特許第6017714号(P6017714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センブレ エス.ピー.エー.の特許一覧

<>
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000002
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000003
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000004
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000005
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000006
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000007
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000008
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000009
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000010
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000011
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000012
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000013
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000014
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000015
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000016
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000017
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000018
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000019
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000020
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000021
  • 特許6017714-ワークピースのツーリング用装置 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017714
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ワークピースのツーリング用装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/04 20060101AFI20161020BHJP
   E01B 31/02 20060101ALI20161020BHJP
   B23D 47/12 20060101ALI20161020BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20161020BHJP
   B23B 47/02 20060101ALI20161020BHJP
   B23Q 5/04 20060101ALN20161020BHJP
   B23Q 5/10 20060101ALN20161020BHJP
   B23Q 5/58 20060101ALN20161020BHJP
【FI】
   B28D1/04 B
   E01B31/02
   B23D47/12
   B24B23/02
   B23B47/02 Z
   !B23Q5/04 530C
   !B23Q5/10
   !B23Q5/58 B
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-2535(P2016-2535)
(22)【出願日】2016年1月8日
(62)【分割の表示】特願2012-541467(P2012-541467)の分割
【原出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2016-128257(P2016-128257A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/IT2009/000542
(32)【優先日】2009年12月3日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512144818
【氏名又は名称】センブレ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ・ロサーニ
(72)【発明者】
【氏名】グアルティエロ・バレッツァーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンパオロ・ルチアーニ
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/113896(WO,A1)
【文献】 特開2002−066960(JP,A)
【文献】 特開2003−106391(JP,A)
【文献】 特開昭50−138496(JP,A)
【文献】 実開昭63−070845(JP,U)
【文献】 特開平08−085902(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/070880(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/04
B23B 47/02
B23D 47/12
B24B 23/02 − 27/06
B24B 47/00
E01B 31/02
B23Q 5/04 − 5/58
B25F 5/00
F16H 9/18
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的運動出力部材(4)を備えたモータ(3)と、工具(6,62,65,67)を支えるように構成された工具ホルダ(5)と、前記周期的運動出力部材(4)と前記工具ホルダ(5)とを係合させて、前記工具ホルダ(5)を周期的運動させるように設定する運動トランスミッタ(7)を有する、ワークピースをツーリングするための装置(1,2,60,63,66)であって、
