特許第6017720号(P6017720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017720
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】弾性装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/18 20060101AFI20161020BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   F16F1/18 Z
   G01L5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-44858(P2016-44858)
(22)【出願日】2016年3月8日
【審査請求日】2016年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511071234
【氏名又は名称】株式会社トライフォース・マネジメント
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 田 和 廣
(72)【発明者】
【氏名】岡 田 美 穂
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−354049(JP,A)
【文献】 特開2004−325367(JP,A)
【文献】 特開平8−122178(JP,A)
【文献】 特開2006−274718(JP,A)
【文献】 特開平3−48021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00− 5/28
G01L 1/00− 1/26
F16F 1/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の構造体間に配置される弾性装置であって、
前記一対の構造体に固定される一対の支持部と、
前記一対の支持部間に延び、並列に配置された複数の波状板と、
を備え、
各波状板は、中央の平板部と、前記平板部を挟む一対の傾斜板とを有する所定の波形状を含み、
前記複数の波状板は、一の波状板の側方から見た形状の位相他の波状板の側方から見た形状の位相と異なる、2つの波状板を含む
ことを特徴とする弾性装置。
【請求項2】
前記複数の波状板は、2本の波状板である
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性装置。
【請求項3】
前記複数の波状板は、3本の波状板である
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性装置。
【請求項4】
前記3本の波状板のうち、中央の波状板を挟む2本の波状板は、側方から見た形状の位相が同じである
ことを特徴とする請求項3に記載の弾性装置。
【請求項5】
前記複数の波状板間は、互いに連結されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性装置。
【請求項6】
前記中央の波状板は、当該中央の波状板を挟む2本の波状板の一方に連結されている
ことを特徴とする請求項4に記載の弾性装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや産業機械の動作制御を行うために、種々のタイプの力覚センサが利用されている。また、電子機器の入力装置のマン・マシンインターフェイスとしても、小型の力覚センサが組み込まれている。このような用途に用いる力覚センサには、小型化およびコストダウンを図るために、できるだけ構造を単純にするとともに、三次元空間内での各座標軸に関する力をそれぞれ独立して検出できるようにすることが要求される。
【0003】
現在、一般に利用されている多軸力覚センサは、機械的構造部に作用した力の特定の方向成分を、特定の部分に生じた変位として検出するタイプのものと、特定の部分に生じた機械的な歪みとして検出するタイプのものに分類される。前者の変位検出タイプの代表格は、静電容量素子式の力覚センサであり、一対の電極により容量素子を構成しておき、作用した力によって一方の電極に生じた変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出するものである。たとえば、下記の特許文献1(その英語版が特許文献2)や特許文献3(その英語版が特許文献4)には、この静電容量式の多軸力覚センサが開示されている。
【0004】
一方、後者の機械的な歪み検出タイプの代表格は、歪みゲージ式の力覚センサであり、作用した力によって生じた機械的な歪みを、ストレインゲージなどの電気抵抗の変化として検出するものである。たとえば、下記の特許文献5(その英語版が特許文献6)には、この歪みゲージ式の多軸力覚センサが開示されている。
【0005】
しかしながら、上述した各特許文献に開示されている多軸力覚センサは、いずれも機械的構造部の厚みが大きくならざるを得ず、装置全体を薄型化することが困難である。その一方で、ロボット、産業機械、電子機器用入力装置などの分野では、より薄型の力覚センサの登場が望まれている。そこで、特許文献7には、力の作用により環状部材の形状を変形させ、この変形に起因して生じる各部の変位を容量素子によって検出する力覚センサが提案されている。この特許文献7に開示されている力覚センサは、構造を単純化して薄型化するのに適した構造を有している。
【0006】
しかしながら、上述した静電容量素子式の力覚センサでは、環状部材の様々な変形態様を検出するために、様々な箇所に容量素子を配置する必要があるため、容量素子を構成する電極構成が複雑にならざるを得ない。しかも、容量素子を構成する一対の電極の相対位置は、検出精度に影響を与える重大な要因になるため、個々の電極の位置調整に多大な作業負担が必要になる。特に、複数の容量素子を対称性をもたせて配置し、これらを用いて差分検出を行う場合、個々の容量素子ごとに対向電極が平行になるようにするとともに、複数の容量素子についての電極間隔が互いに等しくなるような調整が必要になる。このため、商業的に利用する上では、生産効率が低下し、コストが高騰するという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するため、本件発明者は、PCT/JP2015/052784において、検出リングの4箇所に、弾性装置、具体的には、第1の変形部、第2の変形部及び変位部の3枚の板状片(板バネ)を組み合わせて構成された波形の弾性装置を等間隔で配置した力覚センサ(本願では、先願力覚センサと呼ぶ)を提案した。図15は、先願力覚センサに採用されている検出リング600の一例を示しており、図16は、波形の弾性装置500の一例を示している。この先願力覚センサによれば、構造が単純で、しかも検出素子の配置の自由度を向上させることにより、高い生産効率が実現可能な力覚センサを提供することができる。図15の先願力覚センサの弾性装置500(図16参照)は、一例として、以下に説明される本発明による弾性装置に置き換えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−325367号公報
【特許文献2】米国特許第7219561号公報
【特許文献3】特開2004−354049号公報
【特許文献4】米国特許第6915709号公報
【特許文献5】特開平8−122178号公報
【特許文献6】米国特許第5490427号公報
