第4の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択される前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されており、前記溶媒供給ラインのうちの選択されたものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブと、流体間の比重(または密度)の差から生じる混合物内の流体の潜在的に不完全な混合を分析するとともに、不完全な混合から生じる変動を少なくとも部分的に抑制するために、流体供給システムの動作を改変するようになされている制御ユニットとを備える。
【0019】
さらに別の実施形態によると、移動相で試料流体(特に、試料液体)の成分を分離する試料分離システムが提供され、前記試料分離システムは上記述べた特徴を有するとともに、流体を移動相として前記試料分離システムに推進するようになされている流体供給システムと、移動相で試料流体の成分を分離するようになされている分離ユニット、好ましくはクロマトグラフィカラムとを備える。
【0020】
本発明の第5の側面の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システム(またはこのような流体供給システムを有する上記の種類の試料分離システム)を構成するようになされている構成デバイスが提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源とそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされている前記ポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブとを備える、構成デバイスにおいて、前記構成デバイスは、混合物内の流体の不完全な混合を示す情報を判定するようになされている判定ユニットと、前記流体供給システムの構成を変更することによって、混合物内の流体の混合を促進するようになされている混合促進ユニットとを備える。
【0021】
本発明の第1の側面の別の実施形態によると、比重の異なる2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、その連続を流れ方向に改変するように流体の後続セクションを長手方向に混合するステップとを含む。
【0022】
本発明の第2の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、前記溶媒供給ラインの数に前記プロポーショニングバルブが提供する1つの流体セクションの容量を乗じた値以下の内部流体収容容量を有する混合ユニットにより流体の後続セクションを混合するステップとを含む。
【0023】
本発明の第3の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法において、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、前記プロポーショニングバルブの出口または前記プロポーショニングバルブの前記出口の下流の1もしくは複数の地点で供給される流体を内部流体流遅延の異なる複数の流体経路に分割して、分割地点の下流の1もしくは複数の地点で流体路を結合することにより流体を流動経路に沿って長手方向に混合することによって流体を混合するステップとを含む。
【0024】
本発明の第4の側面の別の実施形態によると、流体供給システムにおいて2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給する方法が提供され、前記方法は、複数の溶媒供給ラインを各流体を提供する流体源に流体接続するステップと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給する往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから比重の異なる流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給する前記ポンピングユニットを制御するステップと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結するプロポーショニングバルブを使用して、溶媒の組成を調節するステップと、流体間の密度の差から生じる混合物内の流体の潜在的に不完全な混合を分析するステップと、前記流体供給システムの動作を不完全な混合を少なくとも部分的に抑制するようにまたは沈降もしくは浮上を少なくとも減少するように改変するステップとを含む。
【0025】