前記運動トランスミッタ(7)が、速度伝達比アジャスター(8)を有し、該速度伝達比アジャスター(8)が、前記周期的運動出力部材(4)の周期的運動速度(ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(ω_m/ω_ph)を増加させることにより、前記モータ(3)の前記周期的運動出力部材(4)の周期的運動速度(ω m)に対する前記工具ホルダ(5)の周期的運動速度(ω ph)を減速させるように構成されており、
前記運動トランスミッタ(7)が、前記周期的運動出力部材(4)と共に回転するように前記周期的運動出力部材(4)に接続されたモータプーリー(10)と、前記工具ホルダ(5)と共に回転するよう前記工具ホルダ(5)に接続された従動プーリー(11)と、前記モータプーリー(10)と前記従動プーリー(11)とに巻回されたベルト(12)とを有し、前記モータプーリー(10)の直径が遠心力を介して調整されるものであり、
前記モータプーリー(10)が、
互いに一体となって、傾斜した両側面(17)を備えた第一のベルト座部(16)を区画する第一の半プーリー(14)及び第二の半プーリー(15)と、
校正された質量を備えた二つ以上のスラスト体(18)を有し、
前記第二の半プーリー(15)が、前記第一のベルト座部(16)と前記ベルト(12)とを径方向外方又は内方向へ移動させるように、前記第一の半プーリー(14)に対して移動可能に構成され、
前記二つ以上のスラスト体(18)が、前記した二つの半プーリー(14,15)の少なくとも一方のスラスト面(20)とプーリーの傍に位置する固定部材に形成された当接面(21)とにより形成されるスラスト座部(19)内に収容され、前記二つ以上のスラスト体(18)の遠心推力を、前記二つ以上の半プーリー(14,15)の相対的な運動に変換させるように構成されていることを特徴とする、ワークピースをツーリングするための装置(1,2,60,63,66)。
【請求項2】
前記速度伝達比アジャスター(8)が、前記モータ(3)の前記周期的運動出力部材(4)の周期的運動速度(ω_m)の既定の増速に応えて、速度伝達比(ω m/ω_ph)を低減させることにより、前記モータ(3)の前記周期的運動出力部材(4)の周期的運動速度に対する前記工具ホルダ(5)の周期的運動速度(ω_ph)を増速させるように構成されている、請求項1に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項3】
前記モータ(3)の前記周期的運動出力部材(4)の周期的運動と前記工具ホルダ(5)の周期的運動が、回転運動である、請求項1又は2に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項4】
前記従動プーリー(11)が、前記ベルト(12)の張力に従って、前記従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)の直径が調整されるように構成され、それにより、前記ベルト(12)の張力が増大するにつれて、前記従動プーリー(11)の前記第二のベルト座部(22)の直径が減少し、前記ベルト(12)の張力が減少するにつれて、前記従動プーリー(11)の前記第二のベルト座部(22)の直径が増大するようになっている、請求項1−3のいずれか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項5】
前記従動プーリー(11)が、
互いに一体となって、第二のベルト座部(22)を区画する第一の半プーリー(23)及び第二の半プーリー(24)と、スプリング(26)を有し、
前記第二の半プーリー(24)が、前記第二のベルト座部(22)とベルト(12)とを径方向外方又は内方向へ移動させるように、前記第一の半プーリー(23)に対して移動可能に構成され、前記スプリング(26)が、前記第二の半プーリー(24)に常時作用して、前記ベルト(12)の張力に抗して、前記第二のベルト座部(22)と前記ベルト(12)を径方向外周方向へ付勢している、請求項1−4のいずれか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項6】
前記従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)が、弾発伸張可能に構成され、ベルト締め付け手段として機能するように構成されている、請求項1−5のいずれか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項7】
ワークピースを現場でツーリングするためのポータブル装置として構成されている、請求項1〜の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項8】
鉄道レール(9)を切断するためのレール鋸(2)を有し、前記工具ホルダ(5)が研磨刃(6)を支持するように構成されている、請求項1〜の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項9】
穿孔マシーン(61)を有し、前記工具ホルダ(5)がドリルビット(62)を支持するように構成されている、請求項1〜の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項10】
平滑マシーン(64)を有し、前記工具ホルダ(5)が研磨ディスク(65)又は研磨ベルトを支持するように構成されている、請求項1〜の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項11】
鋸(66)を有し、前記工具ホルダ(5)が鋸刃(67)を支持するように構成されている、請求項1〜の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
【請求項12】
連結構造(27)を有し、該連結構造(27)が、前記連結構造(27)を被切断レール(9)にロックするためのレールコネクタ(29)を備えたベース部(28)と、レール鋸(2)を前記連結構造(27)にロックするための鋸コネクタ(31)を備えたガイドアーム(30)を有し、前記ガイドアーム(30)が、前記鋸コネクタ(31)にロックされた前記レール鋸(2)の、前記被切断レール(9)に対する第一のガイドされた近接離間運動(I)を許容するように、前記ベース部(28)に対して移動自在に連結されている、請求項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記ガイドアーム(30)と前記工具ホルダ(5)との間に配置されて、前記工具ホルダ(5)を前記ガイドアーム(30)に対して自律的に前進後退動させるように構成された切断位置オルタネータ(45)を有している、請求項12に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースをツーリングする(tooling)ための装置に関するもので、より詳しくは、例えば、鉄道レールの切断,鉄道レールの穿孔,コンクリート鉄道枕木又は補強コンクリート鉄道枕木の切断,溶接されたレール接合部の研磨の如き、ワークピースの現場でのツーリング用のポータブル装置に関するものである。
