特許第6017622号(P6017622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017622
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】動作状態記憶部を備えた射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   B29C45/76
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-96801(P2015-96801)
(22)【出願日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和男
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153077(JP,A)
【文献】 特開平08−132502(JP,A)
【文献】 特開2004−155071(JP,A)
【文献】 特開2004−198148(JP,A)
【文献】 特開2003−033958(JP,A)
【文献】 特開平04−175132(JP,A)
【文献】 特開2003−001686(JP,A)
【文献】 特開平10−138322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、
該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、
を備える射出成形機において、
複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、
前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、
前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、
を備え、
前記動作状態置換部は、
前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する区間の前記動作状態識別符号を、一括して前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換する
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、
該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、
を備える射出成形機において、
複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、
前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、
前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、
を備え、
前記動作状態置換部は、
前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致するたびに前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換し、かつ、同一の前記変化パターン対応識別符号が連続した場合には単一の前記変化パターン対応識別符号に置換する
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、
該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、
を備える射出成形機において、
複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、
前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、
前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、
を備え、
前記動作状態置換部は、
前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換し、
前記変化パターン設定部は、
変化パターン対応識別符号を設定するために用いる動作状態識別符号として、他の変化パターン対応識別符号を使用可能とする
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
前記変化パターン設定部は、
前記変化パターン対応識別符号ごとに、異なる数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンを設定可能である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形機。
【請求項5】
前記変化パターン設定部は、
