(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給排気のためのファンを常時連続運転する熱交換器換気システムは、ファンを駆動するための電力消費が問題になる。また、夏期に全熱交換器を使用した場合には、屋外の相対的に高い湿度の空気を還流させてしまうことがある。そこで、特許文献1は、該当する時期に給気ファンを停止させるように制御する技術を開示している。しかしながら、給気ファンを長期間停止させておくと、給気ダクトに埃やチリがたまり、給気ファンを起動させたときに、室内に埃やチリが流入するという問題があった。給気ダクトを清潔に保持するために給気口を閉じると、排気ファンを運転することにより、室内が負圧になり、室内の様々な部分から外気が流入する。浴室やトイレからも室内に空気が流入する。従って、予期しない臭気等が室内に流入するおそれがあった。
上記の課題を解決するために、本発明は 高気密住宅に対して季節に応じた快適な住環境を提供し同時にエネルギー消費の抑制をはかる換気制御システムと換気制御プログラムとその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0006】
<構成1>
換気装置を設置することが義務づけられている高気密住宅に使用されるもので、
前記高気密住宅の浴室に個別換気扇(28)が取り付けられている場合に、前記高気密住宅の建物の外壁を通じて建物の内部の常時換気を行うシステムであって、
前記高気密住宅の建物(12)の外壁に一端を開口し他端を前記建物の室内に開口する
ように配管された給気ダクト(14)および排気ダクト(16)と、
前記給気ダクト(14)を通じて吸入される外気と前記排気ダクト(16)を通じて排出される空気との間の熱交換を行う熱交換機(26)と、
前記給気ダクト(14)を通じて外気を前記室内に取り入れる給気ファン(18)と、
前記排気ダクト(16)を通じて、前記室内の空気を外部に排出する排気ファン(20)と、
前記建物の外部の温度を測定する室外温度センサ(32)と、
前記室外温度センサ(32)の出力を受け入れて外気温を測定する温度測定手段(42)と、
前記温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)に満たない場合には、前記給気ファン(18)と前記排気ファン(20)の両方を運転する第1の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶し、前記温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)以上の場合には、前記給気ファン(18)を運転し、前記排気ファン(20)を停止させた第2の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶する運転モード選択手段(48)と、
前記記憶装置に記憶された前記運転モードデータ(66)の内容に従って、前記給気ファン(18)と前記排気ファン(20)を、前記第1の運転モードもしくは前記第2の運転モードのいずれかのモードで制御し、前記給気ファン(18)を
前記給気ダクト(14)中に埃の堆積を防ぐように季節を通じて常時連続運転するように制御するファン制御手段(50)を備えたことを特徴とする換気制御システム。
【0007】
<構成2>
請求項1に記載の換気制御システムにおいて、
前記運転モード選択手段(48)は、
暦情報または気象情報により、現在が冬期か冬期以外かを判定して、冬期は第1の運転モードを選択し、冬期以外は第2の運転モードを選択する内容の運転モードデータ(66)を生成することを特徴とする換気制御システム。
【0008】
<構成3>
請求項
1に記載の換気制御システムにおいて、
前記建物の内部の温度を測定する室内温度センサ(30)と前記建物の外部の温度を測定する室外温度センサ(32)と、
前記室内温度センサ(30)の出力を受け入れて室温を測定し、前記室外温度センサ(32)の出力を受け入れて外気温を測定する温度測定手段(42)とを備え、
前記運転モード選択手段(48)は、
温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)以上の場合であって、前記外気温が前記室温を越える場合には、前記第1の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶することを特徴とする換気制御システム。
【0009】
<構成4>
請求項1に記載の換気制御システムにおいて、
前記運転モード選択手段(48)は、
