特許第6017718号(P6017718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017718
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】コンクリートの打継枠材
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   E04G21/02 103A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-29484(P2016-29484)
(22)【出願日】2016年2月19日
【審査請求日】2016年4月14日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315018440
【氏名又は名称】廣瀬 武士
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 武士
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012896(JP,A)
【文献】 特開2010−001662(JP,A)
【文献】 特開2002−309772(JP,A)
【文献】 実開平04−066210(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の多孔質弾性体が立設した状態で包装体に内包されたコンクリートの打継枠材であって、
前記包装体は、その開口部が前記多孔質弾性体の上方で閉塞して把持可能な把持部を形成しており、
前記多孔質弾性体は、直方体状であって相互に略同一形状の第1弾性部材と第2弾性部材とが、接合材により密着して接合されたものであり、
前記第1弾性部材と第2弾性部材の接合面には、当該多孔質弾性体における任意の一つの側面に対し平行であり、かつ、長軸方向が多孔質弾性体の底面に対し垂直となる様に、略板状部材が設けられており、
前記略板状部材は、平面視において略円形状、矩形状、多角形状又はこれらの組み合わせからなる板状であり、
前記接合材の形成領域は、前記略板状部材を含む接合面の全面であり、
前記多孔質弾性体内部における前記略板状部材の埋め込み位置は、水平面に対する垂直方向の断面視において、前記多孔質弾性体の一方端から前記略板状部材までの幅をa、前記略板状部材の最大幅をb、前記多孔質弾性体の他方端から前記略板状部材までの幅をcとした場合に、a:b:c=2〜4:3〜5:2〜4を満たしていることを特徴とするコンクリートの打継枠材。
【請求項2】
前記包装体は、前記多孔質弾性体よりも上方であって、前記閉塞した位置よりも下方の任意の位置に、少なくとも1つの通気孔を有していることを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの打継枠材。
【請求項3】
前記略板状部材の各面が凸状又は凹状に湾曲した湾曲面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリートの打継枠材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート製の建造物を造る際に、コンクリートの打継工程で打継枠材として用いられるコンクリートの打継枠材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製の建造物を造る建設現場で梁や床等を造る際には、コンクリートの打設工程を複数回に分けて行う打継工法が採用されている。このコンクリートの打継工法としては、エアフェンス工法やラス工法等がある。
【0003】
前記エアフェンス工法は、空気の注入又は排出により膨張収縮させることが可能な円筒状チューブを打継用部材として用いるものであるが、当該円筒状チューブを並べて設置する際に、隣接する円筒状チューブの間からコンクリートが漏れないようにする必要があり熟練を要する。また、他職の大工・土工との協力が必要になるという問題がある。さらに、エアフェンスに生じた穴からの空気漏れによるエアフェンス機能の喪失や、コンクリート補強用鉄筋の設置位置が変動しないような空気圧の調整の難しさ等のエアフェンス特有の様々な問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するため、例えば、下記特許文献1では、角柱状に成形したスポンジの芯に鉄筋を有して補強され、コン止め部への設置に際しての作業性とコンクリート固化後の撤去性を増す目的でその外周をポリ製の袋により覆われたコン止め用部材が開示されている。しかし、当該コン止め用部材では、スポンジの芯に鉄筋が使用されているため重量が重く、運搬効率が悪い上に、コスト高という問題がある。また、鉄筋はスポンジの上部から長く突出した状態で露出しているため、鉄筋に錆びが生じ、打設されたコンクリートを汚す場合がある。