特許第6017675号(P6017675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本軽金属株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6017675-金属樹脂接合体及びその製造方法 図000013
  • 特許6017675-金属樹脂接合体及びその製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017675
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】金属樹脂接合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/70 20060101AFI20161020BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20161020BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   B29C65/70
   B29C45/14
   B29C65/02
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-508577(P2015-508577)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2014058435
(87)【国際公開番号】WO2014157289
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-65268(P2013-65268)
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】高澤 令子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀水
(72)【発明者】
【氏名】石田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】松島 三典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149511(JP,A)
【文献】 特開2011−076887(JP,A)
【文献】 特開2012−232583(JP,A)
【文献】 特開2003−103562(JP,A)
【文献】 特開2011−173353(JP,A)
【文献】 国際公開第1997/035716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/24
B29C 45/46 − 45/63
B29C 45/70 − 45/72
B29C 45/74 − 45/84
B29C 63/00 − 65/82
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる金属基材と、この金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより形成された酸素を含有する酸素含有皮膜と、この酸素含有皮膜の上に接合され、熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂成形体とを有し、
前記熱可塑性樹脂組成物が、前記酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有し、
前記添加剤化合物が、カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有し、
前記添加剤化合物の官能基が、熱可塑性樹脂組成物中に0.5〜150μmol/gの割合で含有されていることを特徴とする金属樹脂接合体。
【請求項2】
前記添加剤化合物が、α-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体である請求項1に記載の金属樹脂接合体。
【請求項3】
前記添加剤化合物が、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体であるオレフィン系共重合体である請求項1又は2に記載の金属樹脂接合体。
【請求項4】
樹脂成形体が接合される前の表面に酸素含有皮膜を有する金属基材は、その最表面から3μmの深さまでの表層においてEPMAで測定された酸素含有率が0.1〜50重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属樹脂接合体。
【請求項5】
酸素含有皮膜の上に樹脂成形体を接合する接合方法が、射出成形又は熱圧着による方法であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属樹脂接合体。
【請求項6】
酸素含有皮膜が形成される金属基材が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属樹脂接合体。
【請求項7】
皮膜形成処理で得られた酸化物皮膜の厚さが0.06μm以上2μm以下の酸化物皮膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属樹脂接合体。
【請求項8】
金属からなる金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素含有皮膜を形成する皮膜形成工程と、この皮膜形成工程で得られた表面処理済金属基材の酸素含有皮膜の上に、熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を形成する樹脂成形工程とを有し、
前記酸素含有皮膜を介して金属基材と樹脂成形体とが接合された金属樹脂接合体を製造する金属樹脂接合体の製造方法であり、
前記熱可塑性樹脂組成物が、酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有し、
前記添加剤化合物が、カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする金樹脂接合体の製造方法。
【請求項9】
酸素含有皮膜が形成される金属基材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材であることを特徴とする請求項8に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項10】
皮膜形成工程では、水酸化アルカリ(MOH)と亜鉛イオン(Zn2+)とを重量比(MOH/Zn2+)1〜100の割合で含む亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中にアルミ基材を浸漬する皮膜形成処理により、このアルミ基材の表面に亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項11】
亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中のアルカリ源が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選ばれたいずれか1種又は2種以上の水酸化アルカリであることを特徴とする請求項9又は10に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項12】
亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中の亜鉛イオン源が、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、過酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、及び硝酸亜鉛からなる群から選ばれたいずれか1種又は2種以上の亜鉛塩であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項13】
皮膜形成工程では、アルミ基材の表面に、導電率が0.01mS/m以上20mS/m以下であって91℃以上100℃以下の熱水を用いた皮膜形成処理により、厚さが0.1μm以上1μm以下の水和酸化物皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項14】
皮膜形成工程では、アルミ基材の表面に、導電率が0.01mS/m以上20mS/m以下であって60℃以上90℃以下の温水を用いた皮膜形成処理により、厚さが0.1μm以上1μm以下の水和酸化物皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項15】
皮膜形成工程では、アルミ基材の表面付近を加熱するレーザー処理を施す皮膜形成処理により酸化物皮膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【請求項16】
熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、液晶ポリマー、サルフォン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選ばれたいずれか1種又は2種以上の樹脂であることを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の金属樹脂接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属からなる金属基材と熱可塑性樹脂製の樹脂成形体とが、熱可塑性樹脂の射出成形又は熱圧着により、一体的に強固に接合された金属樹脂接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の各種センサー部品、家庭電化製品部品、産業機器部品等の分野では、放熱性や導電性が非常に高い銅又は銅合金からなる銅基材や、放熱性が高く、かつ、他金属と比較し、軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材と、絶縁性能が高く、軽量でしかも安価である熱可塑性樹脂製の樹脂成形体とを一体に接合した金属樹脂接合体が幅広く用いられるようになり、また、その用途が拡大している。
【0003】
そして、従来においては、このような異種材質である金属基材と樹脂成形体とを互いに一体的に接合した金属樹脂接合体としては、金属基材と樹脂成形体との間を接着剤により加圧下に接合したものが用いられていた。しかるに、昨今、工業的により好適な接合方法として、金属基材を射出成形用金型内にインサートし、このインサートされた金属基材の表面に向けて溶融した熱可塑性樹脂を射出し、熱可塑性樹脂の射出成形により樹脂成形体を成形する際に同時に金属基材と樹脂成形体との間を接合する方法が開発され、金属基材と樹脂成形体との間の接合をより安価に、また、接合強度をより向上させるための幾つかの方法が提案されている。そして、このような提案の多くは、金属基材の表面に適切な表面処理を施すというものである。
【0004】
例えば、本発明者らは、既にアルミ材の凹状部と熱可塑性樹脂の嵌入部とによりアルミ形状体と樹脂成形体とが互いに係止されていることを特徴とするアルミ・樹脂射出一体成形品を提案し(特許文献1)、また、シリコン結晶からなる凸部を有することを特徴とする樹脂接合性に優れたアルミニウム合金部材を提案している(特許文献2)。
【0005】
また、例えば、アンモニア、ヒドラジン、及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上の水溶液に浸漬する前処理を経て得られたアルミニウム合金物と熱可塑性樹脂組成物とを射出成形によって一体化する技術(特許文献3、4)や、トリアジンジチオール類の水溶液、又は種々の有機溶剤を溶媒とした溶液を電着溶液として用い、金属の電気化学的表面処理を行った後、この表面処理後の金属とゴム又はプラスチックとを接合する技術(特許文献5)が提案されており、更には、金属板上に接着剤を塗布し、あるいは、表面処理して有機皮膜を形成し、その後に射出成形により金属と樹脂とを一体化する技術(特許文献6)や、金属の表面を酸又はアルカリで処理した後にシランカップリング剤で処理し、その後に射出成形により樹脂と接合させる技術(特許文献7)がそれぞれ提案されている。
【0006】
更に、微多孔質の水酸基含有皮膜が形成された金属の表面に、熱可塑性樹脂を射出し、上記皮膜を介して金属と熱可塑性樹脂とを一体化する技術(特許文献8)や、ポリアリーレンサルファイド樹脂を主体とし、これに特定のオレフィン系共重合体及び無機充填剤を配合した樹脂材料を用いて金属端子等をインサートして接合させる技術(特許文献9)がそれぞれ提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009-151,099号公報
【特許文献2】特開2010-174,372号公報
【特許文献3】特許第3,954,379号公報
【特許文献4】特許第4,270,444号公報
【特許文献5】特公平05-051,671号公報
【特許文献6】特許3,016,331号公報
【特許文献7】特開2003-103,562号公報
【特許文献8】特開2008-162,115号公報
【特許文献9】特開平04-211,916号公報
【0008】
ここで、特許文献3、4に記載されたアンモニア、ヒドラジン、及び水溶性アミン化合物を利用した方法においては、処理後から射出成形までの時間に制限があるため、安定した表面状態を維持できる時間が短いという問題がある。また、特許文献5に記載の処理方法においては、処理が複雑であるという問題があり、また、特許文献6や7に記載された方法についても、工程の複雑さや処理コストが高いといった問題がある。
【0009】
ところで、特許文献1や特許文献2に記載の通り、本発明者らは、これまでも主としてアンカー効果の嵌合に基づく物理的な接合を提案し、その手法として処理浴にハロゲンイオンを含む特殊なエッチング処理による方法を提案してきた。これらの方法は、接合強度や接合部分の気密性といった性能に問題はないものの、このエッチング処理中にハロゲンに由来するガスが発生し、周辺の金属部品や装置を腐食させず、また、周辺の環境を汚染させないための対策を講じなければならないという別の課題があった。
【0010】
