特許第6017811号(P6017811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017811
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の前処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20161020BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20161020BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20161020BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161020BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/36 C
   H01M10/052
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-73879(P2012-73879)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-206688(P2013-206688A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年1月28日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発/高容量電池の研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】松本 太
(72)【発明者】
【氏名】小林 玄器
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 智裕
【審査官】 光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−270201(JP,A)
【文献】 特開2011−034943(JP,A)
【文献】 特開2012−009270(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/119386(WO,A1)
【文献】 特開2010−103086(JP,A)
【文献】 特開2011−187169(JP,A)
【文献】 特開2010−140737(JP,A)
【文献】 特開2002−151077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05〜0587
H01M 4/13〜62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式で表され、表面に金属化合物が被着された正極活物質を含み、
上記金属化合物が、TiO及びZrOから成る群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であり、該金属化合物が正極活物質の〜3%被着したリチウムイオン二次電池の前処理方法であって、
充電上限電位をリチウム対極に換算して4.4V以上5.0V未満、放電下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満とし、充電上限電位を徐々に高める充放電を複数回繰り返すことを特徴とする前処理方法。
aLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−a)LiMO
(式中のaは0を超え1未満の数値、LiMOはNi及びMnを含有するリチウム複合酸化物)
【請求項2】
40℃以上60℃以下の温度範囲で施すことを特徴とする請求項1に記載の前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム過剰複合酸化物から成る固溶体系材料を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の前処理方法と、このような前処理を施してな成るリチウムイオン二次電池、さらに、このようなリチウムイオン二次電池の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題の解決に向けて、ハイブリットタイプをも含めた種々の電気自動車が普及しつつある。しかし、このような電気自動車がさらに広く普及するためには、これら車両のモータ駆動用電源である電池の高性能化と共に、低価格化が必要となる。また、電気自動車については、一回の充電による走行距離をガソリンエンジン車に近づける必要があり、より高エネルギー密度の電池の開発が望まれている。
そして、このようなモータ駆動用の二次電池として、各種二次電池の中でも高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が着目されている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高めるためには、正極と負極の単位質量当たりに蓄えられる電気量を大きくすることが必要であり、このような要請に答えられる可能性のある正極材料として、いわゆるリチウム過剰固溶体系正極材料が検討されている。
なかでも、電気化学的に不活性な層状のLiMnOと、電気化学的に活性な層状のLiMO(式中のMは、Co,Niなどの遷移金属)との固溶体は、200mAh/gを超える大きな電気容量を示し得るものとして期待されている。
【0004】
このようなリチウム過剰固溶体系正極は、容量が格段に大きいものの、充放電サイクルの繰り返しによってすぐに劣化してしまうという難点がある。
これに対して、初期の充電時に充電上限電位を段階的に増加させながら充放電前処理を繰り返すことが提案されており、これによってサイクル耐久性が大幅に改善できることが確認されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、内部抵抗が低く、高出力の非水系リチウム二次電池とするために、リチウム含有遷移金属複合酸化物を金属化合物で表面修飾したものを正極活物質として用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−270201号公報
【特許文献2】特開2005−346956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の充放電前処理を施したものや、特許文献2に記載の金属化合物修飾を施した正極活物質を使用した電池においては、室温では良好なサイクル耐久性を示すものの、50℃近辺の高温では、十分なサイクル特性が得られないという問題があった。