前記変化パターン対応識別符号に優先順位を設定する優先順位設定手段を有し、
前記動作状態置換部は、
該優先順位の高い順に、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機に関し、特に動作状態記憶部を備えた射出成形機に関する。
【0002】
射出成形機の管理にあたって、稼働状況の管理を行う場合がある。稼働状況の管理は、射出成形機の所定時間中の運転時間の割合である稼働率が適正なレベルに達しているかを判定することであり、そのためには、射出成形機の動作状態を運転中、停止中などに分類して時系列に記録して収集することが行われている。動作状態の記録には、作業者が定期的に射出成形機の動作状態を記録するなどして管理する方法が従来行われてきた。しかしながら、作業者が動作状態を記録するためには、作業者の熟練が必要であり、きちんと作業者を訓練することがないと、動作状態を正確に把握することができないことがある。また、熟練した作業者であっても、作業者の工数が増加してしまうことがある。
【0003】
そのため、射出成形機が自動的に動作状態を監視することも行われている。射出成形機が自動的に監視した動作状態を時系列で記憶して、記憶された動作状態を一覧表やグラフで画面に表示して、動作状態が時刻の推移でどのように変化するのかを参照できるようにしておくと、射出成形機の過去の詳細な動作状態や、過去の特定時刻における射出成形機の動作状態を把握することができる。動作状態の記憶は、射出成形機の内部記憶装置に記憶する場合と、通信ネットワークを使用して管理用コンピュータに射出成形機を接続し、管理用コンピュータの内部記憶装置に記憶する場合がある。
【0004】
射出成形機における動作状態としては、自動運転中、運転待機中、アラーム中といった状態がある。射出成形機の制御装置は、射出成形機が自動運転中信号を生成しているときは自動運転中と認識したり、アラーム中信号を生成しているときにはアラーム中と認識することができる。一般に、自動運転中信号やアラーム中信号などの射出成形機の信号と自動運転中やアラーム中などの動作状態との対応関係は、あらかじめメーカーにおいて定義され、この定義に従った動作状態判別条件が射出成形機に組み込まれている。動作状態判別条件に従って判別された射出成形機の動作状態が時系列に記憶される。
【0005】
特許文献1には、射出成形機の定常運転状態時において現時点から一定時間前までの一定時間分の運転状態のデータを時系列に記憶しておき、故障検知の通知を受けた際に、その時点でデータ記憶部に記憶されている一定時間分の運転状態のデータを出力して、射出成形機の故障診断に利用する技術が開示されている。
また、特許文献2には、射出成形機の状態信号の変化をとらえ、その際に状態信号の変化前と変化後の状態の組み合わせに対応した稼働状態の名称あるいはコードを稼働情報として記憶し、特定の状態信号の変化に対応した稼働状態を記憶する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−138322号公報
【特許文献2】特開2012−153077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術や、特許文献1、特許文献2に開示されている技術は、射出成形機の動作状態を時系列に記憶してはいるものの、いずれもあらかじめ定義づけられた動作状態によって記憶されているため、特に経験の少ない技術者や管理者の場合は、動作状態が変化していることは把握できるものの、その動作状態の変化がどのような作業を示しているのかを把握するのに困難が生じるおそれがあった。
【0008】
そこで本発明は、経験の少ない技術者や管理者であっても、動作状態が示す作業内容を容易に把握することができる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明では、動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、を備える射出成形機において、複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、を備え、前記動作状態置換部は、前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する区間の前記動作状態識別符号を、一括して前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換することを特徴とする射出成形機が提供される。
【0010】
請求項1に係る発明では、動作状態識別符号の変化が、変化パターン記憶部に記憶された変化パターンに一致するときに、動作状態識別符号を変化パターン対応識別符号に置換するようにすることで、定められた動作状態識別符号の変化が、作業者に理解しやすい変化パターン対応識別符号に置換されて記憶されるようになり、経験の少ない者であっても、動作状態が示す作業内容を容易に把握することが可能となる。また、動作状態識別符号の変化が変化パターン記憶部に記憶された変化パターンに一致する区間の動作状態識別符号を、一括して変化パターン対応識別符号に置換するため、動作状態記憶部に記憶済みの動作状態を一括して変化パターン対応識別符号に置換することが可能となる。
