特許第6017588号(P6017588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017588
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20161020BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161020BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20161020BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20161020BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20161020BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20161020BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20161020BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04ZYW
   F16D41/08 Z
   B62D101:00
   B62D111:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-554573(P2014-554573)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2013085002
(87)【国際公開番号】WO2014104253
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-287173(P2012-287173)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 康夫
(72)【発明者】
【氏名】池谷 学
(72)【発明者】
【氏名】米田 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】三好 尚
(72)【発明者】
【氏名】大庭 吉裕
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−345413(JP,A)
【文献】 特開2010−149678(JP,A)
【文献】 特開2005−008073(JP,A)
【文献】 特開2002−225733(JP,A)
【文献】 特開2005−082057(JP,A)
【文献】 特開2010−195251(JP,A)
【文献】 特開2010−076692(JP,A)
【文献】 特開2008−273419(JP,A)
【文献】 特開2008−221916(JP,A)
【文献】 特開2004−122992(JP,A)
【文献】 特開2010−030368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
F16D 41/08
B62D 101/00−137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵力伝達機構を介して相互に連結され、その電気的特性が相互に共通に設定された転舵用の第1のモータ及び第2のモータを有し、操向部材の操作に応じて操舵車輪を転舵する転舵装置と、
前記第1のモータに流れる第1の電流値を検出する第1の電流検出部と、
前記第2のモータに流れる第2の電流値を検出する第2の電流検出部と、
前記第1及び第2の電流検出部によりそれぞれ検出される第1及び第2の電流値の偏差が予め定められる閾値を超える場合、前記転舵装置が異常である旨の診断を下す異常診断部と、
前記第1のモータの駆動制御を主として行う第1の制御装置と、
前記第2のモータの駆動制御を主として行う第2の制御装置と、を備え、
前記第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、該一方のモータの逆転異常による駆動は他方のモータの正転方向の駆動によって相殺され
ことを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
第3のモータを有し、前記操向部材の操作に対する反力を付与する反力付与装置と、
前記第3のモータの駆動制御を主として行う第3の制御装置と、
前記転舵装置と前記反力付与装置との間に設けられ、前記転舵装置の側の第1の回転軸と前記反力付与装置の側の第2の回転軸との間の機械的な連結を切離状態および結合状態のいずれかに切り替える連結装置と、をさらに備え、
前記第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、前記第1〜第3の制御装置のいずれかは、前記連結装置を結合状態にすると共に、前記第3のモータをアシストモータとして用いる電動パワーステアリングモード、又はマニュアルステアリングモードのうちいずれかに操舵機能モードを設定する制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
第3のモータを有し、前記操向部材の操作に対する反力を付与する反力付与装置と、
前記第3のモータの駆動制御を主として行う第3の制御装置と、をさらに備え、
前記第1〜第3の制御装置は、前記異常診断部を有すると共に、少なくとも一部が同一である共通処理を実行する機能を有し、
前記異常診断部は、前記第1〜第3の制御装置が前記共通処理をそれぞれ実行することで得られる三つの処理結果を比較し、この比較結果に基づいて、前記三つの処理結果のうち二以上の処理結果が予め定められる許容範囲内に属する場合に、前記二以上の処理結果に対応する制御装置が正常である旨の診断を下す一方、前記二以上から外れた処理結果に対応する制御装置が異常である旨の診断を下す、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用操舵装置。
【請求項4】
前記連結装置は、
前記第1の回転軸又は前記第2の回転軸のうちいずれか一方に設けられる円筒部材と、
前記第1の回転軸又は前記第2の回転軸のうち前記一方とは異なる他方に設けられ、前記円筒部材に収容可能なカム部材と、
前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に設けられる複数の対ローラと、
前記対ローラの間を離間させる方向に付勢するように、該対ローラの間にそれぞれ設けられる複数のばね部材と、
前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に対して挿抜自在に設けられる切替え爪部と、
前記切替え爪部を、前記隙間に挿し込んだ切離状態、又は、前記隙間から抜き出した結合状態のうちいずれかに切り替える切替装置と、
を備え、
前記異常診断部による異常診断により、前記連結装置の前記切替装置が前記切替え爪部を前記切離状態から前記結合状態に切り替えると、前記複数のばね部材が前記切替え爪部による押圧力から解放されることで前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に前記複数の対ローラがくさび状に係合し、これをもって、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸を機械的に連結することで前記操向部材と前記操舵車輪とを機械的に連結する、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用操舵装置。
【請求項5】
前記第1〜第3の制御装置は、前記異常診断部による異常診断を受けて、前記連結装置の前記切替装置に対する電源供給を遮断させる制御を行うことにより、前記切替え爪部を前記切離状態から前記結合状態に切り替えさせる、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用操舵装置。
【請求項6】
前記第1〜第3の制御装置は、前記切替え爪部を前記切離状態から前記結合状態に切り替えさせる際に、前記第1のモータ、前記第2のモータ、又は、前記第3のモータのうち少なくとも一以上を駆動させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の車両用操舵装置。
【請求項7】
前記第1〜第3の制御装置は、複数の異常箇所のそれぞれに対応付けて適切な操舵機能モードの種別が記述された対応情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記異常診断部による異常診断に係る異常箇所と、前記対応情報とを参照して、前記異常診断に係る異常箇所に対応する操舵機能モードを、第1の操舵機能モードであるアクティブ可変ギアレシオステアリングモード第2の操舵機能モードである可変ギアレシオステアリングモード第3の操舵機能モードである電動パワーステアリングモード又は、第4の操舵機能モードであるマニュアルステアリングモードのうちいずれかに設定する制御を行う
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進行方向を所望の方向に変えようとする際に用いられる車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両では、運転者の操舵意図を、電線を媒介し電気信号に変換して操舵車輪に伝える、バイ・ワイヤ(By Wire)式の操舵装置を採用したものがある。かかるバイ・ワイヤ式の操舵装置では、運転者による操向ハンドルの操作方向及び操作量を電気信号に変換し、転舵用モータを含む転舵装置に与える。すると、転舵装置は、電気信号に従って転舵用モータを駆動することで運転者の操舵意図に応じて操舵車輪を転舵するように動作する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に係るバイ・ワイヤ式の操舵装置によれば、例えば、わだちのような起伏のある路面を走行中に、この起伏のある路面部分に車幅方向の一対の操舵車輪のうち一方がはまり込んだとしても、車両にヨーモーメントが発生し操向ハンドルが取られる事態を抑制することができる。その結果、運転者による操向ハンドルの操作負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−165460号公報
【特許文献2】特開2008−221916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、仮に、特許文献1に記載されているようなバイ・ワイヤ式の操舵装置において、転舵用モータが何らかの異常状態に陥ることにより、この転舵用モータに流れる電流の大きさを検出する電流センサに異常信号が生じたとする。かかる状況で、前記異常信号に対して演算処理を施すことで転舵用モータや電流センサなどの異常診断を試みた場合、その演算処理には所要の時間がかかるため、異常診断を下すまでにある程度の待機時間を不可避的に要するという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されているようなバイ・ワイヤ式の操舵装置では、転舵装置に主転舵モータと副転舵モータを有し、ハンドル角センサと車速センサから演算にて求めた転舵指令角とモータ角度センサからの信号により両モータの転舵電流指令値を算出し、それらの指令値の符号が異なるか否か、及び、両者の差の絶対値が異常判定しきい値以上であるか否かに基づいて、転舵装置の異常診断を行っている。
【0007】
こうした特許文献2に係るバイ・ワイヤ式の操舵装置では、転舵指令角やモータ角度センサ信号から転舵電流指令値を算出するには所要の時間がかかるため、前記特許文献1と同様に、異常診断を下すまでにある程度の待機時間を不可避的に要するという課題があった。
【0008】
しかも、特許文献2に係るバイ・ワイヤ式の操舵装置では、転舵用モータの異常診断を、転舵用モータに流れる電流の大きさを用いずに、第1の転舵指令角と第1転舵モータ角度センサとから求めた第1の転舵電流指令値と、第2の転舵指令角と第2の転舵モータ角度センサとから求めた舵2の転舵電流指令値との差異に基づいて行っている。そのため、例えば、転舵用モータが何らかの異常状態に陥った際に、この転舵用モータの異常状態を受けて異常発生の診断がなされる結果、異常発生の診断を行っている間、車両の挙動が異常状態に陥ることが懸念される。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、例えば、転舵用モータが何らかの異常状態に陥って、この転舵用モータに流れる電流の大きさを検出する電流検出部に異常信号が生じた場合であっても、かかる異常発生の診断を、車両の挙動を正常状態に保ちながら速やかに行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、(1)に係る発明は、舵力伝達機構を介して相互に連結され、その電気的特性が相互に共通に設定された転舵用の第1のモータ及び第2のモータを有し、操向部材の操作に応じて操舵車輪を転舵する転舵装置と、前記第1のモータに流れる第1の電流値を検出する第1の電流検出部と、前記第2のモータに流れる第2の電流値を検出する第2の電流検出部と、前記第1及び第2の電流検出部によりそれぞれ検出される第1及び第2の電流値の偏差が予め定められる閾値を超える場合、前記転舵装置が異常である旨の診断を下す異常診断部と、前記第1のモータの駆動制御を主として行う第1の制御装置と、前記第2のモータの駆動制御を主として行う第2の制御装置と、を備え、前記第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、該一方のモータの逆転異常による駆動は他方のモータの正転方向の駆動によって相殺されることを最も主要な特徴とする。
【0011】
(1)に係る発明では、異常診断部は、第1及び第2の電流検出部によりそれぞれ検出される第1及び第2の電流値の偏差が予め定められる閾値を超える場合、転舵装置が異常である旨の診断を下すこととした。
ここで、操舵車輪の所要の転舵動作が正常に行われた場合、第1のモータ及び第2のモータのそれぞれには、均衡した大きさの電流が流れる。これは、第1のモータ及び第2のモータは、その電気的特性が相互に共通になるように設定され、かつ、舵力伝達機構を介して相互に連結されているからである。
【0012】
そうすると、異常診断部は、第1の電流値及び第2の電流値の偏差を監視するだけで、煩雑な演算処理や診断処理による待機時間を要することなく、転舵装置(第1の電流センサ又は第2の電流センサ)の異常診断を行うことができる。
したがって、(1)に係る発明によれば、例えば転舵用モータ等が故障することで第1又は第2の電流検出部に異常信号が生じた場合であっても、かかる異常発生の診断を速やかに行うことができる。
【0013】
また、異常診断部は、転舵用の第1のモータ及び第2のモータのそれぞれに流れる電流を、第1及び第2の電流検出部により直接検出した第1及び第2の電流値に基づいて異常診断を行うため、異常診断に際し故障したモータが異常回転する前に異常発生の診断を下すことができ、故障したモータが異常回転することで現れるおそれがある車両の異常挙動を未然に抑止することができる。
これについて、例えば、仮に、転舵用の第1のモータ及び第2のモータとして3相モータを採用し、3相モータのうち1相が短絡して大電流が流れた故障例をあげて説明する。この故障例では、正常なモータの電流検出信号と比べると、異常なモータの電流検出信号は、判定閾値を大きく超える結果、異常診断を瞬時に行うことができる。しかも、第1のモータ及び第2のモータは、その電気的特性が相互に共通になるように設定されているため、正常なモータの出力の大きさは、異常なモータの出力の大きさと同等であり、異常なモータの出力の大きさが正常なモータの出力の大きさに打ち勝って、操舵車輪が異常状態に至るまで転舵される事態を生じることはない。