また、ポリ製の袋は開口しているため、雨水やコンクリート打設前の清掃で使用する洗浄水、コンクリート打設の際のコンクリートがポリ製の袋内に浸入する場合がある。この場合、コン止め用部材の重量が更にかさみ、運搬効率が一層悪化する。また、スポンジに吸収された水が腐敗し、人体に悪影響を与える等、作業上の安全性が悪化する場合もある。さらに、狭い場所にコン止め用部材を設置する場合、スポンジの上部から突出している鉄筋が邪魔となって設置できず、結果として隙間が生じたままでコンクリートの打設を行わなければならない場合がある。また、コン止め用部材の設置の際に、鉄筋がスポンジ下部及び外周のポリ製の袋を突き破り、コン止め用部材の底部から突出する場合がある。その状態でコンクリートを打設すると、鉄筋の突出した部分もコンクリートに埋まり、解体の際に斫り作業が必要になり、施工効率が低下するという問題がある。また、鉄筋が底部から突出すると、取扱い上危険である。
【0005】
前記ラス工法は、金属製フェンス(ラス網)を打継用部材として用いるものであるが、当該金属製フェンスは重量が重く、運搬効率が悪い。さらに、金属製フェンスを設置する際に、コンクリート補強用の鉄筋との接触を回避する必要があるため、施工効率も非常に悪い。また、施工には一定程度の熟練を要するという問題がある。さらに、金属製フェンスは解体されることはなくコンクリート内に埋め込まれた状態で放置されるため、錆が発生したりや水漏れの原因となることがある。
【0006】
これらの問題を解決するため、例えば、下記特許文献2では、打継枠材が、コンクリートと容易に剥離し得る易剥離性包容体と、易剥離性包容体に包容され柱体に形成された多孔質弾性体とからなる打継枠材が開示されている。下記特許文献2によれば、打継枠材は軽量に製造できるため、運搬効率を向上させ、打継部の施工効率の改善が図れるとされている。また、配設の際に打継部に配置されている鉄筋と接触しても変形により配設阻害を回避できるため、鉄筋との干渉により配設作業が手間取ることがないとされている。しかし、当該打継枠材は、コンクリートの側圧が小さい床スラブ用を目的としたものであり、一定程度以上のコンクリートの側圧に対しては、多孔質弾性体の変形により歪な形状でコンクリートを固めてしまう場合がある。その結果、解体の際には、作業性が低下すると共に、易剥離性包容体及び多孔質弾性体が破損することがある。そして、破損してちぎれた多孔質弾性体の破片がコンクリートに付着した場合には、斫り作業が必要になり、施工効率が低下するという問題がある。また、前記打継枠材は軽量な上に、易剥離性包容体により多孔質弾性体を密封した構造であるため、コンクリートの打設の際に、当該コンクリートに流されたり、浮いたりすることがある。その結果、打継枠材はコンクリートを堰止めることができず、これを流出させてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−85148号公報
【特許文献2】特開2010−1662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工効率と運搬効率に優れると共に、コストの低減と安全性を実現することが可能なコンクリートの打継枠材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、前記問題点を解決すべく、コンクリートの打継枠材について検討した結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のコンクリートの打継枠材は、直方体状の多孔質弾性体が立設した状態で包装体に内包されたコンクリートの打継枠材であって、前記包装体は、その開口部が前記多孔質弾性体の上方で閉塞して把持可能な把持部を形成しており、前記多孔質弾性体の内部には、当該多孔質弾性体における任意の一つの側面に対し平行であり、かつ、長軸方向が多孔質弾性体の底面に対し垂直となる様に、略板状部材が埋め込まれていることを特徴とする。
【0011】
前記多孔質弾性体は、直方体状であって相互に略同一形状の第1弾性部材と第2弾性部材とが、接合材により密着して接合されたものであり、前記略板状部材は、前記第1弾性部材と第2弾性部材の接合面に設けられていることが好ましい。
【0012】
前記の構成に於いて、前記包装体は、前記多孔質弾性体よりも上方であって、前記閉塞した位置よりも下方の任意の位置に、少なくとも1つの通気孔を有していることが好ましい。
【0013】
