【実施例】
【0027】
実施例1 単一細胞の細胞溶解活性を査定するためのハイスループットアッセイ法の開発
研究は、ピコリットルのマイクロウェル(各マイクロアレイおよそ2×10
5個、各ウェル
およそ30μm直径)に単一細胞をロードすることにより、多数の初代細胞を機能的に特徴
付けるためのハイスループットアッセイ法を以前に記載した(Bradshaw EM et al. (2008
) Concurrentdetection of secreted products from human lymphocytes by microengra
ving: cytokinesand antigen-reactive antibodies. Clin. Immunol. 129(1), 10;Love
JC et al.(2006) A microengraving method for rapid selection of single cells pr
oducingantigen-specific antibodies. Nat. Biotech. 24(6), 703)。ロードされたマ
イクロウェルは、適切な試薬(例えば、ポリリジンスライドへコーティングされた抗IL-2
捕獲抗体)により予め機能付与されたスライドガラスと物理的に接触するよう保持され、
分泌されたサイトカインを捕獲するために2時間インキュベートされる。次いで、それら
を分泌した細胞へマッピングされ得るスライド上の蛍光スポットを明らかにするために、
スライドは処理され、適切な検出抗体によりタグ付けされる。続いて、細胞を、クローン
拡大のため、ロボットマイクロマニピュレーターを用いて取得し得る。
【0028】
本発明は、細胞間の相互作用を研究するためのマイクロウェルのアレイの適用を提供す
る。具体的には、本発明は、活性化マーカー/分泌された可溶性メディエーターを同時に
プロファイリングしながら、単一のCTLによる感染標的細胞の死滅をモニタリングする能
力を提供する。このアッセイ法システムの別の利点は、結果が得られる(またはアッセイ
法が完了する)までのスピードである。例えば、24時間未満、12時間未満、または10時間
未満で、結果が得られる(またはアッセイ法が完了する)。例えば、4時間未満で、結果
が得られる(またはアッセイ法が完了する)。
【0029】
マイクロアレイスタンプの製作
マイクロウェルアレイは、フォトリソグラフィ(photolithography)およびレプリカモ
ールディング(replicamolding)を使用して、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で製作
される。ウェルの深さおよびサイズは、好ましくは、100μm未満、例えば、50μm未満で
ある。ウェルの深さおよびサイズは、熟練者により指示される通り、およそ30μmに設定
される。O
2プラズマ処理が、マイクロアレイを滅菌し、かつ親水性にするために使用され
る。プラズマ処理されたアレイは、その後の使用のため、親水性の特徴を保つために、PB
S-BSAに浸漬される。
【0030】
細胞ストック
HIV感染CD4細胞および自己CD8細胞の両方が、下記の方法において使用される。下記の
方法において用いられるものには、進行者、LTNP、およびHIV陰性個体由来のPBMCも含ま
れる。さらに、HLA-B27拘束性のHIVgagペプチド(KK10)を特異的に認識する単離された
CTLクローンが、アッセイ法の妥当性を確立し、実験条件を改良するための陽性対照とし
て役立つ。
【0031】
アッセイ法開発
標的特異的CTLの単離のための頑強なプロトコルを設計するため、前述のKK10特異的ク
ローン(エフェクター)がエフェクターとして使用され、HLA B27を発現するEBVにより形
質転換されたB細胞が標的として使用される。アッセイ法の一般的な概要を例示する模式
図は、
図1に示される。ペプチドをロードされたB細胞(標的)は、細胞内のエステラーゼ
およびリパーゼのための非特異的な蛍光性基質カルセインAM(Invitrogen, Carlsabad, C
A)を用いて染色され、細胞完全性のマーカーとして役立つ。
図2Aに示される通り、死滅
アッセイ法(4時間)の期間中、エフェクター細胞の非存在下で、完全な無傷の細胞は蛍
光性のままである。
【0032】
長時間のインキュベーションによる消光/フルオロフォア分解による標的蛍光の減少の
可能性もあるため、標的はSytox Red(Invitrogen, Carlsabad, CA)を用いて標識される
。膜不透過性色素のSytoxファミリーは、核酸にインターカレートする時、蛍光強度の高
い増加(>500倍)を示し、従って、膜が傷付いた溶解された細胞についての特異的なマ
ーカーとして使用され得る。Sytox色素およびカルセイン色素は、直交的に細胞を標識す
るため、これらは、蛍光顕微鏡の独立したチャンネルにおける蛍光の増減を追跡すること
により、標的溶解の動力学をモニタリングするために同時に使用され得る。
【0033】
エフェクターは、蛍光性抗CD8抗体(APC/Alexa647/Pacific Blue)により標識される。
アッセイ条件(4時間、37℃)下で最も再現性のあるシグナルおよび最小の消光/分解を
示す色素が使用されると考えられる。α-CD8-APCにより標識されたエフェクターは、
図2B
に示される。
【0034】
以前の報告(BradshawEM et al. (2008) Concurrent detection of secreted product
s from humanlymphocytes by microengraving: cytokines and antigen-reactive antib
odies. Clin.Immunol. 129(1), 10;Love JC et al. (2006) A microengraving method
for rapidselection of single cells producing antigen-specific antibodies. Nat.