【0008】
なお、金属化合物で修飾した正極活物質(特許文献2)を使用した電池に、特許文献1に記載の充放電前処理を施した場合の室温におけるサイクル特性については、いずれか一方の処理のみを施した場合よりも、むしろ劣化する傾向が認められ、相乗効果はもとより、上乗せ効果もないことが確認された。
すなわち、金属化合物の修飾や、上記充放電前処理による効果は、いずれも初期の活性化時に起こるクラックや結晶構造の乱れが防止される結果と考えられ、両方の処理を施してもそれ以上の効果はなく、このような現象は、高温時のサイクル特性についても同様の傾向を示すものと考えられていた。
【0009】
本発明は、特に、上記のようなリチウム過剰固溶体系正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を高温で作動させた場合における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高温−高電圧で使用しても、高い容量、優れたサイクル特性を発揮するリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を繰り返した結果、表面コーティングした固溶体系正極活物質を用いた電池に充放電前処理を施すことによって、予想に反して、サイクル特性のみならず、放電容量をも改善することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の前処理方法においては、上記組成式で表され、表面に金属化合物が被着された正極活物質を含み、上記金属化合物が、TiO及びZrOから成る群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であり、該金属化合物が正極活物質の〜3%被着したリチウムイオン二次電池を前処理するに際して、充電上限電位をリチウム対極に換算して4.4V以上5.0V未満、放電下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満とし、充電上限電位を徐々に高める充放電を複数回繰り返すことを特徴とする
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の組成式で表され、表面に金属化合物が被着された正極活物質を含むリチウムイオン二次電池に、上限電位をリチウム対極に換算して4.4V以上5.0V未満、下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満とする充放電前処理を施したことから、高温でもサイクル耐久性の良好な高容量のリチウムイオン二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のリチウムイオン二次電池の実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2】2%のAlをコーティングしてなる正極活物質のTEM観察像である。
図3】2%のAlをコーティングしてなる正極活物質のEDX(エネルギー分散型X線分析)結果を示すチャートである。
図4】本発明の実施例1(Alコート正極活物質+充放電前処理)による電池のサイクル耐久性をコートや前処理のない比較例1〜5と比較して示すグラフである。
図5】本発明の実施例2、3(TiO又はZrOコート正極活物質+充放電前処理)による電池のサイクル耐久性をコートや前処理のない比較例4〜7と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池について、当該電池の構成と共に、充放電前処理方法について、詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池は、所定の組成式aLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−a)LiMO(式中のaは0を超え1未満の数値、LiMOはNi及びMnを含有するリチウム複合酸化物)で表され、表面に金属化合物が被着されて成る固溶体系正極活物質を用いた二次電池である。そして、当該電池には、上限電位をリチウム対極に換算して4.4V以上5.0V未満、下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満とする充放電前処理が施されている。
【0017】
すなわち、本発明は、所定の組成式で表され、表面に金属化合物が被着された固溶体系正極活物質を用いた電池に、所定の充放電前処理を施すことによって、従来からの予測に反して、高温でのサイクル特性に優れ、高容量の電池が得られることを見出したことに基づく。
【0018】
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極活物質としては、組成式aLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−a)LiMO(式中のaは0を超え1未満の数値、LiMOはNi及びMnを含有するリチウム複合酸化物)で表されるリチウム過剰固溶体系材料が用いられる。
【0019】
このような固溶体系材料から成る正極活物質としては、市販品を用いることができるが、市販品がない場合には、例えば、固相法や溶液法(混合水酸化物法、複合炭酸塩法、有機酸法など)によって合成したものを使用することができる。
これら合成法の中では、収率が高く、水溶液系であるため均一組成を得ることができ、組成コントロールが容易であることから、複合炭酸塩法を採用することが望ましい。他には、共沈法やゾルゲル法、PVA法等の一般的な合成法によっても作製が可能である。
【0020】
上記組成式において、LiMOで表されるリチウム複合酸化物は、Ni及びMnを必須成分として含有するものであるが、これら以外の成分として、例えばCo,Al,Ti,Fe,Cu,Mg等から選ばれる1種以上の遷移金属を含有することができる。Coの添加により活物質の伝導性が向上し、Al,Ti,Fe,Cu,Mgの添加により結晶構造の安定化による耐久性の向上を期待できる。
【0021】
なお、上記正極活物質の粒径としては、特に限定するものではないが、一次粒子径としては、電池のレート特性の面からは細かいほど望ましいが、あまり小さいと電極密度が低下してしまい電池の体積エネルギー密度が減少してしまうので、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、作業能率や取り扱いの容易さなどを考慮すると、二次粒子径としては、平均粒径で、1〜30μm程度であればよく、5〜20μm程度であることがより好ましい。
