(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体に設けられて道路上を走行可能な道路走行用車輪と、前記車体に設けられて軌道上を走行可能な軌道走行用車輪と、前記車体上に設けられた作業装置とを備え、前記軌道走行用車輪を前記車体に格納してエンジンにより前記道路走行用車輪を駆動して道路上を走行可能とする道路走行状態と、前記軌道走行用車輪を下方に張り出して軌道走行用バッテリからの電力供給を受けて回転駆動する電動モータにより前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行可能とする軌道走行状態とに切換設定可能に構成された軌陸作業車において、
前記エンジンにより駆動される発電機と、
前記発電機により発電された電力を前記軌道走行用バッテリに充電するバッテリ充電手段と、
前記軌道走行用車輪が前記車体に格納されたか下方に張り出されたかを検出する車輪格納張出検出手段と、
前記作業装置が前記車体上の格納位置に格納されたか否かを検出する作業装置格納検出手段と、
前記エンジンにより前記発電機を駆動して発電された発電電力を前記軌道走行用バッテリに充電させつつ前記エンジンにより前記道路走行用車輪を駆動して道路上を走行させる道路走行モード、前記エンジンにより前記発電機を駆動して発電された発電電力を前記軌道走行用バッテリに充電させつつ前記軌道走行用バッテリからの電力を前記電動モータに供給して前記電動モータにより前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行させる第1軌道走行モード、および前記エンジンを停止させて前記軌道走行用バッテリからの電力を前記電動モータに供給して前記電動モータにより前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行させる第2軌道走行モードを、前記車輪格納張出検出手段により検出された前記軌道走行用車輪の格納張出状態および前記作業装置格納検出手段により検出された前記作業装置の格納状態に応じて選択して設定する走行モード設定手段と、
前記走行モード設定手段により設定された走行モードに基づく走行制御を行う走行制御手段と、を備えることを特徴とする軌陸作業車。
前記作業装置は、パワーテイクオフ機構により前記エンジンから取り出した動力により油圧ポンプを駆動して前記油圧ポンプから吐出される圧油を用いて駆動するように構成され、
前記走行モード設定手段は、前記パワーテイクオフ機構が前記エンジンから前記油圧ポンプを駆動する動力を取り出さないOFF状態である場合に、前記道路走行モードを設定することを特徴とする請求項2に記載の軌陸作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の軌陸作業車では、軌道走行中において軌道走行用バッテリを充電
可能に構成されているが、道路走行中においては軌道走行用バッテリを充電することがで
きるように構成されていなかった。また、軌道走行において、エンジンを駆動させて軌道
走行用バッテリを充電させつつ走行する場合と、エンジンを停止させて走行する場合とを
切り換えることができるように構成されていなかった。そのため、道路走行および軌道走
行のいずれの場合においても軌道走行用バッテリを充電することができ、作業状況や軌道
走行用バッテリの充電容量に応じた軌道走行を行うことができる構成が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、道路走行および軌道走行のい
ずれの場合においても軌道走行用バッテリを充電することができ、作業状況や軌道走行用
バッテリの充電容量に応じた軌道走行を行うことができる軌陸作業車を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る軌陸作業車は、車体に設けられて道路上を走行可能な道路走行用車輪(例えば、実施形態におけるタイヤ車輪12)と、前記車体に設けられて軌道上を走行可能な軌道走行用車輪(例えば、実施形態における鉄輪15)と、前記車体上に設けられた作業装置(例えば、実施形態における垂直昇降装置20)とを備え、前記軌道走行用車輪を前記車体に格納してエンジンにより前記道路走行用車輪を駆動して道路上を走行可能とする道路走行状態と、前記軌道走行用車輪を下方に張り出して軌道走行用バッテリ(例えば、実施形態におけるバッテリ61)からの電力供給を受けて回転駆動する電動モータ(例えば、実施形態における走行電動モータ16)により前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行可能とする軌道走行状態とに切換設定可能に構成される。