また、第1及び第2のモータのうち一方にその他の異常(停止)が生じたとしても、他方のモータにより転舵機能を維持することができる。さらに、第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、該一方のモータの逆転異常による駆動は他方のモータの正転方向の駆動によって相殺されるため、転舵機能を可及的に維持する効果を期待することができる。
しかも、(1)に係る発明によれば、電気的特性が相互に共通に設定された転舵用の第1及び第2のモータが舵力伝達機構を介して相互に連結されているため、単一のモータで転舵駆動する場合と比べて、個々のモータの出力特性を低く抑えることができる。そのため、例えば、既存の12ボルト容量のバッテリからの電源供給を受けて動作させることが可能であって、新たな24ボルト容量または48ボルト容量の昇圧回路なども要しない。その結果、個々のモータのサイズを小さくすることができ、レイアウト設計の自由度を確保することができる。
【0014】
また、(2)に係る発明は、(1)記載の車両用操舵装置であって、第3のモータを有し、前記操向部材の操作に対する反力を付与する反力付与装置と、前記第3のモータの駆動制御を主として行う第3の制御装置と、前記転舵装置と前記反力付与装置との間に設けられ、前記転舵装置の側の第1の回転軸と前記反力付与装置の側の第2の回転軸との間の機械的な連結を切離状態および結合状態のいずれかに切り替える連結装置と、をさらに備え、前記第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、前記第1〜第3の制御装置のいずれかは、前記連結装置を結合状態にすると共に、前記第3のモータをアシストモータとして用いる電動パワーステアリングモード、又はマニュアルステアリングモードのうちいずれかに操舵機能モードを設定する制御を行うことを特徴とする。
【0015】
(2)に係る発明では、第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、第1〜第3の制御装置のいずれかは、連結装置を結合状態にすると共に、第3のモータをアシストモータとして用いる電動パワーステアリングモード、又はマニュアルステアリングモードのうちいずれかに操舵機能モードを設定する制御を行う。
(2)に係る発明によれば、第1及び第2のモータのうち一方のモータに逆転異常による駆動が生じた場合に、連結装置を結合状態にすると共に、電動パワーステアリングモード、又はマニュアルステアリングモードのうちいずれかに操舵機能モードを設定するため、操舵機能が喪失する事態を可及的に回避することができる。
【0016】
また、(3)に係る発明は、(1)又は(2)に記載の車両用操舵装置であって、第3のモータを有し、前記操向部材の操作に対する反力を付与する反力付与装置と、前記第1のモータの駆動制御を主として行う第1の制御装置と、前記第2のモータの駆動制御を主として行う第2の制御装置と、前記第3のモータの駆動制御を主として行う第3の制御装置と、をさらに備え、前記第1〜第3の制御装置は、前記異常診断部を有すると共に、少なくとも一部が同一である共通処理を実行する機能を有し、前記異常診断部は、前記第1〜第3の制御装置が前記共通処理をそれぞれ実行することで得られる三つの処理結果を比較し、この比較結果に基づいて、前記三つの処理結果のうち二以上の処理結果が予め定められる許容範囲内に属する場合に、前記二以上の処理結果に対応する制御装置が正常である旨の診断を下す一方、前記二以上から外れた処理結果に対応する制御装置が異常である旨の診断を下す、ことを特徴とする。
【0017】
(3)に係る発明では、多数決の原理にしたがって、異常診断部が異常診断を行う。すなわち、異常診断部は、第1〜第3の制御装置が共通処理をそれぞれ実行することで得られる三つの処理結果を比較し、この比較結果に基づいて、三つの処理結果のうち二以上の処理結果が予め定められる許容範囲内に属する場合に、前記二以上の処理結果に対応する制御装置が正常である旨の診断を下す一方、前記二以上から外れた処理結果に対応する制御装置が異常である旨の診断を下すこととした。
【0018】
(3)に係る発明によれば、第1〜第3の制御装置に係る異常診断を、適時かつ適確に行うことができる。
なお、正常である旨の診断が下された制御装置について、その制御動作を継続するように構成すれば、操舵機能の可及的な維持に貢献することができる。
【0019】
また、(4)に係る発明は、(2)記載の車両用操舵装置であって、前記転舵装置と前記反力付与装置との間に設けられ、前記転舵装置の側の第1の回転軸と前記反力付与装置の側の第2の回転軸との間の機械的な連結を切離状態および結合状態のいずれかに切り替える連結装置をさらに備え、前記連結装置は、前記第1の回転軸又は前記第2の回転軸のうちいずれか一方に設けられる円筒部材と、前記第1の回転軸又は前記第2の回転軸のうち前記一方とは異なる他方に設けられ、前記円筒部材に収容可能なカム部材と、前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に設けられる複数の対ローラと、前記対ローラの間を離間させる方向に付勢するように、該対ローラの間にそれぞれ設けられる複数のばね部材と、前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に対して挿抜自在に設けられる切替え爪部と、前記切替え爪部を、前記隙間に挿し込んだ切離状態、又は、前記隙間から抜き出した結合状態のうちいずれかに切り替える切替装置と、を備え、前記異常診断部による異常診断により、前記連結装置の前記切替装置が前記切替え爪部を前記切離状態から前記結合状態に切り替えると、前記複数のばね部材が前記切替え爪部による押圧力から解放されることで前記円筒部材及び前記カム部材の隙間に前記複数の対ローラがくさび状に係合し、これをもって、前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸を機械的に連結することで前記操向部材と前記操舵車輪とを機械的に連結する、ことを特徴とする。
【0020】
(4)に係る発明では、異常診断部による異常診断により、連結装置の切替装置が切替え爪部を切離状態から結合状態に切り替えると、複数のばね部材が切替え爪部による押圧力から解放されることで円筒部材及び前記カム部材の隙間に複数の対ローラがくさび状に係合し、これをもって、第1の回転軸及び第2の回転軸を機械的に連結することで操向部材と操舵車輪とが機械的に連結される。
【0021】
(4)に係る発明によれば、異常診断部が異常診断を行った場合に、連結装置の切替装置の働き、すなわち、対ローラを遊嵌させている爪部を第1の回転軸又は第2の回転軸の軸方向に抜き出すことによって、第1の回転軸及び第2の回転軸を機械的に連結することで操向部材と操舵車輪とを瞬時に機械的に連結することができる。しかも、この機械的な連結は操向部材の操作位置に依存しないため、どの操作位置でも操舵機能を瞬時かつ確実に維持することができる。
【0022】
また、(5)に係る発明は、(4)記載の車両用操舵装置であって、前記第1〜第3の制御装置は、前記異常診断部による異常診断を受けて、前記連結装置の前記切替装置に対する電源供給を遮断させる制御を行うことにより、前記切替え爪部を前記切離状態から前記結合状態に切り替えさせる、ことを特徴とする。
【0023】
(5)に係る発明では、第1〜第3の制御装置は、異常診断部による異常診断を受けて、連結装置の切替装置に対する電源供給を遮断させる制御を行うことにより、切替え爪部を切離状態から結合状態に切り替えさせることとした。
【0024】
(5)に係る発明によれば、フェールセーフの観点から好ましい実施形態、すなわち、仮に、第1〜第3の制御装置のうち1つの制御装置が異常である旨の診断が下され、その制御装置に対する電源供給が遮断されたとしても、他の2つの制御装置が補完的に動作する実施形態によって、操舵機能を確実に維持することができる。
【0025】
また、(6)に係る発明は、(4)又は(5)に記載の車両用操舵装置であって、前記第1〜第3の制御装置は、前記切替え爪部を前記結合状態から前記切離状態へと切り替えさせる際に、前記第1のモータ、前記第2のモータ、又は、前記第3のモータのうち少なくとも一以上を駆動させる制御を行う、ことを特徴とする。
【0026】
本発明に係る車両用操舵装置の起動開始時(車両の起動時)には、連結装置の切替え爪部は結合状態にある。具体的には、例えば、連結装置の切替え爪部が結合状態にある車両の駐車時において、操向部材を据え切りすることで過大な負荷トルクを連結装置の結合部分に与えた場合には、この結合部分(円筒部材、カム部材、及び、複数の対ローラの三者が相互に当接する部分)同士が食いついた固着状態を生じる。その結果、連結装置の切替装置を働かせようとしても、円筒部材の内方であって円筒部材及びカム部材の隙間に複数の切替え爪部をさし込むことができずに、連結装置を結合状態から切離状態へと切り替えることができないおそれがある。
【0027】
そこで、(6)に係る発明では、第1〜第3の制御装置は、切替え爪部を結合状態から切離状態へと切り替えさせる際に、第1のモータ、第2のモータ、又は、第3のモータのうち少なくとも一以上を駆動させる制御を行うこととした。
【0028】
(6)に係る発明によれば、仮に、連結装置の結合部分同士が食いついた固着状態にある場合であっても、前記の結合部分を確実かつ速やかに緩ませることができる。その結果、本来の操舵機能を確実に発揮させることができる。
【0029】
また、(7)に係る発明は、(4)〜(6)のいずれか一に記載の車両用操舵装置であって、前記第1〜第3の制御装置は、複数の異常箇所のそれぞれに対応付けて適切な操舵機能モードの種別が記述された対応情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記異常診断部による異常診断に係る異常箇所と、前記対応情報とを参照して、前記異常診断に係る異常箇所に対応する操舵機能モードを、第1の操舵機能モードであるアクティブ可変ギアレシオステアリングモード第2の操舵機能モードである可変ギアレシオステアリングモード第3の操舵機能モードである電動パワーステアリングモード又は、第4の操舵機能モードであるマニュアルステアリングモードのうちいずれかに設定する制御を行うことを特徴とする。
【0030】
(7)に係る発明では、第1〜第3の制御装置は、異常診断部による異常診断に係る異常箇所と、前記対応情報とを参照して、異常診断に係る異常箇所に対応する操舵機能モードを、第1の操舵機能モード、第2の操舵機能モード、第3の操舵機能モード、又は、第4の操舵機能モードのうちいずれかに設定する制御を行うこととした。
【0031】
(7)に係る発明によれば、操舵システムに異常が生じた際の最終手段であるマニュアルステアリングへの移行段階を4段階に設定して、それぞれの段階において残された機能を用いて操舵システムの再構築を行い、適切な操舵機能モードを設定して操舵制御を行うため、最終手段であるマニュアルステアリングへの切り替え頻度を抑制し、操舵機能の質的向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る車両用操舵装置によれば、例えば、転舵用モータが何らかの異常状態に陥って、この転舵用モータに流れる電流の大きさを検出する電流検出部に異常信号が生じた場合であっても、かかる異常発生の診断を、車両の挙動を正常状態に保ちながら速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】本発明の実施形態に係る車両用操舵装置の概要を表す構成図である。
図1B】車両用操舵装置が有する第1〜第3の制御装置の内部構成図である。
図2】連結装置の切離状態を表すA−A線に沿う矢視横断面図である。
図3】連結装置の切離状態を表す縦断面図である。
図4】連結装置の結合状態を表すA−A線に沿う矢視横断面図である。
図5】連結装置の結合状態を表す縦断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る車両用操舵装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図7】アクティブVGS(Active Variable Gear ratio Steering)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図8】アクティブVGS1(Active Variable Gear ratio Steering 1)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図9】アクティブVGS2(Active Variable Gear ratio Steering 2)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図10】アクティブVGS3(Active Variable Gear ratio Steering 3)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図11】VGS(Variable Gear ratio Steering)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図12】EPS(Electric PowerSteering)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図13】マニュアルステアリング(Manual Steering)に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の概要を表す構成図である。図1Bは、車両用操舵装置101が有する第1〜第3の制御装置354,363,393の内部構成図である。図2は、連結装置4の切離状態を表すA−A線に沿う矢視横断面図である。図3は、連結装置4の切離状態を表す縦断面図である。図4は、連結装置4の結合状態を表すA−A線に沿う矢視横断面図である。図5は、連結装置4の結合状態を表す縦断面図である。
【0035】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101は、図1Aに示すように、操向ハンドル(ステアリングホイール)1、反力付与装置2、転舵装置3、連結装置4、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信媒体5、車両の速度(車速)を検出する車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ8、及び、ラック位置センサ39を備える。
【0036】
本発明の“操向部材”に相当する操向ハンドル1は、不図示の車両の進行方向を所望の方向に変えようとする際に用いられる。操向ハンドル1の中央部には、操舵軸10が連結されている。
【0037】
反力付与装置2は、操舵軸10の回転方向に対する反力を付与する機能を有する。操舵軸10は、第1の自在継手11を介して、後記する連結装置4の第2の回転軸40に連結されている。操舵軸10は、ケース12の内部に間隔を置いて設けられた第1〜第3の軸受13,14,15により回転自在に支持されている。ケース12の内部は液密に保持される。操舵軸10には、操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、反力発生装置18が設けられる。
【0038】