Biotech. 24(6),703)および予備実験(
図2Aおよび2B)の両方が、マイクロウェルに封
入された場合に、細胞がアポトーシスを受けないことを確認した。明確な比率の標的およ
びエフェクターをマイクロウェルアレイにロードするための最適の手段を、次に決定した
。二つの異なるアプローチ、ローディング前に培地中で標的およびエフェクターを予備混
合するか、またはエフェクターおよび標的を連続的にロードするかを評価した。まずエフ
ェクターをロードし、続いて標的をロードする連続的なローディングが、マイクロウェル
中のエフェクター:標的比の操作のより良好な制御を与えたため、これを標準的なアプロ
ーチとして採用した。アッセイ法の実現可能性を探求するため、ロードされていない標的
(ペプチドが結合してない標的、陰性対照)およびKK10がロードされた標的(陽性対照)
を、エフェクターと共にインキュベートした。エフェクター上のT細胞受容体(TCR)は、
標的上のpMHCのみを認識することができるため、ペプチドの非存在下では溶解が観察され
なかった(
図2C)。標的にKK10ペプチドを予めロードし、エフェクターと共にインキュベ
ートした場合には、緑色蛍光の喪失により証明される通り、標的の溶解が観察された(図
2D)。
図2に示されるデータは、単一のマイクロウェルからの代表的なデータである。単
一のエフェクターと共にインキュベートされた単一の標的を有していたマイクロウェルの
頻度を推定し、標的を特異的に溶解したエフェクターのサブセットの頻度を決定するため
には、作製された蛍光画像(二つの異なるチャンネル)および位相差画像(透過光、第3
のチャンネル)の自動分析が不可欠である。上記の通りの標的およびエフェクタークロー
ンを使用した対照を含む実験について、少数の細胞(およそ10
2個)の手動の視察は、ア
ッセイ法の妥当性を確認するのに十分であったが、ルーチンのスクリーニングのためには
、得られたデータスタックを抽出し分析するためのアルゴリズムが必要であると考えられ
る。
【0035】
低頻度の細胞の同定
CTLのルーチンのスクリーニングのためのアッセイ法の実行の成功のために重要な必要
条件は、低頻度の陽性を検出し単離する能力である。この目標のため、HLA-B27 KK10に対
するエフェクター(カルセインブルーにより標識)を、異なる比率(1/5,000〜1/25,000
)で、無関係のエピトープに対するエフェクター(未標識)と予め混合し、α-CD8-APCに
より細胞の混合物を標識し、マイクロウェルアレイにおいて、KK10がロードされた標的(
カルセイングリーンにより標識)と共にそれらをインキュベートする。低頻度エフェクタ
ー陽性は、KK10特異的エフェクターによる標的の緑色蛍光の喪失によりマイクロウェルに
おいて同定され、これらをマッピングする能力は、顕微鏡の青色チャンネルで得られた蛍
光画像によってKK10特異的エフェクターの位置を同定することにより、独立に確証され得
る。
【0036】
抗ウイルスCTL活性の表現型の解明
マイクロウェルアレイプラットフォームが、効果的なCTL媒介型死滅の生物学を精査す
るために採用される。HIV感染標的細胞(T)およびエフェクター細胞(E)を、2種の異な
る蛍光性レポーター色素により標識し、様々なE:T比で混合し、次いで、単一のエフェク
ターが各ウェル中に平均して沈着するよう、マイクロウェルのアレイにロードする。細胞
を4時間同時培養し、次いで、経時的な標的細胞蛍光の喪失を検出することにより細胞溶
解を測定する。最終的に、死滅を媒介した細胞を同定し、これらの細胞を、自動マイクロ
マニピュレーターを使用して取得し、RNA抽出緩衝液に直接移す。平行して、中間キラー
および非キラーも比較のため取得する。実験のサブセットにおいて、キラーおよび非キラ
ーを選出し、クローンレベルでこれらの細胞に関する綿密な知識を獲得するため、単一細
胞クローニングのために使用する。このアッセイ法は、より詳細なCTLの特徴付けを可能
にするのみならず、防御的CD8+T細胞応答についてのエクスビボ相関現象を明瞭に理解す
るため、操作されていないT細胞に対するこれらのアッセイ法の実行も可能にする。これ
らのアッセイ法は、コントローラーと進行者との間、または「防御的」HLA対立遺伝子を
有する患者と、「非防御的」HLA対立遺伝子を有する患者との間の、エフェクターCTLの表
現型の差を解明することを可能にする様々な実験的改変を受け入れる。
【0037】
単一細胞の細胞溶解能を査定するためのマイクロウェルに基づくアッセイ法を確立する
本発明は、高い再現性での、異なる環境における細胞媒介型死滅の同定も提供する。生
物学的設計、試薬、動力学、細胞調製、標的細胞の選択、およびデータ分析を含む、上記
マイクロウェルプレートに関連した多数の詳細は、これから定義される。アッセイ法は、
細胞溶解性T細胞クローンをエフェクターとして使用し、ペプチドによりパルス処理され
たB細胞を標的として使用して、定義される。予備実験において、HLAB27を発現するB細
胞を、HIVgagペプチド(KK10)によりパルス処理し、次いで、カルセインAMにより標識
した。標的細胞を、B27-KK10エピトープを認識するCTLクローンと同時培養し(E:T=1:1
)、4時間のインキュベーションの後、標的細胞からの蛍光の喪失により溶解を検出した
(
図4)。細胞溶解活性の視覚化を改善するためには、エフェクター細胞および標的細胞
の両方を強調し、1ウェル当たりのE:T比を調整するため、一連の色素を使用して、異なる
標識アプローチが評価される。別の予備実験において、エフェクター細胞を、抗CD8-APC
により標識し、B細胞をカルセインAMにより標識した。
図5は、4時間の同時培養の間の標
的細胞の進行的な喪失を例示する。エフェクター細胞(赤色)は、標的細胞(緑色)から
明瞭に区別される。
