(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017629
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】蓄圧式消火器
(51)【国際特許分類】
A62C 13/76 20060101AFI20161020BHJP
A62C 13/62 20060101ALI20161020BHJP
A62C 19/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
A62C13/76 H
A62C13/76 B
A62C13/62 Z
A62C19/00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-104175(P2015-104175)
(22)【出願日】2015年5月22日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】515121254
【氏名又は名称】馬場 計二
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】馬場 計二
【審査官】
永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−13088(JP,A)
【文献】
実開昭63−93955(JP,U)
【文献】
実開昭62−45052(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/088550(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0092402(US,A1)
【文献】
特表2011−501976(JP,A)
【文献】
米国特許第4011911(US,A)
【文献】
特開2011−224137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 8/00−35/68,
B05B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤を蓄圧状態で貯蔵する貯蔵容器として、自立可能であって且つ自立状態での縦中心軸線を中心にして水平回転し得る形状としたものを使用し、
上記貯蔵容器には該貯蔵容器内の消火剤を外部に放出させる放出通路を設け、
自立状態における上記貯蔵容器の頂部付近には上記放出通路の出口となる消火剤の噴出口を有し、
上記噴出口は、上記貯蔵容器の上記縦中心軸線から半径方向の外方に離間した位置において該縦中心軸線を中心とする円周の接線方向又は該接線方向に近似する方向に向けて開口させ、
上記貯蔵容器を自立させた状態で上記噴出口から上記消火剤を噴出させることで上記貯蔵容器を上記縦中心軸線を中心にして水平回転させ得るようにし、
上記貯蔵容器は、消火剤を実質的に収容し且つ火災時の熱又は温度によって破壊される軟質材料製の内側薄容器と該内側薄容器の外面を被覆する硬質材料製で保形性のある外側カバー体とで構成し、
上記外側カバー体は、半割り状態に2分割した各分割カバーを合体させたものであるとともに、
上記両分割カバーは、火災時の熱又は温度によって相互に分離して上記内側薄容器の外面からそれぞれ剥離されるものである、
ことを特徴とする蓄圧式消火器。
【請求項2】
請求項1において、
上記貯蔵容器は球形状のものを採用しているとともに、
該貯蔵容器の底部に上記噴出口が自動で貯蔵容器の上部に位置するように上記貯蔵容器を姿勢維持させるための重りを設けている、
ことを特徴とする蓄圧式消火器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、火災発生時の消火に用いる蓄圧式消火器に関し、特に使用者が火災現場から離れた状態であっても(消火器を手で持たなくても)消火機能を発揮し得るようにした蓄圧式消火器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消火用具には、産業用から家庭用まで多種のものがあるが、簡易な消火器として、耐高圧容器(主として縦型円筒容器)内に消火剤を充填した蓄圧式消火器が多用されている。尚、この種の一般的な蓄圧式消火器の形態としては、例えば特開2011−224137号公報(特許文献1)に示される縦型円筒形の蓄圧式消火器がある。
【0003】
そして、この種の一般的な蓄圧式消火器(以下、単に消火器ということがある)は、レバー操作で消火剤放出通路を開放することで、容器内部の空気圧により消火剤をホース先端のノズルから噴出させ得るようになっている。