そして、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機により発電された電力を前記軌道走行用バッテリに充電するバッテリ充電手段(例えば、実施形態における発電用インバータ64)と、前記軌道走行用車輪が前記車体に格納されたか下方に張り出されたかを検出する車輪格納張出検出手段(例えば、実施形態における鉄輪格納張出検出器71)と、前記作業装置が前記車体上の格納位置に格納されたか否かを検出する
作業装置格納検出手段と、前記エンジンにより前記発電機を駆動して
発電された発電電力を前記軌道走行用バッテリに充電させつつ前記エンジンにより前記道路走行用車輪を駆動して道路上を走行させる道路走行モード、前記エンジンにより前記発電機を駆動して
発電された発電電力を前記軌道走行用バッテリに充電させつつ前記軌道走行用バッテリからの電力を前記電動モータに供給して前記電動モータにより前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行させる第1軌道走行モード、および前記エンジンを停止させて前記軌道走行用バッテリからの電力を前記電動モータに供給して前記電動モータにより前記軌道走行用車輪を駆動して軌道上を走行させる第2軌道走行モードを、前記車輪格納張出検出手段により検出された前記軌道走行用車輪の
格納張出状態および
前記作業装置格納検出手段により検出された前記作業装置の格納状態に応じて選択して設定する走行モード設定手段と、前記走行モード設定手段により設定された走行モードに基づく走行制御を行う走行制御手段と、を備えて構成される。
【0008】
このような構成によれば、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテリに充電
させつつエンジンにより道路走行用車輪を駆動して道路上を走行させる道路走行モードと
、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテリに充電させつつ軌道走行用バッテ
リからの電力を用いて軌道上を走行させる第1軌道走行モードと、エンジンを停止させて
軌道走行用バッテリからの電力を用いて軌道上を走行させる第2軌道走行モードとを、軌
道走行用車輪の格納状態および作業装置の格納状態に応じて自動的に選択して設定するよ
うに構成されている。そのため、道路走行中においても軌道走行用バッテリを充電するこ
とができ、道路走行および軌道走行のいずれの場合においても軌道走行用バッテリを充電
することができる。また、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテリを充電さ
せつつ軌道上を走行させる第1軌道走行モードと、エンジンを停止させて軌道走行用バッ
テリを充電せずに軌道上を走行させる第2軌道走行モードとを選択することができ、作業
状況や軌道走行用バッテリの充電容量に応じた軌道走行を行うことができる。
【0009】
なお、上記構成の軌陸作業車において、前記走行モード設定手段は、前記車輪格納張出検出手段により前記軌道走行用車輪が前記車体に格納されたことが検出され、且つ
前記作業装置格納検出手段により前記作業装置が前記格納位置に格納されたことが検出された場合に、前記道路走行モードを設定することが好ましい。
【0010】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記作業装置は、パワーテイクオフ機構により
前記エンジンから取り出した動力により油圧ポンプを駆動して前記油圧ポンプから吐出さ
れる圧油を用いて駆動するように構成され、前記走行モード設定手段は、前記パワーテイ
クオフ機構が前記エンジンから前記油圧ポンプを駆動する動力を取り出さないOFF状態
である場合に、前記道路走行モードを設定することが好ましい。
【0011】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記走行モード設定手段は、前記車輪格納張出検出手段により前記軌道走行用車輪が前記車体の下方に張り出されたことが検出され、且つ
