特許第6017783号(P6017783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017783
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】撥水撥油剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/22 20060101AFI20161020BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20161020BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20161020BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20161020BHJP
   C09D 127/00 20060101ALI20161020BHJP
   C09D 133/16 20060101ALI20161020BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20161020BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20161020BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20161020BHJP
   D06M 15/295 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
   C08F220/22
   C09D5/00 Z
   C09D5/02
   C09D5/16
   C09D127/00
   C09D133/16
   C09D133/26
   C09K3/18 102
   C09K3/18 103
   D06M15/277
   D06M15/295
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-511918(P2011-511918)
(86)(22)【出願日】2009年9月11日
(65)【公表番号】特表2012-503028(P2012-503028A)
(43)【公表日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2009066323
(87)【国際公開番号】WO2010030044
(87)【国際公開日】20100318
【審査請求日】2011年4月27日
【審判番号】不服2015-2620(P2015-2620/J1)
【審判請求日】2015年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/096,927
(32)【優先日】2008年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】榎本 孝司
(72)【発明者】
【氏名】山本 育男
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】薄ヶ谷 光宏
(72)【発明者】
【氏名】南里 昌史
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩治
(72)【発明者】
【氏名】坂下 浩敏
(72)【発明者】
【氏名】南 晋一
(72)【発明者】
【氏名】仲村 尚子
(72)【発明者】
【氏名】武内 留美
【合議体】
【審判長】 小柳 健悟
【審判官】 前田 寛之
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−262954(JP,A)
【文献】 特開2007−291373(JP,A)
【文献】 特開昭62−577(JP,A)
【文献】 特開2006−299016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00-246/00
C08F301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体
(B)橋かけ環の炭素数4〜20の環状脂肪族基である環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体、および
(C)単量体(A)および(B)以外の他の単量体であり、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンからなる群から選択される少なくとも1種であるフッ素原子を含まない他の単量体
から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体。
【請求項2】
含フッ素単量体(A)は、式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
(メタ)アクリレート単量体(B)は、飽和の環状炭化水素基を有する単量体である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
(メタ)アクリレート単量体(B)において、環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合している請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
(メタ)アクリレート単量体(B)において、環状炭化水素基が、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基およびジシクロペンテニル基からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
(メタ)アクリレート単量体(B)が、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレートおよびジシクロペンテニルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の含フッ素重合体を必須成分とする撥水撥油剤。
【請求項8】
水性媒体をも含有する請求項に記載の撥水撥油剤。
【請求項9】
水性分散液である請求項に記載の撥水撥油剤。
【請求項10】
請求項のいずれかに記載の撥水撥油剤で基材を処理することからなる、基材の処理方法。
【請求項11】
請求項のいずれかに記載の撥水撥油剤によって処理された繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品(例えば、カーペット)、紙、不織布、石材、静電フィルター、防塵マスク、燃料電池の部品に、優れた撥水性、撥油性、防汚性を付与する含フッ素重合体およびこの重合体を含む処理剤組成物、特に表面処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。例えば、例えば、米国特許第5247008号には、アクリル酸またはメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアミノアルキルエステルとの共重合体の水性分散物である、繊維製品、皮革、紙および鉱物基材のための仕上げ剤が記載されている。
【0003】
撥水撥油剤として使用できる含フッ素化合物として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルを構成モノマーとする含フッ素重合体が挙げられる。表面処理剤の繊維への実用処理では、これまでの種々の研究結果からその表面特性として静的な接触角ではなく、動的接触角、特に後退接触角が重要であることを示している。すなわち、水の前進接触角はフルオロアルキル基の側鎖炭素数に依存しないが、水の後退接触角は、側鎖の炭素数8以上に比較して7以下では著しく小さくなることを示している。これと対応してX線解析は側鎖の炭素数が7以上では側鎖の結晶化が起こることを示している。実用的な撥水性が側鎖の結晶性と相関関係を有していること、および表面処理剤分子の運動性が実用性能発現の重要な要因であることが知られている(例えば、前川隆茂、ファインケミカル、Vol23, No.6, P12(1994))。上記理由により、側鎖の炭素数が7(特に6以下)以下と短いフルオロアルキル基をもつ(メタ)アクリレート系ポリマーでは側鎖の結晶性が低いためそのままでは実用性能を満足しない問題があった。
【0004】
最近の研究結果(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf))などから、PFOA(perfluorooctanoic acid)に対する環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日EPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。
【0005】
一方、Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-2303-8])
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf)や
EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、「テロマー」が分解または代謝によりPFOAを生成する可能性があると公表している。また、「テロマー」が、泡消火剤;ケア製品と洗浄製品;カーペット、テキスタイル、紙、皮革に設けられている撥水撥油被覆および防汚加工被覆を含めた多くの製品に使用されていることをも公表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維製品などの基材に優れた撥水性、撥油性および防汚性を付与できる処理剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体、および
(B)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体
から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、繊維製品などの基材に優れた撥水性、撥油性および防汚性を付与できる処理剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の含フッ素重合体は、
(A)含フッ素単量体、および
(B)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体
を含んでなる。
【0010】
(A)含フッ素単量体
含フッ素単量体は式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体である。Zは、例えば、炭素数1〜20の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基、例えば、式−(CH−(式中、xは1〜10である。)で示される基、あるいは、式−SON(R)R−または式−CON(R)Rで示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、あるいは、式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基、-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であってよい。Xは、例えば、H、Me(メチル基)、Cl、Br、I、F、CN、CFであってよい。
