(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>概要
図1は、本発明の制御装置を含むICカード認証システムの概略構成図である。
ICカード認証システムAは、本発明の制御装置3のほか、ICカード1と、カードリーダ2と、被制御機器3と、を少なくとも備える。
【0012】
<2>ICカード
ICカード1は、ICチップを備えた公知のカードであり、ICチップに記憶されたカード情報をカードリーダで読み取り可能に構成する。
前記カード情報には、ユーザの認証タイプを把握するための識別番号が少なくとも記憶されている。
ICカード1は、本システムを利用する各ユーザが個別に所持する。
【0013】
<3>カードリーダ
カードリーダ2は、ICカード1の識別番号と認証信号を制御装置3へと送信する機能を備えた装置である。
前記認証信号とは、現時点においてICカードがカードリーダに提示されているか否かを示す信号である。
より詳細には、カードリーダ2が非接触式の場合、ICカード1がカードリーダ2から発する磁界内に存在し続けている間、カードリーダ2は認証信号を制御装置に送信することとなる。
【0014】
<4>制御装置
制御装置3は、少なくとも1台以上の被制御機器4に対して、制御指令を実行する為の装置である。
制御装置3は、CPU、メモリ等を備えた情報処理装置である。
制御装置3は、カードリーダ2を介して取得したICカード1の識別番号及び認証信号に基づいて、被制御機器4に対して各制御指令を実行する機能を有する。
以下、制御装置3を構成する各手段について説明する。
【0015】
(1)記憶手段
記憶手段31は、ICカード1の識別番号毎に所定の処理情報を記憶しておくための手段である。
処理情報とは、制御指令と設定期間とを少なくとも含む。
制御指令とは、被制御機器の動作を設定する情報である。
設定期間とは、ある制御指令を実行するまでに要する、カードリーダへのICカードの提示時間を示す情報である。
【0016】
[制御指令]
制御指令の内容は、適宜設計することができる。
例えば、制御指令は、単に被制御機器4の動作を特定する直接的な指令とすることができる。
また、制御指令は、予め被制御機器4の状態を把握した上で被制御機器4の動作を特定する指令としてもよい。
また、制御指令は、該制御指令を受信する被制御機器4において、該被制御機器4の状態に応じて動作を可変とした間接的な指令としてもよい。
なお、本例では、制御装置3側で被制御機器4の状態を把握した上で被制御機器4の動作を特定する指令を実行するものとする。
【0017】
[設定期間]
設定期間の値は、適宜設定・変更可能であり、1秒、2秒など特定の値としてもよいし、2秒〜4秒など範囲を持たせた値としてもよい。
なお、本発明は、各制御指令毎に設定期間を同じ値としても良いし、異なる値としてもよい。
【0018】
[記憶手段の構築例]
記憶手段31のデータベースの構築方法は、各種の方法を採用することができる。
例えば、ICカード1の識別番号に対して、被制御機器4への命令毎に設定期間を設定しておいてもよいし、設定期間毎に被制御機器4への命令を設定しておく構成としてもよい。
【0019】
これらの各制御指令における設定期間の設定は、各被制御機器4間の関係や、制御指令の属性等を考慮し、制御指令の実行順に矛盾や不備がないように、制御装置3及び各被制御機器4を適宜設計すればよい。
【0020】
(2)判定手段
判定手段32は、ICカード1の提示時間に応じて、被制御機器4への制御指令を実行する為の手段である。
始めに、判定手段32は、カードリーダ2がICカード1を最初に認識した際に、カードリーダ2から取得したICカードの識別番号に基づいて記憶手段31から前記処理情報を取得する。
次に、判定手段32は、カードリーダ2からICカード1の認証情報を受信する間、ICカード1の提示時間を計測し続ける。
認証情報はICカード1が提示され続けている間、制御装置3に送信される。
そして、判定手段32は、前記ICカード1の提示時間と前記設定期間とを比較して、ICカード1の提示時間が設定期間に達した場合に、前記設定期間に紐付いた制御指令を前記被制御機器4に対して実行する。
【0021】
(3)その他
制御装置3には、図示しない公知の音響手段や発光手段を組み合わせて、制御指令の実行の度に異なる音や発光を行うことにより、実行した制御指令をユーザに認識させるよう構成しておくこともできる。
【0022】
<5>被制御機器
被制御機器4(4a,4b,4c・・・)は、制御装置3からの制御指令を受けて各処理を実行する装置である。
被制御機器4には、電子錠や警備システムなどのほか、家電、電子機器、床暖房、空調、照明、駐車場、宅配ボックス、エレベータ、工作機械など電子制御可能なあらゆる装置が含まれる。
【0023】
<6>その他の構成例
