(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017819
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】ミシンの布押さえ
(51)【国際特許分類】
D05B 83/00 20060101AFI20161020BHJP
D05B 53/00 20060101ALI20161020BHJP
D05B 29/06 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
D05B83/00
D05B53/00
D05B29/06
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-87927(P2012-87927)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-215364(P2013-215364A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 平成23年12月22日 ウェブサイトのアドレス http://www.janome.co.jp/gakuhan/img/top/release_20111222.pdf 公開のタイトル 学校向け「フィンガーガードつき押さえ」の新発売について 販売日 平成24年1月19日 販売場所 大阪市立桜宮小学校(大阪府大阪市都島区東野田町1丁目10−19) 販売した物の内容 フィンガーガード付押さえ(ミシンの布押さえ)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】高木 務
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政義
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−010462(JP,U)
【文献】
実開昭52−168660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00 〜 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンの押え棒に着脱される布押さえであって、押え本体と、該押さえ本体に装着するための取付け部と、該取付け部から前記押さえ本体の手前側に向かって突出する支持部と、上下動する針の周辺に異物の侵入を阻止するように前記押さえ本体の上方で前記針に正対する操作者側に前記押さえ本体の左端から右端に亘って設けたガード部と、該ガード部から前記押さえ本体の幅方向右側に近接して後方側に向かって屈曲されて先端には外周に倣って糸を案内する糸案内部を有するガイド部とで形成されたガード部材とからなり、前記押さえ本体の前後方向後方側端部には前記ガード部材の取付け部を装着する装着部が形成されると共に、前記押さえ本体の前後方向中間箇所よりも僅かに後方側に前記ガード部材を係止固定する係止部が形成されてなることを特徴とするミシンの布押さえ。
【請求項2】
前記係止部は、前記ガード部材の一部を挟持状態で固定する係止溝が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押さえ。
【請求項3】
前記ガード部材は、線状部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの布押さえ。
【請求項4】
前記ガード部材のガード部が板状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの布押さえ。
【請求項5】
前記ガード部材の糸案内部のガイド部は、外周部が弧状に形成されてなることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のミシンの布押さえ。
【請求項6】
前記ガード部材の糸案内部のガイド部は、球体部材を装着してなることを特徴とする請求項2又は3に記載のミシンの布押さえ。
【請求項7】