【0022】
上記リチウム過剰固溶体系正極活物質の表面には、金属化合物が被着されるが、その被着量については、少なければ化合物コーティングの効果が得られず、多すぎると相対的に正極活物質が少なくなって容量が減じることになるため、正極活物質の1〜3%程度であることが望ましい。
【0023】
また、上記活物質の表面に被着される金属化合物としては、例えばニッケル(Ni)や鉄(Fe)などといった遷移金属の化合物を用いることができ、代表的には酸化物、燐酸化号物、硫酸化合物、硼酸化合物、珪酸化合物、ハロゲン化物、硫化物などを挙げることができる。
これらの中では、アルミニウム酸化物(Al)、チタン酸化物(TiO)、ジルコニア酸化物(ZrO)が高温でのサイクル安定化効果が大きい点で好ましい。
【0024】
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記のような金属化合物を被着した固溶体系正極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を組み立てた後に、上限電位をリチウム対極に換算して4.4V以上5.0V未満、下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満とする充放電前処理が施される。
【0025】
上記充放電前処理において、充放電時の下限電位がリチウム対極に換算して3.6V以上となると、推察ではあるが、充分なLiが挿入されないため正極活物質に充電時に生じた多少の結晶欠陥の修復がされず、サイクル耐久性の改善という前処理の効果が大幅に減じてしまう。
一方、充放電時の下限電位が2.0V未満となると、リチウム層に過剰のLiが挿入されるため構造変化が起きて劣化することから、充放電時の下限電位をリチウム対極に換算して2.0V以上3.6V未満の範囲とする必要がある。
【0026】
充放電時の下限電位を4.4V以上5.0V未満としたのは、充電時の上限電位が4.4Vに満たない場合には、正極活物質が電気化学的に活性化されないことになり、5.0V以上の場合には、使用される電解液が分解し電池特性が低下するという不具合が生じることによる。
【0027】
このようなリチウムイオン二次電池の充放電処理においては、充電時の上限電位を徐々に高める充放電を少なくとも複数回繰り返すようになすことが望ましい。
すなわち、上記したような充放電を一度に急激に行うと、4.5V以上での充電による酸素イオンの酸化に伴う結晶構造の損傷の度合いが大きなものとなって、修復不能となることがないとは言えないことから、部分的に複数回に分けて行うようになすことが好ましい。
【0028】
特にこの場合、急激な結晶構造の乱れを極力避ける観点から、充放電の繰り返しに際して、最初は上限電位を比較的低電位から開始し、5.0V未満の所定電位に到るまで、徐々に上限電位を高めていくようにすることが望ましい。
【0029】
一方、前処理における充放電レートについては、正極活物質の急激な結晶構造の変化を避け、電池のサイクル耐久性を高レベルに保持しつつ、前処理時間を短縮できるという効果をより確実なものとする観点から、0.2C〜0.6Cの範囲とすることがより望ましい。
【0030】
なお、上記した充放電前処理については、高温、具体的には40℃以上60℃以下の温度範囲で行うことが望ましく、これによってより大きな充放電容量を発現させることができるようになる。
【0031】
組み立て後のリチウムイオン二次電池に本発明の上記充放電前処理を施すに際して、充放電の上限電位及び下限電位は、事前に測定した正負極の充放電曲線にあわせて、リチウム対極に換算したときの値にする必要がある。電位制御の方法としては、この他に参照電極を用いて行ってもよい。
さらに、このような充放電による前処理方法としては、電位制御した場合の各充放電の電気量に対応した電気量で制御してもよい。その場合には同じ規格の電池を直列接続すれば、この電気量制御法により一度に多数の電池を活性化することができる。
【0032】
本発明のリチウムイオン二次電池を使用するに際しては、充電上限電圧をLi極に対する正極活物質の電位で、4.4Vより高く5.0V未満とすることができる。
すなわち、上記した充放電前処理によって初期の活性化が十分なものとなり、正極の充電上限電圧を高くしても、高容量での充放電を安定して継続することが可能になる。
【0033】
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の構造や構成材料などについて、図面を参照しながら説明する。すなわち、図1は本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態例を示す概略断面図である。
【0034】
一般に、リチウムイオン二次電池は、正極集電体に正極活物質等を塗布した正極と、負極集電体に負極活物質等を塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケース内に収納された構造を有している。
【0035】
図1に示すリチウムイオン二次電池1は、正極リード21及び負極リード22が取り付けられた電池素子10がラミネートフィルムで形成された外装体30の内部に封入された構成を有している。そして、この実施形態においては、正極リード21及び負極リード22が、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。なお、図示しないが、正極リード及び負極リードが、外装体の内部から外部に向かって、同一方向に導出されていてもよい。また、このような正極リード及び負極リードは、例えば超音波溶接や抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。
【0036】
正極リード21及び負極リード22は、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成されている。ただし、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用のリードとして用いられている従来公知の材料を用いることができる。
【0037】