本発明の第5の側面の別の実施形態によると、2以上の流体を制御された割合で計量して、得られた混合物を供給するようになされている流体供給システムを構成する方法が提供され、前記流体供給システムは、各流体を提供する流体源にそれぞれ流体接続されている複数の溶媒供給ラインと、ポンピングユニットの入口で供給される流体を吸入して、前記ポンピングユニットの出口で加圧流体を供給するようになされている往復運動要素を備えており、選択された前記溶媒供給ラインから流体を取り込んで、その出口で流体の加圧混合物を供給するようになされているポンピングユニットと、前記溶媒供給ラインと前記ポンピングユニットの前記入口との間に挿置されて、前記溶媒供給ラインのうちの選択されるものを前記ポンピングユニットの前記入口に順次連結することにより溶媒の組成を調節するようになされているプロポーショニングバルブとを備える、前記方法において、前記方法は、混合物内の流体部分の不完全な混合またはさらに沈降もしくは浮上を示す情報を判定するステップと、前記流体供給システムの構成を変更することによって、混合物内の流体の混合を促進するステップとを含む。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によると、コンピュータ(例えば、ポータブルコンピュータ、ポータブルデータプロセッサまたは専用コントローラ)などのデータ処理システムで実行したときに、上記述べた特徴を有する方法のいずれかを制御または実行するために、好ましくはデータキャリア上に記憶されているソフトウェアプログラムまたは製品が提供される。
【0027】
本発明の実施形態は、あらゆる種類のデータキャリア上に記憶され、またはあらゆる種類のデータキャリアによって提供することができるとともに、あらゆる適したデータ処理ユニットで、またはそれによって実行してもよい1以上の適したソフトウェアプログラムによって、一部もしくは全体を具体化またはサポートすることができる。ソフトウェアプログラムまたはルーチンは、流体供給制御の状況で適用できることが好ましい。本発明の実施形態による流体供給制御手法は、コンピュータプログラムにより、つまりソフトウェアにより、または1以上の特別な電子最適化回路を使用して、つまりハードウェアもしくはハードウェアを制御するときに不揮発性メモリに記憶されているプログラムの形態で、つまり埋め込み型ソフトウェアの形態で、もしくはハイブリッド形態で、つまり上記コンポーネントのいずれかの組み合わせにより実施または支援することができる。換言すると、ソフトウェア、ファームウェア(埋め込み型ソフトウェア)および/またはハードウェア(例えば、ASIC、特定用途向け集積回路により)でのあらゆる実施態様が可能である。
【0028】
本出願において、「流体」という用語は特にあらゆる液体、あらゆる気体、あらゆる液体と気体との混合物を意味してもよく、任意で固体粒子を含んでもよい。特に、液体クロマトグラフィの分析種は必ずしも液体ではなく、溶解固体または溶解気体とすることができる。
【0029】
本出願において、「混合ユニット」という用語は、特に、流体混合物の均質性を高めるために、流体部分間の相互作用を促進することのできる流体部材を意味してもよい。混合は、例えば、流体パケットのシーケンスの順序を少なくとも部分的に変更し、および/または流体セクションがより均質な分布になるように流体の異なる部分を相互作用させるように流体に運動、特に乱流を発生することによるなど、様々な方法で行ってもよい。
【0030】
本出願において、「長手方向混合ユニット」という用語は、特に、異なる流体セクションの相互作用の促進、または流動経路に沿った方向に、つまりその垂直方向だけではなく流体導管の管腔に沿った方向に一定の流体セクションの順序の変更を行うことのできる混合ユニットを意味してもよい。そのため、このような長手方向混合ユニットの混合性能は、流れ方向が好適な方向を形成する異方性であってもよい。
【0031】
本出願において、「内部流体収容容量」という用語は、特に、混合する流体を満たすことのできる各混合ユニット内部の中空空間の容量を意味してもよい。ある実施形態では、1バッチ内で混合する流体パケット(このようなバッチは作用する溶媒供給ラインそれぞれからの1つの流体パケットを含む)は、内部流体収容容量以上の容量を有してもよい。換言すると、ミキサの容量は1バッチの流体容量以下である。例えば、プロポーショニングバルブは、その切替え論理により、個々の溶媒供給ラインからの流体パケットの個々の容量を画定してもよい。プロポーショニングバルブにより画定される1バッチ内のこれら個々の容量の合計は、混合ユニットの内部流体収容容量より大きく(または等しく)てもよい。
【0032】
本出願において、「内部経路容量」という用語は、特に、各流体を満たすことのできる各流動経路内の中空空間(管腔など)の容量を意味してもよい。
【0033】
本出願において、「密度の差」または「比重の差」という用語は、特に、異なる溶媒容器から出る流体の個々のセクションが異なる物理的密度を有していてもよいことを意味してもよい。例えば、水とアセトニトリル(ACN)または他の有機溶媒が、その密度に関して大幅に異なっていると、混合流体の個々のセクションが重力もしくは浮力の影響が異なるために意図せず分離することがある。
【0034】
本出願において、「沈降」という用語は、特に、密度の差(もしくは比重の差)および/または粘度などの他の部分的なパラメータに関する差のために、流体の異なるセクションが意図せず分離して、ある分画が別のものの下に沈降することがあることを意味してもよい。同様に、ある分画が流体中で浮上することがある。