前記糸案内部は、前記ガイド部の後方側端部より上方に向かって垂直状に形成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載のミシンの布押さえ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの操作時において、操作者の指の安全を確保すると共に糸を簡単に案内することができ、特に学校でのミシン実習等で生徒の事故(指先の針刺し)を防止することができるミシンの布押さえに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンを使用して縫製する時には、操作者は縫製品に手をそえて、針の近くまで縫製品を手で送ることにより縫製している。しかし、縫製中に、操作者は指先を針によって負傷するおそれが十分にある。特に、学校の家庭科及びクラブ活動におけるミシンの実習等の使用時に、学生,生徒が誤って指に針を刺してしまう事故がおきていた。このような事故を防止するための構成が開示されたものとして、特許文献1又は特許文献2が存在する。特許文献1及び特許文献2では、ミシンの押さえ棒に装着される布押さえ取付部に、前方に突出して先端を屈曲したワイヤー状の指のガード部材が取り付けられている。これにより、針の付近の前部および側面部を囲んでミシン針による指の負傷を防いでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−196761号公報
【特許文献2】特開2002−292177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の従来技術では、以下のような問題点が存在する。まず、従来技術における単に上方空間を覆うだけの構造とした指のガード部材では、被縫製する布の取替え作業や糸掛け、糸通し作業において邪魔になることが多いという問題があった。布押さえ取り付け部に装着するものでは、着脱交換する布押さえの大きさが異なることから布押さえの、最大の幅に対応することが求められる。
【0005】
しかし、ガード部材が大きすぎると、操作に支障を来し、また布押さえ上方の位置に設ける場合には、糸通しや糸引き上げ時に操作が困難になるなどの問題があった。そこで本発明の目的(解決すべく技術的課題)は、布押さえの近傍をガードすると共に、布押さえ後方への下糸引き出し時の糸操作が容易に行うことができる指ガード付きの布押さえを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ミシンの押え棒に着脱される布押さえであって、押え本体と、該押さえ本体に装着するための取付け部と、該取付け部から前記押さえ本体の手前側に向かって突出する支持部と、上下動する針の周辺に異物の侵入を阻止するように前記押さえ本体の上方で前記針に正対する操作者側に前記押さえ本体の左端から右端に亘って設けたガード部と、該ガード部から前記押さえ本体の幅方向右側に近接して後方側に向かって屈曲されて先端には外周に倣って糸を案内する糸案内部を有するガイド部とで形成されたガード部材とからなり、前記押さえ本体の前後方向後方側端部には前記ガード部材の取付け部を装着する装着部が形成されると共に、前記押さえ本体の前後方向中間箇所よりも僅かに後方側に前記ガード部材を係止固定する係止部が形成されてなることを特徴とするミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【0007】
請求項2の発明を、前記係止部は、前記ガード部材の一部を挟持状態で固定する係止溝が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、前記ガード部材は、線状部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項4の発明を、前記ガード部材のガード部が板状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前記ガード部材の糸案内部のガイド部は、外周部が弧状に形成されてなることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、前記ガード部材の糸案内部のガイド部は、球体部材を装着してなることを特徴とする請求項2又は3に記載のミシンの布押さえとしたことにより上記課題を解決した。請求項7の発明を、前記糸案内部は、前記ガイド部の後方側端部より上方に向かって垂直状に形成されてなることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載のミシンの布押さえとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ガード部材は、取付け部から押さえ本体の手前側に向かって突出する支持部と、上下動する針の周辺に異物の侵入を阻止するように前記押さえ本体の上方で前記針に正対する操作者側に前記押さえ本体の左端から右端に亘って設けたガード部と、該ガード部から前記押さえ本体の後方側に向かって屈曲されて先端には外周に倣って糸を案内するガイド部を有する糸案内部とで形成されたらものである。そして、押さえ本体には、前記ガード部材の取付け部を装着する装着部が形成され、前記ガード部材を係止固定する係止部が形成される構成としたことによって、針の周辺がガード部材にて包囲された状態となり、操作者の指が針周辺の危険な範囲に入り難くなっており、操作者の指が針から保護される。
