特許第6017745号(P6017745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6017745内視鏡システム、回転センサおよびトロッカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6017745
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】内視鏡システム、回転センサおよびトロッカ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161020BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A61B1/00 320E
   A61B17/34
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-546532(P2016-546532)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2016052475
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-30626(P2015-30626)
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】原口 雅史
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎太郎
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/012082(WO,A1)
【文献】 特許第3504681(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い挿入部の先端に撮影光学系を備える内視鏡と、
患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、前記挿入部を貫通させる貫通孔を有するトロッカと、
該トロッカに設けられ、前記挿入部が前記貫通孔に貫通された状態で、前記貫通孔に対する前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転量検出部と、
前記挿入部が前記トロッカに挿入される際に前記内視鏡の撮影光学系により撮影され得る位置に配置され表示と、
前記撮影光学系により取得された画像中の前記表示に基づいて、前記挿入部と前記表示との前記長手軸回りの回転方向における相対角度を検出する初期角度検出部とを備える内視鏡システム。
【請求項2】
前記表示が、前記回転量検出部により前記挿入部の回転量が検出される状態となった後に撮影される位置に配置されている請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記表示が、前記周方向の1カ所に設けられている請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記表示が、前記挿入部の前記貫通孔への挿入方向に沿って設けられている請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記表示が、径方向内方に向けて光を射出し得る発光部である請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記表示が、外光を透過し得る窓部である請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記内視鏡が、前記挿入部の先端に、被写体に向けて照明光を射出する照明部と、該照明部のオンオフを切り替える制御部とを備え、
該制御部が、前記初期角度検出部による前記相対角度の検出に応じて前記照明部をオンに切り替える請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、先端に撮影光学系を備える内視鏡の挿入部を貫通させる貫通孔を備えるトロッカに固定される回転センサであって
前記貫通孔と連通し、前記挿入部を貫通させる挿入孔と、
該挿入孔に挿入された前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転量検出部と、
前記長手軸回りにおける前記挿入部に対する前記挿入孔の周方向位置を特定させるために、前記挿入孔に挿入される際に前記撮影光学系により撮影され得る位置に配置され表示と
を備える回転センサ。
【請求項9】
患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、先端に撮影光学系を備える内視鏡の挿入部を貫通させる貫通孔を備えるトロッカであって、
前記貫通孔に貫通状態に配置された前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転量検出部と、
前記長手軸回りにおける前記挿入部に対する前記貫通孔の周方向位置を特定させるために、前記貫通孔に挿入される際に前記撮影光学系により撮影され得る位置に配置され表示と
