特許第6017843号(P6017843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6017843
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/02 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   F24F7/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-125533(P2012-125533)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-250013(P2013-250013A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】金澤 朗蘭
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 勝夫
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−055651(JP,U)
【文献】 特開昭63−061836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ファンからの排気を外部へ排出する排気口に取り付けられると共に、該排気口に排気の流れを避けて隣接配置される開口部を有し、該排気口から放出される音を回折現象で該開口部から取り込んで消音する消音器であって、
前記排気口はフードによって形成され、前記開口部の位置を上記排気口の位置に対し変更可能に、上記フードに対し回転自在に設けられていることを特徴とする消音器。
【請求項2】
前記開口部から取り込んだ音を反射させる壁部を備えた筒状室を有し、該筒状室に取り込まれた音と、上記壁部により反射した音とにより音圧を減衰することを特徴とする請求項1に記載の消音器。
【請求項3】
隣接配置される前記開口部と前記排気口の縁同士は、隙間なく面一に連設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消音器。
【請求項4】
前記開口部は、前記排気ファンを上方から覆う前記フードの外側に環状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の消音器。
【請求項5】
前記筒状室は、前記フードの中心から外方へ向けて放射状に複数配列され、互いに隣接する前記開口部の縁同士は、隙間なく面一に連設されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の消音器。
【請求項6】
前記筒状室は、外側に配置されている該筒状室の方が、内側に配置されている該筒状室よりも、前記開口部から前記壁部までの距離が短いことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気効率の低下を抑えつつ消音することが可能な消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンからの排気を外部に排出する排気口から放出される音を消音する技術としては、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の「消音機能を持つルーフファン」は、建家の屋根に鉛直方向に固定され内部に軸流型のファンを内蔵した筒状の本体と、同本体の上位に同軸上に位置し下端レベルを前記本体の上端より下位に設けて同本体上部側周囲を囲む形状の上カバーと、同上カバーの下位に位置し上端レベルが上カバーの下端より上位に位置して同上カバーの下端部分を囲む形状の下カバーとを有し、さらに前記上カバー内に孔を開設した隔壁により共鳴室を形成して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−59325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述するルーフファンは、ファンからの排気を排出するための流路が入り組んでいたり、流路の途中に孔を開設した隔壁による共鳴室を設けているので、排気効率が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、排気効率の低下を抑えつつ消音することが可能な消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる消音器は、排気ファンからの排気を外部へ排出する排気口に取り付けられると共に、該排気口に排気の流れを避けて隣接配置される開口部を有し、該排気口から放出される音を回折現象で該開口部から取り込んで消音する消音器であって、前記排気口はフードによって形成され、前記開口部の位置を上記排気口の位置に対し変更可能に、上記フードに対し回転自在に設けられていることを特徴とする。
【0007】
前記開口部から取り込んだ音を反射させる壁部を備えた筒状室を有し、該筒状室に取り込まれた音と、上記壁部により反射した音とにより音圧を減衰することを特徴とする。
【0008】
隣接配置される前記開口部と前記排気口の縁同士は、隙間なく面一に連設されていることを特徴とする。
【0010】