【特許文献7】国際公開第WO2013/014803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先願力覚センサは、X,Y,Zの各座標軸方向の力及び各座標軸まわりのモーメントをそれぞれ独立して検出するものであるが、前述した波形の弾性装置500は、特定の座標軸方向の力ないし特定の座標軸まわりのモーメントを検出する際に、他の座標軸方向の力ないし他の座標軸まわりのモーメントの影響を受けやすい場合がある。この場合、特定の座標軸方向の力ないし特定の座標軸まわりのモーメントの検出精度が低下してしまうため、問題である。
【0010】
本件発明者は、鋭意検討を重ねた結果、このような検出精度の低下は、前述の波形の弾性装置500の厚み方向dnのヤング率Enと長手方向dlのヤング率Elとの比El/Enが小さいことに起因することを知見した。換言すれば、長手方向dlの力により弾性変形しやすく、厚み方向dnの力により弾性変形しにくい、という弾性特性を有する弾性装置が実現できれば、前述の検出精度を向上させ得ることを知見した。ここで、長手方向dlとは波形の板状片が延びている方向を意味し、厚み方向dnとは、長手方向dl及び検出部の底面に直交する方向を意味している。また、ヤング率En、Elとは、弾性装置を構成している材料それ自体のヤング率ではなく、3枚の板状片(板バネ)による構造物としての弾性装置のヤング率を意味している。
【0011】
本発明は、以上の知見に基づいている。本発明の目的は、厚み方向dnのヤング率Enに対する長手方向dlのヤング率Elの比El/Enを従来よりも増大させた新たな弾性装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による弾性装置は、一対の構造体間に配置されるものであり、
前記一対の構造体に固定される一対の支持部と、
前記一対の支持部間に延び、並列に配置された複数の波状板と、を備え、
各波状板は、中央の平板部と、前記平板部を挟む一対の傾斜板とを有する所定の波形状を含み、
一の波状板の側方から見た形状の位相は、他の波状板の側方から見た形状の位相と異なる。
【0013】
本発明によれば、一の波状板の側方から見た形状の位相が他の波状板の側方から見た形状の位相と異なっていることにより、長手方向のヤング率と厚み方向のヤング率との比を従来よりも増大させた新たな弾性装置を提供することができる。
【0014】
好ましくは、前記複数の波状板は、2本の波状板である。この場合、厚み方向のヤング率を調整する自由度を高めることができる。
【0015】
あるいは、好ましくは、前記複数の波状板は、3本の波状板である。この場合、厚み方向のヤング率を調整する自由度を一層高めることができる。
【0016】
この場合、前記3本の波状板のうち、中央の波状板を挟む2本の波状板は、側方から見た形状の位相が同じであることが好ましい。このことにより、検出部を含む平面の法線方向のヤング率を調整するに当たり、3本の波状板の位相については中央の波状板のみを調整すれば良く、弾性装置の設計が容易となる。
【0017】
以上のような弾性装置において、前記複数の波状板間は、互いに連結されていることが好ましい。あるいは、3本の波状板を有する弾性装置においては、前記中央の波状板は、当該中央の波状板を挟む2本の波状板の一方に連結されていることが好ましい。
【0018】
この場合、長手方向のヤング率と厚み方向のヤング率との比を従来よりも一層増大させた新たな弾性装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一の波状板の側方から見た形状の位相が他の波状板の側方から見た形状の位相と異なっていることにより、長手方向のヤング率と厚み方向のヤング率との比を従来よりも増大させた新たな弾性装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態による弾性装置を示す概略斜視図である。
図2図1の弾性装置を示す概略上面図である。
図3A図1の弾性装置を示す概略側面図である。
図3B図3Aの弾性装置の他方の支持部に下向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図3C図3Aの弾性装置の他方の支持部に上向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図3D図3Aの弾性装置の他方の支持部に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図3E図3Aの弾性装置の他方の支持部に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図4図1の弾性装置及び従来の弾性装置の他方の支持部に左向きの力及び下向きの力をそれぞれ作用させた場合に平板部に生じる変位を比較した図表である。
図5】本発明の第2の実施の形態による弾性装置を示す概略斜視図である。
図6図5の弾性装置を示す概略上面図である。
図7図1及び図2の弾性装置並びに従来の弾性装置の他方の支持部に左向きの力及び下向きの力をそれぞれ作用させた場合に平板部に生じる変位を比較した図表である。
図8】本発明の第3の実施の形態による弾性装置を示す概略斜視図である。
図9図8の弾性装置を示す概略上面図である。
図10A図8の弾性装置を示す概略側面図である。
図10B図10Aの弾性装置の他方の支持部に下向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図10C図10Aの弾性装置の他方の支持部に上向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図10D図10Aの弾性装置の他方の支持部に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図10E図10Aの弾性装置の他方の支持部に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置の変形状態を示す概略側面図である。
図11図8の弾性装置及び従来の弾性装置の他方の支持部に左向きの力及び下向きの力をそれぞれ作用させた場合に平板部に生じる変位を比較した図表である。
図12】本発明の第4の実施の形態による弾性装置を示す概略斜視図である。
図13図12の弾性装置を示す概略上面図である。
図14図8及び図12の弾性装置並びに従来の弾性装置の他方の支持部に左向きの力及び下向きの力をそれぞれ作用させた場合に平板部に生じる変位を比較した図表である。
図15】先願力覚センサの検出リングを示す概略図である。
図16図15の検出リングに採用されている従来の弾性装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面を参照して本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態による弾性装置100を示す概略斜視図であり、図2は、図1の弾性装置100を示す概略上面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による弾性装置100は、一対の構造体(不図示)に固定される一対の支持部、すなわち一方の支持部11及び他方の支持部12と、一方の支持部11と他方の支持部12との間に延び、並列に配置された第1〜第3波状板20、30、40とを備えている。以下に弾性装置100の構造について説明するに当たり、図1及び図2に示すように、各波状板20、30、40が延びている方向を長手方向dlとし、当該長手方向と直交し各波状板20、30、40が配列されている方向を幅方向dwとし、これら長手方向dl及び幅方向dwに直交する方向を厚み方向dnとする。
【0024】
