特許第6017612号(P6017612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017612
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-55273(P2015-55273)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-174639(P2016-174639A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 隆也
【審査官】 樋熊 政一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−515583(JP,A)
【文献】 特開2007−159922(JP,A)
【文献】 特開2002−336250(JP,A)
【文献】 特開2005−137747(JP,A)
【文献】 特開2003−299652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 −8/15
A61B 6/00 −6/14
A61B 5/055
A61B 5/00 −5/01
A61B 1/00 −1/32
G06F 3/033−3/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて形成された超音波画像を表示する表示手段と、
超音波画像が表示される表示画面内に、透明表示可能なバーチャルキーボードを表示する制御を実行する表示制御手段と、
前記表示画面上の前記バーチャルキーボードへの入力を検知する検知手段と、
前記表示手段とユーザーとの間の距離を検知する距離センサと、
を含み、
前記表示画面は、操作エリアと検査画面エリアを含み、
前記表示制御手段は、前記操作エリア内に、超音波診断に関するコマンドを入力するためのボタン像群を表示し、前記検査画面エリア内に、超音波画像を表示するとともに、前記ボタン像群とは異なる画像である前記バーチャルキーボードを表示し、前記距離センサによって検知された距離に応じて、前記バーチャルキーボードの3つ以上の透明度を段階的に切り替え、
前記バーチャルキーボードは、文字を入力するための複数のキーを備えており、文字列の入力のために用いられる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記バーチャルキーボードの透明度が可変である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記表示制御手段は、シフト指示に応じて、前記表示画面内で前記バーチャルキーボードを上方向又は下方向にシフトさせる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記表示制御手段は、前記バーチャルキーボードを上方向又は下方向にシフトさせるためのボタン画像を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記検知手段は、前記バーチャルキーボードの透明度が所定条件を満たす場合に、前記バーチャルキーボードの表示エリア内への入力を、前記バーチャルキーボードの背景画像に対する入力として検知する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記表示制御手段は、前記表示手段とユーザーとの距離が遠い場合における前記バーチャルキーボードの透明度を、前記表示手段とユーザーとの距離が近い場合における前記バーチャルキーボードの透明度よりも増大させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の超音波診断装置において、
前記表示制御手段は、超音波画像に対して設定された関心点又は関心領域の位置に応じて、前記バーチャルキーボードの表示位置を変更する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
コンピュータを、
超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて形成された超音波画像を表示装置に表示させ、超音波画像が表示される表示画面内に、透明表示可能なバーチャルキーボードを表示する制御を実行する表示制御手段と、
前記表示画面上の前記バーチャルキーボードへの入力操作を検知する検知手段と、
として機能させ、
前記表示画面は、操作エリアと検査画面エリアを含み、
前記表示制御手段は、前記操作エリア内に、超音波診断に関するコマンドを入力するためのボタン像群を表示し、前記検査画面エリア内に、超音波画像を表示するとともに、前記ボタン像群とは異なる画像である前記バーチャルキーボードを表示し、前記表示装置とユーザーとの間の距離を検知する距離センサによって検知された距離に応じて、前記バーチャルキーボードの3つ以上の透明度を段階的に切り替え、
前記バーチャルキーボードは、文字を入力するための複数のキーを備えており、文字列の入力のために用いられる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に、バーチャルキーボードが用いられる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置においては、ハードウェアキーボードや表示装置に表示されたバーチャルキーボード(ソフトウェアキーボード)を用いることにより、患者IDやコメント等が入力されることがある。
【0003】
特許文献1に記載の超音波システムにおいては、画像キーボード映像がディスプレイ部の画面の一部分に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−17558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の画面のサイズは有限であるため、その画面の大きさによっては、バーチャルキーボードが超音波画像に重なってしまい、超音波画像がバーチャルキーボードによって覆われて超音波画像の観察が困難になるという問題が生じ得る。これに対処するために、超音波画像とバーチャルキーボードとが重ならないように超音波画像やバーチャルキーボードを縮小表示することが考えられるが、超音波画像の観察やバーチャルキーボードを利用した入力操作に不便をきたすという問題が生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、超音波診断装置において、バーチャルキーボードを利用した入力と超音波画像の観察とが適切に行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超音波診断装置は、超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて形成された超音波画像を表示する表示手段と、超音波画像が表示される表示画面内に、透明表示可能なバーチャルキーボードを表示する制御を実行する表示制御手段と、前記表示画面上の前記バーチャルキーボードへの入力を検知する検知手段と、を含むことを特徴とするとする。
【0008】