また、特許文献8に多孔質の水酸基含有皮膜のアンカー効果と化学的な作用と、熱可塑性エラストマーを添加した熱可塑性樹脂組成物を使用する効果が記載され、特許文献9にはポリアリーレンサルファイド樹脂にオレフィン系共重合体等を配合した樹脂材料と金属との密着性について記載されているが、金属の表面処理と樹脂組成物の官能基の組合せによる接合強度や密着性への効果ついては不明であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、金属基材と熱可塑性樹脂製の樹脂成形体との間を接合するに際し、周辺の設備や環境に問題がなく、簡単な操作かつ低コストで、しかも、長期に亘って優れた接合強度を達成し得る方法を開発すべく鋭意検討した結果、金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素を含有する酸素含有皮膜を形成し、この酸素含有皮膜の上に熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂成形体を接合するに際し、この熱可塑性樹脂組成物中に酸素含有皮膜と反応する特定の官能基を有する添加剤化合物を添加することにより、金属基材と樹脂成形体との間の射出成形又は熱圧着による接合(金属−樹脂間接合)の際に、金属基材表面の酸素含有皮膜と樹脂成形体との間に長期に亘って強固な接合が形成されることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
従って、本発明の目的は、優れた金属−樹脂間の接合強度を発現すると共に耐久試験後に強度低下を起こさず、長期に亘って優れた金属−樹脂間の接合強度を維持し得る金属樹脂接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、金属からなる金属基材と、この金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより形成された酸素を含有する酸素含有皮膜と、この酸素含有皮膜の上に接合され、熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂成形体とを有し、
前記熱可塑性樹脂組成物が、酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有し、
前記添加剤化合物が、カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1
種の官能基を有し、
前記添加剤化合物の官能基が、熱可塑性樹脂組成物中に0.5〜150μmol/gの割合で含有されていることを特徴とする金属樹脂接合体である。
【0014】
また、金属からなる金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素含有皮膜を形成する皮膜形成工程と、この皮膜形成工程で得られた表面処理済金属基材の酸素含有皮膜の上に、熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を形成する樹脂成形工程とを有し、
前記酸素含有皮膜を介して金属基材と樹脂成形体とが接合された金属樹脂接合体を製造する金属樹脂接合体の製造方法であり、
前記熱可塑性樹脂組成物が、酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有し、前記添加剤化合物が、カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする金樹脂接合体の製造方法である。
【0015】
更に、本発明の前記金属樹脂接合体については、金属からなる金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素含有皮膜を形成する皮膜形成工程と、熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を形成する樹脂成形工程と、前記皮膜形成工程で得られた表面処理済金属基材の酸素含有皮膜の上に、前記樹脂成形工程で得られた樹脂成形体を射出成形又は熱圧着により接合する金属樹脂接合工程とを有し、
前記熱可塑性樹脂組成物として、酸素含有皮膜と反応する官能基を有する添加剤化合物を含有し、かつ、この添加剤化合物カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物である熱可塑性樹脂組成物を用いる方法によっても製造することができる
【0016】
本発明において、素地となる金属基材については、銅又は銅合金からなる銅基材や、鉄又は鉄合金からなる鉄基材や、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材等、特には制限されるものではなく、これを用いて形成される金属樹脂接合体の用途やその用途に要求される強度、耐食性、加工性等の種々の物性に基づいて決めることができる。また、アルミ基材の材質や形状等についても、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものであれば特には制限されず、これを用いて形成されるアルミ樹脂接合体の用途やその用途に要求される強度、耐食性、加工性等の種々の物性に基づいて決めることができる。
【0017】
また、このような金属基材の表面に皮膜形成工程で形成される酸素含有皮膜については、金属基材との密着性が良好であれば特に限定されるものではないが、金属基材が銅基材である場合には、例えば黒化処理で得られた酸素含有皮膜や、レーザー処理で得られた酸素含有皮膜(熱酸化皮膜)を例示することができ、また、金属基材が鉄基材である場合には、例えば亜鉛めっき処理で得られた亜鉛皮膜由来の酸素含有皮膜等を挙げることができ、更に、金属基材がアルミ基材である場合には、亜鉛イオン含有アルカリ水溶液を用いた皮膜形成処理で得られた亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜や、91℃以上100℃以下の熱水を用いた皮膜形成処理で、又は、60℃以上90℃以下の温水を用いた皮膜形成処理で得られた水和酸化物皮膜や、アルミ基材の表面にレーザー処理を施す皮膜形成処理で得られた酸化物皮膜等を例示することができる。
【0018】
ここで、アルミ基材の表面に酸素含有皮膜として亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜を形成するための皮膜形成処理については、アルミ基材の表面に亜鉛元素と共に酸素を酸化亜鉛(ZnO)、酸化亜鉛鉄(ZnFeO)、酸化亜鉛アルミ(ZnAlO)等の形で含有する皮膜を形成することができればよく、熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を成形する際に、あるいは、この熱可塑性樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形体との熱圧着により、この酸素含有皮膜の上に形成される樹脂成形体との間に強固なアルミ−樹脂間の接合強度が達成される。
【0019】
そして、この亜鉛イオン含有アルカリ水溶液を用いる皮膜形成処理については、好ましくは、水酸化アルカリ(MOH)と亜鉛イオン(Zn2+)とを重量比(MOH/Zn2+)1以上100以下の割合、好ましくは2以上20以下の割合、より好ましくは3以上10以下の割合で含む亜鉛イオン含有アルカリ水溶液を用い、この亜鉛イオン含有アルカリ水溶液を常温でアルミ基材の表面に接触させることにより、アルミ基材の表面に酸素を含む亜鉛含有皮膜を形成するのがよい。この水酸化アルカリ(MOH)と亜鉛イオン(Zn2+)との重量比(MOH/Zn2+)が1より小さい(MOH<Zn2+)と、亜鉛が十分に溶解しないのでその効果が十分に発揮されず、反対に、100より大きい(MOH>100 Zn2+)と、亜鉛の置換析出よりもアルミ基材の溶解が速くなり、このアルミ基材の表面に亜鉛が析出し難くなる。
【0020】