前記開口部は、前記排気ファンを上方から覆う前記フードの外側に環状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記筒状室は、前記フードの中心から外方へ向けて放射状に複数配列され、互いに隣接する前記開口部の縁同士は、隙間なく面一に連設されていることを特徴とする。
【0012】
前記筒状室は、外側に配置されている該筒状室の方が、内側に配置されている該筒状室よりも、前記開口部から前記壁部までの距離が短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる消音器にあっては、排気効率の低下を抑えつつ消音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る消音器の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示した消音器の平面図である。
図3】第1実施形態に係る消音器の性能を説明するための、開口部のサイズと消音効果との関係を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る消音器に関連して、消音の対象となる音の波長の相違に伴う消音器の形状の相違を示す図であり、図4(a)は波長が短い場合の形状を説明する図、図4(b)は波長が長い場合の形状を説明する図である。
図5】第1実施形態に係る消音器の第1変形例を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。
図6】第1実施形態に係る消音器の第2変形例を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図である。
図7】第1実施形態に係る消音器の第3変形例を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。
図8】第1実施形態に係る消音器の第4変形例を示す図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図である。
図9】第1実施形態に係る消音器の第5変形例を示す図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は正面図である。
図10】第1実施形態に係る消音器の第6変形例を示す図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は正面図である。
図11】本発明に係る消音器の第2実施形態を示す図であり、図11(a)は縦断面図であり、図11(b)は平面図である。
図12】第2実施形態に係る消音器の第1変形例を示す平面図である。
図13】第2実施形態に係る消音器の第2変形例を示す図であり、図13(a)は平面図、図13(b)は正面図である。
図14】本発明に係る消音器の第3実施形態を示す図であり、図14(a)は平面断面図であり、図14(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる消音器の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は第1実施形態にかかる消音器1の縦断面図、図2はその平面図である。第1実施形態の消音器1は、図1に示すように、例えば工場などの建物の屋根2上に設けられる。消音器1は、建物内の空気を外部に排出するルーフファン3と共に設置される。
【0016】
ルーフファン3は、建物の屋根2に設けられ、ダクトの一部をなすファンケース4と、ファンケース4の上下方向に連通する連通口5に設けられ、建物内の空気を上方に排出する排気ファン6と、排気ファン6からの排気を外部へ排出する排気口7を形成するフード8とを有する。
【0017】
フード8は、平面視円形状であって上方へ隆起するドーム状に形成される。フード8は、排気ファン6及び連通口5を上方から覆って設置される。
【0018】
消音器1は、ルーフファン3のフード8に取り付けられる。消音器1には、排気口7に対し、排気の流れを避けて隣接配置される開口部9aを有する複数の筒状室9が備えられる。図示例では、筒状室9は、フード8上方に収まるように、L字状に屈曲形成される。
【0019】
消音器1は図2に示すように、フード8の外周面に外接し、下方が開放された平面視正方形状の内カバー部10と、内カバー部10の外側にて内カバー部10との間に空間を備えた平面視長方形状の外カバー部11と、内カバー部10と外カバー部11との間に形成される空間を仕切る仕切壁部12,13とを有する。筒状室9は、仕切壁部12,13で仕切られて、複数形成される(図中、6個)。
【0020】
以下の説明においては、外カバー部11の長手方向を長辺方向とし、長辺方向と直交する方向を短辺方向として説明する。
【0021】
内カバー部10の長辺方向に沿う一対の側壁と、外カバー部11の長辺方向に沿う一対の側壁は、一体化されている。内カバー部10の短辺方向に沿う下縁14と、外カバー部11の短辺方向に沿う下縁15とは、間隔が隔てられ、これらの間に複数の筒状室9の開口部9aが設けられる。
【0022】
内カバー部10と外カバー部11との間の空間には、長辺方向における中央で当該空間を仕切る中央仕切壁部12(音を反射させる壁部)と、中央仕切壁部12で仕切られた2つの領域において、外カバー部11内部を短辺方向に各々3つずつの領域に仕切る2つの分割仕切壁部13とが設けられる。