【0038】
関心対象の細胞を同定するためのソフトウェアアルゴリズムを開発する
開発されたプロトコルの改良は、実験1回当たり10
5〜10
6個の細胞のルーチンのスクリ
ーニングを可能にする。一つのアレイから作製されたデータは、24
*72
*3の画像(およそ5
Gbのデータ)を含むと考えられる。アッセイ法の最適化は、少数の細胞(10
2〜10
3個)の
手動の視察により達成されるが、この方法によるルーチンのスクリーニングには、得られ
たデータスタックを抽出し分析するためのアルゴリズムが好ましい。ソフトウェアアプロ
ーチはバイオインフォマティクスを解決するために開発される。各アレイにより蓄積する
と考えられる多量のデータを処理し保存するための画像分析のため、カスタムパッケージ
が開発される。ソフトウェアは、死滅が起こったウェルを認識し、マイクロマニピュレー
ターのためにそれらのウェルを位置付ける。
【0039】
実施例2 標的細胞を溶解する能力によるHIV感染CD4
+T細胞に特異的なCTLの同定および単
離、ならびにこれらのCTLの分泌されたメディエーターの検出
一旦、低頻度の細胞の同定のための最適条件が確立されると、HIV感染自己CD4+T細胞を
溶解することができるCTLを同定するため、マイクロウェルアッセイ法を使用する。最初
の戦略は、優先的な死滅を特異的に可視化するため、GFP発現組換えウイルスを感染させ
たCD4
+T細胞を使用する。GFP蛍光によるフローサイトメトリー分取も、均一のウイルス感
染CD4+標的集団を確実にすると考えられる。最近の研究は、GFP+NL4-3由来のHIVバリアン
トを、感染性、複製能、およびGFPシグナル強度について評価し、有望な結果を有した。C
D4 T細胞は、これらのGFP発現株を感染させた場合、別個の緑色蛍光シグナルを示す(
図3
)。細胞分取による感染CD4細胞の精製は、均一の標的集団を保証する。
【0040】
標的特異的溶解性CTLの分泌されたメディエーターを検出する
マイクロエングレービング(Microengraving)技術は、分泌されたサイトカインの多重
検出のため開発された(Bradshaw EM et al. (2008) Concurrent detection of secreted
productsfrom human lymphocytes by microengraving: cytokines and antigen-reacti
ve antibodies.Clin. Immunol. 129(1), 10)。
図1に例示される通り、サイトカインに
対する捕獲抗体により予め機能付与されたスライドガラスを、マイクロウェルアレイに接
して置く。インキュベーションの後、スライドを、洗浄し、フルオロフォアとコンジュゲ
ートした検出抗体により検出する。マイクロウェル内に含有されている細胞の同定および
選出を可能にするため、マイクロウェルアレイ中の個々のウェルにスポットをマッピング
する。CTL媒介型死滅に関しては、TNF-α、IFN-γ、ならびに溶解の可溶性メディエータ
ーであるグランザイムB(GzB)およびパーフォリンの分泌が、検出されると考えられる。
GzBおよびパーフォリンの分泌は、免疫シナプス(IS)に向かって偏向しており(Faroudi
et al.(2003) Lytic versus stimulatory synapse in cytotoxic T lymphocyte/target
cellinteraction: manifestation of a dual activation threshold. Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA100, 14145)、分泌された量が典型的に小さいため、これらの検出は困難で
ある可能性がある。分泌された因子の量が低すぎるため、アッセイ法を使用した検出が不
可能である場合、CTL活性化は、細胞内カルシウムレベルを追跡することによりモニタリ
ングされる。pMHC複合体によるTCR誘発は、T細胞におけるサイトゾルカルシウムイオン濃
度の用量依存性の増加をもたらす(Kim H et al. (2006) Live lymphocyte arrays for b
iosensing Adv.Funct. Mater. 16, 1313)。Fura 2AM(Invitrogen)などの膜透過性カ
ルシウム感受性蛍光色素は、細胞内カルシウムレベルの、従って、T細胞活性化の便利な
レポーターとして機能することができる。これらのオプションがいずれも不可能であるよ
うな場合には、エフェクター細胞を活性化マーカーCD69について標識する。
【0041】
溶解能、分泌された因子、および活性化状態によるCTLの特徴付けの後は、次いで、ク
ローン株を確立し、遺伝学的情報を提供するため、マイクロマニピュレーターを使用して
、細胞を取得する。サイトカインプリンティングの間の細胞損失が問題となる場合には、
単なる重力ではなく、フィブロネクチン/抗CD44(B/T細胞表面マーカー)を使用して、
マイクロウェルアレイに細胞を捕獲し保持するための別の手段が探究されると考えられる
。
【0042】
実施例3 可溶性メディエーターを分泌する能力および溶解をもたらす能力により測定さ
れる、疾患進行者と長期非進行者(LTNP)との間のCTLの差
本研究は、標的を溶解する能力およびサイトカインを分泌する能力の両方により、HIV
感染CD4+T細胞に対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を定量化し比較することを目標
とする。このアプローチは、マイクロアレイ中の多数の単一細胞をプロファイリングする
ための最近開発されたハイスループットスクリーニング方法論に基づいており、標的細胞