を備えるトロッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム、回転センサおよびトロッカに関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入される内視鏡本体の軸回りの回転方向を重力を利用して検出し、内視鏡本体の回転によってモニタ上の像を回転させない制御を行わせる内視鏡が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3504681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の内視鏡においては、内視鏡自体に重力を検出するセンサを設ける必要があるため、既存の内視鏡を用いて回転方向を検出できない不都合がある。内視鏡本体の軸が鉛直方向に近い状態で使用される場合には、重力の方向を検出し難く、内視鏡本体の軸回りの回転方向の検出精度が低下することがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、既存の内視鏡を用いても、内視鏡の姿勢に関係なく精度よく回転方向を検出することができる内視鏡システム、回転センサおよびトロッカを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、細長い挿入部の先端に撮影光学系を備える内視鏡と、患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、前記挿入部を貫通させる貫通孔を有するトロッカと、該トロッカに設けられ、前記貫通孔に貫通状態に配置された前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転センサと、前記トロッカに挿入される際に前記内視鏡の撮影光学系により撮影され得る位置に配置され、前記貫通孔の周方向位置を特定し得る表示と、前記撮影光学系により取得された画像中の前記表示に基づいて、前記挿入部と前記貫通孔との挿入時の相対角度を検出する初期角度検出部とを備える内視鏡システムである。
【0007】
本態様によれば、患者の体表にあけられた孔にトロッカを配置して、トロッカに備えられた貫通孔に内視鏡の挿入部を先端から挿入すると、トロッカに設けられた回転センサが挿入部の長手軸回りの回転量を検出するようになる。また、挿入部がトロッカに挿入される際に、挿入部の先端に設けられた撮影光学系を作動させておくことにより、貫通孔の周方向位置を特定し得る表示を含む画像が取得され、取得された画像中の表示に基づいて、初期角度検出部により挿入部と貫通孔との挿入時の相対角度が検出される。すなわち、初期角度検出部により検出される挿入時の相対角度と、挿入後に回転センサにより検出される挿入部の回転量とにより、内視鏡の挿入部の長手軸回りの絶対位置を検出することができる。
【0008】
上記態様においては、前記表示が、前記回転センサにより前記挿入部の回転量が検出される状態となった後に撮影される位置に配置されていてもよい。
このようにすることで、挿入部をトロッカの貫通孔に挿入していくと、まず、回転センサによる挿入部の回転量の検出が開始され、次いで、表示部を含む画像の取得によって、挿入部と貫通孔との相対角度が検出される。これにより、回転センサによる挿入部の回転量がある値となった時点で、挿入部と貫通孔との相対角度が検出され、その時点で、貫通孔に対する挿入部の長手軸回りの絶対位置の検出が可能となる。最初に表示の撮影による相対角度の検出が行われた後に回転センサによる回転量の検出が開始される場合には、相対角度の検出から回転量の検出までの期間に空白が発生し、正しい絶対位置の検出が困難となる場合がある。
【0009】
上記態様においては、前記表示が、前記周方向の1カ所に設けられていてもよい。
このようにすることで、撮影光学系により取得された画像に表示が含まれてさえいれば、挿入部と貫通孔との長手軸回りの相対角度を精度よく検出することができる。特に、直視型の内視鏡であって、貫通孔の全周にわたる画像を一度に取得できる場合には、相対角度の検出が容易である。
【0010】
上記態様においては、前記表示が、前記挿入部の前記貫通孔への挿入方向に沿って設けられていてもよい。
このようにすることで、挿入部を貫通孔に挿入していく過程で連続的に表示を検出し続けることができる。これにより、挿入部と貫通孔との挿入時の相対角度を連続的に検出して更新し続けることができる。
【0011】
上記態様においては、前記表示が、径方向内方に向けて光を射出し得る発光部であってもよい。
このようにすることで、内視鏡の照明を作動させなくても発光部から射出される光が撮影光学系により取得される画像に含まれることによって挿入部の貫通孔に対する相対角度を検出することができる。これにより、内視鏡の照明を使用する場合のハレーション等による検出精度の低下を防止できる。逆に、挿入部がトロッカの貫通孔に挿入される場合に、内視鏡の照明を使用しなければ、通常貫通孔内は真っ暗であるため、発光部からの光を明確に検出することができ、検出精度を向上することができる。
【0012】
上記態様においては、前記表示が、外光を透過し得る窓部であってもよい。
このようにすることで、窓部から径方向内方に漏れる外光によって、照明光を使用しなくても挿入部と貫通孔との相対角度を検出することができる。
【0013】