バーチャルキーボードは透明性を有するため、超音波画像上にバーチャルキーボードが重畳して表示される場合であっても、バーチャルキーボードを通して、背景画像としての超音波画像を観察することが可能となる。これにより、有限な表示エリア内において、バーチャルキーボードと超音波画像との重畳表示を回避するために、超音波画像やバーチャルキーボードを縮小表示せずに済み、各表示要素を大きく表示することが可能となる。それ故、超音波画像を適切に観察しつつ、バーチャルキーボードによって入力操作を適切に行うことが可能となる。また、表示エリア内の各表示要素を選択して表示せずに済む。
【0009】
望ましくは、前記バーチャルキーボードの透明度が可変である。これにより、バーチャルキーボードの透明度を適宜変えて、超音波画像の観察とバーチャルキーボードへの入力とを行うことが可能となる。
【0010】
望ましくは、前記表示制御手段は、シフト指示に応じて、前記表示画面内で前記バーチャルキーボードを上方向又は下方向にシフトさせる。例えば、超音波画像上の注目部分を避けてバーチャルキーボードを表示させることができる。
【0011】
望ましくは、前記表示制御手段は、前記バーチャルキーボードを上方向又は下方向にシフトさせるためのボタン画像を前記表示手段に表示させる。これにより、簡易な操作によってバーチャルキーボードの表示位置を変更することができる。
【0012】
望ましくは、前記検知手段は、前記バーチャルキーボードの透明度が所定条件を満たす場合に、前記バーチャルキーボードの表示エリア内への入力を、前記バーチャルキーボードの背景画像に対する入力として検知する。これにより、バーチャルキーボードへの誤入力が防止され、背景画像に対する入力が有効な入力として検知される。
【0013】
望ましくは、前記表示手段とユーザーとの間の距離を検知する距離センサを更に含み、前記表示制御手段は、検知された距離に応じて、前記バーチャルキーボードの透明度を変更する。これにより、検査者等のユーザーの状況に応じて、バーチャルキーボードや超音波画像の視認性が変化する。
【0014】
望ましくは、前記表示制御手段は、前記表示手段とユーザーとの距離が遠い場合における前記バーチャルキーボードの透明度を、前記表示手段とユーザーとの距離が近い場合における前記バーチャルキーボードの透明度よりも増大させる。これにより、検査者等のユーザーが表示手段に近づくと、透明度が低下してバーチャルキーボードの視認性が向上する。一方、ユーザーが表示手段から遠ざかると、透明度が増大してバーチャルキーボードの視認性が低下し、これによって、超音波画像の視認性が向上する。
【0015】
望ましくは、前記表示制御手段は、超音波画像に対して設定された関心点又は関心領域の位置に応じて、前記バーチャルキーボードの表示位置を変更する。
【0016】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて形成された超音波画像を表示装置に表示させ、超音波画像が表示される表示画面内に、透明表示可能なバーチャルキーボードを表示する制御を実行する表示制御手段と、前記表示画面上の前記バーチャルキーボードへの入力操作を検知する検知手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波診断装置において、バーチャルキーボードを利用した入力と超音波画像の観察とが適切に行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る超音波診断システムの好適な実施形態を示す概念図である。
図2】セパレート状態にある超音波診断システムの斜視図である。
図3】ドッキング状態にある超音波診断システムの斜視図である。
図4】フロントエンド装置のブロック図である。
図5】バックエンド装置のブロック図である。
図6】ドッキング状態での通信方式とセパレート状態での通信方式を示す図である。
図7】タッチパネルモニタの表示制御に関する構成を示すブロック図である。
図8】画像のレイヤー構造を示す図である。
図9】バーチャルキーボードの第1表示例を示す図である。
図10】バーチャルキーボードの第2表示例を示す図である。
図11】バーチャルキーボードの第2表示例を示す図である。
図12】バーチャルキーボードの第2表示例を示す図である。
図13】バーチャルキーボードの第2表示例を示す図である。
図14】バーチャルキーボードの第3表示例を示す図である。
図15】バーチャルキーボードの第4表示例を示す図である。
図16】タッチパネルモニタの表示制御に関する別の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(1)超音波診断システム
図1には、本発明に係る超音波診断システムの概略的構成が示されている。超音波診断システム10は、病院等の医療機関で使用される医療機器であり、被検者(生体)に対して超音波診断を行うためのものである。超音波診断システム10は、大別して、フロントエンド(FE)装置12、バックエンド(BE)装置14、及び、プローブ16により構成されている。FE装置12は生体から見て近い装置であり、BE装置14は生体から見て遠い装置である。FE装置12及びBE装置14は、別体化されており、それぞれが可搬型装置を構成している。FE装置12及びBE装置14は、それらが離れたセパレート状態において動作可能であり、また、それらが結合したドッキング状態で動作可能である。なお、図1はセパレート状態を示している。
【0021】
プローブ16は、生体表面に当接された状態において超音波の送受波を行う送受波器である。プローブ16は、直線状又は円弧状に配列された複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子を備えている。アレイ振動子によって超音波ビームが形成され、それが繰り返し電子走査される。電子走査ごとに生体内にビーム走査面が形成される。電子走査方式として、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式、等が知られている。1Dアレイ振動子に代えて三次元エコーデータ取込空間を形成可能な2Dアレイ振動子を設けることも可能である。図1に示す構成例では、プローブ16はケーブル28を介してFE装置12に接続されている。プローブ16が無線通信によってFE装置12に接続されてもよい。その場合にはワイヤレスプローブが利用される。複数のプローブがFE装置12に接続された状態において、それらの中から実際に使用するプローブ16が選択されてもよい。体腔内に挿入されるプローブ16がFE装置12に接続されてもよい。
【0022】
FE装置12とBE装置14は、図1に示すセパレート状態において、無線通信方式により電気的に相互に接続される。本実施形態では、それらの装置は第1無線通信方式及び第2無線通信方式により相互に接続されている。図1においては、第1無線通信方式による無線通信経路18及び第2無線通信方式による無線通信経路20が明示されている。 第1無線通信方式は第2無線通信方式に比べて高速であり、本実施形態では、その方式を利用してFE装置12からBE装置14へ超音波受信データが伝送される。すなわち、第1無線通信方式がデータ伝送用として利用されている。第2無線通信方式は第1無線伝送方式よりも低速、簡易な通信方式であり、本実施形態では、その方式を利用してBE装置14からFE装置12へ制御信号が伝送される。すなわち、第2無線通信方式が制御用として利用されている。