なお、正極リード及び負極リードは、同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。また、この形態例のように、別途準備したリードを後述する正極集電体及び負極集電体に接続してもよいし、後述する各正極集電体及び各負極集電体をそれぞれ延長することによってリードを形成してもよい。図示しないが、外装体から取り出された部分の正極リード及び負極リードは、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0038】
また、図示しないが、電池外部に電流を取り出す目的で、集電板を用いてもよい。集電板は集電体やリードに電気的に接続され、電池の外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出される。集電板を構成する材料は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料を用いることができる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、これらの合金やステンレス鋼等の金属材料が好ましく、軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などがより好ましい。なお、正極集電板と負極集電板とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0039】
外装体30は、例えば、小型化、軽量化の観点から、フィルム状の外装材で形成されたものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の外装体に用いられている従来公知のものを用いること、例えば金属缶ケースを適用することもできる。
【0040】
なお、高出力化や冷却性能に優れ、電気自動車、ハイブリッド電気自動車の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、例えば、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを挙げることができる。より具体的には、熱圧着層としてのポリプロピレン、金属層としてのアルミニウム、外部保護層としてのナイロンをこの順に積層して成る3層構造のラミネートフィルムの外装材で形成された外装体を好適に用いることができる。
【0041】
なお、外装体は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造、例えば金属材料を有さないラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルム又は金属フィルムなどにより構成してもよい。
【0042】
ここで、外装体の一般的な構成は、外部保護層/金属層/熱圧着層の積層構造で表すことができる(但し、外部保護層及び熱圧着層は複数層で構成されることがある。)。なお、金属層としては、耐透湿性のバリア膜として機能すれば十分であり、アルミニウム箔のみならず、ステンレス箔、ニッケル箔、メッキを施した鉄箔などを使用することができるが、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることができる。
【0043】
外装体として、使用可能な構成を(外部保護層/金属層/熱圧着層)の形式で列挙すると、ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/ナイロン/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/ナイロン/ポリエチレン、ナイロン/ポリエチレン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/低密度ポリエチレン/無延伸ポリプロピレンなどがある。
【0044】
図1に示すように、電池素子10は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極活物質層11Bが形成された正極11と、電解質層13と、負極集電体12Aの両方の主面上に負極活物質層12Bが形成された負極12とを複数積層した構成を有している。このとき、正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極活物質層11Bと、上記正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極活物質層12Bとが電解質層13を介して向き合う。このようにして、正極、電解質層、負極の順に複数積層されている。
【0045】
これにより、隣接する正極活物質層11B、電解質層13及び負極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。従って、このリチウムイオン二次電池1においては、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、正極及び負極は、各集電体の一方の主面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。本実施形態においては、例えば、電池素子10の最外層に位置する負極集電体12aには、片面のみに、負極活物質層12Bが形成されている。
【0046】
また、単電池層の外周には、隣接する正極集電体や負極集電体の間を絶縁するための絶縁層(図示せず)が設けられていてもよい。このような絶縁層は、電解質層などに含まれる電解質を保持し、単電池層の外周に、電解質の液漏れを防止する材料により形成されることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン(PS)などの汎用プラスチックや熱可塑オレフィンゴムなどを使用することができる。また、シリコーンゴムを使用することもできる。
【0047】
正極集電体11A及び負極集電体12Aは、導電性材料から構成される。これら集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定することができる。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。集電体の形状についても特に制限されない。図1に示す電池素子10では、集電箔のほか、網目形状(エキスパンドグリッド等)等を用いることができる。
なお、負極活物質の一例である薄膜合金をスパッタ法等により負極集電体12A上に直接形成する場合には、集電箔を用いるのが望ましい。
【0048】