操舵トルクセンサ16は、操向ハンドル1から入力される操舵トルクの大きさと方向を、例えばソレノイド型のコイル12a,12bを用いて検出する機能を有する。このコイル12a,12bにより透磁率の変化として検出される操舵トルク信号SA,SBは、相互に相反する特性となる(操舵トルク信号SA,SBの加算値は一定)。操舵トルク信号SA,SBは、インターフェイス回路164に入力される。インターフェイス回路164では、増幅・フィルタ処理により、操舵トルク信号SA,SBの波形が整形される。波形整形後の操舵トルク信号SA,SBは、通信媒体5を介して、後記する第1の制御装置353、第2の制御装置363、第3の制御装置393のそれぞれに入力される。
【0039】
第1〜第3の制御装置353,363,393では、操舵トルク信号SA,SBの加算値が演算される。ここで、操舵トルク信号SA,SBの加算値は、操舵トルクセンサ16が正常の場合、常に一定の値を採る。操舵トルクセンサ16により検出される操舵トルク信号SA,SBは、相互に相反する特性を有するからである。これは、操舵トルク信号SA,SBの加算値が一定の値を採るか否かに基づいて、操舵トルクセンサ16の異常診断を行うことができることを意味する。また、操舵トルク信号SA,SBのうちいずれかが急激に変動した場合、コイルの断線や回路の部品異常を生じた蓋然性が高い。
【0040】
したがって、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵トルク信号SA,SBの加算値、又は、それぞれの単独値の時間変化を監視することにより、操舵トルクセンサ16の異常診断(コイルの断線や回路の部品異常が生じているか否かに係る異常診断を含む)を行うことができる。
【0041】
操舵角センサ17は、操向ハンドル1から入力される操舵角と方向を、例えば、二つのポテンショメータのような一対の回転角度センサ(不図示)を用いて検出する機能を有する。操舵角センサ17の構成について詳しく述べると、操舵軸10には、図1Aに示すように、操舵軸10周りに回転自在に小ギア174が設けられる。小ギア174には、この小ギア174に噛み合う大ギア175が並んで設けられる。ケース173に収容された一対の回転角度センサは、大ギア175の回転角度をそれぞれ検出することにより、減速された操向ハンドル1の操舵に係る回転角度信号SC,SD(共に同等な信号)を出力する。回転角度信号SC,SDは、通信媒体5を介して、後記する第1の制御装置353、第2の制御装置363、第3の制御装置393のそれぞれに入力される。
【0042】
第1〜第3の制御装置353,363,393は、回転角度信号SC,SD同士の比較結果を監視することにより、操舵角センサ17が異常か否かに係る異常診断を行う機能を有する。回転角度信号SC,SDは、操舵角センサ17が正常の場合、相互に共通の特性となる。これは、回転角度信号SC,SD同士の比較結果が一致するか否かに基づいて、操舵角センサ17が異常か否かに係る異常診断を行うことができることを意味する。
【0043】
したがって、第1〜第3の制御装置353,363,393は、回転角度信号SC,SD同士の比較結果を監視することにより、操舵角センサ17が異常か否かに係る異常診断を行うことができる。
【0044】
反力発生装置18は、操向ハンドル1の操舵軸10の回転方向に対する反力を発生させる機能を有する。反力発生装置18は、操舵軸10に対して共廻りするように設けられた第3のウォームホィール180と、第3のモータ181の回転軸に設けられ、第3のウォームホィール180に噛み合う第3のウォーム182と、第3の制御装置393と、を有する。
【0045】
第3の制御装置393には、第3のモータ181に流れる第3の電流値を検出する第3の電流センサ(第3の電流検出部)181Aが設けられている。第3の電流センサ181Aで検出された第3の電流値は、第3の制御装置393により通信媒体5を介して第1の制御装置353及び第2の制御装置363のそれぞれへ送られる。
【0046】
第3の制御装置393は、後で詳しく説明するが、操舵トルクセンサ16の操舵トルク信号SA,SBや、操舵角センサ17の回転角度信号SC,SDなどに基づいて、後記する転舵用の第1のモータ332及び第2のモータ342、並びに、操舵反力付与用の第3のモータ181を駆動制御するための制御信号を生成する機能を有する。ただし、第3の制御装置393は、第1のモータ332又は第2のモータ342を駆動制御するための制御信号を生成する機能を省略して構成してもよい。
【0047】
転舵装置3は、車幅方向の一対の操舵車輪30a,30bに対してタイロッド31a,31bを介して連結されるラック軸32、このラック軸32に設けられた第1のラック歯320に噛み合う第1のピニオンギア33、第1のピニオンギア33が一端に設けられた第1のギア軸330、前記ラック軸32に設けられた第2のラック歯321に噛み合う第2のピニオンギア34、第2のピニオンギア34が一端に設けられた第2のギア軸340、第1のギア軸330を駆動する第1の駆動装置35、及び、第2のギア軸340を駆動する第2の駆動装置36を有して構成されている。
【0048】
第1のギア軸330は、第2の自在継手37を介して、連結装置4から延びる一方の第1の回転軸38に連結される。連結装置4から延びる他方の第2の回転軸40は、第1の自在継手11を介して、操舵軸10に連結されている。連結装置4の構成について、詳しくは後記する。
【0049】
ラック軸32の一側(紙面に向かって左側)と、ラック軸32などの構成部材を覆うハウジング380との間には、ラック軸32の軸方向における位置を検出する一対のラック位置センサ39が設けられている。このラック位置センサ39は、ケース390内に例えば二つのポテンショメータ等による一対のセンサ(不図示)を設けて構成される。一対のラック位置センサ39の位置検出信号は、直接、通信媒体5を介して、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれへ送られる。また、一対のラック位置センサ39のうち一方の位置検出信号を、第1の制御装置353が、通信媒体5を介して、第2の制御装置353及び第3の制御装置363のそれぞれへ送ってもよい。さらに、一対のラック位置センサ39のうち他方の位置検出信号を、第2の制御装置363が、通信媒体5を介して、第1の制御装置353及び第3の制御装置393のそれぞれへ送ってもよい。ハウジング380の開口部は、ダストシール381a,381b及びオイルシール382の組み合わせにより液密に保持されている。
【0050】
第1の駆動装置35は、第1のウォームホィール331と、第1のウォームホィール331に噛み合う第1のウォーム(不図示)と、を含んで構成されている。第1のウォームホィール331及び第1のピニオンギア33が設けられた第1のギア軸330は、軸受350、351、352を介してハウジング380に対して回転自在に3点支持されている。第1のウォームは、第1のモータ332の回転軸に設けられている。これにより、第1のモータ332の回転軸が駆動されると、第1のウォーム及び第1のウォームホィール331を介して第1のギア軸330が回転駆動される。すると、第1のピニオンギア33が回転駆動される結果、ラック軸32が軸方向に駆動されるように動作する。
【0051】
第2の駆動装置36は、第2のウォームホィール341と、第2のウォームホィール341に噛み合う第2のウォーム(不図示)と、を含んで構成されている。第2のウォームホィール341及び第2のピニオンギア34が設けられた第2のギア軸340は、軸受360,361,362を介してハウジング380に対して回転自在に3点支持されている。第2のウォームは、第2のモータ342の回転軸に設けられている。これにより、第2のモータ342の回転軸が駆動されると、第2のウォーム及び第2のウォームホィール341を介して第2のギア軸340が回転駆動される。すると、第2のピニオンギア34が回転駆動される結果、第1の駆動装置35の例と同様に、ラック軸32が軸方向に駆動されるように動作する。
【0052】
ラック軸32、第1のピニオンギア33、第2のピニオンギア34、第1の駆動装置35、及び、第2の駆動装置36は、本発明(請求項1)の”舵力伝達機構”に相当する。
【0053】
第1の制御装置353には、第1のモータ332に流れる第1の電流値を検出する第1の電流センサ(第1の電流検出部)332Aが設けられている。第1の電流センサ332Aで検出された第1の電流値は、第1の制御装置353により通信媒体5を介して第1の制御装置353及び第3の制御装置393のそれぞれへ送られる。
【0054】
第1の制御装置353は、データ入出力用のインターフェイス回路、制御演算用のコンピュータ、異常診断用のウォッチドッグタイマ回路、及び、第1のモータ332を駆動するためのFETブリッジ回路(いずれも不図示)などを含んで構成されている。
【0055】
また、第1の制御装置353は、フューズ(不図示)及び第1の親リレー354の直列回路を介して電源184に接続されている。さらに、第1の制御装置353は、第1の子リレー355を介して第1のモータ332に接続されている。したがって、第1の制御装置353は、例えば、第1の電流センサ332Aの異常診断時において、第1の親リレー354及び第1の子リレー355のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第1のモータ332、第1の制御装置353、及び、連結装置4への電源供給を確実に遮断するように構成されている。
【0056】
また、第1の制御装置353(と第2の制御装置363と第3の制御装置393)は、ラック軸32の目標位置を演算すると共に、ラック位置センサ39により検出されるラック軸32の現在位置が、演算により求められたラック軸32の目標位置と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0057】
このフィードバック制御の際に、本発明の”異常診断部”を有する第1の制御装置353(と第2の制御装置363と第3の制御装置393)は、第1の電流センサ332Aにより検出される第1の電流値と、後記する第2の電流センサ342Aにより検出される第2の電流値とを比較し、これら第1及び第2の電流値の偏差が予め定められる閾値を超えるか否かを判定する。ここで、操舵車輪30a,30bの所要の転舵動作が正常に行われた場合、第1のモータ332、及び、第2のモータ342のそれぞれには、均衡した大きさの電流が流れる。これは、第1のモータ332、及び、第2のモータ342は、その電気的特性が相互に共通に設定され、言い換えると、正常な動作範囲では電気特性が同じになるように、減速比や制御装置での処理が適宜設定され、第1のモータ332、及び、第2のモータ342のそれぞれの回転軸は、前記の”舵力伝達機構”を介して相互に連結されているからである。
【0058】
したがって、第1の制御装置353は、第1の電流値及び第2の電流値の偏差を監視するだけで、煩雑な診断処理や待機時間を要することなく、第1のモータ332や第2のモータ342やそれらの駆動回路(第1の制御装置353と第2の制御装置363)などの異常診断を速やかに行うことができる。また、ラック位置センサ39の異常時(一対のセンサ39のうちいずれか一方が故障した場合)には、ラック軸32を移動させなくとも、第1の電流値及び第2の電流値の偏差が大きくなるので、この値を監視することにより、ラック位置センサ39の異常診断を行うことができる。要するに、操舵車輪30a,30bを動かすことなしに、ラック位置センサ39の異常診断を速やかに行うことができる。
なお、前記の第1の制御装置353が有する第1の電流センサ332A又は第2の電流センサ342Aの異常診断機能は、第2の制御装置363及び第3の制御装置393も同様に有して構成されている。
【0059】
第1の電流センサ332A又は第2の電流センサ342Aの少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合、第1の制御装置353は、連結装置4への通電を遮断する制御を行う。これにより、連結装置4から延びる一対の第1の回転軸38及び第2の回転軸40を機械的に結合させ、これをもって、操舵軸10と第1の回転軸38とを機械的に連結させる。
【0060】
また、第1の制御装置353は、第1の電流センサ332A又は第2の電流センサ342Aの少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合において、連結装置4への通電を不図示のリレーにより遮断し第1の回転軸38及び第2の回転軸40を連結すると同時に、第1の親リレー354及び第1の子リレー355のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第1のモータ332、及び、第1の制御装置353への電源供給を確実に遮断するように動作する。
【0061】
前記と同時に、第2の制御装置363は、第1の電流センサ332A又は第2の電流センサ342Aの少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合において、第2の親リレー364及び第2の子リレー365のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第2のモータ342、及び、第2の制御装置363への電源供給を確実に遮断して、連結装置4への通電を不図示のリレーにより遮断し第1の回転軸38及び第2の回転軸40を連結するように動作する。
【0062】
そして、前記と同時に、正常時において反力発生装置18の一部として機能する第3の制御装置393は、操舵機能の設定状態を表す操舵機能モードを、電動パワーステアリング(Electric PowerSteering:以下、”EPS”と省略する。)機能に再構築して、操向ハンドル1の操舵トルクを軽減するEPSアシスト制御を実行(継続)するように制御する(表1参照)。
【0063】
第1の制御装置353と同様に、第2の制御装置363には、第2のモータ342に流れる第2の電流値を検出する第2の電流センサ(第2の電流検出部)342Aが設けられている。第2の電流センサ342Aで検出された第2の電流値は、第2の制御装置363により、通信媒体5を介して第1の制御装置353及び第3の制御装置393のそれぞれへ送られる。
【0064】
第2の制御装置363は、第1の制御装置353と同様に、データ入出力用のインターフェイス回路、制御演算用のコンピュータ、異常診断用のウォッチドッグタイマ回路、及び、第2のモータ342を駆動するためのFETブリッジ回路(いずれも不図示)などを含んで構成されている。
【0065】
また、第2の制御装置363は、フューズ(不図示)及び第2の親リレー364の直列回路を介して電源184に接続されている。さらに、第2の制御装置363は、第2の子リレー365を介して第2のモータ342に接続されている。したがって、第2の制御装置363は、例えば、第2のモータ342が故障することで第1の電流センサ332A及び第2の電流センサ342Aの信号の偏差が予め定められる閾値を超える異常診断時において、第2の親リレー364及び第2の子リレー365のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第2のモータ342、第2の制御装置363、及び、連結装置4への電源供給を不図示のリレーにより遮断し第1の回転軸38及び第2の回転軸40を連結するように動作する。
【0066】
また、第2の制御装置363(と第1の制御装置353と第3の制御装置393)は、ラック軸32の目標位置を演算すると共に、ラック位置センサ39により検出されるラック軸32の現在位置が、演算により求められたラック軸32の目標位置と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0067】
このフィードバック制御の際に、第2の制御装置363は、第1の電流センサ332Aにより検出される第1の電流値と、第2の電流センサ342Aにより検出される第2の電流値との差を演算により求め、求められた第1及び第2の電流値の差が、予め定められる閾値を超えるか否かを判定する。ここで、第1のモータ332、及び、第2のモータ342の特性が共通に設定されている前提で、所要の転舵処理を正常に行った場合、第1のモータ332、及び、第2のモータ342のそれぞれには、略均衡した大きさの電流が流れる。その理由は、前記と同様である。