前記建物内部の空調機を運転中かどうかを判断する制御信号を受け付けて、冬期の場合であって前記空調機を運転していないときは、前記第2の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶し、冬期以外の場合であって前記空調機を運転中には、前記第1の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶することを特徴とする換気制御システム。
【0010】
<構成5>
請求項
1または4に記載の換気制御システムにおいて、
前記建物の内部の温度を測定する室内温度センサ(30)と前記建物の外部の温度を測定する室外温度センサ(32)と、
前記室内温度センサ(30)の出力を受け入れて室温を測定し、前記室外温度センサ(32)の出力を受け入れて外気温を測定する温度測定手段(42)とを備え、
前記運転モード選択手段(48)は、
温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)に満たない場合であって、前記外気温が前記室温を越える場合には、前記第2の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶することを特徴とする換気制御システム。
【0011】
<構成6>
請求項
1に記載の換気制御システムにおいて、
前記建物の内部の温度を測定する室内温度センサ(30)と前記建物の外部の温度を測定する室外温度センサ(32)と、
前記建物の内部の湿度を測定する室内湿度センサ(34)と前記建物の外部の湿度を測定する室外湿度センサ(36)と、
前記室内温度センサ(30)と室内湿度センサ(34)の出力を受け入れて、建物内部のエンタルピーを計算し、前記室外温度センサ(32)と室外湿度センサ(36)の出力を受け入れて、建物外部のエンタルピーを計算するエンタルピー演算手段(46)とを備え、
前記運転モード選択手段(48)は、
温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)以上の場合であって、前記建物外部のエンタルピーが前記建物内部のエンタルピーを越える場合には、前記第1の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶することを特徴とする換気制御システム。
【0012】
<構成7>
請求項
1または
6に記載の換気制御システムにおいて、
前記建物の内部の温度を測定する室内温度センサ(30)と前記建物の外部の温度を測定する室外温度センサ(32)と、
前記建物の内部の湿度を測定する室内湿度センサ(34)と前記建物の外部の湿度を測定する室外湿度センサ(36)と、
前記室内温度センサ(30)と室内湿度センサ(34)の出力を受け入れて、建物内部のエンタルピーを計算し、前記室外温度センサ(32)と室外湿度センサ(36)の出力を受け入れて、建物外部のエンタルピーを計算するエンタルピー演算手段(46)とを備え、
前記運転モード選択手段(48)は、
温度測定手段(42)の測定した外気温が季節判定閾値(54)に満たない場合であって、前記建物外部のエンタルピーが前記建物内部のエンタルピーを越える場合には、前記第2の運転モードを運転モードデータ(66)として記憶装置(38)に記憶することを特徴とする換気制御システム。
【0013】
<構成8>
請求項
1に記載の換気制御システムにおいて、
前記ファン制御手段(50)は、
前記排気ダクト(16)による空気の排出量が前記給気ダクト(14)による外気の吸入量よりも少なくなるように、前記給気ファン(18)と前記排気ファン(20)の運転速度を選定することを特徴とする換気制御システム。
【0014】
<構成9>
請求項
1に記載の換気制御システムにおいて、
前記ファン制御手段(50)は、
前記建物の中のいずれかの部屋に設けられた個別換気扇を、前記給気ファン(18)とともに常時連続運転する状態に保持することを特徴とする換気制御システム。
【0015】
<構成10>
請求項
1または3または5乃至7に記載の換気制御システムにおいて、
前記室外温度センサ(32)は前記給気ダクトの外気吸入口近傍に配置されていることを特徴とする換気制御システム。
【0016】
<構成11>
コンピュータを、請求項1乃至8のいずれか
に記載の手段を備えた
換気制御装置として機能させる換気制御プログラム。
【0017】
<構成12>
請求項
11に記載の換気制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0018】
〈構成1の効果〉
制御信号45により、運転モードを選択する。冬期は第1の運転モードで、熱交換機により室温を下げずに換気をする。冬期以外の夏期や中間期(春、秋)は第2の運転モードで、排気ファンを停止させるので、節電ができる。給気ファン18を常時運転するので、室内が外部よりも圧力の高い状態に保持され、建物の各部の隙間から臭気等が流入するおそれがない。また、給気ダクト14内部に埃がたまるのを防止できる。
