特許第6017574号(P6017574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017574
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】参照ピクチャマーキング
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20161020BHJP
   H04N 19/157 20140101ALI20161020BHJP
   H04N 19/172 20140101ALI20161020BHJP
   H04N 19/70 20140101ALI20161020BHJP
【FI】
   H04N19/105
   H04N19/157
   H04N19/172
   H04N19/70
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-537027(P2014-537027)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公表番号】特表2014-533006(P2014-533006A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】SE2012051140
(87)【国際公開番号】WO2013062470
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/550,646
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】サムエルソン, ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】フェーバリ, リキャルド
【審査官】 山▲崎▼ 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/043887(WO,A1)
【文献】 Benjamin Bross, et al.,WD5: Working Dreft 5 of High-Efficiency Video Coding,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH, 21-30 November, 2011,2012年 1月19日,JCTVC-G1103_d6,JCTVC-G1103 (version 9),URL,http://phenix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/current_document.php?id=4349
【文献】 Rickard Sjoberg, Jonatan Samuelsson,Absolute signaling of reference pictures,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 6th Meeting: Torino, 2011,2011年 7月22日,JCTVC-F493,URL,HTTP://WFTP3.ITU.INT/AV-ARCH/JCTVC-SITE/2011_07_F_Torino/JCTVC-F493-v8.zip
【文献】 Rickard Sjoberg, Jonatan Samuelsson,AHG21: Long-term pictures and pruning of reference picture sets,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH, 21-30 November, 2011,2011年11月 9日,JCTVC-G637,URL,HTTP://WFTP3.ITU.INT/AV-ARCH/JCTVC-SITE/2011_11_G_Geneva/JCTVC-G637-v2.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダによって実行される方法であって
エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される前記参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化することと、
前記参照ピクチャセットの中で指示されたピクチャ順序カウント(POC)値を復号化することと、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断することと、を含み、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持することと、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在しないときには、前記短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、それを前記復号化ピクチャバッファ内で保持することと、を含み、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持することと、を含む方法。
【請求項2】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するための非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されたコンピュータプログラムあって、前記コンピュータプログラム、デコーダのプロセッサで実行されると、前記プロセッサに、
エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される前記参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化させ、
前記参照ピクチャセットの中で指示されたピクチャ順序カウント(POC)値を復号化させ、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断させ、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持させ、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在しないときには、前記短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、それを前記復号化ピクチャバッファ内で保持させ、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持させる