【0068】
そうすると、第1及び第2の電流値の差が閾値を超えるか否かに係る判定結果に基づいて、第2の制御装置363は、第1の電流センサ332Aの信号、又は第2の電流センサ342Aの信号のうち、少なくともいずれか一方が異常か否かに係る異常診断を行うことができることが分かる。
【0069】
したがって、第2の制御装置363は、第1及び第2の電流値の差が閾値を超えるか否かに係る判定結果を監視することにより、第1の電流センサ332Aの信号、又は第2の電流センサ342Aの信号のうち、少なくともいずれか一方が異常か否かに係る異常診断を行うことができる。
【0070】
第1の電流センサ332Aの信号、又は第2の電流センサ342Aの信号のうち、少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合、第2の制御装置363は、不図示のリレーにより連結装置4への通電を遮断する制御を行う。これにより、連結装置4から延びる一対の第1の回転軸38及び第2の回転軸40を結合させ、これをもって、操舵軸10と第1の回転軸38とを連結させる。
【0071】
また、第2の制御装置363は、第1の電流センサ332Aの信号、又は第2の電流センサ342Aの信号のうち、少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合において、第2の親リレー364及び第2の子リレー365のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第2のモータ342、及び、第2の制御装置363への電源供給を確実に遮断するように動作する。
【0072】
前記と同時に、第1の制御装置353は、第1の電流センサ332Aの信号、又は第2の電流センサ342Aの信号のうち、少なくともいずれか一方が異常である旨の診断が下された場合において、第1の親リレー354及び第1の子リレー355のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第1のモータ332、及び、第1の制御装置353への電源供給を確実に遮断するように動作する。
【0073】
そして、前記と同時に、正常時において反力発生装置18の一部として機能する第3の制御装置393は、操舵機能の設定状態を表す操舵機能モードを、EPS機能に再構築して、操向ハンドル1の操舵トルクを軽減するEPSアシスト制御を実行(継続)するように制御する(表1参照)。
なお、表1の”◎”は、単一の故障時、例えば操舵トルクセンサ16だけが故障した場合に、操舵システムの再構築により設定される操舵機能モード(本例ではVGS1)を示す。また、表1の”○”は、多重故障時、すなわち、例えば、操舵トルクセンサ16が故障した後に第3の電流センサ181A又はヨーレイトセンサ7が故障した場合に、操舵システムの再構築により設定される操舵機能モード(本例ではVGS)を示す。そして、表1の”×”は、各種センサ類6,7,8,16,17,39,332A,342A,181A、又は、第1〜第3のモータ332,342,181、第1〜第3の制御装置353,363,393を含む各種機能部のいずれかが故障した場合に、操舵システムの再構築により設定不能な操舵機能モードを示す。
【0074】
第3の制御装置393は、車両速度センサ6の車速信号、ヨーレイトセンサ7の信号、横加速度センサ8の信号、操舵トルクセンサ16の信号、操舵角センサ17の信号、ラック位置センサ39の信号などに基づいて、主として第3のモータ181を駆動制御する機能を有する。また、第3の制御装置393は、第1〜第3の制御装置353,363,393において生成されたそれぞれの制御信号を比較することで異常診断を行い、異常診断箇所を特定して、特定された異常診断箇所を要しないことを考慮して操舵システムを再構築し、後で詳しく説明するように、適切な操舵機能モードを選定して必要な制御を実行するように動作する。
【0075】
詳しく述べると、第3の制御装置393は、データ入出力用のインターフェイス回路、制御演算用のコンピュータ、異常診断用のウォッチドッグタイマ回路、及び、第3のモータ181を駆動するためのFETブリッジ回路(いずれも不図示)などを含んで構成されている。
【0076】
また、第3の制御装置393は、フューズ(不図示)及び第3の親リレー185の直列回路を介して電源184に接続されている。さらに、第3の制御装置393は、第3の子リレー186を介して第3のモータ181に接続されている。したがって、第3の制御装置393は、例えば、操舵トルクセンサ16及び操舵角センサ17が共に異常である旨の診断が下された場合において、第3の親リレー185及び第3の子リレー186のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第3のモータ181、第3の制御装置393、及び、連結装置4への電源供給を確実に遮断するように構成されている。この場合、第3の制御装置393は、連結装置4により第1の回転軸38及び第2の回転軸40を結合させ、操舵軸10と第1の回転軸38とを連結させることにより、操舵機能モードをマニュアルステアリングにする。
ただし、第3の制御装置393を、操舵システム全体の統括制御装置として機能させる場合には、第3の親リレー185及び第3の子リレー186の構成を省略することができる。
【0077】
ところで、例えば、操舵トルクセンサ16の異常診断が下された場合(表1参照)、第3の制御装置393は、操舵角センサ17の回転角度信号SC,SDに基づく操舵角と方向に応じた操舵反力を第3のモータ181に発生させる制御を実行する。この制御の際に、操舵トルクセンサ16に異常が生じている旨を運転者に報知するために、警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(重く)する制御を行う。
【0078】
また、第3の制御装置393は、第3のモータ181に与える第3の目標電流値を演算すると共に、第3の電流センサ181Aにより検出される第3の現在電流値が、演算により求められた第3の目標電流値と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0079】
第3の電流センサ181Aの信号に異常が生じた場合(表1参照)、第3の制御装置393は、演算により求められた第3の目標電流値を、第3のモータ181の端子電圧信号に変えて、同変換後の電圧信号を用いて制御を行う。この制御の際にも、第3の電流センサ181Aの信号に異常が生じている旨を運転者に報知するために、警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(重く)する制御を行う。
【0080】
また、第3のモータ181又は第3の制御装置393の少なくともいずれか一方に異常が生じた場合には(表1参照)、操舵角センサ17の回転角度信号SC,SDに基づく操舵角と方向、及び、ラック位置センサ39により検出されるラック軸32の現在位置を参照しながら、異常が生じている旨を運転者に報知するための警告表示を行うと共に、正常操舵時と比べて大きい(応答性の緩慢な)ギア比になるように、第1の制御装置353及び第2の制御装置363を用いて、第1のモータ332及び第2のモータ342の駆動制御を実行する。この駆動制御の際に、第3の制御装置393は、第3の親リレー185及び第3の子リレー186のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第3のモータ181、及び、第3の制御装置393への電源供給を確実に遮断する。
【0081】
連結装置4は、転舵装置3の側に連結される第1の回転軸38(図3図5参照)と、反力付与装置2の側に連結される第2の回転軸40(図2図5参照)との間を、結合状態又は切離状態のいずれか一方に切り替える機能を有する。第1の回転軸38は、図3図5に示すように、4点接触軸受(複列アンギュラ軸受でもよい)381を介して、ケース45に対し回転自在に支持されている。第2の回転軸40は、軸受401を介してケース45に回転自在に支持されると共に、軸受405を介して第1の回転軸38に回転自在に支持されている。
【0082】
第1の回転軸38のうち反力付与装置2の側には、略円筒形状の凹部383が設けられている。一方、第2の回転軸40のうち転舵装置3に向かう先端側には、略円筒形状の軸部403が設けられている。第2の回転軸40の軸部403は、第1の回転軸38の凹部383に設けられた軸受405を介して、第1の回転軸38に対し回転自在に支持されている。
【0083】
連結装置4は、第1の回転軸38のうち反力付与装置2に向かう先端側に設けられる円筒部材380と、第2の回転軸40周りに間隔を置いて設けられる複数のローラ41と、複数のローラ41間に設けられる複数のばね部材42と、第2の回転軸40の外周側に設けられるカム部材401と、を有して構成される。
【0084】
円筒部材380は、反力付与装置2の側に向かって開口する、略ハット形状の横断面を有して構成されている。円筒部材380のハット形状部は、第2の回転軸40の外径寸法と比べて大きい内径寸法を有する。
【0085】
複数のローラ41は、円筒部材380の内周側であって、カム部材401の外周側に接した状態で設けられている。図2図4に示す例では、複数のローラ41は、一対のローラ(以下、”対ローラ”と呼ぶ場合がある。)41を組として、都合3組(6個)設けられている。複数のばね部材42は、一対のローラ41の間を離間させる方向に付勢するように、一対のローラ41間のそれぞれに設けられている。
【0086】
カム部材401は、第2の回転軸40の放射方向に直交する3つのカム面407を有するように、頂点部分が面取りされた略三角柱形状に形成されている。カム部材401の3つのカム面407のそれぞれには、対ローラ41が三方から密着するように設けられている。
【0087】
第1の回転軸38と、第2の回転軸40との間を、結合状態又は切離状態のいずれか一方に切り替える機能を発揮するために、連結装置4は、切替装置44(図3図5参照)を備えている。
【0088】
切替装置44は、円筒部材380に対して切替え爪部43を、第2の回転軸40の軸方向に沿って往復移動させることにより、カム部材401及び3組の対ローラ41の組み合わせと、円筒部材380とのくさび状の係合関係を機械的に制御する機能を有する。
【0089】
詳しく述べると、切替装置44は、第2の回転軸40の外周部分に軸方向に沿って往復移動自在なスリーブ状のスライダ部440と、スライダ部440をカム部材401から離間させる方向に付勢するばね部材441と、スライダ部440の外周部分に回転自在に支持される円環状のスライダリング442と、を有する。ただし、スライダリング442は、第2の回転軸40の軸方向に沿う方向の移動が拘束されている。
【0090】
例えば金属製(特に限定されない)のスライダ部440には、周方向に等間隔を置いて3つの切替え爪部43が、転舵装置3の側を指向して一体に延びるように設けられている。3つの切替え爪部43は、円筒部材380の内方にさし込まれた状態(図2参照)で、カム部材401における面取りされた頂点部分が対面すると共に、3組の対ローラ41の隙間を埋めるように配設されている。
【0091】
スライダリング442には、第2の回転軸40を挟んで相互に対向する位置に、第2の回転軸40の放射方向に沿って、一対のピン部材443がそれぞれ一体に設けられている。スライダリング442の外周側には、円環状の部分を有するてこ部材444が設けられている。金属製のケース45には、てこ部材444の支点446が設けられている。一方、てこ部材444の力点447には、ロッド部材447Aがリンク結合されている。磁性体からなるロッド部材447Aは、電磁ソレノイド448のコイルに対して挿抜自在に設けられている。
【0092】
てこ部材444における円環状の部分には、第2の回転軸40を挟んで相互に対向する位置に、第2の回転軸40の軸方向と直交する方向に延びる一対の長孔部445がそれぞれ開設されている。てこ部材444の一対の長孔部445には、一対のピン部材443がそれぞれ係合するように設けられている。これにより、支点446を中心とするてこ部材444の回転動作が、一対の長孔部445に係合する一対のピン部材443を介して、スライダリング442における第2の回転軸40の軸方向の動きとして作用するように構成されている。
【0093】
スライダ部440の内周部分には、第2の回転軸40の軸方向に沿って延びるスプライン449が複数形成されている。スライダ部440の内周部分が対面する第2の回転軸40にも、前記と同様に、軸方向に沿って延びるスプライン450が複数形成されている。これにより、第2の回転軸40に対してスライダ部440が、それぞれのスプライン449,450間の係合状態を維持して、軸方向に沿って摺動自在に支持される。
【0094】
前記のように構成された切替装置44は、以下のように動作する。すなわち、電磁ソレノイド448のコイルが通電により帯磁している状態では、図3に示すように、ロッド部材447Aは、電磁ソレノイド448のコイルに対して挿入方向に位置する。このとき、てこ部材444は、ロッド部材447Aに連なる力点447の移動に伴って反時計方向に回転動作する。すると、支点446を中心とするてこ部材444の反時計方向への回転動作が、一対の長孔部445に係合する一対のピン部材443を介して、転舵装置3の側へ向かうスライダ部440の軸方向の動きに変換される。その結果、スライダ部440がばね部材441の弾発力に抗して転舵装置3の側へ移動する。このスライダ部440の移動に伴って、複数の切替え爪部43が円筒部材380の内方にさし込まれて、3組の対ローラ41の隙間を埋めるようになる(図2参照)。
【0095】
複数の切替え爪部43が円筒部材380の内方にさし込まれると、3組の対ローラ41のそれぞれは、3つの切替え爪部43が有するくさび状の側部によって、周方向に押し込まれるように動作する。これにより、複数の対ローラ41の間にそれぞれ設けられる複数のばね部材42は、それぞれが圧縮された状態となる。その結果、複数の対ローラ41の外周縁部と、円筒部材380の内周縁部とが離隔することで、第1の回転軸38と、第2の回転軸40との間が、切離状態に維持される。この切離状態において、第1の回転軸38及び第2の回転軸40は、相対回転が自在になっている。
【0096】
これに対し、電磁ソレノイド448のコイルが通電停止により消磁している状態では、図5に示すように、ばね部材441によりロッド部材447Aは、電磁ソレノイド448のコイルに対して抜け方向に位置する。このとき、てこ部材444は、ロッド部材447Aに連なる力点447の移動に伴って時計方向に回転動作する。すると、支点446を中心とするてこ部材444の時計方向への回転動作が、一対の長孔部445に係合する一対のピン部材443を介して、転舵装置3の側へ向かうスライダ部440の軸方向の動きに変換される。その結果、スライダ部440がばね部材441の弾発力を受けて反力付与装置2の側へ移動する。このスライダ部440の移動に伴って、複数の切替え爪部43が円筒部材380の内方から抜け出て、3組の対ローラ41が3つの切替え爪部43による押圧力から解放されるようになる(図4参照)。
なお、電磁ソレノイド448は、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれから出力される電磁ソレノイド448の駆動信号が全てオン(通電)である場合に限って帯磁される一方、それ以外では消磁されるように動作する。
【0097】