ここで、亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中のアルカリ源については、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムから選ばれたいずれか1種以上が用いられ、また、この亜鉛イオン含有アルカリ水溶液中の亜鉛イオン源としては、好ましくは酸化亜鉛、水酸化亜鉛、過酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、及び硝酸亜鉛から選ばれたいずれか1種以上が用いられる。
【0021】
そして、この亜鉛イオン含有アルカリ水溶液において、水酸化アルカリ濃度については、10g/L以上1000g/L以下、好ましくは50g/L以上300g/L以下であるのがよく、また、亜鉛イオン濃度については、1g/L以上200g/L以下、好ましくは10g/L以上100g/L以下であるのがよい。亜鉛イオン含有アルカリ水溶液の組成を上記の範囲内にすることにより、アルミ基材の表面ではアルミニウムと亜鉛イオンとが置換反応を起こし、アルミニウムは溶解し、また、亜鉛イオンは微細粒として析出し、その結果としてアルミ基材の表面に酸素元素と亜鉛元素を含有する酸素含有皮膜(亜鉛含有皮膜)が形成される。すなわち、アルミニウムは凹部を形成しながら溶解し、この凹部内に亜鉛が析出し、亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜が形成される。ここで、水酸化アルカリ濃度が10g/L未満では亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜の形成が不十分になるという問題があり、反対に、1000g/Lを超えるとアルカリによるアルミの溶解速度が速く亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜が形成されないという問題が生じる。また、亜鉛イオン濃度が1g/L未満では亜鉛含有皮膜の形成に時間がかかるという問題があり、反対に、200g/Lを超えると亜鉛析出速度が制御できず不均一な表面になるという問題が生じる。
【0022】
また、アルミ基材の表面に酸素含有皮膜として水和酸化物皮膜を形成するための皮膜形成処理については、先ず、導電率が0.01mS/m以上20mS/m以下、好ましくは0.01mS/m以上10mS/m以下であって91℃以上100℃以下の熱水を用い、この熱水中にアルミ基材を通常0.5分以上30分以下、好ましくは1分以上10分以下浸漬して水和酸化物皮膜を形成するか、あるいは、導電率が0.01mS/m以上20mS/m以下、好ましくは0.01mS/m以上10mS/m以下であって60℃以上90℃以下の温水を用い、この熱水中にアルミ基材を通常0.5分以上30分以下、好ましくは1分以上10分以下浸漬して水和酸化物皮膜を形成する。この水和酸化物皮膜を形成するための皮膜形成処理に使用する熱水や温水は純水であるのが好ましい。この水和酸化物皮膜を形成するための皮膜形成処理に使用する熱水や温水の導電率が0.01mS/m未満であると、超純水の領域になるため,純水製造コストが高くなり過ぎて実用化や工業化が困難になり、反対に、20mS/mを超えると、水和酸化物皮膜が形成されないことがあるほか、皮膜形成速度が極端に遅くなり、また、不純物の存在により水和皮膜の皮膜欠陥が生じ易くなるという問題もある。
【0023】
このアルミ基材の表面に形成される水和酸化物皮膜について、X線回折により確認したところ、91℃以上100℃以下の熱水を用いた皮膜形成処理では、ベーマイト(boehmite)又は擬ベーマイト(pseudoboehmite)を主体としたブロードのピークが認められる皮膜であり、また、60℃以上90℃以下の温水を用いた皮膜形成処理では、結晶性成分に由来するピークが認められない主に非晶質(amorphous)を主体とした皮膜である。
【0024】
なお、水和酸化物皮膜についてのX線回折の測定は、皮膜形成処理によりアルミ基材の表面に酸素含有皮膜として水和酸化物皮膜を形成した後の表面処理済みアルミ基材から、30mm×30mmにして測定用試料を作製し、この試料をX線回析装置〔(株)リガク社製:RAD-rR〕のガラス試料板(試料部24mm角・貫通)に固定し、X線源:Cu回転対陰極ターゲット(使用X線及び波長:CuKα 1.5418Å)、X線出力:50kV、200mA、検出器:シンチレーション検出器、光学系属性:Bragg-Brentano光学系(集中法)、発散スリット1°、散乱スリット1°、及び受光スリット0.3mmの条件で測定し、含有成分を同定し、次に、検出された各相を代表するピークのうち、強度が高くて他成分に由来するピークと重複しない1ピークについて、積分回析強度を算出して求めた。
【0025】
更に、皮膜形成工程で行われるアルミ基材の表面に酸素含有皮膜として酸化物皮膜を形成するためのレーザー処理については、アルミ基材の表面付近を、好ましくは表面付近のみを部分的に、アルミ基材の溶融温度以上まで加熱して酸化し、アルミ基材の表面付近に酸化アルミニウム(Al2O3)を析出させてこの酸化アルミニウム(Al2O3)を含む酸素含有皮膜を形成することができればよく、例えばレーザーエッチング装置等を用いて行うことができる。
【0026】
このようにして上記皮膜形成工程でアルミ基材の表面に酸素含有皮膜を形成して得られた表面処理済アルミ基材については、その最表面から3μmの深さまでの表層において、EPMAで測定される酸素含有率が0.1重量%以上50重量%以下、好ましくは1.0重量%以上30重量%以下であるのがよい。この表面処理済アルミ基材の表層における酸素含有率が0.1重量%より低いと、皮膜が薄過ぎてアルミ基材と樹脂成形体との間の十分なアルミ−樹脂間の接合強度を達成するのが困難になる場合があり、反対に、酸素含有率を50重量%を超えて高くすると、皮膜が厚過ぎて皮膜凝集破壊が生じ、充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない。
【0027】
また、この皮膜形成工程でアルミ基材の表面に形成された酸素含有皮膜の厚さについては、通常0.06μm以上2μm以下であるのがよく、好ましくは0.1μm以上1μm以下であるのがよい。この酸素含有皮膜の皮膜厚さが0.06μm未満であると、皮膜が薄すぎて充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合があり、反対に、2μmを超えると、皮膜が厚過ぎて皮膜凝集破壊が生じ、充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合がある。
【0028】
そして、91℃以上100℃以下の熱水を用いた皮膜形成処理でアルミ基材の表面に形成された水和酸化物皮膜の厚さについては、通常0.1μm以上1μm以下であるのがよく、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下であるのがよい。この酸素含有皮膜の皮膜厚さが0.1μm未満であると、皮膜が薄すぎて充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合があり、反対に、1μmを超えると、皮膜が厚過ぎて皮膜凝集破壊が生じ、充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合がある。
【0029】
