(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017827
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープ
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20161020BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20161020BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20161020BHJP
B29C 47/02 20060101ALI20161020BHJP
【FI】
B32B15/08 H
B32B27/00 L
B32B27/36
B29C47/02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-104607(P2012-104607)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-230642(P2013-230642A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】510127882
【氏名又は名称】株式会社ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】細貝 極樹
【審査官】
横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−167742(JP,A)
【文献】
特開2009−215350(JP,A)
【文献】
特開2000−255006(JP,A)
【文献】
特開2004−074713(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/128973(WO,A1)
【文献】
特開2004−001243(JP,A)
【文献】
特開平02−169228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層、金属層、接着剤層、及び、熱可塑性樹脂シート層が順次積層されてなる押出成形モール用金属調加飾テープの前記透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層側の表面に、前記表面を保護する保護フィルムが剥離可能に積層されてなる保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープにおいて、前記保護フィルムが、変性ポリエチレンテレフタレートから構成されてなり、
前記変性ポリエチレンテレフタレートにより構成された保護フィルムがポリエチレンテレフタレート系樹脂からなり、かつ、前記保護フィルムのMD熱収縮率が2%以上3%以下であることを特徴とする保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウィンドウモール、サイドモール、バンパーモール、ドアモール、ルーフモールや家電機器用装飾モール、建材用装飾モール等に使用される押出成形モール用金属調加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなモールは、異型押出成形装置により熱可塑性樹脂から構成されるモール本体を成形する際に、所定の幅にスリットした金属調加飾テープを、異型押出装置の金型内に連続的に挿入することにより、モール本体と熱溶融により接合させた後、連続的に水に浸漬するなどの手段により冷却して製造する。
【0003】
ここで、上記のような押出成形モール用金属調加飾テープとしては、透明熱可塑性樹脂フィルムよりなる表面層、金属層、及び、接着剤層モール本体と接合する熱可塑性樹脂シートをこの順に積層して形成したものが一般的に用いられる。
【0004】
このような押出成形モール用金属調加飾テープを、異型押出装置の金型内に連続的に挿入し、押出成形されるモール本体に熱溶融により接合させる工程では、テープに熱と張力が加わるので、表面層が引き延ばされる。しかし、金属層はこの伸びに追随できないので、製品としてのモールの金属層にクラックが生じ、外観不良となる問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、表面層の透明熱可塑性樹脂フィルムの片面に、剥離可能なポリエチレンテレフタレート製の保護フィルムが貼着された金属調加飾テープが提案されている(特許文献1及び2)。この保護フィルムは、モールが製品に組込まれた後に、あるいは、製品の使用者が製品の使用開始前に、剥離除去される。
【0006】
これらの公報に記載の技術によれば、押出成形モール用金属調加飾テープをモール本体と熱溶融により接合させる工程において、透明熱可塑性樹脂フィルムの伸びを防止することにより、成形後の外観不良を解消することが可能になったとしている。しかしながら、上記方法では、接合工程後の冷却工程、その後の熟成工程におけるモール本体の収縮に対して、ポリエチレンテレフタレート製の保護フィルムが追随できず、保護フィルムフィルムが部分的に剥離すると云う新たな問題が生じ、これが歩留まりを低下させる原因となっている。すなわち、保護フィルムの剥離が冷却工程で生じた場合に、保護フィルムと表面層との間に水が浸入し、水垢によりウォータースポットと呼ばれる外観不良を引き起こす。さらに、保護フィルムの表面層からの剥離は、ウォータースポットのみならず、次工程のモール切断工程において切断不良や、搬送トラブルの原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−167742号公報
【特許文献2】特開平4−110143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、モール成形時での保護フィルムの表面層からの剥離が生じず、ウォータースポットやモール切断工程でのトラブルが生じる恐れのない保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープは、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層、金属層、接着剤層、及び、熱可塑性樹脂シート層が順次積層されてなる押出成形モール用金属調加飾テープの前記透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層側の表面に、前記表面を保護する保護フィルムが剥離可能に積層されてなる保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープにおいて、前記保護フィルムが、変性ポリエチレンテレフタレートから構成されてな
