特許第6017571号(P6017571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017571
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】発酵トウモロコシグルテンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/12 20160101AFI20161020BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20161020BHJP
【FI】
   A23K10/12
   A23K10/30
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-535672(P2014-535672)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-528254(P2014-528254A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】KR2012009417
(87)【国際公開番号】WO2013069995
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年4月10日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0116043
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソ,サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソン チュン
(72)【発明者】
【氏名】カン,キョン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン チュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,テ チュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン ウォン
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−521629(JP,A)
【文献】 特開2002−253147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 水分含量が30〜70%(v/w)になるように水分が添加されたトウモロコシグルテンにバチルス菌を接種する工程と、
(b)前記トウモロコシグルテンに接種された菌を固体培養することによって発酵トウモロコシグルテンを得る工程とを含む、トウモロコシグルテンのタンパク質の含有量及び消化吸収率が発酵前に比べて向上した、飼料用の発酵トウモロコシグルテンの製造方法。
【請求項2】
前記水分が添加されたトウモロコシグルテンが、水分添加後50〜120℃の温度で5〜30分間熱処理されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バチルス菌が非病原性のバチルス菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非病原性のバチルス菌が、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)、バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルストヨイ(Bacillus toyoi)、バチルスコアグランス(Bacillus coagulans)及びバチルスポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)からなる群から選択されるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体培養温度が30〜45℃である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性タンパク源であるトウモロコシグルテンの品質を改良、又は改善するための発酵トウモロコシグルテンの製造方法、前記方法により製造された発酵トウモロコシグルテン及びこれを含む飼料添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人間に致命的な病気を引き起こす狂牛病(BSE)などの疾病が、飼料に添加される動物性タンパク質成分に起因すると判定されることによって、飼料に添加される動物性タンパク質を植物性タンパク質に代替しようという動きが、全世界的に急速に進んでいる。
【0003】
植物性タンパク質の原料としてトウモロコシグルテンが挙げられるが、トウモロコシグルテンの代表的な一般成分分析値は、水分8%、粗タンパク質60.4%、粗繊維7.7 %、粗脂肪2%、粗灰分6%のレベルである。特に、タンパク質においては含有量が高い場合、65%までの高い値を示しており、飼料として使用可能な植物性原料の中では最も高いタンパク質を含有している。一方、飼料用の動物性タンパク源の中でも最も優れたタンパク質含有量を有する魚粉は、60〜65%程度のタンパク質を含んでいる。