また、60℃以上90℃以下の温水を用いた皮膜形成処理でアルミ基材の表面に形成された水和酸化物皮膜の厚さについては、通常0.1μm以上1μm以下であるのがよく、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下であるのがよい。この酸素含有皮膜の皮膜厚さが0.1μm未満であると、皮膜が薄すぎて充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合があり、反対に、1μmを超えると、皮膜が厚過ぎて皮膜凝集破壊が生じ、充分なアルミ−樹脂間の接合強度が得られない場合がある。
【0030】
本発明において、上記皮膜形成工程で得られた表面に酸素含有皮膜を有する表面処理済アルミ基材については、その酸素含有皮膜の上に熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を一体的に接合する樹脂成形工程でアルミ樹脂接合体を製造するか、あるいは、熱可塑性樹脂組成物の射出成形により樹脂成形体を形成する樹脂成形工程と、得られた樹脂成形体を表面処理済アルミ基材の酸素含有皮膜の上にレーザー溶着、振動溶着、超音波溶着、ホットプレス溶着、熱板溶着、非接触熱板溶着、又は高周波溶着等の手段を用いた熱圧着により一体的に接合するアルミ樹脂接合工程とでアルミ樹脂接合体を製造する。
【0031】
そして、本発明においては、上記の樹脂成形工程で用いる熱可塑性樹脂組成物として、具体的には、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド系樹脂やサルフォン系樹脂等の硫黄元素を含有する樹脂、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂や、液晶ポリマー、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等の酸素原子を含有する樹脂、例えばポリアミド(PA)、ABS、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の窒素原子を含有する熱可塑性樹脂等からなる樹脂組成物が挙げられ、中でも、金属樹脂接合体のニーズが大きい自動車部品では耐熱性及び剛性の観点で、また、電機・電子部品では剛性の観点で、PPS、PBT、液晶ポリマー、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックが特に好ましい。
【0032】
また、上記の樹脂成形工程で用いる熱可塑性樹脂組成物としては、酸素含有皮膜と反応する特定の官能基を有する添加剤化合物を含有する樹脂組成物が用いられる。ここで、前記添加剤化合物とは、熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂以外の物質をいい、また、熱可塑性樹脂組成物中に添加して用いられるものであれば、特に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂組成物の製造、熱可塑性樹脂組成物の成形性及び加工性、熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体の特性等を考慮して様々な目的で添加される、例えば、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、滑剤、シランカップリング剤、フィラー、エラストマー等の種々の添加剤を例示することができ、中でも、線膨張差に起因して発生する金属・樹脂間の歪みを緩和する観点から、添加剤としては特にエラストマーが好ましい。
【0033】
ここで、前記添加剤化合物としては、カルボキシル基及びその塩及びそのエステル、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アミノ基及びその塩、並びに、酸無水物基及びそのエステルからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物であるのがよく、中でも、グリシジル基を有する化合物であることが特に好ましい。前記添加剤化合物としては、α-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体であることが好ましく、また、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体であることがより好ましい。なお、以下、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0034】
α-オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。α-オレフィンは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0035】
前記添加剤化合物がα-オレフィン由来の構成単位を含むことで、樹脂成形体には可撓性が付与され易い。この可撓性の付与により、樹脂成形体が軟らかくなり、優れた金属−樹脂間の接合強度が発現すると共に耐久試験後の強度低下が防止され、長期に亘る優れた金属−樹脂間の接合強度が維持され易い。
【0036】
α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。前記添加剤化合物がα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを含むことで、金属−樹脂間の接合強度が向上する効果が得られる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸-n-オクチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-アミル、メタクリル酸-n-オクチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。中でも、特にアクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、金属−樹脂間の接合強度の向上に寄与する。
【0038】
α-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体、及び、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体は、従来公知の方法で重合することにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記共重合体を得ることが出来る。共重合体の種類は特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、このオレフィン系共重合体に、例えばポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸-2エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン共重合体等が、分岐状に又は架橋構造的に化学結合したオレフィン系グラフト共重合体であってもよい。
【0039】
本発明に用いるオレフィン系共重合体は、本発明の効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
【0040】