上記態様においては、前記内視鏡が、前記挿入部の先端に、被写体に向けて照明光を射出する照明部と、該照明部のオンオフを切り替える制御部とを備え、該制御部が、前記初期角度検出部による前記相対角度の検出に応じて前記照明部をオンに切り替えてもよい。
このようにすることで、照明部がオンに切り替えられてトロッカ内の画像が取得されることにより、挿入部と貫通孔との相対角度が検出されたことを確認することができる。
【0014】
本発明の他の態様は、患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、先端に撮影光学系を備える内視鏡の挿入部を貫通させるトロッカに固定され、前記挿入部を貫通させる挿入孔と、該挿入孔に挿入された前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転量検出部と、前記挿入孔に挿入される際に前記撮影光学系により撮影され得る位置に配置され、前記挿入孔の周方向位置を特定し得る表示とを備える回転センサである。
【0015】
本態様によれば、体表を貫通して取り付けられたトロッカに固定して、挿入部を挿入孔に挿入することにより、挿入部の長手軸回りの回転量が検出されるとともに、挿入孔に挿入される際に内視鏡の撮影光学系により表示が撮影されて取得された画像内の表示によって、挿入孔に対する挿入部の相対位置を容易に検出することができる。これにより、挿入部の挿入孔に対する長手軸回りの絶対位置を検出することができる。
【0016】
本発明の他の態様は、患者の体表に、該体表を貫通して取り付けられ、先端に撮影光学系を備える内視鏡の挿入部を貫通させる貫通孔を備えるトロッカであって、前記貫通孔に貫通状態に配置された前記挿入部の長手軸回りの回転量を検出する回転センサと、前記貫通孔に挿入される際に前記撮影光学系により撮影され得る位置に配置され、前記貫通孔の周方向位置を特定し得る表示とを備えるトロッカである。
【0017】
本態様によれば、患者の体表に該体表を貫通して取り付けるとともに、貫通孔に内視鏡の挿入部を先端から挿入すると、回転センサが挿入部の長手軸回りの回転量を検出するようになる。また、挿入部が貫通孔に挿入される際に、挿入部の先端に設けられた撮影光学系を作動させておくことにより、貫通孔の周方向位置を特定し得る表示を含む画像が取得され、取得された画像中の表示に基づいて、挿入部と貫通孔との挿入時の相対角度を検出することができる。すなわち、検出された挿入時の相対角度と、挿入後に回転センサにより検出される挿入部の回転量とにより、内視鏡の挿入部の長手軸回りの絶対位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既存の内視鏡を用いても、内視鏡の姿勢に関係なく精度よく回転方向を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムを示す全体構成図である。
図2図1の内視鏡システムに備えられるトロッカおよび回転センサが体表を貫通して取り付けられた状態を示す縦断面図である。
図3図1の内視鏡システムに備えられる内視鏡の先端部を部分的に示す斜視図である。
図4図2の回転センサの挿入孔に内視鏡の先端部が挿入された状態を示す縦断面図である。
図5図4の状態で内視鏡の撮影光学系により取得される画像例を示す図である。
図6図2のトロッカの変形例を示す縦断面図である。
図7図2のトロッカの他の変形例を示す縦断面図である。
図8図7のトロッカを用いた場合に内視鏡の撮影光学系により取得される画像例を示す図である。
図9図1の内視鏡システムの変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る内視鏡システム1および回転センサ4について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム1は、図1に示されるように、患者の体表Aを貫通する孔に体表Aを貫通して固定され、体表Aの内外を連絡する貫通孔2を有するトロッカ3と、該トロッカ3に設けられた回転センサ4と、トロッカ3の貫通孔2に挿入される挿入部5を有する内視鏡6と、内視鏡6により取得された画像Gを処理する画像処理部(初期角度検出部)7と、該画像処理部7により処理された画像を表示するモニタ8とを備えている。
【0021】
トロッカ3は、図2に示されるように、体表Aの孔を貫通状態に配置される円筒部9と、該円筒部9の一端に設けられ、円筒部9が体表Aの孔を貫通して装着された状態で、体外に配置されるフランジ部10とを備えている。
本実施形態に係る回転センサ4は、トロッカ3のフランジ部10に固定され、体外に配置されるようになっている。回転センサ4は、トロッカ3の貫通孔2に挿入される前に内視鏡6の挿入部5を貫通させる挿入孔11を備え、該挿入孔11に挿入されている挿入部5の長手軸回りの回転量を検出するようになっている。回転センサ4がトロッカ3のフランジ部10に固定された状態で、回転センサ4の挿入孔11とトロッカ3の貫通孔2とは同軸に配置されるようになっている。
【0022】
回転センサ4は、例えば、挿入孔11内面から径方向内方に突出する複数のローラ12と、該ローラ12の回転量を検出するエンコーダ(回転量検出部)13とを備えている。各ローラ12は、挿入孔11の軸に平行な軸線を有している。これにより、挿入部5が挿入孔11に挿入されると、ローラ12が挿入部5の外周面に接触して、挿入孔11に対して挿入部5を径方向に位置決めするとともに、挿入部5がその長手軸回りに回転するとローラ12が挿入部5の外周面において転動し、その回転量がエンコーダ13によって検出されるようになっている。