また前記の構成に於いて、前記多孔質弾性体内部における前記略板状部材の埋め込み位置は、水平面に対する垂直方向の断面視において、前記多孔質弾性体の一方端から前記略板状部材までの幅をa、前記略板状部材の最大幅をb、前記多孔質弾性体の他方端から前記略板状部材までの幅をcとした場合、a:b:c=2〜4:3〜5:2〜4を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明のコンクリートの打継枠材(以下、「打継枠材」という場合がある。)によれば、多孔質弾性体の内部には、当該多孔質弾性体における任意の一つの側面に対し平行であり、かつ、長軸方向が多孔質弾性体の底面に対し垂直となる様に、略板状部材が埋め込まれている。これにより、多孔質弾性体は、その弾性の程度に関わらず自立可能な様に補強することができる。また、例えば、コンクリートの流し込みの際にも、多孔質弾性体は、その弾性の程度に関わらず、当該コンクリートの流動により生じる側圧に耐え、立設した状態を維持することができる。
【0015】
また、略板状部材は、多孔質弾性体の内部に埋め込まれており、突出していないことから、本発明の打継部材を狭い場所に設置する場合にも、略板状部材が設置を阻害することがない。さらに、略板状部材は、鉄筋等と比較して、包装体を突き破って突出し難いものであるので、取り扱いの際の安全性の向上も図れる。
【0016】
さらに、本発明によれば、包装体の開口部が、内包している多孔質弾性体の上方で閉塞して把持部を形成しているので、打継部材を撤去する際の作業効率や運搬効率に優れる。また、開口部から雨水やコンクリート打設前の清掃で使用する洗浄水、コンクリート打設の際のコンクリート等が包装体内部に侵入するのを防止できるので、侵入した雨水等が多孔質弾性体に吸収されて重量が大きくなり、運搬効率が低下するのを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の一形態に係るコンクリートの打継枠材を模式的に表す斜視図である。
図2】前記コンクリートの打継枠材の多孔質弾性体の内部に略板状部材が埋め込まれている状態を表す図1のA−A線矢視断面図である。
図3】前記コンクリートの打継枠材が配置された状態を表す俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(コンクリートの打継枠材)
本実施の形態に係るコンクリートの打継枠材(以下、「打継枠材」という。)について、図1及び図2に基づき以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大または縮小等して図示した部分がある。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態の打継枠材1は、略板状部材21が内部に埋め込まれた多孔質弾性体11と、多孔質弾性体11が内包される包装体31とを少なくとも有する。打継枠材1は、コンクリートを打設する際に、フレッシュコンクリートを堰き止めて、コンクリートを打継する役割を果たすことが可能な部材であり、例えば、梁や柱、床スラブ部分等のコンクリートの打継面に幅広く使用することができる。
【0020】
ここで、前記「打継」とは、硬化後のコンクリートの端面に新たにコンクリートを打ち込むことを意味する。また、前記「コンクリート」とは、セメント、水、細骨材、粗骨材及び必要に応じて加える混和材料を構成材料とし、これらを練り混ぜその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたものを意味する。さらに、前記「フレッシュコンクリート」とは、固まらない状態にあるコンクリートを意味する。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態の多孔質弾性体11は、その全体形状が直方体状であり、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bとが、接合材により密着して接合されたものである。多孔質弾性体11を直方体状とすることにより、打継枠材1の形状についても全体として直方体状にすることができる。そして、打継枠材1が直方体状であると、当該打継枠材1を複数隣接して配置する際に、相互に密着させることができる。その結果、コンクリートの打設の際に、打継面に並べられた複数の打継枠材1が隙間のない堰き止め部材となり、フレッシュコンクリートが隙間から漏出するのを防止することができる。また、コンクリートとの打継面の平坦性を向上させることができ、打継面での空気の混入を低減させ、打継面のコンクリート強度の改善が可能になる。
【0022】
ここで、前記「直方体状」とはすべての面が長方形(正方形も含む。)で構成される六面体を意味し、立方体状のものを含み得る。但し、天面又は底面の少なくとも一方が平行四辺形状、台形状等の矩形の四角柱は含まれない。また、各面の角部は直角である場合の他、R形状となっていてもよく、あるいは面取り等されていてもよい。
【0023】
第1弾性部材11a及び第2弾性部材11bは、相互に略同一形状の直方体状である。第1弾性部材11a及び第2弾性部材11bの各面の角部はR形状であってもよく、あるいは面取り等されていてもよい。