【0002】
本明細書において、用語「ツーリング」とは、例えば、ドリルのような利器,鋸刃,ソーイングチェーン(sawing chain),ソーイングバンド(sawing band),研磨刃,砥石車(emery wheel),研磨ディスク(sanding disk)等のような動力駆動工具によって材料を除去することを意味する。
【0003】
ツーリングプロセスによって、例えば、鋼,コンクリート,材木,岩石,補強コンクリート等のワークピースを、尖らせ、滑らかにさせ、ブローチングし、研磨し、穿孔し及び切断することができる。用語「ツーリング」とは、刃先をワークピースに宛がわせるために動力駆動工具が回転し、又は、周期的運動し又は往復運動をすることを含むものとする。
【0004】
従って、本発明は、周期的運動出力部材を備えたモータと、工具を支えるように構成された工具ホルダと、モータの出力部材と工具ホルダとを係合させて、工具自体がワークピースに作用することができるように工具ホルダを周期的運動又は往復運動をさせるように設定するトランスミッタを有した、ワークピースのツーリング用装置に関するものである。
【背景技術】
【0005】
上述した装置の一例としての公知のレール鋸、特に、ディスク状の回転研磨刃を用いたレール鋸を取り扱うためには、作業員が、特に、回転研磨刃とレールとの間の摩擦の変化の状態をコントロールするための豊富な経験と感性と能力を備えていることが必要とされる。実際に、刃がレールの鋼と研磨係合することにより、モータの運動に対する抵抗が急変し、モータを過剰に減速させ、ジャミング(jamming)させてしまうこととなる。レールの切断速度を減速させることと、レール鋸の部品の寿命を低減させることに加えて、モータのそのようなジャミングとティアリング(tearing)は、刃自体を壊してしまうことと作業員を傷付けてしまうというリスクを伴って、レールの鋼内で研磨刃をガタ付かせロックさせてしまうことに至る。公知のポータブルレールドリルや現場で用いられるレールドリル,研削機,コンクリート鋸等についても、同様な難事に遭遇する。
【0006】
この難事を回避するために現在対応可能な唯一の解決策は、熟練した作業員によって感知され且つ正確に判断される装置の反応(振動及び雑音)に従って、工具とワークピースとの接触圧を調整することによりツーリングを行うことである。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、公知技術に関連して上述したような不都合を回避するような特徴を有する、ワークピースのツーリングのための装置を提案することにある。
【0008】
本発明の特有な目的は、例えば、鉄道レール又は鉄道枕木のようなワークピースを現場でツーリングするためのポータブル装置であって、その使用に豊富な経験を必要とせず、運転中の動力駆動工具のロック及びガタ付きから良好に保護されるポータブル装置を提案することにある。
【0009】
これらの目的及びその他の目的は、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載の、ワークピースのツーリング用装置によって達成される。
【0010】
本発明の一側面によれば、現場でのワークピースのツーリング用ポータブル装置は、周期的運動出力部材を備えたモータと、工具を支えるように構成された工具ホルダと、モータの出力部材と工具ホルダとを係合させて、工具ホルダに周期的運動をさせるように設定する運動トランスミッタを有し、該運動トランスミッタが、速度伝達比アジャスター(transmission ratio adjuster)を有し、このアジャスターは、モータの周期的運動速度(ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータの周期的運動速度(ω m)に対する工具ホルダの周期的運動速度(ω_ph)を減速させるように構成されている。
【0011】
こうして、工具とワークピースとの間の抵抗によって齎される抵抗モーメントの既定の増加をモータが感知した時に、速度伝達比の変化によって、モータに作用する抵抗トルクが低減されて、それ故モータ速度の望ましくない減速の少なくとも一部が自動的に補償される。
【0012】
本発明の別の側面によれば、速度伝達比アジャスターが、モータの周期的運動速度(ω_m)の既定の増速に応えて、速度伝達比(ω m/ω_ph)を低減させることにより、モータの周期的運動速度(ω_m)に対する工具ホルダの周期的運動速度(ω_ph)を増速させるように構成されている。
【0013】
このような特徴があるために、本発明による装置は、例えば、研磨ディスク又は鋸刃のような工具の進行的摩耗に応じたモータ速度の望ましくない増速を補償することができる。実際に、研磨ディスクや鋸刃の摩耗は、研磨ディスクや鋸刃の直径と周方向の切断長さを減少させる結果となり、従って、研磨ディスク又は鋸刃の回転毎の研磨ディスク又は鋸刃とワークピースとの間での切断運動を低減させる結果となる。切断運動のこの低減は、モータに作用する抵抗モーメントの低減を伴い、その結果、モータ速度を増速させる。速度伝達比アジャスターは、モータに作用する抵抗トルクを増大させた結果で速度伝達比が低下することに伴うモータ速度の増速に反応して、モータ速度の増速を少なくとも部分的に補償し、工具、即ち、研磨ディスク又は鋸刃の運動速度を増速させる(工具の摩耗に起因する切断運動の低減を補償する)。
【0014】
本発明をより明確に理解し且つ本発明の利点を的確に認識することができるようにするべく、本発明を何ら制限するものではない幾つかの実施形態について、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、保護カバーの一部が除去されている、第一の運転状態にある、本発明の一実施形態に係る切断装置の部分側面図である。
図2図2は、第二の運転状態にある、図1に図示の切断装置を示した図である。
図3図3は、第一の運転状態にある切断装置の、図1中のIII−III線部分断面図である。
図4図4は、第二の運転状態にある切断装置の、図2中のIV−IV線部分断面図である。
図5図5は、第一の運転状態にある切断装置の、図1中のV−V線断面図である。
図6図6は、第二の運転状態にある切断装置の、図2中のVI−VI線断面図である。
図7図7は、第一の運転状態にある、図1図示の切断装置の斜視図である。
図8図8は、第二の運転状態にある、図1図示の切断装置の斜視図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係る切断装置の斜視図である。
図10図10は、図9に示した切断装置の細部を示した斜視図である。
図11図11は、図9に示した切断装置の更なる細部を示した側面図である。
図12図12は、図9に示した切断装置を上方から視た図である。
図13図13は、図9に示した切断装置の細部を上方から視た図である。
図14図14は、本発明の一実施形態に係る穿孔装置の側面図である。
