特許第6017780号(P6017780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017780
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】口腔機能訓練器
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/03 20060101AFI20161020BHJP
   A61H 1/00 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   A63B23/03
   A61H1/00
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-267446(P2011-267446)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-118916(P2013-118916A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003456
【氏名又は名称】廣瀬 俊章
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬俊章
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−540896(JP,A)
【文献】 米国特許第06773451(US,B1)
【文献】 米国特許第05176705(US,A)
【文献】 特開2010−194196(JP,A)
【文献】 特開2006−230689(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0018582(US,A1)
【文献】 米国特許第05334218(US,A)
【文献】 特開2007−319304(JP,A)
【文献】 特開2007−319303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/03
A61J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔周囲筋を訓練するための口腔機能訓練器であって、
口腔前庭に挿入される翼状に広がった口腔前庭挿入部と、
前記口腔前庭挿入部の内側に位置し、前記口腔前庭挿入部が口腔前庭に挿入されたときに、口蓋に適合する乳首状の口腔内挿入部と、
前記口腔前庭挿入部及び前記口腔内挿入部の反対側に位置し、前記口腔前庭挿入部が口腔前庭に挿入されたときに、口腔外に突出する口腔外突出部と、
前記口腔前庭挿入部が口腔前庭に挿入されたときに口腔の内外を連通させ、吸啜運動にともなって空気を通過させる空気穴と、を有する口腔機能訓練器
【請求項2】
前記空気穴に、音の発生装置を設けた請求項1に記載の口腔機能訓練器
【請求項3】
前記口腔外突出部の内側リング状または棒状の把持部を設けた請求項1または請求項2に記載の口腔機能訓練器
【請求項4】
前記口腔前庭挿入部における上下唇小体及び頬小体の相当部に、切れ込みを設けた請求項1−3のいずれか1項に記載の口腔機能訓練器。
【請求項5】
前記口腔内挿入部が刺激部及び頸部で構成され、前記刺激部の上面は、口蓋を刺激するための半球面状であり、前記刺激部の下面は、舌を刺激するための平面状または凹面状であり、前記刺激部及び前記頸部の上面は、上顎前歯部顎提から口蓋にいたる形状に適合する曲面を有する、請求項1−4のいずれか1項に記載の口腔機能訓練器。
【請求項6】
前記口腔内挿入部が、中空状の構造を有する請求項1−5のいずれか1項に記載の口腔機能訓練器。
【請求項7】
中空状の前記口腔内挿入部における前記刺激部に、前記中空内の充填物を吸いだすための穴を開けた請求項6に記載の口腔機能訓練器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔機能が低下した要介護者の、口腔機能向上、維持、回復のための口腔機能訓練器に係り、特に要介護者が単独で利用することの出来る口腔機能訓練器に属する
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者をはじめとした要介護者の口腔衛生、口腔機能状態と、誤嚥性肺炎などの全身疾患との関連が明らかになりつつあり、口腔清掃や口腔機能訓練などを中心とした口腔ケアの重要性が注目されている。
【0003】
口腔機能訓練のひとつとして嚥下訓練が挙げられる。この嚥下訓練には、実際に飲食物の嚥下を行い、嚥下機能の回復を促す直接嚥下訓練と、飲食物を嚥下せずに嚥下に関連する機能の回復を促す間接嚥下訓練とが知られているが、なかでも間接嚥下訓練では、嚥下運動に関連する口輪筋や頬筋、舌筋などの口腔周囲筋を効率よくトレーニングするための様々な方法が提唱されている。
【0004】
また、嚥下訓練に当たっては、嚥下に使用される口腔周囲筋の基磯訓練を行うことの出来る嚥下障害補助具が考案されている。
【0005】
このような嚥下障害補助具の一例としては、使用者が把持する把持部と、この把持部の尖端側に連設され口腔内に挿入可能とされている歯列状の被咬合部とを有していることを特徴とする嚥下障害リハビリ訓練器がある(特許文献1参照)。
【0006】
その他、上面が半球面状で、下面が平面状に形成された先細の刺激部を尖端に有する弾性材料からなる口腔内挿入部と、この口腔内挿入部に嵌着され、使用者が握る把持部とを有する嚥下障害リハビリ訓練器がある(特許文献2参照)
【0007】
