【文献】
John Flynn et al.,"Estimation and display for Vector Doppler Imaging using planewave transmissions",2011 IEEE International Ultrasonics Symposium,米国,IEEE,2011年,p.413-418,ISSN:1051-0117, ISBN:978-1-4577-1251-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウォールフィルタリング、自己相関、及びドップラー周波数推定のうちの1以上を使用して、各々の送信角度に対して独立的に前記受信されたウルトラソニック信号を前処理するステップを含む、請求項2に記載の方法。
特定のバイスタティックレンジレートモデルにすべての送信角度からのドップラー周波数推定値を集成し、測定の前記フィールド内部での血流ベクトル速度推定値の推論を計算するステップを含む、請求項3に記載の方法。
ドップラー信号対ノイズ比から、複素ライスランダム変数に関連する前記角度の前記分散との類似で、ドップラー周波数推定値分散を計算するステップを含む、請求項6に記載の方法。
パルスレート周波数の2倍までのエイリアシングの正しい解釈を可能にし、典型的には収縮期の心臓の時期の間に現れるドップラーエイリアシングイベントの間の画像ブラックアウトを防止するために、ドップラー周波数の仮定されたエイリアシングバイアスのモデリングを行うステップと、エイリアシングにより影響を受ける個々の平面波角度チャネルに関する、結果としての補正の調整を提供するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
ウォールフィルタリングを用いて前処理し、0及びより高い値の遅延で、結果として生じるアンサンブルデータの圧縮されたフォーマットの共役遅延の積を計算するステップを含む、請求項15に記載の方法。
前記受信されたウルトラソニック信号を処理する前記ステップが、ドップラー法で導出された速度推定値を用いて血流IQデータを強化するステップを含む、請求項16に記載の方法。
血流遅延積の空間導関数及び瞬時の時間導関数がアンサンブル時間窓にわたって計算されるように、時空間勾配成分を計算するステップを含む、請求項15に記載の方法。
各々の平面波送信角度のアンサンブルに対して瞬時のドップラー法で導出された速度推定値を用いて、前記計算された勾配量を強化するステップを含む、請求項19に記載の方法。
前記強化された勾配量において勾配時間導関数に対してドップラー値を加重するための、勾配ノイズ分散及びドップラー速度分散を使用するステップを含む、請求項20に記載の方法。
独立的な粒子処理を用いた合成粒子同伴により、前記血流ベクトル速度信号から血流ベクトル速度結像をディスプレイデバイス上で生成するステップを含み、前記生成するステップが、
複数の接続されないフロー領域に対して、フレームごとにフロー存続範囲の動態に従うように粒子密度を調整するステップ、
フロー領域を離れる粒子に関して試験し、粒子リストから関連性のある粒子を削除することにより肯定に応答を行うステップ、
フロー領域に進入する粒子に関して試験し、関連する画素で確率的に粒子を発生させることにより肯定に応答を行うステップ、
前記粒子リスト内の各々の粒子を、前記粒子の最も近傍の一致した血流ベクトル速度推定値によって前記粒子の空間位置を前進させることにより、時間的に順方向に伝搬させるステップ、及び、
任意に低減された速さでの粒子流経路の観視を可能にするために、所望の「減速」因子により、表示される粒子伝搬速度の集合体をスケーリングするステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ベクトルフロー推定の複数角度のドップラーベースの方法では、PWT測定モデルが、ベクトル速度計算を単純化する方途で非線形成分及び線形成分に区分される。各々の画素の速度ベクトルが、非線形モデルによってPWTアンサンブルの多様な角度でのIQ測定値を予測し、本願ではそれらの測定値を、従来のCDI処理(クラッタフィルタリング及びカサイ(Kasai)の自己相関)を用いてドップラー周波数の集合に変形することにより線形化する。次いで速度ベクトル推定が、エイリアシング(aliasing)に起因する仮定された測定バイアスに関して調節された、小さな線形加重最小二乗(WLS)問題に対する解法として単純化する。CDI自己相関遅延分散から導出される重みが、クラッタフィルタリング作用の源となる。したがって、元の問題の非線形性は、有限の数の知られているエイリアシングバイアスベクトルにわたる離散的な検索に軽減される。さらに、WLS推定量共分散が、画素を認定(qualify)するために使用される情報を提供する。
【0030】
勾配ベースのベクトル血流推定方法では、PW送信及び再構築が、ドップラーPRFレジームにおいてのフレームレートで、Bモードフロー(Bフロー)モダリティでの血液の動きの画像シーケンスを生成する。画素点p=[x,z]及びPRI tでの画像シーケンス内のIQデータの画素アンサンブル(pixel ensemble)は、アンサンブルをウォールフィルタリングした後に各々の画素pでIQデータから計算されるIQの大きさの値から構成される。したがって、値のシーケンスが、PRFに等しいフレームレートで動きを捕捉し、血液反射率(blood reflectivity)についての運動するテクスチャとして微細スケールでのフロー動態を明らかにする。連鎖法則を使用すると、画像シーケンスの時空間勾配から結果として生じる空間及び時間の導関数が、各々の画素p及びPRI tでテクスチャ流速ベクトル場[v
x(x,z,t),v
z(x,z,t)]と結び付く。結果として生じる推定式は、推定窓(estimation window)にわたって一定であるようにモデル内で定式化されるベクトル流速推定値を与えるように、ガウス−マルコフモデルの背景状況において最小二乗により求解される。
【0031】
結果として生じる速度ベクトル画像を視覚化するために、流体内で同伴させられる粒子を表す点の運動する場を合成する新規の技法が使用される。その技法の創出においては、各々の粒子が、フローが検出される画素で確率的に生成され、速度ベクトル推定値に比例する動きで満たされ(imbue)、観視者が「リアルタイムスローモーション」の提示で動きを容易に知覚可能であるようにスケールダウンされる。粒子は、粒子密度をユーザの好みに制御する保存規則のもとでフレームごとに画像の全域を遊走(migrate)する。粒子の動きは、速度の大きさに関して色分けされる検出されたフロー領域にオーバーレイする。血流ベクトル速度結像を、量的な速度スペクトルとして、及び血管流量として表示するための方法もまた開示される。
【0032】
例えばフィリップスL7−4トランスデューサ及びヴェラゾニックス(Verasonics)取得システムを使用して、本開示は首脈管構造に関するインビボVDIを実証する。七つの角度で収集されるPWTアンサンブルが、30fpsの収集レートを受け入れるGPU実装形態において、複数角度のドップラーベースのVDI処理を用いて処理される。映像表示は、フロー場の動態を明らかにし、拡張期(diastole)の間のフローの良好な検出を示す。このベクトル速度イメージングフレームワークは、頸動脈内のフロー動態を捕捉するのに十分な取得フレームレートを実証する。処理は概念的に単純であり、計算的に効率的であり、その処理は、その処理のフロントエンドとして標準的なCDI処理を借用する。単一のPWT角度が、おおよそ60FPSのデータ収集レートで勾配ベースのVDI処理を実証するために使用される。勾配ベースのVDI処理方法もまた、ドップラーストリングファントムを使用して正確度及び精密度に関して評価される。
【0033】
平面波の角度は、平面波の波面とトランスデューサアレイとの間の角度として、
図1に示すように、トランスデューサの面での法線に関して測定されることを理解されたい。
【0034】
粒子流視覚化技法は、プラグ流、層流、及び乱流の状況において主観的に情報を与える。
【0035】
フレームレート分析:ここでは、複数角度のドップラーベースの血流速ベクトル計算方法を使用する、フレームレートに対する有益性が、従来のレイライン(rayline)ベースのイメージングシステムと比較される。アンサンブルの長さは18PRIであり、PRFは4KHzであると想定する。次いで七つの平面波角度に関して、開示する方法の(Bモード取得を含まない)フレームレートは32fpsである。これを、フレームあたり30個の送信ラインを用いた2:1マルチライン取得を伴い、32倍低速の1fpsのフレームレートを与える、ステアード(steered)線形アレイ取得手法と比較する。
【表1】
【0036】
ベクトル速度血流推定のための複数角度のドップラーベースの方法:処理説明
本開示によるベクトルドップラー推定処理は、各々の再構築された画像点に対する速度ベクトル推定値を生出する。取得スキームは、異なる平面波伝搬角度でアレイから放出される平面波送信によって組織に音波を当てる(ensonify)。各々の平面波角度は、送信のアンサンブルが各々の角度で収集されるように、いくつかのPRIに対して使用される。
【0037】
幅広ビーム送信への血流速ベクトル推定方法の適用:ここで開示する血流速ベクトル推定値を生成するための方法が、平面波送信の背景状況において開発されている一方で、方法は、それに応じて各々の画素での波面方位に対してバイスタティックレンジレートモデル(bistatic range-rate model)を修正することにより、複数の幅広ビーム送信に適している。
