(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記先端側と前記基端側とを結ぶ線に対して垂直な方向について、前記駆動アセンブリと前記くぼみ部と前記隆起部とは、前記駆動アセンブリ、前記くぼみ部、前記隆起部の順に配置されている、請求項2に記載の処置装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る処置装置1の概略を示す外観図である。処置装置1は、操作部100と、操作部100から延びる円柱形状をしたシャフト210と、シャフト210の先端に設けられたエンドエフェクタ220とを備える。以降説明のため、エンドエフェクタ220側を先端側と称し、操作部100側を基端側と称する。また、
図1の紙面方向に広がる仮想平面を基準面S(
図2B参照)として定義することにする。すなわち、シャフト210の中心軸は基準面S上に存在し、シャフト210の先端側には、エンドエフェクタ220が設けられており、シャフト210の基端側には、操作部100が設けられている。処置装置1は、ユーザが操作部100を操作することで、処置対象である生体組織をエンドエフェクタ220で把持し、当該生体組織の治療等を行うための装置である。
【0009】
操作部100は、操作部100の本体の一部をなすグリップ110を有する。また、操作部100は、グリップ110に対して相対的に移動するハンドル160を有する。ハンドル160は、グリップ110の先端側に設けられており、グリップ110に対して、基準面Sに沿って、先端方向及び基端方向に変位する。ハンドル160の基準面Sにおける断面形状は、環形状をしている。ハンドル160の環の内部を中空部162と称することにする。このように、ハンドル160の基準面Sにおける形状は、先端側の面と基端側の面とによって挟まれた間隙を有する形状を含む。このような形状であることで、後述するように中空部162に指を挿入することによって、ハンドル160に先端側への力も基端側への力も作用させやすくなる。
【0010】
操作部100は、操作部100の本体の一部をなす駆動アセンブリ170を有する。駆動アセンブリ170とグリップ110との位置関係は固定されている。すなわち、駆動アセンブリ170の外装とグリップ110とは例えば一体として形成されていてもよい。また、グリップ110は、駆動アセンブリ170と別体として形成され、駆動アセンブリ170に対して固定されていてもよい。以降説明のため、操作部100の駆動アセンブリ170側を上側と称し、グリップ110の端側を下側と称することにする。
【0011】
駆動アセンブリ170の先端側には回転ノブ194が設けられている。回転ノブ194の先端側には、シャフト210が接続されている。回転ノブ194は、シャフト210の中心軸の軸周りに回転できるように構成されている。回転ノブ194が回転することで、シャフト210は、その中心軸の軸周りに回転する。その結果、エンドエフェクタ220の向きは変化する。
【0012】
ユーザは、グリップ110をユーザの掌(手掌)と親指(母指;第一指)とによって包み込み、ユーザの中指(中指;第三指)と薬指(薬指;第四指)と小指(小指;第五指)とを環形状をしたハンドル160の中空部162に挿入するようにして、操作部100を片手で把持する。この際、親指及び人差し指の側は、上側、すなわち、駆動アセンブリ170側に配置され、小指の側は、下側、すなわち、ハンドル160の端側(下端側)に配置される。ユーザは、中指と薬指と小指とを掌に近づけるように動かしたり遠ざけるように動かしたりすることで、すなわち、これらの指を屈曲させたり伸展させたりすることで、グリップ110に対してハンドル160を変位させる。
【0013】
操作部100には、出力スイッチ192が設けられている。出力スイッチ192は、操作部100の本体の、先端側であり、ハンドル160と駆動アセンブリ170との間に配置されている。すなわち、ユーザが上述のように操作部100を把持したとき、出力スイッチ192は、ユーザの人差し指(示指;第二指)が位置する場所に配置されている。
【0014】
エンドエフェクタ220には、第1の把持部材222と第2の把持部材224とが設けられている。第1の把持部材222と第2の把持部材224とは、互いに相対的に移動し、開閉するように、エンドエフェクタ220は構成されている。すなわち、第1の把持部材222の第2の把持部材224と対向する面と、第2の把持部材224の第1の把持部材222と対向する面との間の距離が変化するように構成されている。