また、前記添加剤化合物の官能基については、熱可塑性樹脂組成物中に0.5〜150μmol/g、好ましくは0.5〜50μmol/g、更に好ましくは2〜25μmol/gの割合で含有される。この熱可塑性樹脂組成物中における官能基の割合が0.5μmol/gより低いと金属−樹脂間の接合強度が低下し易く、反対に150μmol/gより高くなると樹脂材料としての特性、特に流動性、引張強度や曲げ強度等の機械的強度、及び剛性に悪影響を与え易いという点で好ましくない。
【0041】
ここで、熱可塑性樹脂組成物中における官能基の割合は、この熱可塑性樹脂組成物中に添加する添加剤化合物における“官能基1個当りの分子量”をMとした場合、この添加剤化合物中の官能基の量は1/M(mol/g)となるので、この添加剤化合物を熱可塑性樹脂組成物中に例えば1質量%の割合で添加すると、(1/M)×(1/100)=1/100M(mol/g)と計算される。なお、前記“官能基1個当りの分子量”Mは、もし添加剤化合物が複数、例えば2個の官能基を有する場合には、添加剤化合物それ自体の分子量Mwの1/2になる。
【0042】
また、本発明においては、素地となる金属基材の表面全体に酸素含有皮膜を形成し、得られた表面処理済金属基材の必要な個所にのみ射出成形により、又は、熱圧着により樹脂成形体を接合してもよく、あるいは、コスト性を考慮して、金属基材の表面の一部又は必要な個所のみに酸素含有皮膜を形成し、得られた表面処理済金属基材の必要な個所に射出成形により、又は、熱圧着により樹脂成形体を接合してもよい。そして、金属基材の表面の一部又は必要な個所のみに酸素含有皮膜を形成する際には、酸素含有皮膜を形成する部分以外の部分を、例えばマスキングテープ等でマスキングした後に酸素含有皮膜を形成するための処理を行い、次いでこのマスキングした部分のマスキングテープ等を除去すればよい。
【0043】
本発明における金属樹脂接合体の製造方法においては、必要により上記酸素含有皮膜を形成する皮膜形成工程に先駆けて、金属基材の表面の前処理として、脱脂処理、エッチング処理、デスマット処理、粗面化処理、化学研磨処理、及び電解研磨処理から選ばれたいずれか1種又は2種以上の処理を行ってもよい。
【0044】
上記前処理として行う脱脂処理については、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、界面活性剤等からなる通常の脱脂浴を用いて行うことができ、処理条件としては、通常、浸漬温度が15℃以上55℃以下、好ましくは25℃以上40℃以下であって、浸漬時間が1分以上10分以下、好ましくは3分以上6分以下である。
【0045】
また、上記前処理として行うエッチング処理については、通常、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、又は、硫酸−リン酸混合水溶液等の酸水溶液が用いられる。そして、アルカリ水溶液を用いる場合には、濃度20g/L以上200g/L以下、好ましくは50g/L以上150g/L以下のものを用い、浸漬温度30℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下、及び処理時間0.5分以上5分以下、好ましくは1分以上3分以下の処理条件で浸漬処理を行うのがよい。また、酸水溶液である硫酸−リン酸混合水溶液を用いる場合には、硫酸濃度10g/L以上500g/L以下、好ましくは30g/L以上300g/L以下、及びリン酸濃が10g/L以上1200g/L以下、好ましくは30g/L以上500g/Lのものを用い、浸漬温度30℃以上110℃以下、好ましくは55℃以上75℃以下、及び浸漬時間0.5分以上15分以下、好ましくは1分以上6分以下の処理条件で浸漬処理を行うのがよい。
【0046】
更に、上記前処理として行うデスマット処理については、例えば1〜30%濃度の硝酸水溶液からなるデスマット浴を用い、浸漬温度15℃以上55℃以下、好ましくは25℃以上40℃以下、及び浸漬時間1分以上10分以下、好ましくは3分以上6分以下の処理条件で浸漬処理を行うのがよい。
【0047】
更にまた、上記前処理として行う粗面化処理については、例えば、アルミ基材の前処理後に、酸性フッ化アンモニウムを主成分とする処理液(日本シーヒーケミカル製商品名:JCB-3712)中に浸漬する方法等を例示することができる。この処理により,Siを合金中に含むAl材についてもSiを残存させずに溶解除去することが可能となるため、その後に酸素含有皮膜を付けても欠陥等の問題が生じることがなく、良好な接合強度を得ることが可能となる。
なお、上記前処理として行う化学研磨処理や電解研磨処理については、従来公知の方法を採用することができる。
【0048】
本発明における金属基材と樹脂成形体との間の接合の原理については、未だ不明な点も多いが、金属基材と樹脂成形体との接合後に金属基材の表面に形成した酸素含有皮膜が破壊されずに残存しており、また、次のような検証結果から、概ね以下のように考えている。
【0049】
例えば、金属がアルミ基材の場合、アルミ基材の表面に酸素含有皮膜を有する複数の表面処理済アルミ基材を形成し、一部の表面処理済アルミ基材については、その表面にグリシジル基を有するポリフェニレンスルフィド(PPS)の射出成形によりPPS成形体を接合してアルミPPS接合体とした。また、残りの表面処理済アルミ基材については、先ず、100℃に保持した電気炉中でステアリン酸を揮発させ、その中に表面処理済アルミ基材を24時間暴露し、酸素含有皮膜の上にステアリン酸の単分子膜を有するステアリン酸処理済アルミ基材とし、このステアリン処理済アルミ基材の表面にグリシジル基を有するPPSの射出成形によりPPS成形体を接合してステアリン酸処理アルミPPS接合体とした。
そして、これらアルミPPS接合体とステアリン酸処理アルミPPS接合体との間における接合強度の違いを測定したところ、結果は、ステアリン処理有アルミPPS接合体における接合強度は、アルミPPS接合体の接合強度に比べて、明確に低下していた。
【0050】
ステアリン酸は親水基であるカルボキシル基(COOH)と疎水基であるアルキル基(C17H35)とを併せ持ち、1分子の厚みをもつ単分子膜を形成する性質がある。ステアリン酸処理アルミPPS接合体においては、そのアルミ基材の酸素含有皮膜とステアリン酸のカルボキシル基側が化学結合してしまい、アルキル基側がPPS成形体と接触するかたちとなるため、その結果として、アルミ基材とPPS成形体の化学結合が阻害され、アルミPPS接合体の接合強度に比べて接合強度が低下したものと考えられる。
【0051】
また、ステアリン酸処理前後の表面処理済アルミ基材について、その表面を観察して比較検討したが、ステアリン酸単分子膜の有無により表面の構造に違いは見られなかった。一方、ステアリン酸処理後の表面処理済アルミ基材について、液滴を垂らし、その接触角を測定すると、接触角は180°に近くなり、液滴はほぼ球形になった。このことは、ステアリン酸のアルキル基側がアルミ基材の最表層側に偏在していることを裏付ける結果である。
【0052】
以上から、本発明の金属樹脂接合体における表面処理済金属基材とグリシジル基を有する樹脂成形体との間において、酸素含有皮膜の酸素と樹脂中のグリシジル基との間に化学的な結合が生じ、この化学的な結合による作用が金属基材と樹脂成形体との間の接合強度を高くする効果を発現しているものと考えられる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の金属樹脂接合体は、金属基材の表面を、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素含有皮膜で被覆し、また、熱可塑性組成物として酸素含有皮膜と反応する特定の官能基を有する添加剤化合物を含有する樹脂組成物を用い、この熱可塑性樹脂組成物の射出成形により、又は、この熱可塑性樹脂組成物の射出成形で得られた樹脂成形体の熱圧着により、金属基材表面の酸素含有皮膜の上に樹脂成形体を接合して得られるものであり、酸素含有皮膜を介して金属基材と樹脂成形体とが強固に接合されるだけでなく、長期に亘って優れた金属−樹脂間の接合強度を維持し得るものである。