第1波状板20は、中央の第1平板部21と、この第1平板部21を挟む第1下り傾斜板22及び第1上り傾斜板23とを有する波形状を有している。同様に、第2波状板30は、中央の第2平板部31と、この第2平板部31を挟む第2下り傾斜板32及び第2上り傾斜板33とを有する波形状を有しており、第3波状板40は、中央の第3平板部41と、この第3平板部41を挟む第3下り傾斜板42及び第3上り傾斜板43とを有する波形状を有している。すなわち、第1〜第3下り傾斜板22、32、42の外側端(図1及び図2における左端)はこれに隣接する一方の支持部11に接続され、第1〜第3下り傾斜板22、32、42の内側端(図1及び図2における右端)は第1〜第3平板部21、31、41に接続されている。また、第1〜第3上り傾斜板23、33、43の外側端(図1及び図2における右端)はこれに隣接する他方の支持部12に接続され、第1〜第3上り傾斜板23、33、43の内側端(図1及び図2における左端)は第1〜第3平板部21、31、41に接続されている。
【0025】
本実施の形態では、弾性装置100に外力が加えられていない状態において、第1支持部11と第1〜第3下り傾斜板22、32、42とが成す角度は、いずれも135°である。更に、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3平板部21、31、41とが成す角度、第1〜第3平板部21、31、41と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが成す角度、及び、第1〜第3上り傾斜板23、33、43と第2支持部12とが成す角度も、共に135°である。もちろん、これらの角度は135°に限定されるものではなく、他の実施の形態においては、例えば120°など弾性装置100に要求される物性値(ヤング率など)に応じて、90°以上180°未満の任意の角度が採用され得る。
【0026】
本実施の形態において、第1〜第3波状板20、30、40の各波形状は同一である。ただし、第1及び第3波状板20、40の側方(図1における左下方、図2における下方)から見た各波状板20、40の形状の位相は、第2波状板30の側方から見た当該波状板30の形状の位相と異なっている。具体的には、図1及び図2に示すように、第2波状板30は、第1及び第3波状板20、40よりも長手方向dlに沿って一方の支持部11の側(図1における左上側、図2における左側)にずれて配置されている。
【0027】
弾性装置100は、当該弾性装置100が採用される前述の検出リング600(図15参照)と同一材料、すなわち、金属(ステンレス、アルミニウムなど)や合成樹脂(プラスチックなど)といった同一材料からなる構造体によって構成され得る。本実施の形態の第1〜第3平板部21、31、41、第1〜第3下り傾斜板22、32、42及び第1〜第3上り傾斜板23、33、43は、検出リングの本体部に比べて肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有することになる。
【0028】
なお、ここに示す例の場合、第1〜第3平板部21、31、41も肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有しているが、当該第1〜第3平板部21、31、41は必ずしも可撓性をもった部材である必要はない(もちろん、可撓性があってもよい)。第1〜第3平板部21、31、41の役割は、外力が作用したときに変位を生じることであり、そのような変位を生じさせるには、第1〜第3下り傾斜板22、32、42及び第1〜第3上り傾斜板23、33、43が可撓性を有していれば足りる。したがって、第1〜第3平板部21、31、41は、必ずしも肉厚の薄い板状の部材によって構成する必要はなく、より肉厚の厚い部材であってもかまわない。
【0029】
次に、図3A図3Eを参照して、本実施の形態における弾性装置100の作用について説明する。
【0030】
図3Aは、図1の弾性装置100を示す概略正面図であり、図3Bは、図3Aの弾性装置100の他方の支持部12に下向きの力を作用させた際の当該弾性装置100の変形状態を示す概略正面図であり、図3Cは、図3Aの弾性装置100の他方の支持部12に上向きの力を作用させた際の当該弾性装置100の変形状態を示す概略正面図であり、図3Dは、図3Aの弾性装置100の他方の支持部12に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置100の変形状態を示す概略正面図であり、図3Eは、図3Aの弾性装置100の他方の支持部12に左向きの力を作用させた際の当該弾性装置100の変形状態を示す概略正面図である。
【0031】
図3Aに示すように、本実施の形態における弾性装置100に外力が作用していない場合、当該弾性装置100は、初期の形状を維持する。すなわち、前述の通り、第1支持部11と第1〜第3下り傾斜板22、32、42とが成す角度、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3平板部21、31、41とが成す角度、第1〜第3平板部21、31、41と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが成す角度、及び、第1〜第3上り傾斜板23、33、43と第2支持部12とが成す角度が、いずれも135°である形状を維持する。もちろん、前述の如く、これらの角度は135°に限定されるものではなく、他の実施の形態においては90°以上180°未満の任意の角度が採用され得る。 図3Bに示すように、このような初期状態の弾性装置100の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に下向きの力FBを作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、第1〜第3平板部21、31、41が右下がりに姿勢を変えつつ下方に変位する。なお、実際の構造では、第1〜第3平板部21、31、41にも若干の弾性変形が生じるが、本明細書では、第1〜第3平板部21、31、41には弾性変形が生じないものとして説明する。この変位が生じている時、図3Bに示すように、長手方向dlの特定の位置plにおける第1及び第3平板部21、41の下方への変位と第2平板部31の下方への変位とを比較すると、第2平板部31の下方への変位の方が大きい。これは、第1及び第3波状板20、40の位相と第2波状板30の位相とが異なっていることに起因している。
【0032】
具体的には、第1〜第3平板部21、31、41は、いずれも右下がりの姿勢となっているため、第1〜第3下り傾斜板22、32、42の右端(下端)から離れるほど(図3Bにおいて右方に向かうほど)下方への変位が大きくなる。本実施の形態においては、特定の位置plにて第1〜第3平板部21、31、41を観察すると、第1及び第3下り傾斜板22、42の右端(下端)から当該特定の位置plまでの距離よりも、第2下り傾斜板32の右端(下端)から当該特定の位置plまでの距離の方が大きい。このため、特定の位置plにおいては、第1及び第3平板部21、41よりも第2平板部31の方が下方に位置する。
【0033】
一方、図3Cに示すように、初期状態の弾性装置100の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に上向きの力FCを作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、第1〜第3平板部21、31、41が右上がりに姿勢を変えつつ上方に変位する。この変位が生じている時、図3Cに示すように、長手方向dlの特定の位置plにおける第1及び第3平板部21、41の上方への変位と第2平板部31の上方への変位とを比較すると、第2平板部31の上方への変位の方が大きい。これも、第1及び第3波状板20、40の位相と第2波状板30の位相とが異なっていることに起因している。