図15図15は、図14に示した穿孔装置の細部を示した図である。
図16図16は、本発明の一実施形態に係るレール接合部平滑装置の正面図である。
図17図17は、図16に示した平滑装置の平面図である。
図18図18は、図16に示した平滑装置の側面図である。
図19図19は、図18に示した平滑装置の詳細を示した図である。
図20図20は、本発明の一実施形態に係るコンクリート鋸の斜視図である。
図21図21は、図20に示したコンクリート鋸の詳細を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明による、ワークピースのツーリング用装置について、鉄道レールの現場での切断用の切断装置,穿孔装置及びコンクリート鋸に係る、本発明を何ら限定するものではない実施形態を引用しながら、以下詳細に説明する。
【0017】
鉄道レールの現場での切断用の切断装置1は、周期的運動出力部材4(例えば、駆動シャフト)を備えたモータ3(例えば、内燃機関又は電動機)と、研磨ブレードを支えるように構成された工具ホルダ5(例えば、研磨ディスク6を支持する回転工具ホルダシャフト)とを有するレール鋸2を含んでいる。
【0018】
本明細書においては、用語「研磨ブレード」とは、例えば、鋸歯状刃,研磨刃,ディスク状刃,長尺な刃等のように、材料の除去を介して鋼を切断するように構成された全てのタイプの切断ブレードを含むものとして解釈される。
【0019】
レール鋸2は、更に、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5とを接続させて、工具ホルダ5に周期的な運動、好ましくは、回転運動をさせるように設定するための運動トランスミッタ7(例えば、ベルト伝動装置)を有している。これに代えて、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5の周期的運動を直線状又は曲線状の往復運動として構成することができる。
【0020】
本発明の一実施形態(図1図8)によれば、運動トランスミッタ7は、速度伝達比アジャスター(transmission ratio adjuster)8を有し、このアジャスター8は、モータ出力部材4の周期的運動速度(詳しくは、それの角速度ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(駆動シャフトの角速度/工具ホルダシャフトの角速度=ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータ3の出力部材4の周期的運動速度ω mに対する工具ホルダ5の周期的運動速度ω phを減速させるように構成されている。
【0021】
こうして、研磨ブレードとレールとの間の抵抗によって齎される抵抗モーメントの既定の増加をモータが感知した時に、速度伝達比の変化によって、モータに作用する抵抗トルクを低減させ、そのため、モータ速度の好ましくない減速の少なくとも一部を自動的に補償する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、速度伝達比アジャスター8は、モータ3の出力部材4の周期的運動速度ω_mの既定の増速に応えて、速度伝達比ω m/ω_phを低減させることにより、モータ3の出力部材4の周期的運動速度に対する工具ホルダ5の周期的運動速度ω_phを増速させるように構成されている。
【0023】
このような特徴があるために、切断装置1は、研磨ディスク6の進行的摩耗に応じて、モータ速度の望ましくない増速を補償する。実際に、研磨ディスク6の摩耗は、研磨ディスクの直径と周方向の切断長さを減少させる結果となり、従って、それは、研磨ディスク6の回転毎の研磨ディスク6とレール9との間での切断運動を低減させる結果となる。切断運動のこの低減は、モータ3に作用する抵抗モーメントを低減させ、その結果、モータ自体の速度を増速させることとなる。速度伝達比アジャスターは、モータに作用する抵抗トルクが増大された結果で速度伝達比を低下させることにより、モータ速度の斯かる増速に反応して、モータ速度の増速を少なくとも部分的に補償し、(研磨ディスクの摩耗に起因する切断運動の低減を補償するために)研磨ディスクの運動速度を増速させる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、運動トランスミッタ7は、駆動シャフト4と一体となって回転するよう駆動シャフト4に接続されたモータプーリー10と、工具ホルダシャフト5と一体となって回転するよう工具ホルダシャフト5に接続された従動プーリー11と、傾斜した両側部を備えた、より詳しくは、台形の断面を有したベルト12を有している。ベルト12は、モータプーリー10と従動プーリー11とに巻回されて、モータ運動を既定比率で工具、即ち、研磨ディスク6へ伝達する。
【0025】
工具ホルダシャフト5は、レール鋸2のモータハウジング14に接続された支持アーム13によって回転自在に支持されている。
【0026】
モータプーリー10は、第一の半プーリー14と第二の半プーリー15とを有し、これらプーリーが一体となって、傾斜した両側面17を有する第一のベルト座部16を区画する。第二の半プーリー15は、第一のベルト座部16の傾斜した両側面17を互いに近接及び離間させて第一のベルト座部16とベルト12とを径方向外方又は内方へ移動させるように、第一の半プーリー14に対して軸線方向(駆動シャフトの軸に対する軸線方向)へ移動可能に構成されている。有益なことに、第一の半プーリーと第二の半プーリーとの間の相対的な位置、従って、第一のベルト座部16の直径は、駆動シャフト4の角速度ω_mに従って生ずる遠心力を介して調整される。
【0027】
この目的のために、校正された質量を備えた二つ以上のスラスト体18を設けることができる。それらスラスト体18は、二つの半プーリー14,15の少なくとも一方のスラスト面20と図3及び4中でプーリーの右側に位置する固定部材に形成された当接面21とにより形成される専用のスラスト座部19内に収容されている。それらスラスト面20と当接面21とは、スラスト体18の遠心推力をそれに対応した半プーリー14,15の相対的な(軸線方向の)運動に変換させるように構成されている。
【0028】
図3及び図4に図示した実施形態によれば、第一の半プーリー14は、モータ側に固定的に配置され、第二の半プーリー15は、軸線方向に移動可能に構成され、スラスト体18の遠心推力が、(ベルト12の張力に抗して)第二の半プーリー15を第一の半プーリー14に向けて移動させる傾向にあって、第一のベルト座部16とベルト12を、例えば、径方向内方の停止位置(モータオフ、クラッチ解放、又は、速度伝達比の変化を活発にさせるには不十分なモータ速度、図2,4,6及び8参照)から径方向外方の初期位置(モータオン、クラッチ係合、例えば、研磨ブレードとレールとが圧接されていない時における、速度伝達比の変化を活発にさせるのに十分なモータ速度、図1,3,5及び7参照)へ搬送させる。
【0029】