前記作業装置格納検出手段により前記作業装置が前記格納位置に格納されたことが検出された場合に、前記第1軌道走行モードを設定することが好ましい。
【0012】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記作業装置は、作業台を備えて前記作業台を
所望の高所位置に移動させるように構成され、前記車体および前記作業台にそれぞれ設け
られた軌道走行操作手段(例えば、実施形態における走行操作装置40)を備え、前記走
行モード設定手段は、前記車体に設けられた前記軌道走行操作手段が走行指令を出力可能
なON状態であり、且つ前記作業台に設けられた前記軌道走行操作手段が走行指令を出力
できないOFF状態である場合に、前記第1軌道走行モードを設定することが好ましい。
【0013】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記走行モード設定手段は、前記車輪格納張出検出手段により前記軌道走行用車輪が前記車体の下方に張り出されたことが検出され、且つ
前記作業装置格納検出手段により前記作業装置が前記格納位置に格納されていないことが検出された場合に、前記第2軌道走行モードを設定することが好ましい。
【0014】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記作業装置は、作業台を備えて前記作業台を
所望の高所位置に移動させるように構成され、前記車体および前記作業台にそれぞれ設け
られた軌道走行操作手段を備え、前記走行モード設定手段は、前記車体に設けられた前記
軌道走行操作手段が走行指令を出力できないOFF状態であり、且つ前記作業台に設けら
れた前記軌道走行操作手段が走行指令を出力可能なON状態である場合に、前記第2軌道
走行モードを設定することが好ましい。
【0015】
また、上記構成の軌陸作業車において、前記走行モード設定手段により設定された走行
モードを他の走行モードに切り換える操作を行う走行モード切換操作手段(例えば、実施
形態における走行モード切換スイッチ45)を備え、前記走行制御手段は、前記走行モー
ド切換操作手段により切り換えられた走行モードに基づく走行制御を行うことが好ましい
。このような構成によれば、走行モード設定手段により設定された走行モードを作業者が
任意に変更させることができ、作業者が作業状況に応じた最適な軌道走行モードを選択し
て軌道上を走行させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る軌陸作業車によれば、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテ
リに充電させつつエンジンにより道路走行用車輪を駆動して道路上を走行させる道路走行
モードと、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテリに充電させつつ軌道走行
用バッテリからの電力を用いて軌道上を走行させる第1軌道走行モードと、エンジンを停
止させて軌道走行用バッテリからの電力を用いて軌道上を走行させる第2軌道走行モード
とを、軌道走行用車輪の格納状態および作業装置の格納状態に応じて自動的に選択して設
定するように構成されている。そのため、道路走行中においても軌道走行用バッテリを充
電することができ、道路走行および軌道走行のいずれの場合においても軌道走行用バッテ
リを充電することができる。また、エンジンにより発電機を駆動して軌道走行用バッテリ
を充電させつつ軌道上を走行させる第1軌道走行モードと、エンジンを停止させて軌道走
行用バッテリを充電せずに軌道上を走行させる第2軌道走行モードとを選択することがで
き、作業状況(走行状況)に応じた最適な軌道走行モードにより軌道上を走行させること
ができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に本発明を適用した軌
陸作業車1を示している。軌陸作業車1は、運転キャブ11を有するトラック車両をベー
スに構成された走行体10と、この走行体10上に設けられた垂直昇降装置20と、この
垂直昇降装置20に支持された作業者搭乗用の作業台30とを有して構成されている。
【0019】
走行体10は、車体の前後左右に道路走行用車輪であるタイヤ車輪12を備えるととも
に、車体内部にエンジンE(
図3を参照)を備えており、このエンジンEの出力を変速機