【0011】
本願の請求項2に係る発明は、動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、を備える射出成形機において、複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、を備え、前記動作状態置換部は、前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致するたびに前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換し、かつ、同一の前記変化パターン対応識別符号が連続した場合には単一の前記変化パターン対応識別符号に置換することを特徴とする射出成形機が提供される。
請求項2に係る発明では、動作状態識別符号の変化が変化パターン記憶部に記憶された変化パターンに一致するたびに動作状態識別符号を変化パターン対応識別符号に置換するようにするため、動作状態記憶部に動作状態を記憶すると同時に変化パターン対応識別符号に置換することが可能となる。
【0012】
本願の請求項3に係る発明は、動作状態が変化したときに変化後の該動作状態に対応する動作状態識別符号を出力する動作状態出力部と、該動作状態出力部が出力した前記動作状態識別符号を時系列に記憶する動作状態記憶部と、を備える射出成形機において、複数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンと、該変化パターンに対応付けられた識別符号である変化パターン対応識別符号を設定する変化パターン設定部と、前記変化パターンと前記変化パターン対応識別符号を対応付けて記憶する変化パターン記憶部と、前記変化パターンを前記変化パターン対応識別符号に置換する動作状態置換部と、を備え、前記動作状態置換部は、前記動作状態記憶部に記憶された前記動作状態識別符号において、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換し、前記変化パターン設定部は、変化パターン対応識別符号を設定するために用いる動作状態識別符号として、他の変化パターン対応識別符号を使用可能とすることを特徴とする射出成形機が提供される。
請求項3に係る発明では、変化パターン対応識別符号を設定するために用いる動作状態識別符号として、他の変化パターン対応識別符号を使用可能とすることによって、設定された変化パターン対応識別符号を、再帰的に他の変化パターン対応識別符号の設定に用いることが可能となり、変化パターン対応識別符号を設定する際の設定が容易となる。
【0013】
本願の請求項4に係る発明は、前記変化パターン設定部は、前記変化パターン対応識別符号ごとに、異なる数の前記動作状態識別符号から構成される前記動作状態の変化パターンを設定可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形機が提供される。
請求項4に係る発明では、変化パターン対応識別符号ごとに、異なる数の動作状態識別符号から構成される動作状態の変化パターンを設定可能としたことによって、さまざまな種類の動作状態の変化パターンを設定することが可能となる。
【0014】
本願の請求項5に係る発明では、前記変化パターン設定部は、前記変化パターン対応識別符号に優先順位を設定する優先順位設定手段を有し、前記動作状態置換部は、該優先順位の高い順に、前記動作状態識別符号の変化が前記変化パターン記憶部に記憶された前記変化パターンに一致する前記動作状態識別符号を、前記変化パターンに対応付けられた前記変化パターン対応識別符号に置換することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の射出成形機が提供される。
請求項5に係る発明では、変化パターン対応識別符号に優先順位を設定し、優先順位の高い順に変化パターン対応識別符号に置換することによって、複数の変化パターン対応識別符号が設定されている場合の変化パターン対応識別符号への置換の態様を明確に定めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、経験の少ない技術者や管理者であっても、動作状態が示す作業内容を容易に把握することができる射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】射出成形機の動作状態の変化をグラフ形式で表示した図である。
図3】置換後の動作状態の変化をグラフ形式で表示した図である。
図4】ユーザ定義の動作状態と組込済みの動作状態の変化パターンの対応付けの例を示した表である。