図1は、第1の把持部材222と第2の把持部材224とが開いた状態を示している。このように、第1の把持部材222と第2の把持部材224との開閉、すなわち、エンドエフェクタ220の開閉によって、エンドエフェクタ220は、処置対象である生体組織を把持することができる。
【0015】
エンドエフェクタ220の開閉は、駆動アセンブリ170内の機構により、グリップ110とハンドル160との間の相対的な移動と連動するように構成されている。すなわち、ハンドル160が
図1に示すようにグリップ110から遠ざけられるように動かされたとき、エンドエフェクタ220は開く。一方、ハンドル160がグリップ110に近づけられるように動かされたとき、エンドエフェクタ220は閉じる。ハンドル160の動きは、シャフト210内を通る公知のロッドやワイヤを用いた機構によって、エンドエフェクタ220の第1の把持部材222又は第2の把持部材224に伝達される。駆動アセンブリ170を含むハンドル160の動きとエンドエフェクタ220の動きとを連動させる機構については、一般的なものを含め、種々の方式が採用され得る。この機構についてはここでは説明を省略する。
【0016】
エンドエフェクタ220には、把持した生体組織に対してエネルギを付加する機構が設けられている。例えば、処置装置1は、超音波処置具として機能するように構成されている。この場合、第1の把持部材222は、駆動アセンブリ170に設けられた超音波振動子に超音波伝達部材を介して接続されている。このように構成されることで、第1の把持部材222は超音波振動し、処置装置1は、エンドエフェクタ220で把持された生体組織をこの振動によって切断することができる。
【0017】
また、処置装置1は、例えば高周波処置具として機能するように構成されてもよい。この場合、第1の把持部材222と第2の把持部材224との間に高周波電圧が印加されるように、第1の把持部材222と第2の把持部材224とには電極として機能する部位が設けられる。このように構成されることで、第1の把持部材222と第2の把持部材224とはバイポーラ電極として機能し、処置装置1は、エンドエフェクタ220で把持された生体組織を焼灼することができる。
【0018】
また、処置装置1は、例えば熱処置具として機能するように構成されてもよい。この場合、第1の把持部材222又は第2の把持部材224には、ヒータが設けられる。このように構成されることで、処置装置1は、エンドエフェクタ220で把持された生体組織を焼灼することができる。
【0019】
また、処置装置1は、例えばステープラとして機能するように構成されてもよい。この場合、エンドエフェクタ220には、ステープラの機能が付与されており、処置装置1は、エンドエフェクタ220で把持した生体組織を接合することができるように構成される。
【0020】
エンドエフェクタ220の先端に付与される機能は、上述以外の他の機能であってもよいし、上述のような種々の機能の組み合わせでもよい。また、これらの機能が付与されていなくてもよい。すなわち、処置装置1は、単なる鉗子であってもよい。
【0021】
駆動アセンブリ170内には、エンドエフェクタ220に付与された機能に応じて種々の要素が設けられている。例えば処置装置1が超音波処置具として機能する場合には、駆動アセンブリ170内には超音波振動子が設けられる。また、処置装置1が高周波処置具として機能する場合には、駆動アセンブリ170内には高周波電圧の駆動回路が設けられる。また、処置装置1が熱処置具として機能する場合には、駆動アセンブリ170内にはヒータの駆動回路が設けられる。駆動アセンブリ170内に設けられる部材に応じて、駆動アセンブリ170の外形は適宜に変更され得る。
【0022】
駆動アセンブリ170の基端側には、ケーブル240の一端が接続されている。ケーブル240の他端は、図示しないコントローラに接続されている。このケーブル240を介してコントローラから駆動アセンブリ170内の超音波振動子や駆動回路にエネルギが供給される。上述の出力スイッチ192は、エンドエフェクタ220からのエネルギ出力のオン/オフ等を切り替えるためのスイッチとして機能する。
【0023】
操作部100の構造についてさらに説明する。操作部100の構造を
図2A、
図2B及び