とエフェクター細胞との対の間の相互作用を分析するために適用される。
【0043】
CTLの差を比較および定量する
本発明は、進行者、LTNP、HAART中の感染個体、および慢性感染個体の大きな集団にお
ける個々の標的特異的CTLの差を定量化する能力を提供する。例えば、LTNPおよび進行者
における、HIV特異的CTLのパーフォリンの発現および増殖の有意な差が示されているが、
その分析はCTLの集団に対して行われており、これらの細胞の溶解特性に関する直接の情
報は入手可能でなかった(Migueies SA et al. (2002) HIV-specific CD8+ T cell proli
feration iscoupled to perform expression and is maintained in non-progressors N
at. Immun.3(11), 1061)。生じる重要な疑問は、TCRライゲーションによる活性化を受
けるが、分泌応答(サイトカインまたは細胞傷害剤のいずれか)が損なわれているCTLの
サブセットが存在するかどうかという点である。ハイスループットアッセイ法は、CTLの
これらおよびその他のサブセットを同定し、クローン株のその後の確立および遺伝子操作
のための細胞の回復を補助することができる。
【0044】
これは、HIV感染細胞を溶解することができるCTLを、単一細胞レベルで、同定し取得す
るための頑強な定量的アッセイ法をもたらす。このアプローチは、死滅を定量化するのみ
ならず、顕微操作によるその後の回復により、効果的な抗ウイルスCTL機能の免疫学的相
関現象および遺伝学的相関現象の詳細な洞察も可能にすると考えられる。この技術は、CT
L生物学の特徴の多くを包括的に解明し、急性感染患者、HAART処置中の患者、エリートコ
ントローラー、および慢性感染患者の大きな患者集団を迅速に評価して、これらの群にお
けるCTLの差を査定することを可能にする。さらに、このアッセイ法は、細胞溶解性細胞
(即ち、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ等)を含む様々な細胞サブセットによる
死滅を研究するために容易に拡張される。
【0045】
実施例4 HIV感染者における抗体多様性の評価
多くの主要な個々のリンパ球の複数の特徴を平行して査定するための、微細加工された
システムを使用する新方式の一式が、本明細書に提示される。これらの技術は、単一細胞
分解能を持って、抗原反応性抗体を分泌する細胞の同定(Love, J.C., Ronan, J.L., Gro
tenbreg, G.M.,van der Veen, A.G. and Ploegh, H.L. A microengraving method for r
apid selectionof single cells producing antigen-specific antibodies. Nat Biotec
hnol 24,703-707 (2006);Ronan, J.L., Story, C.M., Papa, E. and Love, J.C. Optim
ization of thesurfaces used to capture antibodies from single hybridomas reduce
s the timerequired for microengraving. J. Immunol. Methods (in press);Story, C
.M., Papa, E.,Hu, C.-C.A., Ronan, J.L., Herlihy, K., Ploegh, H.L. and Love, J.C
. Profilingantibody responses by multiparametric analysis of single B cells. Pr
oc. Natl. Acad.Sci. 105, 17902-17907 (2008))、分泌されたサイトカインのプロファ
イリング(Bradshaw,E.M., Kent, S.C, Tripuraneni, V., Orban, T., Ploegh, H. L.,
Hafler, D. A.and Love, J.C. Concurrent detection of secreted products from huma
n lymphocytesby microengraving: antigen-reactive antibodies and cytokines. Clin
Immunol129, 10-18 (2008).)、mRNA転写物の増幅、および細胞傷害機能の査定を可能
にする(
図6)。これらの技術のために使用される共有の要素は、ポリマー性チップの表
面に成形されたナノリットル未満のマイクロウェルの密なアレイである(各チップおよそ
10
5〜10
6ウェル)。細胞は、各ウェルおよそ1細胞(例えば、1、2、3、4、または5細胞/
ウェル、好ましくは、各ウェル1細胞)の密度で、懸濁液から沈着させられる。細胞のア
レイは、分泌された分子(抗体またはサイトカイン)のタンパク質マイクロアレイをプリ
ントするためのスタンプとしても、定義された単一細胞アッセイ法(遺伝子発現、細胞傷
害性、または増殖)のための1セットの容器としても機能することができる。遺伝子発現
の査定を除き、細胞はアッセイ後に生存可能なままであり:表面に発現されたマーカーは
、免疫表現型を判定するために画像化され得、関心対象の細胞は、クローン拡大または遺
伝子分析のため顕微操作により取得される。これらのアッセイ法の連続的な適用は、機能
、免疫表現型、および遺伝子型を、単一細胞の同一のセットと相関させる。総合すると、
これらの測定は、機能(ELISA、ELISpot、増殖)、表現型(FACS、免疫蛍光)、および遺