【0038】
推定処理は、計算を三つの段階に分ける。第1に、ドップラー推定が、送信された平面波角度の各々で収集されるアンサンブルデータに別個に適用される。これは、静止組織の影響を除去し、各々の平面波角度で測定される射影された(相対的な)血流速に起因するドップラー周波数の推定値を生出する、従来のカラーフロー処理である。カサイ(Kasai)の自己相関ベースの血液ドップラー推定の様式での自己相関遅延及び導出される統計値は、各々の画像点での計算される副産物である。結果は、相対的なドップラー推定値の複数角度の集合である。
【0039】
第2のステップでは、集合の形での前記第1の段階からの推定値が、各々の画像点での血流のベクトル速度成分を生出する、非線形最小二乗推定手順によって組み合わされる。
【0040】
最後に第3のステップは、フローの存在に関して、試験により各々の画像点でのベクトル速度推定値を認定(qualify)する。
【0041】
A.取得及び再構築される信号モデル
速度ベクトル推定手順は、m∈{1,…,M}に対する角度θ
mの集合にわたって平面波(PW)信号を送信する取得スキームを基に形設される。PW角度の集合は、(曲面アレイの場合ではアレイ中心に配置される)アレイの法線ベクトルの周りに対称的であることが想定されている。各々の角度θ
mは、波面に対して法線方向である走行の方向を規定する。取得は、PRF HzのレートでのN個の連続的なパルス繰り返し間隔(PRI)の間各々の角度で滞留して(dwell)、角度に対するアンサンブルを形成する。加えて二つのダミーパルスが、定常状態の音響環境を誘起するために各々のアンサンブルの始まりに送信される。取得の幾何学的配置を、下記で
図1に例示する。
【0042】
各々の取得イベントがRFデータの収集物を生出し、その収集物から2次元画像が、(ここでは説明しない)従来のビーム形成処理により再構築される。したがって、M×N個の取得に対して、深度及び方位角において同一の空間サンプリング座標を各々が伴う、M×N個の関連する画像が生出される。推定処理は、所与の画像点でのすべてのデータを、他の画像点でのデータと同じように、及び他の画像点でのデータとは無関係に処理する。表記を簡単にするために、セクションIIの全体を通しての表記で空間サンプリングインデックスを省略する。
【0043】
信号モデルは、各々のビーム形成される(又は他の方法で再構築される)画像点信号r
m(t)を、低速で運動する組織の散乱からのクラッタ、血流信号s
m(t)、及び、分散
【数2】
を伴う付加的な白色ノイズの和として記述する。したがって、PRI t及びPW角度θ
mでの対象となるIQ画像点(IQ image point of interest)の観測値に対するモデルは、t=0、…、N−1に対して、
r
m(t)=s
m(t)+クラッタ(clutter)+ノイズ(noise) (1)
となる。r
mのN個のサンプルを収集することが、ベクトル形式
r
m=[r
m(0),…,r
m(N−1)]
T (2)
での観測値のアンサンブルを与える。
【0044】
B.各々の平面波角度でのドップラー推定
フロー信号パラメータを推定する前に、各々の画像点IQアンサンブルに適用されるハイパスフィルタリング行列H(静止組織又は「ウォール」フィルタ)が、低域のドップラークラッタ信号を抑制する。フィルタHを、多項式若しくは正弦波を基礎とする回帰などの種々の設計技法により設定(specify)すること、又は、適した適応的な方法によりオンラインで計算することが可能である。前記フィルタをIQアンサンブルデータに適用することにより、信号推定値
【数3】
が与えられる。
【0045】
次いで、カサイ(Kasai)の自己相関ベースの血液ドップラー法を適用することにより、各々のPW角度でのフロー信号に対する平均周波数推定値
【数4】
が与えられる。このステップは、ベクトル推定処理が後で使用する(セクションII−C)フロー分散もまた推定する。カサイ(Kasai)の方法は、フロー信号推定値
【数5】
の第1の自己相関遅延を次式のように計算する。
【数6】
【0046】
ただし、個々の1次の遅延の積a
m(t)は次式のように定義される。
【数7】
【0047】
次いで、画像点に対する角度θ
mで誘起される平均ドップラー周波数f
mが次式のように推定される。
【数8】
【0048】
ただし、tan
−1は、範囲(−π],π)を伴う4象限複素逆正接であり、λ=c/F
cは、送信されるパルスのキャリア波長である。
【数9】
がmの間で無相関である推定誤差を有することが想定されており、その分散を次式のように示す。
【数10】
【0049】
セクションII−Cで説明する速度ベクトル推定量は、
【数11】
を活用する。この計算(セクションC2で示す)は、次式の比を必要とする。
【数12】
【0050】
本願では上式を、PW角度θ
mに対する「ドップラーSNR」と示す。この目的で、遅延分散
【数13】
が次式のように推定される。
【数14】
【0051】
C.ドップラー推定値組み合わせによる速度ベクトル推定
ドップラー周波数推定値の各々の画像点の集合、及び、M個のPWアンサンブル角度の各々での計算される統計値を使用して、組み合わせ処理が所望の速度ベクトルを生出する。バイスタティックレンジレートモデルが、角度ごとのドップラー周波数推定値を速度に関係付ける。この線形マッピングは、付加的な推計学的誤差(stochastic error)、及び、ドップラー周波数のエイリアシングに起因する離散的な値をもつ決定論的なバイアス項により変造される、速度ベクトル成分の関数として周波数を表現する。
【0052】
このモデル定式化は、流速ベクトル(対象となるパラメータ)においては線形であるが、ドップラー周波数ベクトルb内のエイリアシング誤差を表すバイナリ妨害パラメータ(binary nuisance parameter)の集合においては非線形である。本開示の手法は、
【数15】
のバランスをとるようにモデルを白色化し、そのモデルをその線形成分及び非線形成分に区分し、次いで線形部分を、離散的な検索によってバイアスベクトルを仮定しながら直接解法により反転することである。次いで、最も低い残差平方和(RSS)を選定することで、最小二乗速度ベクトル推定値を識別する。セクションC3では、エイリアシングバイアスに対する離散的な検索のサイズを低減し、近接する平面波角度のアンサンブル内にあるようにエイリアシングを制約することにより、ノイズのみのデータへの過剰適合(overfitting)を低減する、幾何学的議論が展開されている。エイリアシングバイアスの識別は、エイリアシングバイアスをなくさないと、高いドップラーイベントの間に血管結像内に「ブラックアウト」区域を引き起こすことになるので、本方法にとって重要である。この理由としては、エイリアシングバイアスがバイスタティックレンジレートモデルにおいて低質の適合を引き起こし、その後、モデルに対するWLS解法が、イベントがノイズであるとみなすことになるからである。したがって、例えば収縮期イベントの間にブラックアウトがないことは、エイリアシング補正の使用を示唆する。非フローイベントで過度のノイズ検出がないことは、近接する平面波角度に対するエイリアシング補正の制約を示唆する。
【0053】
対照的に、最小二乗目的関数を用いた、直接IQドメイン又は自己相関ドメイン測定モデルは、速度が非線形のやり方で周波数に関係付けられる。このことによって、流速ベクトルの大きさ及び方向の両方に関する検索を必要とする、2次元非線形最小化問題が生じることになる。高いSNRを伴う狭帯域「プラグ」流(narrowband plug flow)の場合では、そのような目的関数は、複数の極値によってピークを形成しており、綿密な検索、したがって高い計算費用を必要とする場合がある。本願で提案する方法では、直接ソルバ構成要素がこの困難を巧みに回避し、検索は、離散的な、良好に定義された列挙を伴って1次元的である。
【0054】
1)バイスタティックレンジレートモデル:PW角度θ
mで取得されるフロー信号s
m(t)は、音響信号処理理論のバイスタティックレンジレートモデルにより支配される平均ドップラーシフトを受けることが想定されている。ここでは瞬時の音響伝搬経路は、入射PW送信角度θ
mに対する方向ベクトル上への画像点の動きベクトルの射影、及び、トランスデューサアレイの最も近い点への直接の反射される波の戻り経路を含む(
図1)。推定されるドップラー周波数を長さMのベクトル
【数16】
にまとめると(及び、続きにおいてのそのベクトルの複数角度のLS適合(LS fit)のためにfの上に記号「^」を残しておくと)、モデルを次式のように書き記すことが可能である。
【0055】
f=Av+b+e (10)
ただし、画像点での流速ベクトルはv=[v
x,v
z]
Tであり、bはエイリアシングに起因するバイアスを表し、eは推計学的誤差であり、モデル行列Aは、[M×2]に寸法が設定され、行a
m(θ
m)を有し、ただし
【数17】
である。Aは、PW角度により決定され、これらのPW角度が固定されているならばあらかじめ計算され得ることに留意されたい。
【0056】
2)ドップラー周波数推定値分散:周波数推定値の分散
【数18】
(7)は、(8)内のDSNR
mによって決まり、有理多項式近似である経験的に決定されたマッピングから計算される。このことを支持する動機付けは、複素ライスランダム変数(complex Rice random variable)に関連する角度の分散との類似にある。
図2を参照すると、量DSNR
mが消滅する際に角度(周波数)がより不確定になることが明らかである。限界においては、角度は、