【0004】
ところで、例えば一般家庭において火災が発生したときに、その初期段階であれば火災が狭い範囲であるので、常備している(持ち運び可能な)消火器を使用することで比較的容易に消火できる場合が多い。即ち、火災範囲が狭い(火が小さい)場合は、人が出火近くに居ても直ちに危険になるほどでもないので、消火器を火災現場に持ち込み、そのノズル部分を手に持ってノズル先端から消火剤を火元に向けて噴出させることで比較的簡単に消火することができる。
【0005】
ところが、火災に気づくのが遅れてかなり広い範囲で燃えていると、その火災現場において消火器のノズル部分を持ってノズル先端を広範囲の方向に指向させる(左右に振る)必要があるので消火に時間がかかり、その火災現場に長時間居ることで身体に対する危険度が高くなる(火傷を負ったり煙りを吸うおそれがある)という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−224137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明は、火災発生時において消火器に人がついて居なくとも(無人で)消火機能が行われるとともに、消火器設置位置の周囲の広範囲に亘って消火剤を自動で放出し得るようにした蓄圧式消火器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、蓄圧式消火器を対象にしたものである。又、本願発明の説明においても、発明の名称である「蓄圧式消火器」を単に「消火器」と表現することがある。
【0009】
「本願請求項1の発明」
本願請求項1の発明の消火器(蓄圧式消火器)は、次の各構成を有している。
【0010】
まず、消火剤を蓄圧状態で貯蔵する貯蔵容器として、自立可能であって且つ自立状態での縦中心軸線を中心にして水平回転し得る形状としたものを使用している。この請求項1における貯蔵容器の形状としては、自立状態での上記縦中心軸線を中心にして水平回転し得るものであればよく、例えば球形のものや円筒形のものが採用可能である。尚、貯蔵容器が球形のもの(請求項2のもの)では、自立させるのに容器底部に重りを設けることが好ましく、貯蔵容器が円筒形のものでは、胴径の割に高さが低いものが自立姿勢で安定する。
【0011】
貯蔵容器には、該貯蔵容器内の消火剤を外部に放出させる放出通路を設けているとともに、自立状態における貯蔵容器の頂部付近には放出通路の出口となる消火剤の噴出口を有している。尚、以下に示す実施例では、この放出通路として、貯蔵容器内の底部付近まで挿入された挿入管部と貯蔵容器外に露出する露出管部とを有し、さらに露出管部の先端部を噴出口としている。又、以下に示す実施例では、露出管部には放出通路開閉用の開閉弁を設けるとともに噴出口にキャップを設けている。
【0012】
上記噴出口は、貯蔵容器の縦中心軸線から半径方向の外方に離間した位置において該縦中心軸線を中心とする円周の接線方向又は該接線方向に近似する方向に向けて開口させている。このように、噴出口を上記縦中心軸線を中心とする円周の接線方向又は該接線方向に近似する方向に向けて開口させていると、噴出口の機能として、貯蔵容器内の消火剤を単に噴出する機能のほかに、消火剤噴出力の反力により貯蔵容器を上記縦中心軸線を中心にして水平回転させる機能を有している。尚、噴出口の開口位置は、上記縦中心軸線から半径方向に離間するほど貯蔵容器に対する水平回転力が大きくなるが、該縦中心軸線から適度に離間した位置に設けられる。又、該噴出口の開口方向は、貯蔵容器の上記縦中心軸線を中心とする円周の接線方向と同方向に向けるのが貯蔵容器を水平回転させるのに最も効率がよいが、該接線方向から多少ずれた方向(近似する方向)であっても許容される。
【0013】
そして、本願請求項1の消火器は、貯蔵容器を自立させた状態で噴出口から消火剤を噴出させることで、貯蔵容器を上記縦中心軸線を中心にして水平回転させ得るようにしたものである。
【0014】
又、本願請求項1において、上記貯蔵容器は、消火剤を実質的に収容し且つ火災時の熱又は温度によって破壊される軟質材料製の内側薄容器と該内側薄容器の外面を被覆する硬質材料製で保形性のある外側カバー体とで構成し、上記外側カバー体は半割り状態に2分割した各分割カバーを合体させたものであるとともに、上記両分割カバーは火災時の熱又は温度によって相互に分離して上記内側薄容器の外面からそれぞれ剥離される
ように構成されている。
【0015】