切断作業中にモータ3が高い抵抗モーメントを感知した時に、モータは減速して、スラスト体18の遠心推力を低下させる。その結果、ベルト12の張力が、スラスト体18の遠心推力に打ち勝って、二つの半プーリー14,15を分解させて、ベルト12と共に第一のベルト座部16を径方向外方の初期位置から第一の径方向内方の補償位置(図2,4,6及び8参照)へ移動させて、工具ホルダ5の速度に対する駆動シャフト4の速度を増速させて、モータのジャミング(jamming)やチョーキング(choking)を回避する。
【0030】
同様に、直径が結果的に減少した研磨ディスク6の高レベルの摩耗に伴って、モータ3は、低減された抵抗モーメントを感知して、速度を上げる。これにより、スラスト体18の遠心推力を増大させる結果となり、ベルト12と共に第一のベルト座部16を、径方向内方の位置から第二の径方向外方の補償位置(図1,3,5及び7参照)に移動させて、工具ホルダ5の速度に対する駆動シャフト4の速度を減速させ、モータ速度を増速させると共に研磨ディスク6の周速を低下させる。
【0031】
速度伝達比ω_m/ω_phのこの自動的な調整の有効性は、モータプーリー10の直径の変化、即ち、第一のベルト座部16の直径の変化に起因するベルト12の張力の変化を利用して、従動プーリー11の直径をモータプーリー10の直径の変化に対する逆の変化に変えることにより、更に向上させることができる。
【0032】
この目的のために、ベルト12の張力に従って、従動プーリー11の直径、即ち、従動プーリーの第二のベルト座部22の直径を以下のように調整するよう従動プーリー11を構成することができる。(モータプーリー10の第一のベルト座部16の直径の増加に対応して)ベルト12の張力が増大するにつれて、従動プーリー11の第二のベルト座部22の直径が減少し、(モータプーリー10の第一のベルト座部16の直径の減少に対応して)ベルト12の張力が減少するにつれて、従動プーリー11の第二のベルト座部22の直径が増大する。
【0033】
本発明の一実施形態(図3及び4)によれば、従動プーリー11は、第一の半プーリー23と第二の半プーリー24とを有し、これら半プーリー23,24は、一体となって、傾斜した両側面25を備えた第二のベルト座部22を区画する。第二の半プーリー24は、第二のベルト座部22の傾斜した両側面25を互いに近接及び離間させて第二のベルト座部22とベルト12とを径方向外方又は内方向へ移動させることができるように、第一の半プーリー23に対して軸線方向(工具ホルダシャフト5の軸に対する軸線方向)へ移動可能に構成されている。コイルスプリング26が、第二の半プーリー24に常時作用して、第二のベルト座部22の傾斜した両側面25を、第二のベルト座部22とベルト12が径方向外周上に位置することとなる、第二のベルト座部22の傾斜した両側面25が相対的に一体にされる位置の方向へ付勢している。従動プーリー11の第一の半プーリー23と第二の半プーリー24との間の相対的な位置、従って、第二のベルト座部22の直径は、ベルト12の張力及びスプリング26の弾性力とベルトの両側部の角度との比率に従って調整されている。
【0034】
弾発伸張可能な第二のベルト座部22を備えた従動プーリー11は、ベルト締め付け手段としての機能をも発揮するため、ベルト12を締結するための更なる装置を設けることを全く回避することができる。上述した従動プーリー11のように構成された弾発伸張可能なプーリーのベルト締め付け機能は、速度伝達比アジャスターのコンセプトとは個別の有益で且つ創意に富んだものと考えられ、速度伝達比アジャスターを備えていない切断装置においても実現させることができる。
【0035】
本発明を何ら限定するものではない例として、速度伝達比は、毎分約10000回転速度の内燃機関に関して、ω_m/ω_ph=1.8…3.2の範囲内、好ましくは、ω_m/ω_ph=2…3の範囲内で、効果的には変化させることができるが、それは、用いられるモータのタイプ及びその回転速度に明らかに依存する。
【0036】
本発明の更に別の実施形態によれば、クラッチ51(図3)が駆動シャフトとモータプーリー10との間に介装されているので、クラッチの解放で、速度伝達比アジャスター8を備えたトランスミッタ7全体が、モータから分離して停止する。これにより、これらの部品の摩耗を低減させて、稼働寿命を長くさせることができる。
【0037】
自動速度伝達比アジャスターが存在していることと、従来技術に関連して上述した望ましくない不都合を結果として自動的に補償することにより、高い精度で切断することができる。
【0038】
本発明の別の実施形態(図14、15)によれば、ワークピースのツーリング用装置1は、限定されるものではないが、特に、鉄道レールウェッブ(railway rail web)に現場で孔をあけるための穿孔装置60を有している。
【0039】
鉄道レールウェッブに現場で孔をあけるための穿孔装置60は、周期的運動出力部材4(例えば、駆動シャフト)を備えたモータ3(例えば、内燃機関又は電動機)とドリルビット62を支えるように構成された工具ホルダ5とを有する穿孔マシーン61を含んでいる。
【0040】
穿孔マシーン61は、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5とを接続させて、工具ホルダ5に周期的な運動、好ましくは、回転運動をさせるように設定するための運動トランスミッタ7(例えば、ベルト伝動装置)を有している。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、運動トランスミッタ7は図1図8に示された運動トランスミッタと同様に構成することができる。詳述すると、運動トランスミッタは、速度伝達比アジャスター8を有し、このアジャスター8は、モータの出力部材4の周期的運動速度(特に、その角速度ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(駆動シャフトの角速度/工具ホルダシャフトの角速度=ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータ3の出力部材4の周期的運動速度ω mに対する工具ホルダの周期的運動速度ω_phを減速させるように構成されている。
【0042】
こうして、ドリルビット62とレールとの間の抵抗によって齎される抵抗モーメントの既定の増加をモータが感知した時に、速度伝達比の変化によって、モータに作用する抵抗トルクが低減されて、それ故モータ速度の望ましくない減速の少なくとも一部を自動的に補償される。
【0043】
運動トランスミッタ7の更なる特徴及び機能については、図1図8に示した実施形態に関連して既に詳述したが、穿孔装置60にも同様に当てはまる。
【0044】
本発明の更に別の実施形態(図16図19)によれば、ワークピースをツーリングするための装置は、限定されるものではないが、溶接されたレール接合部を現場で平滑にさせるための平滑装置63を含んでいる。
【0045】