【0035】
2以上の流体を制御された割合で計量し、得られた混合物を供給することに関し、極端な比重の液体部分がフローストリームから逸れて、いくらか後の時点で流通されるかもしれないセクションに静止する場合、非常に乱れていると考えられる。このような挙動は組成の偏差をもたらし、正味の影響はゼロであるが、送出される流体の予測不可能な容量にわたり発生する。この乱れの容量は複数のポンプストロークにわたる、またはさらにシステム全体の容量もしくは分離ピークの保持容量にも及ぶことがある。そのため自然なシステムの分散がこの乱れを抑制する可能性は全くない。
【0036】
本出願において、「内部流体流遅延特性」という用語は、特に、流動経路を形成する異なる流路において、流体がこの流路を通過するときに経験する遅延が、異なる流動経路では異なるように、少なくとも1つの流れ関連のパラメータが異なっていることがあることを意味してもよい。例えば、各経路の経路長または内容量が異なる経路間で異なっている場合、より長い導管またはより大きい容量に沿って流れなければならない流体は、短いまたは低容量の経路に沿って流れる別の流体よりも大きく遅延することがある。また、各流動経路を流れるときの流体に作用するフローインピーダンス(これは流動経路導管の形状、表面仕上げもしくは温度に依存してもよい)が遅延に対する影響を及ぼすことがある。異なる流体部分の異なる遅延を調整することにより、後の部分が前の部分に追いつくときに適切な混合を促進してもよい。
【0037】
本出願において、「流体構成システムの構成を変更することによって混合を促進する」という用語は、特に、流体供給システムを、不適切もしくは不十分な混合または問題のある沈降もしくは浮上がそれぞれ少なくとも部分的に補償または低減されて、様々な流体がより効率的に混合または再分配されるように操作されることを意味してもよい。例えば、システム構成は、流動経路に沿った密度の変動の影響の分析に応答して変更してもよい。このように構成の変更(例えば、混合ユニットの動作の)は混合を改善するように行われてもよい。
【0038】
本発明の実施形態は、特にクロマトグラフィデバイスなどの流体分離システムのための従来の流体供給システムの欠陥の詳細分析に基づいている。従来、このようなシステムで発生するおそれのあるアーティファクトは当業者によって誤って解釈されてきており、本発明者らはこのようなアーティファクトの原因を正しく理解することに成功した。異なる溶媒組成として連続した流体パケットを流動経路に導入して試料分離手順の溶媒として使用する状況において、流体カラムで不適切に混合された部分は、実験で組成の乱れもしくは不規則または一定の溶媒組成のピークとして検出されてきた。本発明者らは、このようなアーティファクトは、一定の事例では、ポンピングユニットの1ストロークの容量に割り当てられるタイムスライスと比べて非常に長い繰り返し時間で周期的または準周期的に発生することも観察した。例えば、20〜60ストロークもの大きな繰り返し間隔のアーティファクトは、今まで当業者には理解されてこなかった。本発明者らは、このようなアーティファクトの原因が密度および/または粘度が大きく変わる混合物の流体組成の不適切な混合であることを体系的に発見した。本発明者らは、例えば、HPLCアプリケーションによく使用される水とアセトニトリル(ACN)とを混合するとき、流動経路の相対的に高い密度と相対的に低い密度のセクションの層形成効果または成層化を突き止めた。さらに、本発明者らは、異なる流体組成の粘度の値が異なると、当該組成の混合不良になるおそれがあり、ひいては上記説明したアーティファクトを刺激または拡大する結果になることも突き止めた。
【0039】
アーティファクトの無作為または準周期的パターンを招く個々の流体組成の望ましくない層状の分布には多くの影響が起因するであろうが、本発明者らは、本発明の第1の側面の実施形態により、流動経路の長手方向での流体の混合を促進することでアーティファクトの強い抑制を達成できることも発見した。このような長手方向の混合は、例えば一定の密度および粘度を有する一定の流体パケットの部分を別の密度および/または粘度を有する別の流体パケットの部分を追いつかせて、その密度の異なる個々の流体セクションは容量が小さく、互いに近づけて分配されるように個々の流体パケットの部分を再分配するように行ってもよいので、軸方向の混合は成層化の抑制の点で効率的になることができる。
【0040】
本発明の第2の側面の実施形態によると、内部容量が非常に小さい混合ユニット(特に、混合ユニットの流体収容容量がポンピングユニットの1ストローク中に押しのけられる流体容量以下であるもの)を使用すると、システムの混合物の均質性を非常に効率的に改善できることが発見された。混合ユニットの内部容量を小さくすることにより、経路内での滞留流体との混合物の望ましくない形成を防ぎ、例えば、グラジエント分析の速度を改善してもよい。この場合の長手方向の混合は、主に複数の吸入ストロークにわたり混合することではなく、発生すると1ポンプサイクル(ストローク)の継続時間よりも非常に長い特性間隔で散発的または準周期的な乱れを生じる可能性のある個々の流体部分の沈降または浮上を防止することが意図される。