前記した構成では、カードリーダ2と制御装置3を別体の構成としているが、本発明は、カードリーダ2と制御装置3を一体化して一つの制御装置3としても良い。
この場合、カードリーダ2側に、前記記憶手段31及び判定手段32を組み込んでも良いし、制御装置3側にカードリーダ機能を組み込んでも良い。
【0024】
<7>使用方法
次に、前記ICカード認証システムの使用方法の一例について説明する。
【0025】
(1)前提
本実施例では、異なる認証態様を有する5種類のユーザを有し、各ユーザは、各認証態様に即したICカードを所有している。
記憶手段には、各ユーザの認証態様を示すテーブルとして、以下の表1に記載のテーブルが記憶されている。
[表1]
【0026】
(2)甲の認証方法
甲は、処理a及びbの実行権限を有するユーザである。
甲が所有するICカード1をカードリーダ2に提示すると、制御装置3は前記表1のテーブルを参照してICカード1の識別番号に対応する制御指令と設定期間を読み込む。また、制御装置3は、カードリーダ2からの認証信号を用いてICカードの提示時間を計測し始める。
ICカード1の提示時間が1秒経過した時点で、制御装置3は、被制御機器4に対して、処理aの命令を実行する。
その後、ICカード1がカードリーダ2に提示し続けている状態を維持している場合、制御装置3は引き続き提示時間を計測し続ける。
次に、提示時間が5秒を経過した時点で、制御装置3は被制御機器4に対して、処理bの命令を実行する。
処理bの命令の実行後は、ICカード1を提示しつづけていたとしても制御装置3はその他の命令の実行を行わない。
【0027】
このようにして、ICカード1の提示動作が1回でありながら、提示時間の長短で複数の制御命令を多段的に実行することができる。
なお、ICカード1の提示時間が1秒以上5秒未満の時は、1秒経過時に処理aの命令を実行するに留まることとなる。
【0028】
(3)乙の認証方法
乙は、処理a、b及びcの実行権限を有するユーザである。
ICカード1の提示時間が1秒、5秒、10秒経過時に、処理a、b、cを順に実行する。
【0029】
(4)丙の認証方法
丙は、処理aのみの実行権限を有するユーザである。
ICカード1の提示時間が1秒経過時に処理aの命令を実行するに留まる。
【0030】
(5)丁の認証方法
丁は、丙と同様、処理aのみの実行権限を有するユーザである。
但し、丁は処理aを実行するための設定期間が5秒である点が丙と異なる。
すなわち、同じ制御指令であってもユーザの属性に応じて設定期間を異なる値に設定することで、被制御機器4に対する多種多様な制御方法が期待でき、利便性の向上を図ることができる。
【0031】
(6)戊の認証方法
戊は、処理a、b、c及びdの実行権限を有するユーザである。
先の甲〜丁の認証方法と異なる点は、一部の制御指令について、ICカード1の提示時間が所定の期間を経過した時に実行されるのではなく、所定の期間内で終了したときに実行される点である。
例えば、処理dは、ICカード1の提示時間が1秒より大きく5秒未満であるときに実行される。この場合、制御装置3は、処理dをICカード1がカードリーダ2の磁界から離れた時を待って実行することになる。
このように、被制御機器4への制御指令を実行する設定期間を、所定期間の経過時と、所定期間の範囲内との組合せとすることにより、より細かな設定が可能とし、多分野での活用が期待できる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の電子認証システムAを用いた各実施例について説明する。
なお、これらの実施例はあくまで参考例であり、本発明の内容や用途を制限するものではない。
【0033】
<1>第1実施例
本発明の電子認証システムの第1実施例について説明する。
本実施例は、シルバーマンションに、本発明の電子認証システムAを採用した場合の認証方法を示すものである。
【0034】
(1)前提
本実施例では、異なる認証態様を有する2種類のユーザを有し、各ユーザは、各認証態様に即したICカード1を所有している。
被制御機器4には、居室の電子錠と警備システムとが少なくとも含まれる。
入居者は、居室の施錠・解錠と、警備システムのON・OFFの権限を有するユーザである。
入居者家族は、入居者と同居していない家族であり、入居者の居室の施錠・解錠のみの権限を有するユーザである。
【0035】
(a)解錠状態/警備OFF状態時の動作
解錠状態/警備OFF状態時の動作について、例えば以下のように設定することができる。
[表2]
入居者のICカード1を5秒以上提示した場合、1秒経過時に居室の施錠が行われ、5秒経過時に警備システムのONが順番に実行される。
また、入居者が単に居室の施錠のみを行いたい場合には、ICカード1を1秒より長く5秒未満の提示とすれば、1秒経過時に居室の施錠が行われるだけである。
このとき、入居者家族のICカード1は、施錠の権限のみに留まり、ICカードを5秒以上提示し続けても警備のONを行うことはできない。