【0024】
多孔質弾性体11(第1弾性部材11a及び第2弾性部材11b)は、多孔質で弾性変形が可能なものであれば特に限定されない。当該多孔質弾性体11を構成する材料としては特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ゴム、シリコーン樹脂、天然スポンジ、綿、不敷布又は麻等の繊維を押し固めたもの等が挙げられる。また、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bは同一材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。尚、前記「多孔質弾性体」とは、細孔を有し、かつ前記細孔が連通して通気性があるものであって、弾性変形が可能な材料からなる部材のことを意味する。
【0025】
多孔質弾性体11の高さは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定されるが、通常は、コンクリートの厚みよりも高くなるように設定される。例えば、打継枠材1を床スラブと床スラブを打継ぐ工程に用いる場合、多孔質弾性体11の高さは、300mm〜400mmが好ましく、180mm〜350mmがより好ましく、200mm〜300mmがさらに好ましい。また、予め形成された壁や柱に床スラブを打継ぐ場合には、多孔質弾性体11の高さは、600mm〜1500mm以下であることが好ましく、800mm〜1100mmがより好ましく、1000mm〜1100mmがさらに好ましい。また、多孔質弾性体11の底面における長辺の長さは、100mm〜150mm、好ましくは100mm〜130mm、より好ましくは100mm〜110mmの範囲であり、短辺の長さは、50mm〜90mm、好ましくは70mm〜90mm、より好ましくは80mm〜90mmの範囲である。
【0026】
尚、本実施の形態に於いて、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bの大きさは、両者が略同一形状であるため、多孔質弾性体11の大きさに応じて設定される。但し、本発明は、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bが相互に異なる形状である場合や異なる大きさである場合を除外するものではない。これらの場合においても、前述の多孔質弾性体11の大きさの範囲内で、第1弾性部材11a及び第2弾性部材11bの大きさを適宜設定すればよい。
【0027】
多孔質弾性体11の重さは特に限定されないが、通常は、0.29N〜0.98Nであり、好ましくは0.39N〜0.88Nであり、より好ましくは、0.39N〜0.78Nである。多孔質弾性体11の重さを0.29N以上にすることにより、フレッシュコンクリートの側圧に対向し流されるのを防止することができる。その一方、多孔質弾性体11の重さを0.98N以下にすることにより、作業性及び運搬性の低下を抑制することができる。
【0028】
多孔質弾性体11の硬さは特に限定されないが、通常は、60N〜210Nであり、好ましくは88N〜150Nであり、より好ましくは、88N〜98Nである。多孔質弾性体11の硬さを60N以上にすることにより、フレッシュコンクリートの側圧により形状変形するのを抑制することができる。その一方、多孔質弾性体11の硬さを210N以下にすることにより、後述の補強用鉄筋を介する状態で他の打継枠材1と隣接させても、当該多孔質弾性体11の形状変形により隙間を生じさせることなく配置することができる。
【0029】
第1弾性部材11aと第2弾性部材11bを接合させる接合材としては特に限定されず、例えば、スポンジ用強力両面テープ等の接着剤(感圧性接着剤を含む。)等が挙げられる。また、接合材の形成領域は特に限定されない。例えば、第1弾性部材11a又は第2弾性部材11bの何れか一方において、接合面12の周縁部に接合材を形成してもよい。これにより、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bを隙間なく密着して接合させることができる。また、接合材を、略板状部材21の配置位置を除く全ての領域に均一に形成して両者を接合してもよい。これにより、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bを隙間なく密着させることに加えて、略板状部材21の位置ズレも防止することができる。また、略板状部材21の再利用も図れる。但し、略板状部材21の再利用を行わない場合は、第1弾性部材11a又は第2弾性部材11bの何れか一方の接合面12の全面に接合材を形成してもよい。尚、接合材として接着剤等を用いる場合には、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bの接合面から当該接合材を表出させないのが好ましい。これにより、表出した接合材が包装体31と接着するのを防止することができ、当該包装体31から多孔質弾性体11を取り出すのを容易にする。