伝子型(RT-PCR)について、集団に基づくアッセイ法により得られるものに類似したデー
タを与えるが、単一細胞分解能を有する。
【0046】
個体におけるbNAb産生B細胞間のクローン多様性
マイクロエングレービングは、gp120反応性の循環B細胞の頻度、それらの抗体のアイソタイプの分布、およびそれらの中和能を定量化するために、単一細胞由来の抗体のマイクロアレイをプリントするために開発された技術である。スクリーニングアッセイ法は、まず、スライドガラスの表面上に、gp120のc末端(D73-324)に特異的な抗体を固定化し、次いで、組換えgp120(Progenics)を沈着させることにより、gp120反応性の抗体を強調するよう構成される。血清中にbNAbの高い力価を有するHIV+個体由来のB細胞を、抗体産生を誘導するためにCD40L/抗BCRにより刺激する。細胞をマイクロウェルのアレイ中に沈着させ、gp120によりコーティングされたスライド上に抗体のマイクロアレイの二つの複写物をプリントするために使用する。第2のアレイをプリントする前に、細胞由来の抗体を捕獲するために使用される
基材に、可溶性のCD4またはb12(既知の中和能を有するモノクローナル抗体)のいずれかを添加する。第1のマイクロアレイ上のgp120には結合するが、第2のアレイ上のCD4によりブロッキングされたgp120には結合し得ない抗体は、HIVを中和する可能性が高い(
図7)。存在するアイソタイプの多様性をスコア化するため、マイクロアレイを、蛍光性のアイソタイプ特異的な二次抗体の混合物(IgG1、IgG3、IgG4、IgA、IgM)により標識する。マイクロアレイ上の関心対象の抗体を、対応するマイクロウェルにマッピングし、自動顕微操作(AvisoCellCelector)により細胞を取得する。重鎖および軽鎖をコードする遺伝子の可変領域を、単一細胞RT-PCR(Wang, X. W. andStollar,B.D.Human immunoglobulin variable region gene analysis by single cellRT-PCR. J ImmunolMethods 244, 217-225 (2000))により増幅しかつ配列決定する。配列の比較によって、優性生殖系列遺伝子および体細胞変異を通して、密接に関連するクローンが関連づけられる。抗体を組換え発現させ、それらの中和能を標準的なアッセイ法(MonogramBiosciences)により確証する。
【0047】
多様な一次単離物に結合するbNAbの特徴
NAbを産生するよう設計されたワクチンに関する一つの難題は、免疫原がウイルスの他
のバリアントと広く交差反応する抗体を誘発しなければならないという点である。多様な
一次単離物を中和する抗体の特異性を理解することは、新たな免疫原の設計を導き、HIV
の研究に関する現在の優先事項のうちの一つである(Fauci, A. S., Johnston, M.I., Di
effenbach,C.W., Burton, D. R., Hammer, S.M., Hoxie, J.A., Martin, M., Overbaugh
, J., Watkins,D.I., Mahmoud, A. and Greene, W.C. Perspective - HIV vaccine rese
arch: The wayforward. Science 321, 530-532 (2008))。マイクロエングレービングに
より個々のB細胞から分泌された抗体を捕獲し、次いで、各々、別個の親油性蛍光色素に
より染色された、HIVの異なる単離物により、アレイをパニングするため、スクリーニン
グアッセイ法を再構成する(
図8)。関心対象の細胞を取得し、それらの抗体を組換え発
現させ、エピトープ特異性および中和能について特徴付ける。
【0048】
循環中の所望のB細胞の頻度は低い可能性がある。現在の検出限界(0.01〜0.001%)は
、FACSについて典型的なもの(0.1%)を越えているが(Bradshaw,E.M., Kent, S. C.,
Tripuraneni,V., Orban, T., Ploegh, H.L., Hafler, D.A. and Love, J.C. Concurrent
detectionof secreted products from human lymphocytes by microengraving: antige
n-reactiveantibodies and cytokines. Clin Immunol 129, 10-18 (2008))、gp120によ
りコーティングされた磁性ビーズを使用して、gp120反応性のB細胞を濃縮することが必要
である可能性がある。スクリーニングアッセイ法の二つの代替的なアプローチには、(i
)三量体特異的な抗体を同定するための三量体gp120を発現する細胞株またはウイルス様
粒子の使用、および(ii)2G12などの他のbNAbを用いた競合アッセイ法が含まれる。本明
細書に提唱されたアプローチは、設計された免疫原が、多様な一次単離物に結合する抗体
を産生する能力を、循環B細胞から直接、モニタリングするための単純なアッセイ法のセ
ットを可能にする。
【0049】
エフェクター細胞の応答を査定するための最も一般的なアッセイ法は、ELISpotによる
インターフェロン-γ(IFN-γ)の検出であるが、この単一パラメーターの測定は、ウイ
ルス血症の制御と相関しない(Walker, B.D. and Burton, D.R. Toward an AIDS vaccine
. Science 320,760-764 (2008))。その他の機能的応答、例えば、増殖、広いサイトカ
インプロファイル、粘膜への動員のためのマーカー、および細胞溶解活性の測定も、必要