ソフトウェア命令を備える、コンピュータプログラム
【請求項3】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダであって、前記デコーダは、エンコーダから受信された参照ピクチャセットを復号化するように構成されており、前記参照ピクチャセットは、復号化ピクチャバッファ内で保持され前記参照ピクチャセットの中で指示されたピクチャ順序カウント(POC)値を復号化する前記参照ピクチャの情報を備え、前記デコーダは、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を有する長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応するときには、前記長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を有する短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を有する長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在しないときには、前記短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、それを前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャに対応するときには、前記短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持する
ように構成されたプロセッサを備えている、デコーダ。
【請求項4】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を符号化するため使用される参照ピクチャを管理するエンコーダによって実行される方法であって
ピクチャ順序カウント(POC)値を割り当てることと、前記割り当てられたPOC値をデコーダに送信される参照ピクチャセットに組み込むことを含み、ここで前記POC値は、デコーダが以下のステップ:
エンコーダから受信された、前記デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される前記参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化し、
前記参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値を復号化し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在しないときには、前記短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、それを前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持する
ことができるように選択される、方法。
【請求項5】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を符号化するため使用される参照ピクチャを管理するエンコーダであって、前記エンコーダは、ピクチャ順序カウント(POC)値を割り当て、前記割り当てられたPOC値をデコーダに送信される参照ピクチャセットに組み込むプロセッサを備え、ここで前記POC値は、デコーダが以下のステップ:
エンコーダから受信された、前記デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される前記参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化し、
前記参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値を復号化し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が長期参照ピクチャに対応する場合で:
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在し、前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在しないときには、前記短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、それを前記復号化ピクチャバッファ内で保持し、
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値が短期参照ピクチャに対応する場合で:
前記参照ピクチャセットの中で指示された前記POC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが前記復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、前記短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして前記復号化ピクチャバッファ内で保持する
ことができるように選択される、エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダおよびエンコーダと、デコーダおよびエンコーダの方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
高効率映像符号化(HEVC)は、共同研究部会−映像符号化(JCT−VC)において現在開発中の新しい映像符号化標準である。JCT−VCは、動画像専門家グループ(MPEG)と国際電気通信連合−電気通信標準化部門(ITU−T)との間の共同プロジェクトである。現在のところ、ある程度の数の新しいツールを含み、H.264/最新映像符号化(AVC)よりかなり効率的であるHEVCモデル(HM)が規定されている。
【0003】