〈構成2の効果〉
室外温度センサ32により季節判定を行うので、建物の建設された場所に応じた運転モードが選択できる。
〈構成3の効果〉
暦情報や気象情報から季節を判定し、その結果を運転モードデータ66にすれば、自動的に動作モードが選択できる。
〈構成4の効果〉
室内温度センサ30と室外温度センサ32とで、室内外の温度差を実測しながら、運転モードを選択するので、建物毎の環境に応じた最適なモードを選択できる。ここで、夏期の場合であって、室内が涼しいときには、熱交換機を利用して室内の温度を上げない運転ができる。
〈構成5の効果〉
冬期に空調機を運転していないときは、より暖かい外気を取り入れる。また、夏期に空調機の運転中は、熱交換機を利用して冷気を逃がさない運転ができる。
〈構成6の効果〉
冬期に外気温が室温を越える場合には、外気をそのまま積極的に取り入れて、熱交換をさせないようにすることができる。
〈構成7の効果〉
室内外のエンタルピーを比較して、夏期の冷房運転中の換気によるエネルギー損失を防ぐことができる。
〈構成8の効果〉
室内外のエンタルピーを比較して、冬期に外気のエネルギーを積極的に取り入れることができる。
〈構成9の効果〉
室内を常に加圧状態に保持することができる。
〈構成10の効果〉
前記個別換気扇の設けられた部屋から前記給気ダクト14の開口する部屋への空気の流入を阻止することができる。
〈構成11の効果〉
換気に影響のある外気の温度を直接測定できる。また、給気ファンが常時運転されているので、安定して信頼性ある外気温が測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、常時換気のために給気ファンを連続運転する。排気ファンは冬期以外の季節に運転を停止して、節電をする。給気ファンの運転により建物の室内が負圧にならないように制御すると、建物の各部の隙間からの臭気等の進入を抑制できる。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の換気制御システム10を使用する建物の縦断面図である。
図の建物12は2階建て構造であり、居室内には、冷暖房のための空調機56が取り付けられている。また、トイレや浴室等の水まわりには、個別換気扇28が取り付けられている。1階と2階の天井裏には給気ファン18と排気ファン20が取り付けられている。図の例では1階と2階の断面構造や機器配置を同一にしたので、各機器に使用する符号も同一にした。この例では、同一符号の機器は同一のタイミングで同じ動作をするものとする。
【0022】
さらに、この建物の各室に給気ダクト14および排気ダクト16を配管して,換気制御をしている。1階の天井裏には熱交換機26が収納されている。給気ダクト14は給気口22の部分で建物12の外壁に一端を開口している。排気ダクト16は排気口24の部分で建物12の外壁に一端を開口している。給気ダクト14および排気ダクト16の他端はそれぞれ建物の室内の各部に開口している。熱交換機26は、給気ダクト14を通じて吸入される外気と排気ダクト16を通じて排出される空気との間の熱交換を行う機能を持つ。既知の顕熱交換機あるいは全熱交換機を使用する。
【0023】
給気ファン18は、給気ダクト14を通じて外気を室内に取り入れる機能を持つ。排気ファン20は、排気ダクト16を通じて、室内の空気を外部に排出する機能を持つ。給気ファン18と排気ファン20は、制御装置37により制御される。なお、図の例では、給気ファン18や排気ファン20を居室の天井板直上に配置した。また、熱交換機26を給気口22や排気口24の近傍に設置した。しかしながら、例えば、熱交換機26に給気ファン18と排気ファン20とが一体化されていてもよい。また、給気ファン18を給気口22の部分に固定し、排気ファン20を排気口24の部分に固定してもよい。
【0024】
制御装置37は、後で説明する制御信号45の入力を受け付けて、記憶装置38に記憶する。その制御信号45の内容に従って、2種の運転モードのうちのいずれかを選択して、上記の給気ファン18と排気ファン20の運転を制御する。2種の運転モードのうちの一方を第1の運転モードと呼び、他方を第2の運転モードと呼ぶことにする。第1の運転モードでは、
図1(b)に示すように、給気ファン18と排気ファン20の両方を運転する。第2の運転モードでは、
図1(c)に示すように、給気ファン18を運転し、排気ファン20を停止させる。
【0025】
図2は、本発明の換気制御システムを制御する制御装置のブロック図である。