図3に例示するように[0.π]にわたって均一に分散された状態になる。実際にはこの作用は、フロー方向に対してほとんど側面の角度で到着する平面波により情報収集される低いドップラーフローに関してはより厳しく、したがってウォールフィルタ特性によっても決まる。DSNR
mから
【数19】
へのマッピングを、0.25*PRFの公称ドップラーフロー周波数での12個のパルスアンサンブルの場合に対して
図4にグラフィカルに示す。近似は高いSNRでは発散するが、周波数標準偏差を正則化する(regularizing)ための典型的な値は、その周波数標準偏差を0.03未満でないように局限する。このことは、発散近似領域を回避する良好な側面の作用を有する。
【数20】
を定義して、
図4に示す有理多項式近似を、下記にMatLabコードの形で記述する。周波数標準偏差を計算する代替の新規の方法を、勾配ベースのベクトルフロー推定処理を開示する後のセクションにおいて提示する。
【0058】
3)仮定されたエイリアシングバイアス:式10では、ベクトルbの要素b
mがエイリアシング誤差の源となり、本願ではそのエイリアシング誤差を決定論的であるとして、したがってバイアスとしてモデリングする。ここで本願では、発見的な幾何学的議論を使用して、2
M個の選定にわたる原始的に構築された検索のサイズを1+MN
A個の選定にまで低減しており、ただしN
Aは、エイリアシングに遭遇するPW角度の最大数である。バイナリ仮定集合
H
0: |f
m|<PRF/2 (12)
H
A: PRF>|f
m|<PRF/2 (13)
のもとで、単一の折り返しエイリアシング条件(single-wrap aliasing condition)H
Aは、推定される周波数を、次式のように、ノイズのない場合でのエイリアスが生じないドップラー周波数に関係付ける。
【数21】
【0059】
任意の可能なバイナリエイリアシング構成からバイアスベクトルbを構築することは、2
m個の可能なバイアスベクトルを与える。実行可能な集合のサイズを低減するために本願では、エイリアシングが、近接するPW角度においておそらくグループ化されるということに留意する。画像点でのフローの真の方向に対して伝搬角度において最も近いPW送信角度、例えばθ
Fを考えてみる。エイリアシングがθ
Fで存在するならば、そのエイリアシングは、θ
FがPW方向に関して最も大きなレンジレートを伴う角度であるので、任意の他のPW角度でのエイリアシングより大きいことになる。したがってエイリアシング誤差は、最小エイリアシング誤差の何らかの角度まで、θ
Fに対するPW角度の発散とともに単調に減少することになる。最大でPRF Hzのエイリアシングによりいくつかの取得角度が影響を受けるとすると、本願では、それらの取得角度が角度的に近接するはずであると論断する。
【0060】
アレイに直交するフローは特別な場合を提示する:極値の角度が両方とも、同じエイリアシング誤差の大きさに遭遇する場合がある。二つの極値の角度が近接するとみなされるように、円形のフォーマットでPW角度近接性を規定することで、この特別な場合にも対処する。
【0061】
上記で概説した幾何学的制約のもとで、バイアスベクトルの集合が以下のように列挙される。エイリアシングがない場合H
0では、bはゼロベクトルである。M個の中の単一のPW角度上のエイリアシングは、M個の可能なバイアスベクトルbを暗に意味するものである。これらの場合ではバイアスベクトルは、M個の中の一つの要素を除いて要素としてゼロを包含し、ただし、エイリアシングバイアスを表す第mの要素は次式に設定される。
【数22】
【0062】
このことを二つの近接するエイリアシング角度に一般化することにより、二つの極値の角度をグループ化する場合を含む、追加的なM個の場合を与える。したがって2以下のエイリアシング角度の場合は、2M+1個のバイアスベクトルを与える。追加的な近接するエイリアスが生じた角度により仮定集合を拡張することにより、M個の選定の別の集合をもたらす。帰納法が、N
A以下のエイリアスが生じた角度に対する仮定の数N
Hを次式のように与える。
N
H=N
A×M+1 (16)
例えば、七つの角度の取得スキームにおいて最高で三つの同時にエイリアスを生じるPW角度を想定すると、エイリアシングバイアス誤差ベクトルの実行可能な集合は、22個の相違するベクトルを有する。このことを以下のように例示する。
【0063】
自明な場合は、エイリアシングを伴わないということである。
【0064】
PW送信の単一の角度でのエイリアシングの場合では、表現式17の列が、PW角度により順序付けられた七つの取得から、まさに一つのエイリアスが生じた取得角度に対するすべてのバイアスベクトルを列挙する。
【数23】
【0065】
PW送信の二つの角度でのエイリアシングの場合では、表現式18の列が、PW角度により順序付けられた七つの取得から、まさに二つのエイリアスが生じた取得角度に対するすべてのバイアスベクトルを列挙する。
【数24】
【0066】
PW送信の三つの角度でのエイリアシングの場合では、表現式19の列が、PW角度により順序付けられた七つの取得から、まさに三つのエイリアスが生じた取得角度に対するすべてのバイアスベクトルを列挙する。
【数25】
【0067】
三つの角度の例に対する仮定集合を完全なものにするために、(17)、(18)、(19)の、及び(エイリアシングのない状況を表す)ゼロベクトルを伴う和集合を形成する。全体は、22個の可能なバイアスベクトルである。
【0068】
4)速度ベクトルの最小二乗推定:モデルの上記の特徴を組み込むことによって、調節された測定値の単一性の分散を与えるように重みが計算される、画像点での流速ベクトルに対する加重最小二乗推定量が可能になる。
【0069】
非線形モデル(10)が、次式のように線形成分及び非線形成分に区分される。
【数26】
ただし重み行列Wは、次式のような、その重み行列Wの第mの対角要素を有する。
【数27】
【0070】
本願ではノイズが取得間で無関係であることを想定しているので、Wの非対角要素はゼロである。周波数精密度に関する下限σ
minは、正則化する値として機能する。典型的な正則化値は、その周波数精密度を、期待されるドップラー分解能に相応して、(0.03−|PRF)未満でないように局限する。処理連鎖において静止組織/ウォールフィルタHが存在するので、加重は必要である。フロー方向とPW伝搬方向との間の大きな相対角度では、特に低速で運動するフローに関しては、相対的なドップラー周波数がHの阻止帯域に一致する場合がある。このことによって、対応するドップラー周波数推定値はきわめてノイズの多いものとなる。(7)によって周波数変動の量を定量化することによって、最小二乗定式化のための最適な加重が可能になる。
【0071】
20内の最適なエイリアシングバイアスベクトルb
*が、次式のように最小化問題を求解する。
b
*=argmin
j[f−b
j]
TW
1/2P
⊥W
1/2[f−b
j] (22)
ただし、射影子は次式のように計算される。
P
⊥=I−W
1/2A[A
TW
TA]
−1A
TW
T/2 (23)
【0072】
D.後処理:補間及び検出
最小二乗推定手順の副産物が、画像点でのフローを検出するための測定基準を提供する。空間的に補間されたバージョンの速度推定値精密度、正規化された(normalized)速度、ドップラー周波数残差、自己相関残差、及び複合自己相関パワー(combined autocorrelation power)が、独立的な検出試験において適用される。
【0073】
空間補間:空間補間は、入力サンプルの元の値を保ちながら、x及びzの次元でのサンプリング密度を2倍にする。線形最近傍加重が、補間された点を提供する。
【0074】
速度精密度:加重Wに起因して、式20内の白色化された誤差は、独立同一分布(i.i.d.)及び単位分散である。したがって最小二乗理論により、速度推定値共分散は次式となる。
【数28】
【数29】
【数30】
【0075】
平方距離単位での速度精密度は、速度推定値内の全体誤差である。
【数31】
【0076】
速度精密度に関する大きな値は、画像点に対して利用可能である信頼性の高いフロー推定値がないことを示唆する。
【0077】
正規化された速度の大きさ:正規化された速度の大きさv
NMは、座標内での等しい精密度のためにスケーリングされた速度の長さである。
【数32】
【0078】
正規化された速度の大きさ
【数33】
がしきい値より下であるならば、画像点はフローではない。
【0079】
複合パワー:複合パワー測定基準は、すべての取得角度であることが認められるパワーの推定値を提供する。この複合パワー測定基準は、適合した周波数
【数34】
の対応する要素により遅延−1自己相関値a
mを位置調整(align)し、それらの自己相関値をDSNRにより次式のように加重する。
【数35】
【数36】
【0080】
計算された値をしきい値パラメータと比較して、複合パワー
【数37】
が非常に弱いならば、画像点はフローではない。
【0081】
自己相関残差:最小二乗適合したドップラー周波数ベクトルの要素を使用して、本願では、DSNR
mにより遅延−1自己相関ベクトル成分を加重し、それらの成分を複素平面内で位置調整する。結果のサンプル標準偏差は、「自己相関RSS」と示される。
【数38】
【0082】
計算された値を最高限界パラメータと比較して、適合したドップラー周波数により位置調整された遅延−1自己相関のベクトルが非常に大きいならば、画像点はフローではない。
【0083】
白色化された周波数残差:適合した周波数ベクトル残差は、最小二乗速度ベクトル推定値の平方適合誤差の和である。
【数39】
【0084】