集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂を採用することができる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、又はこれらの金属を組み合わせためっき材などを用いることが好ましい。また、金属表面にアルミニウムが被覆された箔であってもよい。中でも、電子伝導性や電池作動電位等の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケルが好ましい。
【0049】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾールなどが挙げられる。このような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化又は集電体の軽量化の点において有利である。
【0050】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。このような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性又は耐溶媒性を有する。
【0051】
上記の導電性高分子材料又は非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーを添加することができる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性又はリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属、導電性カーボンなどが挙げられる。
【0052】
金属としては、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金(Pt)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)及びカリウム(K)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属若しくはこれらの金属を含む合金又は金属酸化物を含むものを好適例として挙げることができる。また、導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン及びフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを好適例として挙げることができる。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電体として用いられている従来公知の材料を用いることができる。
【0053】
正極活物質層11Bは、上記のように表面に金属化合物が被着されたリチウム過剰固溶体系正極活物質を含んでおり、必要に応じて、これ以外に結着剤や導電助剤を含んでいてもよい。
【0054】
結着剤(バインダー)としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダーは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり正極(及び負極)活物質層に使用が可能である。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の結着剤として従来用いられている公知の材料を用いることができる。これらの結着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
正極活物質層に含まれるバインダー量は、正極活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは正極活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0056】
導電助剤とは、正極活物質層の導電性を向上させるために配合されるものである。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料を挙げることができる。正極活物質層が導電助剤を含むと、正極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与し得る。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの導電助剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、上記導電助剤と結着剤の機能を併せ持つ導電性結着剤をこれら導電助剤と結着剤に代えて用いてもよいし、又はこれら導電助剤と結着剤の一方若しくは双方と併用してもよい。導電性結着剤としては、例えば、既に市販のTAB−2(宝泉株式会社製)を用いることができる。
【0058】
正極活物質層の密度としては、2.5g/cm以上3.0g/cm以下であることが好適である。正極活物質層の密度が2.5g/cm未満である場合には、単位体積当たりの重量(充填量)を向上させることができないため、放電容量を向上させることが難しい。また、正極活物質層の密度が3.0g/cmを超える場合には、正極活物質層の空隙量が著しく減少し、非水電解液の浸透性やリチウムイオン拡散性が低下することがある。
【0059】
負極活物質層12Bは、負極活物質として、リチウム、リチウム合金、又はリチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電助剤を含んでいてもよい。なお、結着剤や導電助剤は上記したものを用いることができる。
【0060】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料(10質量%以下のケイ素ナノ粒子を含むものを含む。);ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、水素(H)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ガリウム(Ga)、タリウム(Tl)、炭素(C)、窒素(N)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、塩素(Cl)等のリチウムと合金化する元素の単体、及びこれらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiOなど)及び炭化物(炭化ケイ素(SiC)など)等;リチウム金属等の金属材料;リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の負極活物質として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの負極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