【0034】
すなわち、第1〜第3平板部21、31、41は、いずれも右上がりの姿勢となっているため、第1〜第3下り傾斜板22、32、42の右端(下端)から離れるほど(図3Cにおいて右方に向かうほど)上方への変位が大きくなる。本実施の形態においては、特定の位置plにて第1〜第3平板部21、31、41を観察すると、第1及び第3下り傾斜板22、42の右端(下端)から当該特定の位置plまでの距離よりも、第2下り傾斜板32の右端(下端)から当該特定の位置plまでの距離の方が大きい。このため、特定の位置plにおいては、第1及び第3平板部21、41よりも第2平板部31の方が上方に位置する。
【0035】
次に、図3Dに示すように、初期状態の弾性装置100の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に左向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが近接する向き)の力FDを作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32、42及び各上り傾斜板23、33、43の姿勢が厚み方向dnに立ち上がった状態に変化する。このことにより、第1〜第3平板部21、31、41は、下方に変位する。図3Dに示すように、各平板部21、31、41は、変位がそれぞれ同一であり、長手方向dlに対して傾斜することが無いため、厚み方向dnにおいて同一の位置に存在する。
【0036】
次に、図3Eに示すように、初期状態の弾性装置100の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に右向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが離間する向き)の力FEを作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32、42及び各上り傾斜板23、33、43の姿勢が長手方向dlに寝た状態に変化する。このことにより、第1〜第3平板部21、31、41は、上方に変位する。図3Dに示すように、各平板部21、31、41は、変位がそれぞれ同一であり、長手方向dlに対して傾斜することが無いため、厚み方向dnにおいて同一の位置に存在する。
【0037】
以上のような弾性装置100において、他方の支持部12に左向きの力を作用させた場合(図3D参照)、及び、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させた場合(図3B参照)に第2平板部31に生じる変位を、形状を特定してFEM(Finite Element Method:有限要素法)解析(シミュレーション解析)した結果を図4に示す。以下に示す解析結果も同様である。図4には、比較のため、従来の弾性装置500(図16参照)に同様の力を作用させた際に平板部521に生じる変位を解析した結果も示してある。
【0038】
図4に示すように、弾性装置100の他方の支持部12に左向きの力を作用させると(図3D参照)、第2平板部31は下方にΔdl=8.4μmだけ変位した。一方、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させると(図3B参照)、第2平板部31は下方にΔdn=110μmだけ変位した。したがって、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比R1(=Δdl/Δdn)は、0.076であった。この比R1は、弾性装置100の厚み方向dnのヤング率に対する長手方向dlのヤング率の比に相当する。すなわち、比R1が1に近づくほど、弾性装置100は、長手方向dlの力による変形のしやすさと同程度、厚み方向dnの力により変形しやすいということを意味し、逆に、比R1が0に近づくほど、弾性装置100は、長手方向dlの力による変形のしやすさと比較して、厚み方向dnの力により相対的に変形しにくいということを意味する。
【0039】
これに対し、従来の弾性装置500の解析結果を検討すると、他方の支持部512に左向きの力を作用させると、平板部521は下方にΔdl=1.0μmだけ変位した。一方、他方の支持部512に同じ大きさの下向きの力を作用させると、平板部521は下方にΔdn=27μmだけ変位した。したがって、長手方向dlの力により平板部521に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により平板部521に生じる変位Δdnとの比R0(=Δdl/Δdn)は、0.037であった。前述のR1とこのR0との比は、2.05(=0.076/0.037)である。
【0040】
これらの解析結果より、本実施の形態による弾性装置100は、従来の弾性装置500と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、半分程度になることが確認された。換言すれば、本実施の形態による弾性装置100は、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度が従来の弾性装置500の相対感度よりも低いことが確認された。
【0041】
なお、第2平板部の変位の絶対値は、第1〜第3上り傾斜板22、32、42及び第1〜第3下り傾斜板23、33、43の幅、厚み、材質などに依存する。図4において従来の弾性装置500と本実施の形態による弾性装置100との間で、長手方向dlの力による変位に差が生じているのは、このためである。
【0042】
以上のような本実施の形態によれば、第1及び第3波状板20、40の側方から見た形状の位相が第2波状板30の側方から見た形状の位相と異なることにより、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度を低下させた、すなわち、長手方向dlのヤング率Elと厚み方向dnのヤング率Enとの比El/Enを従来よりも増大させた、新たな弾性装置100を提供することができる。
【0043】
また、本実施の形態の弾性装置100は、3つの波状板(第1〜第3波状板20、30、40)を有していることにより、長手方向dl及び厚み方向dnにおけるそれぞれのヤング率を調整する自由度を従来よりも高めることができる。
【0044】
また、第1〜第3波状板20、30、40のうち、中央の第2波状板30を挟む第1及び第3波状板20、40は、側方から見た形状の位相が同じである。このため、厚み方向dnのヤング率を調整するに当たっては第2波状板30の位相のみを調整すれば良く、第1〜第3波状板20、30、40の全ての位相を個別に調整する場合と比較して、弾性装置100の設計が容易となる。なお、図4の数値は絶対的なものではなく、形状、材質等に依存する数値である。このことは、以下の解析結果においても同様である。
【0045】
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。
【0046】
図5は、本発明の第2の実施の形態による弾性装置200を示す概略斜視図であり、図6は、図5の弾性装置200を示す概略上面図である。図5及び図6に示すように、弾性装置200の全体的な外形は、第1の実施の形態による弾性装置100と略同様である。図5及び図6において第1の実施の形態による弾性装置100と同じ構成部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