複数の切替え爪部43が円筒部材380の内方から抜け出ると、3組の対ローラ41のそれぞれは、複数の対ローラ41の間にそれぞれ設けられる複数のばね部材42が有する弾発力の作用によって、一対のローラ41間の間隔が、ばね部材42のセット長まで大きく拡がる。また、3組の対ローラ41のそれぞれは、カム部材401が有する3つのカム面407に密着している。その結果、複数の対ローラ41の外周縁部と、円筒部材380の内周縁部とがくさび状に係合することで、第1の回転軸38と、第2の回転軸40との間が、切離状態(図2図3参照)から結合状態(図4図5参照)へと瞬時に切り替えられる。
【0098】
実際には、例えば、第3の制御装置393(と第1の制御装置353と第2の制御装置363)は、表1に示すように、例えば、操舵トルクセンサ16等の箇所が複数において異常診断(多重故障)されて、操舵機能モードとしてEPSが選択された場合に、連結装置4への電源供給を遮断する。これにより、電磁ソレノイド448のコイルが通電停止状態となる。その後、前記の手順を経て、第1の回転軸38と、第2の回転軸40との間が、切離状態から結合状態へと切り替えられることになる。この切り替えに伴い、実際にてこ部材444が時計方向へ回転動作した旨は、リミットスイッチ(図3図5参照)451を介して検知され、通信媒体5を介して、第1〜第3の制御装置353,363,393へと伝えられる。
【0099】
車両の始動時に、第1〜第3の制御装置353,363,393は、例えば、切替え爪部43が円筒部材380の内方に入らないなどといった事象をリミットスイッチ451の信号により異常診断し、この異常診断結果に応じて、表1に示すように、操舵システムの再構築を行う。例えば、切替え爪部43が円筒部材380の内方に入らない旨の異常診断結果が下された場合、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをEPSモードに設定して操舵制御を行う。
【0100】
ところで、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の起動開始時には、連結装置の切替え爪部は結合状態にある。具体的には、例えば、連結装置の切替え爪部が結合状態にある車両の駐車時において、操向ハンドル1を据え切りすることで過大な負荷トルクを連結装置4の結合部分(円筒部材380の内周縁部、複数の対ローラ41の外周縁部、及び、カム部材401のカム面407の三者が相互に当接する部分)に与えた場合には、この結合部分同士が食いついた固着状態を生じる。その結果、連結装置4に電源を投入しても、切替装置44が円筒部材380の内方に複数の切替え爪部43をさし込むことができずに、連結装置4を結合状態から切離状態へと切り替えることができないおそれがある。
【0101】
こうした不具合をなくすために、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4の状態にかかわらず、切替装置44が円筒部材380の内方に複数の切替え爪部43を円滑にさし込むことができるように対応している。すなわち、第1〜第3の制御装置353,363,393は、第1のモータ332又は第2のモータ342の少なくともいずれか一方、及び、第3のモータ181を駆動することで、前記の結合部分をローラ41及びカム面407の固着状態から解放するように制御する。この駆動制御の際に、第1〜第3のモータ332,342,181の回転方向を、適当な周期をもって振動的に切り替える駆動制御を行うことで、前記の結合部分を緩ませるようにしてもよい。
【0102】
〔本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の動作〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の動作について、図6、及び、表1を適宜参照して説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の動作説明に供するフローチャート図である。
表1は、本発明に係る車両用操舵装置101の構成要素である、各種センサ類6,7,8,16,17,39,332A,342A,181A、第1〜第3のモータ332,342,181、第1〜第3の制御装置353,363,393を含む各種機能部のうち単独又は複合の異常箇所のそれぞれに対応付けて適切な操舵機能モードの種別が記述されたマップ(本発明の”対応情報”に相当する。)である。このマップ(以下で言及するマップも同様)は、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれが有する記憶部77a,77b,77c(図1B参照)に記憶されている。
【表1】
【0103】
まず、車両のイグニッションキースイッチをオンすると、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれには、ヒューズを介して車載バッテリ(不図示)から電源が供給される。これにより、第1〜第3の制御装置353,363,393は、図6に示す処理の流れを順次実行する。
【0104】
ステップS1において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、通信媒体5を介して、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、横加速度センサ8、操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、第1〜第3の電流センサ332A,342A,181Aを含む各種センサ類からの信号を入力する。
【0105】
ステップS2において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、異常診断処理を実行する。異常診断処理では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、各種センサ類6,7,8,16,17,39,332A,342A,181A、第1〜第3のモータ332,342,181、及び、第1〜第3の制御装置353,363,393を含む各種機能部が、異常か否かの診断を行う。
【0106】
ここで、各種センサ類6,7,8,16,17,39,332A,342A,181A、及び、第1〜第3のモータ332,342,181に係る異常診断と、第1〜第3の制御装置353,363,393に係る異常診断とに分けて、それぞれの診断手順について具体的に説明する。
【0107】
まず、各種センサ類6,7,8,16,17,39,332A,342A,181Aに係る異常診断では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、それぞれが多重化(二重化)されている各種センサ類からの一対の検出信号を相互に比較し、これらが一致(所定の許容範囲以内に収束するケースを含む。以下、同じ。)しているか否かに基づいて、各種センサ類が異常か否かの診断を行う。
【0108】
これについて、車速センサ6を例示して説明すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、多重化(二重化)された一対の車速センサ6からの一対の車速検出信号を相互に比較し、これらが一致しているか否かに基づいて、車速センサ6が異常か否かの診断を行う。
【0109】
なお、例えば、車両用操舵装置101以外の他のシステム(例えば、PGM-FI:ProGraMmed Fuel Injection)からエンジン回転速度の信号を通信媒体5を介して取り込み比較することにより、車速センサ6の異常診断を行ってもよい。
【0110】
また、第1の電流センサ332Aを例示して説明すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、多重化(二重化)された一対の第1の電流センサ332Aからの一対の第1の電流検出信号を相互に比較し、これらが一致しているか否かに基づいて、第1の電流センサ332Aが異常か否かの診断を行う。第1〜第3の制御装置353,363,393は、第2の電流センサ342Aからの一対の第2の電流検出信号、及び、第3の電流センサ181Aからの一対の第3の電流検出信号についても、前記と同様の異常診断を行う。
【0111】
さらに、第1〜第3の制御装置353,363,393は、第1の電流センサ332A、又は第2の電流センサ342Aのいずれか一方が異常である旨の診断を下してもよい。これについて説明すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、第1の電流センサ332Aからの検出信号と、第2の電流センサ342Aからの検出信号を相互に比較し、これらが一致しているか否かに基づいて、第1の電流センサ332A、又は第2の電流センサ342Aのいずれか一方が異常である旨の診断を下す構成を採用してもよい。このように構成すれば、それぞれの電流センサ332A,342Aを多重化しなくても、異常診断を行うことができるため、システム構成を簡素化することができる。
【0112】
また、第1〜第3のモータ332,342,181に係る異常診断は、例えば、第1及び第2の電流センサ332A,342Aの二値比較に基づく異常診断結果に基づいて、第1のモータ332又は第2のモータが異常である旨の診断を下す一方、第3のモータの駆動命令電流値及び第3の電流センサ181Aの信号を比較した結果に基づいて、第3のモータ181が異常である旨の診断を下す、構成を採用すればよい。
【0113】
また、第1〜第3の制御装置353,363,393に係る異常診断では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、それぞれにおいて入力及び出力が共通の処理内容に対する結果を相互に3値比較することで、第1〜第3の制御装置353,363,393のうち、異常が生じている蓋然性の高い制御装置を特定する。例えば、前記共通の処理内容に対する結果が三者で同じ(所定の許容範囲以内に収束するケースを含む。以下、同じ。)場合には、多数決の原理に従い、第1〜第3の全ての制御装置353,363,393が正しいと診断する。
【0114】
また、前記共通の処理内容に対する結果が二者で同じであり、残りの一者が異なる(所定の許容範囲から逸脱するケースを含む。以下、同じ。)場合には、前期と同様に多数決の原理に従い、前記二者が正しいと診断する一方、前記残りの一者が誤っていると診断する。
そして、前記共通の処理内容に対する結果が三者間で異なる場合には、三者全てが誤っていると診断する。
【0115】
第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2における全てのセンサ類又は機能部が正常であるか否かの診断結果に基づいて、マップ(表1)を参照して、診断結果に応じた操舵機能モードを選択する。マップ(表1)には、異常箇所の種別に対する適切な操舵機能モードが関連付けて記述されている。例えば、全てのセンサ類又は機能部が正常の場合、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをアクティブ可変ギアレシオステアリング(Active Variable Gear ratio Steering:以下、”アクティブVGS”と省略する。)に設定する。一方、センサ類又は機能部のうちいずれかが異常の場合、第1〜第3の制御装置353,363,393は、マップ(表1)を参照して、異常箇所の種別に対する適切な操舵機能モードを適宜設定する。
【0116】
ステップS3において、ステップS2における全てのセンサ類又は機能部が正常であるか否かの診断結果を受けて、全てのセンサ類又は機能部が正常である場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを次のステップS4へと進ませる。
【0117】
一方、ステップS3の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGSモードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、つまり、センサ類又は機能部のうちいずれか1以上が異常である旨の判定が下された場合、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを処理の流れをステップS6へとジャンプさせる。
【0118】
ステップS4において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4の電磁ソレノイド448に電源を供給することにより、連結装置4を切離状態にする制御を行う。
【0119】
ステップS5において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをアクティブVGSモード(本発明の”第1の操舵機能モード”に相当する。)に設定するアクティブVGS制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、アクティブVGS制御について、詳しくは後記する。
【0120】
ステップS6において、ステップS3の判定の結果、センサ類又は機能部のうちいずれか1以上が異常である旨の判定が下された場合、第1〜第3の制御装置353,363,393は、車両のインストルメントパネル(不図示)に設けた警報ランプを点灯させると共に、異常診断箇所を表示させる制御を行う。
【0121】
ステップS7〜S22において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、次に説明するように、ステップS2の異常診断結果に応じて操舵システムの再構築を行い、適切な操舵機能モードを設定して操舵制御を行う。
【0122】
まず、ステップS7において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2における(操舵トルクセンサ16が異常である旨の)異常診断結果、及び、表1の操舵機能モードマップを参照して、操舵機能モードをアクティブVGS1モードに設定すべきか否かを判定する。ステップS7の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS1モードに設定すべき旨の判定が下された場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを次のステップS8へと進ませる。
【0123】
一方、ステップS7の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS1モードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れをステップS10へとジャンプさせる。
【0124】
ステップS8において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4への電源供給を継続することにより、連結装置4を切離状態にする制御を行う。
【0125】
ステップS9において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをアクティブVGS1モード(本発明の”第1の操舵機能モード”に相当する。)に設定するアクティブVGS1制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、アクティブVGS1制御について、詳しくは後記する。
【0126】
ステップS10において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2の(第3の電流センサ181Aが異常である旨の)異常診断結果を参照して、操舵機能モードをアクティブVGS2モードに設定すべきか否かを判定する。ステップS10の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS2モードに設定すべき旨の判定が下された場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを次のステップS11へと進ませる。