認定試験:下記に示すようなしきい値又は最高限界の試験は、画像点を認定するために、上記で説明した空間的に補間された測定基準を独立的に組み合わせる。真を断定する試験があれば、その試験により、点が「フローではない(non-flow)」と表明することになる。すべての試験が、画像点をフローと認定するように終わらなければならない。試験のためのしきい値及び最高限界の値は、ユーザの好みによって各々のスキャンヘッド応用物に対して調整される。
【0085】
試験
1:
【数40】
試験
2:
【数41】
試験
3:RSS>T
Fresid (37)
試験
4:RSS
AC>T
ACresid (38)
試験
5:P
comb<C
pow (39)
【0086】
ベクトル速度血流推定のための勾配ベースの方法
概観
以前のセクションで開示した血流ベクトル速度イメージング処理は、ベクトル速度推定値のための健全に逆元が存在するモデルを構築するために、平面波(PW)送信の複数の角度を必要とする。本セクションは、単一の平面波送信角度のみを、したがって単一のアンサンブルのみを必要とする方法の集合を開示する。その方法の集合の最も単純な形式では、提案するベクトル速度イメージング処理は、PW送信及び再構築を使用して、ドップラーPRFレジームにおいてのフレームレートで、Bモードフロー(Bフロー)モダリティでの血液の動きの画像シーケンスを生成する。点p=[x,z]及びパルスtでの画像シーケンスF(p,t)内の画素アンサンブルは、アンサンブルをウォールフィルタリングした後に各々の画素pでIQデータから計算されるIQの大きさの値から構成される。したがって、値のシーケンスが、PRFに等しいフレームレートで動きを捕捉し、血液反射率についての運動するテクスチャとして微細スケールでのフロー動態を明らかにする。
【0087】
連鎖法則を使用すると、勾配から結果として生じる空間及び時間の導関数が、各々の画素p及びPRI tでテクスチャ流速ベクトル場[v
x(x,z,t),v
z(x,z,t)]と結び付く。結果として生じる推定式は、推定窓にわたって一定であるようにモデル内で定式化されるベクトル流速推定値を与えるように、ガウス−マルコフモデルの背景状況において最小二乗により求解される。
【0088】
本願では、観測値内に、遅延0、1、…での共役遅延積サンプル(自己相関被加数)、及び、瞬時のドップラー法で導出された速度推定値を含み、複数の平面波角度からのデータを組み込む変形例もまた評価する。これらの変形例は、(1)血液反射率強度を使用する勾配のみのベクトル速度血流推定方法、(2)勾配ベースの、ドップラー法で強化された(augmented)ベクトル速度血流推定方法、(3)血液反射率の複数の共役遅延積を使用する勾配ベースのベクトル速度血流推定方法、及び、(4)複数の平面波送信角度からのデータを組み込む、ドップラー推定値によって強化された、血液反射率の複数の共役遅延積を使用する勾配ベースのベクトル速度血流推定方法を含む。
【0089】
前のセクションで提示した複数角度の平面波処理と比較して、この手法は、異なる平面波角度に対する別個のセグメントにフレームが区分されないので、ウォールフィルタリングに対する、より長い時間間隔を考慮に入れたものである。したがってより急峻な遷移帯域を伴う、より長いウォールフィルタインパルス応答が、同等の捕捉窓時間に対して可能である。このことは、フレームレート及び感度のバランスをとる際に柔軟であることを可能にし、平面波角度多様性を実現することが困難になる深部組織のベクトルフローイメージングへの適用を暗に示すものである。
【0090】
勾配のみのベクトルフローの使用の際の典型的な手法は、本開示においてのように、一時性の集約ではなく、空間的な平均化によりモデルの健全性を実現することである。したがって本開示は、他の方法では空間的な平均化により低下させられることになる空間分解能を維持する。本開示のさらなる新規の態様は、本開示が、ガウス−マルコフモデルの加重最小二乗(WLS)解法においての加重のために必要とされる分散成分の二次推定値を得るために、共通に行われるような、勾配が遂行される観測値についてあらかじめ和をとること(presummation)を回避するということである。
【0091】
フィリップスL7−4トランスデューサ及びヴェラゾニックス(Verasonics)(商標)取得システムを使用して、単一の角度のPWTベクトル速度イメージングが、ドップラーストリングファントムに関して、及び頸動脈に関して実証されている。PWTアンサンブルは、5KHz PRFでボアサイト(boresite)角度上で収集される。性能が、ベクトル速度成分推定値のバイアス及び精密度、並びにそれらの推定値の方向に関して評価される。本明細書で開示する処理性能は、複数角度のドップラーベースのVDI処理により必要とされるPWT角度の多様性の効果的な生成をイメージング深度が阻害する場合の用途において有用性を供与する。
【0092】
勾配ベースのベクトルフロー推定方法説明
本開示では、各々の再構築された画像点で速度ベクトル値を計算する、勾配ベースのフローベクトル推定の変形例を検討する。本開示の以前のセクションで説明した複数角度のドップラーベースのベクトルフロー推定方法とは対照的に、勾配ベースのベクトルフロー推定方法は、単一の平面波送信角度のみで効果的に動作することが可能である。しかしながら、それらの勾配ベースのベクトルフロー推定方法は、複数の平面波送信角度もまた組み込むことを容易に一般化する。勾配ベースの方法は、トランスデューサ開口部サイズより有意に大きい深度で組織をイメージングするときの場合においてなど、制限された全範囲の平面波送信角度が利用可能であるときに有効である。より少ない角度が必要とされるので、より急速な取得のための機会が利用可能である。このことは、急速な血流動態のイベントの間にベクトルフローモダリティによってイメージングするときに追加的な利点を提供する。
【0093】
勾配ベースのベクトルフロー推定のための取得スキーム及び前処理
勾配ベースのベクトルフロー推定方法のための取得スキームは、平面波送信角度の数が1ほどに小さくなり得ることを除いて、複数角度のドップラー法のものと本質的には同様である。組織は、PW再構築により各々の画素に対して従来のドップラーアンサンブルを形成するために、1以上の平面波角度でアレイから放出される、典型的なドップラーPRFでのPW送信によって音波照射される(insonated)。各々の平面波角度で送信され、さらには処理されない二つの先駆パルスが、音響環境を調節する。アンサンブル時間窓は、フロー定常性想定が許すより決して長くないように制限される。すべての処理変形例は、第1に、再構築されたデータをウォールフィルタリングによって処理して、各々の画素アンサンブルr(t)から静止組織クラッタを除去するものであり、ただし、
r(t)=s(t)+クラッタ+ノイズ (40)
であり、それぞれ、sは血流信号を表し、tはPRI(時間)インデックスを表し、その結果ベクトル形式では、N個のサンプルに関するウォールフィルタリングされたデータは次式となる。
【数42】
【0094】
ウォールフィルタリングの後、信号データベクトル
【数43】
の、画素画像点pでの、時間サンプルs(t)のベクトルの共役遅延の積F(p,t,l)が、1以上の遅延l−0、l−1、…に対して、圧縮された振幅フォーマットで次式のように計算される。
【数44】
【0095】
項
【数45】
は、遅延lでのサンプル自己相関の被加数(summand)であることに留意されたい。これらの成分は、以下で説明するように、勾配ベースのベクトルフロー推定方法の変形例により使用されることになる。
【0096】
勾配のみのベクトルフロー推定
勾配のみのベクトルフロー推定処理では、ドップラー推定値の使用は必須ではない。ここでは時空間勾配が、各々の画像点pに対するウォールフィルタリングされたデータ
【数46】
からのIQ強度値の導関数を計算する。この勾配のみの処理は、異なる平面波送信角度で収集されるアンサンブルデータの勾配を組み込むことが可能であるが、用いられる平面波送信角度の実際の値を使用しない。単一の平面波送信角度の場合では、勾配計算の入力、例えばF(p,t)を、画像強度の一種のBフロー画像シーケンスと解釈することが可能であり、ただし、
【数47】
は、アンサンブルを含むすべてのtに対しての画素pでのものである。これは遅延−0であることに留意されたい。処理は以下のように展開される。導関数連鎖法則を適用すると次式になる。
【数48】
【0097】
便宜上、単一の画素pでの画像時間シーケンスをベクトル
【数49】
により、並びに同様に、経時的な関連する勾配導関数成分のベクトルg
x、g
z、及び、
【数50】
により定義する。画像Fの期待される血流成分は、空間独立変数x=x
0−v
xt及びz=z
0−v
ztに起因する一定速度の直線の並進以外は、取得窓にわたって時間的に変化していないことを想定する。次いで流速ベクトル[v
x,v
z]
Tが、次式による計算された勾配量により制約される。
【数51】
【0098】
ただし本願では、誤差ベクトルe
gの対角共分散を次式のようにモデリングする。
【数52】
【0099】
未知の
【数53】
を伴って式48及び49が一体でガウス−マルコフモデルを形成し、このモデルの古典解は、
【数54】
及び
【数55】
であり、ただし射影子が、
【数56】
により形成され、この古典解が、血流ベクトル速度推定値v
x及びv
z、並びに、血流反射率勾配ノイズe
gの分散を与える。
【0100】
ノイズ、ビーム形成クラッタ、及び加速度に起因する勾配においての誤差は、Aの列にもまた現れることになるので、付加的な誤差項e
gの使用は、明らかに単純化したものである。
【0101】