【0010】
さらに、前記押さえ本体には、前記ガード部の取付け部が挿入する装着孔が形成されると共に、前記ガード部の一部を係止固定する係止部が形成された構成によって、押さえ本体に対してガード部材の取付が極めて簡単にできる。しかも、押さえ本体にガード部材が装着された状態では、ガード部材の取付け部と押さえ本体の装着孔との挿入と、ガード部の一部を係止固定する係止部による2箇所の固定構造によって、ガード部材は不動に固定され、安定した装着状態にできる。
【0011】
請求項2の発明では、前記係止部は、前記ガード部の一部を挟持状態で固定する係止溝が形成された突起状片としたことにより、ガード部材を押さえ本体に装着すると共に、ガード部材の一部を係止溝に挿入するのみでガード部材は、押さえ本体に不動状態に固定することができる。請求項3の発明では、前記ガード部は、特に金属或いは合成樹脂からなる線状材から極めて容易に製造することができる。請求項4の発明では、ガード部が板状に形成されたことにより、操作者からは、より一層、目視し易くなり、さらに針に対して操作者の指が誤って近づくことを確実に防止することができる。
【0012】
請求項5の発明では、前記ガード部材の糸案内部の弧状部は、円形状に屈曲形成されたことにより、ガード部材を糸掛け作業の案内として、糸をガード部材に沿って導入しようとするときに、前記糸案内部の弧状部によって円滑に導入することができ、糸が引っ掛かることなく、作業効率を向上させることができる。また、糸案内部は、ガード部材を構成する部材から一体的に形成することができ、ガード部材の構造を極めて簡単にすることができる。請求項6の発明では、前記糸案内部の弧状部は、球体部材を装着する構成としたことにより、ガード部材を糸掛けの案内として使用するときに、糸の導入段階で最も引っ掛かり難い構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は本発明の斜視図、(B)は(A)の反対方向より見た斜視図、(C)は本発明の平面図である。
【
図2】(A)は本発明において押さえ本体とガード部材とを分離した斜視図、(B)は(A)の(ア)部拡大図、(C)は本発明の側面図、(D)は(C)の(イ)部拡大図である。
【
図3】(A)はガード部材の弧状部の別の実施例の斜視図、(B)は(A)の(ウ)部拡大図、(C)は(B)の変形例の斜視図、(D)はガード部材のガード部の変形例を装着した平面図、(E)はガード部材を板状にした実施形態の第1タイプの斜視図、(D)ははガード部材を板状にした実施形態の第2タイプの斜視図である。
【
図4】(AI),(B),(CI)は本発明の第1行程を示す斜視図、(AII)は(AI)の平面図,(CII)は(CI)の平面図である。
【
図5】(AI),(B),(CI)は本発明の第2行程を示す斜視図、(AII)は(AI)の平面図,(CII)は(CI)の平面図である。
【
図6】(A)は本発明における布押さえが装着されてミシン機枠の斜視図、(B)は(A)の(エ)部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明は、
図1,
図2,
図6等に示すように、押さえ本体Aとガード部材Bとから構成される。押さえ本体Aは、ホルダ部1と押さえ部2とから構成される。ホルダ部1は、ミシン機枠9に装着された押さえ棒91の下端に螺子部材92を介して着脱自在に装着される〔
図6(B)参照〕。押さえ部2は、針板93上に配置された布地を押さえ付ける役目をなす〔
図6(A)参照〕。
【0015】
押さえ部2は、前記ホルダ部1の下端箇所に、軸材等にて枢支連結され、押さえ部2がホルダ部1に対して揺動自在となるように構成されている〔
図1(A),(B )参照〕。ホルダ部1には、押さえ棒91に装着するための取付けガイド11が形成され、さらにホルダ部1と押さえ棒91とを螺子部材92にて固着するための螺子部材取付け凹部12が形成されている〔
図1,
図6(B)参照〕。
【0016】
押さえ部2は、押さえ板部21と、連結部24と、ガード部材Bが装着される装着部25と、係止部26とから構成される。押さえ板部21は、ソリ形状に形成され、前後方向において前方側及び後方側が円弧状に反り上がり形成されており、特に前方側の反り上が部分が後方側の反り上がり部分よりも大きく形成されている。押さえ板部21は、前方側端縁にて開放され、且つ前方側から後方側に向かって、前後方向略中間箇所に至るまで割溝部22が形成されている。
【0017】
該割溝部22は、押さえ板部21における前方側端部の開放された部分の溝幅が最も広く、押さえ板部21の後方側に向かって次第に狭くなるように形成されている。そして、割溝部22は、押さえ板部21の前後方向中間箇所にて直線状の溝となり、その奥側に溝幅よりも大きな針通過孔23が形成されている。割溝部22と針通過孔23とは連通している。該針通過孔23は、針8の上下動作時において、針が通過する部位である。