とされる(Fauci,A.S., Johnston, M.I., Dieffenbach, C. W., Burton, D.R., Hammer,
S.M.,Hoxie, J.A., Martin, M., Overbaugh, J., Watkins, D.I., Mahmoud, A. and Gr
eene, W.C.Perspective - HIV vaccine research: The way forward. Science 321, 530
-532 (2008))。マイクロツールを使用して、HIV感染細胞に応答するエフェクター細胞(
CD8
+細胞傷害性T細胞(CTL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、γδT細胞)の
異なるサブセットについて、マルチパラメトリックな機能プロファイルを解明する。PBMC
を、FACSにより、CTL(CD8
+)、NK細胞(CD16
+)、NKT細胞(CD1d
+、Vα24
+)、および
γδT細胞(Vγ9
+、Vδ2
+)へと分取する。各エフェクターサブセットを、マイクロウェ
ルへ、標的細胞と、つまり重複するHIV由来ペプチドのプールをロードされ、カルセインA
Mにより染色された、HLA適合性のEBVにより形質転換されたB細胞と同時にロードする。同
時にロードされたアレイを、二重ロードされたウェルを決定するために生細胞顕微鏡上で
画像化する。インキュベーション後、(カルセインAMの放出を特徴とする)細胞傷害性を
査定するためにアレイを再画像化する(
図6c、右下)。ウェルに残存する細胞により放出
されたサイトカイン(IL-2、IL-4、IL-10、TNF-α、およびIFN-γ)を、マイクロエング
レービングを使用してプロファイリングする。この最初のパネルは、1アッセイ法あたり
およそ10〜15サイトカインの、Th1サイトカインおよびTh2サイトカインならびに調節性サ
イトカインを測定する。顕微鏡検により、ホーミングパターン(例えば、CD62L、CXCR3、
CCR4、CCR7)および画像を示す、最大3種の特異的表面マーカーについても、細胞を標識
する。実験からの関心対象の細胞を、クローン拡大または遺伝子発現プロファイリングの
ため、顕微操作により抽出する。5人の個体について、感染の急性期に3〜5回の時点で実
験を反復する。比較のため、HAART患者およびエリートコントローラーに、その測定を拡
張する。これらのデータは、感染の過程でのこれらの細胞集団の多機能的応答の変動を示
し、効果的な細胞傷害性と相関する表現形質を確立する。
【0050】
急性感染を有する患者およびHAART中患者と比較したエリートコントローラーにおけるHIV
に対する免疫応答のシステムレベルプロファイル
免疫システムが複雑であることが、広いクラス内の細胞サブセット(例えば、CD4
+T細
胞)間の機能および表現型の小さな差をモニタリングするためのツールが存在しないこと
と組み合わされて、ヒト疾患の研究の大多数が、ネットワークの残りから隔離された一つ
の細胞集団の特徴付けに制限されている。複雑な生物学的ネットワークのシステムレベル
の定量的分析および予測的モデリングは、可能であるが、システムの詳細を分解するため
に十分な多変数データを必要とする。エリートコントローラー、急性感染患者、およびHA
ART中患者由来の細胞のエフェクターサブセットについての機能プロファイルを記載する
単一細胞データから、状態に基づくマップを構築する(
図4)。階層的クラスタリングお
よび主成分分析などの統計分析を、各クラスからの集団間の変動を調査するために用いる
。収集されたデータを、これらのプロファイルを構築するため、このプロジェクトの最初
の部分で使用する。このアプローチは、集成的なゲノム分析において使用されるものに類
似しているが、その代りに、得られたプロファイルを解明するために、詳細な単一細胞デ
ータを使用する(Bradshaw,E.M., Kent, S. C., Tripuraneni, V., Orban, T., Ploegh,
H.L.,Hafler, D.A. and Love, J.C. Concurrent detection of secreted products fro
m humanlymphocytes by microengraving: antigen-reactive antibodies and cytokines
. Clin Immunol129, 10-18 (2008))。
【0051】
本明細書に記載された方法の一つの利点は、少数の細胞がアッセイ法に用いられ得ると
いう点である(10
3〜10
5個)。標的細胞にロードするためのプールされたペプチドの使用
は、測定される機能プロファイルにバイアスをかける可能性がある。代替的なアプローチ
として、自己HIV感染CD4
+T細胞の使用が、これらのアッセイ法において探究される。プロ
ファイルに細胞溶解性細胞を巻き込まないようにするため、まず、これらの細胞のサイト
カインプロファイルを査定することが必要であると考えられる。非細胞溶解性ヒトT細胞
をクローニングするための現在の効率は、およそ75〜90%である。いくつかの細胞溶解性
細胞はプログラム細胞死を受ける可能性があるため、効率は縮小する可能性があるが、さ
らなる分析が各クローンに対して実施され得るよう、細胞は拡大される。生得的システム
の細胞およびエフェクター記憶細胞についての、効果的な抗ウイルス応答と相関させられ
た微妙な機能の差の解明は、ワクチンまたはその他の介入を評価するためのベンチマーク
基準を確立すると考えられる。
【0052】
実施例5 HIV感染の急性期中のNK細胞の表現型マーカーと機能的挙動との間の相関
上記アッセイ法は、急性HIV感染を有する患者および長期非進行者の両方から由来するN
K細胞について、詳細な表現型プロファイル、機能プロファイル、および遺伝子型プロフ