一方、本実施の形態による弾性装置200は、第1の実施の形態とは異なり、第1波状板20の第1平板部21、第2波状板30の第2平板部31及び第3波状板40の第3平板部41が互いに連結されている。具体的には、図5及び図6に示すように、弾性装置200には、第1平板部21のうち第1下り傾斜板22の近傍の領域21aと、第2平板部31のうち第2上り傾斜板33の近傍の領域31aと、第3平板部41のうち第3下り傾斜板42の近傍の領域41aと、が互いに連結された連結領域250が形成されている。この連結領域250は、上方から見ると、各領域21a、31a、41aを幅方向dwに横断する矩形領域となっている。本実施の形態では、各領域21a、31a、41a間は第1〜第3平板部21、31、41と同一の材料によって連結されているが、第1〜第3平板部21、31、41が独立して厚み方向dnに変位することを禁止できれば、他の材料であっても良い。
【0048】
次に、本実施の形態による弾性装置200の作用について説明する。
【0049】
本実施の形態における弾性装置200に外力が作用していない場合には、当該弾性装置200は、初期の形状を維持する。すなわち、第1支持部11と第1〜第3下り傾斜板22、32、42とが成す角度、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3平板部21、31、41とが成す角度、第1〜第3平板部21、31、41と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが成す角度、及び、第1〜第3上り傾斜板23、33、43と第2支持部12とが成す角度が、いずれも135°である形状を維持する(図3A参照)。もちろん、前述の如く、これらの角度は135°に限定されるものではなく、他の実施の形態においては90°以上180°未満の任意の角度が採用され得る。
【0050】
このような初期状態の弾性装置200の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に下向きの力を作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、第1〜第3平板部21、31、41がやや右下がりに姿勢を変えつつ下方に変位する。この変位が生じる際、仮に連結領域250が存在せず第1〜第3平板部21、31、41が独立して変位可能であるならば、第1の実施の形態において説明したように、第1及び第3平板部21、41よりも第2平板部31の方が下方に位置するようになる(図3B参照)。しかしながら、弾性装置200は、連結領域250の存在によって、第1〜第3平板部21、31、41が独立して下方に変位することができない。このため、他方の支持部12に下向きの力を作用させた際に生じる第2平板部31の下方への変位が第1及び第3平板部21、41によって規制され、結果として、第1の実施の形態による弾性装置100よりも、厚み方向dnに変形しにくい、すなわち当該厚み方向dnのヤング率が相対的に大きい弾性装置200が実現される。
【0051】
弾性装置200の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に上向きの力を作用させた場合にも、同様の結果が実現される。すなわち、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、第1〜第3平板部21、31、41が上方に変位する。この際、仮に連結領域250が存在せず第1〜第3平板部21、31、41が独立して変位可能であるならば、第1の実施の形態において説明したように、第1及び第3平板部21、41よりも第2平板部31の方が上方に位置するようになる(図3C参照)。しかしながら、弾性装置200は、連結領域250の存在によって、他方の支持部12に上向きの力を作用させた際に生じる第2平板部31の上方への変位が第1及び第3平板部21、41によって規制される。この結果、第1の実施の形態による弾性装置100よりも、厚み方向dnに変形しにくい、すなわち当該厚み方向dnのヤング率が大きい弾性装置200が実現される。
【0052】
一方、初期状態の弾性装置200の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に長手方向dlの力を作用させた場合は、第1の実施の形態による弾性装置100に対するヤング率の実質的な変化は生じない。すなわち、例えば、初期状態の弾性装置200の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に左向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが近接する向き)の力を作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32、42及び各上り傾斜板23、33、43の姿勢が厚み方向dnに立ち上がった状態に変化する。このことにより、第1〜第3平板部21、31、41は、下方に変位するが、共に厚み方向dnにおいて同一の位置にあり、姿勢変化も生じない(図3D参照)。
【0053】
また、初期状態の弾性装置200の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に右向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが離間する向き)の力を作用させると、第1〜第3下り傾斜板22、32、42と第1〜第3上り傾斜板23、33、43とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32、42及び各上り傾斜板23、33、43の姿勢が長手方向dlに寝た状態に変化する。このことにより、第1〜第3平板部21、31、41は、上方に変位するが、共に厚み方向dnにおいて同一の位置にあり、姿勢変化も生じない(図3E参照)。
【0054】
このように、他方の支持部12に長手方向dlの力を作用させても、連結領域250の存在によって弾性装置200の長手方向のヤング率が変化することは、実質的に無い。
【0055】
以上のような本実施の形態による弾性装置200において、他方の支持部12に左向きの力を作用させた場合(図3D参照)、及び、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させた場合(図3B参照)に第2平板部31に生じる変位を解析した結果を図7に示す。図7には、比較のため、第1の実施の形態による弾性装置100及び従来の弾性装置500(図16参照)に同様の力を作用させた場合に第2平板部31及び平板部521に生じる変位を解析した結果も再掲してある。
【0056】
図7に示すように、弾性装置200の他方の支持部12に左向きの力を作用させると、第2平板部31は下方に7.9μmだけ変位した。一方、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させると、第2平板部31は下方にΔdn=50μmだけ変位した。したがって、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比R2(=Δdl/Δdn)は、0.158である。これより、R2とR0(従来の弾性装置500に関する、長手方向dlの力により平板部521に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により平板部521に生じる変位Δdnとの比)との比は、4.27(=0.158/0.037)である。
【0057】