【0004】
しかし、一般に植物性タンパク質の場合、動物性タンパク質に比べて消化率が低く、必須アミノ酸の組成が良くなく、一部ビタミン、ミネラル及び成長因子(UGF)の含有量において優れていると言えない。さらに、トウモロコシグルテンはその製造工程上、変性した非溶解性タンパク質が主成分となっているため、大豆粕などの他の植物性タンパク質に比べても消化率が低く、飼料の使用量が制限されているのが実情である。
【0005】
したがって、トウモロコシグルテンを良質の高タンパク飼料として使用するためには、トウモロコシグルテンの品質、即ちタンパク質部分の消化率を向上させることのできる、安価で効率的に大量処理が可能な新しい加工方法の開発が求められている。
【0006】
トウモロコシグルテンの研究においては、トウモロコシグルテン加水分解物の製造方法、及びこれにより製造されたトウモロコシグルテン加水分解物(特許文献1)、トウモロコシ及び小麦グルテンを用いたペプチドの製造方法(特許文献2)、高濃度のグルタミン酸塩含有の天然複合アミノ酸調味料の製造方法(特許文献3)など、トウモロコシグルテンに酵素又は酸処理する方法を用いて、その利用性を改善する研究が幾つか行われてきた。しかし、このような研究は調味料製造のための酸加水分解や酵素分解工程を主とする方法に関するものであるため、製造コストが高く食品用としての使用は可能であるが、飼料用としては使用できないという欠点がある。このように、これまでトウモロコシグルテンの飼料利用性を高めるための研究はほとんど行われていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許 第2009-0121253号公報
【特許文献2】韓国公開特許 第1996-0022556号公報
【特許文献3】韓国公開特許 第2009-0076428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、タンパク質飼料源であるトウモロコシグルテンを改良及び改善することによって、トウモロコシグルテンの利用性を向上させるための生産システムの構築に鋭意努力を重ねた結果、バチルス菌を用いてトウモロコシグルテンを固体発酵させることにより、タンパク質の含有量を増加させるとともに、タンパク質の低分子化により消化吸収率と飼料利用効率の向上した、高品質の発酵トウモロコシグルテンの製造が可能であることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)水分が添加されたトウモロコシグルテンにバチルス菌を接種する工程と、(b)前記トウモロコシグルテンに接種された菌を固体培養して発酵トウモロコシグルテンを得る工程を含む、発酵トウモロコシグルテンの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記方法によって製造された、低分子化したタンパク質を含む発酵トウモロコシグルテンを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、前記発酵トウモロコシグルテンを含む飼料添加剤を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
(a)本発明は、タンパク質の含有量が高いにもかかわらず、消化率が低いために使用量が制限されているトウモロコシグルテンにバチルス菌株を接種し、固体培養することによって、タンパク質飼料源としての性質が改良又は改善された高品質の発酵トウモロコシグルテン及びその製造方法を提供する。
【0013】
(b)特に、本発明は、従来の類似した形態の発酵大豆粕に比べて15%以上高いタンパク質含有量を有するので、その価値及び活用性に優れている。従来の発酵大豆粕類の場合、タンパク質含有量は50〜55%レベルであるが、その含量が高タンパクである魚粉(60〜65%)と低タンパクの大豆粕(45%)の中間程度に位置することによって、高品質であるにもかかわらずその利用性が高くなかった。しかし、本発明の発酵トウモロコシグルテンは高タンパク製品である魚粉(60〜65%)と同レベルのタンパク質を含有しているので、特にその価値及び利用性に優れていると言える。
【0014】
(c)従来の酸又は酵素処理を経て製造した調味素材(食品用)のトウモロコシグルテンは、その工程が複雑であることと価格的な負担により、飼料用としては使用が不可能であったが、本発明は発酵トウモロコシグルテンが低い製造コストで生産できるため、トウモロコシグルテンの飼料利用性の向上を図ることができる。
【0015】
(d)さらに、本発明により製造された発酵トウモロコシグルテンは、最終製品にプロバイオティクスとしての効果を有するバチルス菌が胞子形状で残存しており、飼料摂取時に消化効果を最大限にし得るので、その価値がさらに高まる。
【0016】
(e)前述のように、本発明の発酵トウモロコシグルテンは、低分子化されたタンパク質などによる消化率の向上、及び高タンパク製品である魚粉と同様のタンパク質を含有するので、高品質の植物性タンパク質飼料源として幅広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、発酵トウモロコシグルテンを製造するための本発明の一実施例による工程を示す。