各活物質層(集電体片面の活物質層)の厚さについても特に限定されるものではなく、電池についての従来公知の知見を適宜参照することができる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、通常1〜500μm程度、好ましくは2〜100μmである。
【0062】
更に、活物質それぞれ固有の効果を発現する上で、最適な粒径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径同士を混合して用いればよく、全ての活物質の粒径を均一化させる必要はない。
例えば、正極活物質として粒子形態の酸化物を用いる場合、酸化物の平均粒子径は、既存の正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径と同程度であればよく、特に制限されない。高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmの範囲であればよい。なお、本明細中において、「粒子径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて観察される活物質粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。他の構成成分の粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
ただし、このような範囲に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現できるものであれば、この範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。
【0063】
電解質層13としては、例えば、後述するセパレータに保持させた電解液や高分子ゲル電解質、固体高分子電解質を用いて層構造を形成したもの、更には、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質を用いて積層構造を形成したものなどを挙げることができる。
【0064】
電解液としては、例えば、通常リチウムイオン二次電池で用いられるものであることが好ましく、具体的には、有機溶媒に支持塩(リチウム塩)が溶解した形態を有する。
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li10Cl10)等の無機酸陰イオン塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(CSON)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩等を挙げることができる。その中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が好ましい。
【0065】
また、有機溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、含フッ素γ−ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類及び含フッ素鎖状エーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることができる。
環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)を挙げることができる。また、含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を挙げることができる。更に、鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)を挙げることができる。また、脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルを挙げることができる。更に、γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトンを挙げることができる。また、環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンを挙げることができる。更に、鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを挙げることができる。その他としては、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類を挙げることができる。これらは、1種を単独で、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
電解液には、スルトン誘導体や環状スルホン酸エステルなどの有機スルホン系化合物、ジスルトン誘導体や環状ジスルホン酸エステルなどの有機ジスルホン系化合物、ビニレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート誘導体、エステル誘導体、2価フェノール誘導体、エチレングリコール誘導体、テルフェニル誘導体、ホスフェート誘導体などの添加剤を添加してもよい。これらは負極活物質の表面に被膜を形成し、電池におけるガス発生が低減され、更に容量維持率の向上を図ることができる。
【0067】
有機スルホン系化合物としては、例えば、1,3−プロパンスルホン(飽和スルトン)、1,3−プロペンスルトン(不飽和スルトン)を挙げることができる。また、有機ジスルホン系化合物としては、例えば、メタンジスルホン酸メチレンを挙げることができる。ビニレンカーボネート誘導体としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)を挙げることができる。また、エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を挙げることができる。更に、エステル誘導体としては、例えば、4−ビフェニリルアセテート、4−ビフェニリルベンゾエート、4−ビフェニリルベンジルカルボキシレート、2−ビフェニリルプロピオネートを挙げることができる。