さらに、上唇部に当接する上唇当接部と、下唇に当接する下唇当接部と、上唇当接部と下唇当接部とをそれぞれ連結する連結部とにより口唇器具が構成され、使用者は上唇当接部に上唇を挿入し、下唇当接部に下唇を挿入し、上下唇を合わせて暫くその状態を維持することによって、連結部の弾性が口唇に負荷を与え、口周辺の筋肉を刺激することの出来る口唇器具がある。(特許文献3参照)
【特許文献1】特開2007−319304
【特許文献2】特開2005−287712
【特許文献3】特開2000−245790
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら間接嚥下訓練においては、実際に飲食物を嚥下しないため、介護者や要介護者の機能訓練に対するモチベーションが保ちにくいという欠点がある。さらに、認知症状の進んだ要介護者に対しては、機能訓練の意味や内容の理解能力が乏しく、訓練の導入自体が困難であることも多い。
【0009】
また、間接嚥下訓練には様々な方法が提唱されているが、嚥下に関連する口腔周囲筋を、簡便かつ総合的にトレーニングする方法は確立されておらず、多くの場合いくつかの方法を組み合わせることによって訓練の計画が立てられている。
【0010】
この、モチベーションの保ちにくさや、多くの方法を組み合わせるなど訓練内容の煩雑さが、介護者の介護に関する手間となり、間接嚥下訓練の実施を妨げる要因となることもある。
【0011】
また、前述した嚥下障害リハビリ訓練器においては、ある程度口腔周囲筋の総合的な訓練が
期待できるが、訓練中に介護者または要介護者は手によって把持する必要があり、要介護者のマヒや拘縮の状態によっては独力での訓練が困難となり、介護者の介護の手間がかかる可能性がある。
【0012】
さらに、前述した口唇器具では、要介護者の独力によるリハビリが可能であるが、口輪筋や頬筋など口唇周囲の筋肉の訓練が中心となるため、舌筋や咀嚼筋群など口腔周囲筋の総合的な訓練は期待できない。
【0013】
一方、認知症状の進んだ要介護者の場合、指しゃぶりやシーツなどの異物を口に入れるなどの周辺症状が不潔行為となることも多く、この不潔行為を強制的に止めさせるとによって介護への抵抗や不信につながる場合ある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、発明が解決しようとする課題を解決するため、嚥下をはじめとした口腔機能をつかさどる口腔周囲筋の総合的な訓練を可能とし、要介護者の自発的かつ独力による訓練を可能とすることで、介護者および要介護者の負担を軽減し得る口腔機能訓練器を開発したものであり、すなわち下記の発明からなるものである。
(1)口蓋部に適合する乳首状の口腔内挿入部と、この口腔内挿入部に連接され口腔外に突出するラッパ状または円筒状の口腔外突出部を有する口腔機能訓練器
(2)前記口腔内挿入部と口腔外突出部との間に形成され、口腔前庭に挿入される翼状に広がった口腔前庭挿入部をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の口腔機能訓練器
(3)前記口腔外突出部にリング状または棒状の把持部が着脱できることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の口腔機能訓練器
【発明の効果】
【0015】
上記に記載される本発明によれば、口腔前庭に挿入される口腔前庭挿入部によって、口腔機能訓練器が口腔内で安定するため、介護者または要介護者が手で把持する必要がない。
【0016】
また、上下唇が口腔前庭挿入部によって内側より支えられた状態で上下唇の運動を行うことにより、ラッパ状または円筒状の口腔外突出部の弾性が口唇に効率よく負荷を与え、口輪筋や頬筋を訓練することができる。
【0017】
さらに、乳首状の口腔内挿入部を舌で触ったり、吸啜運動を行うことで頬筋や舌筋群など嚥下に必要な筋群を効果的に訓練することが出来る。さらに口腔挿入部を噛むことによって、咬筋や側頭筋などの咀嚼筋群も訓練することが可能となるため、総合的な口腔周囲筋の訓練が実施できる。
【0018】
その上、口腔前庭に挿入する口腔前庭挿入部や、乳首状の口腔内挿入部による口腔粘膜への刺激が唾液分泌を促進し空嚥下を助長するため、嚥下機能の維持、回復が期待できるだけでなく、口腔機能訓練器の装着によって閉口時間が延長し口腔乾燥の改善も期待できる。
【0019】
一方、口腔外突出部に着脱できる把持部を、介護者が把持した上で様々な負荷を加えることによって、さらに高度な機能訓練を実施することも可能である。
【0020】
また、乳首状の口腔内挿入部の吸啜運動は原始的な行為であり、認知症の進んだ要介護者にも比較的導入が容易であり、さらに指しゃぶりなどの不潔行為に対する代替行為として、本発明の口腔機能訓練器をおしゃぶりとして利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明による口腔機能訓練器は、図1に示すごとく、ラッパ状または円筒状に成形され口腔外に突出する口腔外突出部1および口腔前庭に挿入される口腔前庭挿入部2、口蓋に適合するよう成形され、口腔内に挿入される乳首状の口腔内挿入部3、口腔外突出部に着脱できる、リング状または棒状の把持部4を備える形状を有するものである。
【0022】
口腔外突出部1は、口唇の開閉、突出運動に伴って口唇に適度の抵抗を加えつつ変形するラッパ状または円筒状の形状を有する。さらに口腔外突出部1には吸啜運動と同調して多少の空気が通過するように、口腔内に貫通する空気穴1aを設置し、スムーズな吸啜運動が行えるようにする。
【0023】
口腔前庭に挿入される口腔前庭挿入部2については、上下唇を効率よく内部から支えられるようにするため出来るだけ大きく設定する。また、小体との接触によって痛みが出ないよう、上下唇小体、頬小体相当部には切れ込み2aを設置する.