【0030】
略板状部材21は、平面視において長方形状となっている。但し、本発明はこれに限定されず、例えば、円形状若しくは楕円形状等の略円形状、正方形状、平行四辺形状若しくは台形状等の矩形状、多角形状又はこれらの組み合わせ等からなる板状であってもよい。また、略板状部材21は、各面が平坦面である場合の他、凸状又は凹状に湾曲した湾曲面であってもよい。この場合、凸状に湾曲した湾曲面が、フレッシュコンクリートの流動方向に対向する様に打継枠材1を配置することで、当該フレッシュコンクリートの側圧に対する強度の向上が図れる。また、機械的強度及びフレッシュコンクリートの側圧に対する強度の向上を目的として、略板状部材21の任意の面に突条部を設けてもよい。この場合、突条部は略板状部材21の長手方向に平行となる方向に設けるのが好ましい。尚、略板状部材21の各面の角部は直角である場合の他、R形状となっていてもよく、あるいは面取り等されていてもよい。
【0031】
略板状部材21は、多孔質弾性体11の内部に埋め込まれており、より詳細には、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bの接合面12に、露出することなく設けられている。また、略板状部材21は、その幅方向22が、多孔質弾性体11の側面13に対し平行になるように配置されている。さらに、略板状部材21は、多孔質弾性体11の底面に対し、長手方向が略垂直となる様に保持されている。尚、略板状部材21が楕円形状、正四角形状、長方形状、平行四辺形状等の場合に、その長軸方向が、多孔質弾性体11の底面に対し略垂直となる様に保持してもよい。ここで、長軸方向とは、略板状部材21の厚み方向の断面のうちで、最も長い径(長径)を有する断面における長径の方向を意味する。尚、本発明は、略板状部材21の長手方向(又は、略板状部材21が楕円形状、正四角形状、長方形状、平行四辺形状等の場合にはその長軸方向)が多孔質弾性体11の底面に対し略垂直である場合に限定されるものではなく、一定の角度で傾斜していてもよい。この場合、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bの接合面12も、多孔質弾性体11の底面に対し一定の角度で傾斜していることになる。
【0032】
本実施の形態において、略板状部材21は、第1弾性部材11aと第2弾性部材11bの接合面12であって、当該接合面12の中央に位置するように設けられている。より詳細には、図2に示すように、水平面に対する垂直方向の断面視において、多孔質弾性体11の一方端から略板状部材21までの幅をa、略板状部材21の最大幅をb、多孔質弾性体11の他方端から略板状部材21までの幅をcとしたとき、a:b:c=3:4:3となるように設けられている。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。接合面12における略板状部材21の位置は、前記a〜cがa:b:c=2〜4:3〜5:2〜4の範囲内で適宜変更することができる。前記a〜cを前記数値範囲内にすることにより、例えば、棒状の鉄筋を芯として用いた従来の打継枠材と比較して、多孔質弾性体11に対する面内での補強性能の向上が図れる。また、打継枠材1を、後述の補強用鉄筋を介する状態で他の打継枠材1と隣接させても、略板状部材21に阻害されることなく、多孔質弾性体11が当該補強用鉄筋を包み込み、隙間を生じさせることなく配置することができる。
【0033】
また、略板状部材21は、高さ方向においても多孔質弾性体11の天面及び底面からそれぞれ略同一となる距離に位置する様に設けられている。具体的には、多孔質弾性体11の底面から略板状部材21の下端までの距離をd、略板状部材21の長手方向の最大長さをe、多孔質弾性体11の天面から略板状部材21の上端までの距離をfとしたとき、略板状部材21の高さ位置は、d:e:f=1:13:1となるように設けられている。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。接合面12における略板状部材21の高さ位置は、前記d:e:f=0を超えて4以下:7以上30以下:0を超えて4以下となる範囲内で適宜変更することが可能である。前記d〜fの比率を前記数値範囲内にすることにより、打継枠材1の使用中に略板状部材21が多孔質弾性体11の天面や底面から突出するのを抑制することができる。また、略板状部材21の配置が上方に偏り過ぎて重心の位置が高くなり、打継枠材1の立設状態が不安定化するのを低減することができる。
【0034】