【0023】
本実施形態に係る回転センサ4は、挿入孔11の内面に、挿入孔11の軸に平行な方向に延びる1本のライン状の表示14が設けられている。表示14は、挿入孔11の内面の色とは異なる色の塗料で描かれ、あるいは、挿入孔11の内面における刻印により形成されている。
【0024】
内視鏡6は、図3に示されるように、挿入部5の先端面に前方視野を有する撮影光学系15および照明光学系(照明部)16を有している。図中、符号17は処置具(図示略)を出没させるチャネルである。
画像処理部7は、撮影光学系15により取得された画像Gを処理して、画像G内に写っている表示14を認識し、撮影光学系15の有する座標において表示14がどの方向に配置されているかを検出するようになっている。これにより、内視鏡6の挿入部5が回転センサ4の挿入孔11に挿入される際における挿入部5と挿入孔11との相対角度が検出されるようになっている。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る回転センサ4および内視鏡システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム1を用いて患者の体腔内の観察を行うには、図2に示されるように、患者の体表Aを切開して形成された孔にトロッカ3を挿入して貫通状態に固定する。この状態で、体外に配置されるトロッカ3のフランジ部10には回転センサ4が固定されている。
【0026】
次に、内視鏡6の撮影光学系15をオン状態に切り替えて、画像Gを取得可能な状態として、挿入部5を先端から回転センサ4の挿入孔11に挿入していく。そして、挿入部5の先端が回転センサ4の挿入孔11に挿入を開始されると、挿入孔11の内面が撮影され、図5に示されるように、内面に設けられている表示14が画像G内に写るようになる。
【0027】
図4に示されるように、挿入部5が挿入孔11内に挿入されると、挿入孔11内に配置されているローラ12が挿入部5の外周面に接触して挿入部5を挿入孔11に位置決めし、かつ、エンコーダ13による挿入部5の長手軸回りの回転検出が可能となる。
この時点で、画像処理部7は取得された画像Gに対して画像認識処理を行い、画像G内に写っている表示14の位置を検出する。
【0028】
例えば、挿入部5の挿入時の画像として、図5に示される画像Gが取得された場合に、撮影光学系15の有する座標の中心回りにいずれかの方向に傾いたライン状の表示14が写っている。したがって、画像処理部7は、この画像G中の表示14の位置を検出し、表示14の撮影光学系15の座標の中心回りの傾斜角度αを、挿入部5の挿入時の、挿入部5と挿入孔11との相対角度として検出する。
【0029】
すなわち、本実施形態に係る回転センサ4および内視鏡システム1によれば、挿入孔11の内面に設けられた表示14によって、内視鏡6の挿入部5の挿入孔11への挿入時における挿入部5と挿入孔11との相対角度を検出でき、かつ、回転センサ4の作動によって、挿入部5の挿入孔11への挿入後の挿入部5の挿入孔11に対する長手軸回りの回転量を検出できる。その結果、挿入部5の長手軸回りの絶対(角度)位置を容易に検出する
ことができるという利点がある。
【0030】
特に、内視鏡6に重力方向を検出するための水準器のような特別なセンサを備える必要が無いので、既存の内視鏡を用いても精度よく回転方向および回転量を検出することができる。さらに、重力方向の検出によるのではなく、内視鏡6が本来備えている撮影機能を利用しているので、内視鏡6の姿勢に関係なく精度よく回転方向を検出することができるという利点がある。
【0031】
本実施形態に係る回転センサ4および内視鏡システム1によれば、挿入孔11の内面に周方向1カ所の表示14を設けているので、取得された画像G内に表示14が写ってさえいれば、挿入部5と挿入孔11との相対角度を精度よく検出することができる。表示14が挿入孔11の軸に平行な方向に延びるライン状に形成されているので、挿入部5を挿入孔11に挿入する過程のある時間範囲にわたって表示14を検出し続けることができる。
【0032】
すなわち、挿入部5を回転センサ4の挿入孔11に挿入して回転センサ4による回転量の検出機能を有効にするには、挿入部5の外周面にローラ12を密着させて、挿入部5の長手軸回りの回転が正しくローラ12の回転に変換されるようにする必要がある。本実施形態によれば、表示14が瞬間的に検出されるのではなく、挿入部5が挿入孔11に挿入されていく過程のある時間範囲にわたって検出される。したがって、回転センサ4による回転量の検出機能が有効になった後、例えば、最後に表示14が検出されたときに、回転センサ4により検出される回転量をゼロにリセットすることにより、精度よく絶対位置を検出することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、挿入孔11内面に表示14を有し、トロッカ3に取り付けられて使用される回転センサ4と、これを備える内視鏡システム1について説明したが、図6に示されるように、表示14をトロッカ3の貫通孔2内面に設けることにしてもよい。また、回転センサ4が一体化され挿入孔11あるいは貫通孔2の内面に表示14が設けられたトロッカ3を採用してもよい。