【0054】
また、本発明の金属樹脂接合体の製造方法によれば、金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素含有皮膜を形成する皮膜形成工程において、ガス発生等もないほか常温での操作も可能であり、周辺の設備や環境に問題がなく、簡単な操作かつ低コストで、長期に亘って優れた金属−樹脂間の接合強度を発揮し得る金属樹脂接合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、本発明の実施例1で作成された金属樹脂接合体を説明するための説明図である。
図2図2は、本発明の実施例1で実施された金属−樹脂間の接合強度の評価試験の方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の金属樹脂接合体及びその製造方法を具体的に説明する。
1.以下の実施例及び比較例において、前処理として行われた粗面化処理及び酸素含有皮膜を形成する皮膜形成処理は以下の通りである。
【0057】
〔粗面化処理〕
先ず、前処理として、アルミ基材を、30質量%に調整した硝酸水溶液中に室温、0.5分間の条件で浸漬し、その後、5質量%に調整した水酸化ナトリウム水溶液中に50℃、0.5分間の条件で浸漬し、更に、30質量%に調整した硝酸水溶液中に室温、0.5分間の条件で浸漬した後、次いで、前処理後のアルミ基材を濃度20質量%に調整した酸性フッ化アンモニウムを主成分とする処理液(日本シービーケミカル製:JCB-3712)中に温度40℃、10分間の条件で浸漬し、粗面化処理済のアルミ基材を作製した。
【0058】
〔酸素含有皮膜の皮膜形成処理〕
(1) 処理法A(亜鉛含有皮膜の形成)
皮膜形成処理剤として水酸化ナトリウム濃度100g/L及び酸化亜鉛濃度25g/L(Zn2+として20g/L)の亜鉛イオン含有ナトリウム水溶液(NaOH-Zn2+溶液)を調製した。次に、この亜鉛イオン含有ナトリウム水溶液中にアルミ基材を室温下に1分間浸漬し(注:比較例1の場合のみ5分間の浸漬を行った。)、その後水洗し、表面に酸素含有皮膜として亜鉛元素を含有する亜鉛含有皮膜が形成された試験用の表面処理済アルミ基材を作製した。
【0059】
(2) 処理法B(熱水による水和酸化物皮膜の形成)
アルミ基材を91〜100℃の熱水(純水)中に0.5〜30分間浸漬し、表面に酸素含有皮膜としてベーマイトあるいは擬ベーマイトを主体とする水和酸化物皮膜が形成された試験用の表面処理済アルミ基材を作製した。
【0060】
(3) 処理法C(温水による水和酸化物皮膜の形成)
温度60〜80℃の温水(純水)を用い、浸漬時間を1〜5分間に変更した以外は、処理法B(熱水による水和酸化物皮膜の形成)と同様にして、アルミ基材の表面に酸素含有皮膜として非晶質成分を主体とする水和酸化物皮膜が形成された試験用の表面処理済アルミ基材を作製した。
【0061】
(4) 処理法D(レーザー処理による酸化物皮膜の形成)
レーザーエッチング処理(装置名:ミヤチテクノス/ML-7112A;レーザー光波長:1064nm、スポット径:50〜60μm、発振方式:Qスイッチパルス、周波数:10kHz)において、アルミ基材の表面にピッチ幅50μm間隔で同一方向にレーザー照射を行い、アルミ基材の表層に酸素含有皮膜として酸化物皮膜(Al2O3)が形成された試験用の表面処理済アルミ基材を作製した。
【0062】
2.以下の実施例及び比較例において、使用された樹脂組成物中の樹脂種及び添加剤化合物は以下の通りである。
〔樹脂組成物中の樹脂種〕
PPS(1):PPS系樹脂組成物〔ポリプラスチックス(株)製商品名:ジュラファイド(登録商標)RSF−10719;後述する添加剤化合物a及びbと、無機系充填材料50%を含む。〕
PPS(2):PPS樹脂〔(株)クレハ製商品名:フォートロンKPS W203A{溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1216sec-1、310℃)}〕
PBT:PBT樹脂〔ウィンテックポリマー(株)製商品名:TRB−CP〕
PP:PP系樹脂組成物〔(株)プライムポリマー製商品名:R−350G〕
POM:POM樹脂〔トリオキサン96.7質量%と1,3-ジオキソラン3.3質量%とを共重合させて得られたポリアセタール共重合体であり、メルトインデックス(190℃、荷重2160gで測定):9g/10min〕
LCP:芳香族ポリエステル液晶樹脂〔融点:280℃、溶融粘度(300℃):50.1Pa・s〕
【0063】
なお、上記の芳香族ポリエステル液晶樹脂(LCP)は、次のようにして製造されたものである。
攪拌機、留出管、ガス導入管、排出孔等を備えた反応器を用い、p-ヒドロキシ安息香酸345重量部(73mol%)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸175重量部(27mol%)、酢酸カリウム0.02重量部、及び無水酢酸350重量部を反応器内に仕込み、この反応器内を十分に窒素で置換した後、常圧下で150℃まで温度を上げ、攪拌を開始した。150℃で30分攪拌し、更に徐々に温度を上昇させ、副生する酢酸を留去した。温度が300℃に達したところで徐々に反応器内を減圧し、5Torr(即ち、665Pa)の圧力で1時間攪拌を続け、目標の攪拌トルクに達した時点で、反応器下部の排出孔を開け、窒素圧を使って生成した樹脂をストランド状に押し出して取り出した。取り出されたストランドをペレタイザーで粒子状に成形した。
【0064】
〔樹脂組成物中の添加剤化合物〕
添加剤化合物a:グリシジル基含有エラストマー〔日油(株)製商品名:モディパーA4300〕
添加剤化合物b:官能基を含有しないエラストマー〔ダウ・ケミカル日本(株)製商品名:Engage 8440〕
添加剤化合物c:グリシジル基を含有するエラストマー〔住友化学(株)製商品名:ボンドファースト7L〕
添加剤化合物d:イソシアネート化合物〔デグサジャパン(株)製商品名:Vestanat T1890/100〕
添加剤化合物e:エポキシ系化合物〔三菱化学(株)製商品名:エピコート JER1004K〕
添加剤化合物f:エステル系エラストマー〔日本ユニカー(株)製商品名:NUC−6570〕
添加剤化合物g:ジシアンジアミド〔日本カーバイド工業(株)製商品名:ジシアンジアミドG〕
添加剤化合物h:カルボジイミド化合物〔ラインケミージャパン(株)製商品名:スタバックゾールP400〕
添加剤化合物i:グリシジル基含有エラストマー〔住友化学(株)製商品名:ボンドファーストE〕
【0065】
3.以下の実施例及び比較例において、アルミ基材の表面に形成された酸素含有皮膜の「酸素含有率」及び「皮膜厚さ」と、「アルミ樹脂接合体の皮膜厚さ」は、以下のようにして測定した。
〔酸素含有皮膜の酸素含有率の測定〕