すなわち、これらの解析結果より、本実施の形態による弾性装置200は、従来の弾性装置500と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、4分の1未満になることが確認された。更に、R2とR1(第1の実施の形態による弾性装置100に関し、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比)との比は、2.08(=0.158/0.076)であるため、第1の実施の形態による弾性装置100と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、半分未満になることが確認された。以上の結果から、本実施の形態による弾性装置100は、厚み方向dnの力に対する感度が第1の実施の形態による弾性装置100の厚み方向dnの力に対する相対感度よりも低いことが確認された。
【0058】
以上のような本実施の形態によれば、第1及び第3波状板20、40の側方から見た形状の位相が第2波状板30の側方100から見た形状の位相と異なることにより、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度を低下させた、すなわち、長手方向dlのヤング率Elと厚み方向dnのヤング率Enとの比El/Enを従来よりも増大させた、新たな弾性装置200を提供することができる。
【0059】
更に、本実施の形態では、第1〜第3波状板20、30、40が互いに連結されているため、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比(R2)を、第1の実施の形態による弾性装置100における比R1よりも増大させることができる。すなわち、厚み方向dnのヤング率に対する長手方向dlのヤング率の比を第1の実施の形態による弾性装置100よりも一層増大させた弾性装置200を提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、3つの波状板(第1〜第3波状板20、30、40)が採用されていることにより、弾性装置200の長手方向dl及び厚み方向dnにおけるそれぞれのヤング率を調整する自由度を高めることができる。
【0061】
また、第1〜第3波状板20、30、40のうち、中央の第2波状板30を挟む第1及び第3波状板20、40は、側方から見た形状の位相が同じである。このため、厚み方向dnのヤング率を調整するに当たっては第2波状板30の位相のみを調整すれば良く、第1〜第3波状板20、30、40の全ての位相を個別に調整する場合と比較して、弾性装置200の設計が容易となる。
【0062】
なお、本実施の形態では、第1〜第3平板部21、31、41が連結された連結領域250が形成されているが、例えば、第1及び第2平板部21、31のみが連結されていても良く、あるいは、第2及び第3平板部31、41のみが連結されていても良い。これらの場合、本実施の形態による弾性装置200のように第1〜第3平板部21、31、41の全てが連結された場合と比較して第2平板部31の拘束の程度が低いため、弾性装置200が有する前述の弾性特性にまでは至らない。しかしながら、これらのような態様にっても、厚み方向dnのヤング率に対する長手方向dlのヤング率の比を第1の実施の形態による弾性装置100よりも増大させた弾性装置を提供することができる。
【0063】
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の第3の実施の形態について詳細に説明する。
【0064】
図8は、本発明の第3の実施の形態による弾性装置300を示す概略斜視図であり、図9は、図8の弾性装置300を示す概略上面図である。
【0065】
図8及び図9に示すように、弾性装置300は、第1の実施の形態による弾性装置100から第3波状板30を取り除いた外形を有している。すなわち、弾性装置300は、一対の構造体(不図示)に固定される一方の支持部11及び他方の支持部12と、一方の支持部11と他方の支持部12との間に延び、並列に配置された第1及び第2波状板20、30とを備えている。各波状板20、30の構成は、第1の実施の形態による弾性装置100と同様である。図8及び図9において第1の実施の形態による弾性装置100と同じ構成部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
次に、図10A乃至図10Eを参照して、本実施の形態による弾性装置300の作用について説明する。
【0067】
図10Aに示すように、本実施の形態における弾性装置300に外力が作用していない場合、当該弾性装置300は、第1の実施の形態による弾性装置100と同様に初期の形状を維持する。すなわち、第1支持部11と第1及び第2下り傾斜板22、32とが成す角度、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2平板部21、31とが成す角度、第1及び第2平板部21、31と第1及び第2上り傾斜板23、33とが成す角度、及び、第1及び第2上り傾斜板23、33と第2支持部12とが成す角度が、いずれも135°である形状を維持する。もちろん、前述の如く、これらの角度は135°に限定されるものではなく、他の実施の形態においては90°以上180°未満の任意の角度が採用され得る。
【0068】
弾性装置300の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に力が作用している状態においては、当該弾性装置300には、第1の実施の形態による弾性装置100と略同様の変形が生じる。すなわち、図10Bに示すように、前述の初期状態の弾性装置300の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に下向きの力FBを作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、第1及び第2平板部21、31が右下がりに姿勢を変えつつ下方に変位する。図10Bに示すように、長手方向dlの特定の位置plにおける第1平板部21の下方への変位と第2平板部31の下方への変位とを比較すると、第2平板部31の下方への変位の方が大きい。これは、第1の実施の形態において既に説明した通り、第1波状板20の位相と第2波状板30の位相とが異なっていることに起因している。
【0069】
図10Cに示すように、初期状態の弾性装置300の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に上向きの力FCを作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、第1及び第2平板部21、31が右上がりに姿勢を変えつつ上方に変位する。図10Cに示すように、長手方向dlの特定の位置plにおける第1平板部21の上方への変位と第2平板部31の上方への変位とを比較すると、第2平板部31の上方への変位の方が大きい。これも、第1波状板20の位相と第2波状板30の位相とが異なっていることに起因している。
【0070】
次に、図10Dに示すように、初期状態の弾性装置300の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に左向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが近接する向き)の力FDを作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32及び各上り傾斜板23、33の姿勢が厚み方向dnに立ち上がった状態に変化する。このことにより、第1及び第2平板部21、31は、下方に変位する。図10Dに示すように、各平板部21、31は、変位がそれぞれ同一であり、長手方向dlに対して傾斜することが無いため、厚み方向dnにおいて同一の位置に存在する。
【0071】