図の制御装置37は、例えば、建物内部の各種の機器を制御するコンピュータである。制御装置37は演算処理装置39と記憶装置38とを備えている。制御装置37は、所定のタイミングで、演算処理装置39の部分に表示した各手段として動作する。温度測定手段42は、
図1に示した建物12の内壁に取り付けた室内温度センサ30と、建物12の外壁に取り付けた室外温度センサ32により、室温と外気温とを測定し、室内温度データ58と室外温度データ60を取得して記憶装置38に記憶させる機能を持つ。
【0026】
湿度測定手段44は、
図1に示した建物12の内壁に取り付けた室内湿度センサ34と、建物12の外壁に取り付けた室外湿度センサ36により、室内湿度と室外湿度とを測定し、室内湿度データ62と室外湿度データ64を取得して記憶装置38に記憶させる機能を持つ。エンタルピー演算手段46は、記憶装置38に記憶された室内温度データ58と室内湿度データ62とを読み取って、室内エンタルピーを計算し、室外温度データ60と室外湿度データ64とを読み取って、室外エンタルピーを計算して、その計算の結果得られたエンタルピーデータ68を記憶装置38に記憶する機能を持つ。
【0027】
なお、この実施例1では、室内温度センサ30、室外温度センサ32、室内湿度センサ34、室外湿度センサ36及び温度測定手段42と湿度測定手段44を使用しない。これらは、季節判定のために使用するが、実施例1では、制御装置37に入力する制御信号45を利用して季節判定をする。
【0028】
運転モード選択手段48は、制御信号45の入力を受け付けて、現在が冬期であるか冬期以外であるかを判定する。制御信号45は、例えば、制御装置37に内蔵するカレンダーデータ(暦情報)や、外気温を知らせる気象情報データである。制御信号45は任意の方法で入力される。運転モード選択手段48は、そのデータから自動的に、冬期であるか冬期以外であるかを判定し、冬期は第1の運転モードを選択し、冬期以外は第2の運転モードを選択する内容の運転モードデータ66を生成する。
【0029】
運転モード選択手段48は、生成した運転モードデータ66を記憶装置38に記憶する。ファン制御手段50は、記憶装置38に記憶された運転モードデータ66の内容に従って、給気ファン18と排気ファン20の動作を制御する機能を持つ。
【0030】
冬期は第1の運転モードで、給気ファン18と排気ファン20の両方を運転し、熱交換機26を利用して室内に供給する空気を暖めるので、室温を下げずに換気することができる。一方、冬期以外の夏期や中間期(春、秋)には、第2の運転モードで、排気ファン20を停止させるので、大幅に節電ができる。
【0031】
給気ファン18を常時運転していると、給気ダクト14の内部に埃がたまるのを防止できる。給気ファン18を運転していると、排気ファン20を運転していなくても、室内の空気は排気ダクト16を通じて自然に排気される。また、建物各部の隙間からも、室内の空気が排気される。従って、建物各部の隙間から臭気が流入しない。
【0032】
例えば、冬期において、ファン制御手段50は、排気ダクト16による空気の排出量が給気ダクト14による外気の吸入量よりも少なくなるように、前記給気ファン18と排気ファン20の運転速度を選定する。これにより、室内が外部よりも圧力の高い状態に保持され、冬期においても、建物の各部の隙間から臭気等が流入するおそれがない。
【0033】
また、例えば、ファン制御手段50が、建物の中のいずれかの部屋に設けられた個別換気扇28を、給気ファン18とともに常時連続運転する状態に保持すれば、個別換気扇28の設けられた水まわりの部屋等から居室への空気の流入を阻止することができる。
【0034】
図3は季節毎の制御例を示し、(a)は実施例1の基本制御、(b)は冬期の空調機運転時、(c)は夏期の空調機運転時、(d)は実施例2、3の制御、(e)は実施例2、4の制御、(f)と(g)は実施例5の制御を示す説明図である。
実施例1の制御は、
図3(a)に示すとおりで、冬期は第1の運転モード、冬期以外は第2の運転モードである。次に、運転モード選択手段48が、空調機56を運転中かどうかを判断する制御信号45を受け付ける。
【0035】
そして、運転モード選択手段48は、冬期の場合であって空調機を運転していないときは、第2の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する(
図3(b))。熱交換を抑制して、より暖かい外気を取り入れるためである。また、冬期以外の場合であって空調機を運転中には、第1の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する(
図3(c))。夏期に空調機の運転中は、熱交換機を利用して冷気を逃がさない運転をするためである。
【実施例2】
【0036】
この実施例は、
図3(d)と