【0127】
一方、ステップS10の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS2モードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れをステップS13へとジャンプさせる。
【0128】
ステップS11において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4への電源供給を継続することにより、連結装置4を切離状態にする制御を行う。
【0129】
ステップS12において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをアクティブVGS2モード(本発明の”第1の操舵機能モード”に相当する。)に設定するアクティブVGS2制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、アクティブVGS2制御について、詳しくは後記する。
【0130】
ステップS13において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2の(第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常である旨の)異常診断結果を参照して、操舵機能モードをアクティブVGS3モードに設定すべきか否かを判定する。ステップS13の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS3モードに設定すべき旨の判定が下された場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを次のステップS14へと進ませる。
【0131】
一方、ステップS13の判定の結果、操舵機能モードをアクティブVGS3モードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れをステップS16へとジャンプさせる。
【0132】
ステップS14において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4への電源供給を継続することにより、連結装置4を切離状態にする制御を行う。
【0133】
ステップS15において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをアクティブVGS3モード(本発明の”第1の操舵機能モード”に相当する。)に設定するアクティブVGS3制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、アクティブVGS3制御について、詳しくは後記する。
【0134】
ステップS16において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2の(ヨーレイトセンサ7又は横加速度センサ8が異常である旨の)異常診断結果を参照して、操舵機能モードをVGSモードに設定すべきか否かを判定する。ステップS16の判定の結果、操舵機能モードをVGSモードに設定すべき旨の判定が下された場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを次のステップS17へと進ませる。
【0135】
一方、ステップS16の判定の結果、操舵機能モードをVGSモードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れをステップS19へとジャンプさせる。
【0136】
ステップS17において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4への電源供給を継続することにより、連結装置4を切離状態にする制御を行う。
【0137】
ステップS18において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをVGSモード(本発明の”第2の操舵機能モード”に相当する。)に設定するVGS制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、VGS制御について、詳しくは後記する。
【0138】
ステップS19において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、連結装置4の電磁ソレノイド448への電源供給を遮断することにより、連結装置4を切離状態から結合状態へと切り替える制御を行う。
【0139】
ステップS20において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ステップS2の(操舵角センサ17、ラック位置センサ39、第1の電流センサ332A、第2の電流センサ342A、第1のモータ332、第1の制御装置(第1のECU)353、第2のモータ342、第2の制御装置(第2のECU)363、又は連結装置4のいずれかが異常である旨の)異常診断結果を参照して、操舵機能モードをEPSモードに設定すべきか否かを判定する。ステップS20の判定の結果、操舵機能モードをEPSモードに設定すべき旨の判定が下された場合(Yes)、第1〜第3の制御装置353,363,393のうち正常な制御装置は、処理の流れを次のステップS21へと進ませる。
【0140】
一方、ステップS20の判定の結果、操舵機能モードをEPSモードに設定すべきでない旨の判定が下された場合(No)、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れをステップS22へとジャンプさせる。
【0141】
ステップS21において、第1〜第3の制御装置353,363,393のうち正常な制御装置は、操舵機能モードを電動パワーステアリング(EPS)モード(本発明の”第3の操舵機能モード”に相当する。)に設定するEPS制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、EPS制御について、詳しくは後記する。
【0142】
ステップS22において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵機能モードをマニュアルステアリングモード(本発明の”第4の操舵機能モード”に相当する。)に設定するマニュアルステアリング制御を行い、その後、処理の流れをステップS1へと戻す。なお、マニュアルステアリング制御について、詳しくは後記する。
【0143】
次に、ステップS5のアクティブVGS制御について、図7を参照して説明する。図7は、アクティブVGSに係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
【0144】
ステップS50において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、及び、車速センサ6の信号を用いて、操舵角センサ17の信号に基づく操舵角と、ラック位置センサ39の信号に基づく操舵車輪転舵角との間のギア比を、車速センサ6の車速信号に応じて可変設定し、こうして設定したギア比を実現する操舵車輪転舵角に、ラック軸32の現在位置が追従するように、第1及び第2のモータ332,342の駆動制御を行う。このような第1及び第2のモータ332,342の駆動制御を、”VGS制御”と呼ぶ。
【0145】
詳しく述べると、ステップS50のVGS制御では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、車速の変化に応じて適切なギヤレシオが予め設定されたマップを参照することで、現在車速に応じたギア比(VGSレシオ)を読み出して設定する。これにより、VGSレシオは、例えば、低車速域において1以下の値となるクイックレシオ、つまり、実際の操舵角に対して操舵車輪転舵角が大きくなるギア比に設定される一方、高車速域において1以上の値となるスローレシオ、つまり、実際の操舵角に対して操舵車輪転舵角が小さくなるギア比に設定される。
【0146】
そして、こうして設定されたギア比(VGSレシオ)を実現する操舵車輪転舵角に対応するラック軸32の位置に対し、ラック軸32の現在位置が追従するように、第1〜第3の制御装置353,363,393は、第1及び第2のモータ332,342の駆動制御を行う。なお、ギア比(VGSレシオ)は、車両のヨーレイトが予め定められる定常値に一致すること、及び、車体の横加速度が予め定められる限界値を超えないことを考慮して適宜設定される。
【0147】
第1及び第2のモータ332,342の駆動制御に際し、第1及び第2のモータ332,342にそれぞれ流れる第1及び第2の電流値は、第1及び第2のモータ332,342や、第1及び第2の制御装置353、363や、第1及び第2の駆動装置35,36等が正常の場合は、主として路面の負荷(摩擦係数)に基づいて定められる。
【0148】
一方、第1及び第2のモータ332,342や、第1及び第2の制御装置353、363や、第1及び第2の駆動装置35,36等が異常の場合、具体的には、例えば、第1のモータ332の1相の巻線が短絡している場合には、第1のモータ332の電流が増大する。そこで、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれは、このような事象(第1のモータ332の電流増大)が起きていないかどうかを、通信媒体5を介して監視する。こうして監視される第1及び第2の電流値は、第1及び第2の電流センサ332A,342Aの異常診断を行う際や、第1及び第2の制御装置353,363の異常診断を行う際などに参照される。
【0149】
ステップS51において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の信号を用いて、ヨーレイトセンサ7の信号に基づく車両のヨーレイト、及び、横加速度センサ8の信号に基づく車体の横加速度に基づいて、操舵角とは独立して、前記のギア比(VGSレシオ)をアクティブに制御する、アクティブギア比制御を行う。これにより、車両の挙動を安定化させる。
【0150】
詳しく述べると、ステップS51のアクティブギア比制御では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵角センサ17の信号に基づく操舵角、及び、操舵角の変化に応じて適切なヨーレイト及び横加速度が予め設定されたマップを参照することで、現在の操舵角に応じた規範(目標)ヨーレイト及び規範(目標)横加速度をそれぞれ読み出して設定し、こうして設定した規範(目標)値に、車両のヨーレイト、及び、車体の横加速度が追従するように、第1及び第2のモータ332,342をフィードバック制御する。
【0151】
これにより、ステップS50のVGS制御では考慮されなかった、走行路面の摩擦係数の差異(アスファルトや圧雪路)や、走行路面の凹凸(わだち)などの外乱要因を修正し、車両の安定走行に貢献する。特に、車両の直進走行中に、操舵車輪30a,30bがわだちにはまったり、車体が横風を受けたりしても、運転者は操向ハンドル1の向きを直進方向に維持してさえいれば、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵車輪30a,30bの転舵角を自動的に修正することで車両を直進走行させるように制御を行う。
要するに、第1〜第3の制御装置353,363,393は、VGS制御では機械的にギア比制御を行うが、アクティブギア比制御では外乱要因に対して細やかに自動修正して運転者の操向ハンドル1からの操舵意図を命令(ハンドルコマンド;Handle Command)とし、操向ハンドル1による操舵角から独立して、操舵車輪転舵角を適切に転舵する制御を行う。
【0152】
ステップS52において、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の信号、並びに、操舵トルク設定テーブル(操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の検出信号毎に対応する、適切な操舵トルクが予め設定されたテーブル)を参照して、操舵角センサ検出信号とヨーレイト検出信号と横加速度検出信号の増大に応じて操舵トルクが大きく(重く)なり、また、車速の増大に応じて操舵トルクが大きく(重く)なるように、目標となる操舵トルクを設定し、操舵トルクセンサ16の信号に基づく現在の操舵トルクが、前記設定された目標となる操舵トルクに追従するようにフィードバック制御する。このようなフィードバック制御を、”アクティブ反力制御”と呼ぶ。
これにより、操向ハンドル1の操作時に適切な手応えを付与することで、車両のセルフアライニングトルクを増大させ、車両を安定方向に導くことができる。あたかも運転者は、操向ハンドル1に手を添えているだけで、自然に安定方向に操舵したかのように操舵車輪30a,30bが戻される(セルフアライニングトルク)結果として、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0153】
詳しく述べると、ステップS52のアクティブ反力制御では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、車速センサ6の車速信号、及び、車速の変化に応じて適切な操舵トルクが予め設定されたマップを参照することで、低車速域では操向ハンドル1の手ごたえを小さく設定する一方、高車速域では操向ハンドル1の手ごたえを大きく設定するように制御する。
したがって、操向ハンドル1の操舵角に応じて、又は、ヨーレイトや横加速度に応じて、さらに、車速センサ6の車速信号を参酌することで、操向ハンドル1の手応えを適切に設定し、これをもって、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0154】
また、車両がスピン傾向にあるときは、ヨーレイトセンサ7の検出信号が増大して操舵反力が大きく、つまり手応えが重く制御されるため、セルフアライニングトルクが増大して、スピンを止める方向に操向ハンドル1を操作し易くさせる。このように、操向ハンドル1の操作方向に係る手応えを変えることで運転者に適切な操向ハンドル1の操作を促すことができる。さらに、原則として、操向ハンドル1と操舵車輪30a,30bとの間の機械的な結合がされていないため、走行路面の振動や段差でのキックバック、操舵車輪30a,30b間の駆動力差(前輪駆動車)に基づくトルクステアをなくすことができる。
【0155】
ステップS52のアクティブ反力制御が終了すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0156】
次に、ステップS9のアクティブVGS1制御について、図8を参照して説明する。図8は、アクティブVGS1に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図7に示すアクティブVGS制御と、図8に示すアクティブVGS1制御とでは、共通の処理ステップ(S50及びS51)が存在する。そこで、これら共通の処理ステップ(S50及びS51)についての説明を省略し、両者の相違点(ステップS53)に注目して説明する。
【0157】
ステップS53において、操舵トルクセンサ16に異常が生じている旨の異常診断を下した第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の信号、並びに、操舵トルク設定テーブル(操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の検出信号毎に対応する、適切な操舵トルクが予め設定されたテーブル)を参照して、操舵角センサ検出信号とヨーレイト検出信号と横加速度検出信号の増大に応じて操向ハンドル1上の操舵トルクが大きく(重く)なり、また、車速の増大に応じて操舵トルクが大きく(重く)なるように、操舵角センサ検出信号とヨーレイト検出信号と横加速度検出信号の増大に応じて目標となる操舵トルクを設定し、現在の操舵トルクが前記設定された目標となる操舵トルクに追従するように、操舵トルクの代替情報として操舵角センサ17の微分信号を用いて、第3のモータ181の端子間電圧を制御する。このような制御を、”反力制御1”と呼ぶ。