【0023】
FE装置12とBE装置14とが物理的に結合されたドッキング状態においては、FE装置12とBE装置14とが有線通信方式により電気的に接続される。上記2つの無線通信方式に比べて、有線通信方式はかなり高速である。図1においては、2つの装置間に有線通信経路22が示されている。電源経路26は、ドッキング状態において、FE装置12からBE装置14内へ直流電力を供給するためのものである。その電力がBE装置14の稼働で用いられ、また、BE装置14内のバッテリの充電で用いられる。
【0024】
符号24はACアダプタ(AC/DCコンバータ)から供給されるDC電源ラインを示している。ACアダプタは必要に応じてFE装置12に接続される。FE装置12もバッテリを内蔵しており、バッテリを電源としつつ稼働することが可能である。FE装置12は後に示すようにボックス状の形態を有している。FE装置12の構成及び動作については後に詳述する。
【0025】
一方、BE装置14は、本実施形態においてタブレット形態あるいは平板状の形態を有している。それは基本的には一般的なタブレットコンピュータと同様の構成を備えている。もっとも、BE装置14には、超音波診断用の各種の専用ソフトウエアが搭載されている。それには、動作制御プログラム、画像処理プログラム、等が含まれる。BE装置14は、タッチセンサ付きの表示パネル30を有している。それは入力器及び表示器を兼ねたユーザーインターフェイスとして機能する。図1においては、表示パネル30上に超音波画像としてのBモード断層画像32が表示されている。ユーザーは、表示パネル30上に表示されたアイコン群を利用して各種の入力を行う。表示パネル30上において、スライド操作や拡大操作等を行うことも可能である。
【0026】
診断用途、検査者の嗜好等に応じて、セパレート状態及びドッキング状態の内で選択された使用態様で、超音波診断システム10を動作させることが可能である。よって、使い勝手の良好な超音波診断システムを提供できる。
【0027】
状態変更に際して超音波診断システム10の動作が不安定あるいは不適正にならないように、本実施形態では、状態変更に際して超音波診断システム10を強制的にフリーズ状態とする制御が実行される。具体的には、セパレート状態からドッキング状態へ移行する過程で、両装置間の距離を指標する電波強度あるいは受信状態に基づいて、FE装置12及びBE装置14のそれぞれにおいてドッキング直前が判定され、その判定に従って個々の装置12,14において動作状態をフリーズ状態へ遷移させる制御が実行される。ドッキング状態の形成後かつ検査者によるフリーズ解除の操作後に、それらの装置12,14のフリーズ状態が解除される。ちなみに、ドッキング状態からセパレート状態へ移行する過程では、セパレート状態になったことが抜線検出その他の手法によりFE装置12及びBE装置14で個別的に検出され、それらがフリーズ状態となる。その後のフリーズ解除の操作後に、それらの装置12,14のフリーズ状態が解除される。
【0028】
なお、BE装置14は、病院内LANに対して無線通信方式及び有線通信方式によって別途接続され得る。それらの通信経路については図示省略されている。BE装置14(又はFE装置12)が、超音波診断のために機能する他の専用装置(例えばリモートコントローラ)に無線通信方式又は有線通信方式により、別途接続されてもよい。
【0029】
図2にはセパレート状態が示されている。FE装置12は、例えば机の上に載置されている。FE装置12は、差込口(スロット)を有するホルダ34を有している。ホルダ34はヒンジ機構を有しており、水平軸周りにおいて回転可能である。FE装置12の特定側面にはプローブケーブルの端部に設けられているコネクタが装着されている。FE装置12の内部にプローブ等を収容する部屋を形成してもよい。そのような構成によれば、超音波診断システムの運搬時において便利であり、またプローブを保護できる。図2において、BE装置14は、FE装置12から分離されており、無線通信を行える限りにおいて、BE装置14をFE装置12から更に大きく離すことが可能である。
【0030】
図3にはドッキング状態が示されている。ホルダ34の差込口に対してBE装置14の下端部が差し込まれている。その差込状態において、FE装置12とBE装置14とが有線接続状態となる。つまり、両者が有線LANで接続され、また両者が有線電源ラインで接続される。ドッキング状態においては、BE装置14の角度を任意に可変して、その姿勢を変えることが可能である。BE装置14を完全にその背面側(FE装置12の上面側)に倒すことも可能である。
【0031】
(2)フロントエンド装置
図4はFE装置12のブロック図である。図中の個々のブロックは、プロセッサ、電子回路等のハードウエアによって構成される。送信信号生成回路38は、プローブ接続回路40を介して、プローブ内の複数の振動素子に対して並列的に複数の送信信号を供給する回路である。この供給によりプローブにおいて送信ビームが形成される。生体内からの反射波が複数の振動素子で受波されると、それらから複数の受信信号が出力され、複数の受信信号がプローブ接続回路40を介して受信信号処理回路42に入力される。受信信号処理回路42は、複数のプリアンプ、複数のアンプ、複数のA/D変換器、等を備える。受信信号処理回路42から出力された複数のデジタル受信信号が受信ビームフォーマ46に送られる。受信ビームフォーマ46は、複数のデジタル受信信号に対して整相加算処理を適用し、整相加算後の信号としてビームデータを出力する。そのビームデータは受信ビームに対応する深さ方向に並ぶ複数のエコーデータからなるものである。なお、1つの電子走査で得られた複数のビームデータによって受信フレームデータが構成される。
【0032】
送受信コントローラ44は、BE装置14から送られてきた送受信制御データに基づいて、送信信号生成及び受信信号処理を制御するものである。ビームプロセッサ50は、時系列順で入力される個々のビームデータに対して、検波処理、対数変換処理、相関処理等の各種のデータ処理を施す回路である。制御部52は、FE装置12の全体動作を制御している。この他、ビームプロセッサ50から順次送られてくるビームデータをBE装置14へ有線伝送又は無線伝送するための制御を実行している。本実施形態では、制御部52は、有線通信器としても機能している。無線通信器54は第1無線通信方式で通信を行うためのモジュールである。無線通信器56は第2無線通信方式で通信を行うためのモジュールである。符号18は第1無線通信方式に従う無線通信経路を示しており、符号20は第2無線通信方式に従う無線通信経路を示している。それぞれは双方向伝送経路であるが、本実施形態では、前者を利用してFE装置12からBE装置14へ大量の受信データが伝送され、後者を利用してBE装置14からFE装置12へ制御信号が伝送される。符号64は有線通信用端子を示しており、そこには有線通信経路22が接続される。符号66は電源用端子を示しており、そこには電源ライン26が接続される。電源ライン26は上記のようにFE装置12からBE装置14へ直流電力を供給するためのラインである。
【0033】