図5】ユーザ定義の動作状態を設定する画面の例を示した図である。
図6】ユーザ定義の動作状態と組込済の動作状態の変化パターンとの関係を設定する状態を示した図である。
図7】動作状態が変化した際の動作状態を記憶する手順を示したフローチャートである。
図8図7の手順に従って記憶した記憶済の動作状態を、ユーザ定義の動作状態に置換する手順を示すフローチャートである。
図9】動作状態の記憶と同時に置換を行う場合の動作状態記憶部に記憶される動作状態の推移の様子を示した図である。
図10】動作状態の記憶と関係なく置換を行う場合の動作状態記憶部に記憶される動作状態の推移の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1は、本実施形態の構成を示すブロック図である。射出成形機10は、表示装置20と、内部記憶装置30と、データ処理部としてのCPU40を備えている。内部記憶装置30は不揮発性メモリで構成することが望ましいが、その他のメモリで構成してもよい。また、表示装置20は図示しないタッチパネルを備えており、タッチパネルによって変化パターン設定部22を構成する。また、内部記憶装置30には、変化パターン記憶部32と動作状態記憶部34が備えられている。さらに、CPU40には、動作状態置換部42と動作状態出力部44とが備えられている。
【0019】
変化パターン記憶部32には、変化パターン設定部22で設定された変化パターン対応識別符号が記憶される。ここで該変化パターン対応識別符号は、動作状態置換部42に入力される。また、動作状態記憶部34には、動作状態出力部44で出力された動作状態識別符号と、動作状態置換部42で置換された変化パターン対応識別符号が入力されて記憶される。なお、図1においては変化パターン設定部22が表示装置20に備えられているタッチパネルによって構成されているが、キーボードなどを用いて、表示装置20とは別に変化パターン設定部22を設けるようにすることもできる。また、図1においては、変化パターン対応識別符号や動作状態識別符号を射出成形機10内部に設けられた内部記憶装置30に記憶するようにしているが、必ずしも射出成形機10の内部に記憶装置を設ける必要はなく、射出成形機10に接続する外部の記憶媒体に記憶したり、管理用コンピュータに送信して管理用コンピュータにおいて記憶するようにしてもよい。
【0020】
本実施形態においては、射出成形機の動作状態について以下のように定義することとする。射出成形機の出荷段階で予め射出成形機に組込まれている動作状態判別条件に従って判別された動作状態のことを、「組込済の動作状態」とする。また、予め設定した「組込済の動作状態」の変化パターンに対応する動作状態のことを、「ユーザ定義の動作状態」とする。ユーザ定義の動作状態は、原則として組込済の動作状態を用いて定義するが、定義にあたって、他のユーザ定義の動作状態を用いて定義することも可能である。ユーザ定義の動作状態の定義は、変化パターン設定部22において設定できる。さらに、「組込済の動作状態」および「ユーザ定義の動作状態」の両者を合わせて「動作状態」とする。
【0021】
図2は、射出成形機の動作状態の変化をグラフ形式で表示した例を示している。図2に示されている「手動」、「自動」、「運転待機」等は、それぞれ組込済の動作状態を示しており、動作状態データとして動作状態出力部44に入力され、動作状態出力部44から動作状態記憶部34に出力されて、動作状態記憶部34において時系列に記憶される。図2に示された例においては、動作状態記憶部34に時系列で記憶されているとおりに、表示装置20において時系列の動作状態の変化として表示されている。
【0022】
従来の例においては、動作状態記憶部34において、図2に示されているような組込済みの動作状態の時系列の変化で記憶されており、表示装置20において表示する際にも、組込済みの動作状態によって表示されていた。そのため、図2のように表示されたときに、例えば、手動→自動→運転待機と動作状態が変化することは把握できるものの、経験の少ない作業者にとっては、その動作状態の変化がどのような作業を示しているのかを理解することが困難となる場合があった。
【0023】
本実施形態においては、いったん図2に示されたような状態で動作状態記憶部34に記憶されるものの、その後動作状態の一部をユーザ定義の動作状態である半自動に置換して、図3に示されたような形式で動作状態記憶部34に記憶される。そして、表示装置20に表示する際にも、図2における動作状態の変化の、自動→運転待機が繰り返される部分が、半自動に置換されて表示される。これにより、表示装置20において表示される形式が、自動→運転待機の繰り返しではなく半自動という形式で表示されるため、動作状態の変化が表している作業を一見して把握することが容易となる。具体的な動作状態の置換の方法については後述する。
【0024】