検出:本願での評価では、画素は、従来のカラードップラーイメージングでのような、フローパワー推定値のしきい値及び最高限界、並びにBモード優先設定により検出される。速度推定値の予測される精密度
【数57】
もまた、ドップラーベースのベクトルフロー推定に関して本開示の以前のセクションで説明した検出方法と同じように、画素認定のための検出情報を提供する。
【0102】
ドップラー法で強化された勾配ベクトルフロー推定
50内の成分v
zに対する推定量は、(結果セクションで論考するように)同じデータから計算される、対応する、独立的に導出されるドップラー推定値に匹敵するバイアスを呈するが、v
x及びv
zの両方の経験的な精密度は、ドップラー精密度より有意に劣っている。このことは、v
x推定値の精密度を改善することを目標として、ドップラー推定値を包含する情報によって式50の推定量を強化することを暗に示すものである。0度の単一の平面波送信角度の場合(ボアサイト)では、この強化は、次式のモデルを構築することにより実現される。
【数58】
【0103】
ただしベクトルv
dは、期待値v
zとともにN−1個の瞬時のドップラー法で導出された速度推定値を包含し、対角観測値誤差共分散は、
【数59】
となる。
【数60】
の要素v
d(t)に関するエイリアシング問題点を打ち消すために、瞬時のドップラー推定値は、それらの推定値の平均値に対して参照される角度の偏移として、次式のように計算される。
【数61】
【0104】
ただし、
【数62】
は、カサイ(Kasai)の自己相関ベースの血液ドップラー周波数推定量
【数63】
であり、ここで、
【数64】
であり、血液差分軸方向速度(blood differential axial velocity)は次式となる。
【数65】
【0105】
集合δv
d(t)の平均二乗は、推定値
【数66】
を提供する。
【0106】
【数67】
62は、ある決まった状況ではより健全であり得る、前のセクションのドップラーベースの複数角度のベクトルフロー推定方法において開示したようなドップラー分散を計算することに対する代替の方法であることに留意されたい。この(62)が、前に計算された推定値51とともに、次式の対角加重を提供する。
【数68】
【0107】
次いでベクトル速度推定値が、AをWA
gdで、及びyをWy
gdで置換することにより、50から53との類似で、ガウス−マルコフ理論に従って加重最小二乗により計算され、血流ベクトル速度推定値v
x及びv
zを計算する。
【0108】
上記で56から63において説明した新規の方法は、下記で開示するように、複数角度のドップラーベースのベクトルフロー推定方法に対して、以前のセクションで使用するバイスタティックレンジレートドップラーモデルと同様に、θ
mの非ゼロ平面波送信角度に対処するように一般化される。
【数69】
【0109】
ただし、ドップラーベースのベクトルフロー推定方法を開示する上記のセクションとの類似で、a
xm=(1/2)sin(θ
m)及びa
zm=(1/2)[1+cos(θ
m)]である。非ゼロ平面波送信角度定式化に関して、解はやはり、血流ベクトル速度推定値v
x及びv
zを計算するために、AをWA
gdで、及びyをWy
gdで置換することにより、50から53を使用して、56に対するものと同様に結果として生まれる。
【0110】
複数の遅延(Multiple-lag)の勾配ベースの推定
上記で説明した勾配のみの方法を強化することの代替として、勾配に対する追加的な観測値を、値1…Lの遅延lでの振幅圧縮された複素遅延積
【数70】
の勾配を連結することにより生成することが可能である。この連結は、勾配のみの方法と比較して、血液速度ベクトル推定値精密度を改善する。結果として生じるベクトルフロー推定方法は、ドップラー情報を使用しない。ある決まった局面ではこの方法は、ドップラー法で強化された方法より良好なバイアス性能を示す場合がある。圧縮された複素遅延積
【数71】
は、いくつかのl=1…Lに対して、時間t及び遅延lで
【数72】
であるように、1より高い遅延値で計算され、そのことによって、
【数73】
が結果として生じ、次いでこの式は、血流ベクトル速度推定値v
x及びv
zを計算するために、AをA
mlで、及びyをy
mlで置換することにより、50から53との類似で、ガウス−マルコフ理論によって最小二乗により求解される。
【0111】
勾配ベースの、多遅延の、複数角度のドップラー法で強化されたベクトルフロー推定
ここで開示するのは、ドップラー推定値による強化を伴う、複数の遅延l={0,1,…}での圧縮された複素遅延積
【数74】
を使用する、複数の角度の平面波送信の一般的な場合での血流速ベクトルを推定する新規の方法である。ここでは、L個の遅延に対する複数の遅延の勾配が、m={1…M}に対する複数の角度θ
mで収集され、第mの送信角度に対して式58にしたがって要素が計算されたドップラー推定値v
dmが付け加えられたアンサンブルデータから計算される。したがってデータ取得は、前のセクションで開示したドップラーベースのベクトル流速方法のものと同一である。次いで集団的なモデルが、相違する平面波送信角度θ
mに対して式67及び68の定義を拡張することにより形成される。
【数75】
【0112】
ただし、y
magの対応するサブベクトルと符合するブロックを伴う対角誤差共分散行列は次式となる。
【数76】
=diag
[1
Tσ
2gll,・・・,1
Tσ
2gLl,1
Tσ
2dl|,・・・,|1
Tσ
2glm,・・・,1
Tσ
2gLm,1
Tσ
2dm|,・・・,|1
Tσ
2glM,・・・,1
Tσ
2gLM,1
Tσ
2dM](72)
ただし、diag演算子はベクトル引数から対角行列を構築し、72の(L+1)M個の分散成分
【数77】
及び
【数78】
は、それぞれ51及び62にしたがって計算される。次いで、対角加重
【数79】
を用いて、血流ベクトル速度推定値v
x及びv
zが、それぞれAをW
magA
magで、及びyをW
magy
magで置換することにより、50から53を使用して、ガウス−マルコフ理論によって最小二乗により計算される。
【0113】
72及び70の新規のモデル構造を使用すると、72の量
【数80】
及び
【数81】
を、測地学の分野ではよく知られている、分散成分のヘルマート(Helmert)タイプの二次推定の直接的な適用により血流ベクトル速度推定値v
x及びv
zとともに反復的に改善し、そのことにより、計算されたv
x及びv
zの精密度を改善することが可能である。
【0114】
性能試験結果
本出願において説明した新規の勾配ベースの方法の一部の性能が、二つの角度(−23度及び水平)で、3.5から4cmの深度で行われた試験において、ドップラーストリングファントムを使用して比較されている。ストリングの速さは40cm/sであった。データは、ヴェラゾニックス社(Verasonics, Inc)により製造された128チャネルVDAS超音波データ取得システム上で収集且つ再構築された。結果を表1に示す。傾斜ストリング(sloped string)シナリオに対して、表は、ベースラインの勾配のみのベクトルフロー推定処理に対しての、ドップラー法で強化された、及び複数の遅延の勾配処理による横方向の速度精密度においての明白な改善を示す。この改善は、バイアスの適度の増大を犠牲にして生まれるものである。参考のために、v
zのカサイ(Kasai)ドップラー推定値の性能もまた示す。
【0115】
表1:3標準偏差でのバイアス(B)、精密度(P)、及び信頼度(C)を示す、mm/秒単位のストリングファントム評価結果
【表2】
【0116】
勾配ベースのベクトルドップラーイメージングシステムもまた、フィリップスL7−4線形アレイトランスデューサを使用して頸動脈をイメージングして、ボランティアに関して評価された。ドップラー法で強化された勾配手法により計算された血流ベクトル速度推定値のフレームを、矢印のフォーマットで下記に示す。導出されたインビボ画像映像シーケンス(in-vivo image video sequence)の主観評価は、前のセクションで開示した複数角度のドップラーベースのベクトルフローイメージング技法のものに匹敵する品質を示唆する。
【表3】
【0117】
ドップラー法で強化された勾配手法によるフロー角度推定の実証。観視のためにスケーリングされた速度ベクトル。
【0118】
合成された粒子同伴(「粒子流(Particle Flow)」)による速度ベクトル表示
上記で説明した方法により推定される速度ベクトルは、各々の画素が二つの速度成分を有するベクトル値画像を生出することになる。二つの別個の画像ウィンドウにベクトル推定値の大きさ及び方向を表示することで、従来のカラーフロー画像提示の見た目の美しい状態で、カラーバー凡例によって量的な情報を明らかにすることが可能である。しかしながら観視者が、表示スクリーン上の二つのウィンドウ内に同時に存在する動態特徴を知覚しようと苦闘することがわかっている。単一の画像ウィンドウ内でベクトル画素情報の動態特性を直観的に伝える視覚化を、下記で説明する。
【0119】
この方法は、血流内で同伴させられる仮定の粒子を模倣する動きを伴う粒子の集合体をシミュレートする。粒子の動きは、推定された速度ベクトル画素が、合成される粒子位置に最も近傍であることを考慮して、各々の画像フレーム期間に対して計算される。粒子は、検出されたフロー領域の内部でスクリーン上に描画され、従来のカラーフロー速度表示により描かれる速度ベクトルの大きさにオーバーレイする。この方法によりフロー視覚化が、粒子の位置が各々の新しいフレームとともに更新される際に、観視者の目が粒子の動きの同伴を察することで表に現れる。観視者は、スクリーン上に表示される動きを実際の速さの何分の一かに任意にスケーリングすることが可能であり、そのことによって、頸動脈での収縮期などの高い速度のイベントの間の血液動態のリアルタイム「スローモーション」検査が効果的に可能になる。