【0018】
前記連結部24は、押さえ板部21の前後方向の中間位置よりも後方側に位置して、押さえ板部21の幅方向両側で且つ上方に膨出形成された2つの膨出部24a,24aから構成されたものである。そして両膨出部24a,24a間には前記ホルダ部1の下端箇所が配置され、両膨出部24a,24aとホルダ部1の下端箇所に枢支軸が装着されて押さえ部2が揺動自在となるようにホルダ部1に連結される。
【0019】
前記装着部25は、押さえ板部21の前後方向後方側端部で且つ幅方向に沿って上方に膨出形成されたものである。前記装着部25には、装着孔25aが押さえ板部21の幅方向で且つ水平状に形成されている。さらに押さえ板部21には、係止部26が形成されている。該係止部26は、前記装着部25と共にガード部材Bを固定する役目をなす部位である。
【0020】
係止部26は、押さえ板部21の前後方向中間箇所よりも僅かに後方側に位置し、押さえ板部21の幅方向一方側にのみ形成されている。さらに具体的には、係止部26は、前記連結部24の膨出部24aに一体的に形成されている。係止部26は、略立方体形状に形成されたものであって、上下方向に貫通する係止溝26aが形成されている。
【0021】
該係止溝26aは、ガード部材Bの線状部材よりも僅かに大きい溝幅を有している。そして、係止溝26aの水平方向の開放部分で且つ前後方向のいずれか一方に小突起26bが形成されている。小突起26bは、前記係止溝26aに挿入されたガード部材Bの一部を係止溝26aから外れ難いようにする役目をなすものである。
【0022】
次に、ガード部材Bは、前記押さえ本体Aに装着するものである。ガード部材Bは、押さえ本体Aに装着された状態で、該押さえ本体Aの押さえ板部21の幅方向一方側で且つ押さえ板部21の後方側の位置から前方側に向かって突出すると共に、針8の周辺を包囲するようにして、前記押さえ本体Aの前方側にて幅方向一方側から幅方向他方側に向かい、且つ幅方向他方側から前記押さえ本体Aの後方側に向かって下方に下がるように屈曲され、他端は糸案内部として形成されたものである。
【0023】
ガード部材Bは、具体的には線状部材から形成されたものであって、具体的には金属製の線状の部材であり、針金或いは細い軸状材が屈曲形成されたものである。また、ガード部材Bを形成する線状部材は合成樹脂製としてもよい。前記ガード部材Bは、前述したように、針8の周辺を包囲する構成であり、具体的には、前記取付け部3から上方に向かって屈曲形成された支持部4と該支持部4から前記押さえ本体Aの前方側に位置するように屈曲されるガード部5と、該ガード部5の他端側から前記押さえ本体Aの後方側で且つ下方に向かって屈曲されるガイド部6と、該ガイド部6の下端より上方に向かって形成される糸案内部7とからなる。
【0024】
また、前記ガード部材Bが板状に形成される実施形態も存在する。その第1タイプでは、ガード部材Bのガード部5が板状に形成され、取付け部3,支持部4,ガイド部6及び案内部7は、線状部材から成されている。ガード部5は、薄板金属材又は合成樹脂等の板材にて形成され、他の部位の線状部材と固着されて連結さ接着剤又は線状部材と連結可能な連結端部を形成して連結する構成としている〔
図3(E)参照〕。また、第2タイプでは取付け部3以外の部位、すなわち、支持部4,ガード部5,ガイド部6及び案内部7が板状に形成されることもある。この場合には、線状部材とした取付け部3が挿入される挿入孔が形成され、取付け部3と支持部4とが連結される〔
図4(D)参照〕。
【0025】
前記針8の周辺とは、該針8の直近の周囲ではなく、操作者の指の安全が十分に確保されるべく針8から離れた範囲のことをいう。具体的には、ガード部材Bの幅方向は押さえ本体Aの押さえ板部21の幅方向よりも広く、また前方側では押さえ板部21の前方側端縁付近の範囲である〔
図1(C)参照〕。しかし、前述したように、操作者の指の安全が保護される程度の範囲であれば、上記に示された範囲に限定されるものではなく、多少狭くしたり広くすることは、適宜に設定してもかまわない。
【0026】
糸案内部7は、弧状部分を有している。取付け部3,支持部4,ガイド部5,ガイド部6及び糸案内部7は、一本の線状部材から一体形成されたものである。前記支持部4は、前記押さえ部2の押さえ板部21の一方の側面に沿うように形成され、ガード部5は、押さえ板部21の前方側端部上を通過するように形成され、ガイド部6は、前記押さえ板部21の他方の側面に沿うように形成されている。
【0027】