尚、上記外側カバー体を構成する両分割カバーは、例えば形状記憶合金製の止め具で合体させるとともに、該止め具が火災時の熱又は温度で外れて両分割カバーが自動的に分離するように機能するものである。
【0016】
この請求項1の消火器は、例えば一般家庭において火災が発生したときに、次のように使用される。まず、人がこの消火器を火災現場に持ち込み、放出通路を開放させて(以下の実施例のものではキャップを外し開閉弁を開放させる)貯蔵容器を床面に自立させた後、消火器を持ち込んだ人は直ちに火災現場から退散する。すると、放出通路が開放されていることにより、貯蔵容器内の消火剤が容器内空気圧によって放出通路を通って噴出口から勢いよく噴出するが、そのとき貯蔵容器が水平回転可能に自立しているので、その消火剤噴出圧力の反力により貯蔵容器が上記縦中心軸線を中心にして水平回転し(噴出口も縦中心軸線の回りを周回する)、自動で噴出口から貯蔵容器の外方全周囲に消火剤を連続して噴出させることができる。
【0017】
又、こ
の請求項1の消火器では、この消火器を無人の部屋に置いた状態(上記放出通路を人手で開放できない状態)で火災が発生したときに、火災の熱又は温度によって貯蔵容器の外側カバー体の両分割カバーが相互に分離した後(内側薄容器が露出する)、内側薄容器が火災の熱又は温度によって破壊されることによって、該内側薄容器内の消火剤が周囲に飛散されるようになる。
【0018】
尚、この請求項
1の消火器は、火災が発生している部屋内に外部から投げ入れて使用することもでき、その場合も、上記と同様に火災の熱又は温度によって外側カバー体の両分割カバーが相互に分離した後、内側薄容器が火災の熱又は温度によって破壊されるようになる(消火機能が発生する)。
【0019】
「本願請求項2の発明」
本願請求項2の発明は、上記請求項1の消火器において、貯蔵容器は球形状のものを採用しているとともに、貯蔵容器の底部に上記噴出口が自動で貯蔵容器の上部に位置するように貯蔵容器を姿勢維持させるための重りを設けていることを特徴としている。
【0020】
この請求項2において、貯蔵容器の底部に設けた重りは、貯蔵容器が転倒しても上記噴出口が上部に位置するように貯蔵容器を自動で起き上がらせるためのものである。このように貯蔵容器の底部に重りを設けていると、上記放出通路を開放させた状態でこの消火器を火災現場に投げ入れたときに、重量バランスにより上記噴出口が上部に位置するように貯蔵容器を自動で自立させるようになり、その貯蔵容器自立状態で噴出口から消火剤が噴出されることになる(該貯蔵容器が水平回転する)。
【発明の効果】
【0021】
「本願請求項1の発明の効果」
本願請求項1の発明の消火器は、火災現場において放出通路を開放させた状態で貯蔵容器を床面に自立させると、貯蔵容器内の消火剤が放出通路を通って噴出口から勢いよく噴出し、その消火剤噴出圧力の反力により貯蔵容器が水平回転する(噴出口も縦中心軸線の回りを周回する)ようになる。
【0022】
従って、この請求項1の消火器では、人の手で放出通路を開放して貯蔵容器を床面上に自立させた後、直ちに火災現場から退出しても噴出口から消火剤が連続して噴出されるので、無人で消火作業を行え、その消火作業が安全に(無人で)行えるという効果がある。
【0023】
又、貯蔵容器が水平回転する(噴出口も水平回転する)ことで、貯蔵容器の外方全周囲に消火剤を連続して噴出させることができるので、無人であっても広範囲の火災を消火できるという効果がある。
【0024】
さらに、この請求項1の消火器では、上記貯蔵容器は、消火剤を実質的に収容し且つ火災時の熱又は温度によって破壊される軟質材料製の内側薄容器と該内側薄容器の外面を被覆する硬質材料製の外側カバー体とで構成し、上記外側カバー体は半割り状態に2分割した各分割カバーを合体させたものであるとともに、上記両分割カバーは火災時の熱又は温度によって相互に分離して内側薄容器の外面からそれぞれ剥離される
ように構成されている。
【0025】
そして、この
請求項1の消火器は、無人の部屋に置いた状態(上記放出通路を開放できない状態)で火災が発生したときに、火災の熱又は温度によって外側カバー体(両分割カバー)が内側薄容器から剥離し、続いて該内側薄容器が火災の熱又は温度によって破壊されることによって、該内側薄容器内の消火剤が周囲に飛散されるようになる
ので、無人の状態で火災が発生しても、自動で消火機能を発揮できるという効果がある。
【0026】
「本願請求項2の発明の効果」
本願請求項2の発明は、上記請求項1の消火器において、貯蔵容器は球形状のものを採用しているとともに、貯蔵容器の底部に噴出口が自動で貯蔵容器の上部に位置するように貯蔵容器を姿勢維持させるための重りを設けていることを特徴としている。