【0023】
内カバー部10の下縁14と外カバー部11の下縁15との間には、長辺方向における両側に、各々3つずつの開口部9aが設けられる。開口部9aは、排気口7に対し、当該排気口7からの排気の流れを避けて隣接配置される。
【0024】
各々の開口部9aから中央仕切壁部12に達する空間が、各々筒状室9を構成する。すなわち、消音器1の開口部9aは、長辺方向における両端側に配置されており、短辺方向における両端側には設けられていない。このため、開口部9aが設けられている長辺方向の消音性能が高く、長辺方向と交差する短辺方向においては消音性能が低くなる。
【0025】
そこで、本消音器1は、開口部9aの位置を排気口7の位置に対し変更可能に、内カバー部10とフード8との間で、フード8に対して回転自在に設けられる。フード8上に消音器1を載置した後に、消音器1を回転することで、消音したい方向に開口部9aを容易に向けることができる。
【0026】
この消音器1は、排気口7から放出される音を回折現象で開口部9aから取り込むように構成される。すなわち、排気ファン6からの排気がフード8の排気口7から排出される際に、回折現象により音が筒状室9に取り込まれるように構成される。
【0027】
回折現象により取り込まれる音は、排気口7を取り囲むフード8の下縁16を基点として回折する。このため、より回折しやすくするために、フード8の下縁16(排気口7の口縁)とこのフード8に外接する内カバー部10の下縁14(開口部9aの内縁)とは、図1に示すように、縁14,16同士が隙間なく面一に連設される。
【0028】
消音器1は、排気口7から放出され、回折現象で筒状室9の開口部9aから取り込まれた音と、中央仕切壁部12により反射した音とにより音圧を減衰し(共鳴現象)、これにより消音する。
【0029】
より具体的には、開口部9aから取り込まれて中央仕切壁部12で反射する音と開口部9aに新たに入射する音の位相が半波長ずれるように設定することにより、反射した音と新たに入射した音とが逆位相となり、互いに打ち消し合うことにより消音している。このため、筒状室9の開口部9aから中央仕切壁部12までの距離Lは、消音の対象となる音の波長λの4分の1(λ/4)に設定される。本実施形態においては、中央仕切壁部12が音を反射させる壁部となる。
【0030】
共鳴現象は、筒状室9の開口部9aの大きさに影響される。例えば、開口部9aが適切な大きさより小さい場合には、消音器1内の空気抵抗により、回折した音を十分に取り込むことができない。開口部9aが適切な大きさより大きい場合には、入射した音が中央仕切壁部12まで真っ直ぐに伝達されずに乱反射して共鳴現象が生じにくくなる。このため、開口部9aの大きさは、消音の対象となる音の波長λに対して適切な大きさに設定する必要がある。
【0031】
そこで発明者は、消音器1の開口部9aの大きさ(図中、寸法w及びd)と消音効果の関係を実験により確認した。実験では、消音の対象となる音を、排気ファン6のモーターの回転により発生する音(周波数50Hz)に設定し、当該周波数50Hzの音に対して開口部9aの幅をパラメータとしたときに、消音器1の有無による音圧レベルの差(相対音圧レベル差)を求めた。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る消音器1の性能を説明するための、開口部9aのサイズdと消音効果との関係を示すグラフである。図3においては、消音効果が高ければ、相対音圧レベル差が大きくなる。
【0033】
本実験の結果により、周波数50Hzの音の波長をλとしたときに、開口部9aの径dは、λ/10以上λ/3以下とすることが好ましく、より好ましくは、λ/6以上λ/3以下とすることが望ましいことが確認された。このとき、開口部9aが長方形状の場合には、例えば短辺側をλ/10(=w)とし長辺側をλ/3(=d)とすることが望ましいことが確認された。
【0034】
第1実施形態に係る消音器1によれば、排気口7から放出される音を回折現象で取り込んで消音する筒状室9の開口部9aは、排気ファン6からの排気を外部へ排出する排気口7に、排気の流れを避けて隣接配置されているので、排気ファン6からの排気が、排気口7から排出されるときに、排気の流れを阻害することなく、音が筒状室9に取り込まれる。すなわち、外部に排出すべき排気が排気口7に至るまでの間に障害となる物は存在しない。このため、排気効率の低下を抑えつつ消音することができる。
【0035】
消音器1は、開口部9aから筒状室9に取り込まれる音と、中央仕切壁部12で反射する音とにより音圧を減衰するので、簡単な構成により、効率よく消音することができる。
【0036】
隣接配置される筒状室9の開口部9aの下縁14とフード8の下縁16との縁同士は、隙間なく面一に連設されているので、排気口7から放出される音を筒状室9へ向かって的確に回折させることができる。このため、排気口7から放出される音を、より効率良く筒状室9に取り込むことができ、より高い消音効果が発揮させることができる。
【0037】
消音器1は、フード8に対して回転自在に設けられているので、フード8に対し、外カバー部11の長辺方向両端側だけに開口部9aが設けられていたとしても、容易に消音器1を回転させて、所望の方向に開口部9aを向けて消音することができる。