【0041】
本発明の第3の側面の実施形態によると、流体パケットを各流体パケットについて設計遷移時間値をもつ流体力学的に平行な流路に分割し、各流路を通過した後に再び流体パケットを結合することは、アーティファクトの抑制に対し非常に有利な影響をもつことも発見された。
【0042】
本発明の第4の側面の実施形態によると、流体混合物の不適切に混合されたセクションを特定し、機械関連のパラメータを変更して、当該変更がアーティファクトを減少したかどうかをモニタリングするシーケンスを、アーティファクト形成の体系的な抑制のために使用できることが発見された。例えば、流体供給システムの異なるコンポーネントを接続している導管の長さ、向きおよび傾きなどのパラメータも、アーティファクトに対して著しい影響をもつことがあり、供給される混合物の均質性を改善するために変更してもよい。
【0043】
本発明の第5の側面の実施形態によると、校正または構成手順中に、流体供給システムは密度の変動により生じる混合アーティファクトを分析することも可能である。このような手順中、成層化効果などの発生が検出されることがあり、混合を改善するための対策を取ることにより流体供給の効率および正確さを改善することができる。
【0044】
以下に、流体供給システムの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は試料分離システム、構成デバイス、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0045】
ある実施形態において、異なる内部流体流遅延特性は異なる内部流動経路容量によって提供される。流体が異なる流動経路容量に分割される場合、容量を通過する遅延時間は異なるので、流体が分割経路の端部で再統合される場合、個々のセクションは空間的に分割されて分配されるので、混合の改善が生じる。
【0046】
ある実施形態において、異なる内部流体流遅延特性は異なる内部流動経路の流動抵抗によって提供される。このような状況では、流動抵抗は流動経路を通過する流体部分の異なる遅延時間を調整するために設計パラメータとして使用される。例えば、異なる流動経路の容量は同じであるが、流動経路が流体導管の直径および長さに関して異なっている場合、長くて狭い流動経路が異なる流動抵抗値を生じることになるため、様々な流動経路を通る流体の通過/搬送時間は異なることになる。
【0047】
ある実施形態において、混合ユニットはプロポーショニングバルブの下流かつポンピングユニットの上流に配置されている。このような種類の混合構造物をポンピングユニットの低圧側に配列すると、混合物の均質性を促進するのに特に効果的なことが判明した。不適切な混合の原因は特にプロポーショニングバルブ付近に発生し、ポンピングユニットの動作はすでに適切に混合された流体組成で行うことが好ましく、混合ユニットをプロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間に配置することが特に適切であることが分かっている。
【0048】
ある実施形態において、混合ユニットは、沈降/浮上を防止しながら、流体の後続セクションにわたる密度勾配を少なくとも部分的に平衡化するようになされている。したがって、混合ユニットは、流動経路に沿って異なる流体パケットの比重に関する差が、混合ユニットの性能により少なくとも部分的に補償されるように制御してもよく、またはそのように構成してもよい。換言すると、密度変動の平衡を、混合ユニットの静的設計パラメータまたは動的制御パラメータとして使用してもよい。
【0049】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブの出口の下流にある流動経路は、比重の差によって生じる流体の分配の改変を防ぐように構成されている。より具体的には、プロポーショニングバルブの出口の下流にある流動経路は、比重の差によって生じる流体の後続セクション内の流体の分配の改変を防ぐように構成してもよく、混合ユニットは流体の後続セクションの密度変動を少なくとも部分的に平衡化するようになされていてもよい。そのため、この流動経路は特に異なる密度値から生じる層形成効果を防ぐように構成してもよい。
【0050】
ある実施形態において、混合ユニットは約100μL、特に約50μL以下、さらに特定すると約10μL以下の内部流体収容容量を有する。このように小さい内部流体収容容量により、非常に少数のパケットの適切な混合を起こしてもよい。
【0051】
ある実施形態において、混合ユニットは、プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の流動経路に配列されている結び目付き管、特に結び目付き吸入管を備える、またはそれからなる。撓み管に結び目を作ると、流れを意図的に乱し、効果的な混合を起こす単純であるが非常に効率的な手段であることが判明している。アーティファクトの抑制のために管に結び目を作ることは、プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の導管で特に効果的であるだろう。