TMおよび差動装置Dを介して後側左右のタイヤ車輪12に伝達して道路上を走行するこ
とができるように構成されている。また、走行体10は、車体の前後左右(各タイヤ車輪
12の後側)に鉄輪支持部材13を介して軌道走行用車輪である鉄輪15を備えている。
後側左右の鉄輪15にはそれぞれ走行電動モータ16,16の出力軸が接続されており(
図3を参照)、この走行電動モータ16,16の出力を減速機G,Gを介して後側左右の
鉄輪15に伝達して軌道(鉄道レール)R上を走行することができるように構成されてい
る。なお、軌道走行時の駆動輪は、後側左右の鉄輪ではなく、前側左右の鉄輪であっても
よい。
【0020】
鉄輪支持部材13は、走行体10に上下方向に揺動自在に支持され、走行体10の内部
に設けられた鉄輪張出油圧シリンダ(図示せず)の伸縮作動により上下に揺動されて鉄輪
15をタイヤ車輪12より下方に張り出したり上方に格納したりできるように構成されて
いる。このように鉄輪15を張り出したり格納したりするため(軌陸作業車1を軌道上へ
載せ換え移動するため)、走行体10は、車体の中央下部に転車台17を備えるとともに
、内部に転車台張出油圧シリンダ(図示せず)を備えており、この転車台張出油圧シリン
ダの伸縮作動により転車台17を下方に張り出して軌陸作業車1を持ち上げた状態(タイ
ヤ車輪12が地面から浮いた状態)とすることができるように構成されている。
【0021】
走行体10には、鉄輪張出油圧シリンダによって車体前後左右の鉄輪15が走行体10
に格納されているか下方に張り出されているかを検出する鉄輪格納張出検出器71が設け
られており、鉄輪格納張出検出器71により検出された鉄輪15の格納状態(鉄輪15が
格納されているか下方に張り出されているか)を示す検出信号はコントローラ50に入力
されるように構成されている(
図2を参照)。
【0022】
垂直昇降装置20は、運転キャブ11後方の走行体10上に架装フレーム18を介して
車幅方向に一対に設けられ、2本のリンクバーを交差させてその交点を回動自在に連結し
たシザースリンク機構(図示せず)と、このシザースリンク機構と架装フレーム18に跨
って設けられた昇降油圧シリンダ(図示せず)とを有して構成され、昇降油圧シリンダの
伸縮作動によりシザースリンク機構の上端部に取り付けられた作業台30を昇降移動させ
ることができるように構成されている。なお、垂直昇降装置20(昇降油圧シリンダ)の
作動は、走行体10および作業台30にそれぞれ設けられた作業操作装置(図示せず)に
よって作動操作を行うことができるように構成されている。
【0023】
垂直昇降装置20には、作業台30が架装フレーム18上の所定の格納位置に格納され
ているか否かを検出する作業台格納検出器72が設けられており、作業台格納検出器72
により検出された作業台30の格納状態(作業台30が格納位置に格納されているか否か
)を示す検出信号はコントローラ50に入力されるように構成されている(
図2を参照)
。
【0024】
このような構成の軌陸作業車1では、軌道R上を走行して作業目的地まで移動し、垂直
昇降装置20を作動させて作業台30を所望の高所位置に移動させ、その位置において車
両を停車させたまま、もしくは軌道R上を走行しながら、作業台30に搭乗した作業者が
軌道R上の張架線やトロリ線等の鉄道設備の工事等を行うことができる。軌陸作業車1の
走行操作は、一般道路走行時には運転キャブ11内の運転席にて行うが、軌道R上を走行
する際には運転キャブ11内および作業台30上にそれぞれ設けられた走行操作装置40
を操作して行うことができるようになっている。
【0025】
走行操作装置40は、
図2に示すように、電源スイッチ41と、走行速度設定ダイヤル
42と、走行操作レバー44と、走行モード切換スイッチ45とを有して構成されている
。電源スイッチ41をON状態に操作すると、電源スイッチ操作検出器41aから電源O
N信号がコントローラ50に入力され、走行操作装置40が電源側と電気的に接続されて
走行指令信号を出力可能なON状態となる。一方、電源スイッチ41をOFF状態に操作
すると、電源スイッチ操作検出器41aから電源OFF信号がコントローラ50に入力さ
れ、走行操作装置40が電源側と切り離されて走行指令信号を出力できないOFF状態と
なるように構成されている。
【0026】
走行速度設定ダイヤル42は、所定の範囲内で操作可能に構成され、捻り操作位置に応