溶接されたレール接合部を現場で平滑にさせるための平滑装置63は、周期的運動出力部材4(例えば、駆動シャフト)を備えたモータ3(例えば、内燃機関又は電動機)と研磨ディスク65又は研磨ベルトを支えるように構成された工具ホルダ5とを有する平滑マシーン64を含んでいる。
【0046】
平滑マシーン64は、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5とを接続させて、工具ホルダ5に周期的な運動、好ましくは、回転運動をさせるように設定するための運動トランスミッタ7(例えば、ベルト伝動装置)を有している。これに代えて、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5の周期的運動を直線状又は曲線状の往復運動として構成することができる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、運動トランスミッタ7は、図1図8に図示された実施形態の運動トランスミッタと同様に構成することができる。詳述すると、
運動トランスミッタ7は、速度伝達比アジャスター8を有していてもよく、このアジャスター8は、モータの出力部材4の周期的運動速度(特に、その角速度ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(駆動シャフトの角速度/工具ホルダシャフトの角速度=ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータ3の出力部材4の周期的運動速度ω mに対する工具ホルダの周期的運動速度ω_phを減速させるように構成されている。
【0048】
こうして、研磨ディスク65とレールとの間の抵抗によって齎される抵抗モーメントの既定の増加をモータが感知した時に、速度伝達比の変化によって、モータに作用する抵抗トルクが低減されて、それ故モータ速度の望ましくない減速の少なくとも一部が自動的に補償される。
【0049】
運動トランスミッタ7の更なる特徴及び機能については、図1図8に示した実施形態に関連して既に詳述したが、平滑装置63にも同様に当てはまる。
【0050】
本発明の更に別の実施形態(図20及び21)によれば、ワークピースをツーリングするための装置は、限定されるものではないが、鉄道枕木を現場で切断するためのコンクリート鋸の如き動力駆動鋸66を含んでいる。
【0051】
動力駆動鋸66は、周期的運動出力部材4(例えば、駆動シャフト)を備えたモータ3(例えば、内燃機関又は電動機)と鋸刃67を支えるように構成された工具ホルダ5とを有している。
【0052】
動力駆動鋸66は、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5とを接続させて、工具ホルダ5に周期的な運動、好ましくは、回転運動をさせるように設定するための運動トランスミッタ7(例えば、ベルト伝動装置)を有している。これに代えて、モータ3の出力部材4と工具ホルダ5の周期的運動を直線状又は曲線状の往復運動として構成することができる。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、運動トランスミッタ7は、図1図8に示された運動トランスミッタのように構成することができる。より詳述すると、運動トランスミッタ7は、速度伝達比アジャスター8を有していてもよく、このアジャスター8は、モータ出力部材4の周期的運動速度(詳しくは、それの角速度ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(駆動シャフトの角速度/工具ホルダシャフトの角速度=ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータ3の出力部材4の周期的運動速度ω mに対する工具ホルダ5の周期的運動速度ω phを減速させる。
【0054】
こうして、鋸刃67とレールとの間の抵抗によって齎される抵抗モーメントの既定の増加をモータが感知した時に、速度伝達比の変化によって、モータに作用する抵抗トルクを低減させ、そのため、モータ速度の好ましくない減速の少なくとも一部を自動的に補償する。
【0055】
運動トランスミッタ7の更なる特徴及び機能については、図1図8に示した実施形態に関連して既に詳述したが、鋸66にも同様に当てはまる。
【0056】
ここで、切断装置1について再び説明すると、本発明の一実施形態(図9図13)に係る切断装置1は、連結構造27を更に有している。この連結構造27は、連結構造27を被切断レール9にロックするためのレールコネクタ29を備えたベース部28と、レール鋸2を連結構造27にロックするための鋸コネクタ31を備えたガイドアーム30を有している。ガイドアーム30は、レールコネクタ29に固定されるレール9に対して近接及び離間動する、鋸コネクタ31に固定されたレール鋸2の(図10中に矢印Iで示した)第一のガイドされた移動を許容するようにベース部28に移動可能に連結されている。これは、一方で、レール9に対する研磨ブレード6の位置と移動の方向を機械的に決定することを可能にして、高い精度の切断を実現させ、他方、レール9の切断中にレール鋸2の重量の少なくとも一部をガイド支持することを可能にする。
【0057】
ベース部28に対するガイドアーム30の第一のガイドされた動きIは、好ましくは、回転運動(ガイドアーム30が、ベース部28にヒンジ付けされる)であるが、それに代えて、直線状又は曲線状の並進運動(ガイドアーム30が、ベース部28に対してスライド自在に接続される)であってもよい。
【0058】
いずれにしても、ガイドアーム30のそのようなガイドされた第一の動きIは、研磨ブレード6の切断面に平行となるように設定される。
【0059】
有益的には、ガイドアーム30は、レールからベース部28を取り外すことなくレール9の両側でのレール鋸2の簡単な位置決めと駆動とを許容するようにベース部28に対して反転可能に構成されている。
【0060】
ガイドアーム30のそのような反転は、第一のガイドされた動きIを決定する支点39を中心としたガイドアーム30の回転を通じて実現することができる。
【0061】
連結構造27は、例えば、関節接合された四辺形状体を構成するようにガイドアーム30とベース部28とに関節接合された一つ又はそれ以上の数のオリエンテーションバー32(図9)によって、ガイドアームの移動路に沿ったレール鋸2の向きを決定するように構成された鋸方向付け手段を更に有している。
【0062】
ガイドアーム30を反転させるようにするべく、オリエンテーションバー32は、相互反転状態の双方においてレール鋸2の正確な方位を決定するように、予め定められた二つの異なった位置の間で移動可能なオリエンテーションプレート33を介してベース部28に関節接合されている。
【0063】
レールコネクタ29は、固定顎35と固定顎35にヒンジ付けされた可動顎36とを備えたクランプ万力34を含んでいてもよく、可動顎36は、可動顎36と固定顎35の反応部38との間に作用する、ハンドルを備えた止めネジ37によってレール9に対して押圧係合させられる。
【0064】