HEVCにおけるピクチャは、1つ以上のスライスに区分化され、各スライスは、独立に復号化可能なピクチャのセグメントである。すなわち、スライスが抜けている場合、たとえば、伝送中に失われた場合、このピクチャの他のスライスは、それにもかかわらず、正確に復号化される可能性がある。スライスを独立にするために、スライスは互いに依存しない。同じピクチャの別のスライスのビットストリーム要素は、ある特殊なスライスのいかなる要素を復号化するためにも必要とされることがない。
【0004】
各スライスは、スライスが独立に復号化可能であるため必要な全てのデータを独立に提供するスライスヘッダを含んでいる。スライスヘッダに存在するデータ要素の一例は、デコーダがこのスライスの空間的位置を知るために使用されるスライスアドレスである。別の例は、ピクチャを復号化するときにどの参照ピクチャが使用されるかについての情報を含んでいる参照ピクチャセットと呼ばれることもあるバッファ記述である。しかし、これらは、スライスヘッダ内のデータ要素の例に過ぎない。
【0005】
HEVCは、参照ピクチャを取り扱う仕組みを有している。参照ピクチャは、現在ピクチャの復号化のため使用される予め復号化されたピクチャである。復号化ピクチャバッファ(DPB)は、デコーダによって復号化されたピクチャを含んでいる。HEVCにおける参照ピクチャは、「参照用」としてマーク付けされることにより参照のため利用可能である復号化ピクチャバッファ(DPB)内のピクチャである。DPB内には、「非参照用」としてマーク付けされたピクチャも存在することがあり、これらのピクチャは、参照のため利用可能ではなく、参照ピクチャではない。
【0006】
HEVCは、参照ピクチャの絶対シグナリングを使用する。絶対シグナリングは、どんな参照ピクチャをデコーダで保持すべきかをシグナリングすることにより実現される。シグナリングは、ピクチャ毎に明示的に、または、シーケンス・パラメータ・セット(SPS)への参照を使用することにより、参照ピクチャセット(RPS)と呼ばれることもあるバッファ記述の中で行われる。RPSは、現在ピクチャによりどのピクチャが参照のため使用される可能性があるかについてのピクチャの指示をさらに含んでいる。現在ピクチャによって使用されることが指示された参照ピクチャは、デコーダにおいて参照ピクチャリストの中に組み込まれる。参照ピクチャリストは、その後、現在ピクチャの現在スライスの復号化プロセスで使用される。
【0007】
RPSの中の各参照ピクチャは、短期ピクチャまたは長期ピクチャのいずれかとして識別される。短期参照ピクチャであるかまたは長期参照ピクチャであるかの情報は、1つが全て短期参照ピクチャであり、1つが全て長期参照ピクチャである2つの別個のセットを送信することにより、RPSの中でシグナル通知される。代替的な設計は、単一のリストを送信すること、また、要素毎に、フラグを使って長期参照ピクチャであるか、または、短期参照ピクチャであるかを指示することであろう。
【0008】
ピクチャ順序カウント(POC)は、ピクチャの出力順序(または表示順序)を規定し、そして、参照ピクチャを識別するためにもHEVCにおいて使用される。POCを導き出すために使用された構文要素は、RPS内の参照ピクチャ毎にシグナル通知される。短期参照ピクチャに関して、RPS内のPOCの値は、RPS内のPOCの値が参照している参照ピクチャのスライスヘッダの中でシグナル通知されたPOCの値と同一であるに違いない。長期参照ピクチャに関しては、2つの選択肢があり、RPS内のPOCの値がRPS内のPOCの値が参照している参照ピクチャのスライスヘッダの中でシグナル通知されたPOCの値と同一であるか、または、RPS内のPOCの値は、参照ピクチャが一意に識別可能となるように、RPSの中のPOCの値が参照している参照ピクチャのスライスヘッダの中でシグナル通知されたPOCの値のより一層短い表現(ピクチャ順序カウント値の最下位ビット、すなわち、POC_LSBとしても知られている)であるかのいずれかである。後者は、特定のPOC_LSBを持つ唯一のピクチャがDPBの中に存在するときに限り許可される。長期参照ピクチャに関して、用語「〜に対応する」は、2つの上記選択肢のいずれかを使用する参照ピクチャの識別を表示するために使用される。
【0009】
バッファ記述がHEVCに組み込むため当初に提案されたとき、この提案は、DPB内に存在するが、RPSに含まれていない参照ピクチャが現在ピクチャの復号化前に「非参照用」としてマーク付けされるように実行されるマーキングプロセスを含んでいた。出力プロセスも現在ピクチャの復号化前に実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実施形態の目的は、改善された参照ピクチャ取り扱いを実現することである。これは、参照ピクチャセットの情報が受信されたときに参照ピクチャがどのようにマーク付けされるべきかを判断するとき、復号化ピクチャバッファ内の参照ピクチャが長期参照ピクチャであるか、または、短期参照ピクチャであるかを考慮することにより実現される。参照ピクチャは、これらの参照ピクチャが現在ピクチャのRPSの中で短期ピクチャまたは長期ピクチャのいずれとして含まれているかに依存して、復号化ピクチャバッファ(DPB)内で「短期参照用」または「長期参照用」としてマーク付けされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る第1の態様によれば、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダによって実行される方法が提供される。この方法では、エンコーダから受信された参照ピクチャセットが復号化され、参照ピクチャセットは、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える。参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が復号化され、また、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かが判断される。参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、また、これを復号化ピクチャバッファ内で保持し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持する。