【0052】
ある実施形態において、混合ユニットは、それぞれが管腔の流体の流動抵抗にそれぞれ寄与する1以上の混合構造物(意図的な乱流構造物として)を有する内部管腔(例えば、円形の断面を有する)を有する管を備える、またはそれからなる。例えば、円筒形の管腔に、流れを乱して混合性能を改善する1以上の側方延長部を装備してもよい。例えば、当該混合構造物は櫛状構造物、脈状構造物、多腔管、フォームインサート、1以上のノズル、渦巻、1以上のピラー、方形の断面を有するサイドボリューム、容量値が異なる方形の断面を有する複数のサイドボリューム、管腔から異なる方向に沿って延びている複数のサイドボリューム、直角とは異なる角度をもつ多角形の断面を有するサイドボリューム、管腔のジグザグ部分等を備えていてもよい。当然、他の種類の混合構造物も同様に実施してもよい。
【0053】
ある実施形態において、混合ユニットは、流体を入口流として受け入れるように構成されている入口と、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口と、入口と出口とを連結する複数の流路と、入口流を複数の流路に分配して、各流路が入口流からの部分的な流れを受け入れるようにする分流器と、複数の流路からの部分的な流れを出口流に結合する合流器とを備えており、各流路は流路の著しい流体力学的抵抗を実質的に表す流体力学的抵抗を有する第1流動セクションを備え、流路の1以上はそれぞれ各流路の第1流動セクションと直列に連結されている第2流動セクションを備え、各第2流動セクションは流体が流れる容量を備えて、各部分的な流れが各第2流動セクションの容量を通るのに必要な時間分だけ第1流動セクションから合流器までの流体の伝達を遅延させ、流路への部分的な流れの分配は流体の粘度と実質的に独立している。当該実施形態における部分的な流れの分配は流体の粘度と実質的に独立しているため、ミキサは特に流体の粘度が経時的に変化するアプリケーションにおいて改善された特性を示す。HPLCでは、粘度が変化する典型的なアプリケーションはいわゆるグラジエントモードであり、複数の異なる溶媒の混合比を経時的に変更することによって、流体の組成が経時的に変化する。ある実施例として、移動相を提供するために、2つの溶媒の水およびアセトニトリル(ACN、式:CH
3CN)を混合してもよいだろう。グラジエントモードでは、水とアセトニトリルの混合比は、例えば100パーセントの水から始めて100パーセントのアセトニトリルにするなど、経時的に変化させる(例、連続的または段階的に)。混合流体(ここでは、移動相)の粘度は実際の混合比に依存するため、グラジエントモード中の時間に対する関数になる。流体の粘度に対して部分的な流れの分配が独立しているため、ミキサが提供する流体の混合も流体の粘度に対して実質的に独立することになるため、ミキサは前述のHPLCにおけるグラジエントモードなど流体の粘度が経時的に変化するアプリケーションに特に適し、有利になる。また、このミキサの実施形態での溶離液の組成の変化は、溶媒の特別な特性とはほぼ独立して、予測可能かつ再現可能に起こる。
【0054】
ある実施形態において、混合ユニットは、流体を入口流として受け入れるように構成されている入口と、混合流体を出口流として提供するように構成されている出口と、入口と出口とを連結している複数の流路と、各流路が入口流から部分的な流れを受け入れるように入口流を複数の流路に分配する分流器と、複数の流路からの部分的な流れを出口流に結合する合流器とを備えており、各流動経路は、流体を後続の流動経路サブセクションで重力の方向に対して可変する角度で押し流す流れ方向変更部を備える。このような流れ方向変更部は混合を効率的に促進することが判明している。
【0055】
ある実施形態において、往復運動要素の吸入移動中、流体がポンピングユニットの入口を介して引き込まれるとき、プロポーショニングバルブは異なる溶媒供給ライン間の切替えを行う。そのため、流体の混合は吸入プロセス中に切替えによって行うことができる。流体がポンピングユニットの入口を介して引き込まれる間隔の間に、プロポーショニングバルブが異なる溶媒供給ラインの切替えを行うことも可能である。そのため、切替えは流体が静止している間の時間間隔にも行ってもよい。
【0056】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブは複数の切替えバルブを有しており、切替えバルブはポンピングユニットの往復運動要素の吸入移動中に順次起動させる。切替えバルブのそれぞれを切替えのために互いに回転自在な2つの切替え部材、つまりステータおよびロータから形成してもよい。
【0057】
ある実施形態において、プロポーショニングバルブは溶媒供給ラインのうちのマルチプレクサ手法に対応して選択されるものを選択するように構成されている。この状況において、「マルチプレクサ」という用語は、ある時点において、複数の切替えバルブのうちの1つが常にポンピングユニットに連結されることを意味してもよい。マルチプレクサは複数の流入流体流のうちの1つを選択して、選択される流入流体流を単一の流出流体流に送る。2つのバルブを同じ溶媒の2つの源と並列に接続して、バルブを同時にまたは重複して切替えることが特に可能である。このことは、2つのバルブを通る流れが、2つのバルブを同時に開かせることが適切であるような望ましい特性を有することがあるため有利であろう。