また、2価フェノール誘導体としては、例えば、1,4−ジフェノキシベンゼン、1,3−ジフェノキシベンゼンを挙げることができる。更に、エチレングリコール誘導体としては、例えば、1,2−ジフェノキシエタン、1−(4−ビフェニリルオキシ)−2−フェノキシエタン、1−(2−ビフェニリルオキシ)−フェノキシエタンを挙げることができる。また、テルフェニル誘導体としては、例えば、o−テルフェニル、m−テルフェニル、p−テレフェニル、2−メチル−o−テルフェニル、2,2−ジメチル−o−テルフェニルを挙げることができる。更に、ホスフェート誘導体としては、例えば、トリフェニルホスフェートを挙げることができる。
【0068】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンからなる微多孔膜や多孔質の平板、更には不織布を挙げることができる。
【0069】
高分子ゲル電解質としては、高分子ゲル電解質を構成するポリマーと電解液を従来公知の比率で含有したものを挙げることができる。例えば、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。
高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる上記電解液を含有させたものである。しかしながら、これに限定されるものではなく、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
【0070】
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
【0071】
固体高分子電解質は、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)などに上記リチウム塩が溶解して成る構成を有し、有機溶媒を含まないものを挙げることができる。したがって、電解質層が固体高分子電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上させることができる。
【0072】
電解質層の厚みは、内部抵抗を低減させるという観点からは薄い方が好ましい。電解質層の厚みは、通常1〜100μmであり、好ましくは5〜50μmである。
なお、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現させることができる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0073】
次に、上述したリチウムイオン二次電池の製造方法について若干の例を挙げて説明する。
【0074】
まず、正極を作製する。例えば粒状の正極活物質を用いる場合には、上述した金属化合物を被着して成る正極活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、正極用スラリーを作製する。
次いで、この正極用スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層を形成する。
【0075】
一方、負極を作製する。例えば粒状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、負極用スラリーを作製する。この後、この負極用スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成する。
【0076】
次いで、正極に正極リードを取り付けるとともに、負極に負極リードを取り付けた後、正極、セパレータ及び負極を積層する。さらに、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。
【0077】
しかる後、六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩と、炭酸エチレンなどの有機溶媒を含む非水電解質を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。
そして、上述した電位範囲での充放電前処理を施すことによって、図示したようなラミネート型のリチウムイオン二次電池が完成する。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を、実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
〔1〕固溶体系正極活物質の合成
正極活物質として、複合炭酸塩法によって、0.6Li[Li1/3Mn2/3]O・0.4Li[Ni0.4575Co0.0825Mn0.4575]Oとして表される固溶体系正極活物質を合成した。
まず、出発材料として、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを使用し、これらを所定量秤量して、これらの混合溶液を調製した。次に、この混合溶液にアンモニア水をpH7になるまで滴下した後、さらにNaCO溶液を滴下して、Ni−Co−Mnの複合炭酸塩を沈殿させた。
【0080】
そして、上記により得られた複合炭酸塩を含む懸濁液を吸引ろ過した後、水洗し、120℃にて5時間乾燥した。これを500℃にて5時間仮焼成し、さらに、これに小過剰のLiOH・HOを加えて、自動乳鉢で30分間混合した。
この後、900℃にて12時間本焼成してから、液体窒素を用い急速冷却した。
【0081】
得られた試料について、XRDパターンを測定することによって、単一物質であることを特徴的な超格子構造に由来する小さな幅広ピークによって確認した。
また、ICPによって、リチウム、ニッケル、コバルト及びマンガンの組成比がLi:Ni:Co:Mn=1.173:0.183:0.039:0.594であることが判明した。
【0082】
〔2〕固溶体系正極活物質の表面コーティング
〔2−1〕Alコーティング
上記により得られた固体溶体系正極活物質をAl(NOを溶解させた硝酸溶液中に浸漬して、4時間撹拌した後、ろ過し、真空乾燥後に450℃で3時間熱処理することによって、上記正極活物質の表面にAlを質量比でそれぞれ2%、3%及び5%被着させた。
図2は、2%のAlを被着させた正極活物質のTEM(透過型電子顕微鏡)観察像であって、正極活物質粒子の表面に薄いコーティング層が形成されていることが判る。また、図3に示すEDXの結果から、粒子表面にAlが存在していることを確認できる。
【0083】
〔2−2〕TiOコーティング
上記により得られた固体溶体系正極活物質を(株)鯤コーポレーション社製のサガンコートというTiOコーティング液(水溶液)を使用し、ろ過して真空乾燥後に450℃で3時間 熱処理を行い、上記正極活物質の表面にTiOを質量比で2%被着させた。