【0012】
実施形態に係る第2の態様によれば、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダが提供される。デコーダは、エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化し、また、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値を復号化するように構成されている。デコーダは、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するように構成されているプロセッサを備える。さらに、プロセッサは、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応するとき、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するように構成され、プロセッサは、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応するとき、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、これを復号化ピクチャバッファ内で保持するようにさらに構成されている。プロセッサは、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応するとき、この短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するようにさらに構成されている。
【0013】
実施形態に係る第3の態様によれば、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を符号化するため使用される参照ピクチャを管理するエンコーダによって実行される方法が提供される。この方法では、POC値が割り当てられ、デコーダが以下のステップ:
エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化するステップと、
参照ピクチャセットの中で指示されたピクチャ順序カウントPOC値を復号化するステップと、また、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するステップと、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップと、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、これを復号化ピクチャバッファ内で保持するステップと、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップと、を実行し、また、
割り当てられたPOC値を、デコーダに送信され、デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットに組み込むステップと、を実行できるように、POC値が選択される。
【0014】
実施形態に係る第4の態様によれば、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を符号化するため使用される参照ピクチャを管理するエンコーダが提供される。エンコーダは、POC値を割り当てるプロセッサを備え、デコーダが以下のステップ:
エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化するステップと、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値を復号化するステップと、また、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するステップと、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ(206)と、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、これを復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ(207)と、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応する場合で
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ(208)と、を実行できるように、POC値が選択される。
また、プロセッサは、割り当てられたPOC値をデコーダに送信される参照ピクチャセットに組み込むようにさらに構成されており、参照ピクチャセットは、デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える。
【発明の効果】
【0015】
実施形態の利点は、ピクチャマーク付けプロセスを実行するときに復号化ピクチャバッファ内の参照ピクチャが長期参照ピクチャまたは短期参照ピクチャであるか否かを考慮に入れることが誤りのあるビットストリームを検出する可能性を改善し、したがって、たとえば、誤りがちなネットワークにおける誤り検出のため役立つことである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る参照ピクチャ取り扱いを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るデコーダにおける方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態との関連でエンコーダを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るデコーダを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るエンコーダにおける方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に関連して、エンコーダ300は、参照ピクチャのPOCを参照ピクチャセット(RPS)101に組み込むことにより、特殊なピクチャの復号化のためどの参照ピクチャを使用するかに関して、デコーダ400に通知する。RPSは、特殊なピクチャのためのスライスヘッダまたは他の制御情報のいずれかでピクチャ毎に送信される。デコーダ400は、復号化されたピクチャを復号化ピクチャバッファ(DPB)103に格納し、DPBのピクチャを参照用または非参照用のいずれかとしてマーク付けする。HEVCでは、マーキングは、現在ピクチャの復号化前に実行される。