じた軌道走行時の最高速度を設定するように構成されている。走行速度設定ダイヤル42
には捻り操作されたときの位置を検出する速度設定検出器42aが設けられており、走行
速度設定ダイヤル42を捻り操作すると、速度設定操作検出器42aから走行速度設定ダ
イヤル42の捻り操作位置に対応した最高速度設定信号がコントローラ50に入力される
。
【0027】
走行操作レバー44は、中立位置から前後方向に傾動可能に構成され、走行操作レバー
44を前後に傾動させることにより軌陸作業車1の前後進(走行方向)の切り換えを行う
とともに、傾動角度に応じた走行速度を設定するように構成されている。走行操作レバー
44には、傾動操作方向および傾動角度を検出する走行操作検出器44aが設けられてお
り、走行操作レバー44を傾動操作すると、走行操作検出器44aから走行操作レバー4
4の操作状態に応じた走行操作信号がコントローラ50に入力される。なお、走行操作レ
バー44により設定される走行速度は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設
定された最高速度までの範囲内で設定される。
【0028】
走行モード切換スイッチ45は、後述する道路走行モード、第1軌道走行モードおよび
第2軌道走行モードのいずれかを選択可能に構成され、コントローラ50により設定され
た走行モードを他の走行モードに切り換えることができるように構成されている。走行モ
ード切換スイッチ45を操作すると、走行モード切換検出器45aから走行モード切換信
号がコントローラ50に入力され、走行モード切換スイッチ45により選択された走行モ
ードがコントローラ50において設定されるようになっている。
【0029】
このように走行操作装置40が操作されると、走行操作装置40から出力された走行指
令信号(電源信号、最高速度設定信号、走行操作信号、走行モード切換信号)がコントロ
ーラ50に入力され、コントローラ50は、その操作信号に応じて鉄輪15,15を駆動
する鉄輪駆動装置60の作動制御を行うようになっている。
【0030】
鉄輪駆動装置60は、
図2および3に示すように、バッテリ61と、バッテリ61から
走行電動モータ16,16への電力供給を制御する走行用インバータ62と、バッテリ6
1から走行用インバータ62を介して供給される電力を受けて鉄輪15,15を駆動する
走行電動モータ16,16と、エンジンEにより駆動される発電機63と、発電機63に
より発電された電力をバッテリ61に充電させる発電用インバータ64とを有して構成さ
れる。走行用インバータ62は、コントローラ50から出力される作動制御信号に基づい
て、バッテリ61から走行電動モータ16,16への電力供給を制御して、走行電動モー
タ16,16の回転速度や出力トルクの制御を行うようになっている。
【0031】
走行電動モータ16,16は、バッテリ61から走行用インバータ62を介して供給さ
れる電力を受けて回転駆動して鉄輪15,15を駆動させるとともに、軌陸作業車1の減
速において鉄輪15,15により回転駆動されて発電を行う機能を有している。走行電動
モータ16,16により発電された電力は走行用インバータ62を介してバッテリ61に
充電されるようになっている。
【0032】
また、鉄輪駆動装置60には、バッテリ61からポンプ用インバータ66を介して供給
される電力を受けて駆動されるポンプ駆動モータ67と、ポンプ駆動モータ67により駆
動される油圧ポンプ68とが設けられており、油圧ポンプ68からの吐出油が不図示のデ
ィスクブレーキ装置に供給され、このディスクブレーキ装置により鉄輪15,15を制動
させるようになっている。油圧ポンプ68からの吐出油は、上述の鉄輪張出油圧シリンダ
、転車台張出油圧シリンダおよび昇降油圧シリンダにも供給され、これらの油圧シリンダ
を作動させるようになっている。
【0033】
なお、軌陸作業車1には、エンジンスタータ等に電力を供給する車体既存バッテリBか
らの電力を受けて駆動される非常用ポンプ駆動モータ76と、非常用ポンプ駆動モータ7
6により駆動される非常用ポンプ77とが設けられており、バッテリ61の残量不足など
により油圧ポンプ68から必要な吐出油を供給できない場合には、非常用ポンプ77を駆
動させて非常用ポンプ77からの吐出油を、上記のディスクブレーキ装置、鉄輪張出油圧
シリンダ、転車台張出油圧シリンダおよび昇降油圧シリンダにそれぞれ供給することがで