図2図2は、トウモロコシグルテンのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)の結果を示す。
図3図3は、トウモロコシグルテンの発酵条件によるタンパク質の分解図を示す。 (1)トウモロコシグルテン(対照群) (2)トウモロコシグルテン50%加水+ラクトバシラスプランタルーム(30℃、48時間培養) (3)トウモロコシグルテン70%加水+バチルスサブチルス(50℃、48時間培養) (4)トウモロコシグルテン40%加水+バチルスサブチルス(37℃、24時間培養) (5)トウモロコシグルテン50%加水+バチルスサブチルス(37℃、24時間培養) (6)トウモロコシグルテン50%加水+バチルスサブチルス(40℃、24時間培養)
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、以下の工程を含む発酵トウモロコシグルテンの製造方法を提供する。
(a)水分が添加されたトウモロコシグルテンにバチルス菌を接種する工程と、
(b)前記トウモロコシグルテンに接種された菌を固体培養して発酵トウモロコシグルテンを得る工程。
【0019】
以下、発酵トウモロコシグルテンを製造するための本発明の製造方法をその工程別に詳細に説明する。
【0020】
<(a)水分が添加されたトウモロコシグルテンにバチルス菌を接種する工程>
本発明に用いられるトウモロコシグルテンは、最終産物である発酵トウモロコシグルテンが同一の品質を維持できるように、同じ地域で生産された同じ種類のトウモロコシグルテンの供給を受けて用いることが望ましいが、原料のトウモロコシグルテンの品質の差が、発酵そのものにはさほど問題とはならない。トウモロコシグルテンはトウモロコシ中に存在するタンパク質を分離して乾燥した黄色の粉末であり、現在飼料としての利用性が高まっている。
【0021】
本発明に用いられる水分が添加されたトウモロコシグルテンは、水分を含有するものであれば、その出所に制限されることなく使用でき、例えば、既に水分を含むように前処理されたトウモロコシグルテンを入手して(購入等)使用したり、トウモロコシグルテンを加水処理して製造した水分含有トウモロコシグルテンを使用してもよい。この時、加水処理はトウモロコシグルテンに適量の水を直接噴霧、混合して水分量を調節することができる。
【0022】
好ましくは、前記水分が添加されたトウモロコシグルテンの水分含量は30〜70%(v/w)であってもよく、より好ましくは、40〜60%(v/w)であってもよい。水分含量が30%より低い場合は、低水分のためバチルス菌の発酵速度が遅くなり、特に発酵中における水分蒸発により、最終発酵後のバチルス菌が育ちにくい水分含量である20%レベルに達してしまうため適切でない。水分含量が70%を超過すると、乾燥工程でのコストが高いという問題が生じる。また、トウモロコシグルテンは粒子が小さいため凝集現象を引き起こし、発酵が不均一になってしまう 。
【0023】
好ましくは、前記トウモロコシグルテンに添加する水の温度は常温〜100℃であってもよく、より好ましくは、15〜100℃であってもよい。
【0024】
本発明の一実施例により、熱処理によるトウモロコシグルテンの固体発酵効率を確認した結果、トウモロコシグルテンの初期段階の蒸煮(熱処理)工程を省いても十分に発酵が可能であることが確認された。ただし、コストを下げるために菌株接種量を減らす際に、雑菌による汚染を防止するため熱処理をある程度行うことができるので、本発明は水分添加後に熱処理されたトウモロコシグルテンを用いてもよい。
【0025】
熱処理されたトウモロコシグルテンを用いる場合には、好ましくは、水分添加後に5分〜30分間、50〜120℃の温度で熱処理されたトウモロコシグルテンを使用することができる。
【0026】
本発明の方法によれば、前記水分が添加されたトウモロコシグルテンにバチルス菌を接種する。
【0027】
水分が添加されたトウモロコシグルテンに菌株を接種する場合、バチルス菌として培養液をそのまま接種したり、又は適宜に殺菌水で希釈するなどして、できるだけ均一に接種することが望ましい。
【0028】
接種量は107〜109cfu/gとなるようにすることが好ましく、熱処理されたトウモロコシグルテンに接種する場合には、殺菌効果があるため106〜109cfu/gとなるようにすることが好ましい。接種量が前記接種量より少ない場合、発酵に長時間を要するため経済的価値が下がり、雑菌による汚染の可能性も高くなるという欠点がある。接種量が109cfu/gを超過すると、接種菌生産の条件と培地組成が複雑になり、生産コストの負担が大きくなるので飼料製造への利用は困難となる。
【0029】
好ましくは、前記バチルス菌は非病原性のバチルス菌であってもよく、より好ましくは、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)、バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルストヨイ(Bacillus toyoi)、バチルスコアグランス(Bacillus coagulans)及びバチルスポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus)からなる群から選択されたバチルス菌であってもよい。