【0038】
図4は、消音の対象となる音の波長の相違に伴う消音器1の形状の相違を示す図であり、図4(a)は波長が短い場合の形状を、図4(b)は波長が長い場合の形状を説明する説明図である。
【0039】
第1実施形態の消音器1は、フード8の中央に設けた中央仕切壁部12と筒状室9の開口部9aとの距離Lが、消音の対象となる音の波長λの4分の1となる例である。このため、筒状室9の開口部9aからフード8の中央までの距離と消音の対象となる音の波長λの4分の1とが相違する場合には、消音の対象となる音の波長λに合わせて、音を反射させる壁部12を備えた消音器1を構成することが望ましい。
【0040】
このとき、消音器1は、消音の対象となる音の波長λの4分の1が、筒状室9の開口部9aからフード8の中央までの距離より短い場合には、図4(a)に示すように、消音器1の2つの壁部12が互いに間隔を隔てて対向するように配置される。また、消音の対象となる音の波長λの4分の1が、筒状室9の開口部9aからフード8の中央までの距離より長い場合には、図4(b)に示すように、一方の筒状室9が他方の筒状室9の上に重なるように配置される。
【0041】
図5は、第1実施形態に係る消音器1の第1変形例を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。図6は第2変形例を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図である。図7は第3変形例を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。以下の説明において、既に説明した実施形態と同一構成については図中で同符号を付して示し、その説明については省略する。
【0042】
第1実施形態においては、内カバー部10と外カバー部11との間を中央仕切壁部12及び分割仕切壁部13で仕切って、6つの筒状室9を一体に形成した例について説明したが、これに限るものではない。
【0043】
たとえば、短辺方向の両端側に位置する筒状室9の開口部9aは、中央側に位置する筒状室9の開口部9aより、フード8の排気口7からの距離が遠くなり、音の回折現象が生じ難いので、図5に示すように、短辺方向の両端側に、中央側の筒状室9とは別個の部材にて追加の筒状室17を設けるようにしてもよい。
【0044】
具体的には、短辺方向の両端側に、各々別個の筒状室17を形成する筒状体として、断面が矩形状に形成され、一端に開口部17aを有し、他端が閉塞された壁部18を有する断面角形の追加の筒体19を、その開口部17aの下縁が第1実施形態と同様に、長辺方向においてフード8の下縁16に、隙間なく面一に連設されるように配置しても良い。
【0045】
このとき、短辺方向において、端部側に設けられた筒体19の壁部18側が干渉する場合には、図5(b)に示すように、一方の筒体19の上に他方の筒体19を重ねて配置する。このように、追加の筒状室17を設け、筒状室17の開口部17aを排気口7に近い位置に設置することで、消音性能を確保することができる。
【0046】
図6に示すように、筒状室9を短辺方向に短冊状に複数配設し、これら各筒状室9について、開口部9aから壁部12までの距離(L1〜L3;L1<L2<L3)が互いに異なるように構成しても良い。この場合には、開口部9aから壁部12までの距離L1〜L3が互いに異なる複数種類の筒状室9により、複数種類の周波数の音を消音することができる。
【0047】
さらに、フード8の外形寸法が大きい場合には、図7に示すように、短冊状の筒状室9は、フード8の外周に沿うように配設してもよい。この場合には、各筒状室9の開口部9aとフード8の排気口7との縁同士が隙間なく面一に連設されている部位が広くなるため、より回折現象が生じやすく、消音効果を向上させることができる。
【0048】
図8は第1実施形態に係る消音器1の第4変形例を示す図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は正面図である。図9は第5変形例を示す図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は正面図である。図10は第6変形例を示す図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は正面図である。
【0049】
第1実施形態においては、開口部9aを長辺方向に1つずつ設ける例について説明したが、図8に示すように、開口部9aが長辺方向に並ぶように筒状室9を複数連接して設けてもよい。この場合には、開口部9aから壁部12までの距離Lが消音対象となる音の波長λの4分の1となる筒状室9がより多く設けられるので、より消音効果を高めることができる。
【0050】
このとき、図9に示すように、開口部9aが長辺方向に並べられた複数の筒状室9を、いずれもフード8の中央に壁部12が位置するように配置すると、長辺方向に並べられた各筒状室9の開口部9aから壁部12までの距離L1〜L3が互いに相違するので、複数種類の周波数の音を消音することができる。
【0051】