次に、図10Eに示すように、初期状態の弾性装置300の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に右向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが離間する向き)の力FEを作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32及び各上り傾斜板23、33の姿勢が長手方向dlに寝た状態に変化する。このことにより、第1及び第2平板部21、31は、上方に変位する。図10Dに示すように、各平板部21、31は、変位がそれぞれ同一であり、長手方向dlに対して傾斜することが無いため、厚み方向dnにおいて同一の位置に存在する。
【0072】
以上のような弾性装置300において、他方の支持部12に左向きの力を作用させた場合(図10D参照)、及び、他方の支持部12に厚み方向dnに沿って同じ大きさの力を下方に作用させた場合(図10B参照)に第2平板部31に生じる変位を解析した結果を図11に示す。図11には、比較のため、従来の弾性装置500(図16参照)に同様の力を作用させて平板部521に生じる変位を解析した結果も示してある。
【0073】
図11に示すように、弾性装置300の他方の支持部12に左向きの力を作用させると(図10D参照)、第2平板部31は下方にΔdl=9.5μmだけ変位した。一方、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させると(図10B参照)、第2平板部31は下方にΔdn=130μmだけ変位した。したがって、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比R3(=Δdl/Δdn)は、0.073である。
【0074】
これに対し、従来の弾性装置500の解析結果は、前述の通り、他方の支持部512に左向きの力を作用させると、平板部521が下方にΔdl=1.0μmだけ変位し、他方の支持部512に同じ大きさの下向きの力を作用させると、平板部512が下方にΔdn=27μmだけ変位した。長手方向dlの力により平板部521に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により平板部521に生じる変位Δdnとの比R0(=Δdl/Δdn)は、0.037である。前述のR3とこのR0との比は、1.97(=0.073/0.037)である。
【0075】
すなわち、これらの解析結果より、弾性装置300は、従来の弾性装置500と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、半分程度になることが確認された。換言すれば、弾性装置300は、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度が従来の弾性装置500の相対感度よりも低いことが確認された。前述のR3とR0との比(1.97)は、第1の実施の形態による弾性装置100において評価したR1とR0との比(2.05)と略同じ値であることから、本実施の形態による弾性装置300によっても第1の実施の形態と同程度の弾性特性がもたらされると言える。
【0076】
以上のような本実施の形態によれば、第1波状板20の側方から見た形状の位相が第2波状板30の側方から見た形状の位相と異なることにより、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度を低下させた、すなわち、長手方向dlのヤング率Elと厚み方向dnのヤング率Enとの比El/Enを従来よりも増大させた、新たな弾性装置300を提供することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、2つの波状板(第1及び第2波状板20、30)が採用されていることにより、弾性装置300の長手方向dl及び厚み方向dnにおけるそれぞれのヤング率を調整する自由度を従来よりも高めることができる。
【0078】
次に、図12乃至図14を参照して、本発明の第4の実施の形態について詳細に説明する。
【0079】
図12は、本発明の第4の実施の形態による弾性装置400を示す概略斜視図であり、図13は、図12の弾性装置400を示す概略上面図である。図12及び図13に示すように、弾性装置400の全体的な外形は、第3の実施の形態による弾性装置300と略同様である。図12及び図13において第3の実施の形態による弾性装置300と同じ構成部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
一方、本実施の形態による弾性装置400は、第3の実施の形態とは異なり、第1波状板220の第1平板部221及び第2波状板230の第2平板部231が互いに連結されている。具体的には、図12及び図13に示すように、弾性装置400には、第1平板部21のうち第1下り傾斜板22の近傍の領域21aと、第2平板部31のうち第2上り傾斜板33の近傍の領域31aと、が互いに連結された連結領域450が形成されている。この連結領域450は、上方から見ると、各領域21a、31aを幅方向dwに横断する矩形領域となっている。本実施の形態では、各領域21a、31a間は第1及び第2平板部21、31と同一の材料によって連結されているが、第1及び第2平板部21、31が独立して厚み方向dnに変位することを禁止できれば、他の材料であっても良い。
【0081】
次に、本実施の形態による弾性装置400の作用について説明する。
【0082】
本実施の形態における弾性装置400に外力が作用していない場合には、当該弾性装置400は、第3の実施の形態による弾性装置300と同様に、初期の形状を維持する。すなわち、第1支持部11と第1及び第2下り傾斜板22、32とが成す角度、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2平板部21、31とが成す角度、第1及び第2平板部21、31と第1及び第2上り傾斜板23、33とが成す角度、及び、第1及び第2上り傾斜板23、33と第2支持部12とが成す角度が、いずれも135°である形状を維持する(図10A参照)。もちろん、前述の如く、これらの角度は135°に限定されるものではなく、他の実施の形態においては90°以上180°未満の任意の角度が採用され得る。
【0083】
このような初期状態の弾性装置400の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に下向きの力を作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、第1及び第2平板部21、31がやや右下がりに姿勢を変えつつ下方に変位する。この変位が生じる際、仮に連結領域450が存在せず第1及び第2平板部21、31が独立して変位可能であるならば、第3の実施の形態において説明したように、第1平板部21よりも第2平板部31の方が下方に位置するようになる(図10B参照)。しかしながら、本実施の形態による弾性装置400は、連結領域450の存在によって、第1及び第2平板部21、31が独立して下方に変位することができない。このため、他方の支持部12に下向きの力を作用させた際に生じる第2平板部31の下方への変位が第1平板部21によって規制され、結果として、第3の実施の形態による弾性装置300よりも、厚み方向dnに変形しにくい、すなわち当該厚み方向dnのヤング率が相対的に大きい弾性装置400が実現される。
【0084】