アルミ樹脂接合体の製造過程で得られた表面処理済アルミ基材について、EPMA(島津製:EPMA 1610)を用い、照射径が40μm/stepで縦横方向にそれぞれ512step測定するマッピング分析を実施した。ここで、測定面積は20.48mm×20.48mmであり、1stepのサンプリングタイムは20msであって、加速電圧は15kVであり、酸素の深さ方向の分解能は3μm以下である。次に、検出された酸素強度を事前に作成した検量線から重量百分率(wt%)として算出した。なお、検量線は、Al2O3標準試料(酸素含有率:48wt%)の酸素強度と高純度Al箔の酸素強度の2点から算出し作成したものを使用した。
【0066】
〔酸素含有皮膜の皮膜厚さの測定〕
アルミ樹脂接合体と、このアルミ樹脂接合体の製造過程で得られた表面処理済アルミ基材とについて、それぞれ、型集束イオンビーム加工装置(FEI社製:Quanta3D型)を用い、試料表面に集束イオンビームを当てて表面の原子をはじきとばすことにより観察部位を摘出すると共に、厚さ約100nmの薄膜状に加工して観察試料を作製した。観察は、透過電子顕微鏡(TEM)(FEI製:Tecnai G2 F20 S-TWIN)を用い、加速電圧200kVの条件で実施した。
【0067】
〔実施例1〕
(1) 表面処理済アルミ基材の作製
市販のアルミニウム板材(A5052;板厚2.0mm)から50mm×25mmの大きさのアルミ基材を切り出した。次に、上記の処理法A(亜鉛含有皮膜の形成)により、表面に亜鉛元素を含有する酸素含有皮膜が形成された試験用の表面処理済アルミ基材を作製した。
得られた表面処理済アルミ基材について、その酸素含有皮膜における酸素含有量測定、酸素強度測定、及び皮膜厚測定を行った。
結果を表1に示す。
【0068】
(2) 樹脂組成物
熱可塑性樹脂組成物として、表1に示す添加剤化合物a及び添加剤化合物bと、無機系充填材料50%を含むPPS系樹脂組成物〔PPS(1)〕を用いた。このPPS系樹脂組成物〔PPS(1)〕は溶融粘度が230Pa・s(310℃、1000s-1)の樹脂組成物である。
【0069】
(3) アルミ樹脂接合体の作製
上で得られた樹脂組成物を射出成形機に導入後、試験用表面処理済アルミ基材射出成形機の金型内にセットし、金型温度160℃、シリンダー温度320℃、射出速度70mm/s、保圧80MPa、保圧時間5秒の射出成形条件で樹脂の射出成形を行い、図1に示す試験用のアルミ樹脂接合体1を作製した。
このアルミ樹脂接合体1は、厚さ2mmの表面処理済アルミ基材2と、先端に5mm×5mm×10mmの大きさの先端接合部4を有すると共にこの先端接合部4以外の厚さが4mmのアルミ樹脂接合体1とが前記先端接合部4で接合されたもので、50mm2の接合部面積を有し、また、先端接合部4の部分には1.5mmφのピンゲート5が形成されている。
【0070】
〔アルミ樹脂接合体の接合強度の評価試験〕
このアルミ樹脂接合体1について、下記の方法でそのアルミ−樹脂間の接合強度の評価試験を行った。
図2に示すように、アルミ樹脂接合体1の表面処理済アルミ基材2を冶具6に固定し、PPS成形体3の上端にその上方から1mm/minの速度で荷重7を印加し、表面処理済アルミ基材2と樹脂成形体3との間の接合部分を破壊する試験を実施した。その後、破断面のアルミ側について目視判断により樹脂凝集破壊率を判定した。
結果を表1に示す。
【0071】
〔実施例2〜47〕
アルミ基材、酸素含有皮膜の皮膜形成処理、酸素含有皮膜、樹脂組成物、及び樹脂成形条件についてはそれぞれ表1〜表8に示す通りであり、実施例1と同様にして接合強度の評価試験を行った。
また、実施例29は30wt%HNO3溶液を用い、実施例30においては、0.1MのNaOH水を用いて熱水の導電率を表5に示す数値に調整した。
【0072】
なお、実施例3、4、12〜14、18、23、24、29〜34、42、43、45、及び46においては、実施例1と同じPPS系樹脂組成物〔PPS(1)〕を用いた。また、PPS樹脂〔PPS(2)〕を用いた実施例2においては、樹脂組成物中に40質量%のガラス系充填材料が添加されており、また、PBTを用いた実施例5〜9、15〜17、19〜22、25〜28、35、36、44、及び47、並びに、PPを用いた実施例10及び11においては、樹脂組成物中に30質量%のガラス系充填材料が添加されており、更に、POMを用いた実施例37〜40においては、25質量%のガラス系充填材料が添加されており、更にまた、LCPを用いた実施例41においては、50質量%のガラス系充填材料が添加されている。
【0073】
また、実施例3及び27においては、耐久性評価試験として、接合強度の評価試験に用いたアルミ−樹脂接合体と同様の試験片を用い、下記の冷熱衝撃試験を実施し、この冷熱衝撃試験後の接合強度を評価した。
【0074】
〔冷熱衝撃試験〕
冷熱衝撃試験機(エスペック(株)製)を用い、所定のサイクル条件で冷熱衝撃試験を行い、100サイクル後に取り出して、実施例1と同様にして接合強度の評価試験を行い、耐久性を評価した。
上記のサイクル条件は、実施例3では、160℃、1.5時間の加熱後に、−40℃に降温して1.5時間冷却し、その後再び160℃に昇温する加熱−冷却過程を1サイクルとし、また、実施例27では、140℃、1.5時間の加熱後に、−40℃に降温して1.5時間冷却し、その後再び140℃に昇温する加熱−冷却過程を1サイクルとした。
結果を表1〜表8に示す。
【0075】
〔比較例1〜18〕
アルミ基材、酸素含有皮膜の皮膜形成処理、酸素含有皮膜、樹脂組成物、及び樹脂成形条件についてはそれぞれ表9〜表11に示す通りであり、実施例1と同様にして接合強度の評価試験を行った。
【0076】
なお、比較例4及び7〜10においては、実施例1と同じPPS系樹脂組成物〔PPS(1)〕を用いた。また、PPS樹脂〔PPS(2)〕を用いた比較例1、11、17及び18においては、樹脂組成物中に40質量%のガラス系充填材料が添加されており、また、PBTを用いた比較例2、5、12及び16、並びに、PPを用いた比較例3、6及び15においては、樹脂組成物中に30質量%のガラス系充填材料が添加されており、また、POMを用いた比較例13においては、25質量%のガラス系充填材料が添加されており、更にまた、LCPを用いた比較例14においては、30質量%のガラス系充填材料が添加されている。
【0077】
また、比較例4〜6においては前処理としての粗面化処理と酸素含有皮膜を形成する皮膜形成処理(表面処理)を行わずに、また、比較例9及び10については酸素含有皮膜を形成する皮膜形成処理(表面処理)を行わずに、それぞれアルミ基材を用いた以外は、上記の実施例と同様にしてアルミ樹脂接合体を作製し、実施例1と同様にして接合強度の評価試験を行った。
また、比較例7、8においては、0.1MのNaOH水を用いて熱水の導電率を表10に示す数値に調整した。
結果を表9〜表11に示す。
【0078】
〔酸素含有皮膜の皮膜形成処理の参考例〕
実施例1と同じアルミ基材に対して、導電率25mS/mの水道水を用い、95℃で1分間の条件で熱水による皮膜形成処理を行った。
結果は、アルミ基材の表面に形成された酸素含有皮膜はその厚さがバラついているが0.02〜0.05μmに過ぎなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の金属樹脂接合体は、耐久試験の前後において共に優れた接合強度を有するため、自動車用各種センサーの部品、家庭電化製品の部品、産業機器の部品等の各種部品の製造に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…アルミ樹脂接合体、2…表面処理済アルミ基材、3…PPS成形体(樹脂成形体)、4…先端接合部、5…ピンゲート、6…冶具、7…荷重。
図1
図2