【0018】
参照ピクチャは、短期(st)参照ピクチャまたは長期(lt)参照ピクチャのいずれかとしてRPS101に組み込まれ、実施形態によれば、長期ピクチャとして一旦RPSに組み込まれたピクチャが後で、短期ピクチャとしてDPBに組み込まれるか、または、短期ピクチャに変換される可能性がない、という制約がある。したがって、参照ピクチャは、現在ピクチャのRPSの中に短期ピクチャまたは長期ピクチャとして組み込まれるか否かに依存して、復号化ピクチャバッファ(DPB)の中で「短期参照用」または「長期参照用」としてマーク付けされる。
【0019】
参照用としてマーク付けされたDPB内の各ピクチャのPOCが、たとえば、RefPicSetLtCurr、RefPicSetLtFoll、RefPicSetStCurrBefore、RefPicSetStCurrAfterまたは RefPicSetStFollと表される参照ピクチャリスト105a、105bに挿入される。長期参照ピクチャのPOCは、RefPicSetLtCurrまたはRefPicSetLtFollに挿入され、短期参照ピクチャのPOCは、RefPicSetStCurrBefore、RefPicSetStCurrAfterまたはRefPicSetStFollに挿入される。
【0020】
これらのリスト105a、105b中の参照ピクチャのPOCから、デコーダ400は、復号化のためデコーダによって使用されるべき参照ピクチャのPOCを含んでいる最終的な参照ピクチャリスト107を構築する。実施形態に係るこの手順は、以下の実施例により示される。
【0021】
その上、実施形態は、デコーダとの関連で説明されているが、エンコーダは、復号化ピクチャが作成されるべきであるように正確に作成されることを保証するためにデコーダの動きを模倣するので、実施形態は、エンコーダにも当てはまることに注意すべきである。エンコーダは、符号化する各ピクチャにどのPOCを割り当てるかを判断し、そして、どの旧ピクチャを参照ピクチャとして保持することを望むか、どのピクチャが短期であるべきか、どれが長期であるべきかを判断する。エンコーダは、旧判断に束縛されるとはいえ、ピクチャが先に長期としてマーク付けされている場合、このピクチャは、短期として再びマーク付けされる可能性がなく、非参照用としてマーク付けされたピクチャは、いずれの将来のピクチャ等においても参照用として使用される可能性がない。
【0022】
エンコーダでは、図5のフローチャートに示された以下のステップが実行される。
501:エンコーダは、現在ピクチャのPOCを選択する。したがって、エンコーダは、現在ピクチャを識別するためにデコーダにシグナル通知すべきPOC値を選択する。エンコーダは、ビットストリームを、POCが出力順序を表現すべきであるというようないずれかのビットストリーム要件と衝突させることがない限り、いずれのPOC値を選択してもよい。このことは、デコーダが本発明の実施形態によって挙動することが可能であるように、POC値がエンコーダによって割り当てられなくてはならないことを暗示する。POCに加えて、エンコーダは、使用する参照ピクチャと、どれが短期であるべきかと、どれが長期であるべきかと、を制御するためにRPS構文をデコーダにさらに送信する。
【0023】
502:エンコーダは、現在ピクチャによって使用される、または、現在ピクチャの後に続くピクチャによって使用されてもよい全ての短期参照ピクチャおよび長期参照ピクチャのPOCを含むRPSを符号化する。
【0024】
503:ピクチャは、RPSによって指示された参照ピクチャを使用して符号化される。
【0025】
その結果、映像シーケンスのピクチャの符号化表現を符号化するため使用される参照ピクチャを管理するエンコーダが提供される。エンコーダは、デコーダが以下のステップ:
エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化するステップ201と、
参照ピクチャセットの中で指示されたピクチャ順序カウントPOC値を復号化するステップ202と、また、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するステップ203と、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOCが長期参照ピクチャに対応する場合で:
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ206と、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、これを復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ207と、を実行し、
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応する場合で:参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、この短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するステップ208と、を実行できるようにPOC値を割り当てるプロセッサを備え、プロセッサは、割り当てられたPOC値を、デコーダに送信される参照ピクチャセットに組み込むようにさらに構成され、参照ピクチャセットは、デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える。
【0026】
デコーダにおいて、本発明の実施形態に係る以下のステップが実行される:
1. 今度は図2のフローチャートを参照すると、デコーダは、たとえばスライスヘッダで、現在ピクチャとこのピクチャのためのRPSとを受信し、ピクチャを復号化する前に現在ピクチャのRPSを復号化201する。好ましくは、DPB内の長期参照ピクチャは、1つの参照ピクチャが短期および長期の両方の参照ピクチャとして参照ピクチャリストの中に組み込まれることを避けるべくDPB内の参照ピクチャをマーク付けするために、短期参照ピクチャの前に取り扱われる。