【0120】
A.視覚化処理概観
粒子流視覚化では、粒子のランダムに置かれた集合が、画像内のすべての検出されたフロー領域を満たす。粒子空間密度は統計的に均一である。ユーザの好みが、粒子の空間密度を制御する。
【0121】
各々のフレームで、粒子の集合は、付近で推定された速度ベクトルによってそれらの粒子の位置を更新することにより動きが与えられる。したがって位置摂動(position perturbation)は、フレーム時間間隔に速度ベクトルを乗算したものである。新しい粒子位置が、検出されたフローを表す画素に配置されない場合、粒子は退出するとみなされ、粒子集合体から削除される。
【0122】
検出されたフロー領域に進入する新しい入来する粒子に関して調査するために、同様の、ただし逆の位置が、各々のフロー画素に対して計算される。ここでは各々のフロー画素の負の時間の動きが、否定演算が行われた(negated)速度ベクトル推定値を使用して算出される。画素の逆方向の動きがフロー領域の外側であるならば、新しい粒子はそれらの画素で条件的に生成される。次いで新しい「入来する」粒子が、活動粒子リストに付け加えられる。入来する粒子を導入するための条件は、入来する粒子及び退出する粒子が、変化するフロー領域サイズを考慮してバランスがとられるように、フロー領域内の所望の粒子密度を維持するように適応する。総合的な密度条件は、入来する粒子のN
defをランダムに選択することにより施行されるものであり、ただしN
defは粒子の不足量である。
【0123】
B.視覚化処理説明
粒子流視覚化方法のステップを、下記の擬似コードで示す。
【0124】
ステップ1:粒子リストを初期化する:密度設定Dに等しい確率で、各々の検出されたフロー画素で粒子を条件的に発生させる。発生させられた粒子j及びそれらの粒子の関連する位置[x,z]
jのリストをコンパイルする。
【0125】
ステップ2:伝搬:粒子リスト内の各々の粒子を、所望の「減速」因子によりスケーリングされた、その粒子の最も近傍の一致した速度ベクトル推定値
【数82】
によってその粒子の空間位置を前進させることにより、時間的に順方向に運動させる。
【0126】
ステップ3:フローメンバーシップに関して試験する:最も近傍の画素に粒子位置を量子化し、一致したフロー検出標示(detection label)を評価することによりフロー領域メンバーシップに関して新しい粒子の量子化された位置を試験し、フロー内にない粒子を粒子リストから削除する。
【0127】
ステップ4:逆伝搬:各々のフロー画素を、否定演算が行われた(negated)速度推定値
【数83】
により時間的に逆方向に運動させる。最も近傍の画素に位置を量子化する。
【0128】
ステップ5:フロー領域メンバーシップに関して逆伝搬させられた画素を試験し、フロー画素内にない場合は、密度設定Dに等しい確率で新しい粒子を発生させる。
【0129】
ステップ6:粒子不足量/過剰量を計算する。
【0130】
ステップ7:不足量の場合、フロー内のランダムな場所で十分な数の新しい粒子を生成して不足量をなくす。
【0131】
ステップ8:過剰量の場合、削除すべき現在の粒子リストのランダムな部分集合を選択する。
【0132】
ステップ9:速度ベクトルの大きさ
【数84】
が所望のカラーマップによりマッピングされる状態で、表示フレーム上にすべての検出されたフロー画素を描画する。
【0133】
ステップ10:現在の粒子リスト内のすべての粒子を、それらの粒子の関連する位置[x,z]
jで描画する。
【0135】
図5は、処理機能性とデータ成分との間の関係を示す。
【0136】
視覚化処理の主要な段階を
図7に例示する。パネルAは、フロー画素が青色の矢印で標示された状態の代表的なフロー領域を示す。
【0137】
図7のパネルBでは、初期化時期が粒子分布を規定する。
【0138】
初期化:
1)ユーザが画素密度Dを設定する
2)N
pix個のフロー画素場所のリストをまとめる
3)N
part=D*N
pix
4)フロー画素のN
part個のランダムな部分集合を選定する
図7のパネルCは、順方向伝搬(forward propagation)ステップを例示する。
【0139】
粒子位置をフレームkからk+1(t=t+T
f)に伝搬させる
1)[x,z]
k+1=[x,z]
k+T
f*[v
x,v
z]
k
2)粒子位置を画素インデックスに量子化する
3)フロー画素内の粒子であるかどうかを試験し、真であるならば粒子を削除する
図7のパネルDは、逆伝搬ステップ(back propagation)を例示する。
【0140】
画素位置をフレームkからk−1(t=t−T
f)に逆伝搬させる
1)[x,z]
k−1=[x,z]
k−T
f*[v
x,v
z]
k
2)画素位置を量子化する
3)フロー画素から外れた画素であるかどうかを試験し、真であるならば、確率Dによって[x,z]
kで新しい粒子を発生させる
図6は、頸動脈スキャンからの粒子流表示処理の一例のフレームを示す。合成された粒子(橙色)が、速度ベクトルの大きさにより色分けされた検出されたフロー領域(青色)にオーバーレイする。
【0141】
C.視覚化処理実装形態
MatLabプログラミング言語の形で実装された粒子流視覚化処理発明を以下に示す。
【0143】
D.視覚化処理使用法及び試験
このセクションでは、粒子流視覚化器の発明の使用及び試験のMatLabコード例を与える。
【0145】
血流速ベクトルから導出された測定された血流特質(blood flow property)の表示
1.量的な速度スペクトルとしての血流ベクトル速度結像の表示のための方法
スペクトルドップラー法は、流速のスペクトル、及びそのスペクトルが心周期にわたってどのように変動するかを報告し、スペクトルドップラー法は、通常、スペクトログラムとしてグラフィカルに、及びラウドスピーカによって可聴にスペクトルを提示する。その上、スペクトルドップラー法は、送信のシーケンスにわたって得られた流速のパワースペクトルを計算し、通常は、スペクトログラムとしてグラフィカルに、及びラウドスピーカによって可聴にスペクトルを提示する。血液速度の充分な時変スペクトルを入手することは、サンプル領域内部の平均及びピークの流速の正確な算出を可能にし、すべての超音波ドップラー法のフローの乱れの最も完全な特徴付けを提供する。
【0146】
スペクトルドップラーに関連する一つの共通の表示機能は、計算されたスペクトルから量的な測定値を提供し、そのことにより、血液速度スペクトル及びスペクトルトレースを生出するための周波数スケール補正である。典型的にはスペクトル周波数軸は、フロー方向の推定値と、ドップラースペクトルの生出において使用される送信されるアンサンブルの方向との間の角度の余弦により補正される。
【0147】
ここでは、量的な血流特質、速度スペクトルを提供する方法であって、スペクトルトレース周波数軸補正スケール因子、具体的には、スペクトルアンサンブル角度に対するバイスタティックレンジレートモデルの逆数、すなわち、1/[sin(_a)cos(b)+(1+cos(a))sin(b)]として、スペクトルドップラーサンプル体積に一致した画素からの血流速ベクトル角度推定値を使用するステップを含む方法が開示されており、ここで、aがスペクトル平面波送信角度であり、bが、前のセクションで開示した方法により推定される血流速ベクトルである。従前は、そのような補正は、総体の脈管幾何形状からのオペレータ推定により提供され、真の血流の微細スケールでの空間時間的特徴部(spatio-temporal feature)を無視する。本開示では血液速度スペクトルの量的な測定値は、スペクトルフレームレートに等しい時間分解能で、及び画素空間分解能で提供される。次いで、このようにスケーリングされた血液速度スペクトル画像は、垂直軸が単位時間あたりの距離の速度単位で標示された状態で、従来のスペクトルドップラー画像トレースフォーマットと類似的に表示される。
【0148】
2.血管を通る量的な瞬時の血流量としての血流ベクトル速度結像の表示のための方法
血管を通る血流量が、単位時間あたりの体積の単位、例えばml/秒で測定される。組織内の血管を二分する3Dの再構築されたボクセルのスライスである表面にわたって計算される血流速ベクトル推定値を使用して、血流速ベクトル推定値の関連するスライスボクセルの法線ベクトルに射影された血流速ベクトル推定値の面積積分であって、二分する表面スライスにわたって積分領域がとられる面積積分が、血管を通る瞬時の血流量の量的な測定分量を提供する。次いで、瞬時の血流量画像が、垂直軸が単位時間あたりの体積の流量単位で標示された状態で、従来のスペクトルドップラー画像トレースフォーマットと類似的に表示される。
【0149】
結論
ベクトルドップラーイメージングシステムが、フィリップスL7−4線形アレイトランスデューサを使用して、頸動脈及び付近の首脈管構造をイメージングして、ボランティアに関して試験された。
【0150】
図8は、本開示の処理を実装するための高レベルシステムアーキテクチャ70を表すシステムレベルブロック図である。これは単なる一つの代表的な実施形態であり、例示するアーキテクチャ70は本開示のすべての実施形態に対する要件ではないことを理解されたい。
【0151】