きるようになっている。
【0034】
コントローラ50は、エンジンEにより発電機63を駆動して発電電力をバッテリ61
に充電させつつ、エンジンEによりタイヤ車輪12,12を駆動して道路上を走行する道
路走行モードM
0と、エンジンEにより発電機63を駆動して発電電力をバッテリ61に
充電させつつ、バッテリ61からの電力を走行電動モータ16,16に供給して走行電動
モータ16,16により鉄輪15,15を駆動して軌道R上を走行する第1軌道走行モー
ドM
1と、エンジンEを停止させ、バッテリ61からの電力を走行電動モータ16,16
に供給して走行電動モータ16,16により鉄輪15,15を駆動して軌道R上を走行す
る第2軌道走行モードM
2との三つの走行制御モードに基づいて、軌陸作業車1の走行を
制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ50は、鉄輪駆動格納張出検出器71により検出された車体前後左右の鉄
輪15の格納状態および作業台格納検出器72により検出された作業台30の格納状態に
応じて、道路走行モードM
0、第1軌道走行モードM
1および第2軌道走行モードM
2の
いずれかを選択して設定する走行モード設定部51と、走行モード設定部51により設定
された走行モードに基づいて、エンジンE、走行電動モータ16,16(走行用インバー
タ62)および発電機63(発電用インバータ64)を制御する走行制御部52とを有し
て構成されている。以下、走行モードの選択設定および各走行モードにおける走行制御に
ついて説明する。
【0036】
走行モード設定部51には、鉄輪格納張出検出器71から車体前後左右の鉄輪15が格
納されているか下方に張り出されているかを示す検出信号が入力されるとともに、作業台
格納検出器72から作業台30が所定の格納位置に格納されているか否かを示す検出信号
が入力されるように構成されており、走行モード設定部51は、これらの検出信号に応じ
て道路走行モードM
0、第1軌道走行モードM
1および第2軌道走行モードM
2のいずれ
かを選択して設定する。
【0037】
車輪格納張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15が走行体10に格納されている
状態であると検出され、且つ作業台格納検出器72により作業台30が架装フレーム18
上の所定の格納位置に格納されている状態であると検出された場合には、走行モード設定
部51は、軌陸作業車1が道路走行を行う状態であると判断して、道路走行モードM
0を
選択して設定する。道路走行モードM
0が設定されているときは、走行制御部52は、運
転キャブ11内の運転席からの走行操作に応じてエンジン駆動信号をエンジンEに出力し
てエンジンEを駆動させ、エンジンEにより発電機63を駆動して発電された電力を発電
用インバータ64を介してバッテリ61に充電させつつ、エンジンEの出力を変速機TM
および差動装置Dを介してタイヤ車輪12,12に伝達して道路上を走行させる。このよ
うにバッテリ61を充電しつつ道路上を走行するため、道路走行中においてもバッテリ6
1を充電することができる。
【0038】
このとき、走行制御部52は、バッテリ61の充電容量を確認し、所定の値以上の容量
があるとき、もしくは満充電状態となったときに、発電用インバータ64に制御信号を出
力して発電用インバータ64から発電機63への励磁を停止させて発電機63による発電
を停止させ、バッテリ61への充電を行わないように制御する。なお、この制御は、発電
機63を他励式発電機(ACモータ等)により構成した場合の制御である。発電機63を
自励式発電機(IPMモータ等)により構成した場合には、エンジンEの動力を発電機6
3に伝達する動力伝達機構をOFF状態(発電機63に動力を伝達しない状態)に制御し
て発電機63による発電を停止させる制御を行うように構成してもよい。
【0039】
一方、車輪格納張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15が走行体10の下方に張
り出されている状態であると検出され、且つ作業台格納検出器72により作業台30が架
装フレーム18上の所定の格納位置に格納されている状態であると検出された場合には、
走行モード設定部51は、軌陸作業車1が軌道R上での走行を行う状態であると判断して
、第1軌道走行モードM