【0011】
含フッ素単量体(A)は、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示されるアクリレートエステルであることが好ましい。
【0012】
含フッ素単量体(A)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0013】
上記式(1)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜12、例えば1〜6、特別には4〜6であることが好ましい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−C817等である。
【0014】
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1〜4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf基に直接に結合していてよい。
【0015】
含フッ素単量体(A)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0016】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0017】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0018】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0019】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0020】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
【0022】
(B)環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体
環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(B)は、一般に、フッ素を含有しない単量体である。環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(B)は、(好ましくは一価の)環状炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。一価の環状炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4〜20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。
【0023】
環状炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
(C)他の単量体
本発明の含フッ素重合体は、単量体(A)と(B)以外の(C)他の単量体から誘導された繰り返し単位を有してよい。他の単量体(C)は、フッ素原子を含まないことが好ましい。他の単量体(C)としては、(C−1)非架橋性単量体および(C−2)架橋性単量体が挙げられる。
【0025】
(C−1)非架橋性単量体
非架橋性単量体(C−1)は、架橋性単量体(C−2)とは異なり、非架橋性である。非架橋性単量体(C−1)は、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。非架橋性単量体(C−1)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非架橋性単量体(C−1)は一般には、1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。非架橋性単量体(C−1)の好ましい例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニルなど)、ハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニリデンなど)、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。非架橋性単量体(C−1)はこれらの例に限定されない。非架橋性単量体(C−1)はハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンの少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
非架橋性単量体(C−1)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1〜30であってよく、例えば、6〜30(例えば、10〜30)であってよい。例えば、非架橋性単量体(C−1)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
【0027】
(C−2)架橋性単量体
本発明の含フッ素重合体は、架橋性単量体(C−2)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。架橋性単量体(C−2)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性単量体(C−2)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0028】
架橋性単量体(C−2)としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0029】
非架橋性単量体(C−1)および/または架橋性単量体(C−2)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0030】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(A)100重量部に対して、
(メタ)アクリレート単量体(B)の量が0.1〜300重量部、好ましくは1〜80重量部、
他の単量体(C)の量が150重量部以下、好ましくは0.1〜100重量部であってよい。
【0031】
含フッ素単量体(A)100重量部に対して、
非架橋性単量体(C−1)の量が100重量部以下、例えば0.1〜50重量部であり、
架橋性単量体(C−2)の量が50重量部以下、例えば20重量部以下、特に0.1〜15重量部であってよい。
【0032】
含フッ素単量体(A)と、(メタ)アクリレート単量体(B)と、必要により使用する他の単量体(C)を重合することができる。他の単量体(C)に含まれるオレフィン性不飽和コモノマーの例には、炭素数1〜30のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸ブチルなど)が含まれる。アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルは、得られた製造重合体のガラス転移温度(Tg)を調節するために使用することができる;例えば、炭素数4〜20(特に、8〜20)の長鎖アルキル基を有するアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸ステアリルまたはメタクリル酸ステアリアル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、あるいは、アクリル酸ドデシルまたはメタクリル酸ドデシルなど)を、より低いTgを有するより軟らかい重合体を形成させるために使用することができる。アクリル酸アルキル系単量体またはメタクリル酸アルキル系単量体との共重合体は様々な特性を改善することができ、例えば、撥水撥油性および汚れ脱離性、そのような撥水撥油性および汚れ脱離性のクリーニング耐久性、洗濯耐久性および耐摩耗性、溶媒に対する溶解性、硬さおよび感触(手触り)などを改善することができる。
【0033】
使用してよい他のアクリレート系コモノマーまたはメタクリレート系コモノマーには、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチル-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートまたはポリエチレングリコールメタクリレート、プロピレングリコールアクリレートまたはプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレートまたはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、および、メトキシプロピレングリコールアクリレートまたはメトキシプロピレングリコールメタクリレートが含まれる。使用してよい他のオレフィン性不飽和コモノマーには、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、または、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルなど)が含まれる。
【0034】
繊維製品および他の基材における増大した持続性(耐久性)などの特性を与えるために、アミン基との反応性を有しないが、他の官能基との反応性を有し得る官能基を含有するオレフィン性不飽和コモノマーを使用してよい。そのような官能基の例には、ヒドロキシル、アミノおよびアミド基があり、そのような官能基を含有するオレフィン性不飽和コモノマーの例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルまたはメタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルまたはメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、および、アクリル酸ジエチルアミノエチルまたはメタクリル酸ジエチルアミノエチルがある。
【0035】
本発明における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
【0036】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0037】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0038】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0039】
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0040】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0041】
含フッ素重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品に適用される溶液における含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.5重量%〜20重量%、あるいは、1重量%〜5重量%であってよい。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0042】
あるいは、含フッ素重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0043】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の製造重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。本発明の製造重合体による布処理は、布に撥油性を与えるとともに、同時に、未処理布に比較して風合いを改良し、既知の含フッ素重合体繊維処理剤で処理された布に比較して風合いを改良する。