【0027】
2. RPSの各参照ピクチャのPOCが復号化され202、以下のステップが実行される:
a)参照ピクチャのPOCがPOCyを持つ長期参照ピクチャとしてRPSに組み込まれ(203)、かつ、「長期参照用」としてマーク付けされ、このPOCyを持つ参照ピクチャがDPB内に存在する場合205、このピクチャは、「長期参照用」としてDPB内で保持される206。
b)参照ピクチャのPOCが長期参照ピクチャとしてRPSに組み込まれ203、かつ、「短期参照用」としてマーク付けされ、このPOCを持つピクチャがDPB内に存在する場合205、このピクチャは、「長期参照用」として再びマーク付けされてDPB内で保持される207。一実施形態によれば、ステップ206(参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に一致するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在する場合、この長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持する)は、ステップ207(参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に一致するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在する場合、この短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けし、これを復号化ピクチャバッファ内で保持する)の前に実行される。すなわち、ステップ206が実行され、ステップ206の条件が満たされない場合、ステップ207が実行される。
すなわち、
if( there is a long−term reference picture picX in the DPB
with pic_order_cnt_lsb equal to PocLtCurr[i] )
RefPicSetLtCurr[i] = picX
else if( there is a short−term reference picture picY in the DPB
with pic_order_cnt_lsb equal to PocLtCurr[i] )
RefPicSetLtCurr[i] = picY
(PocLtCurr[i]に一致するpic_order_cnt_lsbを持つ長期参照ピクチャpicXがDPBに存在する)場合、
RefPicSetLtCurr[i]]=picX
さもなければ(PocLtCurr[i]に一致するpic_order_cnt_lsbを持つ短期参照ピクチャpicYがDPBに存在する)場合、
RefPicSetLtCurr[i]=picY
である。
ここで、pic_order_cnt_lsb は、POC値であり、PocLtCurr[i]は、RPS内の長期参照ピクチャのリストであり、また、RefPicSetLtCurr[i]は、長期参照ピクチャを包含する参照ピクチャリストである。
c)そうでなければ、参照ピクチャのPOCが短期参照ピクチャとしてRPSに組み込まれる場合(203)、かつ、「短期参照用」としてマーク付けされた、POCを持つピクチャがDPB内に存在する場合、このピクチャは、「短期参照用」としてマーク付けてDPB内で保持される208。
すなわち、
for( i = 0; i < NumPocStCurrBefore; i++ )
if( there is a short−term reference picture picX in the DPB
with PicOrderCntVal equal to PocStCurrBefore[i])
RefPicSetStCurrBefore[i] = picX
else
RefPicSetStCurrBefore[i] = “no reference picture”
(i=0;i<NumPocStCurrBefore;i++)に関して、
(PocStCurrBefore[i]に一致するPicOrderCntValを持つ短期参照ピクチャpicXがDRPに存在する)場合、
RefPicSetStCurrBefore[i]=picX
さもなければ
RefPicSetStCurrBefore[i]=“参照ピクチャなし”
である。
ここで、PicOrderCntValは、POC値であり、PocStCurrBefore[i]は、RPS内の長期参照ピクチャのリストであり、また、RefPicSetStCurrBefore[i]は、短期参照ピクチャを包含する参照ピクチャリストである。
RefPicSetStCurrBefore、RefPicSetStCurrAfterおよびRefPicSetStFollに組み込まれている全ての参照ピクチャは、既に「短期参照用」としてマーク付けされている。
【0028】
3. RPSに組み込まれていないDPB内の全てのピクチャは、「非参照用」としてマーク付けされる。すなわち、RefPicSetLtCurr、RefPicSetLtFoll、RefPicSetStCurrBefore、RefPicSetStCurrAfterまたはRefPicSetStFollに組み込まれていない、復号化ピクチャバッファ内の全ての参照ピクチャは、「非参照用」としてマーク付けされる。
【0029】
4. RefPicSetLtCurr、RefPicSetLtFoll、RefPicSetStCurrBefore、RefPicSetStCurrAfterまたはRefPicSetStFollからの参照ピクチャを包含している参照ピクチャリストがデコーダで作成される。現在ピクチャは、参照ピクチャリストの参照ピクチャを使用して復号化される。
【0030】
実施形態に係るデコーダにおいて実行されるステップを系統立てる別の方式は、以下のとおりである:
1. デコーダは、(ピクチャを復号化する前に)現在ピクチャのRPSを復号化する。
【0031】
2. シグナル通知され、POC=Xを持つ長期参照ピクチャがRPS内に存在し、かつ、「長期参照用」としてマーク付けされ、POC=Xを持つピクチャがDPB内に存在せず、かつ、「短期参照用」としてマーク付けされ、POC=Xを持つピクチャがDRB内に存在する場合、このピクチャは、「長期参照用」としてマーク付けされる。
【0032】