1を選択して設定する。このように作業台30を格納した状態で
軌道上を走行するときは、例えば作業目的地まで移動する場合など、作業台30を所望の
高所位置に移動させて作業を行いながらの軌道走行よりも高速で走行する場合が多い。そ
のため、第1軌道走行モードM
1が設定されているときは、走行制御部52は、エンジン
駆動信号をエンジンEに出力してエンジンEを駆動させ、エンジンEにより発電機63を
駆動して発電された電力を発電用インバータ64を介してバッテリ61に充電させつつ、
走行操作装置40からの走行操作信号に応じてモータ制御信号を走行用インバータ62に
出力してバッテリ61からの電力を走行電動モータ16,16に供給させて走行電動モー
タ16,16を駆動させ、走行電動モータ16,16の出力を減速機G,Gを介して鉄輪
15,15に伝達して軌道R上を走行させる。なお、このとき、走行制御部52は、変速
機TMに制御信号を出力して変速機TMをニュートラル状態に制御し、エンジンEの出力
がタイヤ車輪12,12に伝達されない(エンジンEの出力によりタイヤ車輪12,12
が回転駆動されない)ように制御する。このようにバッテリ61を充電しつつ、バッテリ
61からの電力を用いて軌道上を走行するため、作業目的地まで移動する場合などの高速
走行を行っても、バッテリ61の充電容量を十分に保つことができる。
【0040】
なお、上述したように走行操作装置40は運転キャブ11内および作業台30上にそれ
ぞれ設けられているが、作業台30を格納した状態で軌道上を走行するときは、運転キャ
ブ11内に設けられた走行操作装置40により走行操作を行うことが多い。そのため、上
述した車輪格納張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15が下方に張り出されている
状態であると検出され、且つ作業台格納検出器72により作業台30が格納されている状
態であると検出された場合において、さらに、運転キャブ11内の走行操作装置40が走
行指令信号を出力可能なON状態であり(電源スイッチ41がON状態に操作され)、且
つ作業台30上の走行操作装置40が走行指令信号を出力できないOFF状態である(電
源スイッチ41がOFF状態に操作された)場合に、走行モード設定部51が第1軌道走
行モードM
1を選択して設定するように構成してもよい。
【0041】
車輪格納張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15が走行体10の下方に張り出さ
れている状態であると検出され、且つ作業台格納検出器72により作業台30が架装フレ
ーム18上の所定の格納位置に格納されていない状態であると検出された場合には、走行
モード設定部51は、軌陸作業車1が軌道R上で作業を行いながら走行を行う状態である
と判断して、第2軌道走行モードM
2を選択して設定する。このように作業台30を所望
の高所位置に移動させて作業を行いながら軌道R上を走行するときは、比較的に低速で走
行する場合が多い。そのため、第2軌道走行モードM
2が設定されているときは、走行制
御部52は、エンジン停止信号をエンジンEに出力してエンジンEを停止させ、走行操作
装置40からの走行操作信号に応じてモータ制御信号を走行用インバータ62に出力して
バッテリ61からの電力を走行電動モータ16,16に供給させて走行電動モータ16,
16を駆動させ、走行電動モータ16,16の出力を減速機G,Gを介して鉄輪15,1
5に伝達して軌道R上を走行させる。このようにエンジンを停止させて軌道R上を走行す
るため、エンジンEが作業現場において周囲に与える騒音や排気ガスを防止することがで
きる。
【0042】
なお、上述したように走行操作装置40は運転キャブ11内および作業台30上にそれ
ぞれ設けられているが、作業台30が格納されていない、すなわち作業を行いながら軌道
上を走行するときは、作業台30上に設けられた走行操作装置40により走行操作を行う
ことが多い。そのため、上述した車輪格納張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15
が下方に張り出されている状態であると検出され、且つ作業台格納検出器72により作業
台30が格納されていない状態であると検出された場合において、さらに、運転キャブ1
1内の走行操作装置40が走行指令信号を出力できないOFF状態であり(電源スイッチ