【0034】
表示14をトロッカ3に設けることにより、挿入部5が回転センサ4を貫通した後に表示14を検出するので、回転センサ4による回転量の検出機能が有効になった後に挿入部5と貫通孔2との相対角度を検出することができ、より確実に絶対位置を検出することができるという利点がある。
【0035】
また、本実施形態においては、表示14を塗料または刻印により構成したが、これに限定されるものではない。
表示14は、例えば、図7に示されるように、トロッカ3の貫通孔2の周方向の一カ所に、内面から体外に配置されることとなる外面まで貫通して配置されたガラスや樹脂等の光の透過率が高い材質からなる窓部(発光部)18によって構成されていてもよい。
【0036】
このようにすることで、外光が窓部18を透過して貫通孔2内面から径方向内方に射出される。これにより、内視鏡6の撮影光学系15により取得される画像Gには、直線状に光る表示14が写るようになる。そして、このような構成を採用することにより、内視鏡6の照明光学系16を作動させなくても、外光が通過する細い直線状の窓部18を表示14として検出することができる。
【0037】
特に、挿入部5が挿入されると、図8に示されるように、貫通孔2内は真っ暗になるので、直線状の窓部18による表示14は、画像G中により鮮明に写り、検出精度を向上することができる。また、内視鏡6の照明光学系16を作動させずに済むので、内視鏡6の照明光学系16を作動させた場合のように、極めて強度の高い照明光が貫通孔2の内面で反射してハレーションを起こし、表示14の検出精度が低下する等の問題の発生を防止することができる。
また、窓部18に代えて、LEDや有機ELのように発光する発光体により表示14を形成してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、図9に示されるように、内視鏡6が照明光学系(照明部)16を制御する制御部19とを備えていてもよい。この場合、制御部19は、回転センサ4および画像処理部7からの信号を受けて、回転センサ4による挿入部5の回転量の検出が開始されかつ画像処理部7が表示14を認識して挿入部5の貫通孔2への挿入時の挿入部5と貫通孔2との長手軸回りの相対角度を検出した場合に、照明光学系16をオンに切り替えて照明光を照射させるようにすればよい。
【0039】
このようにすることで、挿入時の相対角度検出の際には、照明光学系16の作動を停止して、表示14の誤検出を防止することができるとともに、照明光学系16が作動してトロッカ3の貫通孔2内あるいは体腔内の画像Gが取得されるようになることで、表示14が精度よく認識されて絶対位置が検出されるようになったことを確認することができるという利点がある。
【0040】
また、本実施形態においては、周方向の1カ所にライン状の表示14を配置することとしたが、これに限定されるものではない。
例えば、表示14の形態は、ライン状ではなく点状でもよいし、複数点が貫通孔2の軸に平行な方向に配列されていてもよい。また、表示14は、ライン状あるいは点状以外の模様や文字あるいは数字であってもよい。
【0041】
また、ライン状の表示14を周方向に間隔をあけて複数設けてもよい。この場合、ラインの間隔やラインの幅を全て異ならせてもよい。このようにすることで、貫通孔2全体を視野範囲内に収められない、側視内視鏡や斜視内視鏡の場合に、2本以上のラインを同時に撮影可能な視野範囲を備えていれば、視野が周方向のどちらを向いているのかを検出することができる。
【0042】
また、隣接するラインの間隔の比率や隣接するラインの幅の比率を全て異ならせてもよい。このようにすることで、挿入部5と貫通孔2との間にガタがあっても、あるいは観察倍率が変動しても、3本以上のラインを同時に撮影可能な視野範囲を備えていれば、視野が周方向のどちらを向いているのかを検出することができる。
また、表示14の色を周方向に異ならせてもよい。
また、表示14を光源によって構成する場合に、光源の点滅の周波数を周方向に異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 内視鏡システム
2 貫通孔
3 トロッカ
4 回転センサ
5 挿入部
6 内視鏡
7 画像処理部(初期角度検出部)
11 挿入孔
13 エンコーダ(回転量検出部)
15 撮像光学系
16 照明光学系(照明部)
18 窓部(表示、発光部)
19 制御部
A 体表
G 画像
【要約】
既存の内視鏡を用いても、内視鏡の姿勢に関係なく精度よく回転方向を検出することを目的として、内視鏡システム(1)は、細長い挿入部(5)の先端に撮影光学系を備える内視鏡(6)と、患者の体表(A)に、該体表(A)を貫通して取り付けられ、挿入部(5)を貫通させる貫通孔(2)を有するトロッカ(3)と、該トロッカ(3)に設けられ、貫通孔(2)に貫通状態に配置された挿入部(5)の長手軸回りの回転量を検出する回転センサ(4)と、トロッカ(3)に挿入される際に内視鏡(6)の撮影光学系により撮影され得る位置に配置され、貫通孔(2)の周方向位置を特定し得る表示と、撮影光学系により取得された画像中の表示に基づいて、挿入部(5)と貫通孔(2)との挿入時の相対角度を検出する初期角度検出部(7)とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9