【0084】
〔2−3〕ZrOコーティング
上記により得られた固体溶体系正極活物質とZr(OCを室温でビーカー中の1−プロパノールに撹拌しながら加えた。その溶液を温度80℃から90℃の間でゾルが透明になるまで加熱した。ろ別乾燥して得られた前駆体を450℃で5時間熱処理し、上記正極活物質の表面にZrOを質量比で3%被着させた。
【0085】
〔3〕評価用セル(コイン電池)の作製
上記〔1〕及び〔2〕により得られた金属化合物被着正極活物質を20mg、導電結着材としてTAB−2を12mgをそれぞれ量り取り、メノウ乳鉢に入れて混練し、直径16mmのペレットに成形した。これを同径のアルミニウムメッシュ(集電体)上に載置して、2トン(0.99ton/cm)の圧力で圧着し、真空下、120℃で4時間乾燥させて電極(作用極)を作製した。
なお、上記の導電結着材TAB−2とは、Teflonized acetylene black(テフロン(登録商標)加工されたアセチレンブラック):Graphite(グラファイト)=2:1(質量比)の組成のものである。
【0086】
そして、作用極として作製した上記電極(正極)に対して、直径15mmの金属リチウム箔(負極)を対極として用い、セパレータとしてのガラスろ紙を介してセルを組んだ。電解液には、EC(エチレンカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)=1:2(体積比)の混合溶媒中に、1Mの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含むものを使用し、乾燥アルゴン雰囲気のグローブボックス内で評価用セル(コイン電池)を作製した。
なお、比較例として、金属化合物が被着されていない状態の正極活物質を用いたコイン電池をも作製した。
【0087】
〔4〕充放電サイクル試験
50℃において、定電流充放電試験を行い電極特性を評価した。
充放電前処理を行わない比較例においては、上記〔3〕により得られたコイン電池に対して、電流密度を0.2mA/cmとして、電圧範囲を2.0V〜4.8Vとして充放電のサイクル耐久性を試験した。
【0088】
一方、充放電前処理を施す実施例の場合には、同様に50℃において、正極の電位がリチウム対極に対して4.5V相当(充電上限電位)になるまで充電し、その後正極の電位がリチウム対極に対して2.0V(放電下限電位)になるまで放電する操作を2回繰り返した。次に、正極の電位がリチウム対極に対して4.6V相当(充電上限電位)になるまで充電し、その後正極の電位が2.0V(放電下限電位)になるまで放電する操作を同様に2回繰り返した。そしてさらに、正極の電位がリチウム対極に対して4.7V相当(充電上限電位)とし、その後正極の電位が2.0V(放電下限電位)になるまで放電する操作を同じく2回繰り返した。
そして、引き続き、充放電の電圧範囲を上記同様に、2.0V〜4.8Vとして充放電のサイクル耐久試験を実施した。
【0089】
(実施例1)
2%のAlをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、上記充放電前処理を施し、サイクル耐久試験を実施した。
【0090】
(比較例1)
2%のAlをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0091】
(比較例2)
3%のAlをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0092】
(比較例3)
5%のAlをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0093】
(比較例4)
金属化合物のコーティングがされていない正極活物質を用いたコイン電池に、上記充放電前処理を施してサイクル耐久試験に供した。
【0094】
(比較例5)
金属化合物のコーティングがされていない正極活物質を用いたコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0095】
以上の実施例及び比較例によるサイクル耐久試験結果を図4に纏めて示す。
【0096】
(実施例2)
2%のTiOをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、上記充放電前処理を施し、サイクル耐久試験を実施した。
【0097】
(実施例3)
3%のZrOをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、上記充放電前処理を施し、サイクル耐久試験を実施した。
(比較例6)
2%のTiOをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0098】
(比較例7)
3%のZrOをコーティングした正極活物質を用いて作製したコイン電池に、充放電前処理を施すことなく、サイクル耐久試験に供した。
【0099】
以上の実施例及び比較例によるサイクル耐久試験結果を図5に纏めて示す。なお、図5中には、比較のために、上記比較例4(未コーティング正極活物質+充放電前処理)及び比較例5(未コーティング正極活物質、充放電前処理なし)のデータをも併せて示してある。
【0100】
図4に示した結果から明らかなように、充放電前処理を行わない場合には、2%、3%及び5%のAlをコーティングすることにより、サイクル耐久性が向上していることが判る。
ここで、放電容量に対するAlコーティング量の影響としては、2%、3%ではあまり容量は変わらないが、5%コーティングの場合には、実質的に容量が減少してしまうことが判明した。これは、活物質重量の実質的な減少によるものか、コーティング層の厚膜化のための反応性の低下によるものと考えられる。
【0101】
これに対し、充放電前処理を施すと、Alコーティングしていないものでもサイクル耐久性が大幅に改善される。ここで、2%のAlをコーティングした電極に更に充放電前処理を施すことによって、より大きい容量を安定に示し、コーティングせずに前処理したときよりも、さらに大きな放電容量を保ったまま、サイクル耐久性を改善できることが確認された。つまり、本発明のリチウム二次電池においては、高温でも最大の容量を安定に発現し続けることができ、より容量の大きな電池とすることができる。
【0102】
また、図5に示した結果からは、AlコーティングをTiOやZrOコーティングに替えた場合でも、同様な傾向を示すことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5