バッテリ60は例えばリチウムイオン型のバッテリであり、そこにおける充放電は電源コントローラ58によって制御される。バッテリ駆動時において、バッテリ60からの電力が電源コントローラ58を介して、FE装置12内の各回路へ供給される。符号62はACアダプタ接続時における電源ラインを示している。ACアダプタ接続時には電源コントローラ58の作用によって、外部電力がFE装置12内の各回路へ供給される。その際、バッテリ60の充電量が100%未満であれば、外部電力を用いてバッテリ60が充電される。
【0034】
超音波診断動作時(送受信時)において、FE装置12は、BE装置14側での制御に従い、プローブに対する複数の送信信号の供給と、その後に得られる複数の受信信号の処理と、を繰り返し実行する。これにより得られる時系列順のビームデータが、セパレート状態では無線通信により、ドッキング状態では有線通信により、BE装置14へ順次伝送される。その際においては個々のビームデータが複数のパケットに変換され、いわゆるパケット伝送方式により、個々のビームデータが伝送される。
【0035】
なお、動作モードとしては、Bモードの他、CFMモード、Mモード、Dモード(PWモード、CWモード)等の各種のモードが知られている。高調波イメージングや弾性情報イメージング用の送受信処理が実行されてもよい。図4においては生体信号入力回路等の回路が図示省略されている。
【0036】
(3)バックエンド装置
図5はBE装置14のブロック図である。図中、各ブロックはプロセッサ、回路、メモリ等のハードウエアを示している。CPUブロック68は、CPU70、内部メモリ72等を備えている。内部メモリ72はワーキングメモリ、あるいは、キャッシュメモリとして機能する。CPUブロック68に接続された外部メモリ80には、OS、各種の制御プログラム、各種の処理プログラム等が格納されている。後者にはスキャンコンバート処理プログラムが含まれる。その外部メモリ80は、リングバッファ構造を有するシネメモリとしても機能する。内部メモリ72上にシネメモリが構成されてもよい。
【0037】
CPUブロック68は、複数のビームデータに基づくスキャンコンバート処理により表示フレームデータを生成する。それは超音波画像(例えば断層画像)を構成するものである。その処理が順次実行され、動画像が生成される。CPUブロック68は、超音波画像表示のための各種の処理をビームデータ又は画像に施す。その他、BE装置14の動作を制御し、また、超音波診断システム全体を制御している。
【0038】
タッチパネルモニタ(表示パネル)78は、入力デバイス及び表示デバイスとして機能する。具体的には、タッチパネルモニタ78は、液晶表示器及びタッチセンサを備え、ユーザーインターフェイスとして機能する。タッチパネルモニタ78には超音波画像を含む表示画像が表示され、また、バーチャルキーボード(ソフトウェアキーボード)や操作用の各種ボタン(アイコン)が表示される。
【0039】
無線通信器74は、第1無線通信方式に従って無線通信を行うためのモジュールである。その際の無線通信経路が符号18で示されている。無線通信器76は、第2無線通信方式に従って無線通信を行うためのモジュールである。その際の無線通信経路が符号20で示されている。CPUブロック68は有線通信方式に従って有線通信を行う機能も備えている。ドッキング状態においては、有線通信端子92に有線通信ラインが接続される。また、電源端子94に電源ライン26が接続される。
【0040】
CPUブロック68には、I/F回路82を介して、複数の検出器84〜90が接続されている。それには照度センサ、近接センサ、温度センサ、距離センサ等が含まれてもよい。GPS等のモジュールが接続されてもよい。I/F回路82はセンサコントローラとして機能する。
【0041】
バッテリ102はリチウムセラミック型のバッテリであり、その充放電は電源コントローラ100によって制御されている。電源コントローラ100は、バッテリ動作時においてバッテリ102からの電力をBE装置14内の各回路に供給する。非バッテリ動作時において、FE装置12から供給された電力、又は、ACアダプタから供給された電力をBE装置14内の各回路に供給する。符号104はACアダプタを経由した電源ラインを示している。
【0042】
BE装置14は、FE装置12を制御しつつ、FE装置12から送られてくるビームデータを順次処理して超音波画像を生成し、それをタッチパネルモニタ78に表示する。その際においては超音波画像と共に操作用グラフィック画像も表示される。通常のリアルタイム動作においては、BE装置14とFE装置12とが無線又は有線で電気的に接続され、両者の同期が図られつつ、超音波診断動作が継続的に実行される。フリーズ状態においては、BE装置14において送信信号生成回路、受信信号生成回路の動作が停止され、電源コントローラ100における昇圧回路の動作も停止する。BE装置14においては、フリーズ時点で静止画像表示となり、その内容が維持される。BE装置14に外部表示器を接続できるように構成してもよい。
【0043】
(4)通信方式
図6には、ドッキング状態118及びセパレート状態120で利用される通信方式が整理されている。符号110は第1無線通信方式を示しており、符号112は第2無線通信方式を示している。符号114は有線通信方式を示している。符号116は無線通信方式の内容を示している。ドッキング状態118においては、有線通信が選択され、FE装置12及びBE装置14において、第1無線通信器及び第2無線通信器は動作休止状態となる。これにより省電力が図られる。一方、セパレート状態120においては、無線通信が選択され、FE装置12及びBE装置14において、第1無線通信器及び第2無線通信器が動作する。その際、有線通信系統は動作休止状態となる。なお、第1無線通信方式110は第2無線通信方式112に比べて高速である。逆に言えば、第2無線通信方式112は第1無線通信方式110に比べて低速であるが、簡易かつ安価であり、消費電力が低い。有線通信方式としてはEthernet(登録商標)上のTCP/IPプロトコルがあげられる。第1有線通信方式としてはIEEE802.11があげられ、第2無線通信方式としてはIEEE802.15.1があげられる。それらは例示であり、他の通信方式を利用可能である。いずれにしてもセキュアな通信方式を利用するのが望ましい。
【0044】
本実施形態において、第2無線通信方式112に従う無線通信器は、受信強度(つまり距離)に応じて送信パワーを自動的に可変する機能を備えている。つまり、BE装置14へFE装置12が近接した場合に両装置それぞれ送信パワーを下げる制御が自動的に実行される。よって、設定されている送信パワーから、両装置が近接したことを判定することが可能である。それに代えて、受信強度、受信エラーレート等から2つの装置が近接したことを判定することも可能である。更には近接センサを利用することも可能である。上記構成において、BE装置14自体が超音波診断装置として機能し、また、FE装置12とBE装置14とを組み合わせたシステムも超音波診断装置として機能する。
【0045】
(5)バーチャルキーボード
上記BE装置14はバーチャルキーボードを表示する機能を備えるものであり、以下、その機能について説明する。本実施形態においては、必要に応じてバーチャルキーボード(ソフトウェアキーボード)がタッチパネルモニタ78に表示される。バーチャルキーボードは、タッチパネルモニタ78上においてユーザーによる入力を受け付けるキーボードである。