図4は、ユーザ定義の動作状態と組込済の動作状態の変化パターンの対応付けの例を示した表である。左欄は、各ユーザ定義の動作状態の優先順位を示す番号であり、次の欄はユーザ定義の動作状態、その次の欄はそれぞれのユーザ定義の動作状態を構成する組込済の動作状態の変化パターンを示している。この表においては、優先順位1番に、ユーザ定義の動作状態として半自動が割り当てられており、動作状態「半自動」を構成する動作状態として、自動→運転待機と続く動作状態であることを示している。同じく優先順位2番には、ユーザ定義の動作状態として樹脂替え中が割り当てられており、動作状態「樹脂替え中」を構成する動作状態として、パージ→手動と続く動作状態であることを示している。さらに優先順位3番には、ユーザ定義の動作状態として型交換中が割り当てられており、動作状態「型交換中」を構成する動作状態として、手動→型厚調整→手動→ドライサイクルと続く動作状態であることを示している。
【0025】
ここで、図4においては、組込済の動作状態をその動作状態を表す名称によって表示しているが、各々の動作状態に対して、重複しない識別符号を割り当てるようにしてもよい。識別符号には、名称や番号や記号などを割り当てることができる。例えば動作状態「手動」に対して識別符号“S1”を、動作状態「自動」に対して識別符号“S2”を割り当てることができる。以後、動作状態を時系列に記憶する場合、また記憶済の動作状態を置換する場合、動作状態の識別符号を使用する。
また、動作状態と動作状態の識別符号との対応関係としては、対応表のような形で記憶してもよいし、どのような動作状態の時にどのような識別符号を出力するかをプログラムの形で記述することで対応関係を記憶するようにしてもよい。
【0026】
図4に示された表は、例えばユーザ定義の動作状態「半自動」については、組込済の動作状態が自動→運転待機と1周期以上繰り返される場合を示しており、動作状態「自動」や「運転待機」が継続する時間には無関係に、そのような動作状態の変化が発生した場合には該当する。1周期以上繰り返される場合が含まれるため、自動→運転待機が1回のみ発生する場合であっても、自動→運転待機→自動→運転待機→自動→運転待機と複数回発生する場合であってもよい。
本実施形態においては、図4に示されたようなユーザ定義の動作状態に対応する動作状態が発生した場合に、対応する動作状態をユーザ定義の動作状態に置換する。具体的な置換の方法については後述する。
【0027】
図5は、図4の表に示されているようなユーザ定義の動作状態を変化パターン設定部22において設定する状態を示した図である。図5においては、現在設定されているユーザ定義の動作状態の一覧が表として示されており、それらのユーザ定義の動作状態のうち、置換する対象として現在使用されているユーザ定義の動作状態にチェックが入っている。図5においては、半自動のみにチェックが入っているが、複数のユーザ定義の動作状態にチェックを入れ、複数のユーザ定義の動作状態を置換対象とすることも可能である。その場合には、優先順位に従って、優先順位の高いユーザ定義の動作状態から順に置換を行う。なお、優先順位は図5の右側に表示されている優先順位変更ボタンで変更が可能である。例えば「樹脂替え中」の優先順位を上げたければ「樹脂替え中」右側の↑ボタンを押すことで優先順位がひとつ上がり、↓ボタンを押すことで優先順位がひとつ下がる。
【0028】
また、図5の下部の、追加するユーザ定義の動作状態の欄において、新規のユーザ定義の動作状態を入力して、追加ボタンを押すことによって、新規のユーザ定義の動作状態を追加することが可能である。
図6は、ユーザ定義の動作状態と組込済の動作状態の変化パターンとの関係を設定する状態を示した図である。図5の画面において新規のユーザ定義の動作状態を入力して追加ボタンを押すことによって、図6の画面に移行する。また、すでに登録されたユーザ定義の動作状態の設定内容を変更する際には、図5の画面で追加するユーザ定義の動作状態の欄に変更対象のユーザ定義の動作状態を入力して、追加ボタンを押すことによって図6の画面に移行して、図6の画面において設定する。
【0029】
図6の画面において、動作状態変化数は、ユーザ定義の動作状態を構成する動作状態の数を示している。例えば、ユーザ定義の動作状態「半自動」は、自動と運転待機の2つの動作状態から構成されているため、動作状態変化数は2とされている。次の、ユーザ定義の動作状態の欄には、新規のユーザ定義の動作状態を追加する場合には、図5において、追加するユーザ定義の動作状態として入力された、追加するユーザ定義の動作状態が表示される。また、図5で追加するユーザ定義の動作状態の欄に変更対象のユーザ定義の動作状態を入力して追加ボタンを押した場合、変更対象のユーザ定義の動作状態の内容が表示される。
【0030】
