【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、負電圧を発生するためには、上記のような負電圧を発生するBGR電圧発生回路ではなく、
図8及び
図9のように上記の正電圧のBGR電圧発生回路を用いて負電圧基準を発生しているのが一般的である。
【0007】
図8は特許文献1において開示されている、従来例2に係る負電圧発生器2の構成を示す回路図である。
図8において、負電圧発生器2は、抵抗R21,R22と、差動増幅器20と、チャージポンプ21とを備えて構成される。ここで、Vddは正の電源電圧であり、Vssは接地電圧であり、抵抗R21に印加される正の電源電圧Vppは正基準電圧PVrefに従ってレギュレートされる。
図8の負電圧発生器2によって発生される負電圧Vnegは次式で表される。
【0008】
Vneg=−R22/R21×Vpp+(1+R22/R21)×PVref (1)
【0009】
図9は特許文献2及び3において開示されている、従来例3に係る負電圧発生回路の構成を示す回路図である。
図9において、負電圧発生回路は、差動増幅器31,32と、PチャンネルMOSトランジスタ(以下、PMOSトランジスタという。)P31,P32と、抵抗R31,R32と、チャージポンプ33とを備えて構成される。ここで、Vddは正の電源電圧であり、Vssは接地電圧である。また、PMOSトランジスタP31,P32はカレントミラー回路を構成し、それぞれ抵抗R31,R32に対して同一の基準電流Irefを流す。
図9の負電圧発生回路によって発生される負電圧Vnegは次式で表される。
【0010】
Vneg=−Iref×R32+PVref (2)
Iref=PVref/R31 (3)
【0011】
しかし、もし負基準電圧NVrefを用いることができれば、より正確な負電圧Vnegを発生することができ、回路構成も簡単になると考えられる。負電圧Vneg=−10Vを発生するために、もし負基準電圧NVref=−1.0V±0.1Vであるならば、負電圧Vnegは−10V±1Vと誤差10倍で制御されるので、当該負電圧発生回路はBGR電圧発生回路と同様の正確さ±0.01Vを必要とする。
【0012】
図10はこの概念を用いた負電圧発生回路の構成例を示す回路図であり、正の基準電圧を用いた正の昇圧電圧発生回路の構成と同じである。
図10の負電圧発生回路は、抵抗R41,R42と、差動増幅器41と、チャージポンプ42とを備えて構成される。
図10において、分圧回路を構成する抵抗R41,R42は2つのキャパシタの直列回路で置き換えることができる。ここで、
図10の負電圧発生回路によって発生される負電圧は次式で表される。
【0013】
Vneg=(R42/R41+1)×NVref (4)
【0014】
問題はこの負基準電圧NVrefを精度良く発生する回路の実現であり、
図11は従来例4に係る負基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
図11の負基準電圧発生回路は、正基準電圧PVrefに基づいて基準電流Irefを発生する電流源50と、抵抗R51,R52と、NチャンネルMOSトランジスタ(以下、NMOSトランジスタという。)N51,N52とを備えて構成される。
図11の負基準電圧発生回路により発生される負基準電圧NVrefは次式で表される。
【0015】
NVref=−Iref×R52 (5)
【0016】
図12は従来例5に係る負基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
図12の負基準電圧発生回路は、抵抗R61,R62と、差動増幅器60とを備えて構成される。
図12の負基準電圧発生回路により発生される負基準電圧NVrefは次式で表される。
【0017】
NVref=−PVref×R62/R61 (6)
【0018】
以上の従来例に係る制御回路では、負基準電圧は正基準電圧PVrefから得られ、正基準電圧PVrefの精度に加えていくらかの誤差が加わるという問題点があった。当該従来例に係る制御回路は以下の2つのタイプに分類される。
【0019】
(タイプ1(
図11))正基準電圧PVrefから基準電流Irefを発生して、基準電流Irefに基づいて負基準電圧NVrefをIref・Rとして発生する(例えば特許文献4参照)。この場合、カレントミラーを使用するので、動作条件が全く同じではないので、さらに誤差が加わり、さらに余分な差動増幅器のオフセットが加わることになる。
【0020】
(タイプ2(
図12))正基準電圧PVrefと、負基準電圧NVrefとの比較する回路であって、アンテナ電源からの正基準電圧PVrefを用いて反転した負基準電圧NVrefを発生する。この場合は、正基準電圧PVrefを電源として使うので、その発生での誤差及び電流を引くことによる電圧降下の誤差が加わる。
【0021】
図13は比較例1に係るBGR型正基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。
図13において、比較例1に係るBGR型正基準電圧発生回路は、
(1)オペアンプである差動増幅器1と、
(2)差動増幅器1の出力端子と非反転入力端子との間に接続される帰還抵抗Rcと、
(3)差動増幅器1の出力端子と反転入力端子との間に接続される帰還抵抗Rcと、
(4)差動増幅器1の非反転入力端子に接続されたアノードと、接地されたカソードとを有するダイオードDcと、
(5)差動増幅器1の反転入力端子に抵抗Rbを介して接続されたアノードと、接地されたカソードとをそれぞれ有し、互いに並列に接続された複数m個のダイオードD1〜Dmとを備えて構成される。
【0022】
以上のように構成された、比較例1に係るBGR型正基準電圧発生回路は差動増幅器1の出力端子から正基準電圧Vbgrを発生して出力する。
【0023】
図14Aは比較例2に係るBGR型正基準電圧発生回路の構成を示す回路図であり、
図14Bは