【0027】
従って、この請求項2の消火器には、上記請求項1の効果に加えて、上記放出通路を開放させた後、この消火器を外部から火災現場に投げ入れることで、重量バランスにより噴出口が上部に位置するように貯蔵容器を自動で自立させることができる(自立状態で水平回転する)ので、上記請求項1の効果に加えて、消火器を火災現場の外部から安全に機能(自立状態で水平回転)させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
本願実施例の消火器(蓄圧式消火器)の基本的機能を説明するための参考平面図である。
【
図3】
図2のIII−III矢視図(右側面図)である。
【
図4】本
願実施例の消火器(蓄圧式消火器)の平面図(
図1相当図)である。
【
図6】
図5からの状態変化図(外側カバー体剥離状態図)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1〜
図6を参照して本願実施例の蓄圧式消火器を説明すると、
図1〜図3には本願実施例の蓄圧式消火器の基本的機能を説明するための参考図を示し、図4〜図6には本願実施例に採用した蓄圧式消火器を示している。尚、本願の蓄圧式消火器とは、貯蔵容器1内に蓄圧状態で貯蔵した消火剤Wを容器内空所Sの高圧空気により放出通路2を通してその噴出口23から外部に放出させ得るようにしたものである。又、本願実施例の説明でも、本願の発明の名称である「蓄圧式消火器」を単に「消火器」ということがある。
【0030】
「
図1〜
図3の
参考例」
図1〜
図3に示す
参考例の消火器(蓄圧式消火器)
では、消火剤Wを蓄圧状態で貯蔵する貯蔵容器1として、硬質合成樹脂製で球形状のものを採用している。この貯蔵容器1の大きさは、特に限定するものではないが、人力による持ち運びを考慮すると、例えば直径が30cm内外(消火器の総重量が12〜14kg程度)のものが好適である。尚、この
参考例の貯蔵容器1の材質としては、硬質合成樹脂製に代えて金属製のものを採用できるが、金属製の貯蔵容器1では、該容器の肉厚を
図2のものよりかなり薄くしても耐圧的に許容される。
【0031】
貯蔵容器1には、内部の消火剤Wを外部に放出するための一連の放出通路2が設けられている。この放出通路2は、貯蔵容器1内における自立状態での頂部11から底部12付近まで挿入された挿入管部21と貯蔵容器1外に露出する露出管部22とを有している。露出管部22の先端部には、噴出口23が設けられている。尚、この噴出口23は、口径を小さくして放出される消火剤Wが遠くまで噴出し得るようにしている。
【0032】
放出通路2の露出管部22には、放出通路開閉用の開閉弁24を設けているとともに、噴出口23に開閉自在なキャップ25を設けている。尚、開閉弁24は、レバーを揺動させることで弁内通路を開閉できる。他方、キャップ25は、噴出口23部分の外周に螺合することで該噴出口23を閉塞している一方、該噴出口23部分の外周から取外す(
図1の符号25′)ことで該噴出口23を開放できるようになっている。
【0033】
貯蔵容器1は、球形状としたものであっても自立可能(起き上がり可能)に構成されている。即ち、この
参考例の貯蔵容器1では、底部12(放出通路2の挿入管部21の下端開口21aが対向する位置)に自力で起き上がらせるための重り13を設けていて、貯蔵容器1が転倒しても該重り13による重量バランスで頂部11(露出管部22の露出部分)側が上部に位置するように貯蔵容器1を自力で起き上がらせ得るように構成している。尚、この重り13は、貯蔵容器1の本体部分の材料(合成樹脂)の比重よりかなり重い比重(金属製)のものである。
【0034】
貯蔵容器1は、
図2に示す自立状態での縦中心軸線Lを中心にして水平回転し得るようにしたものを使用している。尚、この
参考例では、貯蔵容器1として請求項2に対応する球形状のものを採用しているが、本願の請求項2を採用しないもの(請求項1のみのもの)では、貯蔵容器1として球形にかえて自立状態での縦中心軸線を中心にして水平回転し得るものであれば適宜の形状(例えば縦型円筒形)のものを採用してもよい。
【0035】
放出通路2の露出管部22は、
図1及び
図2に示すように、上記縦中心軸線Lから半径方向外方に所定長さ(例えば7〜8cm程度)だけ延出させている。そして、該露出管部22の先端である噴出口23は、
図1に示すように上記縦中心軸線Lから所定長さ外方に離間した位置において、縦中心軸線Lを中心とする円周Mの接線方向N(又は該接線方向Nに近似する方向)に向けて開口させている。尚、噴出口23の開口位置は、上記縦中心軸線Lから半径方向に離間するほど貯蔵容器1に対する水平回転力が大きくなるが、この