【0036】
(b)施錠状態/警備OFF状態時の動作
施錠状態/警備OFF状態時の動作について、例えば以下のように設定することができる。
[表3]
居室の施錠がされた状態から、警備システムのONを行いたい場合には、単にICカードを5秒以上提示すればよい。
このとき、制御装置3は、まずICカードの提示時間が1秒経過した時点で、ICカード1の居室の施錠命令を重複実行するか、或いは居室の施錠状態を予め認識しておき、施錠命令の実行を省略する処理を行うこととなる。
また、本状態から、居室の解錠を行いたい場合には、単にICカードを1秒以上5秒未満の提示とすればよい。
このとき、制御装置3は、例えば前記の通りICカードの提示時間が1秒経過した時点で、まずはICカードの居室の施錠命令を重複実行するか、或いは施錠命令の実行を省略する処理を行う。
そして、ICカードの提示時間が5秒に達しなかった場合、制御装置3は、ユーザの意図する動作が居室の解錠であったと推定して、居室の解錠命令を実行すればよい。
このような処理とすれば、入居者側からは居室の解錠のみが実行されたようにみえることとなる。
【0037】
(c)施錠状態/警備ON状態時の動作
施錠状態/警備ON状態時の動作について、例えば以下のように設定することができる。
[表4]
[表5]
[表6]
参考例1では、入居者のICカード1を5秒以上提示した場合に限って、居室の解錠と警備のOFFを行うようにしたものである。
参考例2では、入居者のICカード1を1秒以上提示した場合に限って、居室の解錠と警備のOFFを行うようにしたものである。
参考例3では、入居者のICカード1を1秒以上提示した時に警備をOFFし、続けて5秒以上提示した場合に、居室の解錠を行うようにしたものである。
何れの場合でも、入居者家族のICカードは、警備に係る権限を有していない為、解錠動作を行うことはできない。これは警備ONが、居室が施錠状態であることを前提とするからである。
【0038】
上記の実施例は、ユーザの属性(入居者/入居者家族)に応じて、権限の割り振りや設定期間の設定を行っているが、その他、マンションの管理者や職員などをユーザに加えて、さらに権限の割り振りや提示時間の設定を行ってもよい。
また、同じ属性のユーザであっても、ユーザの年齢や環境等を考慮して、権限の割り振りや提示時間の設定を適宜調整してもよい。
【0039】
以上説明したように、本発明は、ユーザの属性や環境に合わせて、被制御機器に対する権限と、該権限に係る制御命令の実行時期を可変に設定することで、利便性の高い認証システムを提供することができる。
【0040】
<2>第2実施例
本発明の電子認証システムの第2実施例について説明する。
本実施例は、リゾートマンションに、本発明の電子認証システムを採用した場合の認証方法を示すものである。
被制御機器4には、居室の電子錠、床暖房装置及びエアコン、並びに警備システムとが少なくとも含まれる。
その他の前提条件は、前記第1実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
本実施例は、主に、入居者の退出時において、被制御機器の動作を終了させることに着目した構成であり、例えば以下の様に設定することができる。
[表7]
[表8]
【0042】
本実施例は、入居者や入居者家族に、退出時に限り、被制御機器の一部である床暖房やエアコンの動作を終了させる権限のみを設けたものである。
なお、入室時は、前記実施例1のように、解錠と警備OFFを同時に行っても良いし、警備OFFの後に、解錠を行うように設定してもよい。
【0043】
本実施例によれば、退出時に警備システムをONする前に、必ず床暖房とエアコンのOFFの制御指令を実行することで、長期間の不在時に床暖房やエアコンによる無駄な電力消費の発生を予防することができる。
【0044】
<3>第3実施例
本発明の電子認証システムの第3実施例について説明する。
本実施例は、シルバーマンションに、本発明の電子認証システムAを採用した場合の認証方法を示すものである。
ユーザは、入居者、入居者家族、マンションのスタッフと、マンションの管理者との4種に分類される。
被制御機器4は、居室の電子錠、警備システム、チェーンロック(居室の内錠)が少なくとも含まれる。
【0045】
本実施例は、主に、居室に滞在中の入居者の緊急時に、マンションのスタッフや管理者による居室への入室が妨げられないことに着目した構成であり、各ユーザの基本権限を、例えば以下の様に設定することができる。
[表9]
【0046】
本実施例によれば、チェーンロックの権限を、スタッフと管理者に与えることにより、入居者が居室に滞在した状態で居室内からチェーンロックを施錠している場合であっても、スタッフや管理者が当該チェーンロックを解錠して居室内へ入室することが可能であるから、入居者が急病を発症するなどの緊急時においても迅速な対応が可能となる。