この場合には、図10に示すように、開口部9aから壁部12までの距離が短い筒状室9を、フード8により近い側に配置することが望ましい。これは、音は周波数が小さい程、回折の角度が大きいためであり、開口部9aから壁部12までの距離が短い筒状室9をフード8により近く配置すると、より消音効率を向上させることができる。
【0052】
図11は、本発明に係る消音器1の第2実施形態に関し、図11(a)は縦断面図であり、図11(b)は平面図である。第2実施形態に係る消音器1は図11に示すように、複数の筒状室9がフード8の外側に環状に配列されて構成される。より具体的には、消音器1は、フード8の外周面に、内周面が当接される内筒部20と、内筒部20の外側に間隔を隔てて同軸に配置される外筒部21と、内筒部20と外筒部21との上端部同士を繋ぐ壁部22とで形成される。
【0053】
この消音器1には、フード8の中央を中心として放射状に配置された12枚の仕切壁部23で区画されて、12個の筒状室9が備えられる。これら筒状室9の下端部に開口部9aが形成される。この場合にも、音がより回折しやすいように、フード8の下縁16と、内筒部20の下縁24とは、全周にわたって縁同士が隙間なく面一に連設されている。
【0054】
第2実施形態に係る消音器1によれば、筒状室9の開口部9aが、排気ファン6を上方から覆うフード8の外側に環状に設けられるので、フード8の排気口7からいずれの方向に発せされた音であっても、消音することができる。このため、消音器1を設置する際に、消音する方向を特定する必要がなく、施工性に優れる。
【0055】
図12は、第2実施形態に係る消音器1の第1変形例を示す平面図である。上記第2実施形態では、フード8の外側に複数の筒状室9を環状に配置する例について説明したが、図12に示すように、内筒部20と外筒部21との間を中間筒部25で複数に仕切って、フード8の外側に、筒状室9が当該フード8の中心から径方向外方へ向けて放射状に複数配列されていてもよい。この場合には、互いに隣接する各筒状室9の開口部9aの縁同士も隙間なく面一に連設される。
【0056】
図13は、第2実施形態に係る消音器1の第2変形例を示す図であり、図13(a)は平面図であり、図13(b)は正面図である。前記第2実施形態の消音器1は、開口部9aを環状に配列した筒状室9を鉛直方向縦向きに設ける例について説明したが、図13に示すように、複数の筒状室9をフード8の外周側に備え、筒状室9の壁部12側を、フード8上に屈曲形成するようにしてもよい。
【0057】
この場合には、フード8の外周を囲むように複数の筒状室9を備えた構成であっても、消音器1の高さを低く抑えることができる。
【0058】
さらに、第2実施形態であっても、各々の筒状室9に関し、開口部9aから壁部12までの長さLを互いに相違させることにより、複数種類の周波数の音を消音することができる。例えば、図12に示す構成に対し、図9図10の構成を適用して、外側に配置している筒状室9の方を、内側に配置している筒状室9よりも、開口部9aから壁部12までの距離を短く設定するようにしてもよい。
【0059】
上記いずれの実施形態も、排気ファン6からの排気を外部へ排出する排気口7をフード8で形成する場合について説明したが、本発明に係る消音器1は、ダクト26の排気口7に用いるようにしても良い。図14は、本発明に係る消音器1の第3実施形態に関し、図14(a)は平面断面図であり、図14(b)は正面図である。
【0060】
直線状のダクト26の回りを取り囲んで消音器1が取り付けられ、消音器1の開口部9aとダクト26の排気口7とが隣接配置される。消音器1の筒状室9は、ダクト26の長さ方向に沿って直線状に配置されている。消音器1の形態は、図11に示したものと同様であって、ダクト26の外周面に、内周面が当接される内筒部20と、内筒部20の外側に間隔を隔てて同軸に配置される外筒部21と、内筒部20と外筒部21との上端部同士を繋ぐ壁部22とで形成される。
【0061】
この消音器1には、ダクト26の外周に沿って間隔を隔てて配置された複数の仕切壁部23で区画されて、10個の筒状室9が備えられる。これら筒状室9の下端部に開口部9aが形成される。この場合にも、音が回折しやすいように、ダクト26の下縁(排気口7)と、内筒部20の下縁24とは、縁同士が隙間なく面一に連設される。回折現象は、排気口7の縁で発生するので、ダクト26や排気口7の断面は円形や正方形よりも扁平で、アスペクト比(=排気口7の長さ(W)/排気口7の幅(H))が大きいものが望ましい。
【0062】
上記実施形態では、消音器1は複数の筒状室9を備える場合について説明したが、筒状室9が単一であっても良いことはもちろんである。
【0063】
また、排気口7外部の排気の流路とその周辺に、吸音材を設けるようにしても良い。周波数の小さい音は回折現象によって消音器1に取り込んで消音でき、周波数の大きい音は吸音材によって吸音することができて、これらにより騒音を幅広い周波数にわたって低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 消音器
6 排気ファン
7 排気口
8 フード
9,17 筒状室
9a,17a 開口部
12,18 音を反射させる壁部
14 内カバー部の下縁
16 排気口を取り囲むフードの下縁
24 内筒部の下縁
図1
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