【0046】
図7には、タッチパネルモニタの表示制御に関する構成が示されている。表示制御部130は、超音波画像、操作用の各種ボタン(アイコン)、バーチャルトラックパッド、バーチャルキーボード等を、タッチパネルモニタ78に表示させる。例えば、表示制御部130は、タッチパネルモニタ78上において、超音波画像が表示される表示エリア内にバーチャルキーボードを表示させる。このバーチャルキーボードのデータは、例えば、CPUブロック68内の内部メモリ72や外部メモリ80に予め記憶されている。
【0047】
本実施形態に係るバーチャルキーボードは透明表示可能な画像であり、その透明度は可変である。透明度は、例えば0%〜100%の間で変更可能な値である。この透明度は、ユーザーによって設定されてもよいし、自動的に設定されてもよい。透明度が「0%」に設定されると、表示制御部130は、完全に不透明な状態でバーチャルキーボードをタッチパネルモニタ78に表示させる。この場合、バーチャルキーボードを通して背景画像を視認することはできなくなる。一方、透明度が「100%」に設定されると、バーチャルキーボードは完全に透明な状態となる。この場合、バーチャルキーボードを視認することはできなくなる。透明度が「0%」に近い値ほど、バーチャルキーボードの透明度合いは不透明な状態に近づいていき、透明度が「100%」に近い値ほど、バーチャルキーボードの透明度合いは完全に透明な状態に近づいている。透明度に応じて、背景画像の見え具合が変化することになる。
【0048】
検知部132はタッチセンサであり、タッチパネルモニタ78へのタッチ操作(入力)を検知する。タッチパネルモニタ78における検出方式としては、公知の方法を採用することができる。代表的な方式として、静電容量方式や抵抗膜方式等を利用することができる。検知部132は、タッチパネルモニタ78へのタッチ位置が移動したときのドラッグ操作や、タッチパネルモニタ78へのタッチ操作が離れたときのリリース操作等を検知する。例えば、検知部132は、バーチャルトラックパッドへのタッチ操作やドラッグ操作等を検知する。また、検知部132は、各種ボタンへのタッチ操作を検知する。バーチャルキーボードがタッチパネルモニタ78に表示されている場合、検知部132は、バーチャルキーボードへのタッチ操作を検知する。検知部132は、バーチャルキーボードの各要素へのタッチ操作を検知することにより、文字や命令の入力を受け付ける。
【0049】
表示制御部130と検知部132は、BE装置14において例えばCPUブロック68の機能として実現される。
【0050】
図8には、タッチパネルモニタ78に表示される画像のレイヤー構造の一例が示されている。レイヤー構造200は、重畳された複数のレイヤー(階層)を含む。レイヤー210はバーチャルキーボード212を含むレイヤーである。レイヤー220は操作用のボタン群222(アイコン群)を含むレイヤーである。レイヤー230は超音波画像232(Bモード断層画像等の画像)を含むレイヤーである。一例として、レイヤー210が最前面のレイヤーであり、レイヤー220が中間のレイヤーであり、レイヤー230が最背面のレイヤーである。もちろん、この配置例は一例であり、これ以外の順番によって各レイヤーが配置されてもよい。
【0051】
例えば、超音波画像232の表示指示が与えられ、バーチャルキーボード212及びボタン群222の表示指示が与えられていない場合、表示制御部130は、レイヤー230をタッチパネルモニタ78に表示させる。これにより、超音波画像232がタッチパネルモニタ78に表示される。この状態でバーチャルキーボード212の表示指示が与えられると、表示制御部130は、レイヤー230上にレイヤー210を重ねてタッチパネルモニタ78に表示させる。超音波画像232はバーチャルキーボード212の背景画像に相当する。超音波画像232とバーチャルキーボード212との表示位置が重なっている場合、その重なっている部分においては、超音波画像232にバーチャルキーボード212が重畳された状態で各画像が表示される。表示制御部130は、レイヤー210の透明度を、指定された透明度に設定する。これにより、バーチャルキーボード212の透明度が設定され、その透明度に応じて、超音波画像232においてバーチャルキーボード212が重畳している部分の見え方が変化する。透明度が「0%」に設定されると、超音波画像232における重畳部分を視認することができなくなる。透明度が「100%」に設定されると、バーチャルキーボード212は完全に透明な状態となり、バーチャルキーボード212が見えない状態で超音波画像232を視認することが可能となる。透明度が0〜100%の間に設定されると、その設定値に応じて、重畳部分の見え具合が変化する。
【0052】
また、超音波画像232及びボタン群222の表示指示が与えられ、バーチャルキーボード212の表示指示が与えられていない場合、表示制御部130は、レイヤー230上にレイヤー220を重ねてタッチパネルモニタ78に表示させる。これにより、超音波画像232とボタン群222とが表示される。超音波画像232とボタン群222との表示位置が重なっている場合、その重なっている部分においては、超音波画像232にボタン群222が重畳された状態で各画像が表示される。
【0053】
また、超音波画像232、バーチャルキーボード212及びボタン群222の表示指示が与えられた場合、表示制御部130は、レイヤー230上にレイヤー220を重ね、更にレイヤー220上にレイヤー210を重ねてタッチパネルモニタ78に表示させる。
【0054】
図8に示されているレイヤー構造200は一例であり、レイヤー210〜230以外のレイヤーがレイヤー構造200に含まれていてもよい。
【0055】
以下、バーチャルキーボードの詳細について説明する。
【0056】
(第1表示例)
図9を参照して、バーチャルキーボードの第1表示例について説明する。図9には、患者IDの入力時におけるタッチパネルモニタ78の表示エリアが示されている。患者IDの入力時においては、表示制御部130は、表示エリア内に、患者IDの入力欄140、患者氏名の入力欄142、患者の生年月日の入力欄144、性別の選択欄、等を表示させる。この状態で入力欄がユーザーによって指定(例えばタッチ操作)されると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212をタッチパネルモニタ78上に表示させる。これにより、バーチャルキーボード212を利用した患者ID等の入力が可能となる。例えば、表示制御部130は、入力欄140〜144の表示位置を避けて、バーチャルキーボード212を表示させる。図9に示す例では、表示エリアの上側に入力欄140〜144が表示されているため、表示エリアの下側にバーチャルキーボード212が表示されている。表示エリアの下側に入力欄140〜144が表示される場合には、表示エリアの上側にバーチャルキーボード212が表示されてもよい。患者IDの入力時においては、バーチャルキーボード212に対して重複する画像が存在しないため、表示制御部130は、バーチャルキーボード212の透明度を「0%」に設定する。これにより、バーチャルキーボード212は、完全に不透明な状態で表示される。もちろん、表示制御部130は、ユーザーの指示に従って、任意の表示位置にバーチャルキーボード212を表示させ、バーチャルキーボード212の透明度をユーザーによって指定された値に設定してもよい。