り、前記変性ポリエチレンテレフタレートにより構成された保護フィルムがポリエチレンテレフタレート系樹脂からなり、かつ、前記保護フィルムのMD熱収縮率が2%以上3%以下であることを特徴とする保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープによれば、モール本体との熱溶融による接合工程における金属クラックを防止できるとともに、冷却工程、熟成工程における保護フィルムの剥離を防止することが可能となり、ウォータースポットの発生やモール切断工程でのトラブルが生じる恐れがないので、歩留まりが大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープの一例のモデル断面図である。
【
図2】モール成形時の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープの使用方法を説明するためのモデル斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープは、透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層、金属層、接着剤層、及び、熱可塑性樹脂シート層が順次積層されてなる押出成形モール用金属調加飾テープの前記透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層側の表面に該表面を保護する保護フィルムが剥離可能に積層されてなる保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープにおいて、前記保護フィルムが、変性ポリエチレンテレフタレートから構成されてなる。
図1に本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープの一例のモデル断面図を示す。
【0014】
本発明において、透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層(
図1中符号1を付して示される)は、最低限、金属層による金属調外観を損なわない程度の透明性があればよく、フィルムを構成する熱可塑性樹脂としてはテトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンとの共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられ、このうち、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンとの共重合体(FEP)であれば、耐候性、耐薬品性、耐熱性、加工適性が良好であるので好ましい。
【0015】
この透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層の厚さとしては、柔軟性、透明性、加工性、経済性等を勘案して決定するが、通常、10μm以上100μm以下である。
【0016】
金属層(
図1中符号2を付して示される)としては、真空蒸着、CVD、イオンプレーティング、プラズマCVD、スパッタリング等の真空応用技術により、上記透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層を形成するフィルムの片面に形成する。
【0017】
金属層を構成する金属としては、たとえば、アルミニウム、クロム、インジウム、錫およびこれらの合金が挙げられるが、特に、最終製品である樹脂成形物の角部でも金属光沢を充分に確保することができ、かつ、耐腐食性が高いので、錫、あるいは、インジウムであることが望ましい。
【0018】
金属層の厚さとしては通常、10nm以上100nmとする。この範囲よりも薄いと十分な金属調外観を付与できなくなりやすく、厚いと生産性が低下しやすい。
【0019】
接着剤層(
図1中符号3を付して示される)を構成する接着剤としては充分な接着力と必要に応じた耐候性、及び少なくとも成形時の熱に耐えられる耐熱性を有しているものが使用可能であるが、一般にアクリル系、ウレタン系、あるいは、シリコーン系接着剤などを使用することができる。接着剤層の厚さは通常2μm以上20μm以下である。
【0020】
熱可塑性樹脂シート層(
図1中符号4を付して示される)は、モール用金属調加飾テープにモール成形時や各種取り扱い時に求められる強度を付与し、かつ、モール成形時にモール本体部と一体となる層であり、通常、モール本体部を構成する樹脂と同じ樹脂成分か、あるいはモール本体部を構成する樹脂に相溶する樹脂成分により構成する。このような熱可塑性樹脂シート層は上述の接着剤層により金属層に接着される。
【0021】
熱可塑性樹脂シート層の厚さとしては通常、25μm以上500μm以下である。
【0022】
このようにして形成されたモール用金属調加飾テープの、上記透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層側の表面に、この表面を保護する保護フィルム(
図1中符号6を付して示される)を剥離可能に積層する。
【0023】
本発明では、保護フィルムを構成する樹脂として変性ポリエチレンテレフタレートを用いる。さらに、変性ポリエチレンテレフタレートにより構成されたこの保護フィルムの、JIS C2151に準拠し、150℃、30分の条件でのMD熱収縮率(フィルム製造方向(長手方向)の熱収縮率)が2%以上3%以下であると、特に剥離防止効果が高くなるので好ましい。
【0024】
このような、MD熱収縮率が2%以上3%以下の変性ポリエチレンテレフタレートのフィルムは、帝人デュポン社製テフレックスFT−3、東洋紡績社製ソフトシャインなどが知られている。
【0025】
保護フィルムの厚さとしては、10μm以上100μm以下であることが好ましい。この範囲よりも薄いと、生産時及び生産後の保護フィルム剥離時にフィルムが破断しやすくなり、また、この範囲よりも厚すぎると、生産時に工程トラブルが生じやすくなり、生産性が低下する。
【0026】
このような保護フィルムは、上記モール用金属調加飾テープの透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層側の表面側に剥離可能に積層されるが、必要に応じて粘着剤層(