【0058】
ある実施形態において、往復運動要素の吸入移動の所定の部分は、ポンピングユニットに引き込まれる異なる溶媒に割り当てられ、容量パケット、タイムスライスおよび往復運動要素の位置のうちの1つを計量することによって調合を行う。この状況において、容量パケットとは、所定の容量を有する流体部分と定義してもよい。「タイムスライス」という用語は、往復運動要素のデューティサイクル内の単一相を画定し、したがって往復運動要素が所定の運動パターンであれば、所定の吸入容量部分に換算する一定の所定の時間間隔を意味してもよい。吸入プロセスの始まりのポンピングチャンバ内の往復運動要素の基準位置(例えば、ポンピングチャンバの反転地点)に対する位置も、計量する流体量の尺度として使用してもよい。
【0059】
ある実施形態において、制御ユニットは、往復運動要素のストロークを調整し、プロポーショニングバルブが提供する流体パケットのサイズを調整し、ポンピングユニットによる流体の吸入速度を調整し、ポンピングユニットが流体を吸入する順序を調整し、プロポーショニングバルブおよびポンピングユニットのうちの少なくとも1つを制御するための制御システムにディザを付加し、ポンピングユニットのポンピングチャンバの内容物を流体システムの他の部分に急速に移送し、溶媒の組成を調整し、および/または流体に添加剤を添加して混合を促進することによって、不完全な混合による沈降/浮上を少なくとも部分的に抑制するようになされている。他の実施形態では、制御ユニットは流体の混合を改善するようにシステムの他のパラメータを変更してもよい。
【0060】
ある実施形態において、ポンピングユニットは、往復運動要素と連動して、ポンピングユニットの入口で供給される流体を押しのけて、ポンピングユニットの出口でさらに加圧された流体を供給するようになされている別の往復運動要素を備える。この実施形態において、複数の往復運動要素、例えば2つのピストンは1つの同じポンピングチャンバで往復運動してもよい。複数の往復運動要素はすべて単一の往復運動要素のみの場合について上記説明したように制御してもよい。
【0061】
ある実施形態において、流体供給システムは、ポンピングユニットの下流に配列されて、別の往復運動要素によって、ポンピングユニットの出口および別のポンピングユニットの入口で供給される流体を押しのけて、別のポンピングユニットの出口でさらに加圧された流体を供給するようになされている別のポンピングユニットを備える。この実施形態において、個々の往復運動要素およびチャンバを備える複数のポンピングユニットを設けてもよい。例えば、複数のポンピングユニットは直列に流体力学的に連結していてもよい。複数のポンピングユニットはすべて単一のポンピングユニットのみの場合について上記説明したように制御してもよい。
【0062】
ある実施形態において、往復運動要素はピストン、膜を備えており、または圧力チャンバとして改造されていてもよい。しかし、往復運動要素がポンピングチャンバ内で往復運動することが可能で、チャンバ内で流体に利用できる容量の往復運動変化を生じさせる限り、往復運動要素の他の実施形態も同様に可能である。
【0063】
以下に、構成デバイスの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は試料分離システム、流体供給システム、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0064】
ある実施形態において、判定ユニットは、不完全に混合された流体混合物を使用して実施される試料分離に関して、アーティファクトを分析するようになされている。そのため、混合促進ユニットは、流体供給システムの構成を変更することによって、試料分離性能を促進するようになされてもよい。このような実施形態において、溶媒組成の不適切な混合の望ましくない影響は、クロマトグラフィ分離性能に対するその影響により間接的に検出されてもよい。この情報をさらに、混合を改善するために混合促進ユニットにより特別に処理してもよい。
【0065】
ある実施形態において、判定ユニットは、異なる密度および/または異なる粘度を有する流体間の層形成を示す情報を判定するようになされている。例えば、流体部分間の作用力(重力など)および/または相互作用を考慮することにより、層形成をモデル化することが可能である。
【0066】
ある実施形態において、判定ユニットは、溶媒供給ラインとポンピングユニットとの間の流動経路で詰まっているまたは逆流している混合物の少なくとも1つの滞留流体セクションを特定するようになされている。そのため、混合促進ユニットは流動経路において滞留流体セクションを前方に押しやるようになされていてもよい。滞留流体セクション、つまり流体供給システムの導管または流体部材に通常もしくは所望よりも大幅に長く留まっていて、例えばそれぞれ特に大きいもしくは小さい密度値のために、流体部分の特定のセクションに閉じ込められているおそれのある流体セクションは、アーティファクトの原因として本発明者らによって突き止められた。流体供給システムの流動経路または動作を、滞留流体セクションで満たされるポケットの発生を防ぐことのできるように構成することで、適切に混合された流体の提供を一層改善することができる。