【0057】
(第2表示例)
図10から図13を参照して、バーチャルキーボードの第2表示例について説明する。図10には、超音波診断中におけるタッチパネルモニタ78の表示エリアが示されている。超音波診断中においては、タッチパネルモニタ78の表示エリアは、表示エリア78A,78Bを含んでいる。
【0058】
表示エリア78Aは検査画面エリアに相当し、そのエリア内には超音波画像232(例えばBモード断層画像)が表示される。また、バーチャルキーボード212の表示指示が与えられた場合、表示エリア78A内にバーチャルキーボード212が表示される。バーチャルキーボード212は、一例として、ファンクションキーやテンキー等をも備えた、いわゆるフルキーボードに相当する。もちろん、ファンクションキーやテンキーを含まないキーボードが、バーチャルキーボード212として利用されてもよい。また、超音波診断に特有のキーがバーチャルキーボード212に含まれていてもよい。例えば、上下方向や斜め方向の矢印キー等が、バーチャルキーボード212に含まれていてもよい。
【0059】
表示エリア78Bは操作エリア(コマンドエリア)に相当し、そのエリア内には、各種コマンドを入力するためのボタン群240(アイコン群)やバーチャルトラックパッド242が表示されている。ボタン群240には、超音波診断のモードを指定するためのモード指定ボタン、超音波画像のフリーズを指示するためのフリーズボタン、超音波画像の保存を指示するためのストアボタン、ゲイン調整のためのボタン、コメントを入力するためのコメント入力ボタン、等が含まれる。ユーザーによって各ボタンへのタッチ操作が行われると、検知部132(タッチセンサ)によってそのタッチ操作が検知され、そのボタンに対応する処理が実行される。バーチャルトラックパッド242は、トラックパッド(タッチパッド)に対する操作と同様の操作を画面上で実現するためのものである。このバーチャルトラックパッド242に対してドラッグ操作を行うことにより、表示エリア78A内に表示されているポインタ246を、ドラッグ方向に対してドラッグ量に応じた距離だけ移動させることができる。もちろん、ポインタ246に対して直接ドラッグ操作を行うことにより、ポインタ246を直接移動させることもできる。バーチャルトラックパッド242の周辺には、ボタン群244が表示されている。ボタン群244には、「Enter」キーに相当するボタンや、「Cancel」キーに相当するボタン、「Select」キーに相当するボタン、等が含まれる。
【0060】
本実施形態では、表示エリア78Bに表示されているボタン群240との干渉を回避するために、バーチャルキーボード212は、表示エリア78B内には表示されず、表示エリア78A内に表示される。
【0061】
例えば、コメント入力欄がユーザーによって指定(例えばタッチ操作)されると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212をタッチパネルモニタ78の表示エリア78A内に表示させる。これにより、バーチャルキーボード212を利用したコメントの入力が可能となる。また、非表示ボタン214がバーチャルキーボード212に設けられており、その非表示ボタン214がユーザーによってタッチ操作されると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を非表示にする。または、バーチャルキーボード212以外の領域に対してタッチ操作が行われると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を非表示にしてもよい。
【0062】
デフォルトの状態では、一例として、バーチャルキーボード212は、表示エリア78A内の下部エリアに表示される。バーチャルキーボード212の縦幅(高さ方向の幅)は、例えば、表示エリア78Aの縦幅の半分未満となっている。バーチャルキーボード212には、バーチャルキーボード212を上下方向(高さ方向)にシフトさせるための上下シフトボタン216が設けられている。バーチャルキーボード212が下部エリア内に表示されている状態で、ユーザーによって上下シフトボタン216がタッチ操作されると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を上方向に移動させて上部エリア内に表示させる。もちろん、デフォルトの状態において、バーチャルキーボード212が上部エリアに表示されてもよい。
【0063】
バーチャルキーボード212は超音波画像232よりも前面に表示されており、超音波画像232上に部分的に重ねて表示されている。バーチャルキーボード212の透明度は、例えばユーザーの指示によって0〜100%の間に設定される。例えば、表示制御部130は、透明度を0〜100%の間で設定するための図示しない透明度設定用バーをタッチパネルモニタ78に表示させる。ユーザーがその透明度設定用バーに対するタッチ操作によって透明度を指定すると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212の透明度を、ユーザーによって指定された値に設定する。図10に示す例では、バーチャルキーボード212の透明度は「0%」に設定されており、バーチャルキーボード212は完全に不透明な状態で表示されている。この状態においては、ユーザーは、バーチャルキーボード212を通して、超音波画像232の重畳部分を観察することができない。
【0064】
また、バーチャルキーボード212への入力が有効となる。例えば、ユーザーによってバーチャルキーボード212へのタッチ操作が行われると、検知部132(タッチセンサ)によってそのタッチ操作が検知され、文字や命令が入力される。
【0065】
図11には、半透明の状態で表示されたバーチャルキーボード212が示されている。例えば、透明度が0〜100%の間の値(0,100%以外の値)に設定されると、バーチャルキーボード212は、その透明度に応じて半透明の状態で表示される。この状態においては、ユーザーは、バーチャルキーボード212を通して、超音波画像232の重畳部分を観察することが可能となる。図11中の破線の矢印232aが示す部分が、超音波画像232とバーチャルキーボード212とが重畳している部分である。その部分においては、超音波画像232が透けて見えており、ユーザーはその部分を観察することができる。また、バーチャルキーボード212への入力が有効となる。例えば、ユーザーによってバーチャルキーボード212へのタッチ操作が行われると、検知部132(タッチセンサ)によってそのタッチ操作が検知され、文字や命令が入力される。これにより、超音波画像232を適切に観察しつつ、バーチャルキーボード212によって文字列の入力が可能となる。
【0066】
図12及び図13には、上部エリア内に表示された状態のバーチャルキーボード212が示されている。図12に示す例では、バーチャルキーボード212の透明度は「0%」に設定されており、バーチャルキーボード212は完全に不透明な状態で表示されている。この状態においては、ユーザーは、バーチャルキーボード212を通して、超音波画像232の重畳部分を観察することができない。