【0024】
口腔内挿入部3は、刺激部3aと頸部3bから構成され、とくに刺激部3aの上面は口蓋部を効率よく刺激するため、違和感のない範囲で可及的に半球面状に大きく設定する。また刺激部3aの下面は舌を効率よく刺激するために、平面状または凹面状に設定し、さらにこの口腔内挿入部の刺激部3aおよび頸部3bの上面は上顎前歯部顎提から口蓋にいたる形状に適合するようにS状の曲面を有する形状を付与する。さらに口腔内挿入部3は中空状の構造を有するものとする。
【0025】
また、図1に示す本発明による口腔機能訓練器を構成する材料については、様々な硬度が利用できるゴム状弾性材料、例えばシリコーンゴムなどが適当である。
【実施例】
【0026】
本発明の口腔機能訓練器の使用に当たっての実施例を詳説する。口腔機能訓練器は、先ず口腔前庭挿入部2を上下の口腔前庭に挿入させつつ口腔内挿入部3を口腔内に装着する。
【0027】
要介護者は、口腔機能訓練器を口腔内に装着した状態で、上下唇の開閉、突出など様々な運動を行う。口腔外突出部1はこの運動によって変形しつつ口唇に適度な抵抗を与え、口唇周囲の筋肉を刺激する。
【0028】
さらに要介護者は、口腔内挿入部の刺激部3aを舌でさわったり噛んだりすることによって、咀嚼筋群や舌筋群を刺激する。また、口腔内挿入部を吸啜することによって、口輪筋や頬筋が刺激され、これらの刺激が唾液分泌を促進させる。
【0029】
これら吸啜運動と唾液分泌の促進が、要介護者の空嚥下を誘発し、この一連の運動が機能的な嚥下訓練としての効果を発揮する。
【0030】
また、要介護者の吸啜運動にともない空気穴1aを空気が通過するが、この空気通過の際に発生する空気通過音には、介護者に要介護者が機能訓練中であることを知らしめる効果があり、また、要介護者が自発的な吸啜運動に連動する空気通過音を聞くことによって、口腔機能訓練にあたってのバイオフィードバック効果が期待できる。
【0031】
さらにこの空気穴1aにて発生する空気通過音を明瞭にするため、空気穴1a相当部に音の発生装置を設置してもよい。
【0032】
また、中空状の口腔内挿入部3については、内部に口腔湿潤剤や甘味料を充填し、要介護者がこれを少しずつ吸いだせるように、刺激部3aの先端部に穴を開けてもよい。
【0033】
また、機能訓練時に把持部4が口唇の動きを阻害するようであれば、把持部着脱用切れ込み4aによって、必要に応じて把持部を着脱してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の口腔機能訓練器の前方上面斜視図
図2】本発明の口腔機能訓練器の後方上面斜視図
図3】本発明の口腔機能訓練器の上面図
図4図3のAA´の線に沿ってとった断面図
【符号の説明】
【0035】
1 口腔外突出部
1a空気穴
2 口腔前庭挿入部
2a切れ込み
3 口腔内挿入部
3a刺激部3b頸部
4 把持部
4a把持部着脱用切れ込み
図2
図3
図4
図1