図3(e)の基本動作である。上記の実施例1では、暦等の制御信号45により季節判定を行った。実施例2以下では、
図1に示した室内温度センサ30、室外温度センサ32、室内湿度センサ34、室外湿度センサ36及び温度測定手段42と湿度測定手段44を使用して季節判定をする。実施例2では、室外温度センサ32により取得した室外温度データ60のみを使用する。
【0037】
運転モード選択手段48は、記憶装置38から室外温度データ60と季節判定閾値54とを読み取って両者を比較する。季節判定閾値54は、予め運転モードの切り替えに適する温度として設定した定数値で、例えば摂氏15度とする。運転モード選択手段48は、室外温度データ60が季節判定閾値54に満たない場合には、給気ファン18と排気ファン20の両方を運転する第1の運転モードを、運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。
【0038】
また、運転モード選択手段48は、室外温度データ60が季節判定閾値54以上の場合には、給気ファン18を運転して排気ファン20を停止させた第2の運転モードを、運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。その後のファン制御手段50の動作は実施例1と同様である。
【0039】
なお、図の例では、室外温度センサ30や室外湿度センサ36を建物12の外壁に取り付けた。しかしながら、常時外気が流れ込む給気ダクト14の給気口22近傍に室内温度センサ30を配置すれば、換気に影響のある外気の温度を直接測定できる。
【実施例3】
【0040】
この実施例は
図3(d)の例外動作である。実施例3では、建物の内部の温度を測定する室内温度センサ30と建物の外部の温度を測定する室外温度センサ32の両方を使用する。運転モード選択手段48は、温度測定手段42の測定した外気温が季節判定閾値54以上の場合、即ち、中間期か夏期の場合であって、外気温が室温を越える場合には、前記第1の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。
【0041】
即ち、
図3(d)に示すように、季節判定に加えて、室温と外気温を比較して、運転モードを切り替える。夏期の場合であって、室内が屋外よりも涼しいときには、熱交換機により室内の空気で外気を冷やしてから室内に取り入れる。排気ファンを運転しているときは積極的に熱交換ができるから、室内の温度を上げない運転ができる。
【実施例4】
【0042】
この実施例は
図3(e)の例外動作である。実施例3は夏期の運転制御であった。実施例4では冬期の運転制御を説明する。運転モード選択手段48は、温度測定手段42の測定した外気温が季節判定閾値54に満たない場合、即ち、冬期に、外気温が室温を越える場合には、第2の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。
【0043】
陽当たりが良くて外気温が上昇しても、夜間に冷えた室温が上がっていかないときがある。このように、冬期に外気温が室温を越える場合には、
図3(e)に示すような制御をして、外気をそのまま積極的に取り入れて、熱交換をさせないようにすることができる。
【実施例5】
【0044】
実施例5は、温度と湿度から導かれるエンタルピーを室外と室内で比較して、運転モードを選択する制御である。
図3(f)と
図3(g)に図示した制御をする。この場合にも、冬期と冬期以外で制御が分かれる。既に説明したように、記憶装置38には、室内温度データ58と室外温度データ60と室内湿度データ62と室外湿度データ64とが記憶されている。エンタルピー演算手段46は、記憶装置38から室内温度データ58と室内湿度データ62を読み出して建物内部のエンタルピーを計算する。また、室外温度データ60と室外湿度データ64を読み出して建物外部のエンタルピーを計算する。
【0045】
運転モード選択手段48は、温度測定手段42の測定した外気温が季節判定閾値54以上の場合、即ち、冬期以外の場合であって、建物外部のエンタルピーが建物内部のエンタルピーを越える場合には、第1の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。即ち、室内のエンタルピーが低いときは、有効に熱交換をして、夏期の冷房運転中の換気によるエネルギー損失を防ぐことができる。
【0046】
一方、運転モード選択手段48は、温度測定手段42の測定した外気温が季節判定閾値54に満たない場合、即ち、冬期であって、建物外部のエンタルピーが建物内部のエンタルピーを越える場合には、第2の運転モードを運転モードデータ66として記憶装置38に記憶する。即ち、冬期で、室内が十分に暖まっていないときは、外気のエネルギーを積極的に取り入れることができる。