【0067】
図13に示す例では、バーチャルキーボード212は、半透明の状態で表示されている。この状態においては、ユーザーは、バーチャルキーボード212を通して、超音波画像232の重畳部分を観察することが可能となる。図13中の破線の矢印232bが示す部分が、超音波画像232とバーチャルキーボード212とが重畳している部分である。その部分においては、超音波画像232が透けて見えており、ユーザーはその部分を観察することができる。これにより、超音波画像232を適切に観察しながら、バーチャルキーボード212によって文字列の入力が可能となる。
【0068】
バーチャルキーボード212が上部エリア内に表示されている状態で、ユーザーによって上下シフトボタン216がタッチ操作されると、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を下方向に移動させて下部エリア内に表示させる。
【0069】
例えば、バーチャルキーボード212を上方向又は下方向にシフトさせることにより、超音波画像232における注目部分へのバーチャルキーボード212の重畳を回避することができる。これにより、バーチャルキーボード212を通してではなく、直接、注目部分を観察することができる。本実施形態では、上述したように、バーチャルキーボード212の縦幅は、表示エリア78Aの縦幅の半分未満となっている。それ故、上方向にシフトした状態のバーチャルキーボード212と下方向にシフトした状態のバーチャルキーボード212とでは、重畳している部分がなく、いずれかの方向にバーチャルキーボード212をシフトさせることにより、バーチャルキーボード212を介してではなく、直接、注目部分を観察することが可能となる。
【0070】
また、表示制御部130は、上部エリアと下部エリアとの間の中間エリア内にバーチャルキーボード212を表示させてもよいし、上下方向(高さ方向)の任意の位置にバーチャルキーボード212を表示させてもよい。
【0071】
上記のように、本実施形態では、バーチャルキーボード212の表示は表示エリア78A内に制限され、その移動も上下方向に制限されている。もちろん、バーチャルキーボード212を左右方向や斜めの方向に移動させてもよい。例えば、表示エリア78Aの大きさが十分に大きい場合には、バーチャルキーボード212を任意の方向に移動できるようにしてもよい。なお、バーチャルキーボード212の縮小表示又は拡大表示が行われてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態では、透明表示可能なバーチャルキーボード212が表示される。バーチャルキーボード212は透明性を有するため、超音波画像232上にバーチャルキーボード212が重畳して表示された場合であっても、バーチャルキーボード212を通して超音波画像232を観察することが可能となる。これにより、有限な表示エリア78A内において、超音波画像232とバーチャルキーボード212との重畳表示を回避するために、超音波画像232やバーチャルキーボード212を縮小表示せずに済み、それらを大きく表示することが可能となる。それ故、超音波画像232を大きく表示した状態で適切に観察することが可能となり、大きく表示されたバーチャルキーボード212を用いて入力操作を適切に行うことが可能となる。また、バーチャルキーボード212に含まれる要素を選択して表示せずに済む。例えば、フルキーボードに相当するバーチャルキーボード212を利用することが可能となるため、便利である。
【0073】
(第3表示例)
図14を参照して、バーチャルキーボードの第3表示例について説明する。第3表示例では、検知部132(タッチセンサ)は、バーチャルキーボードの透明度に応じて、バーチャルキーボードへの入力を無効な入力として検知せず、バーチャルキーボードの背景画像に対する入力を有効な入力として検知する。
【0074】
ここでは、図8に示されているレイヤー構造200が採用されているものとする。つまり、バーチャルキーボード212を含むレイヤー210の背面に、ボタン群222を含むレイヤー220が配置されているものとする。ボタン群222の表示位置とバーチャルキーボード212の表示位置とが重なっており、レイヤー210,220を重ねて表示すると、ボタン群222上にバーチャルキーボード212が重畳して表示される。
【0075】
図14(a)には、透明度が「0%」の状態のバーチャルキーボード212が示されている。このバーチャルキーボード212は、表示エリア78Aの下部エリア内に表示されている。なお、説明の便宜上、超音波画像が表示されていないが、図10に示すように、表示エリア78A内には超音波画像が表示される。透明度が「0%」であるため、バーチャルキーボード212は完全に不透明な状態で表示される。そのため、バーチャルキーボード212の背面に存在するボタン群222を視認することができない。この状態では、検知部132(タッチセンサ)は、バーチャルキーボード212へのタッチ操作を、バーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知する。これにより、バーチャルキーボード212を利用した入力が行われる。
【0076】
バーチャルキーボード212の透明度を上げていくと、図14(b)に示すように、バーチャルキーボード212を通して背景のボタン群222を視認することが可能となる。バーチャルキーボード212の透明度が、「0%」と「100%」との間の値(0%,100%以外の値)に設定されると、バーチャルキーボード212とボタン群222とが共に表示され、バーチャルキーボード212を通してボタン群222を視認することができる。この状態では、検知部132は、バーチャルキーボード212へのタッチ操作を、バーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知する。これにより、バーチャルキーボード212を利用した入力が行われる。つまり、検知部132は、バーチャルキーボード212とボタン群222との重畳部分へのタッチ操作をボタン群222への有効な入力として検知せずに、前面に表示されているバーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知する。
【0077】
更にバーチャルキーボード212の透明度を上げていき、その透明度が「100%」(最大透明度)に設定されると、バーチャルキーボード212は完全に透明となる。この場合、図14(c)に示されているように、バーチャルキーボード212を視認することができず(図14(c)には説明の便宜上、破線でバーチャルキーボード212が示されている)、重畳部分には、背景画像としてのボタン群222のみが表示されるようになる。この場合において、検知部132は、バーチャルキーボード212が配置されている場所へのタッチ操作を、バーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知せず、背面のボタン群222への有効な入力として検知する。これにより、バーチャルキーボード212を含むレイヤー210がボタン群222を含むレイヤー220よりも前面に配置されている場合であっても、ボタン群222への入力が有効な入力として検知されることになる。