略板状部材21の構成材料は特に限定されず、例えば、アルミニウムや鉄等の金属、木材、竹、塩化ビニル等のプラスチック樹脂等が挙げられる。これらのうち、打継枠材1の軽量化の観点からは、アルミニウムや木材、竹、プラスチック樹脂が好ましい。また、機械的強度の向上やフレッシュコンクリートの側圧に対抗するための重量を確保するとの観点からは鉄が好ましい。
【0035】
例えば、打継枠材1を床スラブと床スラブを打継ぐ工程に用いる場合、略板状部材21の重さは、0.098N〜7.35Nの範囲が好ましく、0.098N〜0.137Nの範囲がより好ましい。また、例えば、予め形成された壁や柱に床スラブを打継ぐ場合には、略板状部材21の重さは、0.098N〜7.35Nの範囲が好ましく、2.94N〜7.35Nの範囲がより好ましい。略板状部材21の重さを0.098N以上にすることにより、フレッシュコンクリートの側圧に抗する強度の向上が図れ、当該コンクリートの打設の際に、打継枠材1が流されるのを抑制することができる。また、略板状部材21の重さを7.35N以下にすることにより、運搬効率及び作業性の低下を抑制することができる。
【0036】
略板状部材21の硬度は、多孔質弾性体11の弾性の程度に関わらず自立可能な程度に補強できる範囲内であれば特に限定されない。
【0037】
包装体31は、多孔質弾性体11の外形に則した直方体状の形状を有している。これにより、例えば、複数の打継枠材11を配列する際に当該包装体31に皺等が生じ、平坦でない打継面が形成されるのを防止することができる。また、包装体31は、多孔質弾性体11の上方で開口した開口部を有しており、当該開口部を閉塞して把持可能な把持部35を形成している。これにより、雨水やコンクリート打設前の清掃で使用する洗浄水、コンクリート打設の際にフレッシュコンクリートが包装体31の内部に入り込むのを防止することができる。その結果、略板状部材21が金属からなる場合であっても錆の発生を低減することができる。また、把持部35を備えているので、コンクリートの硬化後に打継枠材1を除去する際に、当該把持部35を把持して引き抜けば、容易にこれを取り除くことができる。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、包装体31は少なくとも多孔質弾性体11を内包し、かつ、把持部35も形成できる様な形状と容積を備えていればよい。
【0038】
包装体31の高さは、多孔質弾性体11を内包し、かつ、把持部35を形成することができる程度であれば特に限定されない。具体的には、包装体31の高さは、多孔質弾性体11を包装体31が内包した状態で、多孔質弾性体11の天面から開口部までの距離が100〜200mm、好ましくは130mm〜180mm、より好ましくは150mm〜180mmとなる様に設定すればよい。前記距離を100mm以上にすることにより、十分に把持することが可能な程度に把持部35を形成することができる。その一方、前記距離を200mm以下にすることにより、コストの増大をおさえ、把持部35が作業性を低下させない程度にその大きさを抑制することができる。
【0039】
包装体31の厚さは特に限定されないが、通常は0.08mm〜0.2mmの範囲であり、好ましくは0.09mm〜0.2mm、より好ましくは0.1mm〜0.2mmである。包装体31の厚さを0.08mm以上にすることにより、当該包装体31の構成材料にもよるが、引張強度が低下し過ぎて破断等するのを防止することができる。また、包装体31の厚さを0.2mm以下にすることにより、製造コストの増大を抑制することができる。尚、包装体31の厚さは、均一であることが好ましい。
【0040】
本実施の形態に於いて、包装体31は内部が視認可能な程度に可視光透過性を有している。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、可視光透過性を有しないものであってもよい。尚、「可視光透過性」とは、可視光領域(波長350〜780nm(ナノメートル))において光透過性を有することを意味する。
【0041】
包装体31の構成材料としては特に限定されないが、作業中に破れない程度に引張強度を有し、コンクリートに対する離型性を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ビニロン等が挙げられる。尚、「離型性」とは、包装体31が、硬化後のコンクリートに対し剥離可能な性質を有することを意味する。
【0042】
包装体31の開口部の閉塞は、閉塞部材34によりなされる。閉塞部材34は、細長い帯状のバンドと留め具を備えており、当該留め具は、バンドの長手方向の途中の上面側に設けられバンドの一方の端部を差し込んで長手方向の任意の箇所で留めることを可能にしている。閉塞部材34は、包装体31において、内包された多孔質弾性体11の天面よりも上方の部分(上部32)における任意の位置の外周を、前記バンドで巻き回し、当該バンドの一部を留め具で留めることにより、当該部分を結束している。また、本実施の形態の閉塞部材34は包装体31から容易に取り外しが可能であり、これにより多孔質弾性体11の再利用を可能にしている。