【0047】
図4は、本発明の効果を説明する実験データの説明図である。
8月19日から8月24日の間、外気温は図のCに示すように推移した。これに対して、従来通り給気ファンと排気ファンの両方を運転した部屋では、図のAに示すように室温が推移した。このとき、これに対して排気ファンを停止して給気ファンのみを運転する第2の運転モードを採用した部屋では、図のBに示すように室温が推移した。いずれの部屋も、空調機(エアコン)は使用していない。
【0048】
全体として第2の運転モードを採用した部屋のほうが温度が低く抑えられたのは、換気により室温を下げようとしているときに、熱交換機により外気が暖められて室内に取り込まれたためである。高気密住宅では、空調機を使用していない場合には、室内の各種の熱源によって、外気温より室温のほうが高くなることが少なくない。換気によって室温を下げてから空調機を使用するほうが、節電効果がある。本発明によれば、この換気による効果を高めることができる。
【0049】
図5は、本発明による節電効果の一例を示す説明図である。
この例では、暦情報を利用して、5月〜11月を冬期以外の期間と判定している。この期間Mだけ、排気ファンを停止して給気ファンのみを運転したところ、換気のための消費電力を半減させることができた。冬期に比べて期間が長いので、節電効果が顕著であることが証明された。
【実施例6】
【0050】
図6は、実施例1の制御装置の動作フローチャートである。
以下、上記の制御装置を動作させるためのコンピュータプログラムの実施例を説明する。
図7は、実施例1の基本動作のフローチャートである。まず、ステップS11で、季節を判定するための制御信号45の入力を受け付ける。ステップS12では、その制御信号45を記憶装置38に記憶する。ステップS13では、運転モード選択手段48が制御信号45を読み取る。そしてステップS14で、既に説明した要領で運転モードデータ66を生成する。
【0051】
運転モードデータ66は記憶装置38に記憶される。ステップS15では、ファン制御手段50が運転モードデータ66を読み取る。そして、ステップS16で、ファン制御手段50は該当する運転モードで各ファンを制御する。運転モードの切り替えは、例えば、冬期が始まる前と冬期が終わるときの年に2回でも構わない。また、毎日でも毎週でも毎月でも構わない。予め設定した時間間隔で、この
図6に示した動作が開始されるとよい。
【0052】
図7は空調機が動作しているときの実施例1の制御フローチャートである。
図3の(b)と(c)に示したように、運転モード選択手段48は、冬期と冬期以外の期間で、それぞれが
図6の制御の例外処理を行う。ステップS21では、季節を判断する。冬期の場合にはステップS22〜ステップS24の処理を実行する。冬期以外の場合には、ステップS25〜ステップS27の処理を実行する。
【0053】
冬期の場合には、ステップS22において、空調機が運転中かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS23の処理に進む。ノーのときは処理を終了する。ステップS23では、現在の運転モードが第1の運転モードかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS24の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS24では、現在の運転モードを第1の運転モードに設定変更して処理を終了する。
【0054】
一方冬期以外の場合には、ステップS25において、空調機が運転中かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS26の処理に進む。ノーのときは処理を終了する。ステップS26では、現在の運転モードが第2の運転モードかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS27の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS27では、現在の運転モードを第2の運転モードに設定変更して処理を終了する。
【0055】
図8は、実施例2の制御装置の動作フローチャートである。
以下も、運転モード選択手段48の制御動作である。ステップS31で、室外温度データ60の読み取りをする。ステップS32では、季節判定閾値54の読み取りをする。ステップS33では、室外温度データ60と季節判定閾値54の比較処理をする。ステップS34では、その比較結果から冬期かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS35の処理に移行し、ノーのときはステップS36の処理に移行する。ステップS35では、第1の運転モードにモード設定をする。ステップS36では、第2の運転モードにモード設定をする。この制御では、室外の温度により無条件に運転モードが選択される。