【0067】
ある実施形態において、判定ユニットは、混合物内で流体の不完全な混合が発生する流動経路の位置を突き止めるようになされている。そのため、混合促進ユニットは、流体供給システムの構成を変更することによって(特に、検出された1以上の位置で)、突き止められた位置での流体の混合を促進するようになされていてもよい。これは、例えば、不適切に混合された流体の部分の特定を可能にする一定の位置に配列されている1以上のセンサによって行うことができる。例えば、様々な流体が適切に混合されていない位置の推定が可能な流動経路に沿って一定の位置で蛍光測定または同様な他の測定を行ってもよい。
【0068】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体の後続セクションを混合することによって、混合物内の流体の混合を促進するために、流体供給システムの混合ユニットを制御するようになされている。例えば、混合ユニットは、流体成分の混合物の特性に対する影響を有する1以上の調整可能なパラメータを有してもよい。
【0069】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体供給システムの動作モードを定義するパラメータセットのうちの少なくとも1つのパラメータ値を変更し、流体供給システムの少なくとも1つの流体を変更し、流体供給システムの少なくとも1つのコンポーネントを変更し、および/または流体供給システムの少なくとも1つの幾何学的条件を変更することによって、流体供給システムの構成を変更するようになされている。当該パラメータは所望の混合特性に対応して変更してもよい。
【0070】
ある実施形態において、判定ユニットは、流体供給ユニットの特定の流動経路位置で混合物内の流体の不完全な混合を示す情報を判定するようになされている。本発明者はプロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の導管、およびポンピングユニットのポンピングチャンバが、流体の当該成層化または望ましくない再分配を特に促しやすい流動経路の位置であることを突き止めた。プロポーショニングバルブとポンピングユニットとの間の接続キャピラリは、アーティファクトが発生するおそれのある流動経路のクリティカルセクションであると特に突き止められている。ポンピングチャンバに関わる容量も流体の個々の部分による層形成を生じやすい。
【0071】
ある実施形態において、混合促進ユニットは、流体供給導管が供給する流体間で密度の最も大きい流体がポンピングチャンバの底部セクションに位置するとき、往復運動要素がポンピングチャンバ内の下側反転地点に位置付けられるようにポンピングユニットを制御するようになされている。密度が最も大きい流体がポンピングチャンバの底部セクションにあるとき、ピストンをその最も下の位置に制御することは、流体がアーティファクトを生じるのを効果的に防止するだろう。
【0072】
以下に、試料分離システムの別の実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態は流体供給システム、構成デバイス、方法およびソフトウェアプログラムまたは製品にも適用される。
【0073】
本発明の実施形態によると、試料分離システムはさらに、試料を移動相に投入するようになされている試料導入部、試料の分離した成分を検出するようになされている検出器、試料の分離した成分を捕集するようになされている捕集ユニット、液体分離システムから受信するデータを処理するようになされているデータ処理ユニット、移動相を脱気する脱気装置、試料の成分を分離するためのクロマトグラフィカラムなどの分離ユニットのうちの少なくとも1つを備える。
【0074】
本発明の実施形態は、Agilent 1290 Series Infinity システム、Agilent 1200 Series Rapid Resolution LCシステム、またはAgilent 1100 HPLCシリーズ(すべて本出願人のアジレント・テクノロジー-www.agilent.com-が提供し、参照によりこれに組み込むものとする)など、ごく普通に入手できるHPLCシステムに基づいて具現化してもよいだろう。
【0075】
HPLCシステムのある実施形態は、ポンプ作動チャンバ内の液体を液体の圧縮率が顕著になる高圧に圧縮して、前記液体を高圧で送出するためにポンプ作動チャンバで往復運動するためのピストンを有するポンピング装置を備える。
【0076】