図14AのBGR型正基準電圧発生回路の各PNP型トランジスタの構造を示す縦断面図である。
図14Aにおいて、比較例2に係るBGR型正基準電圧発生回路は、
図13のBGR型正基準電圧発生回路に比較して、以下の点が異なる。
(1)ダイオードDcに代えて、ダイオード接続されたPNP型トランジスタQcを備えたこと。
(2)ダイオードD1〜Dmの並列回路に代えて、互いに並列に接続され、各単独でダイオード接続された複数m個のPNP型トランジスタQ1〜Qmを備えた。
【0024】
図14Bにおいて、P型半導体基板10においてリンなどのN型不純物を注入してNウェル11を形成し、エミッタE、ベースB、及びコレクタCを有するPNP型トランジスタを形成する。
【0025】
以上のように構成された、比較例2に係るBGR型正基準電圧発生回路は、比較例1と同様に、差動増幅器1の出力端子から正基準電圧Vbgrを発生して出力する。
【0026】
しかしながら、比較例1及び2に係るBGR型正基準電圧発生回路では、負基準電圧を発生することはできないという問題点があった。
【0027】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して高精度で負基準電圧を発生することができ、しかも回路構成が簡単な負基準電圧発生回路及び負基準電圧発生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に係る負基準電圧発生回路は、バンドギャップリフェレンスを用いて負基準電圧を発生する負基準電圧発生回路において、
非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を有し、正側電源電圧と負側電源電圧で駆動される差動増幅器であって、上記出力端子から第1の抵抗を介して上記非反転入力端子に接続され、上記出力端子から第2の抵抗を介して上記反転入力端子に接続された差動増幅器と、
上記差動増幅器の非反転入力端子に接続されたカソードと、接地されたアノードとを有する第1のダイオードと、
所定の接続点に接続されたカソードと接地されたアノードとをそれぞれ有しかつ互いに並列接続された複数の第2のダイオードと、
上記接続点と上記差動増幅器の反転入力端子との間に接続された第3の抵抗とを備えたことを特徴とする。
【0029】
上記負基準電圧発生回路において、半導体基板にP型不純物を注入してPウェルを形成し、当該Pウェルの中央部にN+不純物領域を形成してカソードを形成し、当該カソードを取り囲む位置にP+不純物領域を形成してアノードを形成することで、上記第1のダイオード及び上記複数の第2のダイオードを構成したことを特徴とする。
【0030】
ここで、上記第1のダイオード及び上記複数の第2のダイオードの外側に位置する上記半導体基板にP+不純物領域を形成することで基板タップを構成したことを特徴とする。
【0031】
上記負基準電圧発生回路において、半導体基板にN型不純物を注入してNウェルを形成し、当該Nウェルにおいて、P型不純物を注入してPウェルを形成し、当該Pウェルの中央部にN+不純物領域を形成してカソードを形成し、当該カソードを取り囲む位置にP+不純物領域を形成してアノードを形成することで、上記第1のダイオード及び上記複数の第2のダイオードを構成したことを特徴とする。
【0032】
ここで、上記NウェルにN+不純物領域を形成することで第1の基板タップを構成し、上記半導体基板にP+不純物領域を形成ることで第2の基板タップを構成したことを特徴とする。
【0033】
上記負基準電圧発生回路において、上記第1のダイオード及び上記複数の第2のダイオードは、トリプルウェル構造を有するNPN型トランジスタのベース−エミッタ間のダイオードで構成されたことを特徴とする。
【0034】
ここで、半導体基板にN型不純物を注入してNウェルを形成し、当該Nウェルにおいて、P型不純物を注入してPウェルを形成し、当該Pウェルの中央部にN+不純物領域を形成してエミッタを形成し、当該エミッタを取り囲む位置にP+不純物領域を形成してベースを形成することで、上記第1のダイオード及び上記複数の第2のダイオードを構成し、さらに、上記ベースを取り囲む位置にN+不純物領域を形成してコレクタを形成することで上記NPN型トランジスタを構成したことを特徴とする。
【0035】
また、上記NウェルにN+不純物領域を形成することで第1の基板タップを構成し、上記半導体基板にP+不純物領域を形成ることで第2の基板タップを構成したことを特徴とする。
【0036】
上記負基準電圧発生回路において、上記差動増幅器の正側電源端子には、所定の正電源電圧Vdd又は接地電圧が印加され、
上記差動増幅器の負側電源端子には、所定の負電源電圧Vnnが印加されることを特徴とする。
【0037】
また、上記負基準電圧発生回路において、上記差動増幅器は、P型半導体基板に形成されたNウェル上にPウェルを形成し、当該Pウェルに、電極用複数の不純物領域を形成して構成されたトリプルウェル構造を有する複数のNMOSトランジスタを含むことを特徴とする。
【0038】
ここで、上記Nウェルには、所定の正電源電圧Vdd又は接地電圧が印加されてバイアスされることを特徴とする。
【0039】
第2の発明に係る負基準電圧発生システムは、
上記負基準電圧発生回路と、
チャージポンプで構成され、所定の負電源電圧を発生して負側電源電圧として上記負基準電圧発生回路に供給する負電圧発生回路とを備えたことを特徴とする。
【0040】
上記負基準電圧発生システムにおいて、上記負電圧発生回路から出力される負電源電圧に基づいて、所定の基準電圧を用いて、上記負電源電圧の変動が小さくなるように上記負電源電圧を制御する制御回路をさらに備えたことを特徴とする。
【0041】
また、上記負基準電圧発生システムにおいて、上記負電圧発生回路から出力される負電源電圧に基づいて、上記負基準電圧発生回路から出力される負基準電圧を基準電圧として用いて、上記負電源電圧の変動が小さくなるように上記負電源電圧を制御する制御回路をさらに備えたことを特徴とする。