【0056】
図9は、実施例3の制御装置の動作フローチャートである。
ステップS41で運転モード選択手段48は、記憶装置38から室内温度データ58の読み取りをする。ステップS42では、室外温度データ60の読み取りをする。ステップS43で、外気温は季節判定閾値54以上かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは冬期以外だからステップS44の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS44では、外気温が室温を越えているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS45の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS45では、第1の運転モードに設定をする。夏期の例外処理である。
【0057】
図10は、実施例4の制御装置の動作フローチャートである。
ステップS51で運転モード選択手段48は、記憶装置38から室内温度データ58の読み取りをする。ステップS52では、室外温度データ60の読み取りをする。ステップS53で、外気温が季節判定閾値54に満たないかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは冬期だから、ステップS54の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS54では、外気温が室温を越えているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS55の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS55では、第2の運転モードに設定をする。冬期の例外処理である。
【0058】
図11は、実施例5の夏期における制御装置の動作フローチャートである。
なお、
図11と
図12で、「E」と表示したのはエンタルピーのことである。ステップS61では、室内温度データ58の読み取りをする。ステップS62では、室外温度データ60の読み取りをする。ステップS63では、外気温は閾値以上かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは冬期以外だからステップS64の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。
【0059】
ステップS64では、エンタルピーデータ68を読み取って、外部エンタルピーが室内エンタルピー以上かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS65の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS65では、第1の運転モードに設定をする。
【0060】
図12は、実施例5の冬期における制御装置の動作フローチャートである。
ステップS71では、室内温度データの読み取りをする。ステップS72では、室外温度データの読み取りをする。ステップS73では、外気温が閾値に満たないかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときは冬期だから、ステップS74の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。
【0061】
ステップS74では、外部エンタルピーが室内エンタルピー以上かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS75の処理に移行し、ノーのときは処理を終了する。ステップS75では、第2の運転モードに設定をする。以上により、実施例5の制御が実現する。
【0062】
なお、上記の演算処理装置で実行されるコンピュータプログラムは、機能ブロックで図示した単位でモジュール化されてもよいし、複数の機能ブロックを組み合わせて一体化されてもよい。また、上記のコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムに組み込んで使用してもよい。本発明を実現するためのコンピュータプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、任意の情報処理装置にインストールして利用することができる。