図6の画面における、ユーザ定義の動作状態の下には、組込済みの動作状態が複数表示される。これは、動作状態変化数の数に合わせて表示され、この例においては、動作状態変化数として2が設定されているため、組込済の動作状態1及び組込済の動作状態2と2つの組込済の動作状態の欄が表示される。ここで、ユーザ定義の動作状態に定義する動作状態を、動作状態の変化パターンの順に設定する。最後に設定ボタンを押すことによって設定が完了する。このようにして、それぞれのユーザ定義の動作状態に動作状態を設定することによって、図4の表に示したように各ユーザ定義の動作状態に対する動作状態の変化パターンが設定される。なお、動作状態変化数を増やす場合、動作状態変化数を変更できるようにして、件数に応じて組込済の動作状態の欄も増やせばよい。
【0031】
次に、図7に基づいて、本実施形態の射出成形機において、動作状態が変化した際の動作状態を記憶する手順について説明する。以下、図7のステップ毎に手順を説明する。
・(ステップSA1)射出成形機において、動作状態が変化したかどうかを判定する。変化した場合(YES)はステップSA2に進み、変化していない場合(NO)はステップSA3に進む。
・(ステップSA2)レコードを1件追加して、変化後の動作状態の識別符号を追加したレコードに記憶する。
・(ステップSA3)識別符号の記憶を終了するかどうかを判定する。終了する場合(YES)は終了し、終了せずに記録を継続する場合(NO)はステップSA1に戻る。
このようにして順次動作状態を時系列に記憶していくと、図2に示されたような状態で動作状態記憶部34に記憶される。
【0032】
本実施形態においては、このようにして動作状態記憶部34に記憶された動作状態を、図4に示されているような、ユーザ定義の動作状態と対応させてユーザ定義の動作状態に置換する。以下、具体的な置換手法について説明する。動作状態のユーザ定義の動作状態への置換は、動作状態の記憶と同時に行うこともできるし、動作状態の記憶と関係なく行うこともできる。
【0033】
図8は、図7に手順に従って記憶した記憶済の動作状態を、ユーザ定義の動作状態に置換する手順を示すフローチャートである。以下、ステップごとに説明する。以下の手順の説明において、各パラメータは以下のように定義する。
K:ユーザ定義の動作状態を構成する組込済の動作状態の数(上述の動作状態変化数)
N:記憶済のレコードの件数
i:記憶済のレコードのうち、現在手順の対象としているレコードの先頭からの順番を表す数値
c:変化パターンが複数周期連続しているかどうかを判別するフラグ
【0034】
・(ステップSB1)iおよびcを初期化して、i=1、c=0とする。
・(ステップSB2)動作状態記憶部34に記憶されている記憶済レコードの先頭からi番目のレコードからK件が、現在対象としているユーザ定義の動作状態を構成する組込済の動作状態の変化パターンに一致するかどうかを判定する。一致する場合(YES)はステップSB3に進み、一致しない場合(NO)はステップSB8に進む。
【0035】
・(ステップSB3)c=0かどうかを判定する。0である場合(YES)はステップSB4に進み、0ではない場合(NO)はステップSB5に進む。
・(ステップSB4)i番目のレコードからK件を1件のレコードに置換して、置換したレコードに、対応するユーザ定義の動作状態の識別符号を記憶する。
・(ステップSB5)変化パターンが複数周期連続している場合の2回目以降であり、すでに1度ユーザ定義の動作状態の識別符号に置換されているため、今回の一致した変化パターンであるi番目のレコードからK件のレコードを削除して、先に置換したユーザ定義の動作状態の識別符号にまとめる動作を行う。
【0036】
・(ステップSB6)iの値に1を加えて、iの値を更新する。
・(ステップSB7)c=1として、組込済の動作状態の変化パターンに一致する期間内である状態にフラグを更新する。
・(ステップSB8)iの値に1を加えて、iの値を更新する。
・(ステップSB9)c=0として、組込済の動作状態の変化パターンに一致する期間内ではない状態にフラグを更新する。
【0037】
・(ステップSB10)iの値がNを超え、記憶されているすべての動作状態に対して置換のチェックを行ったかどうかを判定する。iがNを超えている場合(YES)はステップSB11に進み、iがN以下の場合(NO)はステップSB2に戻る。
・(ステップSB11)すべてのユーザ定義の動作状態に対して置換のチェックが終了して、識別符号の置換を終了するかどうかを判定する。終了する場合(YES)は終了して、終了しない場合(NO)は、置換対象とするユーザ定義の動作状態を変更した上で、ステップSB1に戻る。
【0038】
図9は、動作状態の記憶と同時にユーザ定義の動作状態への置換を行う場合の動作状態記憶部34に記憶される動作状態の推移の様子を示した図である。図9に示されているように、組込済みの動作状態の変化パターンの1周期目において、自動→運転待機と続いたところで、設定されているユーザ定義の動作状態の半自動として定義されている自動→運転待機と一致するため、その時点で自動→運転待機の2つの動作状態を半自動に置換する。その後、さらに自動→運転待機と継続した場合には、同じく自動→運転待機という動作状態の変化はユーザ定義の動作状態の半自動と合致することとなるが、自動→運転待機という動作状態の変化が2周期以上継続する場合の2周期目以降においては、1周期目におけるユーザ定義の動作状態への置換によって、すでにユーザ定義の動作状態の半自動が存在しているため、2周期目の自動→運転待機については、それらの動作状態を削除することによって、1周期目において置換された1つの半自動に統合される。