ァイルを作製するため、単一細胞により分泌されたサイトカインの多重検出のために適用
される。上記に概説された通り、そのアプローチは、宿主の免疫応答への細胞の貢献を分
解するための定法ではないが、フローサイトメトリーおよびELISpotなどの既存のツール
により査定するのが困難でありうる稀少な細胞の特徴を同定するものである。NK細胞の別
個のサブセットが、感染の異なる期に存在し、それらの機能的挙動(または機能の喪失)
は、感染の急性期の後に減弱されるこれらの細胞の効果の洞察を提供する。
【0053】
この調査のために必要とされる細胞は、HIV
+患者由来の循環NK細胞である。急性感染患
者および長期非進行者/エリートコントローラーの両方から由来する長期的な試料が用い
られる。
【0054】
NK細胞の二つの重要なサブセットが、ヒトにおいて報告されている(Cooper,M. A., F
ehniger, T. A.and Caligiuri, M. A. The biology of human natural killer-cell sub
sets. TrendsImmunol 22, 633-640 (2001))。細胞溶解性NK細胞(NKp46
プラスCD3
マイ
ナスCD56
プラスCD16
プラス/マイナス)は、多量のIFN-γ、TNF-α、MIP-1β、GM-CSFを分
泌する。対照的に、免疫調節性NK細胞(NKp46
プラスCD3
マイナスCD56
プラス/マイナスCD1
6
プラス)は、大量のIL-10およびIL-17を産生する。健常個体は、通常、多数の細胞溶解
性NK細胞および低レベルの免疫調節性NK細胞を保有している。しかしながら、妊娠および
粘膜感染の封じ込めの両方においては、免疫調節性NK細胞の集団が拡大する。これらの2
種のNK細胞集団のバランスが、HIV-1感染の間に変化するかどうか、およびNK細胞の特定
のクローンが、複数のTヘルパー応答に関連したサイトカインのパターンを産生すること
ができるかどうかは、不確かである。
【0055】
単一のアッセイ法で5種のサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、MIP-1β、IL-10、およびIL-
17)を検出するため、上記マイクロエングレービング法を用いる。アッセイ法を最適化す
るため、NK細胞を、ネガティブ選択(StemCell Technologies)により健常対照の末梢血
から抽出する。これらのNK細胞を二つの画分に分離し、IL-12およびIL-18のいずれか(全
てのNK細胞機能のための強力な刺激)と同時培養するか、または刺激せずにおく。4時間
の刺激の後、NK細胞をマイクロウェルのアレイ上に沈着させる(およそ10
5個の直径30μm
のウェル)。ピークNK細胞機能を測定するための最適のインキュベーション時間を査定す
るため、動力学的研究を実施する。ガラス上にサイトカインを捕獲した後、ウェル中の細
胞を、NK細胞活性化の原型マーカーについて染色し(Hoescht33324(核)、NKp46-Cy3、
CD107a-Alexa647、およびCD69-Alexa488)、特注の高速画像化ステーションで画像化する
。各細胞から検出されたサイトカインプロファイルを、これらのデータと相関させ、共通
の細胞サブセットを同定するため、主成分分析によりクラスタリングを行う(各細胞8パ
ラメーター)。NK細胞は、10人の急性感染HIV患者および10人の長期非進行者から単離さ
れる。これらの群における細胞のサブセットが、相互および対照セットと比較して、どの
ように変動するかを評価するため、アッセイ法を反復する。最後に、サブセットが疾患の
進行と共にどのように変化するかを査定するため、急性感染患者に存在する細胞のサブセ
ットの差を、長期的に調査する。
【0056】
実施例6 細胞溶解性NK細胞間のクローン多様性の査定
単一の抗原特異的受容体を発現するT細胞およびB細胞とは異なり、NK細胞は、多くの異
なる受容体をランダムな組み合わせで発現する。個々のNK細胞クローン上の受容体の組み
合わせのため、それらは、ウイルス感染細胞または悪性細胞を差次的に認識することがで
きる。NK細胞受容体の発現、およびNK細胞のサブセットの分布の両方が、HIV感染により
劇的に変化する。急性HIV-1感染を有する個体は、NK細胞の有意な拡大を示し:感染の最
初の数週間、循環末梢血単核細胞(PBMC)の50%もがNK細胞である。対照的に、進行性感
染は、アネルギー性のCD56
マイナスNK細胞の蓄積を特徴とする。受容体の多様性がどのよ
うにクローン性に変動するのか、およびそれが抗ウイルス制御を可能にするNK細胞機能と
どのように相関するのかは、特に、明白な細胞溶解能を示すクローンについて、十分に理
解されていない。
【0057】
HIV-1感染の異なる期に、個々の細胞溶解性NK細胞により発現されるキラー細胞免疫グ
ロブリン様受容体(KIR)のプロファイルの決定を、急性感染から開始する。マイクロウ
ェルのアレイを使用したアッセイ法を、細胞溶解機能を測定するために使用する。個々の
細胞傷害性NK細胞を、RT-qPCRによる受容体のレパートリーのその後の定量化のため、顕
微操作により取得する。単一細胞の細胞溶解アッセイ法のため、CD56-Alexa647またはサ
イトゾル染色(CellTrackerred)により標識されたNK細胞を、カルセインAMにより標識
されたMHC欠損標的細胞(K562または221)と同時にロードする。これらのアレイを、(標
的細胞からのカルセインの喪失を特徴とする)溶解について査定するため、定期的に画像
化を行いながら、5〜6時間インキュベートする。活性化を確実にするため、NK細胞の表面
上のCD107aも獲得する。
【0058】
CTLおよび標的B細胞株を使用したこの型のアッセイ法についての予備的な結果は、