HPLCシステムのある実施形態は、直列または並列のいずれかで連結されている2つのポンピング装置を備える。特許文献10で開示されるように、直列では、第1ポンピング装置の出口が第2ポンピング装置の入口に連結されて、第2ポンピング装置の出口がポンプの出口を提供する。並列では、第1ポンピング装置の入口が第2ポンピング装置の入口に連結されて、第1ポンピングシステムの出口が第2ポンピング装置の出口に連結されているので、ポンプの出口を提供する。いずれの場合も、第1ポンピング装置の液体出口は、第2ポンピング装置の液体出口に対して、好ましくは本質的に180度相シフトしているので、1つのポンピング装置だけがシステムに供給すると同時に、他方は液体を吸入することになり(例、供給から)、そのため出力で連続的な流れを提供することができる。しかし、少なくとも例えば一定の遷移相中は、2つのポンピング装置が並列に動作してもよいので、ポンピング装置間のポンピングサイクルの(より)滑らかな遷移を提供することは明らかである。相シフトは、液体の圧縮率から生じる液体の流れの脈動を補償するために変化してもよいだろう。約120度の相シフトを有する3つのピストンポンプを使用することも周知である。
【0077】
分離デバイスは、固定相を提供するクロマトグラフィカラムを備えることが好ましい。カラムはガラス管もしくはスチール管(例、直径が10μmから10nmで、長さが1cmから1m)またはマイクロ流体カラム(例えば特許文献11で開示されるもの、もしくは本出願人のアジレント・テクノロジーが提供するAgilent 1200 Series HPLC−Chip/MS System、例えば、http://www.chem.agilent.com/Scripts/PDS.asp?IPage=38308を参照)であってもよいだろう。個々の成分は固定相で別々に保持され、異なる速度で溶離液とともにカラムを伝達しているとき互いに分離する。カラムの末端で、分離されたほぼ1つずつを溶離する。全体のクロマトグラフィプロセス中またはその一定の相中、溶離液は一連の分画で捕集されてもよいだろう。カラムクロマトグラフィの固定相または吸着剤は通常固体材料である。カラムクロマトグラフィの最も一般的な固定相は、表面改質シリカゲルであり、その次はシリカゲルおよびアルミナである。以前はセルロース粉末がよく使われていた。イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ(RP)、順相クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ等が周知である。固定相は通常微粉またはゲルである一方、粒子は部分的もしくは全体的に、広い表面積を提供するメソ多孔性または微孔性にすることができる。また、高速液体クロマトグラフィ分離のために、連続多孔性固定相体を備えるモノリスカラムも存在する。
【0078】
移動相(または溶離液)は、純粋な溶媒または異なる溶媒の混合物のいずれかとすることができる。これは、例えば、問題の成分の保持を調整するため、および/または移動相の量を最小限にしてクロマトグラフィを実行するために選択することができる。移動相は好ましくは、異なる成分を効果的に分離および/または単離できるように選択することができる。移動相は、好ましくは水で希釈した例えばメタノールまたはアセトニトリルなどの有機溶媒を含んでもよいだろう。グラジエント動作のために、水および有機溶媒は個別の供給ラインまたは槽から送出してもよく、そこからグラジエントポンプがプログラミングされたブレンドをシステムに送出する。一般的に使用される他の溶媒は、イソプロパノール、THF、ヘキサン、エタノール、もしくは他の有機もしくは無機液体成分、および/またはそのあらゆる組み合わせもしくはこれらと前述の溶媒とのあらゆる組み合わせ、もしくは水を含めて前述の溶媒のいずれかを含む予め混合された混合物としてもよい。
【0079】
試料液体は、あらゆる種類のプロセス液、果汁などの天然試料、血漿などの体液を含んでもよいだろう、または発酵ブロスからなどの反応の結果としてもよい。
【0080】
流体は好ましくは液体であるが、気体および/もしくは超臨界流体(例えば特許文献12で開示される、例えば超臨界流体クロマトグラフィ―SFC―で使用されるもの)であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0081】
移動相の圧力は2〜200MPa(20〜2000バール)、特に10〜150MPa(100〜1500バール)、さらに特定すると50〜120MPa(500〜1200バール)の範囲としてもよいだろう。
【0082】
本発明の実施形態は1以上の適したソフトウェアプログラムによって部分的もしくは全体的に具現化またはサポートすることができ、前記ソフトウェアプログラムはあらゆる種類のデータキャリア上に記憶されまたはそれによって提供することができるとともに、あらゆる適したデータ処理ユニットでもしくはそれによって実行してもよいだろう。ソフトウェアプログラムまたはルーチンは制御ユニットに、もしくはそれによって適用することができることが好ましい。
【0083】
本発明の実施形態の他の目的および付随する利点の多くは、添付の図面に関連して以下の実施形態のより詳細な説明を参照すると容易に認識され、よりよく理解できるであろう。実質的もしくは機能的に等しいまたは類似の特徴は、同じ参照記号で参照する。図面の図は模式的なものである。