これにより、操向ハンドル1の操作時に適切な手応えを付与することで、車両のセルフアライニングトルクを増大させ、車両を安定方向に導くことができる。あたかも運転者は、操向ハンドル1に手を添えているだけで、自然に安定方向に操舵したかのように操舵車輪30a,30bが戻される(セルフアライニングトルク)結果として、車両のセルフアライニングトルクを増大させ、車両の安定性を付与するとともに、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0158】
詳しく述べると、ステップS53の反力制御1では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、車速センサ6の車速信号、及び、車速の変化に応じて適切な操舵トルクが予め設定されたマップを参照することで、低車速域では操向ハンドル1の手ごたえを小さく設定する一方、高車速域では操向ハンドル1の手応えを大きく設定するように制御する。
したがって、操向ハンドル1の操舵角に応じて、又は、ヨーレイトや横加速度に応じて、さらに、車速センサ6の車速信号を参酌することで、操向ハンドル1の手応えを適切に設定し、これをもって、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0159】
また、車両がスピン傾向にあるときは、スピンを止める方向に操向ハンドル1を操作させることを、操向ハンドル1の操作方向に係る手応えを変えることで運転者に促すことができる。さらに、原則として、操向ハンドル1と操舵車輪30a,30bとの間の機械的な結合がされていないため、走行路面の振動や段差でのキックバック、操舵車輪30a,30b間の駆動力差(前輪駆動車)に基づくトルクステアをなくすことができる。
【0160】
ただし、ステップS53の反力制御1では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵トルクセンサ16の異常を知らせる警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(重く)する制御を行う。これにより、操舵システムに異常が生じている旨を適時に運転者に報知する。
【0161】
ステップS53の反力制御1が終了すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0162】
次に、ステップS12のアクティブVGS2制御について、図9を参照して説明する。図9は、アクティブVGS2に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図7に示すアクティブVGS制御と、図9に示すアクティブVGS2制御とでは、共通の処理ステップ(S50及びS51)が存在する。そこで、これら共通の処理ステップ(S50及びS51)についての説明を省略し、両者の相違点(ステップS54)に注目して説明する。
【0163】
ステップS54において、第3の電流センサ181Aに異常が生じている旨の異常診断を下した第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の信号、並びに、操舵トルク設定テーブル(操舵トルクセンサ16、操舵角センサ17、車速センサ6、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の検出信号毎に対応する、適切な操舵トルクが予め設定されたテーブル)を参照して、操舵角センサ検出信号とヨーレイト検出信号と横加速度検出信号の増大に応じて操舵トルクが大きく(手応えが重く)なり、また、車速の増大に応じて操舵トルクが大きく(手応えが重く)なるように、目標となる操舵トルクを設定し、現在の操舵トルクが前記設定された目標となる操舵トルクに追従するように、操舵角センサ17の微分信号を用いて、第3のモータ181の端子間電圧を制御する。このような制御を、”反力制御2”と呼ぶ。
【0164】
これにより、操向ハンドル1の操作時に適切な手応えを付与することで、車両のセルフアライニングトルクを増大させ、車両を安定方向に導くことができる。あたかも運転者は、操向ハンドル1に手を添えているだけで、自然に安定方向に操舵したかのように操舵車輪30a,30bが戻される(セルフアライニングトルクによる)結果として、車両のセルフアライニングトルクを増大させ、車両の安定性を付与するとともに、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0165】
詳しく述べると、ステップS54の反力制御2では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、車速センサ6の車速信号、及び、車速の変化に応じて適切な操舵トルクが予め設定されたマップを参照することで、低車速域では操向ハンドル1の手ごたえを小さく設定する一方、高車速域では操向ハンドル1の手ごたえを大きく設定するように制御する。
したがって、操向ハンドル1の操舵角に応じて、又は、ヨーレイトや横加速度に応じて、さらに、車速センサ6の車速信号を参酌することで、操向ハンドル1の手応えを適切に設定し、これをもって、操向ハンドル1の操作性を向上させることができる。
【0166】
また、車両がスピン傾向にあるときは、スピンを止める方向に操向ハンドル1を操作させることを、操向ハンドル1の操作方向に係る手応えを変えることで運転者に促すことができる。さらに、原則として、操向ハンドル1と操舵車輪30a,30bとの間の機械的な結合がされていないため、走行路面の振動や段差でのキックバック、操舵車輪30a,30b間の駆動力差(前輪駆動車)に基づくトルクステアをなくすことができる。
【0167】
ただし、ステップS54の反力制御2では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、第3の電流センサ181Aの異常を知らせる警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(手応えを重く)する制御を行う。これにより、操舵システムに異常が生じている旨を適時に運転者に報知する。
【0168】
ステップS54の反力制御2が終了すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0169】
次に、ステップS15のアクティブVGS3制御について、図10を参照して説明する。図10は、アクティブVGS3に係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
なお、アクティブVGS3(図6のステップS15)は、第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常であって、図6のステップS13において、操舵機能モードをアクティブVGS3モードに設定すべき旨の判定が下された場合に実行される処理である。
【0170】
第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常であると、第1又は第2の制御装置353,363は、操向ハンドル1の手応えを適切に制御することが困難である。第3のモータ181や第3の制御装置(第3のECU)393が、操舵トルクに対する反力を付与する役割を主として担うからである。
【0171】
前記の事情を踏まえて、ステップS55において、第3のモータ181又は第3の制御装置393に異常が生じている旨の異常診断を下した第1又は第2の制御装置353,363は、図7に示すステップS50のVGS制御に準じたVGS制御1を行う。すなわち、ステップS55のVGS制御1では、第1又は第2の制御装置353,363は、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、及び、車速センサ6の信号を用いて、前記のギア比(VGSレシオ)を、車速センサ6の車速信号に応じて、ステップS50のVGS制御の例と比べてスローレシオとなるように可変設定し、こうして設定したギア比を実現する操舵車輪転舵角に、ラック軸32の現在位置が追従するように、第1及び第2のモータ332,342の駆動制御を行う。
【0172】
ステップS55のVGS制御1では、ステップS50のVGS制御の例と比べて、操向ハンドル1の操作量に対する操舵車輪転舵角の応答性を低下させる。その結果、ステップS55のVGS1制御によれば、第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常であるにもかかわらず、運転者に特段の違和感を生じさせることなく、全体としての車両の挙動を緩慢に制御することができる。
【0173】
ステップS56において、第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常である旨の異常診断を下した第1又は第2の制御装置353,363は、図7に示すステップS51のアクティブギア比制御に準じたアクティブギア比制御1を行う。すなわち、ステップS56のアクティブギア比制御1では、第1又は第2の制御装置353,363は、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、ヨーレイトセンサ7、及び、横加速度センサ8の信号を用いて、ヨーレイトセンサ7の信号に基づく車両のヨーレイト、及び、横加速度センサ8の信号に基づく車体の横加速度に基づいて、操舵角とは独立して、ステップS51のアクティブギア比制御の例と比べてスローレシオとなるように前記のギア比(VGSレシオ)をアクティブに制御する。これにより、車両の挙動を安定化させる。
【0174】
詳しく述べると、ステップS56のアクティブギア比制御1では、第1又は第2の制御装置353,363は、操舵角センサ17の信号に基づく操舵角、及び、操舵角の変化に応じて適切なヨーレイト及び横加速度が予め設定されたマップを参照することで、現在の操舵角に応じた規範(目標)ヨーレイト及び規範(目標)横加速度をそれぞれ読み出して設定する。この設定に際に、ステップS56のアクティブギア比制御1では、ステップS51のアクティブギア比制御の例と比べて、それぞれの規範(目標)値を小さく(穏やかに)設定する。そして、こうして小さく(穏やかに)設定した規範(目標)値に、車両のヨーレイト、及び、車体の横加速度が追従するように、第1及び第2のモータ332,342をフィードバック制御する。
【0175】
これにより、ステップS56のアクティブギア比制御1では、ステップS51のアクティブギア比制御の例と比べて、操向ハンドル1の操作量に対する操舵車輪転舵角の応答性を低下させる。その結果、ステップS56のアクティブギア比制御1によれば、第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常であるにもかかわらず、運転者に特段の違和感を生じさせることなく、全体としての車両の挙動を安定化させることができる。
【0176】
ステップS57において、第3のモータ181又は第3の制御装置(第3のECU)393が異常である旨の異常診断を下した第1又は第2の制御装置353,363は、図7に示すステップS52のアクティブ反力制御に準じた反力制御3を行う。すなわち、ステップS57の反力制御3では、第1又は第2の制御装置353,363は、第3の親リレー185及び第3の子リレー186のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第3のモータ181、及び、第3の制御装置393への電源供給を遮断する。
【0177】
ステップS57の反力制御3が終了すると、第1又は第2の制御装置353,363は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0178】
次に、ステップS18のVGS制御について、図11を参照して説明する。図11は、VGSに係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
図7に示すアクティブVGS制御と、図11に示すVGS制御とでは、共通の処理ステップ(S50)が存在する。そこで、この共通の処理ステップ(S50)についての説明を省略し、図11に示すVGS制御のみが有するステップS58の処理に注目して説明する。
なお、VGS(図6のステップS18)は、ヨーレイトセンサ7又は横加速度センサ8が異常であって、図6のステップS18において、操舵機能モードをVGSモードに設定すべき旨の判定が下された場合に実行される処理である。
【0179】
ステップS58において、ヨーレイトセンサ7又は横加速度センサ8が異常である旨の異常診断を下した第1〜第3の制御装置353,363,393は、電動パワーステアリング(EPS)において一般に行われる反力制御に類似した反力制御4を行う。すなわち、ステップS58の反力制御4では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、操舵トルクセンサ16の信号に基づく操舵トルク、及び、操舵トルクの変化に応じた適切な目標電流が予め設定されたマップを参照することで、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれに与える目標電流値を、現在の操舵トルクに応じて設定し、こうして設定した目標電流値に対し、第1〜第3の電流センサ332A,342A,181Aの検出値が追従するように、第1〜第3のモータ332,342,181の駆動制御を行う。
【0180】
これにより、運転者による操向ハンドル1の操舵トルクに係る負担を軽減する。ただし、ステップS58の反力制御4では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、ヨーレイトセンサ7又は横加速度センサ8が異常である旨を知らせる警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(重く)する制御を行う。これにより、操舵システムに異常が生じている旨を適時に運転者に報知する。
【0181】
ステップS58の反力制御4が終了すると、第1〜第3の制御装置353,363,393は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0182】
次に、ステップS21のEPS制御について、図12を参照して説明する。図12は、EPSに係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
なお、EPS(図6のステップS21)は、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、第1の電流センサ332A、第2の電流センサ342A、第1のモータ332、第1の制御装置(第1のECU)353、第2のモータ342、第2の制御装置(第2のECU)363、又はクラッチ(不図示)のいずれかが異常であって、図6のステップS21において、操舵機能モードをEPSモードに設定すべき旨の判定が下された場合に実行される処理である。
【0183】
ステップS59において、操舵角センサ17、ラック位置センサ39、第1の電流センサ332A、第2の電流センサ342A、第1のモータ332、第1の制御装置(第1のECU)353、第2のモータ342、第2の制御装置(第2のECU)363、又はクラッチのいずれかが異常である旨の異常診断を下した第1〜第3の制御装置353,363,393は、電動パワーステアリング(EPS)において一般に行われる反力制御に類似した反力制御5を行う。