鋸コネクタ31は、ガイドアーム30の自由端41の近傍に配置することができ、鋸コネクタ31は、レール鋸2のセンタリング・カップリング座部43(例えば、ピン座部と回転防止カップリング面)と係合するようになっているセンタリング・カップリング部42(例えば、センタリングピンと回転防止カップリング面)と、センタリング・カップリング部42をセンタリング・カップリング座部43と係合させるように引き寄せるための止めねじ44を有していてもよい。
【0065】
本発明の一側面によれば、ポータブル切断装置1は、切断位置オルタネータ45(以下、「位置オルタネータ」と言う)を含み、この位置オルタネータ45は、ガイドアーム30と工具ホルダ5との間に介装されて、工具ホルダ5をガイドアーム30に対して自律的に(図9及び10中に矢印IIで示した方向へ)交互に前進後退動させるように構成されている。
【0066】
切断装置1のこの構成によって、交互の切断運動を自律的に生じさせて、このポータブル装置を介して、支援を必要としない(換言すると、作業員の直接的な介入を必要としない)現場でのレールの切断を可能にさせる。これは、作業員の体に害を及ぼすような作業姿勢,多くのスパーク及び摩耗粉の発生、及び、移動する研磨ブレードが手元直近に存在していることに起因する作業員の健康に対する被害及びその他負傷のリスクを実質的に低減させることができる。このように構成されたポータブル切断装置は、経験豊富で熟練した労働力を必要せず、又、作業員の体力も必要としない。
【0067】
位置オルタネータ45によって齎される工具ホルダ5の交互の動きIIは、ガイドアーム30の第一の動きIの平面と平行であって、第一の支点39から離間した、ガイドアーム30の第二の支点40(図9及び10)を中心としたレール鋸2全体の交互回転運動を介して齎される研磨ブレード6のアーチ状の軌跡を決定する。
【0068】
それに代えて、工具ホルダ5の交互運動IIは、直線状、又は、曲線と組み合わさった直線状の軌跡に沿って起こるものであってもよい。
【0069】
このように構成された切断装置1は、ベース部28に対するガイドアーム30の上述した第一の運動Iとガイドアーム30に対する工具ホルダ5の上記第二の交互運動IIとが組み合わさって、レールの切断運動を自律的に実施することができる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、位置オルタネータ45は、ガイドアーム30とレール鋸2との間に、換言すると、それのセンタリング・カップリング座部43に機能的に配置されている。
【0071】
有益なことに、鋸コネクタ31は、交互運動IIを位置オルタネータ45からレール鋸2に伝達する。
【0072】
有益なことに、オルタネータ45自体は、鋸コネクタ31から突出して動力取り出し装置47、好ましくは、プーリーとねじり剛性態様(トルク抵抗)で係合するのに好適な駆動シャフト46を介して駆動されるカム、好ましくは、偏心カム、更に好ましくは、デスモドロミック・カム(desmodromic cam)50(図11)を採用したオルタネータであり、動力取り出し装置47は、レール鋸2のトランスミッタ7と接続されている。こうして、位置オルタネータ45の作動のための運動エネルギーは、トランスミッタ7を介してモータ3から得られる。
【0073】
図11に示した実施形態によれば、駆動シャフト46の回転運動は、一連のギアを介して、偏心カム56を備えた歯車55に伝達される。偏心カム56は、センタリング・カップリング部42に接続されたカムフォロアー57と係合する(カムフォロアー57を交互に移動させる)。カムフォロアー57は、スプリング58の弾性力に抗して離間動して、移動に対する高い抵抗が生じた場合に位置オルタネータの弾発的分離を許容することの可能な二つの部分を有している。
【0074】
動力取り出しプーリー47とトランスミッタ7のベルト12との効果的なカップリングを確実にするべく、トランスミッタ7は、ベルト12と動力取り出しプーリー47との間の接触長さを長くさせるように動力取り出しプーリー47の近傍に配置されたリターンプーリー49を更に含んでいてもよい。
【0075】
デスモドロミック・カム機構が存在するために、位置オルタネータ45は、交互運動IIに対する予め定められた抵抗力が生ずるまで交互運動IIを実施するように構成され、その抵抗力を越えると、位置オルタネータ45は、交互運動IIの伝達から解放され、そのため、過剰に高い機械的抵抗力に起因する切断装置1に対する損傷を回避することができる。
【0076】
有益なことに、センタリング・カップリング座部43は、レール鋸2の両側に形成され、及び/又は、オルタネータ45の駆動シャフト46は、レール鋸2の両側において動力取り出し装置47と係合することができて、レール鋸2をその両側の一方又は他方においてガードアーム30と接続させることを可能にし、そのことが、ガイドアーム30を反転させて、レールの両側での連続した切断作業を行う場合に役立つ。
【0077】
レール鋸2とガイドアーム30の重量の一部をオフセットするために、及び、研磨ブレード6が跳ね上がったり又は裂けたり或いはバウンディングすることのなく可能な限り連続した運動をすることを促進させるために、連結構造27のベース部28とガイドアーム30との間にサスペンション又はスプリング−ダンパーユニット48を配置することができる。
【0078】
サスペンション48は、ガイドアーム30の反転位置に従って、二つのストップ部54に夫々支えられるように構成された連結ロッド52を介してベース部28に関節接合されている。
【0079】
レール切断装置の実施形態に関連して詳細に述べた連結及び運動の特徴は、ワークピースをツーリングする装置、特に、穿孔装置60,平滑装置63又はコンクリート鋸66を備えた装置について当てはまる。
【0080】
当業者は、上述した、ワークピースのツーリング装置の各実施形態及びその特徴が、従来技術に鑑みて、それ自体有益であり、特に、実施の容易性と、例えば、ワークピースの切断,平滑化,穿孔,裁断のようなワークピースのツーリングの正確性と、装置の耐久性と、作業員の健康の保護及び装置の使い勝手の良さ及び可搬性との相乗効果の点において有益であることを理解することができる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 周期的運動出力部材(4)を備えたモータ(3)と、工具(6,62,65,67)を支えるように構成された工具ホルダ(5)と、運動出力部材(4)と工具ホルダ(5)とを係合させて、工具ホルダ(5)を周期的運動させるように設定する運動トランスミッタ(7)を有する、ワークピースをツーリングするための装置(1,2,60,63,66)であって、
運動トランスミッタ(7)が、速度伝達比アジャスター(8)を有し、該アジャスター(8)が、モータ出力部材(4)の周期的運動速度(ω_m)の既定の減速に応えて、速度伝達比(ω_m/ω_ph)を増加させることにより、モータ(3)の出力部材(4)の周期的運動速度(ω m)に対する工具ホルダ(5)の周期的運動速度(ω ph)を減速させるように構成されていることを特徴とする、ワークピースをツーリングするための装置(1,2,60,63,66)。