弾性装置400の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に上向きの力を作用させた場合にも、同様の結果が実現される。すなわち、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、第1及び第2平板部21、31が上方に変位する。この際、仮に連結領域450が存在せず第1及び第2平板部21、31が独立して変位可能であるならば、第3の実施の形態において説明したように、第1平板部21よりも第2平板部31の方が上方に位置するようになる(図10C参照)。しかしながら、本実施の形態による弾性装置400は、連結領域450の存在によって、他方の支持部12に上向きの力を作用させた際に生じる第2平板部31の上方への変位が第1平板部21によって規制される。この結果、第3の実施の形態による弾性装置300よりも、厚み方向dnに変形しにくい、すなわち当該厚み方向dnのヤング率が大きい弾性装置400が実現される。
【0085】
また、初期状態の弾性装置400の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に左向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが近接する向き)の力を作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32及び各上り傾斜板23、33の姿勢が厚み方向dnに立ち上がった状態に変化する。このことにより、第1及び第2平板部21、31は、下方に変位するが、厚み方向dnにおいて同一の位置にあり、姿勢変化も生じない(図10D参照)。
【0086】
また、初期状態の弾性装置400の一方の支持部11を固定した状態で他方の支持部12に右向き(一方の支持部11と他方の支持部12とが離間する向き)の力を作用させると、第1及び第2下り傾斜板22、32と第1及び第2上り傾斜板23、33とが弾性変形し、各下り傾斜板22、32及び各上り傾斜板23、33の姿勢が長手方向dlに寝た状態に変化する。このことにより、第1及び第2平板部21、31は、上方に変位するが、厚み方向dnにおいて同一の位置にあり、姿勢変化も生じない(図10E参照)。
【0087】
このように、他方の支持部12に長手方向dlの力を作用させても、連結領域450の存在によって弾性装置400の長手方向のヤング率が変化することは実質的に無い。このことは、第2の実施の形態による弾性装置200と同様である。
【0088】
以上のような本実施の形態による弾性装置400において、他方の支持部12に左向きの力を作用させた場合(図10D参照)、及び、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させた場合(図10B参照)に第2平板部31に生じる変位を解析した結果を図14に示す。図14には、比較のため、第3の実施の形態による弾性装置300及び従来の弾性装置500(図16参照)に同様の力を作用させた場合に第2平板部31及び平板部521に生じる変位を解析した結果も再掲してある。
【0089】
図14に示すように、弾性装置400の他方の支持部12に左向きの力を作用させると、第2平板部31は下方に9.6μmだけ変位した。一方、他方の支持部12に同じ大きさの下向きの力を作用させると、第2平板部31は下方にΔdn=65μmだけ変位した。したがって、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比R4(=Δdl/Δdn)は、0.147である。これより、R4とR0(従来の弾性装置500に関し、長手方向dlの力により平板部521に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により平板部521に生じる変位Δdnとの比)との比は、3.97(=0.147/0.037)である。
【0090】
これらの解析結果より、弾性装置400は、従来の弾性装置500と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、4分の1程度になることが確認された。更に、R4とR3(第3の実施の形態による弾性装置300に関し、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比)との比は、2.02(=0.147/0.073)であるため、第3の実施の形態による弾性装置300と比較して、厚み方向dnの力による変形のしやすさに対する厚み方向dnの力による変形のしやすさが、半分未満になることが確認された。すなわち、弾性装置400は、厚み方向dnの力に対する感度が第3の実施の形態による弾性装置300の厚み方向dnの力に対する感度よりも低いことが確認された。
【0091】
以上のような本実施の形態によれば、第1波状板20の側方から見た形状の位相が第2波状板30の側方100から見た形状の位相と異なることにより、長手方向dlの力の感度に対する厚み方向dnの力の相対感度を低下させた、すなわち、長手方向dlのヤング率Elと厚み方向dnのヤング率Enとの比El/Enを従来よりも増大させた、新たな弾性装置400を提供することができる。
【0092】
更に、本実施の形態では、第1及び第2波状板20、30が互いに連結されているため、長手方向dlの力により第2平板部31に生じる変位Δdlと厚み方向dnの力により第2平板部31に生じる変位Δdnとの比R4を、第1の実施の形態による弾性装置100における比R1よりも増大させることができる。すなわち、厚み方向dnのヤング率に対する長手方向dlのヤング率の比を第3の実施の形態による弾性装置100よりも一層増大させた弾性装置400を提供することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、2つの波状板(第1及び第2波状板20、30)を有していることにより、弾性装置400の長手方向dl及び厚み方向dnにおけるそれぞれのヤング率を調整する自由度を従来よりも高めることができる。
【0094】
なお、これらの実施の形態に加え、一の波状板の側方から見た形状の位相が他の波状板の側方から見た形状の位相と異なる4本以上の波状板を有する弾性装置も本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0095】
dl 長手方向
dn 厚み方向
dw 幅方向
pl 長手方向の特定の位置
11 一方の支持部
12 他方の支持部
20 第1波状部
21 第1平板部
21a 第1平板部のうち第1下り傾斜板の近傍の領域
22 第1下り傾斜板
23 第1上り傾斜板
30 第2波状板
31 第2平板部
31a 第2平板部のうち第2下り傾斜板の近傍の領域
32 第2下り傾斜板
33 第2上り傾斜板
40 第3波状板
41 第3平板部
41a 第3平板部のうち第3下り傾斜板の近傍の領域
42 第3下り傾斜板
43 第3上り傾斜板
100 第1の実施の形態による弾性装置
200 第2の実施の形態による弾性装置
250 連結領域
300 弾性装置
400 弾性装置
450 連結領域
【要約】
【課題】長手方向dlのヤング率Elと厚み方向dnのヤング率Enとの比El/Enを従来よりも増大させた新たな弾性装置を提供すること。
【解決手段】本発明による弾性装置100は、一対の構造体間に配置されるものであり、一対の構造体に固定される一対の支持部11、12と、一対の支持部11、12間に延び、並列に配置された複数の波状板20、30、40と、を備え、各波状板20、30、40は、中央の平板部21、31、41と、平板部21、31、41を挟む一対の傾斜板22、23、32、33、42、43とを有する所定の波形状を含み、一の波状板30の側方から見た形状の位相は、他の波状板20、40の側方から見た形状の位相と異なる。
【選択図】図5
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16