【0044】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0045】
本発明の表面処理剤は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。表面処理剤において、含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
【0046】
本発明の表面処理剤は、含フッ素重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に5〜30重量部である。)をも含有する媒体を意味する。含フッ素重合体は、乳化重合によって、含フッ素重合体の分散液を製造することが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体の粒子が水性媒体に分散する水性分散液であることが好ましい。分散液において、含フッ素重合体の平均粒子径は、0.01〜200マイクロメートル、例えば0.1〜5マイクロメートル、特に0.05 〜 0.2マイクロメートルであることが好ましい。平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定することができる。
【0047】
本発明の表面処理剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該表面処理剤を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の表面処理剤に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における含フッ素化合物の濃度は0.01〜10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0048】
本発明の表面処理剤(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品が好ましい。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
【0049】
繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0050】
次に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
【0051】
試験の手順は次のとおりである。
【0052】
撥水性試験
処理済み試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(IPA)、水、およびその混合液、表に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上に 0.05ML静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液のイソプロピルアルコール(IPA)含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFAIL、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の12段階で評価する。数字に付した「+」は、その数字よりも良好であること、「−」は、その数字よりも不良であることを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
接触角
協和界面化学株式会社製自動接触角計DROPMASTER 700を用いて水を基板に滴下し、滑落法自動測定により前進接触角、後退接触角、転落角を測定した。
【0055】
製造例1
1LオートクレープにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 78.4g、イソボルニルメタクリレート(IBMA)26.0g、純水250g、トリプロピレングリコール35.1g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)30gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.91gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/IBMA/VCM=60/20/20であった。
【0056】
製造例2
1LオートクレープにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 78.4g、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)26.0g、純水250g、トリプロピレングリコール35.1g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)30gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.91gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/CHMA/VCM =60/20/20であった。
【0057】
製造例3
1LオートクレープにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 78.4g、イソボルニルメタクリレート(IBMA)13.0g、ステアリルアクリレート(StA)13.0g、純水250g、トリプロピレングリコール34.3g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)30gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.91gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/StA/IBMA/VCM =60/10/10/20であった。
【0058】
比較製造例1
1LオートクレープにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 78.4g、ステアリルメタクリレート(StA)26.0g、純水250g、トリプロピレングリコール35.1g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)30gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.91gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/StA/VCM =60/20/20であった。
【0059】
実施例1
製造例1において製造した水性液体(2gおよび4gのそれぞれ)を純水により希釈して、試験溶液(1000g)を調製した。1枚のナイロンタフタ布(510mmx205mm)をこの試験溶液に浸し、マングルに通し、160℃で2分間、ピンテンターで処理した。試験布を撥水性試験に付した。上記手順と同じ手順を、1枚のナイロン白布(510mmx205mm)、1枚のPETタフタ布(510mmx205mm)、1枚のPETトロピカル布(510mmx205mm)について繰り返した。結果を表Aに示す。
【0060】
実施例2〜3および比較例1
製造例2、製造例3および比較製造例1において製造したポリマーを実施例1と同様に処理し、撥水性試験を行った。結果を表Aに示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
製造例4
500mLガラス製セパラブルフラスコにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 36.2g、イソボルニルメタクリレート(IBMA)24.0g、純水115g、トリプロピレングリコール16.2g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル2.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.5gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.42gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/IBMA=60/40であった。
【0064】
製造例5
500mLガラス製セパラブルフラスコにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 36.2g、シクロヘキシルメタクリレート24.0g、純水115g、トリプロピレングリコール16.2g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル2.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.5gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.42gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/CHMA=60/40であった。
【0065】
比較製造例2
500mLガラス製セパラブルフラスコにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 40.20g、純水75g、トリプロピレングリコール10.8g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル1.65g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル1.65gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.28gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA=100であった。
【0066】
比較製造例3
500mLガラス製セパラブルフラスコにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0) (13FMA) 36.2g、ステアリルアクリレート(StA) 24.0g、純水115g、トリプロピレングリコール16.2g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル2.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.5gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.42gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。得られた重合体におけるモノマー組成(重量比)は、13FMA/StA=60/40であった。
【0067】
試験例1
製造例4、製造例5、比較製造例2および比較製造例3のそれぞれで得られた含フッ素重合体について、ポリエステルフィルム上にキャスト法により製膜し、フィルム上の接触角を測定した。結果を表Bに示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】