【0184】
すなわち、ステップS59の反力制御5では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、例えば、リミットスイッチ451の信号、及び、連結装置4を結合状態にするための指令信号の発行状況に基づいて、連結装置4の異常診断(例えば、連結装置4を結合状態にするための指令信号が発行されているにもかかわらず、リミットスイッチ451の信号はオフ(図3参照)であるとき)を下した場合には、ステップS58の反力制御4を行う。
【0185】
また、第1のモータ332、第1の制御装置(第1のECU)353、第2のモータ342、又は、第2の制御装置(第2のECU)363のいずれかに異常が生じた旨の異常診断を下した場合、第3の制御装置393は、操舵トルクセンサ16の信号に基づく操舵トルク、及び、操舵トルクの変化に応じた適切な目標電流が予め設定されたマップを参照することで、現在の操舵トルクに応じた第3のモータ181の目標電流値を設定し、こうして設定した目標電流値に対し、第3の電流センサ181Aの検出値が追従するように、第3のモータ181の駆動制御を行う。
【0186】
これにより、運転者による操向ハンドル1の操舵トルクに係る負担を軽減する。ただし、ステップS59の反力制御5では、第3の制御装置393は、異常箇所を知らせる警告表示を行うと共に、正常時と比べて操舵トルクを大きく(重く)する制御を行う。これにより、操舵システムに異常が生じている旨を適時に運転者に報知する。
【0187】
ステップS59の反力制御5が終了すると、第3の制御装置393は、処理の流れを図6のステップS1へと戻し、以下の処理を順次実行させる。
【0188】
次に、ステップS22のマニュアルステアリング制御について、図13を参照して説明する。図13は、マニュアルステアリングに係るサブルーチンプログラムの処理の流れを表すフローチャート図である。
なお、マニュアルステアリング(図6のステップS22)は、操舵機能モードが図12に示すEPSモードである際に、第3のモータ3181又は第3の制御装置(第3のECU)393のいずれかに異常が生じた場合に、図6のステップS22において、操舵機能モードをマニュアルステアリングモードに設定すべき旨の判定が下された場合に実行される処理である。
【0189】
ステップS59において、操舵機能モードがEPSモードである際に、第3のモータ3181又は第3の制御装置(第3のECU)393のいずれかに異常が生じた旨の異常診断を下した第1又は第2の制御装置353,363は、第1の親リレー354及び第1の子リレー355、第2の親リレー364及び第2の子リレー365、並びに、第3の親リレー185及び第3の子リレー186のそれぞれの接点を開放する制御を行うことにより、第1のモータ332及び第1の制御装置353、第2のモータ342及び第2の制御装置363、第3のモータ181及び第3の制御装置393、並びに、連結装置4への電源供給を遮断すると共に、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する全ての制御機能をOFFにする。これにより、操舵機能モードをマニュアルステアリングモードに復帰させる。
【0190】
〔本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の作用効果について説明する。
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する異常診断部79a,79b,79c(図1B参照)は、第1及び第2の電流センサ332A,342Aによりそれぞれ検出される第1及び第2の電流値の偏差が予め定められる閾値を超える場合、転舵装置3が異常である旨の診断を下すこととした。
ここで、操舵車輪30a,30bの所要の転舵動作が正常に行われた場合、第1のモータ332及び第2のモータ342のそれぞれには、均衡した大きさの電流が流れる。これは、第1のモータ332及び第2のモータ342は、その電気的特性が相互に共通に設定され、かつ、前記の“舵力伝達機構”を介して相互に連結されているからである。
【0191】
そうすると、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する異常診断部79a,79b,79cは、第1の電流値及び第2の電流値の偏差を監視するだけで、煩雑な演算処理や診断処理による待機時間を要することなく、転舵装置3の異常診断を行うことができる。
したがって、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、例えば、転舵用のモータ等が故障することで第1又は第2の電流検出部に異常信号が生じた場合であっても、かかる異常発生の診断を速やかに行うことができる。
【0192】
また、異常診断部79a,79b,79cは、転舵用の第1のモータ332及び第2のモータ342のそれぞれに流れる電流を、第1及び第2の電流センサ332A,342Aにより直接検出した第1及び第2の電流値に基づいて異常診断を行うため、異常診断に際し故障したモータが異常回転する前に異常発生の診断を下すことができ、故障したモータが異常回転することで現れるおそれがある車両の異常挙動を未然に抑止することができる。これについて、例えば、仮に、転舵用の第1のモータ332及び第2のモータ342として3相モータを採用し、3相モータのうち1相が短絡して大電流が流れた故障例をあげて説明する。この故障例では、正常なモータの電流検出信号と比べると、異常なモータの電流検出信号は、判定閾値を大きく超える結果、異常診断を瞬時に行うことができる。しかも、第1のモータ332及び第2のモータ342は、その電気的特性が相互に共通になるように設定されている。そのため、正常なモータの出力の大きさは、異常なモータの出力の大きさと同等であり、異常なモータの出力の大きさが正常なモータの出力の大きさに打ち勝って、操舵車輪30a,30bが異常状態に至るまで転舵される事態を生じることはない。
【0193】
また、第1及び第2のモータ332,342のうち一方に異常(停止)が生じたとしても、他方のモータにより転舵機能を維持することができる。さらに、仮に、第1及び第2のモータ332,342のうち一方に異常(逆転)が生じたとしても、他方のモータにより異常(逆転)を相殺することができる。その結果、転舵機能を可及的に維持する効果を期待することができる。
【0194】
しかも、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、電気的特性が相互に共通に設定された転舵用の第1及び第2のモータ332,342が舵力伝達機構を介して相互に連結されているため、単一のモータで転舵駆動する場合と比べて、個々のモータの出力特性を低く抑えることができる。そのため、例えば、既存の12ボルト容量のバッテリからの電源供給を受けて動作させることが可能であって、新たな24ボルト容量または48ボルト容量の昇圧回路なども要しない。その結果、個々のモータのサイズを小さくすることができ、レイアウト設計の自由度を確保することができる。
【0195】
また、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、多数決の原理にしたがって、異常診断部79a,79b,79cが異常診断を行う。すなわち、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する異常診断部79a,79b,79cは、第1〜第3の制御装置353,363,393が共通処理をそれぞれ実行することで得られる三つの処理結果を比較し、この比較結果に基づいて、三つの処理結果のうち二以上の処理結果が予め定められる許容範囲内に属する場合に、前記二以上の処理結果に対応する制御装置が正常である旨の診断を下す一方、前記二以上から外れた処理結果に対応する制御装置が異常である旨の診断を下すこととした。
【0196】
ここで、第1〜第3の制御装置353,363,393がそれぞれ実行する共通処理とは、例えば、入力値および入力値に対する演算内容が共通となる処理を意味する。第1〜第3の制御装置353,363,393の全てが正常であれば、前記共通処理を横並びで行った際の処理結果は、前記三者ともに共通の値となるはずである。また、仮に、三つの制御装置353,363,393のうち過半数である二つの制御装置の処理結果が同じであり、残り一つの制御装置の処理結果が前記二つの制御装置の処理結果とは異なる場合には、前記二つの制御装置のほうが、前記残り一つの制御装置と比べて、正常である蓋然性が高い。
【0197】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、第1〜第3の制御装置353,363,393に係る異常診断を、適時かつ適確に行うことができる。
なお、正常である旨の診断が下された制御装置について、その制御動作を継続するように構成すれば、操舵機能の可及的な維持に貢献することができる。
【0198】
また、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する異常診断部による異常診断により、連結装置4の切替装置44が切替え爪部43を切離状態から結合状態に切り替えると、複数のばね部材42が切替え爪部43による押圧力から解放されることで円筒部材380及びカム部材401の隙間に複数の対ローラ41がくさび状に係合し、これをもって、第1の回転軸38及び第2の回転軸40を機械的に連結することでマニュアルステアリングが構成される。
【0199】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、第1〜第3の制御装置353,363,393が有する異常診断部79a,79b,79cが異常診断を行った場合に、連結装置4の切替装置44の働きによって、第1の回転軸38及び第2の回転軸40を機械的に連結することで速やかにマニュアルステアリングを構成することができるため、操舵機能を確実に維持することができる。
【0200】
また、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、異常診断部79a,79b,79cによる異常診断を受けて、連結装置4の切替装置44に対する電源供給を遮断させる制御を行うことにより、切替え爪部43を切離状態から結合状態に切り替えさせることとした。
【0201】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、フェールセーフの観点から好ましい実施形態を用いて操舵機能を確実に維持することができる。
【0202】
ところで、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101の起動開始時(車両の起動時)には、連結装置4の切替え爪部43は結合状態にある。具体的には、例えば、連結装置4の切替え爪部43が結合状態にある車両の駐車時において、操向ハンドル(操向部材)1を据え切りすることで過大な負荷トルクを連結装置4の結合部分に与えた場合には、この結合部分(円筒部材380、カム部材401、及び、複数の対ローラ41の三者が相互に当接する部分)同士が食いついた固着状態を生じる。その結果、連結装置4の切替装置44を働かせようとしても、円筒部材380の内方であって円筒部材380及びカム部材401の隙間に複数の切替え爪部43をさし込むことができずに、連結装置4を結合状態から切離状態へと切り替えることができないおそれがある。
【0203】
そこで、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、切替え爪部43を結合状態から切離状態へと切り替えさせる際に、第1のモータ332、第2のモータ342、又は、第3のモータ181のうち少なくとも一以上を駆動させる制御を行うこととした。
【0204】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、仮に、連結装置4の結合部分同士が食いついた固着状態にある場合であっても、前記の結合部分を確実かつ速やかに緩ませることができる。その結果、本来の操舵機能を確実に発揮させることができる。
【0205】
また、本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101では、第1〜第3の制御装置353,363,393は、異常診断部79a,79b,79cによる異常診断に係る異常箇所と、複数の異常箇所のそれぞれに対応付けて適切な操舵機能モードの種別が記述されたマップとを参照して、異常診断に係る異常箇所に対応する適切な操舵機能モードを、第1の操舵機能モード(アクティブVGS)、第2の操舵機能モード(VGS)、第3の操舵機能モード(EPS)、又は、第4の操舵機能モード(マニュアルステアリング)のうちいずれかに設定する制御を行うこととした。
【0206】
本発明の実施形態に係る車両用操舵装置101によれば、操舵システムに異常が生じた際の最終手段であるマニュアルステアリング(第1の回転軸38と第2の回転軸40とを連結)への移行段階を4段階に設定して、それぞれの段階において残された機能を用いて操舵システムの再構築を行い、適切な操舵機能モードを設定して操舵制御を行うため、最終手段であるマニュアルステアリングへの切り替え頻度を抑制し、操舵機能の質的向上に寄与することができる。
【0207】
〔その他の実施形態〕
以上説明した実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0208】
例えば、本発明の実施形態において、第1の制御装置353が第1のモータ332の駆動制御を主として行い、第2の制御装置363が第2のモータ342の駆動制御を主として行い、第3の制御装置393が第3のモータ181の駆動制御を主として行う、構成を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0209】
前記の構成に代えて、例えば、第1の制御装置353に異常が生じた場合に、第2の制御装置363が、第2のモータ342に加えて、第1のモータ332の駆動制御をも主として行う、構成を採用してもよい。また、第1の制御装置353に異常が生じた場合に、第3の制御装置393が、第3のモータ181に加えて、第1のモータ332の駆動制御をも主として行う、構成を採用してもよい。さらに、第1の制御装置353及び第2の制御装置363に異常が生じた場合に、第3の制御装置393が、第3のモータ181に加えて、第1のモータ332及び第2のモータ342の駆動制御をも主として行う、構成を採用してもよい。
【0210】
要するに、第1〜第3の制御装置353,363,393のそれぞれは、相互補完的に連係して、第1〜第3のモータ332,342,181の駆動制御を行う構成を採用してもよい。
このように構成すれば、仮に、第1〜第3の制御装置353,363,393のうち1又は2の制御装置に異常が生じた場合であっても、残りの制御装置を用いて第1〜第3のモータ332,342,181の駆動制御を行うことができるため、健全な操舵機能を可及的に維持することができる。
【符号の説明】
【0211】
1 操向ハンドル(操向部材)
2 反力付与装置
3 操舵装置
4 連結装置
30a,30b 操舵車輪
38 第1の回転軸
40 第2の回転軸
41 複数の対ローラ
42 複数のばね部材
43 切替え爪部
44 切替装置
101 車両用操舵装置
181 第3のモータ
181A 第3の電流センサ
332 第1のモータ
332A 第1の電流センサ(第1の電流検出部)
342 第2のモータ
342A 第2の電流センサ(第2の電流検出部)
353 第1の制御装置(ECU1)
363 第2の制御装置(ECU2)
380 円筒部材
393 第3の制御装置(ECU3)
401 カム部材
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13