参考例では該縦中心軸線Lから半径方向外方に例えば7〜8cm程度離間した位置(円周Mの位置)に設けている。
【0036】
この噴出口23は、貯蔵容器1内の消火剤Wを単に噴出する機能のほかに、消火剤噴出力(符号N)により貯蔵容器1を上記縦中心軸線Lを中心にして水平回転(矢印R)させ得る機能を有している。即ち、噴出口23から矢印Nで示すように消火剤Wが勢いよく噴出されると、その噴出力により貯蔵容器1を上記縦中心軸線Lを中心にして噴出方向とは反対側(矢印R方向)に水平回転させる反力が発生し、その反力(回転力)により、貯蔵容器1を自立させた状態で水平回転させるように機能する。尚、噴出口23の開口方向は、貯蔵容器1の上記縦中心軸線Lを中心とする円周Mの接線方向Nと同方向に向けるのが貯蔵容器1を水平回転させるのに最も効率がよいが、該接線方向Nから多少ずれた方向(接線方向Nに近似する方向)であっても許容される。
【0037】
又、この
参考例では、噴出口23の向きを、
図3に示すように水平線Qより所定角度a(例えば角度30°程度)だけ上向き(矢印P)に設定している。このように噴出口23の向きを所定角度a(例えば角度30°程度)だけ上向きに設定しておくと、該噴出口23から噴出される消火剤を斜め上方(矢印P方向)に向けて放出させ得るので、その放出距離を長くできるとともに消火剤を高所まで届かせることができる。
【0038】
図1〜
図3に示す
参考例の消火器は、例えば一般家庭において火災が発生したときに、次のように使用される。
【0039】
まず、第1の使用例では、人がこの消火器を火災現場に持ち込んで、放出通路2を開放する(キャップ25を外し開閉弁24を開放させる)とともに貯蔵容器1を床面に自立させ後、消火器を持ち込んだ人は直ちに火災現場から退散する。そして、消火器を自立させた状態で放出通路2が開放されていると、貯蔵容器1内の消火剤Wが挿入管部21の下端開口21aから、該挿入管部21及び露出管部22を通って噴出口23から矢印N方向に勢いよく噴出される。
【0040】
すると、その消火剤噴出圧力の反力により貯蔵容器1が上記縦中心軸線Lを中心にして矢印R方向に水平回転する(噴出口23も縦中心軸線Lの回りを周回する)ことにより、自動で噴出口23から貯蔵容器1の外方全周囲に消火剤Wを連続して噴出させることができる。
【0041】
従って、この
参考例の消火器では、人の手で放出通路2を開放して床面上に自立させた後、直ちに火災現場から退出しても噴出口23から消火剤Wが連続して噴出されるので、無人で消火作業が行えることにより、該消火作業が安全となる。
【0042】
又、貯蔵容器1が水平回転する(噴出口23も水平回転する)ことで、貯蔵容器1の外方全周囲に消火剤Wを連続して噴出させることができるので、無人であっても広範囲の火災を消火できるという機能を有している。
【0043】
さらに、この
参考例の消火器では、貯蔵容器1の底部に設けた重り13により、該貯蔵容器1が倒れた状態であっても自動で自立姿勢に立ち起こされるようになっているので、放出通路2を開放させた後、この消火器を外部から火災現場に投げ入れることで、重量バランスにより噴出口23が上部に位置するように貯蔵容器1を自動で自立させることができる。尚、その後、上記と同様に、噴出口23からの消火剤噴出力によって貯蔵容器1が自立状態で水平回転する(消火剤Wが周囲の広範囲に放出される)。
【0044】
従って、この
参考例の消火器では、火災現場の外部から投げ入れても有効に機能するので、この消火器による消火活動を安全に行えるという機能がある。
【0045】
「
図4〜
図6の
本願実施例」
図4〜
図6に示す
本願実施例は、上記
参考例(
図1〜
図3)の消火器における貯蔵容器1の構造を変形させたものである。
【0046】
即ち、こ
の実施例の消火器では、貯蔵容器1として、消火剤Wを実質的に収容する軟質材料製の内側薄容器31と該内側薄容器31の外面を被覆する硬質材料製で保形性のある外側カバー体32とで構成している。尚、こ
の実施例でも、貯蔵容器1(特に外側カバー体32)は球形状のものが採用されている。
【0047】
内側薄容器31は、火災時の熱又は温度によって破壊される程度の耐熱性の弱い軟質材料製(例えば薄手の合成樹脂袋)で、ほぼ球形状に成形されたものである。
【0048】