【0030】
<(b)トウモロコシグルテンに接種された菌を固体培養して発酵トウモロコシグルテンを得る工程>
本発明の特徴の一つは、バチルス菌を用いてトウモロコシグルテンを固体培養することによりトウモロコシグルテン内のタンパク質などを低分子化し、消化利用率を向上させることである。従来のトウモロコシグルテンは消化率が低いため飼料のタンパク質の供給源としての使用に制限があり、従来の酸加水分解や酵素分解工程によるトウモロコシグルテンの加工方法は、製造コストが高いため、食品用(調味料製造用)としての使用は可能であったが、飼料用としては使用できないという欠点があった。そこで、本発明はバチルス菌を用いた固体発酵によって低分子化されたタンパク質を含有するトウモロコシグルテンの製造方法を提供することによって、高タンパク質の供給源であるトウモロコシグルテンの飼料としての有用性を大幅に拡大することができる。
【0031】
本発明における用語、「固体培養(発酵)」とは、トウモロコシから大部分のデンプンと胚芽を取り除き、トウモロコシの糠の部分を分離した後に残るトウモロコシグルテンを使用して微生物を培養することを意味する。
【0032】
前記固体培養は、好ましくは30〜45℃、より好ましくは35〜40℃、最も好ましくは37℃の温度で行うことができる。
【0033】
前記発酵は、従来のジャン(醤)類及び発酵大豆粕の製造に使用される制麹機を用いたり、ドラム型の発酵槽を用いて製造することが最も好ましいが、これに限定されるものではなく、高水分の場合は液状培養タンクなどを活用する方法も可能である。
【0034】
<(c)発酵トウモロコシグルテンを乾燥及び粉砕する工程>
好ましくは、本発明の方法は、前記工程(b)の後に工程(c)の前記発酵トウモロコシグルテンを乾燥及び粉砕する工程をさらに含むことができる。恒温恒湿機や制麹機などを用いて固体発酵を進める場合、発酵終了後の残存水分含量が20〜50%(v/v)と非常に高く、最終的な水分含量を減らす工程が必要となる場合がある。
【0035】
前記乾燥及び粉砕は、当業界に公知の様々な方法で行うことができるが、過度に高温で乾燥した場合、最終製品のタンパク質がさらに変性を引き起こし、消化利用率に悪影響を与える可能性があるので注意する必要がある。好ましくは、粉砕方法はハンマーミル(hammer mill)を用いてもよい。
【0036】
前述の本発明の発酵トウモロコシグルテンの製造方法による一実施例の工程図を図1に示した。
【0037】
他の態様として、本発明の製造方法により製造された、低分子化したタンパク質を含有する発酵トウモロコシグルテンを提供する。
【0038】
前記発酵トウモロコシグルテンに関連して、発酵トウモロコシグルテンの製造方法において説明した事項と同様の内容については、繰り返しを避けるために省略した。
【0039】
本発明における用語、「低分子化したタンパク質」とは、トウモロコシグルテン内に含まれているトウモロコシのタンパク質(ゼインタンパク質)が固体発酵する過程でタンパク質分解酵素で分解されることによって、発酵する前のトウモロコシグルテンタンパク質よりも分子量の少ないタンパク質を意味する。本発明の発酵トウモロコシグルテンは、前記のような低分子化したタンパク質を含有することを特徴とする。
【0040】
好ましくは、前記発酵トウモロコシグルテンはタンパク質の含有量が62〜65%(w/w)であってもよい。このようなタンパク質の含有量は、高級な動物性タンパク質供給源である魚粉の含有量と同レベルであり、植物性タンパク質の供給源である発酵大豆粕のタンパク質含有量(48〜55%(w/w))よりも高いレベルを示す。
【0041】
本発明の一実施例においては、水分が添加されたトウモロコシグルテンをバチルスサブチルスを用いて固体培養したところ、乳酸菌を用いた固体培養とは異なり、トウモロコシグルテンミ内タのンパク質を分解することによって低分子化を成しえることが確認された(図3)。さらに、本発明の方法によって製造された発酵トウモロコシグルテンのタンパク質含有量が発酵前に比べて向上していることが確認された(表3)。以上のように、本発明によれば、トウモロコシグルテンをバチルス菌を用いて固体発酵させることによって、低分子化したタンパク質を含有し、かつこのようなタンパク質の含有量が増加した発酵トウモロコシグルテンを提供することにより、動物性タンパク質を代替できる高品質の植物性タンパク源としてトウモロコシグルテンの有用性を顕著に向上させることができる。
【0042】
本発明の他の態様として、本発明は発酵トウモロコシグルテンを含む飼料添加剤を提供する。
【0043】
本発明における用語、「飼料添加剤」とは、対象生物の生産性の向上、又は健康を増進させるために飼料に添加される物質を意味する。
【0044】
前記飼料添加剤は、当業界公知の様々な形態での製造が可能であり、個別に使用してもよく、従来公知の飼料添加剤剤と併用して使用することもできる。
【0045】
前記飼料添加剤剤は、動物性タンパク質を代替する含有量の高い植物性タンパク質供給源として適宜な組成比で飼料に添加することができるが、その組成比は当業者により容易に決定され得る。
【0046】
本発明の飼料添加剤はこれに限定されるものではないが、鶏、豚、猿、犬、猫、兎、牛、羊、山羊などの動物用飼料に添加することができ、特に本発明の飼料添加剤は発酵トウモロコシグルテンを含有することにより、多量の植物性タンパク質の供給と消化利用率の改善効果をもたらすことができる。