41がOFF状態に操作され)、且つ作業台30上の走行操作装置40が走行指令信号を
出力可能なON状態である(電源スイッチ41がON状態に操作された)場合に、走行モ
ード設定部51が第2軌道走行モードM
2を選択して設定するように構成してもよい。
【0043】
このように走行モード設定部51は、鉄輪格納張出検出器71および作業台格納検出器
72の検出信号に応じて道路走行モードM
0、第1軌道走行モードM
1および第2軌道走
行モードM
2のいずれかを自動的に選択して設定するようになっているが、走行操作装置
40には走行モード切換スイッチ45が設けられており、作業者がこの走行モード切換ス
イッチ45を操作することにより、走行モード設定部51により設定された走行モードを
切り換えて設定することができるように構成されている。そして、走行制御部52は、走
行モード切換スイッチ45によって切換設定された走行モードに基づいて、上述のように
走行制御を行うように構成されている。このように走行モード切換スイッチ45が設けら
れているため、走行モード設定部51により設定された走行モードを作業者が任意に変更
させることができ、作業者が作業状況に応じた最適な軌道走行モードを選択して、軌道R
上を走行させることができる。
【0044】
以上のように、走行モード設定部51が、エンジンEにより発電機63を駆動してバッ
テリ61に充電させつつエンジンEによりタイヤ車輪12,12を駆動して道路上を走行
させる道路走行モードM
0と、エンジンEにより発電機63を駆動してバッテリ61に充
電させつつバッテリ61からの電力を用いて軌道R上を走行させる第1軌道走行モードM
1と、エンジンEを停止させてバッテリ61からの電力を用いて軌道R上を走行させる第
2軌道走行モードM
2とを、鉄輪格納張出検出器71により検出された鉄輪15,15の
格納状態および作業台格納検出器72により検出された作業台30の格納状態に応じて自
動的に選択して設定するように構成されている。そのため、道路走行中においてもバッテ
リ61を充電することができ、道路走行および軌道走行のいずれの場合においてもバッテ
リ61を充電することができる。また、エンジンEにより発電機63を駆動してバッテリ
61を充電させつつ軌道R上を走行させる第1軌道走行モードM
1と、エンジンEを停止
させてバッテリ61を充電せずに軌道R上を走行させる第2軌道走行モードM
2とを選択
することができ、作業状況やバッテリ61の充電容量に応じた最適な軌道走行モードによ
り軌道R上を走行させることができる。
【0045】
なお、上述の軌陸作業車1では、バッテリ61からの電力供給を受けて駆動されるポン
プ駆動モータ67により油圧ポンプ68を駆動し、この油圧ポンプ68からの吐出油を用
いて垂直昇降装置20の昇降油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを駆動させるように構
成されている。しかしながら、軌陸作業車1において、変速機TMに取り付けられたパワ
ーテイクオフ機構(PTO機構)を備え、エンジンEを駆動してパワーテイクオフ機構に
よって取り出した動力により油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプからの吐出油を用いて
油圧アクチュエータを駆動させるように構成してもよい。そして、この場合に、車輪格納
張出検出器71により車体前後左右の鉄輪15が格納されている状態であると検出され、
且つ作業台格納検出器72により作業台30が格納されている状態であると検出された場
合において、さらに、パワーテイクオフ機構がエンジンEからポンプ駆動力を取り出さな
いOFF状態である場合に、走行モード設定部51が道路走行モードM
0を選択して設定
するように構成することもできる。
【0046】
これまで本発明に係る実施形態を説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示
したものに限定されない。例えば、車体上に設けられる作業装置は、上述の垂直昇降装置
20に限らず、作業台を備えるブーム式の高所作業装置であってもよい。さらに、作業装
置は、クレーン装置、穴掘建柱装置、ダンプ装置(荷台を傾けて積荷を下ろすための装置
)等であってもよく、この場合には、上述の作業台格納検出器72に代えて、これらの装
置が所定の格納位置に格納されたか否かを検出する格納検出器を備えて構成される。