【発明が解決しようとする課題】
【0004】
狭小地に建てられた建物では、壁面の窓から屋外の光を屋内に取入れようとしても、太陽が高い位置に来ないと太陽光を屋内に取入れられない。また、高い位置から取入れたとしても、室内の明るさ感に重要な壁や天井部が、屋外の光が届かず暗いため、室内が暗く感じられる。すりガラスでは、自然光が拡散して室内に入射するものの、大部分は下向きになっている。
【0005】
上記の出射側面にプリズム加工部を設けたものでは、太陽光を室内の奥まで導くことが可能ではあるが、室内に虹のような光模様が映る場合があり、自然光として違和感が生じてしまう。また、プリズム加工面は、その凹凸のために汚れが生じ易い。プリズム加工部の代わりに、光を屈折させる屈折フィルムを用いることを考えたが、プリズム加工部を設けた場合と同様に、室内に虹のような光模様により自然光として違和感が生じることがある。また、屈折フィルムは、傷や汚れ、紫外線による変性等により、その屈折の効果が減ってしまう。
【0006】
この発明の目的は、屋外の光を違和感なく屋内の奥まで十分に取入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、また長期使用の間にも汚れや変性による採光機能の低下が生じ難い採光面材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の採光面材は、建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板と、屋内側に設けられ透過光を拡散させる拡散板と、これら透光板と拡散板
とに挟み付けられている屈折フィルムと、他の透光板とを備え、
前記他の透光板は、前記透光板または前記拡散板に対して空気層を介して組み合わせ
られ、前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない。
前記建物の開口部は、外壁の他、間仕切り壁、バルコニー腰壁等の種々の壁、屋根面等に設けられる窓開口、出入り口等であ
る。
【0008】
この構成によると、例えば、高い位置にある太陽からの光を、建物の外壁の窓等の開口部から屋内に取込むときに、前記採光面材の透光板を下向きに透過した入射光が、屈折
フィルムにより上向きの光に屈折させられ、この上向きとなった光が採光面材の拡散板を透過することで拡散光となる。これにより、屋外からの光を屋内の奥まで取入れることができ、明るさ感を得る上で重要な壁や天井が明るくなって、室内の明るさ感が向上する。そのため、狭小地等で通常では採光の望めない環境においても、開口部からの光を室内奥まで届け、室内の明るさ感を向上させることができる。この効果は、市販の樹脂材料の屈折フィルムを用いて実施形態品を製造し、試験した結果、その効果が確認できた。なお、屈折
フィルムにより光を屈折させる方向は上方向に限らず、左右方向としても良く、この採光面材が設けられる開口部の位置や方向によっては、左右方向に光を屈折させることで、光を屋内の奥まで取入れることができる場合もある。例えば、片開きドア等の場合に、屈折方向を左右方向とすることが好ましい場合がある。また、前記空気層を介在させることで、開口部の断熱効果を向上させることができる。
【0009】
また、屈折
フィルムを透過した光は拡散板で拡散されるので、出射面に屈折
フィルムを設けた場合と異なり、屈折
フィルムを透過することにより透過光に生じる虹のようなプリズム現象を拡散板で緩和することができ、屋内に違和感のない光を届けることができる。屈折
フィルムは透光板と拡散板の間に介在するので、露出させる場合と異なり、傷や汚れが生じにくく、また紫外線による変性等によりその屈折の効果が低下することが防止され、長期に渡って屈折の性能が維持される。
この発明の採光面材において、前記他の透光板は、前記
拡散板の屋内側に設けられていても良い。
この発明の採光面材において、前記屈折
フィルムは、前記透光板と前記拡散板とで隙間なく挟み付けられていても良い。この場合、前記屈折
フィルムは、屋外面や屋内面だけでなく、採光面材内部の空気層とも触れず、より一層良好に、汚れ防止や変性防止の作用が得られる。
【0010】
参考提案例の採光面材を説明すると、前記屈折素材層が、前記透光板よりも薄い屈折フィルムであって、この屈折フィルムを前記透光板の裏面に貼り付け、前記屈折フィルムと前記拡散板との間に空気層を介在させた複層ガラスなどの採光面材としても良い。屈折フィルムを用いると、コーティング等で屈折素材層を設ける場合よりも、採光面材の生産性に優れる。また、前記空気層を介在させることで、開口部の断熱効果を向上させることができる。
【0011】
この発明の採光面材において、前記屈折素材層が屈折フィルムであって、前記透光板と前記拡散板との間に前記屈折フィルムを挟み込んだ合わせガラス等の採光面材としても良い。この構成の場合、製造が容易である。
【0012】
この発明において、この採光面材を設ける前記開口部が建物の壁面における開口部であって、前記屈折素材層または屈折フィルムは、屋外側から前記透光板を下向きに透過した入射光を上向きに屈折させる屈折性を有するものであっても良い。壁面に設けられる開口部の場合、一般的には、上向きに屈折させる屈折性を有するものとすることが、室内の明るさ感を向上させる上で好ましい。
【0013】
この発明の上記のいずれかの構成の採光面材を開口部に設けた建物の開口部構造によると、この発明の採光面材につき前述したように、狭小地等で通常では採光の望めない環境においても、開口部からの光を室内奥まで違和感なく届け、室内の明るさ感を向上させることができる。また、長期使用の間にも採光面材の汚れや変性による採光機能の低下が生じ難い。
【0014】
前記建物の開口部構造において、建物の開口部内の一部に前記採光面材を設け、前記開口部内の残りの部分に非拡散性の透光板を設けても良い。
この構成の場合、開口部内の一部にこの発明の採光面材を設けたので、この部分では、入射光を例えば上向きに屈折して室内に入射させることができ、従来では目隠しを目的として不透明ガラスなどを採光面材として用いた場合と同等の機能を担うだけでなく、自然光を室内の奥まで取入れる機能も担うことができる。開口部の残りの部分に設けられる透光板からは、屋外からの光が直進して室内に入射される。これにより、室内空間を十分に明るくでき、より快適な室内環境をつくることができる。
【0015】
開口部内の一部に前記採光面材を設ける場合に、前記開口部を上下に分け、前記開口部の下側部分に前記採光面材を設け、前記開口部の上側部分に非拡散性の透光板を設けても良い。
この構成の場合、開口部の下側部分に設けられた採光面材に入射して来る光が上向きに屈折して拡散光となり、室内の壁や天井を照らす。他方、開口部の上側部分に設けられた透光板に下向きに入射して来る光はそのまま直進して室内の床面を照らす。そのため、室内の壁や天井だけでなく床面も照らすことができ、より室内空間を明るくすることができて、明るさ感がより一層向上する。
【0016】
前記建物の開口部構造は、建物の複数の開口部にこの発明の上記いずれかの構成の採光面材が設けられ、前記開口部の位置によって前記採光面材の前記屈折素材層の屈折率が互いに異なっていても良い。
この構成の場合、開口部の位置に応じて、開口部からの入射光の屈折角度を異ならせるので、各開口部の位置の日照条件に応じて、各開口部からの入射光で室内の床面、壁、天井を屋内の奥部まで適切に照らすことができる。