アーキテクチャ70は、マルチチャネルトランシーバ及びデータ取得システム76にPCI−express74を介して結合されるホストコンピュータ72を含む。ホストコンピュータ72は、ユーザインターフェース及び制御装置78、並びにディスプレイ80を有し、ユーザインターフェース及び制御装置78、並びにディスプレイ80は、画素ベースのアプリケーション処理ソフトウェア84を利用するプロセッサ82に結合される。マルチチャネルトランシーバ及びデータ取得システムハードウェア76は、音響媒体90内の領域88をイメージングするために使用される超音波トランスデューサ86に結合される。これらの構成要素は容易に市販で入手可能であるので、それらの構成要素を本明細書では詳細に説明しない。
【0152】
画素指向処理(Pixel Oriented Processing)
本開示の一つの実施形態によるソフトウェアベースの方法及びシステムアーキテクチャは、ソフトウェアの形ですべてのリアルタイム処理機能を実装する。提案するアーキテクチャを
図9に概略的に示す。
【0153】
ソフトウェアベースのシステム内の唯一のカスタムハードウェア構成要素は、コンピュータの拡張バスに対するプラグインモジュールであり、そのプラグインモジュールは、パルス生成及び信号取得回路網、並びに、信号データを記憶するために使用される拡張メモリの大型のブロックを包含する。信号取得処理は、送信パルスの後に続く、トランスデューサ要素の各々から戻される信号を増幅且つデジタル化することからなる。典型的には、トランスデューサ自体により提供される固有のバンドパスフィルタリング以外の、デジタル化の前の信号の唯一のフィルタリングは、A/D変換のためのローパスのアンチエイリアシングフィルタリングである。信号は、関与した周波数と一致した一定のレートでサンプリングされ、デジタル化されたデータは最小限の処理によってメモリに記憶される。信号取得の直接的な設計によって、回路網を、比較的小さな量のボード面積内で既製の構成要素とともに実装することが可能になる。
【0154】
プラグインモジュールのより詳細な考察を
図10に示す。各々が送信器、受信器前置増幅器、A/D変換器、及びメモリブロックから構成される複数の取得チャネルを示す。受信の間、トランスデューサ信号はデジタル化され、個々のメモリブロックに直接書き込まれる。メモリブロックはデュアルポート型であり、このことはそれらのメモリブロックを、取得データがA/D変換器側から書き込まれているのと同時に、コンピュータ側から読み出すことが可能であることを意味する。メモリブロックは、システムCPU(複数可)には通常の拡張メモリのように見えている。プラグインモジュールのサイズは、システムは好ましくはカスタムの格納装置内に収納されるので、標準的なコンピュータ拡張カードの通常のサイズに制限されないことに留意されたい。さらに、複数のプラグインモジュールを使用して、各々のモジュールがトランスデューサ開口部の部分集合を処理する状態で、大きな数のトランスデューサ要素を収容することが可能である。
【0155】
増幅器、A/D変換器、及び関連するインターフェース回路網を含むプラグインモジュール用の構成要素、並びに、送信パルス生成及び信号取得のための必要とされる構成要素は、容易に市販で入手可能な構成要素であり、本明細書では詳細に説明しない。受信されるエコーから得られるエコー信号のRFデータ記憶域のために必要とされるメモリブロックは、本質的には、デジタル化された信号データを書き込むための第2の直接メモリアクセスポートの追加を伴う、市販で入手可能なプラグイン拡張メモリカードに見出されるのと同じ回路網である。(受信されるエコー信号データは、その信号データがトランスデューサにより生成される高周波電気的振動からなるので、一般にはRFデータと呼ばれる。)メモリは、中央プロセッサのアドレス空間にマッピングされ、コンピュータマザーボード上に配置される他のCPUメモリと同様の様式でアクセスされ得る。メモリのサイズは、そのメモリが、最高256以上の別個の送信/受信サイクルの間、個々のチャネル受信データを収容することが可能であるようなものである。体内の超音波パルスの往復走行に関する入り込みの最大の実用的な深度は約500波長であるので、中心周波数の4倍の典型的なサンプリングレートでは、個々のトランスデューサ要素からの4000もの多くのサンプルの記憶域を必要とすることになる。16ビットのサンプリング正確度及び128個のトランスデューサチャネルに関して、最大深度の受信データ取得では、各々の送信/受信イベントに対しておおよそ1メガバイトの記憶域を必要とすることになる。したがって、256個のイベントを記憶することは256MBの記憶域を必要とすることになり、すべてを総計して、128チャネルシステムを数個のプラグインカード上に形設することが可能である。
【0156】
ソフトウェアベースの超音波システムの別の態様は、コンピュータマザーボード、及びそのマザーボードの関連する構成要素である。提案する設計に関するマザーボードは、好ましくは、必要とされる処理パワーを得るためにマルチプロセッサCPU構成をサポートすべきである。電源、メモリ、ハードディスク記憶装置、DVD/CD−RWドライブ、及びモニタを完備した完全なマルチプロセッサコンピュータシステムは、当業者によく知られており、容易に市販され購入され得るものであり、より詳細には説明しない。
【0157】
ソフトウェアベースの超音波システムは、医療業界に有意な利益をもたらすために、既存の最高位のシステムに匹敵する画像品質を意味する「高性能」を真に実現しなければならない。このレベルの性能を、現在のシステムのフロースルー処理方法をソフトウェア実装形態に単に変換することにより実現することは可能ではなく、その理由は、フロースルーアーキテクチャにおいてのリアルタイムイメージングの1秒間に必要とされるすべての処理演算の単純な加算により与えられる数値が、いくつかの汎用プロセッサを用いて現在実現可能である1秒あたりの演算の典型的な数値を上回るからというものである。したがって、フロースルー方法よりはるかに高い効率を実現する新しい処理方法が必要とされる。
【0158】
本発明のソフトウェアベースの超音波システムアーキテクチャの一つの実施形態では、信号及び画像の処理に対する入力データは、1以上の送信イベントの後に続く、個々のトランスデューサチャネルから取得されるRFサンプルの集合からなる。一例のために、
図11に示すような、128要素線形トランスデューサアレイを用いた典型的な2Dイメージングスキャニングモードを考えてみる。
【0159】
この場合では「送信イベント」は、複数の音波を生成するための複数のトランスデューサ要素からのタイミングが図られたパルスからなり、それらの複数の音波は、媒体内で組み合わさって、特定の要素の場所でのトランスデューサ上の原点から外方向に発出する集束させられた超音波ビームを形成する。複数の送信イベント(全体で128)は、トランスデューサ面の幅を一定量横切りながら順次放出される超音波ビームを生出し、そのことによって、画像フレーム全体について情報収集する。これらの送信ビームの各々に対して、受信されたエコーデータが、トランスデューサ内の128個の受信器要素の各々から収集され、対応するトランスデューサ要素により受信されたサンプリングされたエコー信号を各々の列が表す状態でデータアレイに組織化される。したがって各々のアレイは、128個のトランスデューサ要素に対応する128個の列、及び、取り出された深度に関してのサンプルの数に対応するいくつかの行を有する(この場合では本願では、4096個のサンプルをもたらす4096個の行を想定することにする)。次いでこれらの128個のデータアレイは、一つの完全な画像フレームを生出するのに十分であるRFデータ集合を構成する。
【0160】
フロースルーアーキテクチャでは、ビーム及び画像の形成はトランスデューサから手に入るデータストリームとして行われるので、上記で説明したRFデータ集合は存在さえしない(少なくともすべてが同時には存在しない)ということは留意する価値がある。換言すれば、データが送信イベントの後に各々の要素に戻る際、それらのデータは、単一のビーム(スキャンライン)に沿った集束させられた戻りを表す単一のRF信号を生成するように処理され組み合わされる(ビーム形成と呼ばれる)。このRF信号は(やはりリアルタイムで)エコー振幅サンプルに処理され、それらのサンプルがメモリアレイに記憶される。すべてのビーム方向が処理されたとき、エコー振幅データは補間され、表示のために画素画像にフォーマットされる。すべての処理がリアルタイムで行われるので、処理回路網は、トランスデューサ要素から手に入るデータストリーミングに「遅れずについていく(keep up)」ことが可能でなければならない。
【0161】
本発明のソフトウェアベースのアーキテクチャでは、すべての入力データが処理の前に記憶される。このことによって、取得レートが処理レートから切り離され、処理時間が、必要であれば取得時間より長くすることが可能になる。このことは、取得の深度が短くサンプルレートが高い高周波スキャンにおいての明確な利点である。例えば10MHzのスキャンヘッドは、およそ4センチメートルのイメージングの使用可能な深度を有し得る。この場合では、組織内の音の速さによって、128個の送信/受信イベントの各々が、それらのデータを52マイクロ秒という非常に高い取得データレートで取得且つ記憶することが要求される。フロースルーアーキテクチャではこれらの取得データは、高い処理レートで、リアルタイムでスキャンラインに形成されることになる。本発明のソフトウェアベースのアーキテクチャでは、RFデータを記憶することによって、処理は、表示のフレーム期間と同じほど長くかかることが許され、このフレーム期間は、組織運動のリアルタイム視覚化に関しては典型的には33ミリ秒(30フレーム/秒)である。128個の画素列に関しては(スキャンラインとの粗い類似)、このことによって、フロースルーアーキテクチャの52マイクロ秒ではなく、258マイクロ秒の列あたりの処理時間が許されることになる。この記憶方策は、典型的なスキャン深度に関してフロースルーアーキテクチャと比較して処理の最大レートを大幅に低下させる効果を有する。