図2Cに示す。
図2Aは、操作部100を
図1の場合と同様に基準面Sに対して垂直な方向からみた正面図である。
図2Bは、操作部100を基準面S上の基端側からみた側面図である。
図2Cは、操作部100の斜視図である。
【0024】
図2A、
図2B及び
図2Cに示すように、操作部100の本体には、その表面から基準面Sに対して垂直な方向に延びる隆起部120が設けられている。隆起部120は、ハンドル160と後述するくぼみ部130との間に形成されていることが好ましい。このため隆起部120は、操作部100の本体の一部をなすグリップ110に形成されていることが好ましい。この隆起部120は、グリップ110の両側に1つずつ設けられている。すなわち、
図2Bに示すように、基端側から先端側をみたときの左側に隆起部120の1つである第1の隆起部121が設けられており、右側に隆起部120の1つである第2の隆起部122が設けられている。なお、隆起部120は、基準面Sに対して垂直に限らず傾いた方向に延びているものであってもよい。
【0025】
また、処置装置1が右手用として構成される場合、すなわち、ユーザが右手でしか操作部100を操作しない場合、第1の隆起部121のみが設けられ、第2の隆起部122が設けられなくてもよい。同様に、処置装置1が左手用として構成される場合、すなわち、ユーザが左手でしか操作部100を操作しない場合、第2の隆起部122のみが設けられ、第1の隆起部121が設けられなくてもよい。
【0026】
このように、グリップ110は、基準面Sを挟む第1の面111と第2の面112とを有しており、第1の面111には第1の隆起部121が設けられており、第2の面112には第2の隆起部122が設けられている。なお、仮想平面である基準面Sは、表裏をなす第1の面111と第2の面112との間に存在する。
【0027】
図2Aに示すように、操作部100の本体の基端側のうち、グリップ110と駆動アセンブリ170との間の接合する部分には、くぼみ部130が設けられている。くぼみ部130は、グリップ110の根元部分が駆動アセンブリ170の基端よりも先端側にあることで形成されている。ユーザが操作部100を把持したとき、親指と人差し指の付け根部分は、このくぼみ部130に当て付けられる。その結果、ユーザの親指と人差し指の付け根部分は、ハンドル160と駆動アセンブリ170との間に納まることになる。このとき、ユーザの掌はグリップ110と接触し、人差し指と親指との上側に位置する部分は駆動アセンブリ170と接する。くぼみ部130の形状によって、操作部100がユーザによって把持されたとき、ユーザの手に対して操作部100が固定されやすくなる。
【0028】
図3は、ユーザが操作部100を把持した状態を示す図である。この図に示すように、ユーザの親指は、隆起部120に接触する。特に、ユーザが親指の第1関節を曲げることで、隆起部120の先端側の側面、すなわち、ハンドル160を向く側面には、親指の先端から第1関節までの間が接触するようになっており、隆起部120の上側の側面には、親指の第1関節から第2関節までの間が接触するようになっている。
【0029】
次に、隆起部120に係る寸法の一例について説明する。
図4Aに示すように、隆起部120は、くぼみ部130のユーザの親指と人差し指の付け根の水かき部分が当たる位置から例えば40mm以内の位置に設けられている。隆起部120がこのような位置に設けられることによって、隆起部120の先端側の側面には親指の先端から第1関節までの間が接触するようになり、隆起部120の上側の側面には親指の第1関節から第2関節までの間が接触するようになる。
【0030】
図4Bは、操作部100を基端側からみた側面図である。
図3Bに示すように、隆起部120のグリップ110の表面からの高さは例えば15mmである。隆起部120の高さを15mm程度とすることで、隆起部120に親指がしっかりと掛かることになる。なお、ここに示した隆起部120の寸法は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0031】
隆起部120がグリップ110の表面に設けられていることの効果を説明する。ハンドル160をグリップ110の方向に近づけるとき、すなわち、ハンドル160を基端側に移動させるとき、