【0078】
図8に示されているように、バーチャルキーボード212を含むレイヤー210は、ボタン群222を含むレイヤー220よりも前面に配置されている。それ故、バーチャルキーボード212が完全に透明となり重畳部分にボタン群222のみが表示されている場合であっても、バーチャルキーボード212への入力を無効としない場合には、ボタン群222へのタッチ操作が、バーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知されてしまうことになる。バーチャルキーボード212を視認できずボタン群222を視認できる状態においては、ユーザーの意識を合理的に推測すると、ボタン群222(重畳部分)へのタッチ操作は、ボタン群222への入力操作を意味していると推測される。それにもかかわらず、ボタン群222へのタッチ操作が、バーチャルキーボード212への有効な入力として検知されてしまうと、キーボードへの誤入力が発生することになる。これに対して、第3表示例によると、ボタン群222へのタッチ操作は、バーチャルキーボード212へのキー入力としては検知されず、ボタン群222への有効な入力として検知されることになる。これにより、キーボードへの誤入力が防止され、ボタン群222への適切な入力が可能となる。
【0079】
なお、バーチャルキーボード212の透明度が「100%」以外の場合であっても、基準値以上となる場合に、検知部132は、タッチ操作を、バーチャルキーボード212への有効なキー入力として検知せずに、ボタン群222への有効な入力として検知してもよい。基準値は、例えば予め設定された値であり、ユーザーによって変更されてもよい。
【0080】
(第4表示例)
図15を参照して、バーチャルキーボードの第4表示例について説明する。第4表示例では、超音波画像に対して設定された関心点(例えば、ドプラ計測に用いられるサンプルボリューム)や関心領域(ROI:region of interest)の位置に応じて、バーチャルキーボードの表示位置が変更される。
【0081】
ユーザーによって関心領域の設定指示が与えられると、表示制御部130は、例えば図15(a)に示すように、超音波画像232上に関心領域234を表示させる。関心領域234の表示位置、形状及び大きさ等は、例えばユーザーによって指定される。図15(a)に示す例では、関心領域234は表示エリア78Aの上部エリア内に表示されている。この場合、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を表示エリア78Aの下部エリア内に表示させる。また、図15(b)に示すように、ユーザーの指示によって関心領域234が表示エリア78Aの下部エリア内に表示された場合、表示制御部130は、バーチャルキーボード212を表示エリア78Aの上部エリア内に表示させる。このように、関心領域234の上下方向(高さ方向)の位置に応じて、バーチャルキーボード212の上下方向の位置が選択される。超音波画像232上にサンプルボリュームが設定されている場合も、そのサンプルボリュームの上下方向の位置に応じて、バーチャルキーボード212の上下方向の位置が選択される。
【0082】
第4表示例によると、関心領域やサンプルボリュームの表示位置を自動的に避けてバーチャルキーボード212が表示される。これにより、関心領域やサンプルボリュームがユーザーにとって見やすくなり、それらの設定が容易となる。
【0083】
なお、表示制御部130は、関心領域やサンプルボリュームの表示位置を避けて、上部エリアと下部エリアとの間の中間エリア内にバーチャルキーボード212を表示させてもよいし、上下方向(高さ方向)の任意の位置にバーチャルキーボード212を表示させてもよい。
【0084】
(別の表示制御の構成例)
図16を参照して、タッチパネルモニタの表示制御に関する別の構成について説明する。この例においては、距離センサ134が用いられる。距離センサ134は、例えばBE装置14のタッチパネルモニタ78付近に設置されており、タッチパネルモニタ78とユーザー(検査者)との間の距離を検出する。その検出値は表示制御部130に出力される。距離センサ134として、光学的センサ、超音波センサ、磁気センサ等を用いることが可能である。
【0085】
表示制御部130は、距離センサ134の検出値(タッチパネルモニタ78とユーザーとの間の距離)に応じて、バーチャルキーボード212の透明度を変更する。例えば、タッチパネルモニタ78とユーザーとの距離が短くなるほど、表示制御部130は、バーチャルキーボード212の透明度を低下させる。これにより、バーチャルキーボード212の視認性が向上する。一方、タッチパネルモニタ78とユーザーとの距離が長くなるほど、表示制御部130は、バーチャルキーボード212の透明度を増大させる。これにより、超音波画像の視認性が向上する。つまり、ユーザーがタッチパネルモニタ78に近づくほど、バーチャルキーボード212の透明度が低下し、ユーザーがタッチパネルモニタ78から離れるほど、バーチャルキーボード212の透明度が増大する。例えば、表示制御部130は、タッチパネルモニタ78とユーザーとの距離に応じて、バーチャルキーボード212の透明度を段階的に変更する(例えば透明度を複数の段階に分けて切り替える)。または、表示制御部130は、タッチパネルモニタ78とユーザーとの距離が所定値以下になった場合、バーチャルキーボード212の透明度を第1透明度に設定し、その距離が所定値より大きくなった場合、透明度を第1透明度よりも大きい第2透明度に設定してもよい。このように、距離に応じて2つの透明度を切り替えてもよいし、3つ以上の透明度を段階的に切り替えてもよい。
【0086】
以上のように、タッチパネルモニタ78とユーザーとの間の距離に応じてバーチャルキーボード212の透明度を変更することにより、ユーザー(検査者)の状況に応じた表示制御が可能となる。つまり、タッチパネルモニタ78とユーザーとの間の距離によって、ユーザーの状況が推知され、その状況に応じた表示制御が可能となる。
【0087】
更に別の例として、バッテリ不足等のエラーメッセージが表示される場合、表示制御部130は、バーチャルキーボード212よりもエラーメッセージを優先的に表示させてもよい。この場合、バーチャルキーボード212がタッチパネルモニタ78に表示されている場合であっても、表示制御部130は、バーチャルキーボード212よりも前面にエラーメッセージを表示させる。これにより、バーチャルキーボード212とエラーメッセージとの表示位置が重なっている場合には、バーチャルキーボード212上にエラーメッセージが重畳して表示されることになる。また、エラーメッセージを非表示にするための操作が行われない限り、検知部132は、バーチャルキーボード212へのタッチ操作を有効なキー入力として検知しなくてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 超音波診断システム、12 FE装置、14 BE装置、78 タッチパネルモニタ、130 表示制御部、132 検知部、134 距離センサ、212 バーチャルキーボード、222 ボタン群、232 超音波画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16