【0043】
尚、本発明はこの態様に限定されるものではなく、従来公知の種々のものを採用することができる。例えば、クリップ状の留め具や、はさみ状の留め具等を用いることができる。また、プラスチック製の緩み止め付き紐状結束具等も挙げられる。さらに、上部32の任意の部分を手で結んで閉塞してもよい。
【0044】
本実施の形態に於いて、閉塞部材34による閉塞位置は、多孔質弾性体11に対し可能な限り近傍となる様に設定されている。これにより、包装体31の内部で、多孔質弾性体11が不必要に動くのを防止している。また、把持部35の長さをできるだけ長く確保することができ、容易に把持可能にしている。尚、把持部35の長さとは、閉塞部材34による閉塞位置から包装体31の先端までの距離を意味する。
【0045】
把持部35の長さは100mm〜190mmの範囲であり、好ましくは100mm〜160mm、より好ましくは100mm〜130mmである。把持部35の長さを100mm以上にすることにより、把持が困難になるのを防止し、作業効率や運搬効率の向上を図っている。その一方、把持部35の長さを190mm以下にすることにより、コストの増大をおさえ、当該把持部35が作業の邪魔とならない程度にその大きさを抑制することができる。
【0046】
ここで、包装体31の上部32であって、閉塞部材34による閉塞位置よりも下方には、2つの通気孔33が設けられている。これにより、例えば、フレッシュコンクリートの側圧が加えられた際には、包装体31内部の空気を通気孔33から排出させることができ、内部圧力の上昇を抑制する。その結果、包装体31の破断等を防止することができる。尚、通気孔33は少なくとも1つ以上設けられていればよい。また、通気孔33の形成位置は、包装体31の上部32であって、閉塞部材34による閉塞位置よりも下方であれば、特に限定されない。これにより、コンクリート打設の際にフレッシュコンクリートが包装体31の内部に入り込むのを防止することができる。
【0047】
本実施の形態に於いて、通気孔33の開口形状は略円形状となっているが、本発明はこれに限定されず、矩形状、多角形状等であってもよい。また、通気孔33の大きさは、雨水やコンクリート打設前の清掃で使用する洗浄水、コンクリート打設の際にフレッシュコンクリート等が包装体31の内部に侵入しない程度であれば特に限定されない。例えば、通気孔33が円形状である場合、直径は、通常、2mm〜8mmの範囲であり、好ましくは3mm〜6mm、より好ましくは4mm〜5mmである。
【0048】
(コンクリートの打継枠材の使用方法)
次に、本実施の形態の打継枠材1の使用方法について、床スラブ部分のコンクリート打継工程に用いる場合を例にして、図3に基づき以下に説明する。
【0049】
図3に示すように、コンクリートの打継工程を行うには、先ず、底部型枠42上に補強用鉄筋41を上下2段に格子状になる様に設ける。補強用鉄筋41は、打継枠材1を支持して補強する役割と、コンクリートの打設後、鉄筋コンクリートの補強材としての役割を兼ね備えるものである。
【0050】
次に、打継枠材1を、フレッシュコンクリートを流し込む方向(打設方向)Xに対し垂直となる様に、直線状に密着して複数配列させる。また、このとき、各打継枠材1は、フレッシュコンクリートの流れを堰止める面とは反対側の面が、打設方向Xに対し垂直となる方向に延在する上下2段の補強用鉄筋41に密着して支持される様に配置する。これにより、打継枠材1は、軽量の場合であってもフレッシュコンクリートに流されることなく、その流れを堰き止めることができる。
【0051】
また、打継枠材1は、その側面13、14が打設方向Xに対し垂直となる様に、それぞれ立設した状態で配列される。ここで、各打継枠材1における多孔質弾性体11の内部には略板状部材21が埋め込まれているので、当該打継枠材1は立設した状態を維持することができる。
【0052】
直線状に密着して配列される打継枠材1のうち、隣接する打継枠材1の間で、打設方向Xと平行な方向に延在する補強用鉄筋41が介在している場合、多孔質弾性体11は形状変形して補強用鉄筋41を包み込んでいる。これにより、補強用鉄筋41を挟む部分においても、隣接する打継枠材1同士が隙間なく密着してフレッシュコンクリートの洩れを防止している。これは、すでに前述した通り、各打継枠材1において、多孔質弾性体11の形状変形により補強用鉄筋41を吸収し包み込むのを阻害しない様に略板状部材21が埋め込まれているからである。尚、本発明において、打継枠材1としては、底面が平行四辺形状又は台形状であるような四角柱状のものを含まない。これは、隣接する打継枠材1同士の間で、打設方向Xに平行となる方向に延在する補強用鉄筋41が介在する場合に、隣接する打継枠材1同士が隙間なく密着してフレッシュコンクリートの洩れを防止することが困難になるからである。その結果、打継面にも段差等が生じる場合がある。