【0039】
なお、動作状態の記憶と同時にユーザ定義の動作状態への置換を行う場合における、ユーザ定義の動作状態への動作状態の置換については、図8のフローチャートに示されたように、2周期目以降にユーザ定義の動作状態に対応する動作状態の変化が発生した場合に、それらの動作状態を削除するようにする代わりに、2周期目以降であってもユーザ定義の動作状態に対応する動作状態の変化が発生した際には、いったん対応するユーザ定義の動作状態に置換して、同じユーザ定義の動作状態が連続した場合に、単一のユーザ定義の動作状態に置換するようにすることもできる。いずれの手法であっても、得られる結果としては単一のユーザ定義の動作状態となって、同様のものを得ることが可能である。
【0040】
次に、動作状態の変化と記憶が終了した後に、一括してユーザ定義の動作状態へ置換を行う場合の例を説明する。図10は、ユーザ定義の動作状態への置換を動作状態の記憶と関係なく行う場合の動作状態記憶部34に記憶される動作状態の推移の様子を示した図である。図10の例においては、図9の例と異なり、1周期ごとにユーザ定義の動作状態への置換は行われず、自動→運転待機→自動→運転待機と変化が続いた後に、動作状態「手動」が生じて、ユーザ定義の動作状態の半自動として設定される自動→運転待機の繰り返しの変化パターンの継続が終了した時点で、自動→運転待機の繰り返しの動作パターンを、一括して「半自動」に置換する処理を行っている。最終的に得られる置換後の動作状態の記憶例としては、1周期ごとに置換を行う場合であっても、一括して置換を行う場合であっても同様のものとなる。
【0041】
このように、動作状態記憶部34に記憶される動作状態の複数個の動作状態をユーザ定義の動作状態にまとめることで、作業者が動作状況を見やすくなり、また動作状況が容易に理解できるようになる。
【0042】
本実施形態においては、構成全体を射出成形機単体で構成しているが、通信ネットワークを使用して管理用コンピュータに複数の射出成形機を接続し、管理用コンピュータで構成することも可能である。このように構成した場合には、以下のような動作を行う。
まず、管理用コンピュータは、組込済の動作状態を射出成形機毎に取得して時系列に記憶する。そして、管理用コンピュータでユーザ定義の動作状態をユーザが定義できるようにして、管理用コンピュータはユーザ定義の動作状態を記憶する。次に管理用コンピュータは、管理用コンピュータ内に記憶したユーザ定義の動作状態をもとに、予め設定した組込済の動作状態の変化パターンに一致した区間をユーザ定義の動作状態に置換して記憶する。ユーザ定義の動作状態への置換の方法としては、すでに説明した射出成形機単体で構成した場合に行う置換の方法と同様である。
【0043】
このとき、管理用コンピュータでユーザが定義できるユーザ定義の動作状態は、全射出成形機共通でも、射出成形機別でもよい。射出成形機別の場合、射出成形機別にユーザ定義の動作状態を管理用コンピュータの記憶装置に記憶して、射出成形機別に使い分けるようにする。
【0044】
さらに別の構成方法として、管理用コンピュータとは別の外部コンピュータを用意して、この外部コンピュータで、ユーザ定義の動作状態をユーザが定義できるようにしてもよい。このように構成した場合には、以下のような動作を行う。
まず、射出成形機や管理用コンピュータは、前記外部コンピュータからユーザが定義したユーザ定義の動作状態を取得する。そして、外部コンピュータでユーザが定義できるユーザ定義の動作状態は、外部コンピュータに接続された全射出成形機共通でも、射出成形機別でもよい。射出成形機別の場合、射出成形機別にユーザ定義の動作状態を外部コンピュータの記憶装置に記憶する。
【符号の説明】
【0045】
10 射出成形機
20 表示装置
22 変化パターン設定部
30 内部記憶装置
32 変化パターン記憶部
34 動作状態記憶部
40 CPU
42 動作状態置換部
44 動作状態出力部
【要約】
【課題】経験の少ない技術者や管理者であっても、動作状態が示す作業内容を容易に把握することができる射出成形機を提供する。
【解決手段】射出成形機において、動作状態識別符号の変化が変化パターン記憶部に記憶された変化パターンに一致する動作状態識別符号を、変化パターンに対応付けられた変化パターン対応識別符号に置換する。これにより、定められた動作状態識別符号の変化が、作業者に理解しやすい変化パターン対応識別符号に置換されて記憶されるようになり、経験の少ない者であっても、動作状態が示す作業内容を容易に把握することが可能となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10