【0162】
入力データを記憶することは、最大処理レートを低減するが、処理ステップの数を必ずしも低減するわけではない。このことを達成するために、超音波データ処理に対する新しい手法を取り上げる。第1のステップは、イメージングモードであるときのシステムの最終的な目標が、出力ディスプレイ上の画像を生出することであるということを認識することである。超音波画像は、周波数及びアレイ寸法などの取得システムの物理パラメータによって決まる基本分解能を有し、エコー振幅又は何らかの他の組織(音響)特質を符号化する画素値の矩形アレイとして表され得るものである。この矩形画素アレイの密度は、画像分解能の適切な空間サンプリングを提供しなければならない。表示画像は、画素の矩形アレイのみからなる必要はなく、異なる幾何学的形状を表す画素の何らかの任意の集合からなる場合があることが認識される。次のステップは、この画像アレイ内の画素の一つとともに開始して、この画素の強度の算出にRFデータ集合内のどのサンプル点が寄与するかを検討し、それらのサンプル点についてアクセスし処理する最も効率的な方途を決定することである。この手法は、ディスプレイ上の画素に寄与する情報のみが処理される必要があるので、現在のフロースルーアーキテクチャにより利用されるものとは完全に異なる手法である。本発明の手法では、表示画像上の小さな領域は、小さな領域がより少ない画素を包含するので、大きな画像領域より少ない総合的な処理時間がかかることになる。対照的にフロースルー処理方法は、画像領域サイズとは無関係に、最大データストリーム帯域幅を扱うように設計されなければならない。
【0163】
超音波画像を適切に表すために必要とされる画素アレイを処理した後、アレイを、観視のためにふさわしいサイズでコンピュータディスプレイに対してレンダリングすることが可能である。コンピュータのグラフィックスプロセッサは、追加的なCPU処理を必要とせずに、単純なスケーリング及び補間からなるこの演算を典型的に実行することが可能である。
【0164】
次に本願では、本願での超音波画像の単一の画素に対する処理方策を検討する。この論考において本願では、本願での目的が、トランスデューサアレイに関して画素の対応する空間的な場所でのエコー強度を得ることであるということを想定することにする。他の音響パラメータを同様に得ることが可能である。本願での第1のステップは、エコー強度算出に寄与するサンプルを包含する取得RFデータの領域を見出すことである。このことを
図11のスキャニング方法に対して達成するために、本願では最初に、画素の場所を最も近く横切ることになる取得スキャンラインを見出し、次いで、対応する個々の要素データアレイを使用する。
図12は、超音波画像内の一例の画素に対するこのマッピング処理を示す。
図12では、指し示されている画素が、この場合ではスキャンライン4である、スキャンの最も近い取得ラインにマッピングし、そのスキャンライン4のRFデータは、第4の個々の要素RFデータアレイ内に存する(そのRFデータは、第4の送信/受信イベントから収集されたデータを表す)。二つ以上のRFデータアレイを、画素信号に寄与するとして選定することが可能であるが、この例に関して本願では、単一のデータアレイのみを検討することにする。
【0165】
外部の次のステップは、画素の強度算出に寄与するサンプルを包含する個々の要素アレイ内の領域をマップに記すことである。このマッピング処理は相当に複雑であり、いくつかの因子によって決まるものである。トランスデューサ要素は各々、それらのトランスデューサ要素が画像フィールド内の個別の点から戻る信号にどのように応答することになるかを決定する感度の領域を有する。所与の画像点に関しては、感度が低すぎる場合、要素は画素の量に対する有用な情報を与えないことになるので、所定のしきい値より上の感度を有する要素のみが考慮される必要がある。したがってこの感度しきい値が、マッピングされた領域内に含むべき要素データ列の数を決定する。
【0166】
マッピングされたデータ領域又は部分集合の開始深度は、各々の個々のトランスデューサ要素での戻るエコーの到着時間により決定される。
図12に示すように、画像点からより遠く離れた画素に対する画像点信号は時間的により遅れて捕捉され、その結果、データ集合の開始点がメモリ内でより深くなる。最終的に、マッピングされたデータ領域内のデータに対して必要とされる深度範囲は、生成された送信パルスの継続時間によって決まる。より長い送信パルスが、より長い時間の期間の間画像点を励起し、RFメモリのより長い深度の全範囲にわたって延在するエコー信号を生成することになる。
【0167】
幸運にも、所与の画素に対するマッピングされたデータの領域又は部分集合を決定するために使用される因子の多くを、所与の画素グリッドに対してあらかじめ計算することが可能であり、その理由は、このグリッドがリアルタイム画像シーケンスの複数のフレームにわたって変化しないからというものである。あらかじめ計算された因子を使用すると、所与の画素に対するマッピングされたデータ領域を急速且つ効率的に決定し、リアルタイムイメージングの間の少なからぬ計算を省くことが可能である。
【0168】
画素のマッピングされたRFデータの部分集合を選び出した後、本願では、その部分集合を下記に示すような行列RFP
nmに組織化することが可能である。
【数85】
【0169】
記号「P
nm」は、行n列m内の画像画素を指す。行列の列は
図12の垂直方向の棒であり、各々の垂直方向の棒内のサンプルの数jは同じであることが想定されている。サンプルの数jは、送信パルスにより生成される信号を捕捉するために必要とされる時間内のRFデータの範囲によって決まる。インデックスkは、強度算出に関与する画像点に対してからの適切な信号強度を有する、RFデータアレイ内のチャネルの数である。
【0170】
したがって前述を使用するシステムを、本開示の方法、処理、及びアルゴリズムを実行するように実装することが可能である。一つの代表的な実施形態では、音響信号を生成し、モジュール内の複数の受信要素で音響信号の少なくとも一つのエコーを受信し、それらの複数の受信要素から複数のエコー信号を得るように適応されたモジュール、及び、モジュールに結合されるプロセッサを含む超音波イメージングシステムが提供される。プロセッサは、
複数のエコー信号から情報を抽出するステップと、
抽出された情報を使用して血流ベクトル速度信号を構築するステップであって、抽出された情報をウォールフィルタリングすること、ウォールフィルタリングされた情報を使用して自己相関値及びドップラー周波数推定値を形成すること、エイリアシング干渉を伴うバイスタティックレンジレートモデルを線形部分及び非線形部分へ区分すること、及び、加重最小二乗スキームにより前記モデルを求解することにより行われ、血流ベクトル速度信号が媒体内の少なくとも一つの点に対応する、構築するステップと、
血流ベクトル速度推定手順の副産物として生出される品質測定基準(quality metric)の値に関する一連の試験によって血流ベクトル速度信号を認定することにより、ディスプレイデバイス画素での血流の存在を検出するステップとを行うように構成される。ディスプレイデバイスは、血流ベクトル速度信号から血流ベクトル速度結像を生成するように構成される。
【0171】
本開示の別の態様によれば、音響信号を生成し、モジュール内の複数の受信要素で音響信号の少なくとも一つのエコーを受信し、それらの複数の受信要素から複数のエコー信号を得るように適応されたモジュールと、前記モジュールに結合されるプロセッサとを含むシステムが提供され得る。プロセッサは、
複数のエコー信号から情報を抽出するステップと、
抽出された情報を使用して、媒体内の少なくとも一つの点に対応する血流ベクトル速度信号を構築するステップであって、(a)抽出された情報をウォールフィルタリングするステップ、(b)ウォールフィルタリングされた情報を使用して、圧縮されたフォーマットの共役遅延の積を形成するステップ、及び、(c)積に関する時空間勾配演算を使用することによりベクトル速度測定モデルを形成し、加重最小二乗スキームにより前記モデルを求解するステップを含む、構築するステップと、
血流ベクトル速度推定手順の副産物として生出される品質測定基準の値に関する一連の試験によって血流ベクトル速度信号を認定することにより、画素での血流の存在を検出ステップと
を行うように構成される。
【0172】
血流ベクトル速度信号から血流ベクトル速度結像を表示するように構成されるディスプレイデバイスが含まれる。
【0173】
上記で説明した様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することが可能である。実施形態の態様を、必要であれば、様々な特許、出願、及び公報の概念を用いるように修正して、さらに他の実施形態を提供することが可能である。
【0174】
これら及び他の変更を、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことが可能である。一般には以下の特許請求の範囲において、使用される用語を、明細書及び特許請求の範囲において開示する特定の実施形態に特許請求の範囲を限定すると解釈すべきではなく、そのような特許請求の範囲に権利が付与される、等価物の最大限度の範囲とともにすべての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって特許請求の範囲は、本開示により限定されない。