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるべきではないということは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0048】
〔実施例〕
<実施例1:トウモロコシグルテンの固体発酵に及ぼす熱処理の影響>
トウモロコシグルテンに同じ含量で水分を加水した後、60〜120℃で熱処理し、最適発酵温度である37℃に温度を下げた後、各実験群に対して同一の接種菌数でバチルスサブチルスを接種した。
【0049】
〔表1〕
熱処理に伴うトウモロコシグルテンの固体発酵
【表1】
【0050】
表1に示すように、熱処理の有無とは無関係に接種した菌が十分に育つことが確認された。このような結果により、トウモロコシグルテンミの場合、初期段階の蒸煮(熱処理)工程が無い場合でも十分に発酵が成されていることが確認できた。
【0051】
<実施例2:初期の加水含有量に応じたトウモロコシグルテンの発酵程度の確認>
初期の水分含量に応じた発酵の程度を確認するために、加水後の水分含量を30%、 40%、50%、60%、70%及び80%に調節したトウモロコシグルテンのバチルス菌株と乳酸菌をそれぞれ接種し、24時間発酵させた後の菌株数を測定し表2に示した。
【0052】
〔表2〕
初期の加水含有量に応じたトウモロコシグルテンの発酵の程度
【表2】
【0053】
その結果、表2に示されるように、初期の接種菌株が1.0×107cfu/gであることを考慮すると、トウモロコシグルテンの水分含量が30%である場合のバチルス菌株(1.2×107cfu/g)は若干増殖したが、ラクトバチルス菌株(8.2×106cfu/g)は増殖が行われなかった。さらに、バチルス菌株は水分含量40%以上において良好な増殖を示し、トウモロコシグルテンを用いて培養した場合、最小水分含量が30%以上であることが確認された。ラクトバチルス菌株の場合、バチルス菌株に比べて培養速度が遅く、特に水分含量40%以下ではほとんど増殖成されなかった。以上のような結果から、トウモロコシグルテンで良い成長を示すバチルス菌株のほうが乳酸菌に比べて最終製品の製造により適していることが分かる。
【0054】
<実施例3:トウモロコシグルテンの発酵条件応じたタンパク質の分解度の確認>
SDS-PAGEによってトウモロコシグルテン中に存在するタンパク質の種類を確認し、その結果を図2に示した。図2に示すように、トウモロコシグルテンは単純に2種類のタンパク質から成ることが分かる。
【0055】
図2に示されるトウモロコシグルテンの主要タンパク質を発酵によって低分子化する場合、最終製品の消化利用率を高めることができ、実際の発酵条件に応じたトウモロコシグルテン内のタンパク質の分解の有無を確認した。加水後の水分含量が50%のトウモロコシグルテンにラクトバチルスプランタルムを接種し、30℃で48時間培養した後のトウモロコシグルテン構成タンパク質の分解結果(2)、加水後の水分含量が70%のトウモロコシグルテンにバチルスサブチスを接種し、50℃で48時間培養した後のトウモロコシグルテン構成タンパク質の分解結果(3)、加水後の水分含量が40%のトウモロコシグルテンにバチルスサブチルスを接種し、37℃で24時間培養した後のトウモロコシグルテン構成タンパク質の分解結果(4)、加水後の水分含量が50%のトウモロコシグルテンにバチルスサブチルスを接種し、37℃及び40℃で24時間培養した後のトウモロコシグルテン構成タンパク質の分解結果(5、6)を図3に示した。
【0056】
その結果、図3に示されるとおり、ラクトバチルスプランタルム(乳酸菌)の場合、トウモロコシグルテンの主な2つのタンパク質であるゼインタンパク質をよく分解できなかったが(2)、バチルスサブチルスはタンパク質分解率が高いことが確認された(4〜6)。一方、バチルス実験群のうち(3)の場合は低い発酵程度を示したが、これはバチルス菌株が育つことができる最適な温度よりも高い50℃で培養することによるものと判断される。これらの結果により、最終製品の製造条件として、最大でも45℃以下で行う場合に最適な結果が得られることが分かる。
【0057】
<実施例4:トウモロコシグルテン発酵後のタンパク質含有量の確認>
実施例3の条件でトウモロコシグルテンを発酵させた後、発酵トウモロコシグルテンのタンパク質含有量を測定した。実験方法は実施例3と同様であり、タンパク質含有量の測定実験にはケルダール法(Kjeldahl method)を用い、機器はFOSS Kjeltec 8400を使用した。これに関連する実験結果は表3に示した。
【0058】
〔表3〕
【表3】
【0059】
その結果、発酵後のトウモロコシグルテンのタンパク質含有量は、全て62〜65%のレベルであり、発酵前の62%程度のタンパク質含有量に比べてわずかに増加していることが確認された。前記発酵トウモロコシグルテンのタンパク質含有量は、高級な動物性タンパク製品である魚粉と同等の含有量を示す。このような結果は、本発明による方法で製造された発酵トウモロコシグルテンが、動物性タンパク源を代替する高品質の植物性タンパク源として有用であることを示すものである。
図1
図2
図3