3. RPSに組み込まれていないDPB内に存在するピクチャの全てのPOCは、「非参照用」としてマーク付けされる。
【0033】
4. 現在ピクチャが復号化される。
【0034】
5. 現在ピクチャが「短期参照用」としてマーク付けされる。それ故に、各復号化ピクチャは、復号化された直後に短期参照ピクチャとしてマーク付けされる。復号化ピクチャが長期参照ピクチャであるべき場合、このピクチャは、直ぐ隣のピクチャにおいて長期参照ピクチャとしてマーク付けされるべきである。ピクチャは、マーキング(本事例では、長期へのマーキング)が次のピクチャの実際のピクチャ復号化の前に行われるので、その後、短期として実際に使用されることは決してない。
【0035】
RPS内にあるが、「短期参照用」または「長期参照用」としてマーク付けされた、対応するピクチャがDPB内にないピクチャのPOCは、他の構文要素、たとえば、used_by_curr_picフラグに依存して、損失ピクチャとして推定されてもよい。
【0036】
図2のフローチャートに示されるように、映像シーケンスビットストリームのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダによって実行される方法が一実施形態により提供される。
【0037】
エンコーダから受信された参照ピクチャセットは復号化され201、参照ピクチャセットは、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える。参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値は、復号化され202、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かが判断される203。参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応する場合203で、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには205、長期参照ピクチャは、長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持される206。
【0038】
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応する場合203で、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには205、短期参照ピクチャは、長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内でマーク付けされ、復号化ピクチャバッファ内で保持される207。
【0039】
参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応する場合203で、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するときには、短期参照ピクチャは、短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持される208。
【0040】
長期参照ピクチャおよび短期参照ピクチャは、それぞれに対応して「長期参照用」および「短期参照用」としてDRB内でマーク付けされている点を唯一の違いとして、同じ種類のピクチャである。このマーキングを有している理由は、
1)これらのピクチャをより一層効率的にシグナル通知できるようにすること(短期ピクチャは、可変長符号を用いて符号化される可能性がある一方で、長期参照ピクチャは、固定長符号を用いて符号化される可能性がある)。
2)復号化プロセスにおいてそれぞれにこれらのピクチャを取り扱うこと(たとえば、短期ピクチャからの動きベクトルは、動きベクトルスケーリングにおいて拡大縮小されてもよい一方で、長期ピクチャからの動きベクトルは、そうではない)。
である。
【0041】
短期と長期との間でPOCステップに明確な差異が存在する必要はなく、これらは、たとえば、1POCステップ分離れたところにまで、現在ピクチャに接近する可能性がある。しかし、1つの代替案は、長期ピクチャが現在ピクチャと比べて負のDiffPOCを有する必要があること、すなわち、出力順序で現在ピクチャより先行しなければならないことを判断することである。
【0042】
実施形態に係る方法は、プロセッサによってロードされ、実行されたときに、実施形態に係る方法を実行させるコンピュータ・プログラム・コード手段を用いて符号化されたコンピュータプログラム製品によって実施される可能性がある。
プロセッサによってロードされ、実行されたときに、実施形態に係る方法を実行させる命令を用いて符号化されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、さらに提供される。
【0043】
1つの代替案では、好ましくはPOCステップで表現されている、特定の期間より長くDPB内に存在している参照ピクチャは、バッファ記述で長期ピクチャとしてシグナル通知されなければならない、という制約がある。
【0044】
1つの代替案では、表示(出力)された参照ピクチャは、現在ピクチャと比べてこれらの参照ピクチャのDiffPOC()が正である場合、現在ピクチャのバッファ記述に短期参照ピクチャとして組み込まれる可能性がない、という制約がある。
【0045】
1つの代替案では、現在ピクチャが長期ピクチャとして使用される可能性があるか否かを指示するために、たとえばスライスヘッダにおいて、ピクチャ毎に送信された構文要素、たとえばフラグまたはidが存在する。好ましくは、ピクチャAは、Aが復号化されたときに、同じPOCを持つ長期参照ピクチャがDPB内に存在しない場合、Aが長期参照のため使用されてもよいとしか指示できない、という制約がある。別の代替案では、参照ピクチャリスト構造は、一方のピクチャが長期ピクチャであり、他のピクチャが短期ピクチャである、同じPOCを持つ2つのピクチャを許容する。好ましくは、短期ピクチャは、参照ピクチャリストの中で長期ピクチャより前に位置する。
【0046】
本発明の実施形態は、実施形態に係るエンコーダおよび/またはデコーダを備える適当な映像コーデックに適用されてもよい。
【0047】