図1中符号5を付して示される)を介して積層してもよい。
【0027】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、充分な粘着力、及び、少なくとも成形時の熱に耐えられる耐熱性を有しているものが使用可能であるが、一般にアクリル系、
ウレタン系、ゴム系、シリコーン系などの粘着剤を使用することができる。粘着剤層の厚さは通常2μm以上20μm以下である。
【0028】
このようにして得られた保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープ用シートは、通常ロール形状されて、その後、必要な幅に切断されて保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープとされる。
【0029】
保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープは例えば
図2にモデル的に示したモール押出成形機によってモール製造に用いられる。この例ではモールD本体部は、防水のためにエラストマーを有する樹脂から構成されたパッキン部d3及びd2、モール主部d1、そして、金属調加飾テープ部d4から構成されており、このモールDを成形するノズルEには、モール主部d1を形成する樹脂をノズルEに供給する押し出し成形機A、及び、パッキン部d3及びd2を形成する樹脂をノズルEに供給する押し出し成形機Bが接続されており、ノズルEの図中後方からリール状に保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープCが供給されて、モールD本体部と一体とされて保護フィルム付押出成形モールが製造される。
【0030】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープは上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0031】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープを適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープの構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例について説明する。
<<実施例1>>
<金属調加飾シートの作製>
一方の面にスパッタリングにより金属層としてクロム層を成膜した四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンとの共重合体フィルム(ダイキンエ業製。厚さ:25μm。以下「FEPフィルム」と云う)の金属層側表面に、ウレタン系接着剤(三井ポリウレタン製A−543(18重量部)、同A−3(2重量部)、及び、酢酸エチル(11重量部)を配合し混合して得た)をダイコーターにより、接着剤層の最終厚さが5μmとなるように塗布した後、溶剤を乾燥除去した。この接着剤層側面に日本ウェーブロック社製ポリ塩化ビニル樹脂シート(黒色。厚さ:200μm)を積層し、押出成形モール用金属調加飾テープ用シートを得た。
【0033】
<離型フィルム付保護フィルムの作製>
サンエー化研社製シリコーン系離型ポリエステルフィルム(厚さ:25μm)の離型処理面側に粘着剤層としてアクリル系接着剤(総研化学社製1499M(15重量部)、同L45(0.4重量部)、及び、酢酸エチル(15重量部)を配合し混合して得た)をダイコーターにより、粘着剤層の最終厚さが5μmとなるように塗布した後、溶剤を乾燥除去した。その後、この粘着剤層に変性ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製テフレックスFT−3(厚さ:25μm)。MD熱収縮率:2.4% JIS C2125準拠 150℃、30分 以下同じ)を積層し、離型フィルム付保護フィルムを得た。
【0034】
<保護フィルム付金属調加飾シートの作製>
上記で得た離型フィルム付保護フィルムの離型フィルムを剥離しながら、保護フィルムの粘着剤塗布側と押出成形モール用金属調加飾テープ用シートのFEPフイルム側面を貼り合わせて、保護フィルム付押出成形モール用金属調加飾テープ用シートを得た。これを、マイクロスリッターを用いて幅10mmにスリットして保護フィルム付押出成形モール用金属加飾テープαを得た。
【0035】
<<実施例2>>
変性ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、帝人デュポン製テフレックスFT−3の代わりに東洋紡社製ソフトシャイン(厚さ:25μm。MD熱収縮率:2.4%)を使用した以外は、実施例1と同様にして保護フィルム付押出成形モール用金属加飾テープβを得た。
【0036】
<<比較例1>>
変性ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、ポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポン製PETフィルムHB(厚さ:25μm。MD熱収縮率:1.0%)を使用した以外は、実施例1と同様にして保護フィルム付押出成形モール用金属加飾テープγを得た。
【0037】
<モールの作製>
モール本体全体が1種類のエラストマーのみにより構成されているモールの試作を行った。
【0038】
モール本体を構成する樹脂としてリケンテクノス社製エラストマー(レオストマー)を使用した。異型押出機を使用し、保護フィルム付押出成形モール用金属加飾テープα、β、あるいは、γを押出機の金型に挿入しながら、モール本体樹脂を温度190℃、成形スピード3m/分で押出成形後、水温10℃の水槽(長さ3m)の中に通して、保護フィルム付押出成形モールα1、β1、あるいは、γ1をそれぞれ得た。
【0039】
これら保護フィルム付押出成形モールのそれぞれ長さ10mについて、目視で保護フィルムの剥離の有無を調べた。その結果、保護フィルム付押出成形モールα1、β1では製造直後での保護フィルムの剥離はなく、さらに、室温熟成24時間後においても、剥離は発生しなかった。一方、モールγ1は、生産直後において、剥離している箇所があり、さらに室温熟成24時間後には、それぞれの剥離箇所の面積が拡大した。
【符号の説明】
【0040】
1 透明ないし半透明の熱可塑性樹脂フィルム層
2 金属層
3 接着剤層
4 熱可塑性樹脂シート層
5 粘着剤層
6 保護フィルム