[2] 速度伝達比アジャスター(8)が、モータ(3)の出力部材(4)の周期的運動速度(ω_m)の既定の増速に応えて、速度伝達比(ω m/ω_ph)を低減させることにより、モータ(3)の出力部材(4)の周期的運動速度に対する工具ホルダ(5)の周期的運動速度(ω_ph)を増速させるように構成されている、[1]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[3] モータ(3)の出力部材(4)の周期的運動と工具ホルダ(5)の周期的運動が、回転運動である、[1]又は[2]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[4] 運動トランスミッタ(7)が、出力部材(4)と共に回転するように出力部材(4)に接続されたモータプーリー(10)と、工具ホルダ(5)と共に回転するよう工具ホルダ(5)に接続された従動プーリー(11)と、モータプーリー(10)と従動プーリー(11)とに巻回されたベルト(12)を有し、モータープーリー(10)が、遠心力を介して直径が調整される第一のベルト座部(16)を有している、[1]〜[3]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[5] 従動プーリー(11)が、ベルト(12)の張力に従って、従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)の直径が調整されるように構成され、それにより、ベルト(12)の張力が増大するにつれて、従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)の直径が減少し、ベルト(12)の張力が減少するにつれて、従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)の直径が増大するようになっている、[4]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[6] モータープーリー(10)が、
互いに一体となって、傾斜した両側面(17)を備えた第一のベルト座部(16)を区画する第一の半プーリー(14)と第二の半プーリー(15)と、
校正された質量を備えた二つ以上のスラスト体(18)を有し、
第二の半プーリー(15)が、第一のベルト座部(16)とベルト(12)とを径方向外方又は内方向へ移動させるように、第一の半プーリー(14)に対して移動可能に構成され、
スラスト体(18)が、二つの半プーリー(14,15)の少なくとも一方のスラスト面(20)とプーリーの傍に位置する固定部材に形成された当接面(21)とにより形成されるスラスト座部(19)内に収容され、それらスラスト面(20)と当接面(21)とが、スラスト体(18)の遠心推力をそれに対応した半プーリー(14,15)の相対的な運動に変換させるように構成されている、[4]又は[5]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[7] 従動プーリー(11)が、
互いに一体となって、第二のベルト座部(22)を区画する第一の半プーリー(23)と第二の半プーリー(24)と、
スプリング(26)を有し、
第二の半プーリー(24)が、第二のベルト座部(22)とベルト(12)とを径方向外方又は内方向へ移動させるように、第一の半プーリー(23)に対して移動可能に構成され、スプリング(26)が、第二の半プーリー(24)に常時作用して、ベルト(12)の張力に抗して、第二のベルト座部(22)とベルト(12)を径方向外周方向へ付勢している、[5]又は[6]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[8] 従動プーリー(11)の第二のベルト座部(22)が、弾発伸張可能に構成され、ベルト締め付け手段として機能するように構成されている、[4]に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[9] 装置(1,2,60,63,66)が、ワークピースを現場でツーリングするためのポータブル装置として構成されている、[1]〜[8]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[10] 鉄道レール(9)を切断するためのレール鋸(2)を有し、工具ホルダ(5)が研磨刃(6)を支持するように構成されている、[1]〜[9]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[11] 穿孔マシーン(61)を有し、工具ホルダ(5)がドリルビット(62)を支持するように構成されている、[1]〜[9]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[12] 平滑マシーン(64)を有し、工具ホルダ(5)が研磨ディスク(65)又は研磨ベルトを支持するように構成されている、[1]〜[9]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[13] 鋸(66)を有し、工具ホルダ(5)が鋸刃(67)を支持するように構成されている、[1]〜[9]の何れか一項に記載の装置(1,2,60,63,66)。
[14] 連結構造(27)を有し、該連結構造(27)が、連結構造(27)を被切断レール(9)にロックするためのレールコネクタ(29)を備えたベース部(28)と、レール鋸(2)を連結構造(27)にロックするための鋸コネクタ(31)を備えたガイドアーム(30)を有し、ガイドアーム(30)が、鋸コネクタ(31)にロックされたレール鋸(2)の、レール(9)に対する第一のガイドされた近接離間運動(I)を許容するように、ベース部(28)に対して移動自在に連結されている、[10]に記載の装置(1)。
[15] ガイドアーム(30)と工具ホルダ(5)との間に配置されて、工具ホルダ(5)をガイドアーム(30)に対して自律的に前進後退動させるように構成された切断位置オルタネータ(45)を有している、[9]に記載の装置(1)。
[16] 周期的運動出力部材(4)を備えたモータ(3)と、工具(6,62,65,67)を支えるように構成された工具ホルダ(5)と、運動出力部材(4)と工具ホルダ(5)とを係合させて、工具ホルダ(5)を周期的運動させるように設定するベルトトランスミッタ(7)を有する、ワークピースを現場でツーリングするための装置(1,2,60,63,66)であって、
ベルトトランスミッタ(7)が、ベルト座部を備えたプーリー(11)から作られてベルト締め付け手段を含み、前記ベルト座部の直径が、プーリー(11)の弾性予荷重とベルトの張力に依存して弾発的に可変に構成されていることを特徴とする、ワークピースを現場でツーリングするための装置(1,2,60,63,66)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21