取付け部3は、前記押さえ部2の装着部25に形成された装着孔25aに挿入される部位である。支持部4は、前記取付け部3に対して略直角に屈曲形成された部位である。支持部4の後方側端部で前記取付け部3寄りの部分には、立上り軸部41が形成されており、具体的には前後方向に沿う下部水平状軸片41aと、垂直方向に沿う垂直状軸片41bと、幅方向且つ水平方向に沿う上部水平軸片41cとからなり、立上り軸部41によって、支持部4は、取付け部3よりも上方に位置するように形成される。
【0028】
また、支持部4は、後方側から前方側に向かって傾斜状に形成されている。ガード部5は、前記支持部4に対して押さえ板部21の前方側上方箇所を押さえ板部21の幅にわたって覆うように、屈曲形成された部位である。ガイド部6は、前記ガード部5の端部、つまりガイド部6の前方側から後方側に向かって下方に下がるように傾斜状に形成されている。
【0029】
また、さらに傾斜の終端から後方側に向かって水平状に低位置でガイド部6が形成されている。ガイド部6は、押さえ本体Aの押さえ板部21に近接している。糸案内部7は、前記ガイド部6の後方側端部より上方に向かって垂直状に形成されている。前記糸案内部7は、円形状に屈曲形成されている〔
図1(A),
図2(A)参照〕。また、糸案内部7の屈曲形成された部分に代わって球体部材7aが設けられることもある〔
図3(A),(B)参照〕。また、前記球体部材7aの変形例として、球面体と円筒形とが一体的に組み合わせられた形状としたものも存在する〔
図3(C)参照〕。
【0030】
本発明では、ガード部材Bは、支持部4,ガード部5及びガイド部6によって針8の周辺を包囲しており、支持部4,ガード部5及びガイド部6は全て直線状として形成されており、平面的に見ると略方形状である。また、前記支持部4,ガード部5及びガイド部6は、略弧状に形成してもよく、ガード部材Bは全体として、略半円形状とすることもある。
図3(D)は、ガード部材Bのガード部5のみを略半円形状に形成されたものである。
【0031】
次に、本発明において、ガード部材Bによる糸掛け作業の行程について説明する。作業行程には、第1行程(導入行程),第2行程(案内行程)の2つの行程から構成される。第1行程は、針8の糸通し孔に貫通した糸nをガード部材Bの糸案内部7からガイド部6に案内されるまでの導入行程である。
【0032】
この行程では、針8の糸通し孔を貫通している糸nの一端を操作者が指先でつまみ〔
図4(AI),(AII)参照〕、そのまま、ガード部材Bの後方側外方より糸案内部7の弧状部分に当接させつつ、つまんだ糸nを下方に下げてガイド部6の後方側端部にガイドされながら移動させる〔
図4(B)参照〕。そして、糸nを下方に下げてガイド部6の後方側端部から前方側に向かって移動させる〔
図4(CI),(CII)参照〕。
【0033】
第2行程は、針8に貫通した糸nをガード部材Bのガイド部6に沿って、該ガイド部6と前記押さえ部2との間を通ってガード部5から押さえ部2の針通過孔23に遊挿するまでの案内行程である。この行程では、操作者が糸nをつまんだまま、ガイド部6の後方側より前方側に沿って移動させる。
【0034】
そして、そのまま糸nをガイド部6の傾斜部分に沿って移動させることにより、糸nはガード部5に到達し、ガード部5の下面に接触する〔
図5(AI),(AII)参照〕。また、操作者は糸nを最初は右手指でつまんでいるが、糸nをガード部5に導いたときに、操作者の左手指で持ち変えると作業し易くなる〔
図5(AI)参照〕。
【0035】
さらに操作者は糸nをつまんだまま、ガード部5の下面に沿って幅方向中央付近まで移動させる〔
図5(B)参照〕。そして、糸nを下方に降ろしつつ、押さえ部2の割溝部22の開放側より遊挿させる。そして、操作者は、糸nをつまんだままの状態で糸nを押さえ部2の押さえ板部21の下面側に移動させつつ、糸を針通過孔23の位置まで移動させる〔
図5(CI),(CII)参照〕。以上のように、操作者は糸nをつまんで第1行程及び第2行程にしたがって、作業することにより、針8の糸通し孔を通過した糸nを押え本体Aの針通過孔23を通過するように装着することが円滑且つ簡単にできる。
【0036】
また、前述したように、ガード部材Bのガイド部6は、前方側から後方側に向かって下方に下がるように傾斜し、さらに後方側に向かって水平状に構成されている。ガイド部6は、ガード部材Bにおいて最も低位置となる部分を有している。
【0037】
したがって、ガード部材Bが操作者の作業時の邪魔となることがなく、作業針の糸通し孔の位置等を確認し易く、この部分が針への糸掛け,糸通し等の作業を行い易くすることができる。つまり、ガード部材Bは、操作者の指が針に近づくことを防止して安全を維持しつつ、針に対して糸掛け等の作業を行い易くすることができるという優れた効果を有するものである。
【符号の説明】
【0038】
A…押え本体、25…装着部、26…係止部、26a…係止溝、3…取付け部、
B…ガード部材、4…支持部、5…ガード部、6…ガイド部、7…糸案内部、
7a…球体部材。