図5
に示される。自己HIV感染CD4
+T細胞が、このアッセイ法における標的として、代替的に使
用される。アレイ中の個々の溶解性細胞を含有しているウェルの位置をスコア化した後、
細胞を、自動顕微操作(Aviso CellCelector)により取得し、組換えIL-2を用いて、96穴
プレートにおいてクローン拡大する。拡大の後、12種のKIRについて特異的なプライマー
のパネルを、RT-qPCRにより各クローン上のNK細胞受容体レパートリーを定量化するため
に使用する。
【0059】
拡大を行わない細胞の直接の単一細胞分析は、ネステッドプライマーのための増幅結合
配列が埋め込まれたオリゴ-dtプライマーのセットを含有しているSuperScript-3 RT-PCR
mastermix(Invitrogen)に細胞を置き、続いてサーモサイクリングを行うことにより実
施される。12種のKIRプライマーのセットを使用して、cDNAに対して、qPCRを実施する。
単離されたNK細胞由来のKIRのレパートリーの多様性を、10人の健常対照、10人の急性HIV
+感染個体、10人のHIV+自然非進行者(2000コピー/ml未満のウイルス量)、および10人の
HIV+慢性未処置進行者(>10,000コピー/mlのウイルス量)において解明する。
【0060】
実施例7 感染の進行と共に抗体依存性細胞傷害(ADCC)の変化をもたらすNK細胞の能力
の判定
現在までのHIVのための候補ワクチンの大部分は、ウイルスに対する中和抗体を広く誘
発することを試みている(Barouch, D.H. Challenges in the development of an HIV-1
vaccine. Nature455, 613-619 (2008))。防御を媒介するため、抗体応答を用いるため
の代替的な戦略は、ADCCである。急性感染患者からの血清移植研究は、NK細胞の活性化が
起こり得ることを示唆しているが、NK細胞により媒介されるADCCを効果的に誘導する抗体
を作成するB細胞クローンを同定するためのアッセイ法は、これまでに利用可能となって
いない。下記の通りのクローンからの組換え抗体の生成は、予防接種のための免疫原の原
理設計に関する新たな研究を容易にする(Walker, B.D. and Burton, D.R. Toward an AI
DS vaccine.Science 320, 760-764 (2008))。
【0061】
3種の細胞集団、CD56
低CD16
+NK細胞、CD4
+T細胞、およびCD20
+B細胞を、急性感染患者
および長期非進行者から単離する。CD4
+T細胞を、フィトヘマグルチニン(PHA)およびIL
-2と共に培養することにより拡大し、HIVを外因的に感染させる。NK細胞は、IL-2により
活性化され、B細胞は、CD40Lおよび抗BCRにより活性化される。アレイマイクロウェルへ
、(CellTrackerredにより標識された)B細胞を、(カルセインAMにより標識された)HI
V感染T細胞と同時にロードする。アレイを、1時間、スライドガラスに対して密封する。
隔離されたリアクターにおけるこの時間の間、B細胞は、感染T細胞の表面に結合し得る抗
体を産生する。次いで、アレイをガラスから除去し洗浄する。
【0062】
活性化されたNK細胞(Celltrackerblueにより標識)を、ウェルに添加し、4〜6時間イ
ンキュベートする。(1)B細胞と、(2)NK細胞と、(3)インキュベーション後に溶解さ
れたT細胞とを含有しているウェルをスコア化するため、アレイを、インキュベーション
前後に画像化する。細胞をこれらのウェルから取得し、抗体をコードする遺伝子のVDJ領
域についての縮重プライマーセットを使用して、RT-PCRを実施する。アレイ上の内部対照
は、ランダムに、B細胞を含有していないかまたはNK細胞を含有していないウェルである
。NK細胞およびT細胞のみを含むアレイもスコア化する。取得された抗体の組換え発現は
、感染細胞上に結合したエピトープのマッピング、および生産的なADCCと相関するB細胞
において産生されたクローン多様性の査定を可能にする。
【0063】
代替的なアプローチは、アッセイ法を二つの部分に分割するものである。まず、濃縮さ
れたB細胞の集団を、マイクロエングレービング技術を使用して作製し、抗体のマイクロ
アレイを作製するために使用する。これらのアレイを、HIV感染細胞由来の溶解物および
抗IgG3により染色する。二重陽性ウェルにマッピングされるB細胞を、遺伝子分析のため
に取得する。これらの細胞由来の組換え抗体を感染細胞に適用し、上記のものなどの細胞
溶解アッセイ法においてNK細胞と混合する。
【0064】
本明細書に記載されたアプローチは、臨床ヒト試料から直接採取された細胞において、
直接、宿主-病原体相互作用を特徴付けることを可能にし、発見、査定、およびモニタリ
ングのため、定量的免疫学的プロファイリングを使用して、感染性疾患のためのワクチン
および免疫療法の開発を改善する。HIVに加えて、このアプローチは、その他の感染性疾
患、例えば、HIVの結果であるか、意図的な抑制的介入の結果であるかに関わらず、免疫
が低下している者において、主要な感染源となる病原体へと拡張され得る。これらには、
例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、クロスト
リジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ストレプトコッカス・ニューモニ
エ(Streptococcuspneumoniae)、およびミクバクテリウム・ツベルクローシス(Mycoba
cteriumtuberculosis)が含まれる。
【0065】
付加的な態様は、特許請求の範囲に含まれる。