【0053】
さらに、打継枠材1を、その側面13が打設方向Xに対し垂直となる様にそれぞれ配列することで、各打継枠材1の内部に埋め込まれている略板状部材21の幅方向22を当該打設方向Xに対し垂直となる様に配置することができる。その結果、コンクリートの打設の際に、当該フレッシュコンクリートの側圧に対し十分に対抗させることができる。尚、本発明においては、打継枠材1として、略板状部材21の幅方向22が側面13に対し平行ではなく、任意の角度(90°を除く。)を形成する様に埋め込まれている場合を含むものではない。略板状部材21の幅の大きさにもよるが、隣接する打継枠材1の間において、打設方向Xと平行な方向に延在する補強用鉄筋41が介在する部分で、多孔質弾性体11が形状変形して補強用鉄筋41を包み込もうとしても、略板状部材21がこれを阻害するおそれがあるからである。
【0054】
次に、床スラブであるコンクリートの打設を行う。コンクリートの打設方法及び条件については特に限定されず、適宜設定すればよい。コンクリートの打設の際、打継枠材1は、当該フレッシュコンクリートの流れを堰止める面とは反対側の面が上下2段の補強用鉄筋41により支持されているので、フレッシュコンクリートの側圧を受けて流されることはない。また、各打継枠材1における多孔質弾性体11の内部には略板状部材21が埋め込まれているので、当該打継枠材1は立設した状態を維持できる。
【0055】
打設したコンクリートが硬化した後は、打継枠材1を除去する。除去作業は、把持部35を把持して打継枠材1を上方に引き上げることで容易に行うことができる。これにより、打継枠材1がフレッシュコンクリートの流れを堰止める面が型枠となって打継面が形成され、コンクリートの打継を完了することができる。
【0056】
(その他の事項)
本実施の形態においては、打継枠材として、多孔質弾性体が第1弾性部材及び第2弾性部材からなり、略板状形状21が第1弾性部材と第2弾性部材の接合面の中央部に設けられた態様について説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、多孔質弾性体は、3以上の弾性部材からなるものであってもよい。また、多孔質弾性体11の天面の任意の位置を入口とする切れ目を設け、当該切れ目に略板状部材21を挿入して埋め込んでもよい。切れ目は、略板状部材21の埋め込み位置の深さまで設けるのが好ましい。また、切れ目の幅や開口面積は、略板状部材21の幅や厚みに応じて設定すればよい。尚、前記切れ目は、予め定めた深さ位置まで設けた後に略板状部材料21を挿入する方法の他、多孔質弾性体11の天面において、切れ目を浅く設けた後に、当該切れ目に略板状部材21を押し込み、押圧力を加えながら所定の位置まで挿入する方法、当該切れ目を設けずに略板状部材21を押し込んで所定の位置まで挿入する方法などが挙げられる。
【0057】
また、本実施の形態に於いては、本実施の形態の打継枠材1の使用方法として、床スラブ部分のコンクリート打継工程に用いる場合を例にして説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、梁や柱等のコンクリートの打継にも適用可能である。
【0058】
また、打継枠材1の配置方法についても、本実施の形態においては、当該打継枠材1の側面13が打設方向Xに対し垂直となる様に配置する場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、打継枠材1の側面13が打設方向Xと平行となる様に配置することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 打継枠材
11 多孔質弾性体
12 接合面
13 側面
21 略板状部材
22 略板状部材の幅方向
31 包装体
32 包装体の上部
33 通気孔
34 閉塞部材
35 把持部
41 補強用鉄筋
42 底部型枠
【要約】
【課題】施工効率と運搬効率に優れると共に、コストの低減と安全性を実現することが可能なコンクリートの打継枠材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のコンクリートの打継枠材1は、直方体状の多孔質弾性体11が立設した状態で包装体31に内包されたコンクリートの打継枠材1であって、包装体31は、その開口部が多孔質弾性体11の上方で閉塞して把持可能な把持部35を形成しており、多孔質弾性体11の内部には、多孔質弾性体11における任意の一つの側面に対し平行であり、かつ、長軸方向が多孔質弾性体の底面に対し垂直となる様に、略板状部材21が埋め込まれていることを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3