図5Aに示すように、操作部100には以下のような力が加わる。すなわち、ハンドル160のグリップ110側の部分は中指、薬指及び小指の掌側によって、グリップ110側に押される。このとき、グリップ110の基端側の面は、掌、特に母指球によってハンドル160側に押される。このようにして、ユーザによる手を握る力、すなわち、中指、薬指及び小指を屈曲させる力は、ハンドル160をグリップ110方向に移動させるために効率よく伝達される。
【0032】
一方、ハンドル160をグリップ110から遠ざけるとき、すなわち、ハンドル160を先端側に移動させるとき、
図5Bに示すように、操作部100には、以下のような力が加わる。すなわち、ハンドル160の先端側の部分は中指、薬指及び小指の甲側によって、先端側に押される。このとき、グリップ110の隆起部120の先端側の面は、親指の指先から第1関節の間の掌側によって基端側に押される。すなわち、隆起部120に親指によってグリップ110を基端側に押す力が作用する先端側を向いた面(ハンドル160の方向を向いた面)が存在することで、隆起部120のこの面に掛かった親指によって、グリップ110が基端側に押される力がグリップ110に効率よく作用する。このようにして、ユーザによる手を開く力、すなわち、中指、薬指及び小指を伸展させる力は、ハンドル160を先端方向に移動させるために効率よく伝達される。
【0033】
仮に、隆起部120が存在しなかった場合を考える。この場合において、ハンドル160を先端側に移動させるときを考える。このとき、ユーザの手によってグリップ110を基端側に押す力は効率よくグリップ110に伝達されない。掌及び親指によってグリップ110を基端側に押す力が作用する先端側を向いた面がグリップ110に存在しないためである。このため、隆起部120が存在しないとき、掌と親指とがグリップ110を挟む力によってグリップ110を掌に対して固定し、この力を利用してグリップ110に基端側に押し出す力を作用させる。このとき、手とグリップ110との間が滑りやすく、このすべりが起こると、手を開く力は効率よくグリップ110及びハンドル160に伝達されない。
【0034】
このように、本実施形態の隆起部120は、ハンドル160を先端側に移動させる際に、手の力をグリップ110及びハンドル160に伝達するにあたって、力の伝達効率を向上させる役割を担う。
【0035】
なお、上述の例では、隆起部120がくぼみ部130よりも下側にある例を示したがこれに限らない。隆起部120は、くぼみ部130よりも上側、すなわち、駆動アセンブリ170側に配置されてもよい。
【0036】
また、隆起部120が円形状をしている例を示したがこれに限らない。例えば
図6A乃至
図6Cに示すように、隆起部120がグリップに沿って延伸するように構成されてもよい。また、隆起部120の形状が、楕円形、四角形、三角形等といったその他の形状をしていてもよい。ただし、隆起部120は、ユーザの親指の第1関節から第2関節までの間の部分が接触する上側の側面と、先端から第1関節までの間の部分が接触する先端側の側面とを有することが好ましい。すなわち、隆起部120の形状は、隆起部120の側面の法線の向き、すなわち、隆起部120の法線の基準面Sに投影される成分が、基端側から先端側に行くにしたがって、上方向から先端方向に変化する部分が含まれている形状を有することが好ましい。
【0037】
特に、隆起部120は、先端から第1関節までの間の部分が接触する先端側の側面を有していることが好ましい。すなわち、隆起部120は、ハンドル160の方向を向いている面を有していることが好ましい。
【0038】
また、隆起部120の大きさは、どのような大きさでもよい。すなわち、上述のとおり、ユーザの親指が隆起部120に掛かれば、その他の部分の形状や大きさはどのようなものでもよく、特に下側の形状は限定されない。
【0039】
上述の実施形態では、ハンドル160の操作に応じてエンドエフェクタ220が開閉する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、処置装置1は、ハンドル160の操作に応じてエンドエフェクタにおいてシャフトが屈曲するように構成されていてもよい。また、例えば処置装置1がステープラとして機能する場合、ハンドル160の操作に応じてステープラの針が打ち出されるように構成されてもよい。また、ハンドル160の操作に応じてその他の動作が起こってもよい。このように、エンドエフェクタは、シャフトの先端側にあるどのような機構を含んでいてもよい。