前述のとおり、上述の仕組みは、エンコーダにおいて、そして、デコーダにおいても両方で実施される。エンコーダおよびデコーダは、それぞれ、上記実施形態に係る機能を実行するように構成されているプロセッサを備える。さらにエンコーダおよびデコーダは、それぞれ、たとえば、RPS、復号化ピクチャ、および参照ピクチャリスト中の参照ピクチャのような他のピクチャ情報を記憶するメモリを備える。メモリは、プロセッサが実施形態に係るステップを実行できるようにプロセッサで実行される命令をさらに備えてもよい。
【0048】
図3は、概略的に、本発明の実施形態との関連でエンコーダを示す。
【0049】
それに応じて、1つ以上のプロセッサと、たとえば、1つ以上のメモリとを備えるエンコーダ、実施形態に係る方法を実施するように構成されている。
【0050】
図3は、エンコーダ300のいくつかのコンポーネントを表す概略図である。エンコーダは、プロセッサ302を備える。プロセッサ302は、1つ以上のメモリ301に記憶されたコンピュータプログラムに格納されたソフトウェア命令を実行する能力がある、適当な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)などの中で1つ以上のどのような組み合わせでもあり得る。
【0051】
したがって、参照ピクチャを使用して複数のピクチャの映像シーケンスの現在ピクチャの表現を符号化するように構成されているエンコーダ300が、図3に示される。エンコーダは、現在ピクチャに対するPOC値を割り当てるように構成されているプロセッサ302を備え、POC値は、デコーダが本発明の実施形態による方法を実行できるように割り当てられる。プロセッサ302は、割り当てられたPOC値をデコーダに送信される参照ピクチャに組み込むように構成され、参照ピクチャセットは、デコーダの復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える。それ故に、エンコーダは、現在ピクチャによって使用されるか、または、現在ピクチャの後に続くピクチャによって使用されてもよい全ての短期参照ピクチャおよび長期参照ピクチャを含んでいるRPSを符号化し、そして、RPSに組み込まれている参照ピクチャの全部または一部を使用して現在ピクチャを符号化するように構成されている。
【0052】
図4は、概略的に、本発明の一実施形態に係るデコーダを示す。
【0053】
それに応じて、1つ以上のプロセッサと、たとえば、1つ以上のメモリとを備えるデコーダ、実施形態に係る方法を実施するように構成されている。
【0054】
図4は、デコーダ400のいくつかのコンポーネントを表す概略図である。デコーダは、プロセッサ402を備える。プロセッサ402は、1つ以上のメモリ401に記憶されたコンピュータプログラムに格納されたソフトウェア命令を実行する能力がある、適当な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)などの中で1つ以上のどのような組み合わせでもあり得る。
【0055】
映像シーケンスのピクチャの符号化表現を復号化するため使用される参照ピクチャを管理するデコーダ400が一実施形態により提供される。デコーダは、エンコーダから受信された、復号化ピクチャバッファ内で保持される参照ピクチャの情報を備える参照ピクチャセットを復号化し、また、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値を復号化するように構成されている。デコーダは、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するように構成されているプロセッサ402を備える。プロセッサ402は、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ長期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応するときに、長期参照ピクチャを長期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するように構成されている。プロセッサ402は、復号化ピクチャバッファで短期参照ピクチャを長期参照ピクチャとしてマーク付けし、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が長期参照ピクチャに対応するときに、これを復号化ピクチャバッファ内で保持するようにさらに構成されている。さらに、プロセッサ402は、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値に対応するPOC値を持つ短期参照ピクチャが復号化ピクチャバッファ内に存在するとき、かつ、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャに対応するときに、短期参照ピクチャを短期参照ピクチャとして復号化ピクチャバッファ内で保持するようにさらに構成されている。
【0056】
一実施形態によれば、プロセッサは、POC値が長期参照ピクチャに対応する場合に、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値がPocLtCurrまたはPocLtFollのリストのうちの1つに含まれているか否かを判断することにより、または、POC値が短期参照ピクチャに対応する場合に、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値がPocStCurrBefore、PocStCurrAfterまたはPocStFollのリストのうちの1つに含まれているか否かを判断することにより、参照ピクチャセットの中で指示されたPOC値が短期参照ピクチャまたは長期参照ピクチャに対応するか否かを判断するように構成されている。
【0057】
その上、参照ピクチャセットの中の長期参照ピクチャは、復号化ピクチャバッファで参照ピクチャをマーク付けするために短期参照ピクチャの前に取り扱われてもよい。
【0058】
エンコーダは、HEVCエンコーダでもよく、デコーダは、HEVCデコーダでもよいが、実施形態は、HEVCに限定されない。エンコーダおよびデコーダは、それぞれ、携帯機器またはどんなタイプのビデオカメラおよび/またはディスプレイにおいても実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5