外側カバー体32は、半割り状態に2分割した各分割カバー33,33を合体させたものである。この各分割カバー33,33は、それぞれ保形性のある材料製(例えば硬質合成樹脂製)であって、各分割カバー33,33の接合部の複数箇所(例えば対向する2箇所)をそれぞれ形状記憶合金製の止め具34Aで他方の止め具34Bに係止することで、両分割カバー33,33をそれぞれ内側薄容器31の外面を被覆した状態で一体化させ得るようにしたものである。
【0049】
そして、こ
の実施例では、常温状態では
図4に実線図示するように、2つの形状記憶合金製の各止め具34A,34Aがそれぞれ他方の止め具34B,34Bに対して係合状態を維持していて、
図5に示すように内側薄容器31の外面を両側から安定状態で被覆しているが、外側カバー体32が火災時の熱又は温度で加熱されて形状記憶合金製の止め具34A,34Aが反応温度(例えば80℃以上)に達したときに、該止め具34A,34Aが
図4の符号34A′,34A′のように係止機能を解除して(伸びて)、両分割カバー33,33が符号33′,33′で示すように内側薄容器31に対して自動で剥離されるようになっている。尚、両分割カバー33,33が剥離すると、
図6に示すように耐熱性の弱い内側薄容器31が剥き出しになる。
【0050】
外側カバー体32の底部12には、上記
参考例と同様に、貯蔵容器1を自動で自立姿勢に維持させるための重り13が設けられている。この重り13は、外側カバー体32が半割り状の両分割カバー33,33を合体させたものである関係で、各分割カバー33,33の底部にそれぞれ半割り状のものを取付けている。
【0051】
尚、
図4〜
図6におけるその他の構成(例えば放出通路2)は、上記
参考例(
図1〜
図3)のものと同じであるので、その
参考例の説明を援用する。
【0052】
こ
の実施例の消火器でも、
図4及び
図5に実線図示するように、内側薄容器31を外側カバー体32で被覆した状態で、火災発生時に上記放出通路2を人手で開放操作(開閉弁24の開放操作とキャップ25の取外し操作)すると、上記
参考例のものと同様に、貯蔵容器1が床面上に自立した状態で水平回転して、噴出口23から貯蔵容器1の外方全周囲に消火剤Wを連続して噴出させ得る機能を有している。
【0053】
又、こ
の実施例の消火器では、上記機能のほかに、無人の部屋に置いた状態(放出通路2を人手で開放できない状態)で火災が発生したときに、火災の熱又は温度によって形状記憶合金製の止め具34A,34Aが外れ(
図4の符号34A′の状態)、2つの分割カバー33,33が符号33′,33′(
図4及び
図5)で示すように相互に分離して、内側薄容器31が
図6に示すように火災現場で剥き出しになる。すると、該内側薄容器31が火災の熱又は温度で破壊されることによって、該内側薄容器31内の消火剤Wが周囲に飛散し、該消火剤Wによる消火機能が発生するようになる。
【0054】
従って、こ
の実施例の消火器は、上記
参考例の消火器の機能に加えて、無人の状態で火災が発生しても、自動で消火機能を発揮できるという機能がある。
【0055】
尚、こ
の実施例の消火器は、外側カバー体32で内側薄容器31を被覆した状態で、火災が発生している部屋内に外部から投げ入れて使用することもでき、その場合も、上記と同様に火災の熱又は温度によって外側カバー体32が剥離した後(
図6の状態)、内側薄容器31が火災の熱又は温度によって破壊される(消火機能が発生する)。
【符号の説明】
【0056】
1は貯蔵容器、2は放出通路、11は貯蔵容器の頂部、12は貯蔵容器の底部、13は重り、21は挿入管部、22は露出管部、23は噴出口、24は開閉弁、25はキャップ、31は内側薄容器、32は外側カバー体、33は分割カバー、34Aは形状記憶合金製の止め具、Wは消火剤である。
【要約】
【課題】火災発生時に消火器に人がついて居なくとも(無人で)消火機能が行われるとともに、消火器設置位置の周囲の広範囲に亘って消火剤を自動で放出し得るようにする。
【解決手段】貯蔵容器1として自立可能であって且つ自立状態での縦中心軸線Lを中心にして水平回転し得る形状としたものを使用し、自立状態における貯蔵容器1の頂部11付近に放出通路2の出口となる消火剤の噴出口23を設け、該噴出口23は、貯蔵容器1の縦中心軸線Lから半径方向の外方に離間した位置において該縦中心軸線Lを中心とする円周の接線方向に近似する方向に向けて開口させているとともに、貯蔵容器1を自立させた状態で噴出口23から消火剤Wを噴出させることで貯蔵容器を縦中心軸線を中心にして水平回転させ得るようにしていることにより、無人状態で消火機能を行えるとともに、消火器設置位置の周囲の広範囲に亘って消火剤Wを自動で放出し得るようにしている。
【選択図】
図2